説明

細胞培養装置、把持装置、および把持方法

【課題】ディッシュやウェルプレート等の外形が異なる培養容器を把持可能な把持装置を提供する。
【解決手段】把持装置1は、3つの把持部3a〜3cを有する。それらのうちの把持部3a、3bはV字様形状を成し、矩形状の培養容器(ウェルプレート)の1つの側面の両角部に形成されている切り欠き面に沿うように設けられている。把持装置1は、ウェルプレートを把持する際に、把持部3a〜3cを、ウェルプレートの切り欠き面と、両角部に切り欠き面が形成された側面に対向する側面に沿って接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の培養を自動化できる細胞培養装置に関し、特に細胞培養装置に装備されて培養容器を把持する把持装置、およびその把持装置を用いた培養容器の把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞の培養を自動化できる細胞培養装置が開発されてきている。細胞を培養するには、一般的には、培養容器内の古い培地を新しい培地に交換する培地交換操作や、培養容器内で培養した細胞を他の培養容器へ分配播種する継代操作といった操作が必要であり、これらの操作を実行するために、細胞培養装置は、培養容器や遠沈管を把持する把持装置を備える。
【0003】
例えば特許文献1には、対向する2本のアームを近接させて、円形状の培養容器(ディッシュ)や円柱状の遠沈管を把持する把持装置が開示されている。図18に、特許文献1に開示されている把持装置を示す。
【0004】
この把持装置のアーム101には、ディッシュを把持するための培養容器把持部102と遠沈管を把持するための遠沈管把持部103が設けられている。詳しくは、培養容器把持部102は、アーム101の内側上部を円弧状に切り欠くことにより形成されており、その円弧の両端角部でディッシュと接触する。また、その下部に残った部分でディッシュの底部を支持する。一方、遠沈管把持部103は、アーム101の内側を円弧状に切り欠くことにより形成されており、その円弧の両端角部で遠沈管と接触する。
【0005】
このように、従来の把持装置には、ディッシュや遠沈管に対応する切り欠き円弧を形成したアームを近接させてディッシュや遠沈管を把持するものがあった。ところで、ディッシュには、直径が異なる様々なサイズのものがある。また、円形状の培養容器以外にも、例えば、複数の有底孔(ウェル)が形成された矩形状の培養容器(ウェルプレート)等がある。しかしながら、従来の把持装置には、サイズが異なるディッシュを把持することや、外形が異なる培養容器を把持することができるものはなかった。
【0006】
そのため、従来は、例えば直径が異なるディッシュを使用できる細胞培養装置を構成するのに、ディッシュのサイズごとに把持装置を設ける必要があった。また例えば、ディッシュとウェルプレートを使用できる細胞培養装置を構成するのに、ウェルプレート用の把持装置とディッシュ用の把持装置を設ける必要があった。このように従来は、様々な培養容器を使用できるようにして細胞培養装置に汎用性を持たせる場合、設備規模の大型化やコストの増大を避けられなかった。
【特許文献1】特開2006−149268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、サイズが異なるディッシュを把持することや、ディッシュやウェルプレート等の外形が異なる培養容器を把持することができる把持装置を装備する細胞培養装置、その細胞培養装置に装備させる把持装置、その把持装置を用いた培養容器の把持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載の細胞培養装置は、細胞培養に係る作業に用いる設備が装備されている細胞培養装置であって、把持対象物を把持する把持装置を備え、前記把持装置は、把持対象物に接触させる少なくとも3つの把持部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2記載の細胞培養装置は、請求項1記載の細胞培養装置であって、少なくとも2つの前記把持部はV字様形状を形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3記載の細胞培養装置は、請求項1もしくは2のいずれかに記載の細胞培養装置であって、少なくとも2つの前記把持部は、矩形状の培養容器の1つの側面の両角部に形成されている切り欠き面に沿うように設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4記載の細胞培養装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の細胞培養装置であって、前記把持装置は、前記把持部が設けられた2つの把持部材を有し、前記2つの把持部材は対向配置されて近接および離間可能であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5記載の細胞培養装置は、請求項4記載の細胞培養装置であって、少なくとも2つの前記把持部は、前記2つの把持部材の近接および離間方向に直交する方向に近接および離間可能であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6記載の細胞培養装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の細胞培養装置であって、少なくとも2つの前記把持部は、先端側とは反対側の端部に設定された軸を中心に回動可能であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7記載の細胞培養装置は、請求項1ないし6のいずれかに記載の細胞培養装置であって、一部または全部の前記把持部は、把持対象物の側面に沿うように回動可能であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8記載の把持装置は、把持対象物を把持する把持装置であって、把持対象物に接触させる少なくとも3つの把持部を有し、少なくとも2つの前記把持部は、矩形状の培養容器の1つの側面の両角部に形成されている切り欠き面に沿うように設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9記載の把持方法は、請求項1ないし7のいずれかに記載の細胞培養装置において把持装置により培養容器を把持する方法であって、培養容器の外形と寸法または種類を認識した後、その認識した外形と寸法または種類に応じて把持装置の動作を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の好ましい形態によれば、ディッシュやウェルプレート等の外形が異なる培養容器や、同一の外形でサイズ(寸法)が異なる培養容器を一台の把持装置で把持可能となる。よって、細胞培養装置の設備規模の大型化やコストの増加を招くことなく、細胞培養装置に汎用性を持たせたり、細胞培養に係る作業を様々な培養容器を用いて実行すること等が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を交えて説明する。図1は、本発明の実施の形態における把持装置の一例を示す図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は正面図、図1(c)は右側面図である。
【0019】
図1に示すように、把持装置1は、対向配置された2つの把持部材2a、2bを備える。一方の把持部材2aには2つの把持部3a、3bが設けられており、他方の把持部材2bには1つの把持部3cが設けられている。把持部は、把持部材の内側面のうちの、把持対象物を把持するときに把持対象物に接触する部分である。
【0020】
把持部材2a、2bは支持部材4a、4bに接合しており、支持部材4a、4bは、ラック(歯板)6a、6bが形成されたラック体5a、5bに接合している。ラック体5a、5bには嵌合部材7a、7bが接合しており、嵌合部材7a、7bは、ベース部材8の一方の面に固定されたガイド部材9a、9bに嵌合されている。ガイド部材9a、9bは嵌合部材7a、7bを摺動可能に支持する。この構成により、ベース部材8は、ラック体5a、5bを直進運動可能に支持する。
【0021】
ラック体5a、5bは、互いのラック6a、6bが対向するように配置されている。またベース部材8の他方の面には、駆動モータ10を収納した筐体11が固定されており、その駆動モータの軸10aがベース部材8の一方の面側に突出している。駆動モータの軸10aには歯車12が設けられており、その歯車12がラック6a、6bに噛合している。ラック6a、6bは、駆動モータ10の回動に応じてラック体5a、5bが互いに逆方向に直進するように形成されている。
【0022】
以上説明した構成により、対向配置された把持部材2a、2bは、駆動モータ10の回動に応じて近接および離間する。図2に把持部材2a、2bが近接している様子を示す。図2(a)は上面図、図2(b)は正面図である。
【0023】
また、把持部材2aは、矩形状の培養容器であるウェルプレートの1つの側面の両角部に形成されている切り欠き面に把持部3a、3bが沿うように形成されている。図3に、ウェルプレートの一例を示す。図3(a)はウェルプレートの蓋の上面図、図3(b)はウェルプレートの蓋の側面図、図3(c)はウェルプレートの容器本体の上面図、図3(d)は蓋が被せられたウェルプレートの側面図である。
【0024】
図3に示すように、ウェルプレート13の容器本体13aは複数の有底孔(ウェル)14を有し、外形が矩形状となっている。また、蓋13bを閉じる方向を間違わないように、容器本体13aおよび蓋13bの対応する1つの側面の両角部に切り欠き面15が形成されている。ウェルプレートには様々なサイズのものがあり、ウェルの数も図3に示すように6つに限定されるものではないが、いずれのウェルプレートにおいても、少なくとも1つの側面の両角部に切り欠き面が形成されており、その切り欠き面の角度は一定である。そこで、本実施の形態では、把持部3a、3bがウェルプレートの切り欠き面15に沿うように把持部材2aを形成している。これらの把持部3a、3bはV字様形状を成し、把持対象物であるウェルプレートの切り欠き面に対して安定して接触する。
【0025】
図4に、ウェルプレート13の容器本体を把持装置1で把持している様子を示す。図4(a)は上面図、図4(b)は側面図である。但し、把持装置については、把持部材と支持部材のみを示す。
【0026】
把持装置1は、図4に示すように、把持部3a〜3cを把持対象物であるウェルプレートの容器本体13aの側面に沿って接触させて把持する。上記したように、ウェルプレートには切り欠き面15が形成されており、そのウェルプレートの切り欠き面15に沿うように把持部3a、3bが設けられているので、把持装置1は、ウェルプレートの容器本体13aの2つの切り欠き面15と、両角部に切り欠き面15が形成された側面に対向する側面に沿って把持部3a〜3cを接触させて、ウェルプレートの容器本体13aを把持することができる。切り欠き面15の角度はウェルプレートのサイズが異なっても一定であるので、把持装置1は、サイズの異なるウェルプレートの容器本体を把持することができる。
【0027】
図5に、蓋13bが被せられたウェルプレート13を把持装置1で把持している様子を示す。図5(a)は上面図、図5(b)は側面図である。但し、把持装置については、把持部材と支持部材のみを示す。
【0028】
図5に示すように、ウェルプレートの容器本体13aに蓋13bが被せられているときには、容器本体13aの側面の蓋13bから突出する部分に把持部3a〜3cが接触するように、把持装置1の高さ方向の位置を調整する。この高さ方向の位置の調整は、例えば把持装置1を高さ方向に移動させるカム機構等によって実現すればよい。
【0029】
図6に、円形状の培養容器であるディッシュ16の容器本体を把持装置1で把持している様子を示す。図6(a)は上面図、図6(b)は側面図である。但し、把持装置については、把持部材と支持部材のみを示す。
【0030】
図6に示すように、把持部3aと把持部3bがV字様形状を成すことで、3つの把持部3a〜3cをディッシュの容器本体16aに接触させて把持することができる。よって、把持対象物が円形状のディッシュであっても確実に把持することができる。また、直径が異なるディッシュであっても確実に把持することができる。
【0031】
また、ディッシュの容器本体16aに蓋16bが被せられているときには、図7に示すように、容器本体16aの側面の蓋16bから突出する部分に把持部3a〜3cが接触するように把持装置1の高さ方向の位置を調整する。
【0032】
図8に、遠沈管17を把持装置1で把持している様子を示す。図8(a)は上面図、図8(b)は側面図である。但し、把持装置については、把持部材と支持部材のみを示す。図8に示すように、把持部3aと把持部3bがV字様形状を成すことで、3つの把持部3a〜3cを遠沈管17に接触させて把持することができる。よって、把持対象物が円柱状の遠沈管であっても確実に把持することができる。また、直径が異なる遠沈管であっても確実に把持することができる。
【0033】
続いて、把持装置の他の構成例1について説明する。この把持装置は、2つの把持部材の近接および離間方向に直交する方向に対向配置された2つの把持部が、その方向に近接および離間できる構成となっている。この把持装置の一例を図9に示す。図9(a)は上面図であり、把持部材2a、2bの動作を示している。図9(b)は斜視図であり、遠沈管を把持している様子を示している。但し、把持装置については、把持部材のみを示す。
【0034】
図9に示すように、把持部材2aの支持部材19が、アーム部材18bを固定支持し、かつアーム部材18aをアーム部材18bに対して近接および離間可能に支持する構成としもよい。アーム部材の直進運動は、例えばシリンダ等によって実現すればよい。このように構成すれば、アーム部材18a、18bの内側面である把持部3a、3bが、把持部材2a、2bの近接および離間方向に直交する方向に近接および離間可能となる。
【0035】
なお、ここでは、2つの把持部3a、3bの一方が他方に対して近接および離間する構成について説明したが、無論、2つの把持部3a、3bが互いに近接および離間する構成としてもよい。
【0036】
続いて、把持装置の他の構成例2について説明する。この把持装置は、把持部材に設けられた2つの把持部が、先端側とは反対側の端部に設定された軸を中心に回動できる構成となっている。この把持装置の一例を図10に示す。図10(a)は上面図であり、把持部材2a、2bの動作を示している。図10(b)は斜視図であり、遠沈管17を把持している様子を示している。但し、把持装置については、把持部材のみを示す。
【0037】
図10に示すように、把持部材2aの支持部材21が、アーム部材18a、18bの自由端部とは反対側の固定端部に設けられた軸20a、20bによりアーム部材18a、18bを軸支する構成としてもよい。アーム部材18a、18bの回動は、例えばカム機構等によって実現すればよい。このように構成すれば、アーム部材18a、18bの内側面である把持部3a、3bが、先端側とは反対側の端部に設定された軸を中心に回動可能となる。
【0038】
続いて、把持装置の他の構成例3について説明する。この把持装置は、把持部が把持対象物の側面に沿うように回動できる構成となっている。この把持装置の一例を図11に示す。
【0039】
図11に示すように、把持部材2aの両アーム部22a、22bに可動部材23a、23bを遊嵌させ、可動部材23a、23bが軸24a、24bにより軸支される構成にすれば、可動部材23a、23bの内側面である把持部3a、3bが、把持対象物の側面に沿うように回動可能となる。このように構成すれば、例えば細胞培養フラスコを把持することも可能となる。
【0040】
図12に細胞培養フラスコの一例を示す。図12に示すように、細胞培養フラスコ25は、一端にキャップ26が螺合する首部が形成されており、その首部と容器本体部25aが肩部25bを介して連続している。細胞培養フラスコには様々なサイズのものがあり、肩部の傾斜角度も様々であるため、ウェルプレートの切り欠き面に沿う把持部3a、3bでは、細胞培養フラスコの肩部に沿って接触させることができない場合がある。これに対して、把持部3a、3bを、把持対象物の側面に沿うように回動可能にすれば、細胞培養フラスコの肩部に沿って接触させることが可能となり、細胞培養フラスコを把持することが可能となる。
【0041】
なお、ここでは、対向配置された2つの把持部材を近接および離間させる構成として、モータ軸に設けた歯車にラックを噛合させる構成について説明したが、無論、この構成に限定されるものではなく、例えばシリンダ等によって実現してもよい。
【0042】
また、ここでは、対向配置された2つの把持部材を互いに近接および離間させる構成について説明したが、無論、一方の把持部材のみを直進運動させてもよい。
【0043】
また、ここでは3つの把持部が設けられた把持装置について説明したが、把持部を4つ以上設けてもよい。図13に、把持部を4つ設けた把持装置の一例を示す。図13に示すように、対向配置する2つの把持部材2a、2bにそれぞれ2つの把持部3a、3b、把持部3c、3dを設けた場合には、一方の把持部材に設けた2つの把持部がウェルプレートの切り欠き面に沿って接触し、他方の把持部材に設けた2つの把持部がウェルプレートの角に接触する。
【0044】
また、ここでは、対向配置する2つの把持部材が設けられた把持装置について説明したが、この構成に限定されるものではなく、3つ以上の把持部が設けられていればよく、例えば図14に示すように、3つの把持部材2c〜2eを独立して直進運動させる構成としてもよい。把持部材の直進運動は、例えば図14に示すようにシリンダ27を用いて実現してもよい。
【0045】
続いて、以上説明した把持装置を装備した細胞培養装置について説明する。図15は、本発明の実施の形態における細胞培養装置の一例を示す斜視図である。本実施の形態では、図15に示すように、複数台の作業ユニット31を連接させた構成の細胞培養装置30を例に説明を行う。これら複数台の作業ユニット31には、細胞培養に係る作業に用いる設備が分散されて装備されている。
【0046】
図16は、作業ユニットの一例を示す斜視図である。図16に示すように、作業ユニット31の筐体の側壁には開口部32が形成されている。連接された複数台の作業ユニット31それぞれの内部空間は、各作業ユニット31の側壁に形成されている開口部32により互いに連通される。また、作業ユニット31の側壁には、開口部32を開閉する遮断扉33が設けられており、遮断扉33を閉じると、作業ユニット31の内部空間が密閉される構造となっている。
【0047】
作業ユニット31の前壁には、作業ユニット31の内部に装備されている設備のメンテナンス等ができるように開口部(図示せず)が形成さており、その開口部を開閉する遮断扉34が設けられている。
【0048】
作業ユニット31の天井部には、作業ユニット31の内部空間に充填される気体を清浄化する清浄化手段としてのHEPAフィルタ35が設けられており、清浄化された空気が作業ユニット31の内部空間に供給される構成となっている。
【0049】
作業ユニット31の内部には、隣接する作業ユニット間で培養容器等を搬送したり、作業ユニットの内部空間において培養容器等を搬送したりするための搬送機構が設けられている。図17に搬送機構の一例を示す。図17(a)は縦断面図、図17(b)は横断面図である。
【0050】
図17に示すように、搬送機構として、作業ユニットの内部空間において培養容器等を搬送するための搬送ロボットを設けるとともに、隣接する作業ユニット間で培養容器等を搬送するためのコンベア36を設けてもよい。開口部32の近傍に設けたコンベア36は、隣接する作業ユニットのコンベア36と協働して、隣接する作業ユニット間で培養容器等を搬送する。
【0051】
搬送ロボットは、培養容器等を把持する把持装置1を有する。また、把持装置1をX−Y−Z方向へ移動させるX−Y−Z移動機構を有する。図17には、把持装置1をX軸方向へ移動させるためのX軸レール37、把持装置1をY軸方向へ移動させるためのY軸レール38を示している。なお、図17には、図1に示す把持装置を例示している。
【0052】
搬送ロボットは、コンベア36上の培養容器等を作業エリア39へ搬送したり、培養容器等を作業エリア39からコンベア36上へ搬送したりする。また、作業ユニット内での作業が多岐にわたる場合には、各作業エリア間で培養容器等を搬送する。
【0053】
続いて、この細胞培養装置において把持装置1により培養容器を把持する際の動作について説明する。まず、把持装置1により培養容器を把持する前に、培養容器の外形とサイズ(寸法)を認識する。また、ウェルプレート等の外形に向きがある培養容器を把持する場合には、その向きを認識する。また、ディッシュ等の蓋を有する培養容器を把持する場合には、培養容器に蓋が被せられているかどうかを認識する。これらの認識方法としては、例えば撮影した画像から認識してもよい。また、外形およびサイズを記録したICタグ等の記録媒体を培養容器に設けておき、記録媒体から外形およびサイズの情報を読み出すようにしてもよい。または、培養容器の種類を記録したICタグ等の記録媒体を培養容器に設けておき、記録媒体から種類の情報を読み出し、その種類の情報から外形およびサイズを特定するようにしてもよい。また、上記した認識すべき情報の一部または全部を予め作業工程の情報に含ませておいてもよい。
【0054】
次に、培養容器の現在位置の情報、および上記の認識工程で認識した情報を基に、把持装置1の位置や向きを調整する。例えば、図1に示す把持装置1のように、2つの把持部材2a、2bを近接させて把持する場合には、把持部材2a、2b間の中心に培養容器が位置するように把持装置1のX−Y方向の位置を調整する。また、培養容器の側面に把持部が接触できるように把持装置1のZ方向(高さ方向)の位置を調整する。蓋が被せられた培養容器を把持する場合には、蓋から突出する側面に把持部が接触できるように把持装置1のZ方向の位置を調整する。また、ウェルプレートを把持する場合には、2つの把持部がウェルプレートの切り欠き面に沿って接触するように、把持装置1の向きを調整する。
【0055】
その後、培養容器の外形およびサイズに応じて把持装置1の動作を制御する。具体的には、把持部材の移動距離または移動位置を制御して、把持装置1に把持対象物を把持させる。また、図9に示すように、把持部材に設けたアーム部材を近接および離間させることが可能な場合には、アーム部材の移動距離または移動位置も制御する。また、図10に示すように、把持部材に設けたアーム部材を回動させることが可能な場合には、アーム部材の回転角度も制御する。
【0056】
なお、本発明は、設備が分散されて装備された複数台の作業ユニットを連接させて構成した細胞培養装置に限定されるものではなく、1つの筐体内に全ての設備を装備させた細胞培養装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる細胞培養装置、把持装置、および把持方法は、外形が異なる培養容器や、同一の外形でサイズ(寸法)が異なる培養容器を一台の把持装置で把持可能にする。よって、細胞培養装置の設備規模の大型化やコストの増加を招くことなく、細胞培養装置に汎用性を持たせたり、細胞培養に係る作業を様々な培養容器を用いて実行すること等を可能にし、細胞の培養を自動化できる細胞培養装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態における把持装置の一例を示す図
【図2】本発明の実施の形態における把持装置の2つの把持部材を近接させた状態を示す図
【図3】一般的なウェルプレートの一例を示す図
【図4】本発明の実施の形態における把持装置がウェルプレートの容器本体を把持している様子を示す図
【図5】本発明の実施の形態における把持装置が蓋付きのウェルプレートを把持している様子を示す図
【図6】本発明の実施の形態における把持装置がディッシュの容器本体を把持している様子を示す図
【図7】本発明の実施の形態における把持装置が蓋付きのディッシュを把持している様子を示す図
【図8】本発明の実施の形態における把持装置が遠沈管を把持している様子を示す図
【図9】本発明の実施の形態における把持装置の他例を示す図
【図10】本発明の実施の形態における把持装置の他例を示す図
【図11】本発明の実施の形態における把持装置の他例を示す図
【図12】一般的な細胞培養フラスコの一例を示す図
【図13】本発明の実施の形態における把持装置の他例を示す図
【図14】本発明の実施の形態における把持装置の他例を示す図
【図15】本発明の実施の形態における細胞培養装置の一例を示す斜視図
【図16】本発明の実施の形態における細胞培養装置の作業ユニットの一例を示す斜視図
【図17】本発明の実施の形態における細胞培養装置の搬送機構の一例を説明するための縦断面図および横断面図
【図18】従来の把持装置を示す図
【符号の説明】
【0059】
1 把持装置
2a〜2e 把持部材
3a〜3d 把持部
4a、4b 支持部材
5a、5b ラック体
6a、6b ラック
7a、7b 嵌合部材
8 ベース部材
9a、9b ガイド部材
10 駆動モータ
10a 駆動モータの軸
11 筐体
12 歯車
13 ウェルプレート
13a 容器本体
13b 蓋
14 ウェル
15 切り欠き面
16 ディッシュ
16a 容器本体
16b 蓋
17 遠沈管
18a、18b アーム部材
19、21 支持部材
20a、20b 軸
22a、22b アーム部
23a、23b 可動部材
24a、24b 軸
25 細胞培養フラスコ
25a 容器本体部
25b 肩部
26 キャップ
27 シリンダ
30 細胞培養装置
31 作業ユニット
32 作業ユニットの開口部
33 作業ユニットの遮断扉
34 作業ユニットの前壁に設けた遮断扉
35 HEPAフィルタ
36 コンベア
37 搬送ロボットのX軸レール
38 搬送ロボットのY軸レール
39 作業エリア
101 アーム
102 培養容器把持部
103 遠沈管把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養に係る作業に用いる設備が装備されている細胞培養装置であって、把持対象物を把持する把持装置を備え、前記把持装置は、把持対象物に接触させる少なくとも3つの把持部を有することを特徴とする細胞培養装置。
【請求項2】
少なくとも2つの前記把持部はV字様形状を形成することを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置。
【請求項3】
少なくとも2つの前記把持部は、矩形状の培養容器の1つの側面の両角部に形成されている切り欠き面に沿うように設けられていることを特徴とする請求項1もしくは2のいずれかに記載の細胞培養装置。
【請求項4】
前記把持装置は、前記把持部が設けられた2つの把持部材を有し、前記2つの把持部材は対向配置されて近接および離間可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の細胞培養装置。
【請求項5】
少なくとも2つの前記把持部は、前記2つの把持部材の近接および離間方向に直交する方向に近接および離間可能であることを特徴とする請求項4記載の細胞培養装置。
【請求項6】
少なくとも2つの前記把持部は、先端側とは反対側の端部に設定された軸を中心に回動可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の細胞培養装置。
【請求項7】
一部または全部の前記把持部は、把持対象物の側面に沿うように回動可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の細胞培養装置。
【請求項8】
把持対象物を把持する把持装置であって、把持対象物に接触させる少なくとも3つの把持部を有し、少なくとも2つの前記把持部は、矩形状の培養容器の1つの側面の両角部に形成されている切り欠き面に沿うように設けられていることを特徴とする把持装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の細胞培養装置において把持装置により培養容器を把持する方法であって、培養容器の外形と寸法または種類を認識した後、その認識した外形と寸法または種類に応じて把持装置の動作を制御することを特徴とする把持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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