細胞培養製品と細胞培養の方法
生体適合層を有する基板を含むバイオセンサ又は細胞培養製品。生体適合層は、基板の被膜の表面酸化によって形成され得る。当該基板の被膜は、適切な酸化性ポリマと、酸化性ポリマに付着せしめられたトリアミン等の修飾化合物の反応生成物と、を含む、バイオセンサ又は細胞培養製品を製造する方法及びバイオセンサ製品を用いたリガンドの分析を実行する方法をも開示する。
【発明の詳細な説明】
【先に出願された米国出願の利益の主張】
【0001】
本願は、共有され且つ譲渡された同時継続中の2007年10月10日に出願された米国特許出願第11/973,832号及び2008年11月18日に出願された米国特許出願第12/273,147号の一部継続出願であり、これらの出願に対する優先権の利益を主張する。本願の内容及びこの明細書で引用された全ての公報、特許、及び特許出願が参考として組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本開示は表面修飾方法、表面修飾製品及び当該製品を使用するアプリケーションに関する。特に、本開示は、生物学的製剤のホスト容器、例えば、培養容器、実験器具等において及び共鳴導波グレーティング(RWG:resonant waveguide grating)バイオセンサ等のバイオセンサにおいて使用する細胞培養表面に関する。また、本開示は、分析を行う細胞培養表面修飾製品を製造し且つ使用する方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、さまざまな基板において高い生物学的適合性を有する薄膜細胞成長表面を形成する方法を提供する。本開示は、表面修飾製品及び当該表面修飾製品を使用する方法をも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、本開示の実施形態において表面処理されたマイクロプレートを形成する例示的全体図である。
【図2】図2は、本開示の実施形態において測定された表面のフーリエ変換赤外線(FT−IR:Fourier transform infrared)スペクトルの重ね合わせを示している。
【図3A−3B】図3A及び3Bは、本開示の実施形態における未処理の表面とプラズマ処理表面とにおいて7.5時間培養した後のHEK293(ヒト胎児由来腎臓293)細胞の比較光学顕微鏡イメージを示している。
【図4A−4B】図4A及び4Bは、本開示の実施形態においてプラズマ処理表面に培養されたHEK293細胞の顕微鏡イメージを示している。
【図5A−5B】図5A及び5Bは、本開示の実施形態において一晩細胞培養した後の横紋筋肉腫(RMS13:rabdomyosarcoma)細胞の比較光学顕微鏡イメージを示している。
【図6A】図6Aは、本開示の実施形態における3つの異なる表面において培養され且つSFLLR−アミドによって誘起されたHEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。
【図6B】図6Bは、本開示の実施形態における3つの異なる表面において培養され且つSFLLR−アミドによって誘起されたHEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。
【図6C】図6Cは、本開示の実施形態における3つの異なる表面において培養され且つSFLLR−アミドによって誘起されたHEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。
【図7A】図7Aは、本開示の実施形態にける同一のプラズマ処理された表面において培養され且つSFLLR‐アミドによって誘起された3つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。
【図7B】図7Bは、本開示の実施形態にける同一のプラズマ処理された表面において培養され且つSFLLR‐アミドによって誘起された3つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。
【図7C】図7Cは、本開示の実施形態にける同一のプラズマ処理された表面において培養され且つSFLLR‐アミドによって誘起された3つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。
【図8A】図8Aは、本開示の実施形態において5つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養され且つSFLLRアミドによって誘起されたRMS13細胞のDMR信号を示している。
【図8B】図8Bは、本開示の実施形態において5つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養され且つSFLLRアミドによって誘起されたRMS13細胞のDMR信号を示している。
【図8C】図8Cは、本開示の実施形態において5つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養され且つSFLLRアミドによって誘起されたRMS13細胞のDMR信号を示している。
【図9】図9は、本開示の実施形態における4つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養され且つカルバコールによって誘起されたCHO−M1細胞のDMR信号を示している。
【図10】図10は、本開示の実施形態において同一のプラズマ処理がなされているもののコートされていない表面において別々に培養され且つSFLLRアミドによって誘起された4つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。
【図11】図11は、本開示の実施形態において同一のプラズマ処理されてAPSコートされた表面において培養され且つSFLLRアミドによって誘起された4つの異なるタイプの細胞DMR信号を示している。
【図12A】図12Aは、本開示の実施形態におけるSiO2の薄膜を有するNb2O5RWGバイオセンサ上の多種のポリマ性スチレン−無水−マレイン酸(SMA:styrene−maleic anhydride)被膜表面のFT−IRスペクトルを示している。
【図12B】図12Bは、本開示の実施形態におけるSiO2の薄膜を有するNb2O5RWGバイオセンサ上の多種のポリマ性スチレン−無水−マレイン酸(SMA:styrene−maleic anhydride)被膜表面のFT−IRスペクトルを示している。
【図12C】図12Cは、本開示の実施形態におけるSiO2の薄膜を有するNb2O5RWGバイオセンサ上の多種のポリマ性スチレン−無水−マレイン酸(SMA:styrene−maleic anhydride)被膜表面のFT−IRスペクトルを示している。
【図13A】図13Aは、本開示の実施形態における化学的に修飾されたSMAマイクロプレートの例示的予備ルートを示している。
【図13B】図13Bは、本開示の実施形態における均一な分布のナノ粒子を有する化学的に修飾されたSMAマイクロプレートの例示的なイメージを示している。
【図14】図14は、本開示の実施形態における様々なSMA修飾表面のFTIRスペクトルを示している。
【図15】図15は、本開示の実施形態における3つの異なる表面におけるHEK−293細胞のDMR応答を示している。
【図16】図16は、本開示の実施形態において2つの異なるタイプの処理表面において培養され且つカルバコールによって誘起されたCHO−M1細胞のDMR信号を示している。
【図17A】図17Aは、本開示の実施形態における、2つの異なるタイプの処理表面において培養され且つカルバコールによって誘起されたRMS−13細胞のDMR信号を示している。
【図17B】図17A乃至17Bは、本開示の実施形態における、2つの異なるタイプの処理表面において培養され且つカルバコールによって誘起されたRMS−13細胞のDMR信号を示している。
【図18】図18は、本開示の実施形態における、時間が経過するにつれてほとんど化学変化を示さないガラスに被覆された例示的アミン修飾SMAポリマのFTIRスペクトルである。
【図19】図19は、本開示の実施形態における、露出した金属酸化表面及びSMAの最小層で被覆された金属酸化表面のFTIRスペクトルである。
【図20】図20は、本開示の実施形態における、2つの異なるアミン化合物を別々に使用したものの、酸化され且つアミン修飾されたSMA表面におけるアミン化合物に関連づけたHEK−293細胞のEpic登録商標分析の例示的光学的応答を示している。
【図21】図21は、本開示の実施形態における、各々がNi2O5/SiO2導波路コーティングを有しかつ酸化されたトリアミン修飾された同一のSMA表面被覆を有するガラス及びTopas登録商標基板上のHEK−293細胞のEpic登録商標分析の例示的光学応答を示している。
【発明の詳細な説明】
【0005】
本発明の様々な実施形態が、添付の図面を参照して詳細に説明されるであろう。様々な実施形態に対する言及は、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明は、添付した請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本明細書に述べられたいかなる実施例も、限定することを目的とはしていないし、特許請求の範囲に記載された発明の多くの実施形態の内、いくつかについて説明しているにすぎない。
【定義】
【0006】
「分析(assay)」、「分析する(assaying)」等の用語は、例えば、リガンド候補化合物、ウイルス粒子、病原体、表面若しくは培養条件等の外因性刺激を用いた刺激に対する細胞の光学的応答又はバイオインピーダンス応答の存在の有無、量、程度、動特性及びターゲットのタイプを判定する分析を意味する。
【0007】
「付着する(attach)」、「付着(attachment)」、「固着する(adhere)」、「固着される(adhered)」、「固定された(immobilized)」等の用語は、物理吸着又は化学結合等の処理若しくはそれらの組み合わせ等によって、例えば、本開示の表面修飾物質、相溶剤、細胞、リガンド候補化合物、及び同様のエンティティを表面に固定し若しくは固着すること通常意味する。特に、「細胞の付着(cell attachment)」、「細胞の固着(cell adhesion)」等の用語は、細胞固定材料、相溶剤(例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミン、ゼラチン、ポリリジン等)等を用いて培養し、相互作用せしめることによって、表面との細胞の相互作用若しくは表面への結合を意味する。
【0008】
「付着性細胞」とは、基板の外部表面に関連付けられ、基板の外部表面上に固定され、又は特定の接触を維持する原核生物の細胞又は真核性細胞等の細胞、細胞株又は細胞システムを意味する。培養後のかかるタイプの細胞は、洗浄媒質交換処理、すなわち、多くの細胞ベースの分析に必須である処理に対して抵抗力を有し、耐性を有し得る。「弱付着性細胞」とは、細胞培養中に、基板の外部表面と弱く相互作用し、基板の外部表面と弱く関連し、基板の外部表面と弱く接触する原核生物の細胞又は真核性細胞等の細胞、細胞株又は細胞システムを意味する。しかしながら、これらのタイプの細胞、例えば、人間の胎児性腎臓(HEK)細胞は、洗浄液若しくは媒質の交換等の物理的に妨害的な手法により、基板の表面から容易に解離する傾向がある。「懸濁細胞」とは、望ましくは、媒質で培養される細胞又は細胞株を意味する。当該媒質において、細胞は、培養中に、基板の表面に付着若しくは固着しない。「細胞の培養」又は「細胞培養」とは、原核生物細胞若しくは真核性細胞が一定条件下で培養される処理を意味する。「細胞の培養」とは、多細胞の真正核細胞から得られた細胞の培養、特に動物細胞から得られた細胞の培養をも意味し、複合生体組織及び臓器の培養を含む。
【0009】
「細胞」等の用語は、1つ以上の細胞核と他の多種の細胞小器官を任意で含む半透明の膜によって外部的に結合された通常小なる微小質量の原形質を意味し、生命の基本的な機能を単独で実行し又は生命の基本的な機能を実行する他の同等の集団と相互作用することができ、合成細胞構造体、細胞モデルシステム、人工の細胞システムを含む独立的に機能することができる生物の最小構造ユニットを形成することができる。
【0010】
「細胞システム」等の用語は、互いに相互作用して生物学的病態生理学的機能又は生理的病態生理学的機能を発揮する1より大のタイプの細胞(又は単一タイプの細胞の異なる形態)の集合を意味する。かかる細胞システムは、器官、生体組織、幹細胞、分化した肝細胞等のシステムを含む。
【0011】
「刺激」、「治療候補化合物」、「治療候補物質」、「予防的候補物質」、「予防的物質」、「リガンド候補」、「リガンド」等の用語は、バイオセンサ若しくは病原体に付着せしめられた細胞と相互作用する潜在能力にとって重要であり且つ自然に生ずる分子若しくは材料又は合成的な分子若しくは材料を意味する。治療候補物質又は予防候補物質は、例えば、タンパク質、DNA、RNA、イオン、脂質、又は、生細胞の同様の構造若しくは要素等の少なくとも1つの細胞性ターゲット又は病原体ターゲットと特に結合し又は相互作用し得る化合物、生物学的分子、ペプチド、タンパク質、生物試料、薬物候補の小分子、薬物候補の生物学的分子、薬物候補小分子‐生物の結合体等の材料若しくは分子エンティティ又はそれらの組み合わせを含む。
【0012】
「バイオセンサ」等の用語は、生物学的要素を物理化学的検出構成要素に結合せしめ得る分析物を検出するデバイスを意味する。バイオセンサは、通常3つの部分から構成される。すなわち、(生体組織、微生物、病原体、細胞、又はこれらの組合せ等の)生物学的構成部又は要素、(例えば、光学的、圧電的、熱測定、若しくは磁気的な物理化学的手法で動作する)検出要素及び双方の構成部に関連付けられたトランスデューサから構成される。生物学的構成部若しくは生物学的要素は、例えば生体細胞、病原体又はそれらの組合せであり得る。実施形態において、光学バイオセンサは、生体細胞、病原体若しくはそれらの組合せにおける分子認識事象又は分子刺激事象を定量化可能な信号に変換する光学変換装置を含み得る。
【0013】
”含む(Include)”、”含む(includes)”等は、含むこと(including)を意味するがこれに限定されない。
【0014】
本開示の実施形態を説明するのに使用された例えば成分の構成要素、濃度、堆積、処理温度、処理時間、収量、流速、圧力等の値の量、及びその範囲を変更する「約」という用語は、例えば、生じうる数量における変分をいう。かかる変分は、化合物、構成成分、濃度、使用製剤を製造するのに使用された手順を通常測定し且つ取り扱うことを介して、これら手法における不注意な誤動作を介して、方法を実行するのに使用される製造方法、ソース、又は出発物質若しくは成分の純度における差等の事項を介して生じ得る。また、「about」という用語は、特定の初期濃度若しくは混合度を有する成分又は処方の経時変化に起因して異なる量及び特定の初期濃度若しくは混合度を有する成分又は処方の混合処理又は処理工程に起因して異なる量を包含し得る。“約(about)”という用語によって修飾され本明細書に添付された特許請求の範囲は、これら量の均等物を含む。
【0015】
実施形態において「〜本質的に成る(Consisting essentially of)」とは、例えば、表面組成、表面成分、化学式、又はバイオセンサの表面上の成分を製造し又は使用する方法及び本開示の物品、デバイス若しくは装置を意味し、特定の反応物質、特定の添加物または成分、特定の物質、特定の細胞若しくは細胞株、特定の表面修飾剤または条件、特定のリガンド候補、可変選択された同等の構造、材料、又は処理等、特許請求の範囲に記載された構成要素又はステップと、構成物、物品、若しくは装置の基本的且つ新規な特性と本開示の製造方法及び使用方法とに物質的に影響を与えない他の構成要素又はステップと、を含み得る。本開示の構成要素若しくはステップの基本特性に有形的に影響し又は本開示に不要な特性を与え得るアイテムは、プラズマ処理又は紫外線‐オゾン(UV−オゾン、”UVO”)処理及びステップに対する、例えば、ポリマ性表面層の過度の暴露又は長期暴露を含む。
【0016】
実施形態において、本開示は、固体基板に被覆され若しくは付着せしめられた反応性ポリマ若しくはコポリマの薄膜(スチレン若しくはポリスチレン含有ポリマ等)を、細胞の付着及び培養を促進する表面に変換する方法を提供する。方法は、例えば、プラズマ、UV−オゾン又はそれらの組み合わせを用いた薄膜の化成処理を含む。方法は、バイオセンサの検出ゾーン内にある細胞の近接領域におけるバイオセンサ表面に付着せしめられた生細胞を多くの場合有し得るバイオセンサベースの細胞分析を準備するのに特に適切である。
【0017】
細胞の付着及び成長を制御することは、細胞生物学、生物プロセス及び細胞ベースの分析の多くの態様に必要であり得る。細胞は、例えば、成形されたポリマ性物質、ペトリ皿、マルチウェルマイクロタイタプレート、フラスコ等のアイテム等の材料から成る容器の表面において成長され得る。細胞の付着性、細胞の成長及び関連生細胞の機能を促進し且つ分析による汚染を最小化するためには、これら表面は、通常、培養処理された生体組織又はマイクロ波チャンバ内等の制御環境下においてプラズマ処理された生体組織であり得る。成型されたポリマ性容器以外の多くの異なるタイプの基板が、生細胞分析を含む付着、成長、生物製剤の生成等、細胞培養にも用いられ得る。これら基板は、例えば、ガラス若しくは酸化金属膜等の他の無機材料又は金フィルム等の薄膜金属層から製造され得る。生体組織培養処理(TCT:Tissue culture treatment)又はプラズマ処理は、細胞を培養するこれら基板に対する改良を通常最小化し得る。
【0018】
実施形態において、本開示は、適切なポリマの薄層を有する容器等の固体基板を被覆し且つ薄膜を修飾する方法を提供する。得られたポリマ性薄膜は、所望の形態、官能基及び細胞の付着及び培養を促進する他の物理的パラメータを示す。ポリマ性薄膜を修飾する方法は、例えば、任意の結合層と、反応性薄膜被覆を有する基板とを、化学物質若しくは試薬の酸化による反応性コポリマ薄膜の処理等のプラズマ若しくは紫外線UV‐オゾンの酸化性ストリーム、又は、同じ結果を達成する同様の修飾方法等の酸化性媒体に暴露して、所望の酸素処理された表面機能性を有する修飾表面を形成するステップを含む。
【0019】
本開示は、あらゆるタイプの基板にも広範に適用可能である。基板は、酸化された金属膜若しくは金等の金属膜のパターン化されていない薄膜若しくはパターン化された薄膜を任意に有し、ガラス、無機基板、成形されたポリマ性基板、無機の若しくはポリマ性基板等の基板を含む。本開示の方法は、ポリスチレンベースのコポリマ等の適当に反応性を有するポリマの薄膜を有するいかなる容器又は基板に対しても利用可能である。かかるポリマは、適切な基板又は任意の適切な結合層と組み合わされて、ポリマが基板の表面に共有結合されるよう可能にし、所望の機械的応力を細胞付着に与え、例えば、プラズマ、UV−オゾン、化学反応物質等の物質を用いてかかる薄膜表面の機能的修飾を可能にする。機械的応力が望まれている。なぜならば、表面に受動的に吸着されるに過ぎない(すなわち、表面に対するリンクが存在しない)SMA等のポリマ層は、容易に洗い落とされる傾向がある。
【0020】
本開示は、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞及び人間の上皮癌のA431セル等の付着性が強い細胞、RMS13細胞等の中間的付着性細胞及びヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞又は一次細胞等の弱付着性細胞を含む多くのタイプの細胞の付着、成長、及び分析に適切である表面を提供する。
【0021】
本開示は、バイオセンサの表面を修飾する方法を提供する。これらバイオセンサの表面は、細胞培養及びその後の細胞分析に相性がよく、敏感に反応する。本開示の方法は、共鳴導波グレイティングバイオセンサーにおいて用いられるような酸化金属薄膜表面又は表面プラズモン共鳴(SPR)において用いられるようなパターン化されていない金の表面又は電気的バイオインピーダンスベースのバイオセンサにおいて用いられるようなパターン化された金の表面に適切である。
【0022】
したがって、特許請求の範囲に記載された発明は、本明細書に定義された細胞培養製品、本明細書に定義された細胞培養製品を準備する方法及び本明細書に定義されたリガンドの分析を実行する方法を適切に含み、これら製品及び方法から成り、又は、本質的にこれら製品及び方法から成り得る。
【0023】
実施形態において、本開示は、基板と、少なくとも前記基板に付着せしめられた結合層と、少なくとも前記タイレイヤに付着せしめられた生体適合層とを含む細胞培養製品を提供する。生体適合層は、ポリマの表面酸化生成物を含み得る。当該ポリマは、少なくとも1つの酸化性モノマを含む。
【0024】
基板は、例えば、プラスチック、ポリマ性物質若しくはコポリマ性物質、セラミック、ガラス、金属、結晶性物質、貴金属若しくは準貴金属、金属性酸化物若しくは非金属性酸化物、遷移金属又はそれらの組合せを含み得る。実施形態において、結合層は、1つ以上の反応性官能基を含む化合物から得られ得る。1つ以上の反応性官能基は、例えば、アミノ基、チオール基、水酸基、カルボキシル基、アクリル酸、有機酸若しくは無機酸、エステル、無水物、アルデヒド、エポキシド等の基及びそれらの塩又はそれらの組合せを含む。結合層を形成する材料の選択は、基板の性質に依存し得る。例えば、シランは、酸化された無機性基板に関連した優れた結合層であり得る。当該酸化された無機性基板は、ガラス、SiOxを呈する基板、TiO2、Ta2O5、HfO2及びそれの混合物等の基板等である。あるいは若しくはさらに、前述の無機性基板は、SiOxオーバレイに組み合わせられ得る。チオール化合物は、金の基板が選択されるとき、優れた結合層であり得る。ポリリシン等の正電荷のポリマは、ポリマ性基板が使用されているとき、優れた結合層であり得る。
【0025】
実施形態において、結合層は、例えば、直線鎖若しくは分岐鎖アミノシラン、アミノアルコキシシラン、アミノアルキルシラン、アミノアリールシラン、アミノアリールオキシシラン等のシラン又はそれらの塩及びそれらの組み合わせから得られ得る。結合層を形成するのに使用され得る化合物の特定の実施例は、例えば、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(ベータアミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(ベータ‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐(ベータ‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルシルセスキオキサン、等の化合物及びそれらの組み合わせを含む。好ましい実施形態において、結合層は、例えば、アミノプロピルシルセスキオキサンであり得るし、表面酸化前のポリマは、例えば、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)であり得るし、及び、基板は、例えば、マイクロプレートまたは顕微鏡用スライドであり得る。実施形態において、結合層は、例えば、ポリ‐リジン、ポリエチレンイミン及び同様の実質的なポリマ又はそれらの組み合わせであり得る。
【0026】
実施形態において、酸化性モノマは、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン、ジビニルベンゼン、アルキルビニルエーテル、トリアルキレングリコールアルキルビニルエーテル、アルキレン、アクリルアミド、ピロリジノン、ジアルキルアクリルアミド、オリゴ(アルキレンオキシド)又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つで有り得る。
【0027】
実施形態において、表面酸化等の処理過程の際に生体適合層を形成するポリマは、例えば、結合層に共有結合され得るし、結合層に静電的に付着され得るし又はそれら双方であり得る。ポリマは、求核攻撃の影響を受けやすい少なくとも1つの求電子性基を含み得る。実施形態において、ポリマは、少なくとも1つのアミン反応基を含み得る。実施形態において、アミン反応基は、例えば、エステル基、エポキシド基、アルデヒド基等の基及びそれらの組み合わせを含み得る。実施形態において、アミン反応基は、無水基であり得る。ポリマは、例えば、ポリ(酢酸ビニル‐無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(無水マレイン酸‐アルト‐メチルビニルエーテル)、ポリ(トリエチレングリコールメチルビニルエーテル‐co‐無水マレイン酸)又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含むコポリマを含み得る。あるいは若しくはさらに、ポリマは、例えば、グラフトポリマ、ブロックポリマ、ランダムポリマ又はそれらの組み合わせを含み得る。ポリマは、例えば、ポリイソプレン‐グラフト‐無水マレイン酸、ポリスチレン‐ブロック‐ポリ(エチレン−RAN−ブチレン)‐ブロック‐ポリスチレン‐グラフト‐無水マレイン酸又は同様のポリマ及びそれらの組合せ等、無水マレイン酸、マレイン酸又は同様のモノマを任意で含み得る。実施形態において、望ましいポリマは、無水マレイン酸モノマ及び第1モノマから成るコポリマを含む。
【0028】
実施形態において、第1モノマは、例えばマレイン無水基の加水分解安定度を改善し得る。第1モノマは、例えば、特定されない結細胞培養製品に対する生体分子又は細胞の非特定性結合をも緩和し得る。実施形態において、第1モノマのモル%のバランスに対するコポリマ内の無水マレイン酸の量は、例えば、約5mol%から約50mol%、約5mol%から約45mol%、約5mol%から約35mol%、約5mol%から約25mol%、約5mol%から約15mol%及び中間量又は重複した量を含む同様の無水マレイン酸molパーセントであり得る。実施形態において、無水マレイン酸がコポリマ内のコモノマーとして選択される場合、無水マレイン酸は、例えば、第1モノマの約50モル%に対して約50mol%から、第1モノマの約60モル%に対して約40mol%から、第1モノマの約70モル%に対して約30mol%から、第1モノマの約80モル%に対して約20mol%から、第1モノマの約90モル%に対して約10mol%から等の中間量又は重複した量を含む量であり得る。第1モノマは、例えば、スチレン、メチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、ブチビニルエーテル、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、ピロリジノン、ジメチルアクリルアミド、オリゴ(エチレングリコール)、オリゴ(エチレンオキシド)等の酸化性モノマ又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含み得る。第1モノマは、例えば、約25mol%から約95mol%のコポリマ、約45mol%から約95mol%のコポリマ、約65mol%から約95mol%のコポリマ、約85mol%から約95mol%のコポリマ等の中間量又は重複した量を含む第1のモノマの量を含み得る。
【0029】
実施形態において、生体適合層は、例えば、約10Åから約2000Åまで、約10Åから約1500Åまで、約10Åから約1250Åまで、約10Åから約1000Åまで及び約10Åから約100Åまでの膜厚を有し得る。実施形態において、前記生体適合層を形成する前記ポリマ層は、初期に連続的である場合、長期の酸化処理又は強力な酸化処理の間、破壊され又は分断されて、基礎をなす結合層若しくは基板表面について被膜率が小さいか又は被膜が全くないギャップ又は領域を含む生体適合層を提供し得る。すなわち、生体適合層の不連続層又はフィルムが生じ得る。同様に、生体適合層の不連続層又はフィルムは、初期的に不連続なポリマ層に関してより小なる酸化又はより小なる酸化から生じ得る。したがって、分断した領域又は不連続層を有する生体適合層は、例えば、約0Åから約200Åの膜厚を有し得る。実施形態において、ポリマは、表面酸化前に、約10Åから約2000Åの膜厚を有し得る。
【0030】
実施形態において、製品は、望ましくは、第2結合層、第2ポリマ又はそれら双方をさらに含み得る。第2結合層はポリマに付着され得るし、第2ポリマは第2結合層に付着され得る。第2結合層は第1ポリマに共有結合され得し、第2ポリマは第2結合層に共有結合され得る。第2結合層は、例えば、エチレンジアミン、エチレングリコール又はオリゴエチレングリコールジアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等の化合物又はそれらの組合せ等、ポリアミン若しくはポリオールから得られ得る。実施形態において、第2ポリマは、例えば、エステル基、エポキシド基又はアルデヒド基、無水基又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つのアミン反応基で有り得る。第2結合層化合物は、第1ポリマに共有結合され、静電的に付着され又はそれら双方により付着され得るし、第2ポリマは、第2結合層化合物に共有結合され、静電的に付着され又はそれら双方により付着され得る。第2結合層化合物は、例えば、ポリアミン、ポリオール等の化合物又はそれらの組合せであり得る。第2結合層化合物は、例えば、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等の化合物又はそれらの組合せであり得る。第2ポリマは、例えば、少なくとも1つの無水基で有り得る。第2ポリマは、例えば、ポリ無水マレイン酸又は無水マレイン酸から得られ若しくは無水マレイン酸から派生されたコポリマであり得る。
【0031】
実施形態において、本開示は、基板と、前記基板に直接的に若しくは間接的に付着せしめられた生体適合層と、前記生体適合層に付着せしめられた第2結合層と、を含む細胞培養製品を提供する。少なくとも前記生体適合層及び前記第2結合層を含む前記製品の前記表面は、細胞培養の前に酸化されている。
【0032】
実施形態において、本開示は、上述したバイオセンサ製品を製造する方法を提供する。当該方法は、前記基板の前記表面に付着され且つ少なくとも1つの酸化性モノマを含むポリマ及び前記ポリマに付着せしめられた第2結合層を有する基板を提供するステップと、当該結合されたポリマ及び前記第2結合層の前記表面を酸化させて、前記基板上に生体適合層を形成するステップと、を含む。
【0033】
実施形態において、本開示は、バイオセンサ製品を製造する方法を提供する。方法は、表面にSMAを被膜した後にトリアミンと被覆ポリマを反応させる等の化学的修飾ステップを実行して、当該コートされた表面を酸化するステップに先立って、第2結合層を形成するステップ若しくは被膜が付着される基本的導波路の表面を変化させるステップのうち少なくとも一方又は双方を含む。
【0034】
これらステップは、酸化性UV−オゾン又はプラズマ処理に関連して化学的に修飾されないSMA表面と比べて、信号応答、分析動力学及び分析のロバスト性において改良性能を有する細胞培養製品、バイオセンサ又は双方に適切な表面を提供するために例示されてきた。この化学修飾を用いて、SMA表面は、弱付着性細胞株に対して、フィブロネクチン等の生物学的コーティングと同様に振る舞う。しかしながら、これら製造表面は冷却を必要としないし、生物製剤により被膜された表面を有するマイクロプレートよりも製造及び保存することがかなり容易である。
【0035】
実施形態において、基板の表面は、例えば、金属酸化物又は化合金属酸化物を含み得る。実施形態において、基板の表面は、例えば、Nb2O5−SiOxから構成され得る。例えば、共有され且つコーニング社に譲渡された米国特許番号7,218,802号、5,851,365,5,656,138号及び5,525,199号を参照されたい。
【0036】
実施形態において、前記第2の結合層は、例えば、ポリエーテルトリアミンであり得る。実施形態において、ポリエーテルトリアミンの分子量は、例えば、約200から約1000であり得る。実施形態において、ポリエーテルトリアミンの分子量は、例えば、約300から約500であり得る。実施形態において、ポリエーテルトリアミンの分子量は、前述の分子量の中間的値と範囲を含むことができる。
【0037】
実施形態において、本開示は、上述の処理によって細胞培養製品を提供する。
【0038】
実施形態において、本開示は、リガンドの分析を実行する方法を提供する。方法は、リガンドを少なくとも1つの製品を含み且つ生体適合層に関連付けられた生体物質を有するバイオセンサ製品に接触せしめるステップを含み、前記リガンドが前記生体物質に結合する場合、前記バイオセンサを用いて前記リガンドによって誘起された前記生体物質の応答を検出する。
【0039】
実施形態において、製品及び製造方法は、望ましくは、生体適合層に関連付けられた生体物質をさらに含む。生体材料または生体試料は。例えば、生体適合層に共有結合され得るし、生体適合層に静電的に付着され得るし又はそれら双方であり得る。実施形態において、生体材料は、例えば、天然の又は合成のオリゴヌクレオチド、天然の又は合成のヌクレオチド/ヌクレオシド、核酸(DNA又はRNA)、ペプチド天然の若しくは合成のアミノ酸を含む、抗体、ハプテン、生物学的リガンド、タンパク質膜、脂質膜、タンパク質、小分子、細胞等のエンティティ又はそれらの組合せであり得る。タンパク質は、例えば、ペプチド、タンパク質またはペプチドの小片、細胞膜結合性タンパク質又は細胞核タンパク質であり得る。
【0040】
実施形態において、本開示は、上記に例示され説明された細胞培養製品を製造する方法を提供する。方法は、当該基板に付着せしめられた結合層と、当該結合層に付着せしめられたポリマ層を有する基板を提供するステップを含む。前記ポリマは、少なくとも1つの酸化性モノマを含む。そして、方法は、前記ポリマ層の前記表面を酸化させて、前記基板上に生体適合層を形成するステップを含む。
【0041】
実施形態において、本開示は、反応性ポリスチレンコポリマの薄膜層によって被覆された固体基板における細胞の付着及び培養を改良する方法を提供する。当該反応性ポリスチレンコポリマの薄膜層は、プラズマ又はUVオゾンのストリームに対して暴露することによって酸化された。本明細書に開示されているように、k細胞の付着を改善する当該方法は、基本となる導波路の化学的組成における変化、例えば、プラズマ若しくは紫外線オゾン又はそれらの双方の前の1つ以上の結合層を有する薄膜のポリマ層の修飾を含み得る。修飾は、細胞に呈された表面層の官能基及び形態を強化し得るし、細胞付着および成長を改善せしめ得る。実施形態において、この表面を、「化学的に修飾された」SMA又は「修飾された」SMAと称する。
【0042】
実施形態において、開示された製品を製造する方法は、例えば、修飾ポリマ層の表面を酸化させることによって付加的に又は代わりに達成されて、ポリマにより処理された表面が第2結合層により処理されるとき、生体適合層が形成される。
【0043】
実施形態において、本開示は、固体基板において被膜された反応性ポリスチレンコポリマの薄膜を、細胞の付着及び培養を促進する表面に変換する方法を提供する。
方法は、薄膜等の反応性ポリスチレンコポリマ膜の化学的修飾(「修飾された」)及びプラズマ又はUVオゾンのストリームを用いた膜の処理(「酸化された」)を含む。本開示は、ポリスチレン反応性コポリマの選択的化学修飾を、アミン類又はアルコール類等の求核基を有する化合物に提供することによって、上記した同時係属中の米国特許出願第11/973,832号に開示された製品及び方法の更なる実施例を提供する。これにより、例えば、細胞の結合性が改善され、細胞の分析応答性が改善され、且つ、細胞の分析動特性が改善される。
【0044】
金属酸化物被膜又は混合金属酸化物被膜は、例えば、物理蒸着(PVD)処理によって堆積されて、意図した基板表面上に被膜が形成され得る。高密度(すなわち、連続し且つ実質的にホール若しくは欠陥が存在しない)金属酸化物又は混合金属酸化物膜の堆積は、共有され且つ譲渡された上述の米国特許に応じて達成され得る。
【0045】
本開示に関する強化は、TOPASAdvancedPolymers社から利用可能なTopas登録商標COC基板等の他のガラス、金属、プラスチック基板等の材料又はそれらの組合せを含む他の基板に利用可能である。2008年8月29日(SP07−191)に出願された共有され且つ譲渡された同時継続の米国特許出願第12/201,029号は、プラズマで処理され且つ生物学的活性物質と細胞の結合密度を高めた環状ポリオレフィンコポリマの表面について言及している。これらプラズマで処理された環状ポリオレフィンコポリマの表面は、共役を利用して、生物学的に活性な物質又は細胞に対してさらに強化され得る。
【0046】
金属酸化物又は混合金属酸化物の導波表面は、細胞を露出した金属酸化物若しくは混合金属酸化物又はポリマで被膜されたバイオセンサ表面に付着せしめ且つバイオセンサシステムの検出ゾーンの近傍において関連細胞を有するバイオセンサベースの細胞分析に適切である。
【0047】
本開示は、例えば、向上された細胞付着特性を含むさらなる利点を提供する。ここで、先に開示されたのと同一の洗浄条件を用いて表面から洗い落とされる細胞数がより少ない。先に開示された結合応答性と比較して、例えば、信号の強度及び信号の均一性に対して向上された分析結合応答性も実現される。さらに、Epic登録商標細胞ベースの分析応答は、多くの異なる細胞株に対して開示された酸化され且つアミン修飾されたSMAによって被覆されたセンサの表面と比較して、フィブロネクチンのみ被膜されたセンサ表面に匹敵するか又はそれよりも大きいと例証された。先に開示された方法に対して信号強度が非常に強化されているので、応答性は、現在、市販のEpic登録商標のフィブロネクチン被覆されたマイクロプレートに対して得られたものに匹敵する。さらに、細胞応答の動特性は、Epic登録商標フィブロネクチンプレート上で測定されたものと、より一致する。
【0048】
ポリマの表面を酸化させること又は酸化は、例えば、ポリマの表面をUV‐オゾン、プラズマ又はそれら双方にある期間接触せしめるステップを含み得る。暴露期間は、実験的に容易に決定され得るし、例えば、選択された材料、材料の膜厚、選択された酸化性媒質とその濃度及び表面に対する近接性等の事項に依存し得る。プラズマは、ポリマの酸化性炭化水素と相互作用して酸素含有機能性をポリマ表面に形成するイオン、原子、オゾン、酸素原子及び酸素分子の準安定種並びに電子を通常含む。さらに又はあるいは、酸素があるときにUV光でポリマ膜の表面を照射して、表面において光化学酸化を誘起して、機能性を含む酸素の容量を増大せしめ、例えば、C−H要素又は−CH=CH−要素を低減せしめ得る。
【0049】
実施形態において、本開示の製品又は準備方法は、生体適合層に関連付けられた生体物質を更に含み得る。生体材料は、例えば、約1時間以下から、約0.5時間以下から及び約0.1時間以下から十分な量にて、製品に付着され得る。生体材料は、生体材料の等電点(pI)以下の例えば約0.5から1pHのpHにて製品に付着され得る。
【0050】
実施形態において、更なる製品の態様又は準備ステップは、例えば、遮断剤を生体適合層に付着せしめるステップを含み得る。遮断剤は、例えば、正電気を帯びたデキストラン等の正電気を帯びた化合物、特に、ジエチルアミノエチルデキストランを含み得る。遮断剤は、ポリマを酸化させる前に又は望ましくはポリマを酸化させた後に製品に関連づけられ得る。
【0051】
実施形態において、本開示は、リガンドの分析を実行する方法を提供する。方法は、リガンドを、少なくとも開示された製品のうちの1つを含むバイオセンサ製品に接触せしめるステップを含む。当該バイオセンサ製品は、前記リガンドが前記生体物質に結合する場合、前記バイオセンサを用いて前記リガンドによって誘起された前記生体物質の応答を検出するような生体適合層に関連付けられた生体物質を有する。
【0052】
実施形態において、本開示は、リガンドの分析を生細胞を用いて実行する方法を提供する。方法は、本明細書において図示され説明されているように修飾表面を有する少なくとも1つの細胞培養製品を含むバイオセンサを提供するステップと、バイオセンサを用いて細胞を培養するステップと、リガンドを有する溶液を、細胞が付着されているバイオセンサに接触せしめるステップと、を含むので、細胞は、細胞培養製品の修飾表面に付着され、当該修飾表面内で付着され、当該修飾表面上で付着されるようになり、リガンドが表面関連細胞と反応する場合、バイオセンサを用いて、リガンドによって誘起された細胞の応答を検出する。
【0053】
実施形態において、相互作用リガンドは、例えば、刺激物質、治療用化合物、治療候補物質、予防的候補物質、予防的物質、化合物、生物学的分子、ペプチド、タンパク質、生物試料、薬物候補の小分子、薬物候補の生物学的分子、薬物候補小分子‐生物の結合体、病原体又はそれらの組み合わせ等、生体適合層と関連付けられた生体材料に対する補助的エンティティを含み得る。実施形態において、
結合されたリガンドは、あらゆる適切な方法、例えば、導波共鳴グレーティング(RWG)システム、表面プラズモン共鳴(SPR)、インピーダンス、マス分光分析及び同様の方法等の光学バイオセンサを含む蛍光標識非依存性検出方法、によっても検出され得る。
【0054】
特に指定しない限り、本明細書で使用された不定冠詞“a”“an”、又は対応する定冠詞“the”は、少なくとも1つ、又は1つ以上を意味する。
【0055】
当業者にはよく知られている簡略名が使用され得る(例えば、時間又は(複数の)時間に対して「h」若しくは「hr」、(複数の)グラムに対して「g」若しくは「gm」、ミリリットルに対して「mL」及び室温に対して”rt”、ナノメータに対して「nm」等の簡略)
要素、成分、添加剤、細胞のタイプ、抗体等、及びその範囲に対して開示された特定の値又は好ましい値は、例示する目的のためにあるに過ぎず、それらは他の画定された値又は画定された範囲内の他の値を除外しない。本開示の構成、装置、及び方法は、いかなる値を有するこれらを含み、或いは、本明細書に記載された値、特定の値、より特定の値、及び好ましい値のいかなる組合せも有するこれらを含む。
【0056】
[バイオセンサベースの細胞分析とバイオセンサ基板]
一般に、無標識細胞に基づく分析は、生体細胞におけるリガンド誘起の応答を観測するためにバイオセンサを採用している。バイオセンサは、光学的、電気的、熱的、音響的、磁気的トランスデューサ等のトランスデューサを通常利用しており、分子認識事象又はリガンド誘起の細胞層の変化を定量化可能な信号に変換する。本開示は、ほとんどすべてのタイプのバイオセンサ表面に利用可能であるものの、RWGバイオセンサと電気バイオセンサのみが例示されている。
【0057】
RWGバイオセンサ
RWGバイオセンサは、基板(例えば、金属酸化ガラス)、埋め込まれたグレーティング構造を有する導波薄膜及び細胞層を含む。RWGバイオセンサは回折格子によって導波部に対する光の共鳴結合を利用し、溶液表面の界面において全内反射が生ずる、界面において次々に電磁場が形成される。この電磁場は事実上エバネッセントであり、電磁場はセンサの表面から指数関数的に減衰することを意味している。電磁場が初期値に関して1/eに減衰する距離は、侵入深さとして知られており、特定のRWGバイオセンサに関する設計の関数であり、通常約200nmのオーダーである。このタイプのバイオセンサは、かかるエバネセント波を利用して、センサの表面の近傍の若しくはセンサの表面における細胞層のリガンド誘発の変化を特徴付けている。
【0058】
電気バイオセンサ
電気バイオセンサは、基板(例えば、プラスチック)、電極、及び細胞層から構成され得る。この電気的な検知手法において、細胞は基板上に並べられた小さな金の電極上に培養され、システムの電気インピーダンスが経時的に調べられる。インピーダンスは細胞層の電気伝導率の変化の指標である。通常、固定周波数若しくは変動周波数におけるわずかに一定の電圧が、電極又は一連の電極に印加され、回路を介した電流が時間が時間とともに観測される。リガンド誘起の電流変化によって、細胞の応答に関する指標が与えられる。細胞全体について検出するインピーダンス測定の利用は1984年に最初に実現された。それ以来、インピーダンスベースの測定は、細胞の付着及び拡散、細胞の微小運動、細胞の構造変化、及び細胞の死を含む広い範囲における細胞の事象を研究するために利用されてきた。古典的なインピーダンスシステムは、小さな検出電極及び大きな基準電極の使用に帰属して、分析に関する変動性が高いという欠点を有する。この変動性を克服するために、CellKey system(MDS Sciex、南サンフランシスコ、カリフォルニア州))やRT‐CES(ACEA Biosciences株式会社、サンディエゴ、カリフォルニア州)等のシステムの最新世代は、ミクロ電極アレイを有する集積回路を利用している。
【0059】
RWGバイオセンサを用いたGPCR活性化の光学信号
細胞は、通常数十ミクロンの比較的大きい寸法の動的な物体である。RWGバイオセンサは、細胞の底部におけるリガンド誘起の変化の検出を可能にし、エバネセント波の侵入度によって決定される。その上、光学的バイオセンサの空間分解能は、入射光源のスポットサイズ(約100ミクロン)によって決定される。したがって、一般に、非常に密集した細胞層が、最適な分析結果を得るのに使用され、センサの構成は、基板、導波薄膜及び細胞層から成る三層導波複合体と見なされ得る。細胞生物物理学と組み合わせて3層導波バイオセンサ理論に従って、我々は、細胞全体についての検出において、有効屈折率におけるリガンド誘起の変化、すなわち検出された信号Nは数式(1)によって規定されることを見出した
【0060】
【数1】
【0061】
尚、S(C)は細胞層に対するシステム感度であり、ncはバイオセンサによって検知された細胞層の局所的な屈折率における配位子誘起の変化である。ΔZcは細胞層への侵入深さであり、αは特定の屈折率の増大(タンパク質に対しては約0.18/mL/g)であり、ziは、質量の再分配が生ずる距離であり、dは細胞層内の薄片の架空の厚さである。ここで、細胞層は垂直方向において均等に離間された部分に分割される。我々は、検出された信号が細胞層の底部の屈折率ncの変化に一次的に正比例することを想定した。細胞内の所定の容積の屈折率は、主にタンパク質等の生物分子の濃度によって主に決定されると仮定すると、ncは、検出ボリューム内の細胞性ターゲット又は分子集合の局所濃度変化に正比例する。重み付け因子exp(−zi/Zc)は、指数関数的に減衰するエバネッセント波の特性を考慮して、生ずる局所的タンパク質濃度の変化について考慮されている。したがって、検出された信号は、センサの表面から異なる距離で生じる質量再分布の和であり、各々が全ての応答に対して不均一に貢献する。数式(1)が提案していることは、局所的なタンパク質濃度変化の結果として並びに局所的なタンパク質濃度変化が生ずる場所及び時間の結果として、RWGバイオセンサを用いて検出された信号は主として垂直な質量再分布に対して敏感である。検出された信号は、動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号と呼ばれている。
【0062】
細胞の信号伝達は、一連の空間的であり且つ時間的な事象からなる秩序化され且つ規制された態様にて通常生ずる。例えば、Gタンパク質‐共役受容体(GPCRs)の活性は、メッセンジャーの代替、cytoskeletalの再モデル化、遺伝子発現、細胞接着の変化等の事象を含む一連の空間的であり且つ時間的な事象を生じせしめる。各セル事象は、反応速度、所要時間、振幅、及び質量の移動に関かんするそれ自身の特性を有する。したがって、これら細胞の事象が生じる場所に依存して、これら細胞の事象が全体的なDMR信号に対して異なって寄与し得ることが合理的に想定されている。種々のGPCRsをターゲットとする作用薬のパネルを使用する際に、
我々は、調節された信号伝達経路を反射するヒト類表皮腫癌A431細胞内における3つのクラスのDMR信号を特定した。当該3つのクラスのDMR信号は、調節された信号伝達経路を反射する。受容体が結合されるGタンパク質に依存して、各々が一つのクラスのGPCRsと関連付けられているので、得られたDMR信号は、それぞれGq−DMR、Gs−DMR及びGi−DMR信号と命名した。各クラスのDMR信号は、異なるクラスのGPCRsを介して調節された固有の信号の積分を反映して、異なる運動特性及び動的特性を示す。DMR信号の固有の特性が、親のないGPCRsのGタンパク質結合機構を特定するのに使用され得る。
【0063】
GPCR活性化のバイオインピーダンス信号、−
典型的なインピーダンスベースの細胞分析において、細胞は移動されて培養ウェルの底に並べられた金の電極に接触される。センサーシステムの総インピーダンスはバイオセンサを囲むイオン環境によって主として決定される。電界を印加すると、イオンは電界によって指向された運動を行い、濃度勾配による拡散を受ける。細胞全体についての検出において、全電気インピーダンスは4つの成分、すなわち、電界溶液の抵抗、細胞のインピーダンス、電極/溶液界面におけるインピーダンス及び電極/細胞界面におけるインピーダンスを有する。さらに、細胞のインピーダンスは2つの成分、すなわち、抵抗及びリアクタンスを含む。細胞のイオン強度に関する伝導特性は抵抗成分を与える。これに反して、不完全なコンデンサとして作用する細胞膜は周波数に依存する反応要素に寄与する。したがって、全インピーダンスは、細胞の生存能力、細胞の密集度、細胞の数、細胞の形態、細胞の付着度、イオン環境、細胞内の水分及び検出周波数を含む多くの因数の関数である。
【0064】
RT−CESシステムにおいて、印加されたこの小電位の割合が細胞内部に連結される。細胞に印加されたかかる信号は、典型的なほ乳動物細胞の静止膜電位よりもはるかに小さいと信じられているので、細胞の機能に対してほとんど障害にならなないか若しくは全く障害にならない。RT−CESシステムは、インピーダンスのこれら変化を測定し、細胞インデックスと呼ばれるパラメータとしてそれを表示する。数式(2)に従って、細胞インデックス(CI)が計算される
【0065】
【数2】
【0066】
ここで、Nは、インピーダンスは測定され振動数ポイントの数(例えば、10kHz、25kHz、及び50kHzに対してN=3)であり、R0(f)とRcell(f)は、ウェルにおいて細胞が存在しない場合と存在する場合の周波数電極抵抗である。
【0067】
CellKeyシステムにおいて、センサシステムインピーダンスの変化は、受容体刺激に応答して生ずる細胞層の複雑なインピーダンス(デルタZまたはdZ)変化に帰属される。低周波数において、印加された小電圧により、層内の個々の細胞周辺に流れる細胞外電流(iec)が誘起される。しかしながら、イオンチャンネルに起因する細胞膜を介した伝導電流は、低レベル測定周波数で重要であり得る。高周波数において、それらは、細胞膜に侵入する細胞内電流(itc)を誘起する。各ウェルに対して測定された電流に対する印加電圧の比が、オームの法則により説明されるように、インピーダンス(Z)となる。
【0068】
細胞が受容体リガンド等の刺激にさらされるとき、アクチン細胞骨格の調節等の複雑な細胞性事象を生じせしめる信号変換事象が、活性化される。当該複雑な細胞性事象は、例えば、細胞の密着性、細胞の形態、及び体積、細胞間相互作用における変化を生じせしめる。これら細胞の変化は、細胞外電流及び細胞内電流の流れに対して個別的又は集団的に影響を与え、これにより、測定されたインピーダンスの強度及び特性に影響を与える。図4は、受容体が連結されるGタンパク質に依存して、3つのクラスのGPCRs活性化を介して調節された3つのタイプのインピーダンス信号を示している。分布は、CellKeyシステムを使用して得られる。また、同様の分布が、RT−CESシステムを使用して記録された。これらインピーダンス信号は、異なるクラスのGPCRsの活性化に応答して、インピーダンスによって測定された細胞パラメータに影響を与えるアクチン細胞骨格に与える異なる効果に起因していることが信じられている。Gq−GPCRs及びGi−GPCRsの活性化によって、アクチン重合が増強されることが示されているものの、Gs−GPCRsの刺激によって、アクチン解重合が引き起こされる。
実験
Corning登録商標Epic商標システムは、細胞ベースの創薬を目的とした無標識高スループットスクリーニングのためのツールを提供する。実施形態において、Epic登録商標システムは、SBS(Society for Biological Screening)標準の384ウェルマイクロプレートフォーマットを使用し得る。これにより、生細胞は、マイクロプレートの表面において直接培養される。様々なマイクロプレート表面が開発されており、適切な細胞付着性と成長をサポートしている。チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO:Chinese hamster ovary cells)、A431細胞、HeLa細胞、Cos7細胞及びヒト線維芽細胞を含む一次細胞等の形質転換細胞株等の適度に付着性を有する細胞に対して、例えばSiOx、TiO2及びシリコン硝酸態を含む無機表面材料は、良好に作用する。HEK293細胞といくつかの設計されたCHO細胞等の弱付着性細胞に対して、例えば、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、フィブロネクチンタンパク質分解片、コラーゲン等の材料を含み且つ細胞の付着性を促進することが知られている生体材料によって修飾されたマイクロプレート表面は、細胞付着性、増殖をサポートし、強健な細胞分析を可能にする点において、無機表面においてかなりの改善を例証してきた。これは、「バイオセンサ細胞分析のための表面及び方法」という発明の名称の2007年2月28日に出願された米国仮特許出願第60/904,129号に開示されている。しかしながら、これら生体ポリマ被膜は多種の細胞株に応じて特定のレベルの変化性をも示した。被膜の安定性が限定されていること、細胞生物学に及ぼすこれら細胞外マトリックスの生じ得る不要な影響、及び、被膜のコストは、利用可能な技術に関連付けられた重要な関心事である。したがって、弱付着性細胞を含む広範囲な細胞タイプに適切な細胞付着性と確固たる細胞分析をサポートする合成表面の開発が、無標識バイオセンサベースの細胞分析又は同様のバイオセンサシステムに望まれる。かかる合成表面は、改善された能力を提供し、バイオセンサ分析システム等の培養システムに対して広範な利用性を提供し得る。
【0069】
コーニング登録商標CellBIND登録商標表面、すなわち、特許化(米国特許第6,617,152号)された生体組織培養基板のプラズマ表面処理は、弱付着性細胞に対する付着性をサポートすることが知られている。CellBIND登録商標処理中に、高反応性表面プラズマは、バルクポリスチレン基板の表面と反応して、細胞の付着及び拡散において望まれる表面粗度及び親水性特性を生じせしめる。CellBIND登録商標処理は、培養の表面を処理するマイクロ波源を使用する。その処理は、かなり多くの酸素を細胞培養表面に組み入れることによって、細胞の付着性を完全し、少なくとも細胞培養の表面により多くの親水性を提供して、表面安定性を増大せしめる。Corning登録商標CellBIND登録商標の表面、特性、仕様、アプリケーション等の情報が、例えば、「Corning登録商標CellBIND登録商標表面:細胞の付着性を強化するための改良された表面、技術報告書」(www.corning.comを参照されたい)に言及されている。
【0070】
本開示は、実施形態において、例えば、Epic登録商標マイクロプレート表面における高酸化表面を提供する。標準生体組織培養処理表面である標準の表面と比較して、表面修飾されたマイクロプレートは、例えば、弱付着性細胞(HEK293)及び中間付着性細胞(RMS13)について改善された細胞付着性特性及び改善された細胞拡散特性を有することが例証されている。
【0071】
細胞培養及び分析のための容器基板
細胞培養及び分析に使用される多くのタイプの容器基板が存在する。実施例は、スライド、ペトリ皿、マルチ‐ウェルマイクロタイタープレート(例えば、4‐ウェル、6‐ウェル、96‐ウェル、384‐ウェル、1536‐ウェル等)、フラスコ、ローラーボトル及び同様の製品を含む。培養された細胞の用途に依存して、異なる構成の容器基板が望まれる。例えば、共通の細胞生物学研究に、望ましくは、細胞は、スライド、ペトリ皿、又は、低数のウェルを有するマルチ‐ウェルマイクロタイタープレートにおいて培養される。しかしながら、細胞分析、特定の高スループット又はハイコンテントスクリーニングにおいて、望ましくは、細胞は、大なる数のウェル(例えば、96ウェル、384ウェル又は1536ウェル)を有するマルチ‐ウェルマイクロタイタープレートにおいて培養される。生物処理アプリケーションにおいて、望ましくは、細胞は、フラスコ又はローラーボトル内で培養される。多くの細胞培容器は、ポリマ性物質で通常製造され、生体組織の培養処理又はプラズマ処理により通常あらかじめ処理される。
【0072】
本開示の方法は、ポリスチレン含有コポリマ等のポリマの薄膜を用いて導管を被覆することによって導管基板を修飾するのに使用され得るし、それに続いて、プラズマ又はUV‐オゾン等の酸化処理が行われるので、得られた酸化表面は、細胞の付着及び成長を促進して、細胞活性に関する分析を可能にする。ポリスチレン含有コポリマ等のポリマ薄膜は、他の適切な官能基を含み得る。当該適切な官能基は、例えば、無水物(例えば、マレイン)、エポキシ、カルボキシ、カルボン酸、ヒドロキシル、アミン、チオール、及び、例えば、共有結合相互作用、電荷‐電化相互作用等の相互作用を介した容器表面に対する付着に利用可能である同様の官能基、又はそれらの組み合わせを含む。あるいは若しくはさらに、容器表面は、結合層により修飾され得るので、結合層は容器表面に共有結合され、同時に、例えばポリスチレン等の酸化可能なモノマユニットを含むポリマ又はコポリマ等の適切なポリマとの相互作用及びそれらポリマに対する付着を可能にする官能基を呈する。スチレン等の酸化可能ユニットの存在によって、プラズマ又はUV‐オゾンのストリーム用いた処理の際に、ポリマ薄膜が酸化され得るし、酸素表面種が増大され得る。ポリマの無水官能基は、アミンを呈する結合層と相互作用して、ポリマを表面に固定し得る。酸化されたポリマは、強化された培養特性において細胞との相互作用し得るポイントを提供し得る。
【0073】
本開示は、生細胞と相性が良い薄膜又は層表面を基板に作成する方法、例えば、CellBIND登録商標に類似した表面をEpic登録商標マイクロプレート等のバイオセンサーマイクロタイタプレートに作成する方法を提供する。かかるマイクロプレートの表面は、広範囲な細胞株に適切な細胞付着及び成長を可能にし、また、バイオセンサを使用することで確固とした細胞ベースの分析を可能にする。開示された表面修飾されたマイクロプレートの観測された性能は、バルク修飾表面と同程度であった。本開示のこの材料及び方法は、弱付着性細胞といくつかのいわゆる難しい細胞株を有する分析と予備試験に特によく適応されている。
【0074】
図1は、本開示のSMAポリマを呈するバイオセンサマイクロプレートの酸化表面の準備の概略図である。バイオセンサマイクロプレートの各ウェルは、埋め込まれたバイオセンサを有し得る。バイオセンサは、基板の基礎となるグラスと、Nb2O5等の高屈折率材料により製造された導波薄膜と、導波薄膜上に堆積されたSiO2薄膜と、を含む。導波路フィルムは、周期的に埋め込まれたグレーティング構造を有する。殺菌するためにUV/オゾンを用いて予備洗浄され且つ予備処理された清浄な市販のEpic登録商標マイクロプレート等のマイクロプレートのSiO2表面は、10分間水溶液中で5%のアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)を用いて処理されて、アミンを呈する表面を有するマイクロプレートが与えれた。得られたマイクロプレートは、水及びエタノールで迅速に洗浄され、過剰なAPSが除去された。被覆されたプレートは、55℃にて1.5時間硬化され、それに続いて、エタノールを用いて付加的な洗浄が行われた。コートされたマイクロプレートは、脱水機にかけられ真空乾燥された。ポリマ性APSは、SiO2表面上に共有結合し若しくは固定し、又は、シラン化学反応を介して相当の表面上に共有結合し若しくは固着する。得られたポリマ性APSは、結合層として機能する。
【0075】
スチレン/無水マレイン酸(SMA:styrene/maleic anhydride)のコポリマは、アミンを呈するマイクロプレート表面に共有結合され、ポリスチレン無水マレイン酸コポリマ(SMA)被覆されたマイクロプレートを与える。ここで、示されたSMAコポリマは、例えば、約10g/mLの濃度にて表1にみられるように、適切な溶剤で溶解され、被覆された。SMAコポリマは、Sigma−Aldrichから利用可能である。
【0076】
【表1】
【0077】
処理は、完全な可溶化のための広範な加熱/超音波処理を必要とし得る。
【0078】
各々のポリマ溶液は、50μg/mL又は200μg/mL等の所望の被膜濃度までさらに希釈され、約1時間、APS表面被覆されたプレート上で固定されたアミノ基に接触され且つ当該アミノ基と反応された。プレートが溶剤と無水エタノールによって洗浄されて、付着されていないポリマが除去されたのちに、SMAによってコートされたプレートは、乾燥され、プラズマ処理等のポリマ表面酸化処理が実行されて、酸化されたSMA表面が形成された。SMAコーティングは、また、代替の被膜法を使用しても利用され得る。当該代替の被膜法は、例えば、傾斜コーティング、ドローバー被膜、スピン被膜、化学蒸着及び同様の被膜方法、又はそれらの組合せである。上述のレイヤ‐バイ‐レイヤの方法又は連続的被膜方法(すなわち、APSを基板へ適用し、SMA等のポリマをAPS被覆基板へ適用し、APS被覆基板上に被覆されたSMA等のポリマの酸化表面処理を適用する)は、結合層を有しない基板表面上のSMAポリマの受動的な吸着によって準備された表面被覆と比較して、洗浄に関して、優れた安定性を有する表面被膜を提供し得る。結合層(例えば、被覆されたAPS被膜された)基板に対するSMA若しくは同様のポリマの共有結合性付着は、例えば、SMAとAPS層の間の電荷相互作用によって高められた安定性を提供し得る。得られた処理後のプレートは、本明細書に開示されているように、表面酸化処理が実行されて、表面酸化されたSMAアウタ層又はトップ層を有する表面修飾マイクロプレートが提供された。当該表面修飾マイクロプレートは、例えば、生細胞等の材料との相互作用に利用可能である。
【0079】
図2は、本開示の表面のFTIRスペクトルを重ね合わせたものを示している。当該表面は、SMA(200)、様々な時間、すなわち、1分(205)、3分(210)、7分(215)及び14分(220)でUV−オゾン修飾されたSMA、及び、比較のためのCellBIND登録商標表面(225)である。
【0080】
本開示の酸化されたポリマ表面は、例えば、SMA表面の紫外線/オゾン処理によっても、達成され得る。ガラスの顕微鏡用スライドは、まず、APSの5%溶液を用いて、10分間被膜された。スライドは、水で洗浄され、そしてエタノールで洗浄され、窒素流の下に乾燥された。SMA(ポリスチレン‐アルト‐無水マレイン酸の部分的なメチルエステル;約350,000のMw)溶液が、約10mg/mLの濃度の無水N‐メチルピロリジノン(NMP)におけるSMAポリマの溶解によって準備された。NMPにおけるSMAは、無水IPAにおいて希釈され、2mg/mLの濃度を有する最終的なSMA溶液が製造された。APS被膜されたスライドは、10分間、SMAの2mg/mLの溶液に浸され、SMA溶液から除去され、エタノールを用いて洗浄が行われた。スライドは、SMA表面の基線測定(図2,曲線200)を得るために、偏光変調赤外反射吸収分光(PMFTIRRAS)によって分析された。SMA表面がUVオゾン処理されたとき、表面からの無水マレイン酸残基の損失は、1857cm-1及び1783cm-1において、バンド強度の減少によって観測された(図2,曲線205,210及び215)。また、1495cm-1及び1445cm-1におけるスペクトルバンドの低減に対応するスチレン基の消失に起因する芳香族特性の損失があった。1750cm-1−1700cm-1のバンド強度における増加は、ポリマ表面におけるカルボニル基とカルボキシレート基の形成を示した。脱プロトン化カルボキシレート基における増加は、1695cm-1−1550cm-1において観測されたショルダ構造を生じせしめた。理論によって制限されないものの、これら吸収帯域が非常に広範であるので、おそらく、カルボニルとカルボン酸の分子環境の広範な分布が存在すると信じられている。最終的に、アルコールのO−Hの変形を示す1500cm-1−1300cm-1からの広帯域の形成があった。14分間のUV/オゾン処理を使用して取得された酸化されたSMA表面は、ベアガラススライド(データは示されていない)とほとんど同じFTIRスペクトル(220)を生じせしめた。これは、14分間のUV/オゾン処理によってガラス基板からすべてのSMA被膜が除去されることを示している。しかしながら、7分間のUV/オゾン処理を使用して取得された酸化されたSMA表面は、FTIRスペクトル(215)を生じせしめた。FTIRスペクトル(215)は、標準CellBIND登録商標バルクポリスチレンマイクロプレート表面(225)のものと類似する。それにもかかわらず、これら結果が示すことは、適切な強度及び時間が与えられると、UV/オゾン処理は、SMAを呈する表面酸化を生じ得るので、これらの表面は、化学的組成と細胞培養特性において標準CellBIND登録商標ポリスチレン表面を模倣する。
【0081】
図3A及び3Bは、7.5時間プラズマ処理表面に培養した後のHEK293細胞の光学顕微鏡イメージ(10x)を示している。図3Bに示されているように、HEK293細胞は、(すなわち、ガラス基板のプラズマ処理はAPS被膜及びSMAポリマ被膜を全く有していない)プラズマによって処理されたベアガラス基板のものと比較すると、プラズマ処理されたSMA(ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸))の表面において良好な拡散を示す(図3A)。これは、UV‐オゾンプラズマ処理にさらされた全体のEpic登録商標マイクロプレートの多くのセクションのうちの1つであった。
【0082】
図4A及び4Bは、プラズマ処理表面において一晩培養されたHEK293細胞の光学顕微鏡像(10x)を示している。図4Aは、HEK293細胞に関するものであり、プラズマ処理されたSMAの表面に一晩培養した後の通常の形態と予想された密集度を示している。ここで、SMAは、部分的なイソオクチルエステルとクメン終端されたコンテンツを有するポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)である。図4Bは、同じモノ層が緩衝溶液(すなわち、20mMのHEPESを有するハンクス均衡塩類溶液(HBSS))を用いた通常の洗浄に耐え得ることを例示している。
【0083】
細胞付着、拡散、及び増殖をサポートするプラズマ処理されたSMAの表面の能力は、384ウェルのEpic登録商標マイクロプレートにおいて評価された。HEK293細胞は、プラズマで処理された非被覆表面(図3A)と比較して、プラズマ処理されたSMA表面(S2)(図3B)において良好な拡散を示した。HEK293細胞の一晩の培養は、通常のTCTフラスコを用いて観測されたように(データ示されていない)、プラズマ処理されたSMAの表面における正確な形態(図4A)を示している。細胞は、プラズマ処理されたSMA表面(S5)(図4A)において一晩の後に、正常の速度で成長し、密集度に達した。これは、標準のEpic登録商標マイクロプレート表面及びTCTフラスコの性能と一致した。しかしながら、HEK293細胞は、プラズマ処理されたSMA(S5)の表面における細胞単層にとって示されているように(図4A)、標準のEpic登録商標マイクロプレートの表面よりはるかに良好なプラズマ処理されたSMA表面に付着するようである。これは、市販のTCTマイクロプレートに培養されたHEK293細胞の振る舞いと一致した。しかしながら、HEK293細胞は、HBSS緩衝液(Fig.4B)を用いた激しい洗浄後にプラズマ処理されたSMA(S5)の表面における細胞単層にとって示されているように、これらTCTマイクロプレートの表面よりもはるかに良好なプラズマ処理されたSMAの表面に付着するようである。HKE細胞は、HEK293細胞の弱付着性特性が原因で、標準のTCT表面に対する同じタイプの洗浄を通常耐えることができない。図4Aは、洗浄前の単層を示している。これに反して、図4Bは洗浄後の同一の単分子層の位置を示している。
【0084】
CHO−K1、ネズミムスカリン作動性受容体サブタイプ1(CHO−M1)を安定して発現する設計されたCHO細胞株、A431及びRMS13細胞を含む他の4つの細胞株は、調べられた。それら細胞はすべて、多種のレベルで改善された付着性及び拡散性を示した。図5A及び5Bは、プラズマ処理表面において一晩若しくは16時間培養されたRMS13細胞の光学顕微鏡像を示している。図5Aにおいて、RMS13細胞は、プラズマ処理されたSMAの表面に一晩培養した後に、通常の形態と予想された通常の密集度、すなわち、部分的なイソオクチルエステル及びクメンにより終端されたコンテンツを有する酸化されたポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)を示す。図5bにおいて、単分子層(10xの拡大画像)は、強固であることが示され、洗浄液後に元の状態を維持し、これらTCTマイクロプレート表面のRMS13細胞と同程度であった。
【0085】
CHO−K1,CHO−M1及びRMS13を含む他の3つの細胞株は、研究試験された。それら細胞はすべて、多種のレベルで改善された付着性及び拡散性を示した。図5Aにおいて、RMS13細胞は、プラズマ処理されたSMA表面に一晩培養した後に(S5)、正確な形態と通常の密集度を示す。単分子層は、プラズマ処理が行われていない非被覆表面(図5B)上のRMS13細胞と比較して、洗浄液後に元の状態を維持する。
【0086】
細胞ベースのGPCR分析が実行され、温度制御環境及び任意の液体処理システムを有するRWG検出器を含むコーニングEpicシステムを使用してすべてのプラズマ処理表面について検査された。検出システムは集積された光ファイバの中心に設けられ、384ウェルにおいて反射されたビームについてリガンド誘起の波長シフトが測定された。細胞は、密集するまで、384ウェルのEpic2マイクロプレート内で培養された。細胞は、分析緩衝液を用いて洗浄され、分析を行う前に、1.5時間、選択温度にて、装置内で培養された。GPCRsは多種のリガンドにより活性化され、得られたDMR(動的質量再分布)信号が、記録された。
【0087】
図6A乃至6Cは、8マイクロMのSFLLR−アミドによって誘起され且つ3つの異なるタイプの表面において培養されたHEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。図6Aは、フィブロネクチン被覆されたEpic登録商標マイクロプレート表面における信号を示している。図6Bは、被膜されていないEpic登録商標マイクロプレート表面における信号を示している。図6Cは、プラズマ処理されたSMA表面、すなわち、ポリマ試料S5又は50μg/mL(600)と200μg/mL(605)の2つの被膜濃度において部分的なイソオクチルエステル及びクメンにより終端されたコンテンツを有するポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)の信号を示している。本開示における各々の信号分布は8つの繰り返された分析の平均を表している。SFLLRアミドによって誘起され且つ両方のプラズマ処理されたSMAの表面では培養されたHEK293細胞のDMR信号が、形状と振幅に関し、低密度フィブロネクチン被覆表面で取得されたものと同程度であった。一方、被膜の膜厚に対するRWGバイオセンサベースの細胞分析の感度に帰属して、皮膜に使用されるSMAの高濃度により信号は小さかった。使用されるSMAの濃度が高ければ高いほど、被膜の膜厚は大きくなり、且つ、バイオセンサベースの細胞分析の敏感性が低下してしまう。これは、バイオセンサの侵入深さ、検出ゾーン、またはセンシング容積が限定されてしまうからである(Fang, Y他、"Resonant waveguide grating biosensor for living cell sensing," (2006) Biophys.J., 91, 1925-1940)。センサ表面から離れて付着せしめられた細胞は、通常、リガンド誘起の応答が低い。対照的に、同じ濃度のSFLLR‐アミドは、被膜されていない表面に培養されたHEK細胞において変動するDMR信号を生じせしめる。これは、増大するDMR相又は正のDMR相(P−DMRと称する)を示すに過ぎない。かかるタイプのDMR信号の出現は、細胞がセンサ表面に弱く付着されることを示している。被膜されていない表面上のHKE細胞は、例えば、分析バッファと媒体を交換することによって、非常に慎重で温和な洗浄液を必要とする。あるいは、細胞単分子層は離間され得る。対照的に、酸化されたSMA表面又は低密度フィブロネクチン表面のいずれか一方の細胞単分子層は、より精力的に洗浄され得る。SFLLR−アミド(化学式H-Ser-Phe-Leu-Leu-Arg-NH2のペプチド配列)は、HEK細胞における内因性のプロテアーゼ活性化受容体サブタイプ1(PAR1)に対する作用薬である。PAR1は、HEK293細胞、A431細胞、CHO−K1細胞,CHO−M1細胞及びRMS13細胞を含む多くのタイプの細胞で偏在して発現される。異なる細胞株でのPAR1の活性化は、異なる信号伝達経路と信号伝達ネットワーク相互作用を生じせしめる。これは、異なるタイプのDMR信号を生じせしめ得る(図10にまとめられている)。これは、得られたDMR信号は、積分された細胞応答であり、ダウンストリームにある多くの信号伝達事象の寄与から構成され、特に、これらは、バイオセンサの検出容積又は検出ゾーン内の細胞性材料の顕著な再分布を生じせしめるからである。
【0088】
同一のプラズマ処理されたSMA表面(S5, 50μg/mLにて被覆)が、CHO−K1細胞,CHO−M1細胞及びRMS13細胞を含む他の3つの細胞株を用いて評価された。図7A乃至7Cは、SFLLR‐アミドによって誘起された3つの異なるタイプの細胞株のDMR信号を示している。当該細胞株は、5マイクロMの同一のSFLLRアミドプラズマ処理されたSMA表面において培養された。当該SMA表面は、すなわち、50μg/mLにて被覆され且つ部分的なイソオクチルエステル及びクメンにより終端されたコンテンツを有するポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)である。図7Aは、培養されたRMS13細胞を示している。図7Bは、培養されたCHO−K1細胞を示している。図7Cは、培養されたCHO−M1細胞を示している。各々は異なった特性を示したが、同一の酸化されたSMA表面における各細胞株のDMR信号は、被膜されていないCorning登録商標Epic商標バイオセンサ表面と、低密度フィブロネクチンによって被膜さえrたEpic登録商標バイオセンサ表面(デーさは示されていない)とにおいて得られた対応するDMR信号と同程度であった。これら結果が示すことは、酸化されたSMA表面が、異なるタイプの付着性細胞の適切な付着及び成長をサポートし、また、すべての4つの細胞株のGPCR分析をサポートすることである。
【0089】
図8A乃至8Cは、5マイクロMのSFLLRアミドによって誘起されたRMS13細胞のDMR信号を示している。当該RMS13細胞は、5つの異なるタイプのプラズマ処理SMA表面において培養された。図8Aは、50μg/mLにて被覆されたプラズマ処理SMA表面を示している。5つの異なるタイプのプラズマ処理SMA表面は、以下の通りである。
【0090】
ポリ(スチレン‐アルト‐マレイン酸)、ナトリウム塩;(800)、S1、
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)(805)、S2、
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、クメン終端、(810)、S3;
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、部分的シクロヘキシル/イソプロピルエステル、クメン終端、(815)、S4、及び
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、部分的なイソオクチルエステル、クメン終端、(820)、S5。
【0091】
図8Bは、200μg/mLで被覆された点を除いて、図8Aのように被覆された材料を使用してプラズマ処理されたSMA表面に対する同様の結果を示している。
S1(830)、S2(835)、S3(840)、S4(845)及びS5(850)。
【0092】
本開示の5つのすべての異なるタイプのSMA表面(S1からS5)のうち、細胞分析性能における差は、SFLLRアミドによって誘起され且つ両方の被膜条件(図8)にてそれら5つの表面上で培養されたRMS13細胞のDMR信号によって示されているように、非常に小さい方であった。理論によって制限されないものの、これはプラズマ表面処理の結果であり得る。当該プラズマ表面処理において、被覆表面は、構造的に類似のものに変換されたかもしれないが、各々のSMAは、プラズマ表面処理前に、異なる重量パーセントの無水物及び異なる数の遊離酸基を有するかもしれない。これはFTIR研究と一致している(図2,データは示されず)。
【0093】
同じプラズマ酸化アプローチで処理された他のタイプの表面が、評価されたとき、細胞アッセイ結果は劇的に異なっていた。例えば、CHO−M1細胞は、それらが4つの異なるタイプのプラズマ処理表面に培養されたとき、異なる分布及び振幅を有する異なるDMR信号を有する10マイクロモルのカルバコールによる刺激に反応した。図9は、カルバコールによって誘起されたCHO−M1細胞のDMR信号を示している。当該CHO−M1細胞は、4つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養された。当該4つの異なるタイプのプラズマ処理表面とは。非被覆表面(900)、APS被膜表面(905)、S5−被覆表面(50μg/mL)(910)及びS1−被覆表面(50μg/mL)(915)である。酸化されたSMAS5の表面上で得られたDMR信号は、非被覆表面上で得られたものと同様の形状を示した。これは、酸化されたSMAS5表面は、細胞生物学とカルバコールによって誘起された細胞情報伝達をさほど変化させないことを示している。しかしながら、APS被覆表面及びS1被覆表面の双方のDMR信号は、被膜されない表面のものとは異なる。これは、カルバコールによって誘起された細胞生物学が変更されることを示している。ここで、S1コポリマは表面に受動的に吸着される。カルバコールは、CHO−M1細胞内で安定して発現され又はHEK293細胞内で内生的に発現されたムスカリン受容体数の天然の作用薬である。
【0094】
図10は、5マイクロMのSFLLRアミドによって誘起された4つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。当該4つの異なるタイプの細胞は、同一のプラズマ処理がなされているもののコートされていない表面において別々に又は個別に培養された。当該4つの異なるタイプの細胞は、CHO−K1細胞(1000)、CHO−M1細胞(1005)、HEK293細胞(1010)及びRMS13細胞(1015)である。各細胞のタイプにおいて、SFLLR−アミド刺激は、異なる信号伝達事象を生じせしめ得る。
【0095】
図11は、5マイクロMのSFLLRアミドによって誘起された4つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。当該4つの異なるタイプの細胞は、同一のプラズマ処理がされかつAPS被膜がされた表面において培養された。当該4つの異なるタイプの細胞は、CHO−K1細胞(1100)、CHO−M1細胞(1105)、HEK293細胞(1110)及びRMS13細胞(1115)である。図10及び11に示された結果を組み合わせると、結果が示すことは、バイオセンサは、4つの異なるタイプの細胞においてリガンドによって誘起された応答について分析するために適用することができるものの、APS表面における各細胞株のDMR信号の顕著な変化が細胞生物学が特にRMS13細胞株に対してある程度変更されることを示しているということである。
【0096】
図12Aは、薄膜のSiO2により被膜されたNb2O5RWGバイオセンサ上にSMA被膜表面のFT−IRスペクトルを示している。当該スペクトルは、異なる厚さのリンカ又は結合層としてアミノプロピルシラン(APS)を使用して得られた。異なるAPS結合層の膜厚は、初期被膜の異なる重量パーセント濃度のAPSを使用して得られた。当該重量パーセント濃度は、1.0%(1200),0.1%(1210),0.01%(1220)であった。結果が示すことは、得られたSMA被覆表面のFTIRスペクトルはAPS濃度から独立しているようであるということであり、これは、これらのAPS濃度の各々が基板の単層被膜の膜厚を達成し若しくは超過するのに十分であったことを示している。APS層の保護膜に使用されるSMA被膜濃度は、それぞれの異なるAPS結合層の膜厚の各々において同じであった(50マイクログラム/mL)。
【0097】
図12Bは、UV‐オゾン(UVO)プラズマ表面処理がない場合(1230)とある場合(1240)におけるSMA−APS−SiO2/Nb2O5表面のFTIRスペクトルを示している。SMA被膜濃度は50マイクログラム/mLであり、一方、APS濃度は0.001%であった。UV‐オゾン処理暴露は2分であった。
図12Cは、10.8fpmのベルト速度での生体組織培養処理された(TCT)処理を用いたSMA−APS−SiO2/Nb2O5表面のFTIRスペクトルを示している。当該ベルト速度は、15kv(1250)、20kV(1260)、25kv(1270)及び30kv(1280)の異なる出力を使用した。使用されたSMA濃度は、1mg/mLであった。図12B及び12Cに示されているように、異なる出力の下のUV/オゾン処理又はTCT処理のうちのいずれか一方は、図2に示されたプラズマ処理アプローチを使用して得られたものと同様な手法によって、SMA表面の酸化をも生じせしめ得る。これは、処理の際のFTIRスペクトルの変化における同様のパターンによって明らかである。
【0098】
これら修飾SMA表面でのHEK293細胞の培養は、HEK細胞が、TCTポリスチレンマイクロプレート又はフィブロネクチンによって被覆されたマイクロプレートと同様に、これら表面に付着し且つ拡散し得ることを示した。これらの酸化されたSMA表面上のHEK細胞(酸化されていないSMA表面上ではない)は、洗浄を耐えることができ、低密度フィブロネクチン被覆表面で取得されたものと同程度であるコーニング登録商標Epic商標RWGバイオセンサを使用した分析を強固なものとなし得る(データ示されていない)。プレート洗浄は、例えば、低速バッファ注入速度設定等の市販のプレート洗濯機等、あらゆる適切な方法によって実行され得る。
【0099】
実施例
以下の実施例は、上述した開示を使用する手法をより完全に説明し、かつ、本開示の種々の態様を実施するよう意図された最良の態様を説明することに用いる。これら実施例は、本開示の範囲をなんら限定するものではなく、むしろ例示の目的で与えられているものと理解すべきである。
【0100】
材料
アミノプロピルシルセスキオキサン(APS)は、Geles社(Morrisville、PA)から取得した。SFLLR−アミド、トロンビン受容体活性ペプチドは、Bachem(キング・オブ・プロシア(ペンシルベニア州))から取得した。カルバコール、1‐メトキシ‐2‐プロパノール酢酸及びN‐マルメチルピロリドンは、SigmaAldrichChemical社(セントルイス、ミズーリー州)から取得した。ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)クメン終端、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)部分的シクロヘキシル/イソプロピルエステル及びクメン終端、並びに、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)部分的イソオクチルエステル及びクメン終端のすべてが、下記のコアとなる化学式を有し、AldrichChemical社から取得された。
【0101】
【化1】
【0102】
AldrichChemical社から取得したポリ(スチレン‐アルト‐マレイン酸)は、以下のコアとなる化学式を有する。
【0103】
【化2】
【0104】
Corning社登録商標Epic社登録商標の384ウェルバイオセンサーマイクロプレートがコーニング株式会社(コーニング、NY)から取得された。各ウェルはRWGセンサを含む。マイクロプレートは、使用する前に高強度UV光(UVOクリーナー、Jelight株式会社、ラグナヒル、カリフォルニア州)に6分間暴露することによって洗浄された。
【0105】
ヒト胎児由来腎臓(HEK293)細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO-K1)細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO−M1)細胞、ヒト類表皮腫癌A431細胞及び人の筋(RMS13)細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(マナッサス、バージニア州)から取得された。すべての抗生物質は、Invitrogen(カールスバッド(カリフォルニア州))から取得された。細胞、媒質及び添加剤が表2に示されている。
【0106】
【表2】
【0107】
統計的分析
明確に言及しない限り、試験化合物又は生体物質の各測定は、同一の条件の下、8回行われた。それぞれの最終的な応答は、8回すべての応答の平均であった。
【0108】
実施例1
Epic登録商標マイクロプレートの表面被覆
(洗浄され且つUV/オゾンで処理された)クリーンなEpic登録商標マイクロプレートは、10分間、水中で5%(v/v)のアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)溶液を用いて処理された。得られたマイクロプレートは、水及びエタノールで迅速に洗浄され、過剰なAPSが除去された。プレートは、55℃にて1.5時間硬化され、それに続いて、エタノールを用いて付加的な洗浄が行われた。マイクロプレートは、スピン乾燥されて真空乾燥された。コポリマ性スチレン無水マレイン酸(SMA)は、10mg/mLの濃度で、適切な溶剤中で溶解された(S1に対して水、ポリ(スチレン‐アルト‐マレイン酸)、及びその他のすべてに対して1‐メソキシ‐2‐プロパノールアセテート;ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、S2;ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、クメン終端、S3;ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、部分的シクロヘキシル/イソプロピルエステルクメン終端、S4;ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、部分的イソオクチルエステル、クメン終端、S5)。各々のポリマ溶液は、50μg/mL又は200μg/mL等の所望の被膜濃度までさらに希釈され、約1時間、APS表面被覆されたプレート上アミノ基と反応された。溶剤と無水エタノールによって激しく洗浄されて、付着されていないポリマが除去されたのちに、SMAによってコートされたプレートは、乾燥され、SMAプラズマ表面処理が実行された。
【0109】
実施例2
Glass slide coating and plasma treatment Glass microscope slides
ガラススライド被膜とプラズマ処理ガラス顕微鏡用スライドは、5分間、プラズマ(UV−オゾン、UVO)洗浄され、表面から汚染物が除去された。これらスライドは、APSの5%溶液を用いて、10分間被膜された。スライドは、水で洗浄され、そしてエタノールで洗浄され、窒素流の下に乾燥された。SMA(ポリスチレン‐アルト‐無水マレイン酸の部分的なメチルエステル;約350,000のMw)溶液が、10mg/mLの濃度の無水NMPにおけるSMAポリマの溶解によって準備された。NMPにおけるSMAは、無水IPAにおいて希釈され、2mg/mLの濃度を有する最終的なSMA溶液が製造された。APS被膜されたスライドは、10分間、SMAの2mg/mLの溶液に浸された。その後、スライドが取り除かれ、エタノールを用いて洗浄が行われた。そして、スライドはPM−FTIRRASによって分析され、SMAの表面の基線測定がなされた。次に、これらのスライドは、1分、3分、7分及び14分、プラズマ処理された。
【0110】
実施例3
細胞培養及びバイオセンサ細胞分析
すべての細胞が所望の媒質で育成された。当該媒質には、10%の牛胎児血清(FBS)、4.5g/リットルのグルコース、2mMのグルタミン、及び抗生物質が添加された。3乃至8のパッセージにて約1×104乃至2×104の細胞が、10%のFBSを含む50マイクロリットルの媒質に懸濁され、384ウェルマイクロプレートの各々のウェル内に設けられた。細胞の種付け後に、細胞は、約95%の細胞密集度が得られるまで(約1−2日)、37℃で空気/5%CO2下で培養された。分析の当日、密集細胞は、HBSS(20mMのHEPESを有するHanks Balanced Salt Solution)緩衝液を用いて洗浄された。得られた細胞は、Epic登録商標装置において2時間28℃で培養された。細胞は、特定の濃度の選択された標識(SFLLR−アミド又はカルバコール)で刺激され、得られたDMR信号が記録された。
【0111】
実施例4
波長送受観測システム
Epic登録商標システムは、標準SBSマイクロタイタープレート(主として384ウェルマイクロプレート)に統合されたRWGバイオセンサである。このシステムは、温度制御ユニット、光学検出ユニット、及びロボティックスを有するオンボード液体処理ユニットから構成される。温度制御ユニットは、必要に応じて温度変動を最小にするべく内蔵されている。ユニット内において、センサーマイクロプレートと化合物ソースプレートの双方を処理する2つの並列スタックがある。一度、温度が安定すると、センサーマイクロプレートは、検知システムの直上のプレートホルダに自動的に搬送される。一方、ソースプレートは適切なコンパートメントに移動されるので、オンボード液体処理ユニットによって容易に処理可能である。
【0112】
検出ユニットは、統合されたファイバオプティクスを含み、生細胞内においてリガンドによって誘起されたDMRに起因する共鳴波の波長シフトを測定する。マイクロプレートの底部介した垂直入射によって、光ファイバとコリメータレンズを介して生成された広帯域の白色光源が、グレーティング表面の小領域を照明するのに使用される。反射光を記録する検出ファイバは照光ファイバを用いて1束にされる。一連の照光/検出ヘッドが直線的に配置されるので、反射スペクトルは、384ウェルのマイクロプレートの同じカラム内にあるサブセットのウェルから一度に収集される。プレート全体は照光/検出ヘッドによってスキャンされるので、各センサが複数回扱われ、各カラムは連続して扱われる。走査は、例えば、選択された分析の態様に依存して、連続的若しくは不連続的であり得る。反射光の波長は、分析目的のために収集且つ使用される。
【0113】
動的分析を目的として、まず、ベースラインの応答が一定期間記録される。その後、試験化合溶液が、オンボード液体処理システムを使用して、センサープレートに移され、細胞応答が別の期間に記録される。通常、センサーマイクロプレートのリッドは、テスト複合溶液を導入するとき、短期間(例えば、約2分)を除いて、分析中、大部分の期間、維持された。プレートリッドは、ロボティクスによって自動的に処理され得る。かかる動的測定によって、GPCRの信号伝達及びネットワーク化された相互作用について有益な情報が提供される。
【0114】
実施例5
表面処理方法
本開示の例示的な表面処理方法が、図13Aで、概説されている。当該表面処理方法において、1)市販のEpic登録商標マイクロプレート(1300)の金属酸化物表面は、例えば、1%のアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)溶液を用いて処理され、APSによって被覆されたマイクロプレート(1310)が与えられた。2)ポリ(スチレン‐アルト‐無水マレイン酸)(SMA)コポリマが、マイクロプレート表面に共有結合され、SMAによって被覆されたマイクロプレート(1320)が与えられた。3)SMAの残留無水マレイン酸残基は、本明細書において第2の結合層としても知られているアミン終端された化学修飾剤と反応されて、アミン修飾されたSMR被覆表面(1330)が提供された。アミンによって修飾されていない酸化SMA表面と比較して、化学修飾ステップがSMA被覆表面に対して大幅な改善をもたらした。4)化学的に修飾されたプレートは、UV−オゾン又はプラズマによって処理されて、最終的に処理されたSMA表面(1340)が生成された。当該SMA表面(1340)が細胞ベースの分析に用いられ得る。図13Bのイメージは、ナノ粒子の分散を有する生成表面フィルムを示す化学的に修飾され且つ処理されたSMA表面のSEM画像である。
【0115】
実施形態において、本開示の被膜処理及び処理は、概略的に以下に説明されているように、達成され得る。クリーンなEpic登録商標マイクロプレートは、3分間、水中で1%(v/v)のアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)溶液を用いて処理された。得られたマイクロプレートは、水及びエタノールで迅速に洗浄されて、過剰な非反応のAPSが除去された。ポリ(スチレン‐アルト‐無水マレイン酸)コポリマ(SMA)が、10mg/mLの濃度で、NMP等の適切な溶剤中で溶解された。他の適切な溶剤は、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のpolaraprotic溶液又はそれらの組み合わせを含む。ポリマ溶液は、例えば、イソプロピルアルコール等の溶液又はそれらの組み合わせにより、約200g/mLの被膜濃度になるまでさらに薄められ、約10分間、APS表面被覆されたプレート上で固定されたアミノ基に接触され且つ当該アミノ基と反応された。被覆されたプレートは、エタノールで洗浄されて付着されていないポリマが除去された。そして、SMA表面は、ポリアミン化学修飾剤と接触された。当該ポリアミン化学修飾剤は、例えば、Huntsman(www.huntsman.com)から利用可能なジェファミン登録商標T−403ポリエーテルトリアミン等の材料である。当該接触により、表面の電荷密度が変更されて、残留無水マレイン酸残基が除去された(すなわち、無水基との反応及びアミノ基がないトリアミンからのアンモニア基(−NH2+)の生成)。そして、プレートは水で洗われ、UV−オゾン処理又はプラズマ処理が実行された。
【0116】
表面キャラクタリゼーション
図13Bは、化学的修飾SMAマイクロプレートの例示的な走査電子顕微鏡像を示している。ポリマ被覆されたマイクロプレート表面は、比較的均一な分布を有するナノ粒子を有することが予想外にも見出された。当該ナノ粒は、約10〜約400ナノメータのサイズを有し、外見上、化学修飾SMAの層又は膜に埋め込まれている。UV−オゾン又はプラズマ処理表面のナノ粒子及びフィルム表面層の特性が、原子力顕微鏡(AFM)を使用してさらに特徴付けられた(Pompe, et. al, "Functional Films of Maleic Anhydride Copolymers under Physiological Conditions," Macromol.Biosci.2005, 5, 890-895)。緩衝液で水和された表面と比較して、乾燥処理された表面の表面膜厚と隆起特性が比較された。
【0117】
表面被膜は、埋め込まれたナノ粒子を有するフィルムから構成されているようである。実施形態において、乾燥フィルム膜厚は、(すなわち、実際の標準偏差でなく、測定値の範囲として)約7+/-2nmであると観測された。乾燥フィルムのナノ粒子の高さは、例えば、フィルムよりも約10〜約100nm高く、30〜50nmの範囲で加重された。フィルム上に存在する粒子に対して、粒子の高さは10〜100nmであると特定された。埋め込まれたナノ粒子に対して、実際の粒子の高さは、約15〜約110nmの実際の高さを示す膜厚を含む。水和されたナノ粒子の高さは、乾燥状態よりも顕著ではなく浅いようである。理論によって制限されないものの、例えば、考えられる解釈は以下を含んでいる。
i)ナノ粒子はフィルムに埋め込まれており、フィルムよりも比較的隆起しているので、(恐らく)ナノ粒子は隆起したフィルムより浅いように見える。又は、ii)加湿されたナノ粒子は、ポリマフィルム層よりも相当に柔らかく、AFMプローブによってより圧縮され得る(可能性は低い)。
【0118】
以下のフィルムと粒子のサイズは、トポグラフィー及びフィルム圧縮データに基づき、埋め込まれた粒子を有するポリマ膜を想定して、推定された。約7nmの乾燥膜厚を有するポリマ膜は、リン酸塩溶液(PBS)において、約30nmから約60nmまで膨張するようである。約7倍の膨張因子を示した。より大きく膨らんだ粒子径を見積もると、乾燥時のサイズの約80nmから約110nmであり、膨張に帰属して、約1.3倍(1.3×)の最小ディメンジョン変化を示している。
【0119】
表面被膜スキームの実施形態において、表面は、JeffamineT−403等の市販のトリアミンを用いて修飾され得る。しかしながら、表面はジェファミンT−403のみを用いた修飾に限定される必要はない。表面修飾が分析性能をいかに変更させるのかということに関する実施例として、SMAのバックボーンは、ジェファミンEDR−176により修飾され、T−403を用いて修飾された表面と比較された。EDR−176化合物は、トリアミンに代わってジアミンであるという点を除いて、T−403化合物にとても類似している。この小さな差異は、Epic登録商標細胞分析の性能に十分影響する。図22に、インサート上のHEK−293細胞を用いたEPIC分析からのトレース(Nb2O5/SiO2導波路)が示されている。当該インサートは、T−403修飾表面又はEDR−176修飾表面のうちいずれか一方により被膜された。双方の表面が、同程度の細胞付着性を示した。しかしながら、分析中、EDR−176表面に対する応答の動特性がより遅い傾向であった。一方、信号応答における分布はより大であって、性能の低下を生じせしめた。表3は、準備され且つ観測された修飾表面の概略を提供している。
【0120】
【表3】
【0121】
これら化学的に修飾されたSMA表面の形成は、偏光変調赤外反射吸収分光(PMFTIRRAS)によって観測され得る。例えば、Low−eガラス顕微鏡用スライドは、まず、APSの1%溶液を用いて、3分間被膜された。スライドは、水で洗浄され、そしてエタノールで洗浄され、窒素流の下に乾燥された。SMA(ポリ(スチレン‐アルト‐無水マレイン酸)、約350,000のMW)溶液は、約10mg/mLの濃度の無水NMPにおけるSMAポリマの溶解によって準備された。NMPにおけるSMAは、無水IPAにおいて希釈され、約200マイクログラム/mLの濃度を有する最終的なSMA溶液が製造された。APS被膜されたスライドは、約10分間、SMAの200マイクログラム/mLの溶液に浸され、エタノールを用いて洗浄された。そして、スライドはPM−FTIRRASによって分析され、SMAの表面のための基線測定が得られた(図14,曲線1400)。SMA表面は、5分間、ジェファミン登録商標T−403の5mg/mL溶液に浸された。得られたスペクトル(図14,曲線1405)は、無水マレイン酸残基の完全な損失を示した。当該損失は、1857cm-1及び1783cm-1におけるバンド強度の減少によって観測された。一方、約1700から約1500cm-1までのバンド強度における増加は、ジェファミン登録商標のポリマバックボーンへの取り込みを示した。1分間のUV−オゾン処理の暴露の際に(図14,曲線1410)、スチレン基の消芳香族特性の損失があった。当該損失は、約1495及び約1445cm-1におけるスペクトルバンドの低減に対応する。約1750cm-1から約1700cm-1までのバンド強度における増加は、ポリマ表面におけるカルボニル基とカルボキシレート基の形成を示した。脱プロトン化カルボキシレート基における増加は、約1695cm-1から約1550cm-1において観測されたショルダ構造を生じせしめた。理論によって制限されないものの、これら吸収帯域が広範であるので、おそらく、カルボニルとカルボン酸の分子環境の分布が存在すると信じられている。最終的に、アルコールのO−Hの変形を示し得る約1500cm-1から約1300cm-1までの広帯域の形成があった。処理された表面が水で洗浄されたとき(図14,曲線1415)、全体的なスペクトル強度の低下が存在する。これは、UV−オゾンステップの間に生成された弱結合の材料が、表面から除去されるからである。処理された表面は、約10〜約400nMまでサイズのナノ粒子を含む。上記の図13Bを参照されたい。
【0122】
UV‐オゾンを用いた処理の前のアミン含有化合物を含む化学修飾ステップは、化学修飾ステップがない場合のプレートと比較して、プレートの性能を劇的に改善した。図15は、HEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。HEK293細胞は、3つの異なるタイプの表面において培養された。当該3つの異なるタイプの表面は、UV‐オゾンを用いた処理されたSMA被覆マイクロプレート、ジェファミン登録商標T−403と反応されてUV‐オゾンを用いて処理されたSMA被覆マイクロプレート(1505)及びフィブロネクチン被覆されたEpic登録商標マイクロプレート表面(1500)である。すべての信号分布が、実行された分析を表している。UV‐オゾンを用いた処理されたSMA被覆プレート(1510)は、テストされた3つの表面の低分析応答及び低速動特性を示した。化学修飾SMAによって被膜されたプレート(1505)は、フィブロネクチン被覆されたプレート(1500)とほとんど同じである著しく良好な動特性と大なる信号を示した。フィブロネクチンプレートは、この分析に対して最大の信号強度を示した。しかしながら、フィブロネクチン表面と化学修飾表面との差異は、約10パーセントだけであり、これは、被膜方法に関係づけられたSiO2上のSMAと比較して、かなりの改善である。
【0123】
上記に説明したように、図9は、非修飾SMA表面(非被膜表面(900))上の細胞培養とプラズマ処理されたSMA表面(905,910及び915)を用いた細胞培養に関するDMR信号を比較した。
【0124】
図16は、トレース1620としてアミノ修飾されたSMA表面を示している。当該SMA表面は、図9の非修飾SMA表面及びフィブロネクチン(1625)だけを有するものと比較して、性能が2倍強化され動特性が改善された。(コーニング株式会社、製品番号SKU5042から利用可能な)フィブロネクチンに対するCHO−M1応答が、トレース1625として示されており、化学修飾SMA表面1620の信号の形状と密接に類似している。しかし、化学修飾SMA表面1620は、例えば、2倍以上の強度を有する。本明細書に開示された化学修飾SMA合成表面は、SMAのみの合成表面と比較して、少なくともいくつかの態様において優れているように見える。
【0125】
RMS−13等の他の困難な細胞株実験が、行われた。図17Aは、フィブロネクチン(1705)及び(UV−オゾン処理された)化学修飾SMA表面(1700)上のRMS−13細胞DMR応答を示している。ウロテンシンII(UTII)によって誘起されたRMS−13細胞のDMR応答は、フィブロネクチン表面に対する同じ誘起(図17B、曲線1715)と比較して、振幅が高く、化学修飾SMA上で動的に高速であった(図17B、曲線1710)。化学修飾SMA上のSFLLRアミドによって誘起されたDMR信号(図17B、曲線1710)及びフィブロネクチン(図17B、曲線1715)は、運動分布と信号振幅の双方において類似した。
【0126】
細胞付着性と分析性能の総合性能に基づいて、本開示の化学的に修飾されたSMA表面は、関連方法より優れており、ターゲットフィブロネクチン表面の細胞分析性能により密接に似ている。
【0127】
実施例7
開示された表面修飾方法は、注入圧縮成形された(ICM)Topas登録商標ポリマインサートに適用可能である。この実験では、Topas登録商標上のICMインサート(Nb2O5/SiO2導波路)は、実施例5に記載されているように、被覆され、紫外線キャストアンドキュア(UVCC:ultraviolet cast−and−cure)Epic登録商標インサート(Nb2O5/SiO2)と比較された。Epic登録商標分析は、両方のインサート上に培養されたHEK−293細胞を用いて達成された。これらの実験から、これらポリマ性ICMインサート上の被覆表面の性能は、信号レベルと動力学応答において市販のUVCCEpic登録商標インサート(Nb2O5/SiO2)に大幅に匹敵するものであることが明白であった。図21は、異なるインサートを使用したが同一の酸化されたアミン修飾SMA表面を使用したHEK−293細胞のEpic登録商標分析の例示的光学的応答を示している。酸化されたアミン修飾SMA表面により被膜されたICM(2110)及びUVCC(2120)インサート上のHEK−293細胞のEpic登録商標分析の光学応答の例示的トレース。尚、酸化されたアミン修飾SMA表面により被膜されたとき、双方のインサートが、信号強度及び動特性の点において、ほぼ同様に作用することに注意されたい。
【0128】
実施例8
有効期間の安定性
酸化され且つアミン修飾された表面組成に関する有効期間又は保存の安定性が、評価され、例えば、HEK29細胞を用いた場合21週間以上、周囲環境温度にて、水中等の種々の条件にわたって、かなり強固であることが示された。第1実験において、スライドは、酸化され且つアミン修飾された表面組成により被覆され、6カ月、周囲環境条件(23℃、40RH)で、保存された。これらスライドは、図18に示されているように、FTIRによる新たに被膜されたスライドと比較された。図18は、ガラスに被覆される酸化され且つトリアミン修飾されたSMAポリマの重畳されたFTIRスペクトル、すなわち、200ミクロンのSMA及び5mg/mlのジェファミン登録商標T−403のFTIRスペクトルを示している。FTIRスペクトルは、時間ゼロ(1819)から約6ヶ月(1800)の劣化まで化学変化を示した。劣化した被膜スライドのFTIRは、新たに被覆されたスライドと比較して、1750cm-1における高強度及び1550cm-1における低強度を示した。これは、カルボキシレート基の大部分が、新たに被覆されたサンプルと比べて、劣化したサンプルにおいてプロトン化されることを示した。これらの2つのバンドは、プロトン化された形態のカルボキシレート基及び脱プロトン化された形態のカルボキシレート基からのそれぞれの寄与を表している。表面上のカルボキシレート基の状態に依存して、これらバンドは、強度において変動し得る。理論によって制限されないものの、これら2つのスペクトル間の差異は存在し得るし、保存方法及びカルボキシレート基の状態に与える保存方法の影響に帰属して存在する可能性がある。しかしながら、水性条件下で、両方の表面が、同一の表面をもたらす同じレベルの脱プロトン化を引き起こすであろう。
【0129】
保存有効期間に加えて、水性条件下の被覆された成分の安定性が、調査され且つ実証された。この実験では、ポリマ性表面成分の非常に薄い層が、金属酸化物被膜顕微鏡用スライドに形成された(すなわち、ポリマ堆積、アミン反応、および酸化)。そして、スライドは約8時間まで水に浸され、組成が水の暴露量の関数としてどのように変化するか判定された。8時間まで水に暴露されていたとき、図19のFTIRスペクトルは、成分化学において評価可能な差異は全く存在しないことを示した。これによれば、成分は水に非常に敏感であり、長期間、非常に安定するはずある。具体的には、図19は、金属酸化表面と、酸化し且つトリアミン修飾したSMAの薄膜を用いて被膜された金属酸化表面との重畳されたFTIRスペクトルを示している。露出表面(1900)及び酸化され且つトリアミン修飾されたSMA試料の薄膜により被覆された表面は、各々が、1時間(1910)及び8時間(1920)、水中に沈められた。2つの異なる浸漬時間に対するスペクトルの重複は、長期の水の暴露によって生じる表面化学において実質的な変化は全く存在しないことを示した。露出酸化物表面からの被覆表面に対する明確な分離は、表面被覆が、水の浸漬に対する暴露によって、表面から除去されないことを示した。
【0130】
有効期間における安定性に関する別の例証において、アセンブル化されたEpic登録商標マイクロプレートは、分析を実行するために使用されて、長期保存の後の機能性が立証された。この実験では、プレートは、SMA成分により被覆され、アミンにより修飾され、ガンマ線照射され、そして、有効期間の試験のために載置された。特定の時において、プレートは、ストレージから抜き取られ、HEK−293細胞で種付けされ、標準のEpic登録商標分析を介して起動された。そして、時間ポイントは、性能劣化が時間がたつにつれてあったかどうかを判定するために比較される。それらは4つの異なる評価基準(細胞の形態、運動分布、全ての信号及びZ)に基づいて判断された。表4は、有効期間研究における2つの時間ポイント(4週間及び21週間)から2つの分析結果を示している。2つの時間ポイントにおける細胞の形態、運動分布、全ての信号及びZに対して観測された差異は、認識できなかった。このデータは、プレートが室温で保存されるとき、表面組成被膜を有するプレートが最低約21週間の有効期間を有することを示している。分析データは、保存時間の関数として性能劣化を全く示さない。Zにおける小さな変動は、データがかかる長期間比較されるとき、通常である。
【0131】
【表4】
【0132】
図20は、酸化されたアミン修飾SMA表面を準備する際に2つの異なるアミン化合物であるが関連するアミン化合物を別々に使用したHEK−293細胞のEpic登録商標分析の例示的光学的応答を示している。図20の典型的なトレースは、ジェファミン登録商標T−403(2020)及びジェファミン登録商標EDR−176(2010)によって酸化され且つアミン修飾されたSMA表面のHEK−293細胞のEpic登録商標分析の光学応答を提供する。尚、ジェファミン登録商標EDR−176によって準備された表面(2010)は、信号が最大に到るのにより長い時間を要する。ジェファミン登録商標EDR−176によって準備された表面の信号応答における大なる再分布は、T−403表面と比較して、示されていない。
【0133】
本開示は、種々の特定の実施形態及び技術を参照して説明されてきた。しかしながら、本開示の精神及び範囲内において多くの変更及び改良を行うことができることが理解されるはずである。
【先に出願された米国出願の利益の主張】
【0001】
本願は、共有され且つ譲渡された同時継続中の2007年10月10日に出願された米国特許出願第11/973,832号及び2008年11月18日に出願された米国特許出願第12/273,147号の一部継続出願であり、これらの出願に対する優先権の利益を主張する。本願の内容及びこの明細書で引用された全ての公報、特許、及び特許出願が参考として組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本開示は表面修飾方法、表面修飾製品及び当該製品を使用するアプリケーションに関する。特に、本開示は、生物学的製剤のホスト容器、例えば、培養容器、実験器具等において及び共鳴導波グレーティング(RWG:resonant waveguide grating)バイオセンサ等のバイオセンサにおいて使用する細胞培養表面に関する。また、本開示は、分析を行う細胞培養表面修飾製品を製造し且つ使用する方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、さまざまな基板において高い生物学的適合性を有する薄膜細胞成長表面を形成する方法を提供する。本開示は、表面修飾製品及び当該表面修飾製品を使用する方法をも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、本開示の実施形態において表面処理されたマイクロプレートを形成する例示的全体図である。
【図2】図2は、本開示の実施形態において測定された表面のフーリエ変換赤外線(FT−IR:Fourier transform infrared)スペクトルの重ね合わせを示している。
【図3A−3B】図3A及び3Bは、本開示の実施形態における未処理の表面とプラズマ処理表面とにおいて7.5時間培養した後のHEK293(ヒト胎児由来腎臓293)細胞の比較光学顕微鏡イメージを示している。
【図4A−4B】図4A及び4Bは、本開示の実施形態においてプラズマ処理表面に培養されたHEK293細胞の顕微鏡イメージを示している。
【図5A−5B】図5A及び5Bは、本開示の実施形態において一晩細胞培養した後の横紋筋肉腫(RMS13:rabdomyosarcoma)細胞の比較光学顕微鏡イメージを示している。
【図6A】図6Aは、本開示の実施形態における3つの異なる表面において培養され且つSFLLR−アミドによって誘起されたHEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。
【図6B】図6Bは、本開示の実施形態における3つの異なる表面において培養され且つSFLLR−アミドによって誘起されたHEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。
【図6C】図6Cは、本開示の実施形態における3つの異なる表面において培養され且つSFLLR−アミドによって誘起されたHEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。
【図7A】図7Aは、本開示の実施形態にける同一のプラズマ処理された表面において培養され且つSFLLR‐アミドによって誘起された3つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。
【図7B】図7Bは、本開示の実施形態にける同一のプラズマ処理された表面において培養され且つSFLLR‐アミドによって誘起された3つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。
【図7C】図7Cは、本開示の実施形態にける同一のプラズマ処理された表面において培養され且つSFLLR‐アミドによって誘起された3つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。
【図8A】図8Aは、本開示の実施形態において5つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養され且つSFLLRアミドによって誘起されたRMS13細胞のDMR信号を示している。
【図8B】図8Bは、本開示の実施形態において5つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養され且つSFLLRアミドによって誘起されたRMS13細胞のDMR信号を示している。
【図8C】図8Cは、本開示の実施形態において5つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養され且つSFLLRアミドによって誘起されたRMS13細胞のDMR信号を示している。
【図9】図9は、本開示の実施形態における4つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養され且つカルバコールによって誘起されたCHO−M1細胞のDMR信号を示している。
【図10】図10は、本開示の実施形態において同一のプラズマ処理がなされているもののコートされていない表面において別々に培養され且つSFLLRアミドによって誘起された4つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。
【図11】図11は、本開示の実施形態において同一のプラズマ処理されてAPSコートされた表面において培養され且つSFLLRアミドによって誘起された4つの異なるタイプの細胞DMR信号を示している。
【図12A】図12Aは、本開示の実施形態におけるSiO2の薄膜を有するNb2O5RWGバイオセンサ上の多種のポリマ性スチレン−無水−マレイン酸(SMA:styrene−maleic anhydride)被膜表面のFT−IRスペクトルを示している。
【図12B】図12Bは、本開示の実施形態におけるSiO2の薄膜を有するNb2O5RWGバイオセンサ上の多種のポリマ性スチレン−無水−マレイン酸(SMA:styrene−maleic anhydride)被膜表面のFT−IRスペクトルを示している。
【図12C】図12Cは、本開示の実施形態におけるSiO2の薄膜を有するNb2O5RWGバイオセンサ上の多種のポリマ性スチレン−無水−マレイン酸(SMA:styrene−maleic anhydride)被膜表面のFT−IRスペクトルを示している。
【図13A】図13Aは、本開示の実施形態における化学的に修飾されたSMAマイクロプレートの例示的予備ルートを示している。
【図13B】図13Bは、本開示の実施形態における均一な分布のナノ粒子を有する化学的に修飾されたSMAマイクロプレートの例示的なイメージを示している。
【図14】図14は、本開示の実施形態における様々なSMA修飾表面のFTIRスペクトルを示している。
【図15】図15は、本開示の実施形態における3つの異なる表面におけるHEK−293細胞のDMR応答を示している。
【図16】図16は、本開示の実施形態において2つの異なるタイプの処理表面において培養され且つカルバコールによって誘起されたCHO−M1細胞のDMR信号を示している。
【図17A】図17Aは、本開示の実施形態における、2つの異なるタイプの処理表面において培養され且つカルバコールによって誘起されたRMS−13細胞のDMR信号を示している。
【図17B】図17A乃至17Bは、本開示の実施形態における、2つの異なるタイプの処理表面において培養され且つカルバコールによって誘起されたRMS−13細胞のDMR信号を示している。
【図18】図18は、本開示の実施形態における、時間が経過するにつれてほとんど化学変化を示さないガラスに被覆された例示的アミン修飾SMAポリマのFTIRスペクトルである。
【図19】図19は、本開示の実施形態における、露出した金属酸化表面及びSMAの最小層で被覆された金属酸化表面のFTIRスペクトルである。
【図20】図20は、本開示の実施形態における、2つの異なるアミン化合物を別々に使用したものの、酸化され且つアミン修飾されたSMA表面におけるアミン化合物に関連づけたHEK−293細胞のEpic登録商標分析の例示的光学的応答を示している。
【図21】図21は、本開示の実施形態における、各々がNi2O5/SiO2導波路コーティングを有しかつ酸化されたトリアミン修飾された同一のSMA表面被覆を有するガラス及びTopas登録商標基板上のHEK−293細胞のEpic登録商標分析の例示的光学応答を示している。
【発明の詳細な説明】
【0005】
本発明の様々な実施形態が、添付の図面を参照して詳細に説明されるであろう。様々な実施形態に対する言及は、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明は、添付した請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本明細書に述べられたいかなる実施例も、限定することを目的とはしていないし、特許請求の範囲に記載された発明の多くの実施形態の内、いくつかについて説明しているにすぎない。
【定義】
【0006】
「分析(assay)」、「分析する(assaying)」等の用語は、例えば、リガンド候補化合物、ウイルス粒子、病原体、表面若しくは培養条件等の外因性刺激を用いた刺激に対する細胞の光学的応答又はバイオインピーダンス応答の存在の有無、量、程度、動特性及びターゲットのタイプを判定する分析を意味する。
【0007】
「付着する(attach)」、「付着(attachment)」、「固着する(adhere)」、「固着される(adhered)」、「固定された(immobilized)」等の用語は、物理吸着又は化学結合等の処理若しくはそれらの組み合わせ等によって、例えば、本開示の表面修飾物質、相溶剤、細胞、リガンド候補化合物、及び同様のエンティティを表面に固定し若しくは固着すること通常意味する。特に、「細胞の付着(cell attachment)」、「細胞の固着(cell adhesion)」等の用語は、細胞固定材料、相溶剤(例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミン、ゼラチン、ポリリジン等)等を用いて培養し、相互作用せしめることによって、表面との細胞の相互作用若しくは表面への結合を意味する。
【0008】
「付着性細胞」とは、基板の外部表面に関連付けられ、基板の外部表面上に固定され、又は特定の接触を維持する原核生物の細胞又は真核性細胞等の細胞、細胞株又は細胞システムを意味する。培養後のかかるタイプの細胞は、洗浄媒質交換処理、すなわち、多くの細胞ベースの分析に必須である処理に対して抵抗力を有し、耐性を有し得る。「弱付着性細胞」とは、細胞培養中に、基板の外部表面と弱く相互作用し、基板の外部表面と弱く関連し、基板の外部表面と弱く接触する原核生物の細胞又は真核性細胞等の細胞、細胞株又は細胞システムを意味する。しかしながら、これらのタイプの細胞、例えば、人間の胎児性腎臓(HEK)細胞は、洗浄液若しくは媒質の交換等の物理的に妨害的な手法により、基板の表面から容易に解離する傾向がある。「懸濁細胞」とは、望ましくは、媒質で培養される細胞又は細胞株を意味する。当該媒質において、細胞は、培養中に、基板の表面に付着若しくは固着しない。「細胞の培養」又は「細胞培養」とは、原核生物細胞若しくは真核性細胞が一定条件下で培養される処理を意味する。「細胞の培養」とは、多細胞の真正核細胞から得られた細胞の培養、特に動物細胞から得られた細胞の培養をも意味し、複合生体組織及び臓器の培養を含む。
【0009】
「細胞」等の用語は、1つ以上の細胞核と他の多種の細胞小器官を任意で含む半透明の膜によって外部的に結合された通常小なる微小質量の原形質を意味し、生命の基本的な機能を単独で実行し又は生命の基本的な機能を実行する他の同等の集団と相互作用することができ、合成細胞構造体、細胞モデルシステム、人工の細胞システムを含む独立的に機能することができる生物の最小構造ユニットを形成することができる。
【0010】
「細胞システム」等の用語は、互いに相互作用して生物学的病態生理学的機能又は生理的病態生理学的機能を発揮する1より大のタイプの細胞(又は単一タイプの細胞の異なる形態)の集合を意味する。かかる細胞システムは、器官、生体組織、幹細胞、分化した肝細胞等のシステムを含む。
【0011】
「刺激」、「治療候補化合物」、「治療候補物質」、「予防的候補物質」、「予防的物質」、「リガンド候補」、「リガンド」等の用語は、バイオセンサ若しくは病原体に付着せしめられた細胞と相互作用する潜在能力にとって重要であり且つ自然に生ずる分子若しくは材料又は合成的な分子若しくは材料を意味する。治療候補物質又は予防候補物質は、例えば、タンパク質、DNA、RNA、イオン、脂質、又は、生細胞の同様の構造若しくは要素等の少なくとも1つの細胞性ターゲット又は病原体ターゲットと特に結合し又は相互作用し得る化合物、生物学的分子、ペプチド、タンパク質、生物試料、薬物候補の小分子、薬物候補の生物学的分子、薬物候補小分子‐生物の結合体等の材料若しくは分子エンティティ又はそれらの組み合わせを含む。
【0012】
「バイオセンサ」等の用語は、生物学的要素を物理化学的検出構成要素に結合せしめ得る分析物を検出するデバイスを意味する。バイオセンサは、通常3つの部分から構成される。すなわち、(生体組織、微生物、病原体、細胞、又はこれらの組合せ等の)生物学的構成部又は要素、(例えば、光学的、圧電的、熱測定、若しくは磁気的な物理化学的手法で動作する)検出要素及び双方の構成部に関連付けられたトランスデューサから構成される。生物学的構成部若しくは生物学的要素は、例えば生体細胞、病原体又はそれらの組合せであり得る。実施形態において、光学バイオセンサは、生体細胞、病原体若しくはそれらの組合せにおける分子認識事象又は分子刺激事象を定量化可能な信号に変換する光学変換装置を含み得る。
【0013】
”含む(Include)”、”含む(includes)”等は、含むこと(including)を意味するがこれに限定されない。
【0014】
本開示の実施形態を説明するのに使用された例えば成分の構成要素、濃度、堆積、処理温度、処理時間、収量、流速、圧力等の値の量、及びその範囲を変更する「約」という用語は、例えば、生じうる数量における変分をいう。かかる変分は、化合物、構成成分、濃度、使用製剤を製造するのに使用された手順を通常測定し且つ取り扱うことを介して、これら手法における不注意な誤動作を介して、方法を実行するのに使用される製造方法、ソース、又は出発物質若しくは成分の純度における差等の事項を介して生じ得る。また、「about」という用語は、特定の初期濃度若しくは混合度を有する成分又は処方の経時変化に起因して異なる量及び特定の初期濃度若しくは混合度を有する成分又は処方の混合処理又は処理工程に起因して異なる量を包含し得る。“約(about)”という用語によって修飾され本明細書に添付された特許請求の範囲は、これら量の均等物を含む。
【0015】
実施形態において「〜本質的に成る(Consisting essentially of)」とは、例えば、表面組成、表面成分、化学式、又はバイオセンサの表面上の成分を製造し又は使用する方法及び本開示の物品、デバイス若しくは装置を意味し、特定の反応物質、特定の添加物または成分、特定の物質、特定の細胞若しくは細胞株、特定の表面修飾剤または条件、特定のリガンド候補、可変選択された同等の構造、材料、又は処理等、特許請求の範囲に記載された構成要素又はステップと、構成物、物品、若しくは装置の基本的且つ新規な特性と本開示の製造方法及び使用方法とに物質的に影響を与えない他の構成要素又はステップと、を含み得る。本開示の構成要素若しくはステップの基本特性に有形的に影響し又は本開示に不要な特性を与え得るアイテムは、プラズマ処理又は紫外線‐オゾン(UV−オゾン、”UVO”)処理及びステップに対する、例えば、ポリマ性表面層の過度の暴露又は長期暴露を含む。
【0016】
実施形態において、本開示は、固体基板に被覆され若しくは付着せしめられた反応性ポリマ若しくはコポリマの薄膜(スチレン若しくはポリスチレン含有ポリマ等)を、細胞の付着及び培養を促進する表面に変換する方法を提供する。方法は、例えば、プラズマ、UV−オゾン又はそれらの組み合わせを用いた薄膜の化成処理を含む。方法は、バイオセンサの検出ゾーン内にある細胞の近接領域におけるバイオセンサ表面に付着せしめられた生細胞を多くの場合有し得るバイオセンサベースの細胞分析を準備するのに特に適切である。
【0017】
細胞の付着及び成長を制御することは、細胞生物学、生物プロセス及び細胞ベースの分析の多くの態様に必要であり得る。細胞は、例えば、成形されたポリマ性物質、ペトリ皿、マルチウェルマイクロタイタプレート、フラスコ等のアイテム等の材料から成る容器の表面において成長され得る。細胞の付着性、細胞の成長及び関連生細胞の機能を促進し且つ分析による汚染を最小化するためには、これら表面は、通常、培養処理された生体組織又はマイクロ波チャンバ内等の制御環境下においてプラズマ処理された生体組織であり得る。成型されたポリマ性容器以外の多くの異なるタイプの基板が、生細胞分析を含む付着、成長、生物製剤の生成等、細胞培養にも用いられ得る。これら基板は、例えば、ガラス若しくは酸化金属膜等の他の無機材料又は金フィルム等の薄膜金属層から製造され得る。生体組織培養処理(TCT:Tissue culture treatment)又はプラズマ処理は、細胞を培養するこれら基板に対する改良を通常最小化し得る。
【0018】
実施形態において、本開示は、適切なポリマの薄層を有する容器等の固体基板を被覆し且つ薄膜を修飾する方法を提供する。得られたポリマ性薄膜は、所望の形態、官能基及び細胞の付着及び培養を促進する他の物理的パラメータを示す。ポリマ性薄膜を修飾する方法は、例えば、任意の結合層と、反応性薄膜被覆を有する基板とを、化学物質若しくは試薬の酸化による反応性コポリマ薄膜の処理等のプラズマ若しくは紫外線UV‐オゾンの酸化性ストリーム、又は、同じ結果を達成する同様の修飾方法等の酸化性媒体に暴露して、所望の酸素処理された表面機能性を有する修飾表面を形成するステップを含む。
【0019】
本開示は、あらゆるタイプの基板にも広範に適用可能である。基板は、酸化された金属膜若しくは金等の金属膜のパターン化されていない薄膜若しくはパターン化された薄膜を任意に有し、ガラス、無機基板、成形されたポリマ性基板、無機の若しくはポリマ性基板等の基板を含む。本開示の方法は、ポリスチレンベースのコポリマ等の適当に反応性を有するポリマの薄膜を有するいかなる容器又は基板に対しても利用可能である。かかるポリマは、適切な基板又は任意の適切な結合層と組み合わされて、ポリマが基板の表面に共有結合されるよう可能にし、所望の機械的応力を細胞付着に与え、例えば、プラズマ、UV−オゾン、化学反応物質等の物質を用いてかかる薄膜表面の機能的修飾を可能にする。機械的応力が望まれている。なぜならば、表面に受動的に吸着されるに過ぎない(すなわち、表面に対するリンクが存在しない)SMA等のポリマ層は、容易に洗い落とされる傾向がある。
【0020】
本開示は、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞及び人間の上皮癌のA431セル等の付着性が強い細胞、RMS13細胞等の中間的付着性細胞及びヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞又は一次細胞等の弱付着性細胞を含む多くのタイプの細胞の付着、成長、及び分析に適切である表面を提供する。
【0021】
本開示は、バイオセンサの表面を修飾する方法を提供する。これらバイオセンサの表面は、細胞培養及びその後の細胞分析に相性がよく、敏感に反応する。本開示の方法は、共鳴導波グレイティングバイオセンサーにおいて用いられるような酸化金属薄膜表面又は表面プラズモン共鳴(SPR)において用いられるようなパターン化されていない金の表面又は電気的バイオインピーダンスベースのバイオセンサにおいて用いられるようなパターン化された金の表面に適切である。
【0022】
したがって、特許請求の範囲に記載された発明は、本明細書に定義された細胞培養製品、本明細書に定義された細胞培養製品を準備する方法及び本明細書に定義されたリガンドの分析を実行する方法を適切に含み、これら製品及び方法から成り、又は、本質的にこれら製品及び方法から成り得る。
【0023】
実施形態において、本開示は、基板と、少なくとも前記基板に付着せしめられた結合層と、少なくとも前記タイレイヤに付着せしめられた生体適合層とを含む細胞培養製品を提供する。生体適合層は、ポリマの表面酸化生成物を含み得る。当該ポリマは、少なくとも1つの酸化性モノマを含む。
【0024】
基板は、例えば、プラスチック、ポリマ性物質若しくはコポリマ性物質、セラミック、ガラス、金属、結晶性物質、貴金属若しくは準貴金属、金属性酸化物若しくは非金属性酸化物、遷移金属又はそれらの組合せを含み得る。実施形態において、結合層は、1つ以上の反応性官能基を含む化合物から得られ得る。1つ以上の反応性官能基は、例えば、アミノ基、チオール基、水酸基、カルボキシル基、アクリル酸、有機酸若しくは無機酸、エステル、無水物、アルデヒド、エポキシド等の基及びそれらの塩又はそれらの組合せを含む。結合層を形成する材料の選択は、基板の性質に依存し得る。例えば、シランは、酸化された無機性基板に関連した優れた結合層であり得る。当該酸化された無機性基板は、ガラス、SiOxを呈する基板、TiO2、Ta2O5、HfO2及びそれの混合物等の基板等である。あるいは若しくはさらに、前述の無機性基板は、SiOxオーバレイに組み合わせられ得る。チオール化合物は、金の基板が選択されるとき、優れた結合層であり得る。ポリリシン等の正電荷のポリマは、ポリマ性基板が使用されているとき、優れた結合層であり得る。
【0025】
実施形態において、結合層は、例えば、直線鎖若しくは分岐鎖アミノシラン、アミノアルコキシシラン、アミノアルキルシラン、アミノアリールシラン、アミノアリールオキシシラン等のシラン又はそれらの塩及びそれらの組み合わせから得られ得る。結合層を形成するのに使用され得る化合物の特定の実施例は、例えば、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(ベータアミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(ベータ‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐(ベータ‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルシルセスキオキサン、等の化合物及びそれらの組み合わせを含む。好ましい実施形態において、結合層は、例えば、アミノプロピルシルセスキオキサンであり得るし、表面酸化前のポリマは、例えば、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)であり得るし、及び、基板は、例えば、マイクロプレートまたは顕微鏡用スライドであり得る。実施形態において、結合層は、例えば、ポリ‐リジン、ポリエチレンイミン及び同様の実質的なポリマ又はそれらの組み合わせであり得る。
【0026】
実施形態において、酸化性モノマは、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン、ジビニルベンゼン、アルキルビニルエーテル、トリアルキレングリコールアルキルビニルエーテル、アルキレン、アクリルアミド、ピロリジノン、ジアルキルアクリルアミド、オリゴ(アルキレンオキシド)又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つで有り得る。
【0027】
実施形態において、表面酸化等の処理過程の際に生体適合層を形成するポリマは、例えば、結合層に共有結合され得るし、結合層に静電的に付着され得るし又はそれら双方であり得る。ポリマは、求核攻撃の影響を受けやすい少なくとも1つの求電子性基を含み得る。実施形態において、ポリマは、少なくとも1つのアミン反応基を含み得る。実施形態において、アミン反応基は、例えば、エステル基、エポキシド基、アルデヒド基等の基及びそれらの組み合わせを含み得る。実施形態において、アミン反応基は、無水基であり得る。ポリマは、例えば、ポリ(酢酸ビニル‐無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(無水マレイン酸‐アルト‐メチルビニルエーテル)、ポリ(トリエチレングリコールメチルビニルエーテル‐co‐無水マレイン酸)又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含むコポリマを含み得る。あるいは若しくはさらに、ポリマは、例えば、グラフトポリマ、ブロックポリマ、ランダムポリマ又はそれらの組み合わせを含み得る。ポリマは、例えば、ポリイソプレン‐グラフト‐無水マレイン酸、ポリスチレン‐ブロック‐ポリ(エチレン−RAN−ブチレン)‐ブロック‐ポリスチレン‐グラフト‐無水マレイン酸又は同様のポリマ及びそれらの組合せ等、無水マレイン酸、マレイン酸又は同様のモノマを任意で含み得る。実施形態において、望ましいポリマは、無水マレイン酸モノマ及び第1モノマから成るコポリマを含む。
【0028】
実施形態において、第1モノマは、例えばマレイン無水基の加水分解安定度を改善し得る。第1モノマは、例えば、特定されない結細胞培養製品に対する生体分子又は細胞の非特定性結合をも緩和し得る。実施形態において、第1モノマのモル%のバランスに対するコポリマ内の無水マレイン酸の量は、例えば、約5mol%から約50mol%、約5mol%から約45mol%、約5mol%から約35mol%、約5mol%から約25mol%、約5mol%から約15mol%及び中間量又は重複した量を含む同様の無水マレイン酸molパーセントであり得る。実施形態において、無水マレイン酸がコポリマ内のコモノマーとして選択される場合、無水マレイン酸は、例えば、第1モノマの約50モル%に対して約50mol%から、第1モノマの約60モル%に対して約40mol%から、第1モノマの約70モル%に対して約30mol%から、第1モノマの約80モル%に対して約20mol%から、第1モノマの約90モル%に対して約10mol%から等の中間量又は重複した量を含む量であり得る。第1モノマは、例えば、スチレン、メチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、ブチビニルエーテル、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、ピロリジノン、ジメチルアクリルアミド、オリゴ(エチレングリコール)、オリゴ(エチレンオキシド)等の酸化性モノマ又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含み得る。第1モノマは、例えば、約25mol%から約95mol%のコポリマ、約45mol%から約95mol%のコポリマ、約65mol%から約95mol%のコポリマ、約85mol%から約95mol%のコポリマ等の中間量又は重複した量を含む第1のモノマの量を含み得る。
【0029】
実施形態において、生体適合層は、例えば、約10Åから約2000Åまで、約10Åから約1500Åまで、約10Åから約1250Åまで、約10Åから約1000Åまで及び約10Åから約100Åまでの膜厚を有し得る。実施形態において、前記生体適合層を形成する前記ポリマ層は、初期に連続的である場合、長期の酸化処理又は強力な酸化処理の間、破壊され又は分断されて、基礎をなす結合層若しくは基板表面について被膜率が小さいか又は被膜が全くないギャップ又は領域を含む生体適合層を提供し得る。すなわち、生体適合層の不連続層又はフィルムが生じ得る。同様に、生体適合層の不連続層又はフィルムは、初期的に不連続なポリマ層に関してより小なる酸化又はより小なる酸化から生じ得る。したがって、分断した領域又は不連続層を有する生体適合層は、例えば、約0Åから約200Åの膜厚を有し得る。実施形態において、ポリマは、表面酸化前に、約10Åから約2000Åの膜厚を有し得る。
【0030】
実施形態において、製品は、望ましくは、第2結合層、第2ポリマ又はそれら双方をさらに含み得る。第2結合層はポリマに付着され得るし、第2ポリマは第2結合層に付着され得る。第2結合層は第1ポリマに共有結合され得し、第2ポリマは第2結合層に共有結合され得る。第2結合層は、例えば、エチレンジアミン、エチレングリコール又はオリゴエチレングリコールジアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等の化合物又はそれらの組合せ等、ポリアミン若しくはポリオールから得られ得る。実施形態において、第2ポリマは、例えば、エステル基、エポキシド基又はアルデヒド基、無水基又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つのアミン反応基で有り得る。第2結合層化合物は、第1ポリマに共有結合され、静電的に付着され又はそれら双方により付着され得るし、第2ポリマは、第2結合層化合物に共有結合され、静電的に付着され又はそれら双方により付着され得る。第2結合層化合物は、例えば、ポリアミン、ポリオール等の化合物又はそれらの組合せであり得る。第2結合層化合物は、例えば、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等の化合物又はそれらの組合せであり得る。第2ポリマは、例えば、少なくとも1つの無水基で有り得る。第2ポリマは、例えば、ポリ無水マレイン酸又は無水マレイン酸から得られ若しくは無水マレイン酸から派生されたコポリマであり得る。
【0031】
実施形態において、本開示は、基板と、前記基板に直接的に若しくは間接的に付着せしめられた生体適合層と、前記生体適合層に付着せしめられた第2結合層と、を含む細胞培養製品を提供する。少なくとも前記生体適合層及び前記第2結合層を含む前記製品の前記表面は、細胞培養の前に酸化されている。
【0032】
実施形態において、本開示は、上述したバイオセンサ製品を製造する方法を提供する。当該方法は、前記基板の前記表面に付着され且つ少なくとも1つの酸化性モノマを含むポリマ及び前記ポリマに付着せしめられた第2結合層を有する基板を提供するステップと、当該結合されたポリマ及び前記第2結合層の前記表面を酸化させて、前記基板上に生体適合層を形成するステップと、を含む。
【0033】
実施形態において、本開示は、バイオセンサ製品を製造する方法を提供する。方法は、表面にSMAを被膜した後にトリアミンと被覆ポリマを反応させる等の化学的修飾ステップを実行して、当該コートされた表面を酸化するステップに先立って、第2結合層を形成するステップ若しくは被膜が付着される基本的導波路の表面を変化させるステップのうち少なくとも一方又は双方を含む。
【0034】
これらステップは、酸化性UV−オゾン又はプラズマ処理に関連して化学的に修飾されないSMA表面と比べて、信号応答、分析動力学及び分析のロバスト性において改良性能を有する細胞培養製品、バイオセンサ又は双方に適切な表面を提供するために例示されてきた。この化学修飾を用いて、SMA表面は、弱付着性細胞株に対して、フィブロネクチン等の生物学的コーティングと同様に振る舞う。しかしながら、これら製造表面は冷却を必要としないし、生物製剤により被膜された表面を有するマイクロプレートよりも製造及び保存することがかなり容易である。
【0035】
実施形態において、基板の表面は、例えば、金属酸化物又は化合金属酸化物を含み得る。実施形態において、基板の表面は、例えば、Nb2O5−SiOxから構成され得る。例えば、共有され且つコーニング社に譲渡された米国特許番号7,218,802号、5,851,365,5,656,138号及び5,525,199号を参照されたい。
【0036】
実施形態において、前記第2の結合層は、例えば、ポリエーテルトリアミンであり得る。実施形態において、ポリエーテルトリアミンの分子量は、例えば、約200から約1000であり得る。実施形態において、ポリエーテルトリアミンの分子量は、例えば、約300から約500であり得る。実施形態において、ポリエーテルトリアミンの分子量は、前述の分子量の中間的値と範囲を含むことができる。
【0037】
実施形態において、本開示は、上述の処理によって細胞培養製品を提供する。
【0038】
実施形態において、本開示は、リガンドの分析を実行する方法を提供する。方法は、リガンドを少なくとも1つの製品を含み且つ生体適合層に関連付けられた生体物質を有するバイオセンサ製品に接触せしめるステップを含み、前記リガンドが前記生体物質に結合する場合、前記バイオセンサを用いて前記リガンドによって誘起された前記生体物質の応答を検出する。
【0039】
実施形態において、製品及び製造方法は、望ましくは、生体適合層に関連付けられた生体物質をさらに含む。生体材料または生体試料は。例えば、生体適合層に共有結合され得るし、生体適合層に静電的に付着され得るし又はそれら双方であり得る。実施形態において、生体材料は、例えば、天然の又は合成のオリゴヌクレオチド、天然の又は合成のヌクレオチド/ヌクレオシド、核酸(DNA又はRNA)、ペプチド天然の若しくは合成のアミノ酸を含む、抗体、ハプテン、生物学的リガンド、タンパク質膜、脂質膜、タンパク質、小分子、細胞等のエンティティ又はそれらの組合せであり得る。タンパク質は、例えば、ペプチド、タンパク質またはペプチドの小片、細胞膜結合性タンパク質又は細胞核タンパク質であり得る。
【0040】
実施形態において、本開示は、上記に例示され説明された細胞培養製品を製造する方法を提供する。方法は、当該基板に付着せしめられた結合層と、当該結合層に付着せしめられたポリマ層を有する基板を提供するステップを含む。前記ポリマは、少なくとも1つの酸化性モノマを含む。そして、方法は、前記ポリマ層の前記表面を酸化させて、前記基板上に生体適合層を形成するステップを含む。
【0041】
実施形態において、本開示は、反応性ポリスチレンコポリマの薄膜層によって被覆された固体基板における細胞の付着及び培養を改良する方法を提供する。当該反応性ポリスチレンコポリマの薄膜層は、プラズマ又はUVオゾンのストリームに対して暴露することによって酸化された。本明細書に開示されているように、k細胞の付着を改善する当該方法は、基本となる導波路の化学的組成における変化、例えば、プラズマ若しくは紫外線オゾン又はそれらの双方の前の1つ以上の結合層を有する薄膜のポリマ層の修飾を含み得る。修飾は、細胞に呈された表面層の官能基及び形態を強化し得るし、細胞付着および成長を改善せしめ得る。実施形態において、この表面を、「化学的に修飾された」SMA又は「修飾された」SMAと称する。
【0042】
実施形態において、開示された製品を製造する方法は、例えば、修飾ポリマ層の表面を酸化させることによって付加的に又は代わりに達成されて、ポリマにより処理された表面が第2結合層により処理されるとき、生体適合層が形成される。
【0043】
実施形態において、本開示は、固体基板において被膜された反応性ポリスチレンコポリマの薄膜を、細胞の付着及び培養を促進する表面に変換する方法を提供する。
方法は、薄膜等の反応性ポリスチレンコポリマ膜の化学的修飾(「修飾された」)及びプラズマ又はUVオゾンのストリームを用いた膜の処理(「酸化された」)を含む。本開示は、ポリスチレン反応性コポリマの選択的化学修飾を、アミン類又はアルコール類等の求核基を有する化合物に提供することによって、上記した同時係属中の米国特許出願第11/973,832号に開示された製品及び方法の更なる実施例を提供する。これにより、例えば、細胞の結合性が改善され、細胞の分析応答性が改善され、且つ、細胞の分析動特性が改善される。
【0044】
金属酸化物被膜又は混合金属酸化物被膜は、例えば、物理蒸着(PVD)処理によって堆積されて、意図した基板表面上に被膜が形成され得る。高密度(すなわち、連続し且つ実質的にホール若しくは欠陥が存在しない)金属酸化物又は混合金属酸化物膜の堆積は、共有され且つ譲渡された上述の米国特許に応じて達成され得る。
【0045】
本開示に関する強化は、TOPASAdvancedPolymers社から利用可能なTopas登録商標COC基板等の他のガラス、金属、プラスチック基板等の材料又はそれらの組合せを含む他の基板に利用可能である。2008年8月29日(SP07−191)に出願された共有され且つ譲渡された同時継続の米国特許出願第12/201,029号は、プラズマで処理され且つ生物学的活性物質と細胞の結合密度を高めた環状ポリオレフィンコポリマの表面について言及している。これらプラズマで処理された環状ポリオレフィンコポリマの表面は、共役を利用して、生物学的に活性な物質又は細胞に対してさらに強化され得る。
【0046】
金属酸化物又は混合金属酸化物の導波表面は、細胞を露出した金属酸化物若しくは混合金属酸化物又はポリマで被膜されたバイオセンサ表面に付着せしめ且つバイオセンサシステムの検出ゾーンの近傍において関連細胞を有するバイオセンサベースの細胞分析に適切である。
【0047】
本開示は、例えば、向上された細胞付着特性を含むさらなる利点を提供する。ここで、先に開示されたのと同一の洗浄条件を用いて表面から洗い落とされる細胞数がより少ない。先に開示された結合応答性と比較して、例えば、信号の強度及び信号の均一性に対して向上された分析結合応答性も実現される。さらに、Epic登録商標細胞ベースの分析応答は、多くの異なる細胞株に対して開示された酸化され且つアミン修飾されたSMAによって被覆されたセンサの表面と比較して、フィブロネクチンのみ被膜されたセンサ表面に匹敵するか又はそれよりも大きいと例証された。先に開示された方法に対して信号強度が非常に強化されているので、応答性は、現在、市販のEpic登録商標のフィブロネクチン被覆されたマイクロプレートに対して得られたものに匹敵する。さらに、細胞応答の動特性は、Epic登録商標フィブロネクチンプレート上で測定されたものと、より一致する。
【0048】
ポリマの表面を酸化させること又は酸化は、例えば、ポリマの表面をUV‐オゾン、プラズマ又はそれら双方にある期間接触せしめるステップを含み得る。暴露期間は、実験的に容易に決定され得るし、例えば、選択された材料、材料の膜厚、選択された酸化性媒質とその濃度及び表面に対する近接性等の事項に依存し得る。プラズマは、ポリマの酸化性炭化水素と相互作用して酸素含有機能性をポリマ表面に形成するイオン、原子、オゾン、酸素原子及び酸素分子の準安定種並びに電子を通常含む。さらに又はあるいは、酸素があるときにUV光でポリマ膜の表面を照射して、表面において光化学酸化を誘起して、機能性を含む酸素の容量を増大せしめ、例えば、C−H要素又は−CH=CH−要素を低減せしめ得る。
【0049】
実施形態において、本開示の製品又は準備方法は、生体適合層に関連付けられた生体物質を更に含み得る。生体材料は、例えば、約1時間以下から、約0.5時間以下から及び約0.1時間以下から十分な量にて、製品に付着され得る。生体材料は、生体材料の等電点(pI)以下の例えば約0.5から1pHのpHにて製品に付着され得る。
【0050】
実施形態において、更なる製品の態様又は準備ステップは、例えば、遮断剤を生体適合層に付着せしめるステップを含み得る。遮断剤は、例えば、正電気を帯びたデキストラン等の正電気を帯びた化合物、特に、ジエチルアミノエチルデキストランを含み得る。遮断剤は、ポリマを酸化させる前に又は望ましくはポリマを酸化させた後に製品に関連づけられ得る。
【0051】
実施形態において、本開示は、リガンドの分析を実行する方法を提供する。方法は、リガンドを、少なくとも開示された製品のうちの1つを含むバイオセンサ製品に接触せしめるステップを含む。当該バイオセンサ製品は、前記リガンドが前記生体物質に結合する場合、前記バイオセンサを用いて前記リガンドによって誘起された前記生体物質の応答を検出するような生体適合層に関連付けられた生体物質を有する。
【0052】
実施形態において、本開示は、リガンドの分析を生細胞を用いて実行する方法を提供する。方法は、本明細書において図示され説明されているように修飾表面を有する少なくとも1つの細胞培養製品を含むバイオセンサを提供するステップと、バイオセンサを用いて細胞を培養するステップと、リガンドを有する溶液を、細胞が付着されているバイオセンサに接触せしめるステップと、を含むので、細胞は、細胞培養製品の修飾表面に付着され、当該修飾表面内で付着され、当該修飾表面上で付着されるようになり、リガンドが表面関連細胞と反応する場合、バイオセンサを用いて、リガンドによって誘起された細胞の応答を検出する。
【0053】
実施形態において、相互作用リガンドは、例えば、刺激物質、治療用化合物、治療候補物質、予防的候補物質、予防的物質、化合物、生物学的分子、ペプチド、タンパク質、生物試料、薬物候補の小分子、薬物候補の生物学的分子、薬物候補小分子‐生物の結合体、病原体又はそれらの組み合わせ等、生体適合層と関連付けられた生体材料に対する補助的エンティティを含み得る。実施形態において、
結合されたリガンドは、あらゆる適切な方法、例えば、導波共鳴グレーティング(RWG)システム、表面プラズモン共鳴(SPR)、インピーダンス、マス分光分析及び同様の方法等の光学バイオセンサを含む蛍光標識非依存性検出方法、によっても検出され得る。
【0054】
特に指定しない限り、本明細書で使用された不定冠詞“a”“an”、又は対応する定冠詞“the”は、少なくとも1つ、又は1つ以上を意味する。
【0055】
当業者にはよく知られている簡略名が使用され得る(例えば、時間又は(複数の)時間に対して「h」若しくは「hr」、(複数の)グラムに対して「g」若しくは「gm」、ミリリットルに対して「mL」及び室温に対して”rt”、ナノメータに対して「nm」等の簡略)
要素、成分、添加剤、細胞のタイプ、抗体等、及びその範囲に対して開示された特定の値又は好ましい値は、例示する目的のためにあるに過ぎず、それらは他の画定された値又は画定された範囲内の他の値を除外しない。本開示の構成、装置、及び方法は、いかなる値を有するこれらを含み、或いは、本明細書に記載された値、特定の値、より特定の値、及び好ましい値のいかなる組合せも有するこれらを含む。
【0056】
[バイオセンサベースの細胞分析とバイオセンサ基板]
一般に、無標識細胞に基づく分析は、生体細胞におけるリガンド誘起の応答を観測するためにバイオセンサを採用している。バイオセンサは、光学的、電気的、熱的、音響的、磁気的トランスデューサ等のトランスデューサを通常利用しており、分子認識事象又はリガンド誘起の細胞層の変化を定量化可能な信号に変換する。本開示は、ほとんどすべてのタイプのバイオセンサ表面に利用可能であるものの、RWGバイオセンサと電気バイオセンサのみが例示されている。
【0057】
RWGバイオセンサ
RWGバイオセンサは、基板(例えば、金属酸化ガラス)、埋め込まれたグレーティング構造を有する導波薄膜及び細胞層を含む。RWGバイオセンサは回折格子によって導波部に対する光の共鳴結合を利用し、溶液表面の界面において全内反射が生ずる、界面において次々に電磁場が形成される。この電磁場は事実上エバネッセントであり、電磁場はセンサの表面から指数関数的に減衰することを意味している。電磁場が初期値に関して1/eに減衰する距離は、侵入深さとして知られており、特定のRWGバイオセンサに関する設計の関数であり、通常約200nmのオーダーである。このタイプのバイオセンサは、かかるエバネセント波を利用して、センサの表面の近傍の若しくはセンサの表面における細胞層のリガンド誘発の変化を特徴付けている。
【0058】
電気バイオセンサ
電気バイオセンサは、基板(例えば、プラスチック)、電極、及び細胞層から構成され得る。この電気的な検知手法において、細胞は基板上に並べられた小さな金の電極上に培養され、システムの電気インピーダンスが経時的に調べられる。インピーダンスは細胞層の電気伝導率の変化の指標である。通常、固定周波数若しくは変動周波数におけるわずかに一定の電圧が、電極又は一連の電極に印加され、回路を介した電流が時間が時間とともに観測される。リガンド誘起の電流変化によって、細胞の応答に関する指標が与えられる。細胞全体について検出するインピーダンス測定の利用は1984年に最初に実現された。それ以来、インピーダンスベースの測定は、細胞の付着及び拡散、細胞の微小運動、細胞の構造変化、及び細胞の死を含む広い範囲における細胞の事象を研究するために利用されてきた。古典的なインピーダンスシステムは、小さな検出電極及び大きな基準電極の使用に帰属して、分析に関する変動性が高いという欠点を有する。この変動性を克服するために、CellKey system(MDS Sciex、南サンフランシスコ、カリフォルニア州))やRT‐CES(ACEA Biosciences株式会社、サンディエゴ、カリフォルニア州)等のシステムの最新世代は、ミクロ電極アレイを有する集積回路を利用している。
【0059】
RWGバイオセンサを用いたGPCR活性化の光学信号
細胞は、通常数十ミクロンの比較的大きい寸法の動的な物体である。RWGバイオセンサは、細胞の底部におけるリガンド誘起の変化の検出を可能にし、エバネセント波の侵入度によって決定される。その上、光学的バイオセンサの空間分解能は、入射光源のスポットサイズ(約100ミクロン)によって決定される。したがって、一般に、非常に密集した細胞層が、最適な分析結果を得るのに使用され、センサの構成は、基板、導波薄膜及び細胞層から成る三層導波複合体と見なされ得る。細胞生物物理学と組み合わせて3層導波バイオセンサ理論に従って、我々は、細胞全体についての検出において、有効屈折率におけるリガンド誘起の変化、すなわち検出された信号Nは数式(1)によって規定されることを見出した
【0060】
【数1】
【0061】
尚、S(C)は細胞層に対するシステム感度であり、ncはバイオセンサによって検知された細胞層の局所的な屈折率における配位子誘起の変化である。ΔZcは細胞層への侵入深さであり、αは特定の屈折率の増大(タンパク質に対しては約0.18/mL/g)であり、ziは、質量の再分配が生ずる距離であり、dは細胞層内の薄片の架空の厚さである。ここで、細胞層は垂直方向において均等に離間された部分に分割される。我々は、検出された信号が細胞層の底部の屈折率ncの変化に一次的に正比例することを想定した。細胞内の所定の容積の屈折率は、主にタンパク質等の生物分子の濃度によって主に決定されると仮定すると、ncは、検出ボリューム内の細胞性ターゲット又は分子集合の局所濃度変化に正比例する。重み付け因子exp(−zi/Zc)は、指数関数的に減衰するエバネッセント波の特性を考慮して、生ずる局所的タンパク質濃度の変化について考慮されている。したがって、検出された信号は、センサの表面から異なる距離で生じる質量再分布の和であり、各々が全ての応答に対して不均一に貢献する。数式(1)が提案していることは、局所的なタンパク質濃度変化の結果として並びに局所的なタンパク質濃度変化が生ずる場所及び時間の結果として、RWGバイオセンサを用いて検出された信号は主として垂直な質量再分布に対して敏感である。検出された信号は、動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号と呼ばれている。
【0062】
細胞の信号伝達は、一連の空間的であり且つ時間的な事象からなる秩序化され且つ規制された態様にて通常生ずる。例えば、Gタンパク質‐共役受容体(GPCRs)の活性は、メッセンジャーの代替、cytoskeletalの再モデル化、遺伝子発現、細胞接着の変化等の事象を含む一連の空間的であり且つ時間的な事象を生じせしめる。各セル事象は、反応速度、所要時間、振幅、及び質量の移動に関かんするそれ自身の特性を有する。したがって、これら細胞の事象が生じる場所に依存して、これら細胞の事象が全体的なDMR信号に対して異なって寄与し得ることが合理的に想定されている。種々のGPCRsをターゲットとする作用薬のパネルを使用する際に、
我々は、調節された信号伝達経路を反射するヒト類表皮腫癌A431細胞内における3つのクラスのDMR信号を特定した。当該3つのクラスのDMR信号は、調節された信号伝達経路を反射する。受容体が結合されるGタンパク質に依存して、各々が一つのクラスのGPCRsと関連付けられているので、得られたDMR信号は、それぞれGq−DMR、Gs−DMR及びGi−DMR信号と命名した。各クラスのDMR信号は、異なるクラスのGPCRsを介して調節された固有の信号の積分を反映して、異なる運動特性及び動的特性を示す。DMR信号の固有の特性が、親のないGPCRsのGタンパク質結合機構を特定するのに使用され得る。
【0063】
GPCR活性化のバイオインピーダンス信号、−
典型的なインピーダンスベースの細胞分析において、細胞は移動されて培養ウェルの底に並べられた金の電極に接触される。センサーシステムの総インピーダンスはバイオセンサを囲むイオン環境によって主として決定される。電界を印加すると、イオンは電界によって指向された運動を行い、濃度勾配による拡散を受ける。細胞全体についての検出において、全電気インピーダンスは4つの成分、すなわち、電界溶液の抵抗、細胞のインピーダンス、電極/溶液界面におけるインピーダンス及び電極/細胞界面におけるインピーダンスを有する。さらに、細胞のインピーダンスは2つの成分、すなわち、抵抗及びリアクタンスを含む。細胞のイオン強度に関する伝導特性は抵抗成分を与える。これに反して、不完全なコンデンサとして作用する細胞膜は周波数に依存する反応要素に寄与する。したがって、全インピーダンスは、細胞の生存能力、細胞の密集度、細胞の数、細胞の形態、細胞の付着度、イオン環境、細胞内の水分及び検出周波数を含む多くの因数の関数である。
【0064】
RT−CESシステムにおいて、印加されたこの小電位の割合が細胞内部に連結される。細胞に印加されたかかる信号は、典型的なほ乳動物細胞の静止膜電位よりもはるかに小さいと信じられているので、細胞の機能に対してほとんど障害にならなないか若しくは全く障害にならない。RT−CESシステムは、インピーダンスのこれら変化を測定し、細胞インデックスと呼ばれるパラメータとしてそれを表示する。数式(2)に従って、細胞インデックス(CI)が計算される
【0065】
【数2】
【0066】
ここで、Nは、インピーダンスは測定され振動数ポイントの数(例えば、10kHz、25kHz、及び50kHzに対してN=3)であり、R0(f)とRcell(f)は、ウェルにおいて細胞が存在しない場合と存在する場合の周波数電極抵抗である。
【0067】
CellKeyシステムにおいて、センサシステムインピーダンスの変化は、受容体刺激に応答して生ずる細胞層の複雑なインピーダンス(デルタZまたはdZ)変化に帰属される。低周波数において、印加された小電圧により、層内の個々の細胞周辺に流れる細胞外電流(iec)が誘起される。しかしながら、イオンチャンネルに起因する細胞膜を介した伝導電流は、低レベル測定周波数で重要であり得る。高周波数において、それらは、細胞膜に侵入する細胞内電流(itc)を誘起する。各ウェルに対して測定された電流に対する印加電圧の比が、オームの法則により説明されるように、インピーダンス(Z)となる。
【0068】
細胞が受容体リガンド等の刺激にさらされるとき、アクチン細胞骨格の調節等の複雑な細胞性事象を生じせしめる信号変換事象が、活性化される。当該複雑な細胞性事象は、例えば、細胞の密着性、細胞の形態、及び体積、細胞間相互作用における変化を生じせしめる。これら細胞の変化は、細胞外電流及び細胞内電流の流れに対して個別的又は集団的に影響を与え、これにより、測定されたインピーダンスの強度及び特性に影響を与える。図4は、受容体が連結されるGタンパク質に依存して、3つのクラスのGPCRs活性化を介して調節された3つのタイプのインピーダンス信号を示している。分布は、CellKeyシステムを使用して得られる。また、同様の分布が、RT−CESシステムを使用して記録された。これらインピーダンス信号は、異なるクラスのGPCRsの活性化に応答して、インピーダンスによって測定された細胞パラメータに影響を与えるアクチン細胞骨格に与える異なる効果に起因していることが信じられている。Gq−GPCRs及びGi−GPCRsの活性化によって、アクチン重合が増強されることが示されているものの、Gs−GPCRsの刺激によって、アクチン解重合が引き起こされる。
実験
Corning登録商標Epic商標システムは、細胞ベースの創薬を目的とした無標識高スループットスクリーニングのためのツールを提供する。実施形態において、Epic登録商標システムは、SBS(Society for Biological Screening)標準の384ウェルマイクロプレートフォーマットを使用し得る。これにより、生細胞は、マイクロプレートの表面において直接培養される。様々なマイクロプレート表面が開発されており、適切な細胞付着性と成長をサポートしている。チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO:Chinese hamster ovary cells)、A431細胞、HeLa細胞、Cos7細胞及びヒト線維芽細胞を含む一次細胞等の形質転換細胞株等の適度に付着性を有する細胞に対して、例えばSiOx、TiO2及びシリコン硝酸態を含む無機表面材料は、良好に作用する。HEK293細胞といくつかの設計されたCHO細胞等の弱付着性細胞に対して、例えば、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、フィブロネクチンタンパク質分解片、コラーゲン等の材料を含み且つ細胞の付着性を促進することが知られている生体材料によって修飾されたマイクロプレート表面は、細胞付着性、増殖をサポートし、強健な細胞分析を可能にする点において、無機表面においてかなりの改善を例証してきた。これは、「バイオセンサ細胞分析のための表面及び方法」という発明の名称の2007年2月28日に出願された米国仮特許出願第60/904,129号に開示されている。しかしながら、これら生体ポリマ被膜は多種の細胞株に応じて特定のレベルの変化性をも示した。被膜の安定性が限定されていること、細胞生物学に及ぼすこれら細胞外マトリックスの生じ得る不要な影響、及び、被膜のコストは、利用可能な技術に関連付けられた重要な関心事である。したがって、弱付着性細胞を含む広範囲な細胞タイプに適切な細胞付着性と確固たる細胞分析をサポートする合成表面の開発が、無標識バイオセンサベースの細胞分析又は同様のバイオセンサシステムに望まれる。かかる合成表面は、改善された能力を提供し、バイオセンサ分析システム等の培養システムに対して広範な利用性を提供し得る。
【0069】
コーニング登録商標CellBIND登録商標表面、すなわち、特許化(米国特許第6,617,152号)された生体組織培養基板のプラズマ表面処理は、弱付着性細胞に対する付着性をサポートすることが知られている。CellBIND登録商標処理中に、高反応性表面プラズマは、バルクポリスチレン基板の表面と反応して、細胞の付着及び拡散において望まれる表面粗度及び親水性特性を生じせしめる。CellBIND登録商標処理は、培養の表面を処理するマイクロ波源を使用する。その処理は、かなり多くの酸素を細胞培養表面に組み入れることによって、細胞の付着性を完全し、少なくとも細胞培養の表面により多くの親水性を提供して、表面安定性を増大せしめる。Corning登録商標CellBIND登録商標の表面、特性、仕様、アプリケーション等の情報が、例えば、「Corning登録商標CellBIND登録商標表面:細胞の付着性を強化するための改良された表面、技術報告書」(www.corning.comを参照されたい)に言及されている。
【0070】
本開示は、実施形態において、例えば、Epic登録商標マイクロプレート表面における高酸化表面を提供する。標準生体組織培養処理表面である標準の表面と比較して、表面修飾されたマイクロプレートは、例えば、弱付着性細胞(HEK293)及び中間付着性細胞(RMS13)について改善された細胞付着性特性及び改善された細胞拡散特性を有することが例証されている。
【0071】
細胞培養及び分析のための容器基板
細胞培養及び分析に使用される多くのタイプの容器基板が存在する。実施例は、スライド、ペトリ皿、マルチ‐ウェルマイクロタイタープレート(例えば、4‐ウェル、6‐ウェル、96‐ウェル、384‐ウェル、1536‐ウェル等)、フラスコ、ローラーボトル及び同様の製品を含む。培養された細胞の用途に依存して、異なる構成の容器基板が望まれる。例えば、共通の細胞生物学研究に、望ましくは、細胞は、スライド、ペトリ皿、又は、低数のウェルを有するマルチ‐ウェルマイクロタイタープレートにおいて培養される。しかしながら、細胞分析、特定の高スループット又はハイコンテントスクリーニングにおいて、望ましくは、細胞は、大なる数のウェル(例えば、96ウェル、384ウェル又は1536ウェル)を有するマルチ‐ウェルマイクロタイタープレートにおいて培養される。生物処理アプリケーションにおいて、望ましくは、細胞は、フラスコ又はローラーボトル内で培養される。多くの細胞培容器は、ポリマ性物質で通常製造され、生体組織の培養処理又はプラズマ処理により通常あらかじめ処理される。
【0072】
本開示の方法は、ポリスチレン含有コポリマ等のポリマの薄膜を用いて導管を被覆することによって導管基板を修飾するのに使用され得るし、それに続いて、プラズマ又はUV‐オゾン等の酸化処理が行われるので、得られた酸化表面は、細胞の付着及び成長を促進して、細胞活性に関する分析を可能にする。ポリスチレン含有コポリマ等のポリマ薄膜は、他の適切な官能基を含み得る。当該適切な官能基は、例えば、無水物(例えば、マレイン)、エポキシ、カルボキシ、カルボン酸、ヒドロキシル、アミン、チオール、及び、例えば、共有結合相互作用、電荷‐電化相互作用等の相互作用を介した容器表面に対する付着に利用可能である同様の官能基、又はそれらの組み合わせを含む。あるいは若しくはさらに、容器表面は、結合層により修飾され得るので、結合層は容器表面に共有結合され、同時に、例えばポリスチレン等の酸化可能なモノマユニットを含むポリマ又はコポリマ等の適切なポリマとの相互作用及びそれらポリマに対する付着を可能にする官能基を呈する。スチレン等の酸化可能ユニットの存在によって、プラズマ又はUV‐オゾンのストリーム用いた処理の際に、ポリマ薄膜が酸化され得るし、酸素表面種が増大され得る。ポリマの無水官能基は、アミンを呈する結合層と相互作用して、ポリマを表面に固定し得る。酸化されたポリマは、強化された培養特性において細胞との相互作用し得るポイントを提供し得る。
【0073】
本開示は、生細胞と相性が良い薄膜又は層表面を基板に作成する方法、例えば、CellBIND登録商標に類似した表面をEpic登録商標マイクロプレート等のバイオセンサーマイクロタイタプレートに作成する方法を提供する。かかるマイクロプレートの表面は、広範囲な細胞株に適切な細胞付着及び成長を可能にし、また、バイオセンサを使用することで確固とした細胞ベースの分析を可能にする。開示された表面修飾されたマイクロプレートの観測された性能は、バルク修飾表面と同程度であった。本開示のこの材料及び方法は、弱付着性細胞といくつかのいわゆる難しい細胞株を有する分析と予備試験に特によく適応されている。
【0074】
図1は、本開示のSMAポリマを呈するバイオセンサマイクロプレートの酸化表面の準備の概略図である。バイオセンサマイクロプレートの各ウェルは、埋め込まれたバイオセンサを有し得る。バイオセンサは、基板の基礎となるグラスと、Nb2O5等の高屈折率材料により製造された導波薄膜と、導波薄膜上に堆積されたSiO2薄膜と、を含む。導波路フィルムは、周期的に埋め込まれたグレーティング構造を有する。殺菌するためにUV/オゾンを用いて予備洗浄され且つ予備処理された清浄な市販のEpic登録商標マイクロプレート等のマイクロプレートのSiO2表面は、10分間水溶液中で5%のアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)を用いて処理されて、アミンを呈する表面を有するマイクロプレートが与えれた。得られたマイクロプレートは、水及びエタノールで迅速に洗浄され、過剰なAPSが除去された。被覆されたプレートは、55℃にて1.5時間硬化され、それに続いて、エタノールを用いて付加的な洗浄が行われた。コートされたマイクロプレートは、脱水機にかけられ真空乾燥された。ポリマ性APSは、SiO2表面上に共有結合し若しくは固定し、又は、シラン化学反応を介して相当の表面上に共有結合し若しくは固着する。得られたポリマ性APSは、結合層として機能する。
【0075】
スチレン/無水マレイン酸(SMA:styrene/maleic anhydride)のコポリマは、アミンを呈するマイクロプレート表面に共有結合され、ポリスチレン無水マレイン酸コポリマ(SMA)被覆されたマイクロプレートを与える。ここで、示されたSMAコポリマは、例えば、約10g/mLの濃度にて表1にみられるように、適切な溶剤で溶解され、被覆された。SMAコポリマは、Sigma−Aldrichから利用可能である。
【0076】
【表1】
【0077】
処理は、完全な可溶化のための広範な加熱/超音波処理を必要とし得る。
【0078】
各々のポリマ溶液は、50μg/mL又は200μg/mL等の所望の被膜濃度までさらに希釈され、約1時間、APS表面被覆されたプレート上で固定されたアミノ基に接触され且つ当該アミノ基と反応された。プレートが溶剤と無水エタノールによって洗浄されて、付着されていないポリマが除去されたのちに、SMAによってコートされたプレートは、乾燥され、プラズマ処理等のポリマ表面酸化処理が実行されて、酸化されたSMA表面が形成された。SMAコーティングは、また、代替の被膜法を使用しても利用され得る。当該代替の被膜法は、例えば、傾斜コーティング、ドローバー被膜、スピン被膜、化学蒸着及び同様の被膜方法、又はそれらの組合せである。上述のレイヤ‐バイ‐レイヤの方法又は連続的被膜方法(すなわち、APSを基板へ適用し、SMA等のポリマをAPS被覆基板へ適用し、APS被覆基板上に被覆されたSMA等のポリマの酸化表面処理を適用する)は、結合層を有しない基板表面上のSMAポリマの受動的な吸着によって準備された表面被覆と比較して、洗浄に関して、優れた安定性を有する表面被膜を提供し得る。結合層(例えば、被覆されたAPS被膜された)基板に対するSMA若しくは同様のポリマの共有結合性付着は、例えば、SMAとAPS層の間の電荷相互作用によって高められた安定性を提供し得る。得られた処理後のプレートは、本明細書に開示されているように、表面酸化処理が実行されて、表面酸化されたSMAアウタ層又はトップ層を有する表面修飾マイクロプレートが提供された。当該表面修飾マイクロプレートは、例えば、生細胞等の材料との相互作用に利用可能である。
【0079】
図2は、本開示の表面のFTIRスペクトルを重ね合わせたものを示している。当該表面は、SMA(200)、様々な時間、すなわち、1分(205)、3分(210)、7分(215)及び14分(220)でUV−オゾン修飾されたSMA、及び、比較のためのCellBIND登録商標表面(225)である。
【0080】
本開示の酸化されたポリマ表面は、例えば、SMA表面の紫外線/オゾン処理によっても、達成され得る。ガラスの顕微鏡用スライドは、まず、APSの5%溶液を用いて、10分間被膜された。スライドは、水で洗浄され、そしてエタノールで洗浄され、窒素流の下に乾燥された。SMA(ポリスチレン‐アルト‐無水マレイン酸の部分的なメチルエステル;約350,000のMw)溶液が、約10mg/mLの濃度の無水N‐メチルピロリジノン(NMP)におけるSMAポリマの溶解によって準備された。NMPにおけるSMAは、無水IPAにおいて希釈され、2mg/mLの濃度を有する最終的なSMA溶液が製造された。APS被膜されたスライドは、10分間、SMAの2mg/mLの溶液に浸され、SMA溶液から除去され、エタノールを用いて洗浄が行われた。スライドは、SMA表面の基線測定(図2,曲線200)を得るために、偏光変調赤外反射吸収分光(PMFTIRRAS)によって分析された。SMA表面がUVオゾン処理されたとき、表面からの無水マレイン酸残基の損失は、1857cm-1及び1783cm-1において、バンド強度の減少によって観測された(図2,曲線205,210及び215)。また、1495cm-1及び1445cm-1におけるスペクトルバンドの低減に対応するスチレン基の消失に起因する芳香族特性の損失があった。1750cm-1−1700cm-1のバンド強度における増加は、ポリマ表面におけるカルボニル基とカルボキシレート基の形成を示した。脱プロトン化カルボキシレート基における増加は、1695cm-1−1550cm-1において観測されたショルダ構造を生じせしめた。理論によって制限されないものの、これら吸収帯域が非常に広範であるので、おそらく、カルボニルとカルボン酸の分子環境の広範な分布が存在すると信じられている。最終的に、アルコールのO−Hの変形を示す1500cm-1−1300cm-1からの広帯域の形成があった。14分間のUV/オゾン処理を使用して取得された酸化されたSMA表面は、ベアガラススライド(データは示されていない)とほとんど同じFTIRスペクトル(220)を生じせしめた。これは、14分間のUV/オゾン処理によってガラス基板からすべてのSMA被膜が除去されることを示している。しかしながら、7分間のUV/オゾン処理を使用して取得された酸化されたSMA表面は、FTIRスペクトル(215)を生じせしめた。FTIRスペクトル(215)は、標準CellBIND登録商標バルクポリスチレンマイクロプレート表面(225)のものと類似する。それにもかかわらず、これら結果が示すことは、適切な強度及び時間が与えられると、UV/オゾン処理は、SMAを呈する表面酸化を生じ得るので、これらの表面は、化学的組成と細胞培養特性において標準CellBIND登録商標ポリスチレン表面を模倣する。
【0081】
図3A及び3Bは、7.5時間プラズマ処理表面に培養した後のHEK293細胞の光学顕微鏡イメージ(10x)を示している。図3Bに示されているように、HEK293細胞は、(すなわち、ガラス基板のプラズマ処理はAPS被膜及びSMAポリマ被膜を全く有していない)プラズマによって処理されたベアガラス基板のものと比較すると、プラズマ処理されたSMA(ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸))の表面において良好な拡散を示す(図3A)。これは、UV‐オゾンプラズマ処理にさらされた全体のEpic登録商標マイクロプレートの多くのセクションのうちの1つであった。
【0082】
図4A及び4Bは、プラズマ処理表面において一晩培養されたHEK293細胞の光学顕微鏡像(10x)を示している。図4Aは、HEK293細胞に関するものであり、プラズマ処理されたSMAの表面に一晩培養した後の通常の形態と予想された密集度を示している。ここで、SMAは、部分的なイソオクチルエステルとクメン終端されたコンテンツを有するポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)である。図4Bは、同じモノ層が緩衝溶液(すなわち、20mMのHEPESを有するハンクス均衡塩類溶液(HBSS))を用いた通常の洗浄に耐え得ることを例示している。
【0083】
細胞付着、拡散、及び増殖をサポートするプラズマ処理されたSMAの表面の能力は、384ウェルのEpic登録商標マイクロプレートにおいて評価された。HEK293細胞は、プラズマで処理された非被覆表面(図3A)と比較して、プラズマ処理されたSMA表面(S2)(図3B)において良好な拡散を示した。HEK293細胞の一晩の培養は、通常のTCTフラスコを用いて観測されたように(データ示されていない)、プラズマ処理されたSMAの表面における正確な形態(図4A)を示している。細胞は、プラズマ処理されたSMA表面(S5)(図4A)において一晩の後に、正常の速度で成長し、密集度に達した。これは、標準のEpic登録商標マイクロプレート表面及びTCTフラスコの性能と一致した。しかしながら、HEK293細胞は、プラズマ処理されたSMA(S5)の表面における細胞単層にとって示されているように(図4A)、標準のEpic登録商標マイクロプレートの表面よりはるかに良好なプラズマ処理されたSMA表面に付着するようである。これは、市販のTCTマイクロプレートに培養されたHEK293細胞の振る舞いと一致した。しかしながら、HEK293細胞は、HBSS緩衝液(Fig.4B)を用いた激しい洗浄後にプラズマ処理されたSMA(S5)の表面における細胞単層にとって示されているように、これらTCTマイクロプレートの表面よりもはるかに良好なプラズマ処理されたSMAの表面に付着するようである。HKE細胞は、HEK293細胞の弱付着性特性が原因で、標準のTCT表面に対する同じタイプの洗浄を通常耐えることができない。図4Aは、洗浄前の単層を示している。これに反して、図4Bは洗浄後の同一の単分子層の位置を示している。
【0084】
CHO−K1、ネズミムスカリン作動性受容体サブタイプ1(CHO−M1)を安定して発現する設計されたCHO細胞株、A431及びRMS13細胞を含む他の4つの細胞株は、調べられた。それら細胞はすべて、多種のレベルで改善された付着性及び拡散性を示した。図5A及び5Bは、プラズマ処理表面において一晩若しくは16時間培養されたRMS13細胞の光学顕微鏡像を示している。図5Aにおいて、RMS13細胞は、プラズマ処理されたSMAの表面に一晩培養した後に、通常の形態と予想された通常の密集度、すなわち、部分的なイソオクチルエステル及びクメンにより終端されたコンテンツを有する酸化されたポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)を示す。図5bにおいて、単分子層(10xの拡大画像)は、強固であることが示され、洗浄液後に元の状態を維持し、これらTCTマイクロプレート表面のRMS13細胞と同程度であった。
【0085】
CHO−K1,CHO−M1及びRMS13を含む他の3つの細胞株は、研究試験された。それら細胞はすべて、多種のレベルで改善された付着性及び拡散性を示した。図5Aにおいて、RMS13細胞は、プラズマ処理されたSMA表面に一晩培養した後に(S5)、正確な形態と通常の密集度を示す。単分子層は、プラズマ処理が行われていない非被覆表面(図5B)上のRMS13細胞と比較して、洗浄液後に元の状態を維持する。
【0086】
細胞ベースのGPCR分析が実行され、温度制御環境及び任意の液体処理システムを有するRWG検出器を含むコーニングEpicシステムを使用してすべてのプラズマ処理表面について検査された。検出システムは集積された光ファイバの中心に設けられ、384ウェルにおいて反射されたビームについてリガンド誘起の波長シフトが測定された。細胞は、密集するまで、384ウェルのEpic2マイクロプレート内で培養された。細胞は、分析緩衝液を用いて洗浄され、分析を行う前に、1.5時間、選択温度にて、装置内で培養された。GPCRsは多種のリガンドにより活性化され、得られたDMR(動的質量再分布)信号が、記録された。
【0087】
図6A乃至6Cは、8マイクロMのSFLLR−アミドによって誘起され且つ3つの異なるタイプの表面において培養されたHEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。図6Aは、フィブロネクチン被覆されたEpic登録商標マイクロプレート表面における信号を示している。図6Bは、被膜されていないEpic登録商標マイクロプレート表面における信号を示している。図6Cは、プラズマ処理されたSMA表面、すなわち、ポリマ試料S5又は50μg/mL(600)と200μg/mL(605)の2つの被膜濃度において部分的なイソオクチルエステル及びクメンにより終端されたコンテンツを有するポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)の信号を示している。本開示における各々の信号分布は8つの繰り返された分析の平均を表している。SFLLRアミドによって誘起され且つ両方のプラズマ処理されたSMAの表面では培養されたHEK293細胞のDMR信号が、形状と振幅に関し、低密度フィブロネクチン被覆表面で取得されたものと同程度であった。一方、被膜の膜厚に対するRWGバイオセンサベースの細胞分析の感度に帰属して、皮膜に使用されるSMAの高濃度により信号は小さかった。使用されるSMAの濃度が高ければ高いほど、被膜の膜厚は大きくなり、且つ、バイオセンサベースの細胞分析の敏感性が低下してしまう。これは、バイオセンサの侵入深さ、検出ゾーン、またはセンシング容積が限定されてしまうからである(Fang, Y他、"Resonant waveguide grating biosensor for living cell sensing," (2006) Biophys.J., 91, 1925-1940)。センサ表面から離れて付着せしめられた細胞は、通常、リガンド誘起の応答が低い。対照的に、同じ濃度のSFLLR‐アミドは、被膜されていない表面に培養されたHEK細胞において変動するDMR信号を生じせしめる。これは、増大するDMR相又は正のDMR相(P−DMRと称する)を示すに過ぎない。かかるタイプのDMR信号の出現は、細胞がセンサ表面に弱く付着されることを示している。被膜されていない表面上のHKE細胞は、例えば、分析バッファと媒体を交換することによって、非常に慎重で温和な洗浄液を必要とする。あるいは、細胞単分子層は離間され得る。対照的に、酸化されたSMA表面又は低密度フィブロネクチン表面のいずれか一方の細胞単分子層は、より精力的に洗浄され得る。SFLLR−アミド(化学式H-Ser-Phe-Leu-Leu-Arg-NH2のペプチド配列)は、HEK細胞における内因性のプロテアーゼ活性化受容体サブタイプ1(PAR1)に対する作用薬である。PAR1は、HEK293細胞、A431細胞、CHO−K1細胞,CHO−M1細胞及びRMS13細胞を含む多くのタイプの細胞で偏在して発現される。異なる細胞株でのPAR1の活性化は、異なる信号伝達経路と信号伝達ネットワーク相互作用を生じせしめる。これは、異なるタイプのDMR信号を生じせしめ得る(図10にまとめられている)。これは、得られたDMR信号は、積分された細胞応答であり、ダウンストリームにある多くの信号伝達事象の寄与から構成され、特に、これらは、バイオセンサの検出容積又は検出ゾーン内の細胞性材料の顕著な再分布を生じせしめるからである。
【0088】
同一のプラズマ処理されたSMA表面(S5, 50μg/mLにて被覆)が、CHO−K1細胞,CHO−M1細胞及びRMS13細胞を含む他の3つの細胞株を用いて評価された。図7A乃至7Cは、SFLLR‐アミドによって誘起された3つの異なるタイプの細胞株のDMR信号を示している。当該細胞株は、5マイクロMの同一のSFLLRアミドプラズマ処理されたSMA表面において培養された。当該SMA表面は、すなわち、50μg/mLにて被覆され且つ部分的なイソオクチルエステル及びクメンにより終端されたコンテンツを有するポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)である。図7Aは、培養されたRMS13細胞を示している。図7Bは、培養されたCHO−K1細胞を示している。図7Cは、培養されたCHO−M1細胞を示している。各々は異なった特性を示したが、同一の酸化されたSMA表面における各細胞株のDMR信号は、被膜されていないCorning登録商標Epic商標バイオセンサ表面と、低密度フィブロネクチンによって被膜さえrたEpic登録商標バイオセンサ表面(デーさは示されていない)とにおいて得られた対応するDMR信号と同程度であった。これら結果が示すことは、酸化されたSMA表面が、異なるタイプの付着性細胞の適切な付着及び成長をサポートし、また、すべての4つの細胞株のGPCR分析をサポートすることである。
【0089】
図8A乃至8Cは、5マイクロMのSFLLRアミドによって誘起されたRMS13細胞のDMR信号を示している。当該RMS13細胞は、5つの異なるタイプのプラズマ処理SMA表面において培養された。図8Aは、50μg/mLにて被覆されたプラズマ処理SMA表面を示している。5つの異なるタイプのプラズマ処理SMA表面は、以下の通りである。
【0090】
ポリ(スチレン‐アルト‐マレイン酸)、ナトリウム塩;(800)、S1、
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)(805)、S2、
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、クメン終端、(810)、S3;
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、部分的シクロヘキシル/イソプロピルエステル、クメン終端、(815)、S4、及び
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、部分的なイソオクチルエステル、クメン終端、(820)、S5。
【0091】
図8Bは、200μg/mLで被覆された点を除いて、図8Aのように被覆された材料を使用してプラズマ処理されたSMA表面に対する同様の結果を示している。
S1(830)、S2(835)、S3(840)、S4(845)及びS5(850)。
【0092】
本開示の5つのすべての異なるタイプのSMA表面(S1からS5)のうち、細胞分析性能における差は、SFLLRアミドによって誘起され且つ両方の被膜条件(図8)にてそれら5つの表面上で培養されたRMS13細胞のDMR信号によって示されているように、非常に小さい方であった。理論によって制限されないものの、これはプラズマ表面処理の結果であり得る。当該プラズマ表面処理において、被覆表面は、構造的に類似のものに変換されたかもしれないが、各々のSMAは、プラズマ表面処理前に、異なる重量パーセントの無水物及び異なる数の遊離酸基を有するかもしれない。これはFTIR研究と一致している(図2,データは示されず)。
【0093】
同じプラズマ酸化アプローチで処理された他のタイプの表面が、評価されたとき、細胞アッセイ結果は劇的に異なっていた。例えば、CHO−M1細胞は、それらが4つの異なるタイプのプラズマ処理表面に培養されたとき、異なる分布及び振幅を有する異なるDMR信号を有する10マイクロモルのカルバコールによる刺激に反応した。図9は、カルバコールによって誘起されたCHO−M1細胞のDMR信号を示している。当該CHO−M1細胞は、4つの異なるタイプのプラズマ処理表面において培養された。当該4つの異なるタイプのプラズマ処理表面とは。非被覆表面(900)、APS被膜表面(905)、S5−被覆表面(50μg/mL)(910)及びS1−被覆表面(50μg/mL)(915)である。酸化されたSMAS5の表面上で得られたDMR信号は、非被覆表面上で得られたものと同様の形状を示した。これは、酸化されたSMAS5表面は、細胞生物学とカルバコールによって誘起された細胞情報伝達をさほど変化させないことを示している。しかしながら、APS被覆表面及びS1被覆表面の双方のDMR信号は、被膜されない表面のものとは異なる。これは、カルバコールによって誘起された細胞生物学が変更されることを示している。ここで、S1コポリマは表面に受動的に吸着される。カルバコールは、CHO−M1細胞内で安定して発現され又はHEK293細胞内で内生的に発現されたムスカリン受容体数の天然の作用薬である。
【0094】
図10は、5マイクロMのSFLLRアミドによって誘起された4つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。当該4つの異なるタイプの細胞は、同一のプラズマ処理がなされているもののコートされていない表面において別々に又は個別に培養された。当該4つの異なるタイプの細胞は、CHO−K1細胞(1000)、CHO−M1細胞(1005)、HEK293細胞(1010)及びRMS13細胞(1015)である。各細胞のタイプにおいて、SFLLR−アミド刺激は、異なる信号伝達事象を生じせしめ得る。
【0095】
図11は、5マイクロMのSFLLRアミドによって誘起された4つの異なるタイプの細胞のDMR信号を示している。当該4つの異なるタイプの細胞は、同一のプラズマ処理がされかつAPS被膜がされた表面において培養された。当該4つの異なるタイプの細胞は、CHO−K1細胞(1100)、CHO−M1細胞(1105)、HEK293細胞(1110)及びRMS13細胞(1115)である。図10及び11に示された結果を組み合わせると、結果が示すことは、バイオセンサは、4つの異なるタイプの細胞においてリガンドによって誘起された応答について分析するために適用することができるものの、APS表面における各細胞株のDMR信号の顕著な変化が細胞生物学が特にRMS13細胞株に対してある程度変更されることを示しているということである。
【0096】
図12Aは、薄膜のSiO2により被膜されたNb2O5RWGバイオセンサ上にSMA被膜表面のFT−IRスペクトルを示している。当該スペクトルは、異なる厚さのリンカ又は結合層としてアミノプロピルシラン(APS)を使用して得られた。異なるAPS結合層の膜厚は、初期被膜の異なる重量パーセント濃度のAPSを使用して得られた。当該重量パーセント濃度は、1.0%(1200),0.1%(1210),0.01%(1220)であった。結果が示すことは、得られたSMA被覆表面のFTIRスペクトルはAPS濃度から独立しているようであるということであり、これは、これらのAPS濃度の各々が基板の単層被膜の膜厚を達成し若しくは超過するのに十分であったことを示している。APS層の保護膜に使用されるSMA被膜濃度は、それぞれの異なるAPS結合層の膜厚の各々において同じであった(50マイクログラム/mL)。
【0097】
図12Bは、UV‐オゾン(UVO)プラズマ表面処理がない場合(1230)とある場合(1240)におけるSMA−APS−SiO2/Nb2O5表面のFTIRスペクトルを示している。SMA被膜濃度は50マイクログラム/mLであり、一方、APS濃度は0.001%であった。UV‐オゾン処理暴露は2分であった。
図12Cは、10.8fpmのベルト速度での生体組織培養処理された(TCT)処理を用いたSMA−APS−SiO2/Nb2O5表面のFTIRスペクトルを示している。当該ベルト速度は、15kv(1250)、20kV(1260)、25kv(1270)及び30kv(1280)の異なる出力を使用した。使用されたSMA濃度は、1mg/mLであった。図12B及び12Cに示されているように、異なる出力の下のUV/オゾン処理又はTCT処理のうちのいずれか一方は、図2に示されたプラズマ処理アプローチを使用して得られたものと同様な手法によって、SMA表面の酸化をも生じせしめ得る。これは、処理の際のFTIRスペクトルの変化における同様のパターンによって明らかである。
【0098】
これら修飾SMA表面でのHEK293細胞の培養は、HEK細胞が、TCTポリスチレンマイクロプレート又はフィブロネクチンによって被覆されたマイクロプレートと同様に、これら表面に付着し且つ拡散し得ることを示した。これらの酸化されたSMA表面上のHEK細胞(酸化されていないSMA表面上ではない)は、洗浄を耐えることができ、低密度フィブロネクチン被覆表面で取得されたものと同程度であるコーニング登録商標Epic商標RWGバイオセンサを使用した分析を強固なものとなし得る(データ示されていない)。プレート洗浄は、例えば、低速バッファ注入速度設定等の市販のプレート洗濯機等、あらゆる適切な方法によって実行され得る。
【0099】
実施例
以下の実施例は、上述した開示を使用する手法をより完全に説明し、かつ、本開示の種々の態様を実施するよう意図された最良の態様を説明することに用いる。これら実施例は、本開示の範囲をなんら限定するものではなく、むしろ例示の目的で与えられているものと理解すべきである。
【0100】
材料
アミノプロピルシルセスキオキサン(APS)は、Geles社(Morrisville、PA)から取得した。SFLLR−アミド、トロンビン受容体活性ペプチドは、Bachem(キング・オブ・プロシア(ペンシルベニア州))から取得した。カルバコール、1‐メトキシ‐2‐プロパノール酢酸及びN‐マルメチルピロリドンは、SigmaAldrichChemical社(セントルイス、ミズーリー州)から取得した。ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)クメン終端、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)部分的シクロヘキシル/イソプロピルエステル及びクメン終端、並びに、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)部分的イソオクチルエステル及びクメン終端のすべてが、下記のコアとなる化学式を有し、AldrichChemical社から取得された。
【0101】
【化1】
【0102】
AldrichChemical社から取得したポリ(スチレン‐アルト‐マレイン酸)は、以下のコアとなる化学式を有する。
【0103】
【化2】
【0104】
Corning社登録商標Epic社登録商標の384ウェルバイオセンサーマイクロプレートがコーニング株式会社(コーニング、NY)から取得された。各ウェルはRWGセンサを含む。マイクロプレートは、使用する前に高強度UV光(UVOクリーナー、Jelight株式会社、ラグナヒル、カリフォルニア州)に6分間暴露することによって洗浄された。
【0105】
ヒト胎児由来腎臓(HEK293)細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO-K1)細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO−M1)細胞、ヒト類表皮腫癌A431細胞及び人の筋(RMS13)細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(マナッサス、バージニア州)から取得された。すべての抗生物質は、Invitrogen(カールスバッド(カリフォルニア州))から取得された。細胞、媒質及び添加剤が表2に示されている。
【0106】
【表2】
【0107】
統計的分析
明確に言及しない限り、試験化合物又は生体物質の各測定は、同一の条件の下、8回行われた。それぞれの最終的な応答は、8回すべての応答の平均であった。
【0108】
実施例1
Epic登録商標マイクロプレートの表面被覆
(洗浄され且つUV/オゾンで処理された)クリーンなEpic登録商標マイクロプレートは、10分間、水中で5%(v/v)のアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)溶液を用いて処理された。得られたマイクロプレートは、水及びエタノールで迅速に洗浄され、過剰なAPSが除去された。プレートは、55℃にて1.5時間硬化され、それに続いて、エタノールを用いて付加的な洗浄が行われた。マイクロプレートは、スピン乾燥されて真空乾燥された。コポリマ性スチレン無水マレイン酸(SMA)は、10mg/mLの濃度で、適切な溶剤中で溶解された(S1に対して水、ポリ(スチレン‐アルト‐マレイン酸)、及びその他のすべてに対して1‐メソキシ‐2‐プロパノールアセテート;ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、S2;ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、クメン終端、S3;ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、部分的シクロヘキシル/イソプロピルエステルクメン終端、S4;ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、部分的イソオクチルエステル、クメン終端、S5)。各々のポリマ溶液は、50μg/mL又は200μg/mL等の所望の被膜濃度までさらに希釈され、約1時間、APS表面被覆されたプレート上アミノ基と反応された。溶剤と無水エタノールによって激しく洗浄されて、付着されていないポリマが除去されたのちに、SMAによってコートされたプレートは、乾燥され、SMAプラズマ表面処理が実行された。
【0109】
実施例2
Glass slide coating and plasma treatment Glass microscope slides
ガラススライド被膜とプラズマ処理ガラス顕微鏡用スライドは、5分間、プラズマ(UV−オゾン、UVO)洗浄され、表面から汚染物が除去された。これらスライドは、APSの5%溶液を用いて、10分間被膜された。スライドは、水で洗浄され、そしてエタノールで洗浄され、窒素流の下に乾燥された。SMA(ポリスチレン‐アルト‐無水マレイン酸の部分的なメチルエステル;約350,000のMw)溶液が、10mg/mLの濃度の無水NMPにおけるSMAポリマの溶解によって準備された。NMPにおけるSMAは、無水IPAにおいて希釈され、2mg/mLの濃度を有する最終的なSMA溶液が製造された。APS被膜されたスライドは、10分間、SMAの2mg/mLの溶液に浸された。その後、スライドが取り除かれ、エタノールを用いて洗浄が行われた。そして、スライドはPM−FTIRRASによって分析され、SMAの表面の基線測定がなされた。次に、これらのスライドは、1分、3分、7分及び14分、プラズマ処理された。
【0110】
実施例3
細胞培養及びバイオセンサ細胞分析
すべての細胞が所望の媒質で育成された。当該媒質には、10%の牛胎児血清(FBS)、4.5g/リットルのグルコース、2mMのグルタミン、及び抗生物質が添加された。3乃至8のパッセージにて約1×104乃至2×104の細胞が、10%のFBSを含む50マイクロリットルの媒質に懸濁され、384ウェルマイクロプレートの各々のウェル内に設けられた。細胞の種付け後に、細胞は、約95%の細胞密集度が得られるまで(約1−2日)、37℃で空気/5%CO2下で培養された。分析の当日、密集細胞は、HBSS(20mMのHEPESを有するHanks Balanced Salt Solution)緩衝液を用いて洗浄された。得られた細胞は、Epic登録商標装置において2時間28℃で培養された。細胞は、特定の濃度の選択された標識(SFLLR−アミド又はカルバコール)で刺激され、得られたDMR信号が記録された。
【0111】
実施例4
波長送受観測システム
Epic登録商標システムは、標準SBSマイクロタイタープレート(主として384ウェルマイクロプレート)に統合されたRWGバイオセンサである。このシステムは、温度制御ユニット、光学検出ユニット、及びロボティックスを有するオンボード液体処理ユニットから構成される。温度制御ユニットは、必要に応じて温度変動を最小にするべく内蔵されている。ユニット内において、センサーマイクロプレートと化合物ソースプレートの双方を処理する2つの並列スタックがある。一度、温度が安定すると、センサーマイクロプレートは、検知システムの直上のプレートホルダに自動的に搬送される。一方、ソースプレートは適切なコンパートメントに移動されるので、オンボード液体処理ユニットによって容易に処理可能である。
【0112】
検出ユニットは、統合されたファイバオプティクスを含み、生細胞内においてリガンドによって誘起されたDMRに起因する共鳴波の波長シフトを測定する。マイクロプレートの底部介した垂直入射によって、光ファイバとコリメータレンズを介して生成された広帯域の白色光源が、グレーティング表面の小領域を照明するのに使用される。反射光を記録する検出ファイバは照光ファイバを用いて1束にされる。一連の照光/検出ヘッドが直線的に配置されるので、反射スペクトルは、384ウェルのマイクロプレートの同じカラム内にあるサブセットのウェルから一度に収集される。プレート全体は照光/検出ヘッドによってスキャンされるので、各センサが複数回扱われ、各カラムは連続して扱われる。走査は、例えば、選択された分析の態様に依存して、連続的若しくは不連続的であり得る。反射光の波長は、分析目的のために収集且つ使用される。
【0113】
動的分析を目的として、まず、ベースラインの応答が一定期間記録される。その後、試験化合溶液が、オンボード液体処理システムを使用して、センサープレートに移され、細胞応答が別の期間に記録される。通常、センサーマイクロプレートのリッドは、テスト複合溶液を導入するとき、短期間(例えば、約2分)を除いて、分析中、大部分の期間、維持された。プレートリッドは、ロボティクスによって自動的に処理され得る。かかる動的測定によって、GPCRの信号伝達及びネットワーク化された相互作用について有益な情報が提供される。
【0114】
実施例5
表面処理方法
本開示の例示的な表面処理方法が、図13Aで、概説されている。当該表面処理方法において、1)市販のEpic登録商標マイクロプレート(1300)の金属酸化物表面は、例えば、1%のアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)溶液を用いて処理され、APSによって被覆されたマイクロプレート(1310)が与えられた。2)ポリ(スチレン‐アルト‐無水マレイン酸)(SMA)コポリマが、マイクロプレート表面に共有結合され、SMAによって被覆されたマイクロプレート(1320)が与えられた。3)SMAの残留無水マレイン酸残基は、本明細書において第2の結合層としても知られているアミン終端された化学修飾剤と反応されて、アミン修飾されたSMR被覆表面(1330)が提供された。アミンによって修飾されていない酸化SMA表面と比較して、化学修飾ステップがSMA被覆表面に対して大幅な改善をもたらした。4)化学的に修飾されたプレートは、UV−オゾン又はプラズマによって処理されて、最終的に処理されたSMA表面(1340)が生成された。当該SMA表面(1340)が細胞ベースの分析に用いられ得る。図13Bのイメージは、ナノ粒子の分散を有する生成表面フィルムを示す化学的に修飾され且つ処理されたSMA表面のSEM画像である。
【0115】
実施形態において、本開示の被膜処理及び処理は、概略的に以下に説明されているように、達成され得る。クリーンなEpic登録商標マイクロプレートは、3分間、水中で1%(v/v)のアミノプロピルシルセスキオキサン(APS)溶液を用いて処理された。得られたマイクロプレートは、水及びエタノールで迅速に洗浄されて、過剰な非反応のAPSが除去された。ポリ(スチレン‐アルト‐無水マレイン酸)コポリマ(SMA)が、10mg/mLの濃度で、NMP等の適切な溶剤中で溶解された。他の適切な溶剤は、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のpolaraprotic溶液又はそれらの組み合わせを含む。ポリマ溶液は、例えば、イソプロピルアルコール等の溶液又はそれらの組み合わせにより、約200g/mLの被膜濃度になるまでさらに薄められ、約10分間、APS表面被覆されたプレート上で固定されたアミノ基に接触され且つ当該アミノ基と反応された。被覆されたプレートは、エタノールで洗浄されて付着されていないポリマが除去された。そして、SMA表面は、ポリアミン化学修飾剤と接触された。当該ポリアミン化学修飾剤は、例えば、Huntsman(www.huntsman.com)から利用可能なジェファミン登録商標T−403ポリエーテルトリアミン等の材料である。当該接触により、表面の電荷密度が変更されて、残留無水マレイン酸残基が除去された(すなわち、無水基との反応及びアミノ基がないトリアミンからのアンモニア基(−NH2+)の生成)。そして、プレートは水で洗われ、UV−オゾン処理又はプラズマ処理が実行された。
【0116】
表面キャラクタリゼーション
図13Bは、化学的修飾SMAマイクロプレートの例示的な走査電子顕微鏡像を示している。ポリマ被覆されたマイクロプレート表面は、比較的均一な分布を有するナノ粒子を有することが予想外にも見出された。当該ナノ粒は、約10〜約400ナノメータのサイズを有し、外見上、化学修飾SMAの層又は膜に埋め込まれている。UV−オゾン又はプラズマ処理表面のナノ粒子及びフィルム表面層の特性が、原子力顕微鏡(AFM)を使用してさらに特徴付けられた(Pompe, et. al, "Functional Films of Maleic Anhydride Copolymers under Physiological Conditions," Macromol.Biosci.2005, 5, 890-895)。緩衝液で水和された表面と比較して、乾燥処理された表面の表面膜厚と隆起特性が比較された。
【0117】
表面被膜は、埋め込まれたナノ粒子を有するフィルムから構成されているようである。実施形態において、乾燥フィルム膜厚は、(すなわち、実際の標準偏差でなく、測定値の範囲として)約7+/-2nmであると観測された。乾燥フィルムのナノ粒子の高さは、例えば、フィルムよりも約10〜約100nm高く、30〜50nmの範囲で加重された。フィルム上に存在する粒子に対して、粒子の高さは10〜100nmであると特定された。埋め込まれたナノ粒子に対して、実際の粒子の高さは、約15〜約110nmの実際の高さを示す膜厚を含む。水和されたナノ粒子の高さは、乾燥状態よりも顕著ではなく浅いようである。理論によって制限されないものの、例えば、考えられる解釈は以下を含んでいる。
i)ナノ粒子はフィルムに埋め込まれており、フィルムよりも比較的隆起しているので、(恐らく)ナノ粒子は隆起したフィルムより浅いように見える。又は、ii)加湿されたナノ粒子は、ポリマフィルム層よりも相当に柔らかく、AFMプローブによってより圧縮され得る(可能性は低い)。
【0118】
以下のフィルムと粒子のサイズは、トポグラフィー及びフィルム圧縮データに基づき、埋め込まれた粒子を有するポリマ膜を想定して、推定された。約7nmの乾燥膜厚を有するポリマ膜は、リン酸塩溶液(PBS)において、約30nmから約60nmまで膨張するようである。約7倍の膨張因子を示した。より大きく膨らんだ粒子径を見積もると、乾燥時のサイズの約80nmから約110nmであり、膨張に帰属して、約1.3倍(1.3×)の最小ディメンジョン変化を示している。
【0119】
表面被膜スキームの実施形態において、表面は、JeffamineT−403等の市販のトリアミンを用いて修飾され得る。しかしながら、表面はジェファミンT−403のみを用いた修飾に限定される必要はない。表面修飾が分析性能をいかに変更させるのかということに関する実施例として、SMAのバックボーンは、ジェファミンEDR−176により修飾され、T−403を用いて修飾された表面と比較された。EDR−176化合物は、トリアミンに代わってジアミンであるという点を除いて、T−403化合物にとても類似している。この小さな差異は、Epic登録商標細胞分析の性能に十分影響する。図22に、インサート上のHEK−293細胞を用いたEPIC分析からのトレース(Nb2O5/SiO2導波路)が示されている。当該インサートは、T−403修飾表面又はEDR−176修飾表面のうちいずれか一方により被膜された。双方の表面が、同程度の細胞付着性を示した。しかしながら、分析中、EDR−176表面に対する応答の動特性がより遅い傾向であった。一方、信号応答における分布はより大であって、性能の低下を生じせしめた。表3は、準備され且つ観測された修飾表面の概略を提供している。
【0120】
【表3】
【0121】
これら化学的に修飾されたSMA表面の形成は、偏光変調赤外反射吸収分光(PMFTIRRAS)によって観測され得る。例えば、Low−eガラス顕微鏡用スライドは、まず、APSの1%溶液を用いて、3分間被膜された。スライドは、水で洗浄され、そしてエタノールで洗浄され、窒素流の下に乾燥された。SMA(ポリ(スチレン‐アルト‐無水マレイン酸)、約350,000のMW)溶液は、約10mg/mLの濃度の無水NMPにおけるSMAポリマの溶解によって準備された。NMPにおけるSMAは、無水IPAにおいて希釈され、約200マイクログラム/mLの濃度を有する最終的なSMA溶液が製造された。APS被膜されたスライドは、約10分間、SMAの200マイクログラム/mLの溶液に浸され、エタノールを用いて洗浄された。そして、スライドはPM−FTIRRASによって分析され、SMAの表面のための基線測定が得られた(図14,曲線1400)。SMA表面は、5分間、ジェファミン登録商標T−403の5mg/mL溶液に浸された。得られたスペクトル(図14,曲線1405)は、無水マレイン酸残基の完全な損失を示した。当該損失は、1857cm-1及び1783cm-1におけるバンド強度の減少によって観測された。一方、約1700から約1500cm-1までのバンド強度における増加は、ジェファミン登録商標のポリマバックボーンへの取り込みを示した。1分間のUV−オゾン処理の暴露の際に(図14,曲線1410)、スチレン基の消芳香族特性の損失があった。当該損失は、約1495及び約1445cm-1におけるスペクトルバンドの低減に対応する。約1750cm-1から約1700cm-1までのバンド強度における増加は、ポリマ表面におけるカルボニル基とカルボキシレート基の形成を示した。脱プロトン化カルボキシレート基における増加は、約1695cm-1から約1550cm-1において観測されたショルダ構造を生じせしめた。理論によって制限されないものの、これら吸収帯域が広範であるので、おそらく、カルボニルとカルボン酸の分子環境の分布が存在すると信じられている。最終的に、アルコールのO−Hの変形を示し得る約1500cm-1から約1300cm-1までの広帯域の形成があった。処理された表面が水で洗浄されたとき(図14,曲線1415)、全体的なスペクトル強度の低下が存在する。これは、UV−オゾンステップの間に生成された弱結合の材料が、表面から除去されるからである。処理された表面は、約10〜約400nMまでサイズのナノ粒子を含む。上記の図13Bを参照されたい。
【0122】
UV‐オゾンを用いた処理の前のアミン含有化合物を含む化学修飾ステップは、化学修飾ステップがない場合のプレートと比較して、プレートの性能を劇的に改善した。図15は、HEK293細胞の動的質量再分布(DMR:dynamic mass redistribution)信号を示している。HEK293細胞は、3つの異なるタイプの表面において培養された。当該3つの異なるタイプの表面は、UV‐オゾンを用いた処理されたSMA被覆マイクロプレート、ジェファミン登録商標T−403と反応されてUV‐オゾンを用いて処理されたSMA被覆マイクロプレート(1505)及びフィブロネクチン被覆されたEpic登録商標マイクロプレート表面(1500)である。すべての信号分布が、実行された分析を表している。UV‐オゾンを用いた処理されたSMA被覆プレート(1510)は、テストされた3つの表面の低分析応答及び低速動特性を示した。化学修飾SMAによって被膜されたプレート(1505)は、フィブロネクチン被覆されたプレート(1500)とほとんど同じである著しく良好な動特性と大なる信号を示した。フィブロネクチンプレートは、この分析に対して最大の信号強度を示した。しかしながら、フィブロネクチン表面と化学修飾表面との差異は、約10パーセントだけであり、これは、被膜方法に関係づけられたSiO2上のSMAと比較して、かなりの改善である。
【0123】
上記に説明したように、図9は、非修飾SMA表面(非被膜表面(900))上の細胞培養とプラズマ処理されたSMA表面(905,910及び915)を用いた細胞培養に関するDMR信号を比較した。
【0124】
図16は、トレース1620としてアミノ修飾されたSMA表面を示している。当該SMA表面は、図9の非修飾SMA表面及びフィブロネクチン(1625)だけを有するものと比較して、性能が2倍強化され動特性が改善された。(コーニング株式会社、製品番号SKU5042から利用可能な)フィブロネクチンに対するCHO−M1応答が、トレース1625として示されており、化学修飾SMA表面1620の信号の形状と密接に類似している。しかし、化学修飾SMA表面1620は、例えば、2倍以上の強度を有する。本明細書に開示された化学修飾SMA合成表面は、SMAのみの合成表面と比較して、少なくともいくつかの態様において優れているように見える。
【0125】
RMS−13等の他の困難な細胞株実験が、行われた。図17Aは、フィブロネクチン(1705)及び(UV−オゾン処理された)化学修飾SMA表面(1700)上のRMS−13細胞DMR応答を示している。ウロテンシンII(UTII)によって誘起されたRMS−13細胞のDMR応答は、フィブロネクチン表面に対する同じ誘起(図17B、曲線1715)と比較して、振幅が高く、化学修飾SMA上で動的に高速であった(図17B、曲線1710)。化学修飾SMA上のSFLLRアミドによって誘起されたDMR信号(図17B、曲線1710)及びフィブロネクチン(図17B、曲線1715)は、運動分布と信号振幅の双方において類似した。
【0126】
細胞付着性と分析性能の総合性能に基づいて、本開示の化学的に修飾されたSMA表面は、関連方法より優れており、ターゲットフィブロネクチン表面の細胞分析性能により密接に似ている。
【0127】
実施例7
開示された表面修飾方法は、注入圧縮成形された(ICM)Topas登録商標ポリマインサートに適用可能である。この実験では、Topas登録商標上のICMインサート(Nb2O5/SiO2導波路)は、実施例5に記載されているように、被覆され、紫外線キャストアンドキュア(UVCC:ultraviolet cast−and−cure)Epic登録商標インサート(Nb2O5/SiO2)と比較された。Epic登録商標分析は、両方のインサート上に培養されたHEK−293細胞を用いて達成された。これらの実験から、これらポリマ性ICMインサート上の被覆表面の性能は、信号レベルと動力学応答において市販のUVCCEpic登録商標インサート(Nb2O5/SiO2)に大幅に匹敵するものであることが明白であった。図21は、異なるインサートを使用したが同一の酸化されたアミン修飾SMA表面を使用したHEK−293細胞のEpic登録商標分析の例示的光学的応答を示している。酸化されたアミン修飾SMA表面により被膜されたICM(2110)及びUVCC(2120)インサート上のHEK−293細胞のEpic登録商標分析の光学応答の例示的トレース。尚、酸化されたアミン修飾SMA表面により被膜されたとき、双方のインサートが、信号強度及び動特性の点において、ほぼ同様に作用することに注意されたい。
【0128】
実施例8
有効期間の安定性
酸化され且つアミン修飾された表面組成に関する有効期間又は保存の安定性が、評価され、例えば、HEK29細胞を用いた場合21週間以上、周囲環境温度にて、水中等の種々の条件にわたって、かなり強固であることが示された。第1実験において、スライドは、酸化され且つアミン修飾された表面組成により被覆され、6カ月、周囲環境条件(23℃、40RH)で、保存された。これらスライドは、図18に示されているように、FTIRによる新たに被膜されたスライドと比較された。図18は、ガラスに被覆される酸化され且つトリアミン修飾されたSMAポリマの重畳されたFTIRスペクトル、すなわち、200ミクロンのSMA及び5mg/mlのジェファミン登録商標T−403のFTIRスペクトルを示している。FTIRスペクトルは、時間ゼロ(1819)から約6ヶ月(1800)の劣化まで化学変化を示した。劣化した被膜スライドのFTIRは、新たに被覆されたスライドと比較して、1750cm-1における高強度及び1550cm-1における低強度を示した。これは、カルボキシレート基の大部分が、新たに被覆されたサンプルと比べて、劣化したサンプルにおいてプロトン化されることを示した。これらの2つのバンドは、プロトン化された形態のカルボキシレート基及び脱プロトン化された形態のカルボキシレート基からのそれぞれの寄与を表している。表面上のカルボキシレート基の状態に依存して、これらバンドは、強度において変動し得る。理論によって制限されないものの、これら2つのスペクトル間の差異は存在し得るし、保存方法及びカルボキシレート基の状態に与える保存方法の影響に帰属して存在する可能性がある。しかしながら、水性条件下で、両方の表面が、同一の表面をもたらす同じレベルの脱プロトン化を引き起こすであろう。
【0129】
保存有効期間に加えて、水性条件下の被覆された成分の安定性が、調査され且つ実証された。この実験では、ポリマ性表面成分の非常に薄い層が、金属酸化物被膜顕微鏡用スライドに形成された(すなわち、ポリマ堆積、アミン反応、および酸化)。そして、スライドは約8時間まで水に浸され、組成が水の暴露量の関数としてどのように変化するか判定された。8時間まで水に暴露されていたとき、図19のFTIRスペクトルは、成分化学において評価可能な差異は全く存在しないことを示した。これによれば、成分は水に非常に敏感であり、長期間、非常に安定するはずある。具体的には、図19は、金属酸化表面と、酸化し且つトリアミン修飾したSMAの薄膜を用いて被膜された金属酸化表面との重畳されたFTIRスペクトルを示している。露出表面(1900)及び酸化され且つトリアミン修飾されたSMA試料の薄膜により被覆された表面は、各々が、1時間(1910)及び8時間(1920)、水中に沈められた。2つの異なる浸漬時間に対するスペクトルの重複は、長期の水の暴露によって生じる表面化学において実質的な変化は全く存在しないことを示した。露出酸化物表面からの被覆表面に対する明確な分離は、表面被覆が、水の浸漬に対する暴露によって、表面から除去されないことを示した。
【0130】
有効期間における安定性に関する別の例証において、アセンブル化されたEpic登録商標マイクロプレートは、分析を実行するために使用されて、長期保存の後の機能性が立証された。この実験では、プレートは、SMA成分により被覆され、アミンにより修飾され、ガンマ線照射され、そして、有効期間の試験のために載置された。特定の時において、プレートは、ストレージから抜き取られ、HEK−293細胞で種付けされ、標準のEpic登録商標分析を介して起動された。そして、時間ポイントは、性能劣化が時間がたつにつれてあったかどうかを判定するために比較される。それらは4つの異なる評価基準(細胞の形態、運動分布、全ての信号及びZ)に基づいて判断された。表4は、有効期間研究における2つの時間ポイント(4週間及び21週間)から2つの分析結果を示している。2つの時間ポイントにおける細胞の形態、運動分布、全ての信号及びZに対して観測された差異は、認識できなかった。このデータは、プレートが室温で保存されるとき、表面組成被膜を有するプレートが最低約21週間の有効期間を有することを示している。分析データは、保存時間の関数として性能劣化を全く示さない。Zにおける小さな変動は、データがかかる長期間比較されるとき、通常である。
【0131】
【表4】
【0132】
図20は、酸化されたアミン修飾SMA表面を準備する際に2つの異なるアミン化合物であるが関連するアミン化合物を別々に使用したHEK−293細胞のEpic登録商標分析の例示的光学的応答を示している。図20の典型的なトレースは、ジェファミン登録商標T−403(2020)及びジェファミン登録商標EDR−176(2010)によって酸化され且つアミン修飾されたSMA表面のHEK−293細胞のEpic登録商標分析の光学応答を提供する。尚、ジェファミン登録商標EDR−176によって準備された表面(2010)は、信号が最大に到るのにより長い時間を要する。ジェファミン登録商標EDR−176によって準備された表面の信号応答における大なる再分布は、T−403表面と比較して、示されていない。
【0133】
本開示は、種々の特定の実施形態及び技術を参照して説明されてきた。しかしながら、本開示の精神及び範囲内において多くの変更及び改良を行うことができることが理解されるはずである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に直接的に若しくは間接的に付着せしめられた生体適合層と、
前記生体適合層に付着せしめられた第2結合層と、を含むバイオセンサ製品であって、
前記製品の前記表面は、バイオセンシング前に酸化されている少なくとも前記生体適合層及び前記第2結合層を含むことを特徴とするバイオセンサ製品。
【請求項2】
前記第2結合層はポリエーテルトリアミンを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記ポリエーテルトリアミンの分子量は、約200から約1000であることを特徴とする請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記ポリエーテルトリアミンの前記分子量は、約300から約500であることを特徴とする請求項2に記載の製品。
【請求項5】
前記基板の前記表面は、金属酸化物又は化合金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記生体適合層は、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン‐マレイン酸)、ポリ(酢酸ビニル‐無水マレイン酸)、ポリ(無水マレイン酸‐アルト‐メチルビニルエーテル)、ポリ(トリエチレングリコールメチルビニルエーテル‐co‐無水マレイン酸)又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含むコポリマを含む少なくとも1つの酸化性ポリマを含み、
前記基板は、金属酸化物、化合金属酸化物、SiO2、環状オレフィンコポリマ又はそれらの組合せの表面を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項7】
前記生体適合層は前記基板表面に直接的に付着されていることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項8】
前記生体適合層は、前記第2結合層と、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン‐マレイン酸)又はそれらの組合せから選択されたポリマと、の生成物質を含み、金属酸化物、化合金属酸化物、環状オレフィン共重合体又はこれらの組み合わせからなる前記基板表面に直接的に付着されていることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項9】
少なくとも前記基板に付着せしめられた第1結合層をさらに含む請求項1に記載の製品。
【請求項10】
前記基質の前記表面は環状オレフィンコポリマを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項11】
前記第2結合層はポリエーテルジアミンを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記方法は、
前記基板の前記表面に付着され且つ少なくとも1つの酸化性モノマを含むポリマと、前記ポリマに付着せしめられた第2結合層と、を有する基板を提供するステップと、
当該結合されたポリマ及び前記第2結合層の前記表面を酸化させて、前記基板上に生体適合層を形成するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ製品を製造する方法。
【請求項13】
前記酸化させるステップは、
前記表面を、UV−オゾン、プラズマ又はそれらの双方に接触せしめて、生物適合表面を形成するステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生体物質を得られた生体適合表面に関連付けるステップをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマは、
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、
ポリ(スチレン‐マレイン酸)、
ポリ(酢酸ビニル‐無水マレイン酸)、
ポリ(無水マレイン酸‐アルト‐メチルビニルエーテル)、
ポリ(トリエチレングリコールメチルビニルエーテル‐co‐無水マレイン酸)又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む酸化性コポリマを含み、
前記第2結合層は、約200から約1000の分子量を有するポリエーテルトリアミンを含み、
前記基板は、金属酸化物、化合金属酸化物、SiO2,環状オレフィンコポリマ又はそれらの組合せの表面を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマ酸化生成物は、ポリ(スチレン‐マレイン酸)を含み、
前記第2結合層は、約200から約1000の分子量を有するポリエーテルトリアミンを含み、
前記基板は、金属酸化物、化合金属酸化物、環状オレフィンコポリマ又はそれらの組合せの表面を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
リガンドの分析を実行する方法であって、
前記リガンドを、前記生体適合層に関連付けられた生体物質を有する請求項1に記載のバイオセンサ製品に接触せしめるステップと、
前記リガンドが前記生体物質に結合する場合に、前記バイオセンサを用いて前記リガンドによって誘起された前記生体物質の応答を検出するステップと、を含む方法。
【請求項18】
前記リガンドは、
刺激物質、
治療候補化合物、
治療候補物質、
予防的候補物質、
予防的物質、
化合物、
生物学的分子、
ペプチド、
タンパク質、
生物試料、
約500ダルトン未満の分子量を有する小分子薬物候補物質、
生物学的薬物分子候補、
小分子‐生物の結合体、
病原体又はそれらの組み合わせ、を含み、
前記生体物質は
天然の又は合成のオリゴヌクレオチド、
天然の又は合成のヌクレオチド/ヌクレオシド、
核酸(DNA又はRNA)、
天然のペプチド、
1つ以上の修飾され又はブロックされたアミノ酸を任意に含む天然の又は合成のペプチド、
抗体、
ハプテン、
生物学的リガンド、
タンパク質膜、
脂質膜、
タンパク質、
小分子、
細胞若しくはそれらの組合せ、又はそれの置換体を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオセンサは、表面プラズモン共鳴バイオセンサ、導波共鳴グレーティングバイオセンサ、インピーダンスバイオセンサ、質量分析バイオセンサ又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記生体物質は、生細胞を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
基板と、
前記基板に直接的に若しくは間接的に付着せしめられた生体適合層と、
前記生体適合層に付着せしめられた第2結合層と、を含む細胞培養製品であって、
前記製品の前記表面は、細胞培養前に酸化されている少なくとも前記生体適合層及び前記第2結合層を含むことを特徴とする細胞培養製品。
【請求項22】
前記第2結合層は、ポリエーテルトリアミン、ポリエーテルジアミン又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項21に記載の製品。
【請求項23】
請求項12に記載の方法を用いたバイオセンサ製品又は細胞培養製品。
【請求項1】
基板と、
前記基板に直接的に若しくは間接的に付着せしめられた生体適合層と、
前記生体適合層に付着せしめられた第2結合層と、を含むバイオセンサ製品であって、
前記製品の前記表面は、バイオセンシング前に酸化されている少なくとも前記生体適合層及び前記第2結合層を含むことを特徴とするバイオセンサ製品。
【請求項2】
前記第2結合層はポリエーテルトリアミンを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記ポリエーテルトリアミンの分子量は、約200から約1000であることを特徴とする請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記ポリエーテルトリアミンの前記分子量は、約300から約500であることを特徴とする請求項2に記載の製品。
【請求項5】
前記基板の前記表面は、金属酸化物又は化合金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記生体適合層は、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン‐マレイン酸)、ポリ(酢酸ビニル‐無水マレイン酸)、ポリ(無水マレイン酸‐アルト‐メチルビニルエーテル)、ポリ(トリエチレングリコールメチルビニルエーテル‐co‐無水マレイン酸)又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含むコポリマを含む少なくとも1つの酸化性ポリマを含み、
前記基板は、金属酸化物、化合金属酸化物、SiO2、環状オレフィンコポリマ又はそれらの組合せの表面を含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項7】
前記生体適合層は前記基板表面に直接的に付着されていることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項8】
前記生体適合層は、前記第2結合層と、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン‐マレイン酸)又はそれらの組合せから選択されたポリマと、の生成物質を含み、金属酸化物、化合金属酸化物、環状オレフィン共重合体又はこれらの組み合わせからなる前記基板表面に直接的に付着されていることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項9】
少なくとも前記基板に付着せしめられた第1結合層をさらに含む請求項1に記載の製品。
【請求項10】
前記基質の前記表面は環状オレフィンコポリマを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項11】
前記第2結合層はポリエーテルジアミンを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記方法は、
前記基板の前記表面に付着され且つ少なくとも1つの酸化性モノマを含むポリマと、前記ポリマに付着せしめられた第2結合層と、を有する基板を提供するステップと、
当該結合されたポリマ及び前記第2結合層の前記表面を酸化させて、前記基板上に生体適合層を形成するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ製品を製造する方法。
【請求項13】
前記酸化させるステップは、
前記表面を、UV−オゾン、プラズマ又はそれらの双方に接触せしめて、生物適合表面を形成するステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生体物質を得られた生体適合表面に関連付けるステップをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマは、
ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、
ポリ(スチレン‐マレイン酸)、
ポリ(酢酸ビニル‐無水マレイン酸)、
ポリ(無水マレイン酸‐アルト‐メチルビニルエーテル)、
ポリ(トリエチレングリコールメチルビニルエーテル‐co‐無水マレイン酸)又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む酸化性コポリマを含み、
前記第2結合層は、約200から約1000の分子量を有するポリエーテルトリアミンを含み、
前記基板は、金属酸化物、化合金属酸化物、SiO2,環状オレフィンコポリマ又はそれらの組合せの表面を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマ酸化生成物は、ポリ(スチレン‐マレイン酸)を含み、
前記第2結合層は、約200から約1000の分子量を有するポリエーテルトリアミンを含み、
前記基板は、金属酸化物、化合金属酸化物、環状オレフィンコポリマ又はそれらの組合せの表面を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
リガンドの分析を実行する方法であって、
前記リガンドを、前記生体適合層に関連付けられた生体物質を有する請求項1に記載のバイオセンサ製品に接触せしめるステップと、
前記リガンドが前記生体物質に結合する場合に、前記バイオセンサを用いて前記リガンドによって誘起された前記生体物質の応答を検出するステップと、を含む方法。
【請求項18】
前記リガンドは、
刺激物質、
治療候補化合物、
治療候補物質、
予防的候補物質、
予防的物質、
化合物、
生物学的分子、
ペプチド、
タンパク質、
生物試料、
約500ダルトン未満の分子量を有する小分子薬物候補物質、
生物学的薬物分子候補、
小分子‐生物の結合体、
病原体又はそれらの組み合わせ、を含み、
前記生体物質は
天然の又は合成のオリゴヌクレオチド、
天然の又は合成のヌクレオチド/ヌクレオシド、
核酸(DNA又はRNA)、
天然のペプチド、
1つ以上の修飾され又はブロックされたアミノ酸を任意に含む天然の又は合成のペプチド、
抗体、
ハプテン、
生物学的リガンド、
タンパク質膜、
脂質膜、
タンパク質、
小分子、
細胞若しくはそれらの組合せ、又はそれの置換体を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオセンサは、表面プラズモン共鳴バイオセンサ、導波共鳴グレーティングバイオセンサ、インピーダンスバイオセンサ、質量分析バイオセンサ又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記生体物質は、生細胞を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
基板と、
前記基板に直接的に若しくは間接的に付着せしめられた生体適合層と、
前記生体適合層に付着せしめられた第2結合層と、を含む細胞培養製品であって、
前記製品の前記表面は、細胞培養前に酸化されている少なくとも前記生体適合層及び前記第2結合層を含むことを特徴とする細胞培養製品。
【請求項22】
前記第2結合層は、ポリエーテルトリアミン、ポリエーテルジアミン又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項21に記載の製品。
【請求項23】
請求項12に記載の方法を用いたバイオセンサ製品又は細胞培養製品。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−509064(P2012−509064A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536449(P2011−536449)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/064097
【国際公開番号】WO2010/059487
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/064097
【国際公開番号】WO2010/059487
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]