説明

細胞増殖および細胞死を調節する組成物および方法

【課題】多細胞器官における細胞増殖および細胞死を調節するのに有用な組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、詳しくはバクテリアDNA(B-DNA)および第1の薬学的に受容できるキャリアを含む組成物に関し、ここで前記B-DNAは、動物の応答細胞における応答を誘導する。本発明は、より詳しくはミコバクテリアDNA(M-DNA)および第1の薬学的に受容できるキャリアを含む組成物に関し、ここで前記M-DNAは動物の応答細胞の増殖を阻害し、動物の応答細胞におけるアポトーシスを誘導し、生理活性分子を産生する、動物の免疫系の応答細胞を刺激する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミコバクテリアDNA(B-DNA)および第1の薬学的に受容されるキャリアを含有する組成物に関し、B-DNAは、動物の応答細胞における応答を誘導するにおいて有効である。特に、本発明は、Mycobacterium phlei-DNA(M-DNA)および第1の薬学的に受容されるキャリアを含有する組成物に関し、M-DNAは、応答細胞の増殖を阻害し、応答細胞においてアポトーシスを誘導し、免疫系の応答細胞を刺激して生体分子を産生する。M-DNAを調製する方法、およびM-DNAを使用する方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
多細胞生物体において、組織中の細胞の数は、細胞増殖の速度から細胞排除の速度を引くことによって決定される。アポトーシスは、組織(成体組織を含むがこれに制限されない)における細胞死の、遺伝的にプログラムされ、非炎症性であり、エネルギー依存性の形態である。アポトーシスは、4つの連続的な工程:(1)細胞外または細胞内誘発による致死、(2)細胞内プロテアーゼおよびヌクレアーゼの活性化による細胞死、(3)他の細胞による死細胞の包み込み、および(4)食脂肪のリソソーム内での死細胞の分解、からなる(非特許文献1)。細胞増殖、細胞アポトーシス、またはこれら2つの組み合わせの調節における異常は、多様な疾患(ガン、神経変性、自己免疫、および心臓疾患を含むがこれらに制限されない)の病因と関連する。
【0003】
アポトーシスは、細胞表面レセプター(Fas(CD95)(非特許文献2)、および腫瘍壊死因子レセプター1(TNFR1)を含むがこれらに制限されない)に結合するリガンドによって開始され得る。FasへのFasL結合およびTNFR1へのTNFの結合は、細胞内シグナル伝達を開始して、アポトーシス実行の致死的なタンパク質分解性のカスケードを開始するシステインアスパルチルプロテアーゼ(カスパーゼ)の活性化を生じ、これは、核DNAフラグメント化、核マトリクスタンパク質(NuMA)の放出、および細胞基質接触の喪失と関連する(非特許文献3)。
【0004】
アポトーシスはまた、細胞内タンパク質(p53/p21レギュレーターを含むがこれに制限されない)によって誘導され得る(非特許文献4)。p53/p21は、転写因子として作用して、アポトーシスを媒介する遺伝子の発現を活性化する。この遺伝子としては、限定されるものではないが、フリーラジカルを生成するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられ、次いでこのフリーラジカルは細胞のミトコンドリアを損傷して、その内容物が細胞質に漏出し、アポトーシスカスパーゼを活性化する(非特許文献5)。
【0005】
ガンは、非定型性の細胞の異常な網蓄積であり、これは、過剰の増殖、不十分なアポトーシス、またはこれらの組合せから生じる。アポトーシス関連性の遺伝子(例えば、Fas、TNFR1、およびp53/P21を含むがこれらに制限されない)における変異は、ぞれぞれ、ガンの病因に関連してきた(非特許文献6,7)。アポトーシスは、ガンの病因に対して重要であるだけでなく、抗ガン治療に対するそれらの耐性の尤度に対してもまた重要である。
【0006】
アポトーシス誘導に対する耐性は、多剤耐性(MDR)の重要なカテゴリーとして現わされ、治療の失敗の有意な割合を説明するようである。MDR、構造的および機能的に関連性のない化学療法剤に対する同時の耐性は、遺伝性および後天性の両方であり得る。すなわち、あるガンは、治療に全く応答しないのに対し、他のガンは、最初は、治療に対して感受性であり、薬物耐性を発揮する。化学療法剤は、それらの治療効果について、ガン細胞におけるアポトーシスの誘導に主に依存するので、化学療法剤の有効性を減少する薬物耐性は、直接的にまたは間接的に、減少されたアポトーシスを導き、そして多様なガンにおけ
る不十分な予後と一般に関連する。
【0007】
細胞溶解は、細胞の完全なまたは部分的な破壊であり、免疫系によって媒介される。本明細書中で使用されるように、単細胞、マクロファージ、および白血球は、免疫系に含まれる。活性化されたマクロファージおよび単細胞は、動物の応答細胞における応答を、加速、増幅、および調製する生体活性分子を生成する。産生によって、合成および分泌が意味される。これらの生体活性分子としては、サイトカインおよび反応性酸素種が挙げられるが、これらに制限されない。
【0008】
サイトカインとしては、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、およびGM-CSFが挙げられるが、これらに制限されない。IL-12は、単独でおよび他のサイトカインと組合わせて、白血球(B-リンパ球、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、NK細胞を含むがこれらに制限されない)の成熟を促進し、そして、インターフェロン-γの分泌を誘導する。IL-12は、いくつかのガン細胞において抗ガン活性を有することが報告される(非特許文献8,9)。この活性としては、特異的な細胞溶解性のT-リンパ球の活性化、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化、ならびに抗脈管形成タンパク質IP-10およびMiGの誘導が挙げられるが、これらに制限されない。IP-10は、ガン増殖および転移を阻害し、ガン誘導性の新生血管形成を阻害し、そしてさらにNK細胞を活性化する(非特許文献10)。GM-CSFは、いくつかのガン細胞において、ガン後の活性を有することが報告される(非特許文献11)。
【0009】
反応性酸素種としては、一酸化窒素、スーパーオキシドラジカル、およびヒドロキシルラジカルが挙げられるが、これらに制限されない。活性体の中でも特に、一酸化窒素、スーパーオキシドラジカル、およびヒドロキシルラジカルが、応答標的細胞においてアポトーシスおよび細胞溶解を誘導する。
【0010】
生物学的および化学的起源の天然調製物および合成調製物(バクテリアからの調製物を含むがこれに制限されない)は、動物において応答細胞を刺激するためにまたは阻害するために使用されてきた。ミコバクテリウム(mycobacterium)
種からの細胞壁の調製物は、疾患(ガンを含むがこれに制限されない)を治療するために使用されてきた(特許文献1)。しかし、このような調製物を使用して得られる治療学的恩恵は様々で、一定ではなく、調製物の調製、精製、および供給方法に、ならびに調製物の安定性に依存するようである。
【0011】
先行技術の抗ガン剤は、臨床学的な適用について十分であるとはいえないことが証明されている。これらの薬剤の多くは、無効果であるか(非特許文献12)、毒性であり、有意な副作用を有し(非特許文献13)、薬物耐性または免疫感作を生じさせ、そしてレシピエントを衰弱させる。さらに、これらの薬剤の多くは、それらの有効性について、Fas、TNFR1、またはp53/p21に依存する。
【特許文献1】米国特許第4,503,048号
【非特許文献1】Steller H. Science 267:1445-1449、1995
【非特許文献2】Frenchら、Journal of Cell Biology 133:355-364、1996
【非特許文献3】Muzioら、Cell 85:817-827、1996
【非特許文献4】Levine, A. Cell 88:323-331、1997
【非特許文献5】Polyakら、Nature 389:300-305、1997
【非特許文献6】Levine A. Cell 88:323-331、1997
【非特許文献7】Fisher D. Cell 78:529-542、1994
【非特許文献8】Stineら、Annals NY Academy of Science 795:420-421、1996
【非特許文献9】Chenら、Journal of Immunology 159:351-359、1997
【非特許文献10】Angilloら、Annals NY Academy of Sciences 795:158-165、1996
【非特許文献11】Hawkyardら、Journal of Urology 150:514-518、1993
【非特許文献12】Bischoffら、Science 274:373-376、1996
【非特許文献13】Lammら、Journal of Urology 153:1444-1450、1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえ、ガン細胞の増殖を阻害し、かつガン細胞においてアポトーシスを誘導する、ならびに免疫系の応答細胞を刺激してサイトカインおよび反応性酸素種を産生する、新規な治療学的薬剤の必要性がある。この治療学的薬剤は、抗ガン剤として、および他の抗ガン剤に対する補助薬として有用であるべきである。補助薬とは、他の抗ガン剤とともに用いられ、治療効果を増加するために有用であることを意味する。さらに、このような治療学的薬剤は、調製するのに簡便かつ比較的安価であるべきであり、その活性は、調整物間で再生可能かつ経時的に安定でなければならず、そしてガン細胞に対するその効果は、最少の毒性を伴う用量レジメを用いて達成可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ミコバクテリアDNA(B-DNA)および第1の薬学的に受容されるキャリアを含有する治療学的組成物を提供することによって上述の必要性を満たし、当該組成物は、動物の応答細胞において応答を誘導するのに効果的である。特に、本発明は、Mycobacterium phlei-DNA(M-DNA)および第1の薬学的に受容されるキャリアを含有する治療学的組成物を提供し、応答としては、応答細胞(ガン細胞を含むがこれらに制限されない)の増殖の阻害、および応答細胞(ガン細胞を含むがこれらに制限されない)におけるアポトーシスの誘導、および免疫系の応答細胞の刺激による生体活性分子の産生が挙げられるが、これらに制限されない。
【0014】
M-DNA組成物は、調製するのに簡便かつ比較的安価であり、その活性は調製物間で再生可能、かつ経時的に安定なままであり、そしてこの組成物は、最少の毒性を伴う用量レジメで有効である。
【0015】
M-DNAは、リゾチーム、プロティナーゼK、およびドデシル硫酸ナトリウムでの消化、ならびにフェノール抽出およびエタノール沈澱により、無傷のMycobacterium phlei(M.phlei)から調製される(M.phlei-DNA)。あるいは、M-DNAは、M.phleiを破壊し、固体成分を回収し、そしてM-DNA-M.phleiの細胞壁複合体(MCC)を調製することによって、調製される。DNase非含有試薬が、調製の間のM-DNA分解を最小化するために使用される。M-DNAは、フェノール抽出およびエタノール沈澱によって、MCCから調製される(MCC-DNA)。
【0016】
M-DNAおよび第1の薬学的に受容されるキャリアを含有するM-DNA組成物は、応答細胞の増殖を阻害し、応答細胞においてアポトーシスを誘導し、および免疫系の応答細胞を刺激して生体活性分子を産生するのに十分な投薬量で、動物に投与される。このような第1の薬学的に受容されるキャリアとしては、液体キャリア、固体キャリア、およびその両方が挙げられるが、これらに制限されない。液体キャリアとしては、水性キャリア、非水性キャリア、またはその両方が挙げられるが、これらに制限されない。固体キャリアとしては、化学的に合成されたキャリアおよび天然のキャリアが挙げられるが、これらに制限されない。水性のキャリアとしては、水、生理食塩水、および生理学的な緩衝液が挙げられるが、これらに制限されない。非水性キャリアとしては、油または他の疎水性液体の処方物、およびリポソームが挙げられるがこれらに制限されない。天然のキャリアとしては、脱タンパク質化され、脱脂質化され、洗浄された、M.phleiの細胞壁が挙げられ、M-DNAは、M.phleiの細胞壁と複合体化される(MCC)が、これらに制限されない。
【0017】
さらに、M-DNA組成物は、第2の薬学的に受容されるキャリア中で投与され得る。このよ
うな第2の薬学的に受容されるキャリアとしては、液体キャリアおよび固体キャリアが挙げられるが、これらに制限されない。さらに、液体キャリアとしては、水性キャリア、非水性キャリア、またはその両方が挙げられる。さらに、固体キャリアとしては、化学的に合成されたキャリアおよび天然のキャリアが挙げられる。
【0018】
本発明のM-DNA組成物は、疾患を防止、治療、および排除するために有用である。本発明の組成物は、ガンのような望ましくないが制御されない細胞増殖によって媒介される疾患を治療するために特に有用である。M-DNA組成物はまた、他の抗ガン剤の有効性を増強するための補助薬として有効である。このような薬剤としては、薬物、免疫刺激剤、抗原、抗体、ワクチン、放射線、ならびに化学療法的に、遺伝学的に、生物学的に操作された、および化学的に合成された薬剤、ならびに活性化のためにまたは不活性化のために細胞死分子を標的する薬剤で、応答細胞の増殖を阻害する、および応答細胞におけるアポトーシスを誘導する薬剤が挙げられるが、これらに制限されない。
【0019】
従って、本発明の目的は、動物の応答細胞において治療学的応答を誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、応答細胞の増殖を阻害する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、応答細胞においてアポトーシスを誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、Fasに依存しないアポトーシスを誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、TNFR1に依存しないアポトーシスを誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、p53/p21に依存しないアポトーシスを誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、薬物耐性に依存しないアポトーシスを誘導する組成物および方法を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、応答細胞においてカスパーゼ活性を誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、免疫系の応答細胞において応答を誘導して生体活性分子を産生する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、免疫系の応答細胞を、生体活性分子を産生するように誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、免疫系の応答細胞を、サイトカインを産生するように誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、免疫系の応答細胞を、IL-6を産生するように誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、免疫系の応答細胞を、IL-10を産生するように誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、免疫系の応答細胞を、IL-12を産生するように誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、免疫系の応答細胞を、反応性の酸素種を産生するように誘導する組成物および方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、動物においてガンを防止するのに有効である組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、動物においてガンを治療するのに有効である組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、動物においてガンを除去するのに有効である組成物および方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、他の抗ガン治療剤に対する補助薬として有効である組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、化学的な抗ガン剤に対する補助薬として有効である組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、生物学的な抗ガン剤に対する補助薬として有効である組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、生物学的に操作された抗ガン剤に対する補助薬として有効である組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、抗ガンワクチンに対する補助薬として有効である組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、核酸ベースの抗ガンワクチンに対する補助薬として有効である組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、放射療法に対する補助薬として有効である組成物および方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、不完全に分化された細胞の最終的な分化を誘導する組成物および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、大量に調製され得る組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、比較的安価に調製され得る組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、調製物間で再生可能な活性を有する組成物を提供することである。本発明の別の目的は、経時的に安定なままである組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、経時的にその有効性を維持する組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、レシピエントに対して最小に毒性である組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、レシピエントにおいてアナフィラキシーを引き起こさない組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、ツベルクリン皮膚試験に対して受容者を感作しない組成物を提供することである。
本発明の、これらのおよび他の目的、特徴、および利点は、開示される実施態様の以下の詳細な説明および添付の請求の範囲を参照した後に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、バクテリアデオキシリボ核酸(DNA)および第1の薬学的に受容されるキャリアを含有する治療学的組成物に関し、該組成物は、ヒトを含む動物の応答細胞において応答を誘導するのに有効である。より詳細には、本発明は、ミコバクテリアDNA(B-DNA)および第1の薬学的に受容されるキャリアを含有する組成物に関し、該組成物は、動物の応答細胞において応答を誘導するのに有効である。最も詳細には、本発明は、M.phlei-DNA(M-DNA)および第1の薬学的に受容されるキャリアを含有する組成物に関し、組成物は、応答細胞の増殖を阻害し、応答細胞においてアポトーシスを誘導し、および免疫系の応答細胞を刺激して生体活性分子を産生することにおいて、有効である。
【0025】
本発明のM-DNA組成物は、調製するのに簡便で、比較的安価であり、その活性は、調製物間で再現性があり、経時的に安定なままである。さらに、これは、レシピエントに対してあっても最少の毒性であり、レシピエントにおいて陽性のツベルクリン反応を引き起こさず、および投与が反復されてもレシピエントにおいてアナフィラキシー性の応答をほとんど引き起こさない。
【0026】
多くのバクテリア種が、本発明を実施するために使用され得、これらのバクテリアとしては、コリネフォーム(Coryneform)バクテリア、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、ユーバクテリウム(Eubacterium)種、ボルデテラ(Bordetella)種、エッシェリヒア(Escherichia)種、リステリア(Listeria)種、ノカルジア(Nocardia)種、およびミコバクテリウム種が挙げられるが、これらに制限されない。好ましくは、バクテリアDNAは、ミコバクテリウム種から調製され、M.phlei、M.smegmatis、M.fortuitum、M.kansaasii、M.tuberculosis、M.bovis、M.vacciae、およびM.aviumが挙げられるが、これらに制限されない。最も好ましくは、ミコバクテリアDNAは、ミコバクテリウム種のM.phleiから調製される。
【0027】
M-DNAの治療学的活性を増加するための方法としては、同じもしくは異なるバクテリア種に由来するDNAの刺激配列もしくはコンファメーションを、化学的に補充すること、生物工学的に増幅すること、または同じもしくは異なるバクテリア種に由来するDNAの適切な刺激配列もしくはコンファメーションを含むバクテリアプラスミドを使用することが挙げられるが、これらに制限されない。M-DNAの治療学的活性を増加するための他の方法としては、M-DNAを、合成のもしくは生物学的なキャリアに複合体化すること、またはM-DNAを、組織型もしくは細胞型指向性のリガンドもしくは抗体に結合することが挙げられるが、これらに制限されない。
【0028】
M-DNAは、第1の薬学的に受容されるキャリア中に提供され、これは、M-DNAとそのキャリアとを会合させることによって調製され得る。好ましくは、M-DNA組成物は、液体キャリア、固体キャリア、またはその両方と、M-DNAとを、均一におよび親和的に会合させることによって調製される。液体キャリアとしては、水性キャリア、非水性キャリア、またはその両方が挙げられるが、これらに制限されない。固体キャリアとしては、化学的に合成されたキャリア、および天然のキャリアが挙げられるが、これらに制限されない。
【0029】
水性キャリアにおける投与のために、混合、超音波処理、および精密流動化を含むがこれらに制限されない技術によって、M-DNAは、水中に、生理食塩水中に、または薬学的に受容される緩衝液中に、懸濁される。
【0030】
非水性キャリアにおける投与のために、M-DNAは、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、脂質、油、およびそれらの混合物を含むこれらに制限されない中性油で、乳化され、油は、多価不飽和性のまたは飽和性の脂肪酸の適切な混合物を含む。例としては、ダイズ油、アブラナ油、ヤシ油、オリーブ油、およびミグリオール(myglyol)が挙げられるがこれらに制限されず、脂肪酸炭素の数は、12と22との間であり、脂肪酸は、飽和され得るか、不飽和であり得る。必要に応じて、荷電された脂質またはリン脂質が、中性油中に懸濁され得る。
【0031】
天然のキャリア(例えば、MCCを含むがこれに制限されない)における投与について、M-DNAは、MCCの調製の間、M.phleiの細胞壁上で保持され、そして複合体化される。MCCにおいて、M-DNAの量は、処理されていないM.phlei細胞中のM-DNAの量に比例して富化され、そしてM-DNAは、処理されていないM.phlei細胞内のM-DNAよりも、応答細胞により関係することができる。M-DNAの使用について開示される方法がまた、MCCについて使用され得ることが理解される。
【0032】
M-DNAおよび第1の薬学的に受容されるキャリアを含有するM-DNA組成物は、さらに、第2の薬学的に受容されるキャリアにおいて投与され得る。M-DNA組成物および第2の薬学的に受容されるキャリア処方物は、液体キャリア、固体キャリア、またはその両方と、M-DNA組成物とを、均一におよび親和的に会合させることによって調製され得る。液体キャリアとしては、水性キャリア、非水性キャリア、またはその両方が挙げられるが、これらに
制限されない。固体キャリアとしては、化学的に合成されたキャリア、および天然のキャリアが挙げられるが、これらに制限されない。
【0033】
M-DNAおよびM-DNA組成物は、オイルエマルジョン、オイル中水エマルジョン、または水中オイル中水エマルジョンとして投与され得る。さらに、これらは、キャリア(リポソーム、部位特異的エマルジョン、長期持続性エマルジョン、粘着性エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、マイクロパーティクル、ミクロスフェア、ナノスフェア、ナノパーティクル、およびミニポンプを含むがこれらに制限されない)中で投与され得、M-DNAの持続的放出を許容する種々の天然のまたは合成のポリマー、ミニポンプ、またはポリマーは、薬物供給が必要とされる近傍において移植される。ポリマーおよびそれらの使用は、例えば、Bremら(Journal of Neurosurgery 74:441-446、1991)において記載される。さらに、M-DNAおよびM-DNA組成物は、応答細胞にM-DNAを提示するために使用される第1の薬学的に受容されるキャリアまたは第2の薬学的に受容されるキャリアに関わらず、賦形剤の任意の1つ、全て、または任意の組合せとともに使用され得る。これらの賦形剤としては、抗酸化剤、緩衝液、および静菌を含むがこれらに制限されず、ならびに懸濁化剤および濃化剤を含み得る。
【0034】
以下の仮説に束縛されることを望まないが、M-DNAの治療学的効果としては、応答細胞のアポトーシスを生じる細胞内シグナル伝達の開始、ならびに細胞溶解および応答細胞のアポトーシスを生じる、サイトカインおよび反応性酸素種の産生の刺激が挙げられるが、これらに制限されないと考えられる。アポトーシスおよび細胞溶解は、個別でも組合わせても、抗ガン活性および補助薬活性の両方を有する。すなわち、本発明のM-DNA組成物は、抗ガン剤として単独で使用され得るか、または治療効果を増加するために、別の抗ガン剤の前に、同時に、または後に使用され得る。
【0035】
M-DNA組成物は、治療学的応答を誘導するのに有効な量で投与される。投与されるM-DNAの投薬量は、処置される条件、特定の処方物、他の臨床学的因子(例えば、レシピエントの体重および状態、ならびに投与の経路)に依存する。好ましくは、投与されるM-DNAの量は、用量あたり約0.00001mg/kg〜約100mg/kgであり、より好ましくは、用量あたり約0.0001mg/kg〜約50mg/kgであり、および最も好ましくは、用量あたり約0.001mg/kgから約10mg/kgである。
【0036】
M-DNAが、MCCとして、投与される場合、好ましくはMCCのDNA成分は、約0.001mg DNA/100mg乾燥MCCと約90mg DNA/100mg乾燥MCCとの間であり、より好ましくは、約0.01 DNA/100mg乾燥MCCと約40mg DNA/100mg 乾燥MCCとの間であり、最も好ましくは、約0.1mg DNA/100mg
乾燥MCCと約30mg DNA/100mg乾燥MCCとの間である。また、M.phleiの細胞壁のタンパク質の含量は、約2mg/100mg乾燥MCC未満であり、および脂肪酸の含量は、約2mg/100mg乾燥MCC未満であることが好ましい。
【0037】
さらに、M-DNAが、MCCとして投与される場合、MCCの量は、好ましくは、用量あたり約0.00001mg/kg〜約100mg/kgであり、より好ましくは、用量あたり約0.0001mg/kg〜約50mg/kg MCCであり、および最も好ましくは、用量あたり約0.001mg/kgから約10mg/kg MCCである。
【0038】
投与の経路としては、経口、局所、皮下、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮内、包膜内、損傷内、腫瘍内、膀胱内、膣内、眼内、直腸内、肺内、脊髄内、経皮、皮下、身体の腔内の配置、経鼻吸入、肺吸入、皮膚への陥入、およびエレクトロコーポレーションが挙げられるが、これらに制限されない。
【0039】
投与の経路に依存するが、用量あたりの容量は、好ましくは、用量あたり約0.001ml〜約100mlであり、より好ましくは、用量あたり0.01ml〜約50mlであり、および最も好ましくは
、用量あたり約0.1ml〜約30mlである。M-DNA組成物は、処置されるガン、レシピエントの状態、および投与の経路に適切な、あるスケジュールに対して、および期間にわたって、単回の用量で、および複数用量の治療で投与され得る。
【0040】
M-DNAの投与は、免疫化プロセスではないが、ガンを含むがこれに制限されない疾患を、防止、治療、または排除する治療学的処置である。このようなガンとしては、偏平上皮細胞ガン腫、線維肉腫、サルコイド肉腫、黒色腫、乳ガン、肺ガン、直腸結腸ガン、腎臓ガン、骨肉腫、皮膚黒色腫、基底細胞ガン腫、膵臓ガン、膀胱ガン、卵巣ガン、白血病、リンパ腫、およびそれらに由来する転移が挙げられるが、これらに制限されない。
【0041】
MCCは、M-DNA塩基対の長さを減少する超音波処理およびオートクレーブ後に、ならびに回文構造のオリゴヌクレオチド配列の、プリン−プリン−C-G-ピリミジン-ピリミジンの活性を回避するGpCメチル化後に、その有効性を保持する。
【0042】
さらに、種々のガン細胞株(Fas異常、p52/p21異常、および薬物耐性のガン細胞株を含むが、これらに制限されない)においてアポトーシスを誘導する、M-DNAの予期されない驚くべき能力は、医薬の分野において、長い間探求され、未だ果たされていない必要性に向けられ、そしてヒトを含む動物に対して重要な利益を提供する。
【0043】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために役立つが、同時に、本発明の制限をなすものではない。それとは反対に、手段は、種々の他の実施態様、改変、およびその等価物を有し得ることが、明らかに理解されるべきである。それらは、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の精神および/または添付の請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る。
【0044】
〔実施例1〕
Mycobacterium phleiからのMCCの調製 MCCを、Mycobacterium phlei(110系統)から調製した。M.phleiを、Institut fur Experimental Biologie and Medizin、Borstel、Germanyから得、そして-60℃にて滅菌乳汁中の懸濁液として保存した。M.phleiを、Petragnani培地(Difco Labs、Detroit、MI)上で培養し、そして10〜20日間、Bacto ACブロス(Difco Labs)中で増殖した。細胞を、遠心分離沈降化によって採集した。以下の手順において使用した全ての試薬を、M.phlei DNAの保存を増強するために選択した。
【0045】
約400グラムの湿性細胞集団を、約1200mlの容積を備える、オートクレーブしたブレンダーに置いた。細胞集団を、30秒から60秒の間、高スピードで混合した。混合後、6mlのDNase非含有のTween80(Sigma Chemical Co.、St.Louis、MO)および200mlと400mlとの間のオートクレーブした水を、細胞混合物に添加した。全細胞懸濁液を、約10秒間、低スピードで、ブレンダー中で再度混合した。
【0046】
細胞分散を、超音波処理によって達成した。500mlの細胞懸濁液を(ここでは、細胞が容量の50%〜70%を構成した)、1リットルのオートクレーブしたビーカーに置き、そして超音波処理した。超音波処理物を、分画プロセスの間、氷上でオートクレーブしたフラスコ中に保存した。破壊されなかった細胞を、低スピードの遠心分離によって除去した。低スピードの遠心分離からの上清を、1時間、27,500gで、15℃にて遠心分離し、そしてこの遠心分離からの上清を捨てた。
【0047】
27,000g遠心分離からの沈殿物を、オートクレーブしたブレンダーに移し、そしてオートクレーブした脱イオン化水中で、低スピードで混合することによって縣濁した。この懸濁液を、27,000gで、15℃にて、1時間、再度遠心分離し、そして上清を、再度捨てた。沈殿物を、オートクレーブした脱イオン化水中に懸濁し、そして5分間、350gでスピンして
、残存する破壊されていない任意の細胞を沈降した。上清を捨て、そして27,000gで1時間、15℃で遠心分離して、粗細胞壁画分を沈殿させた。
【0048】
粗細胞壁画分を、タンパク質分解酵素での消化によって脱タンパク質化し、注意を払ってDNase非含有試薬を使用し、調製物中のDNAの量を最適化すること、および調製物中でのDNAの構造を保存することを可能にした。約400gの全細胞に由来する粗細胞壁画分を、1リットルの0.05M DNase非含有 Tris-HCl、pH7.5中に、低スピードで混合することによって懸濁した。粗細胞壁画分を完全に懸濁した後、50mgのDNase非含有トリプシン(Sigma Chemical Co)を添加し、そして35℃で、6時間、懸濁液を磁性攪拌バーを使用して攪拌した。トリプシン処理後、50mgのDNase非含有プロナーゼ(pronase)(Amersham Canada Limited、Oakville、Ontario)を、トリプシン処理した粗細胞壁懸濁液の各リットルに添加した。
懸濁液を、磁性攪拌バーを使用して、12〜18時間、35℃で、攪拌した。
【0049】
タンパク質分解消化後、粗細胞壁画分を、洗浄剤およびフェノールで脱脂質化した。懸濁液の各リットルに、60gのDNase非含有尿素(Sigma Chemical Co.)、2.0mlのDNase非含有100%フェノール、または150mlの90% w/v フェノール(Sigma Chemical Co.)を添加した。懸濁液を含有したフラスコを、アルミホイルで緩く覆い、60℃〜80℃に加温し、そして1時間、攪拌した。懸濁液を、10分間、16000gでスピンし、上清画分とペレットの下の液体を捨てた。ペレットを、約1リットルのオートクレーブした脱イオン化水中に再懸濁し、そして10分間、16000gで遠心分離することによって、3回洗浄した。
【0050】
洗浄し、脱タンパク質化し、脱脂質化したMMCを、小量のオートクレーブした水を有するオートクレーブした凍結乾燥したフラスコに懸濁液を移すことによって凍結乾燥した。1つの300ml凍結乾燥化フラスコを、各30グラムの湿性細胞複合体開始材料について使用した。MCC懸濁液を、ドライアイスで冷却したエタノール中でフラスコを回転することによって、シェル凍結した。フラスコの内容物を凍結した後、フラスコを、凍結乾燥装置(Virtis Co. Inc.、Gardiner、NY)
に備え付け、そして凍結乾燥した。凍結乾燥後、サンプルを、オートクレーブしたねじ口容器に移し、そして無水硫酸カルシウムを含有するデシケータージャー中に、-20℃で保存した。
【0051】
他に記載しない限り、凍結乾燥したMCCを、オートクレーブした脱イオン化水中に、または薬学的に受容されるDNase非含有緩衝液(生理食塩水およびPBSを含むがこれらに制限されない)中に、再懸濁し、そして超音波処理によって乳化した。必要に応じて、乳化したMCC混合物を、1フロースルーについて、15000〜30000psiでの精密流動化によってホモジナイズした。MCC懸濁液は、無菌的な条件下でプロセスしたか、またはオートクレーブすることによって滅菌したかのいずれかであった。
【0052】
〔実施例2〕
MCCからのおよびM.phleiからのM-DNAの精製 MCCを実施例1におけるように調製した。M-DNAを、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出、およびエタノール沈澱(Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Ausubelら編、John Wiley & Sons Inc.、New York、USA)によって、MCC(MCC-DNA)から精製した。予期しなかったことに、本発明者らは、少なくとも約3.6%の乾燥重量のMCCが、抽出可能なM-DNAであることを見出した。
【0053】
M-DNAを、5mlのDNase非含有50mM Tris-HCl、5mM EDTA、pH8.0中にM.phlei(110系統)を懸濁し、DNase非含有リゾチーム(Sigma Chemical Co.)を、1mg/mlの濃度に添加し、そして90分間、37℃でインキュベーションすることによって、M.phleiから精製した(M.p
hlei-DNA)。DNase非含有プロテイナーゼK(Life Technologies、Burlington、Ontario、Canada)を、0.1mg/mlの濃度に添加し、DNase非含有ドデシル硫酸ナトリウム(BioRad、Richmond、CA)を、1%の濃度に添加し、そしてインキュベーションを、10分間、65℃で継続した。M-DNAを、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出し、そしてエタノール沈澱した。
【0054】
他で記載しない限り、M-DNAを、オートクレーブした脱イオン化水中、またはDNase非含有の薬学的に受容される緩衝液(生理食塩水、PBSを含むがこれらに制限されない)中で、超音波処理した。MCC、MCC-DNA、およびM.phlei-DNAは、Limulus amebocyte lysate QCL-1000キット(BioWhittaker、Walkersville、MD)を使用して測定されるように、エンドトキシンを含まない。
【0055】
〔実施例3〕
バクテリアDNA-バクテリア細胞壁複合体の調製、および他のバクテリア種からのバクテリアDNAの調製 バクテリアDNA-バクテリア細胞壁複合体を、M.smegmatis、M.fortuitous、Nocardia rubra、Nocardia asteroides、Cornybacterium parvum、M.kansaasii、M.tuberculosis、およびM.bovisから、実施例1におけるように調製する。バクテリアDNAを、実施例2におけるようにバクテリアDNA-バクテリア細胞壁複合体から、および処理がなされていないバクテリアから精製する。
【0056】
〔実施例4〕
DNase処理 MCC-DNA、M.phlei-DNA、およびMCCは、それぞれ、1μgのM-DNAおよびRegressin(登録商標)(米国特許第4,744,9840号)を含有し、これを、20mM Tris HCl、pH8.4、2mM MgCl2、および50mM KCl中、1国際単位(IU)のRNase非含有DNaseI(Life Technologies)で、1時間、25℃にて消化した。EDTAを2.5mMの最終濃度に添加し、そして10分間、65℃で加熱することによってDNaseIを不活化した。DNaseIは、1本鎖DNAおよび2本鎖DNAの両方を消化する。DNaseIでの消化は、DNAのほとんど全ての消化を生じる。Regressin(登録商標)(Bioniche、Inc. London、Ontario、Canada)は、1mgのミコバクテリア細胞壁抽出物、1ml PBS中の20μlの鉱物油NF、および0.5% v/vのTween 80を含有する処方物である。
【0057】
〔実施例5〕
MCC-DNAとM.phlei-DNAとの比較 MCC-DNAおよびM.phlei-DNAを、当業者に公知の手順を使用して、5%アガロースゲル(3h;100V)中で電気泳動した。DNA分子量分布を、1D Main Programソフトウエア(Advance American Biotechnology、Fullerton、CA)を使用して、ゲル写真走査により分析した。
第1図において示されるように、M.phlei-DNAは、ゲノムDNAと同様に(>12000bp)、約5と約10000塩基対(bp)との間に広範な範囲のオリゴヌクレオチドを含む。MCC-DNAは、約5と約250塩基対との間のオリゴヌクレオチドの範囲、約40塩基対での1つの主要なピーク、および小さなゲノムDNAを含む。
【0058】
〔実施例6〕
細胞および試薬 OC2およびSW260を除く全ての細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Rockville、MD)から得、そしてATCCによって推奨される培地中で培養した。OC2およびSW260は、J.K.Collins博士(University College Cork、Cork、Ireland)から得、そして10% FCSを補充したDMEM培地中で培養した。表1は、細胞株、それらの起源、およびそれらの特性を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
マウスマクロファージを、1.5mlの滅菌Brewerのチオグリコール酸ブロス(Difco、Detroit、MI)を腹腔内に注入した雌性CD1マウスから得た。腹膜浸出液(>85%マクロファージ)を、4日目に採集し、HBSS中での遠心分離によって洗浄し、そして10% FCS、2mM L-グルタミン、および20mM HEPES(Life Technologies)を補充したRPMI-1640培地中で培養した。細胞を、18時間、接着させ、その後、非接着細胞を、加温培地で穏やかに洗浄することによって取出した。
【0061】
マウス脾臓細胞を、滅菌のステンレススチールスクリーンを介して穏やかに裂くことによって調製した。細胞懸濁液を、リンパ球-M細胞分離培地(CedarLane、Hornby、Ontario、Canada)上に置き、そして2200rpmで30分間、遠心分離して、赤血球および死細胞を取出した。これらの細胞を、10% FCS、2mM L-グルタミン、および20mM HEPES(Life Technologies)を補充したRPMI-1640培地中で培養した。
【0062】
他で記載しない限り、細胞を、6ウェルの平底組織培養プレートに3×105から106細胞/mlとの間の濃度で播種し、そして5% CO2雰囲気中で、37℃にて維持した。
ウシ胸腺(thymus)-DNA、ニシン精子(herring sperm)-DMA、およびエッシェリヒア コリ(Escherichia coli)リポ多糖(LPS)を、Sigma Chemical Co.から得た。組換えヒトIL-12(hIL-12)を、R & D Systems(Minneapolis、MN)から得た。
【0063】
〔実施例7〕
細胞増殖の阻害 細胞増殖を、ジメチルチアゾール-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)還元を使用して(Mosmanら、Journal of Immunological Methods 65:55-63、1983)、測定した。簡潔には、5mg/mlでPBS中に溶解した100μlのMTT(Sigma-Aldrich)を、プレートの壁に添加した。4時間後、酸-イソプロパノール(イソプロパノール中の1mlの0.04N HCl)を添加し、そして還元されたMTTを、570nmの波長で測定した。
HT-1376、HT-1197、B-16 F1、THP-1、RAW 264.7、Jurkat、HL-60、およびHL-60 MX-1細胞を、0μg/ml〜10μg/mlのM.phlei-DNA、MCC-DNA、ニシン精子DNA、およびウシ胸腺DNAとともに、24時間、インキュベーションした。M.phlei-DNA(第2A図)およびMCC-DNA(第2B図)は、用量依存性の様式で、試験したガン細胞株のそれぞれにおいて増殖を阻害したが、ニシン精子DNA(第2A図および第2B図)およびウシ胸腺DNA(第2A図および第2B図)は、試験した細胞数のいずれの増殖も阻害しなかった。
HT-1376、HT-1197、B-16 F1、THP-1、RAW 264.7、Jurkat、HL-60、およびHL-60 MX-1細胞
を、0μg/ml〜10μg/mlのMCCとともに、24時間、インキュベーションした。MCCは、用量依存性の様式で、試験したガン細胞株のそれぞれにおいて、増殖を阻害した(第3図)。
【0064】
ヒト白血病性THP-1単球を、0μg/ml〜10μg/mlのM.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびhIL-12で、24時間、インキュベーションした。M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCは、用量依存性の様式で、増殖を阻害した。hIL-12は、増殖を阻害しなかった(第4図)。
HT-1197(第5A図)およびHT-1376(第5B図)ヒト膀胱ガン細胞を、0〜100μg/mlのMCCおよびLPSとともに、20時間、インキュベーションした。MCCは、増殖を阻害した。LPSは増殖を阻害しなかった。
【0065】
M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCC(ここで、第1の薬学的に受容されるキャリアは、M.phleiの細胞壁である)は、試験したガン細胞株のそれぞれの増殖を阻害した。対照的に、LPS(これは、いくつかのガン細胞株においてアポトーシスを誘導することが報告されている(Izquierdoら、Anticancer Drugs 7:275-2801996)非特異的な免疫刺激因子である);hIL-12(これは、いくつかのガン細胞株においてアポトーシスを誘導することが報告されている(Stineら、Annals NY Academy of Science 795:420-421、1996)サイトカインである)、ならびにウシ胸腺およびニシン精子からのDNAは、試験したガン細胞株のいずれの増殖も阻害しない。これらのデータは、M-DNAが、試験したガン細胞株における増殖の阻害を担うこと、ならびに他のDNA(ニシン精子DNAおよびウシ胸腺DNA)は、M-DNAを置換え得ないこと、を示す。これらのデータはまた、M-DNAの、細胞増殖の阻害が、非特異的な免疫刺激(LPS)から、およびサイトカイン活性(hIL-12)
から生じないことを示す。さらにガン細胞のうち、p53/p21異常の、および薬物耐性のHT-1376ヒト膀胱ガン細胞、および非定型性の薬物耐性HL-60 MX-1ヒト前骨髄球性白血病細胞が阻害された。
【0066】
〔実施例8〕
DNAフラグメント化によって示されるアポトーシスの誘導 ヌクレオソームの大きさのフラグメントへの、細胞性DNAのフラグメント化は、アポトーシスを受ける細胞の特徴である。ヌクレオソームの大きさのフラグメントは、アガロースゲル電気泳動によって測定されるように、長さ約200塩基対の差を有するDNAフラグメントである(Newellら、Nature 357:286-289、1990)。DNAフラグメント化を評価するために、非接着細胞を、200gで、10分間、遠心分離によって回収した。非接着細胞のペレットおよび残存する接着細胞を、0.5mlの低浸透圧性の溶解緩衝液(10mM Tris緩衝液、1mM EDTA、0.2% Triton X-100、pH7.5)で溶解した。溶解物を、13,000gで、10分間、遠心分離し、そしてフラグメント化されたDNAを含有する上清を、50%イソプロピルアルコールおよび0.5M NaCl中で、-20℃にて、一晩、沈澱した。沈澱物を、遠心分離によって回収し、そして3時間、100Vで、0.7%アガロースゲルにおいて電気泳動することによって分析した。
【0067】
ヒト白血病性THP-1単球の懸濁培養物を、48時間、PBSとともに、ならびに1μg/mlの未処理のまたはDNaseIで処理したM.phlei-DNAおよびMCCとともに、ならびに未処理のニシン精子DNAとともに、インキュベーションした(第6図)。M.phlei-DNA(レーン2)およびMCC(レーン4)は、有意なDNAフラグメント化を誘導したが、PBS(レーン1)、DNaseIで処理したM.phlei-DNA(レーン3)、DNaseIで処理したMCC(レーン5)、およびニシン精子-DNA(レーン6)は、DNAフラグメント化を誘導しなかった。123bpのDNAラダー(Life Technologies)を使用して、ヌクレオソームの大きさのDNAフラグメントの分子量を測定した(レーンL)。
THP-1単球の懸濁培養物を、48時間、PBSとともに、ならびに1μg/mlの未処理のまたはDNaseIで処理したM.phlei-DNAおよびニシン精子DNAとともに、ならびにhIL-12とともに、インキュベーションした(第7図)。M.phlei-DNAは、有意なDNAフラグメント化を誘導したが(レーン5)、DNaseIで処理したM.phlei-DNA(レーン4)、ニシン精子-DNA(レーン
3)、DNaseIで処理したニシン精子-DNA(レーン2)、hIL-12(レーン1)、およびPBS(レーン6)は、DNAフラグメント化を誘導しなかった。123bp DNAラダー(Life Technologies)を使用して、ヌクレオソームの大きさのDNAフラグメントの分子量を測定した(レーンL)。
【0068】
HT-1197およびHT-1376ヒト膀胱ガン細胞を、48時間、1μg/mlのMCCとともに、またはhIL-12とともにインキュベーションした(第8図)。MCCは、非接着性のHT-1197(第8A図、レーン2)およびHT-1376(第8B図、レーン2)細胞において、有意なDNAフラグメント化を誘導したが、接着性のHT-1197(第8A図、レーン3)およびHT-1376(レーン8B、レーン3)細胞においては、誘導しなかった。PBS(第8A図および第8B図、レーン5)、hIL-12(第8A図および第8B図、レーン4)、DNaseIで処理したMCC(第8A図および第8B図、レーン7)、ならびに未処理の細胞(第8A図および第8B図、レーン1)は、非接着性のHT-1197細胞およびHT-1376細胞において、DNAフラグメント化を誘導しなかった。123bp DNAラダー(Life Technologies)を使用して、ヌクレオソームの大きさのDNAフラグメントの分子量を測定した(第8A図および第8B図、レーンL)。
【0069】
M.phlei-DNAおよびMCC(ここで、M-DNAは、保持され、そしてM.phlei細胞壁上に複合体化される)は、ヒト白血病性THP-1単球において、ならびにHT-1197およびHT-1376ヒト膀胱ガン細胞において、アポトーシスを誘導したが、ニシン精子DNA、hTL-12、ならびにDNaseIで処理したM.phlei DNAおよびMCCは、これらの細胞においてアポトーシスを誘導しなかった。これらのデータは、M-DNAが、試験したガン細胞株においてアポトーシスの誘導を担うこと、M-DNAのオリゴヌクレオチドは、無傷(DNaseI処理)でなければならないこと、および他のDNA(ニシン精子DNA)は、M-DNAを置換し得ないことを示す。これらのデータはまた、アポトーシスのM-DNA誘導は、非特異的な免疫刺激(LPS)から生じないことを示す。
【0070】
〔実施例9〕
核分裂タンパク質装置(NuMA)の可溶化によって示される、アポトーシスの誘導 NuMAの可溶化および放出によって引き起こされる細胞核における顕著な形態学的変化は、アポトーシスの特徴である。NuMAの可溶化および放出を測定するために、培養細胞からの培地を回収し、そして200gで、10分間、遠心分離した。上清を回収し、そして100μlの各上清を使用して、市販のELISA(Calbiochem、Cambridge、MA)(Millerら、Biotechniques 15:1042-1047、1993)を用いて、単位/ml(U/ml)におけるNuMA放出を定量した。
ヒト白血病性THP-1単球を、48時間、0μg/ml〜10μg/mlのM.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびニシン精子DNAとともにインキュベーションした。M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCは、用量依存性の様式でNuMAの放出を誘導したが、ニシン精子DNAは、NuMAの放出を誘導しなかった(第9図)。M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCのDNaseI処理は、これらの細胞からのNuMA放出のそれらの誘導を、有意に阻害した(第10図)。
【0071】
HT-1197およびHT-1376ヒト膀胱ガン細胞を、0μg/ml〜100μg/mlのMCCとともにインキュベーションした。MCCは、用量依存性の様式で(第11図)、および時間依存性の様式で(第12A図および第12B図)、NuMAの放出を誘導した。NuMAの増強された放出は、HT-1197細胞(第12A図)およびHT-1376(第12B図)細胞と、100μg/mlのMCCとのインキュベーション後、24時間以内に検出された。 M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCは、それぞれM-DNAを含有し、これらはガン細胞のアポトーシスを誘導した。MCC(ここで、第1の薬学的に受容されるキャリアは、M.phleiの細胞壁である)は、M.phlei-DNAまたはMCC-DNAよりもアポトーシスを誘導した。このことは、応答細胞にM-DNAを提示するキャリアが、アポトーシスのM-DNA誘導を達成することを示唆する。
【0072】
〔実施例10〕
M.phlei-DNAによるJurkatヒトTリンパ芽球細胞におけるアポトーシスのFasに依存しない誘導 JurkatヒトTリンパ芽球を、1時間、PBSとともに、1μg/ml CH-11抗体(Fasに結合してアポトーシスを誘導する抗体)(+コントロール)(Coulter-Immunotech、Hialeah、FL)とともに、または1μg/ml ZB4抗体(Fasに結合してアポトーシスを阻害する抗体(−コントロール)(Coulter-Immunotech)とともに、インキュベーションした。M.phlei-DNA、1μg/mlを添加し、そしてNuMA放出を、48時間後に測定した。
第13図において示されるように、M.phlei-DNAは、ZB4の不在下、および存在下の両方において、アポトーシスを誘導した。これらのデータは、M.phlei-DNAによるアポトーシスの誘導がFasに依存しないことを実証する。
【0073】
〔実施例11〕
細胞増殖およびアポトーシスに対する、M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCの効果のまとめ 表2は、ヒトおよびマウスのガン細胞株におけるDNAフラグメント化、NuMA放出、およびフローサイトメトリー分析によって測定される、ガン細胞の増殖の阻害に対する、およびガン細胞におけるアポトーシスの誘導に対する、M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCの効果をまとめる。
【0074】
【表2】

【0075】
M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCC(ここで、第1の薬学的に受容されるキャリアは、M.phleiの細胞壁であり、M-DNAは、細胞壁上で複合体化される)は、試験したガン細胞株のそれぞれの増殖を阻害し、試験したガン細胞のそれぞれにおいてアポトーシスを誘導する。これらのガン細胞株は、非定型性の薬物耐性HL-60 MX-1ヒト前骨髄球性白血病細胞、p53/p21異常および薬物耐性HT-1376ヒト膀胱細胞、Fas異常SW260ヒト結腸細胞、ならびに従来の薬物耐性LS1034ヒト盲腸ガン腫細胞を含む。
【0076】
〔実施例12〕
ヒト白血病性THP-1単球におけるカスパーゼ-3のMCC活性化 カスパーゼ3は、Fas-FasLシグナル伝達のアポトーシス経路の下流における重要な酵素である。MCCがFasを回避し得、そしてガン細胞におけるカスパーゼカスケードを直接的に活性化し得るか否かを測定するために、カスパーゼ-3活性に対するMCCの効果を、ヒト白血病性THP-1単球においてアッセイした。
THP-1単球(2×107細胞)を、48時間、MCC(100μg/ml)とともにインキュベーションした。THP-1細胞を、50mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、0.1% CHAPS、10mM DTT、1mM EDTA
、および10%グリセロール中に溶解した。カスパーゼ-3活性を、市販のELISA(BIOMOL Research Laboratories、Inc.、Plymouth Meeting、PA)を用いて、含まれる基質、インヒビター、および精製カスパーゼ-3酵素を使用して測定した。結果を、405nmで読み取られる至適密度として表した。
【0077】
【表3】

【0078】
表3において示されるように、MCCとのインキュベーションは、ヒト白血病性THP-1単球において、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-3様活性の232%(3時間)
および333%(6時間)の増加を生じた。カスパーゼ-3およびカスパーゼ-3様活性のMCC誘導は、MCCのDNase処理によって無効にされた。カスパーゼ-3およびカスパーゼ-3様活性のMCC誘導の特異性は、カスパーゼ-3インヒビターを使用して実証された。MCC処理したTHP-1細胞抽出物へのカスパーゼ-3インヒビターの添加は、測定可能な活性を全て無効にした。ヒト白血病性THP-1単球においてカスパーゼ-3およびカスパーゼ-3様活性を特異的におよび直接的に誘導するMCCの能力は、全く予期されない。カスパーゼ-3およびカスパーゼ-3様活性を特異的に刺激するために、MCCは、1つ以上の機構によって細胞に入り、そしてアポトーシス実行の致死的なタンパク質分解性のカスケードを開始しなければならない。
【0079】
〔実施例13〕
ヒト白血病性THP-1単球おけるMCC誘導性のアポトーシスに対する、タモキシフェンの効果
ヒト白血病性THP-1単球を、90分間、コントロール培地中で、および10μg/mlタモキシフェン(Sigma-Aldrich)(進行した乳ガンの緩和処置において使用される抗エストロゲン)を含有する培地中で、インキュベーションした。細胞を、氷冷した培地で大量に洗浄し(2×)、培地中に約106細胞/mlに再懸濁し、そして48時間、0、1、10、および100μg/mlのMCCとともにインキュベーションした。アポトーシスを、NuMAを測定することによって定量した。
【0080】
【表4】

【0081】
表4において示されるように、タモキシフェン中でのプレインキュベーションは、使用されたMCC濃度のそれぞれにて、MCC誘導性のアポトーシスを有意に増加した。これらのデータは、MCC(ここで、M-DNAは、M.phleiの細胞壁と複合体化される)が、他の抗ガン剤に対する補助薬として使用され得、処置効果を増加し得ることを実証する。
【0082】
〔実施例14〕
メチル化、超音波処理、およびオートクレーブによるM.phlei-DNAの改変 bacillus Calmette-Guerin(BCG)からの核酸調製物は、ガンの増殖を阻害する(米国特許第4,579,941号;Tokunagaら、Microbiology and Immunology 36:55-666、1992)。BCG核酸における活性成分は、回文オリゴヌクレオチド配列のプリン-プリン-C-G-ピリミジン-ピリミジン(CGモチーフ)として同定されている。CpGメチラーゼでのサイトシンメチル化は、このDNAの活性を無効にする(Kriegら、Nature 374:546-549、1995)。それゆえ、M.phlei-DNAがアポトーシスを誘導する能力に対するCpGメチル化の効果を、測定した。
【0083】
M.phlei-DNA、1μgを、10mM Tris-HCl、pH7.9、50mM NaCl、10mM MgCl2、1mM DTT、および160μM S-アデノシルメチオニン中で、2.5UのCpG SssIメチラーゼ(New England Biolabs、Mississauga、Ontario、Canada)を使用して、1時間、37℃にてメチル化した。ネイティブなおよびメチル化されたM.phlei-DNAを、50mM NaCl、10mM Tris HCl、10mM MgCl2、および1mM DTT、pH7.9中で、1時間、60℃にて、BstUI制限エンドヌクレアーゼ(New
England Biolabs)による切断に供した。3時間、100Vでの0.5% アガロースゲルにおける電気泳動分析は、ネイティブなM.phlei-DNAが、BstUI制限エンドヌクレアーゼによって消化されたが、メチル化されたM.phlei-DNAは、BstUI制限エンドヌクレアーゼによって消化されなかったことを示した。このことは、M.phlei-DNAのメチル化が、完全であったことを確認した。
【0084】
第14図において示されるように、メチル化は、ヒト白血病性THP-1単球からの、M.phlei誘導性のNuMA放出を改変しなかった。これらのデータは、BCGとは異なり、CGモチーフは、M.phlei-DNAによるアポトーシス誘導に必要ではないことを実証する。
M.phlei-DNA(1μg)の塩基対長を、W-38型超音波プロセッサー(HeatSystems-Ultrasonics、Inc.)において、氷上で、15秒間または20分間、超音波処理することによって、BstUI制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、または121℃で30分間、オートクレーブすることによって(Castle Sybron MDT、Dubuque、Iowa)、減少した。第14図において示されるように、超音波処理、BstU消化、およびオートクレーブは、それぞれ、約5塩基対から約250塩基対の範囲に塩基対長を減少し、THP-1単球からのNuMA放出のM.phlei-DNA誘導を達成しなかった。これらの結果は、M.phlei-DNAが、短いオリゴヌクレオチド長(約5塩基対〜約250塩基対)であっても、ガン細胞においてアポトーシスを誘導することを実証する。
【0085】
ヒト白血病性THP-1単球を、48時間、未処理のM.phlei-DNAおよびMCCとともに、ならびに30分間、121℃でオートクレーブされたM.phlei-DNAおよびMCCとともに、インキュベーションした。DNAの塩基対長を減少するオートクレーブは、これらの細胞の増殖を阻害するか(表5)、またはこれらの細胞においてアポトーシスを誘導する(表6)、M.phlei-DNAおよびMCCの能力を影響しなかった。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
〔実施例15〕
MCCは、インビボでガンの増殖を阻害する MCCおよびDNaseIで処理したMCCを、4℃で5分間、超音波処理することによって(Heat Systems-Ultrasonics,Inc.)、2% w/v 鉱物油および0.02% w/v Tween80(Fisher Chemical Co.)を含有するPBS中で1mg/mlの最終濃度に乳化した。
系統10の肝細胞腫細胞(系統2モルモットに同質遺伝子的)を迅速に解凍し、遠心分離によって洗浄し、そして106細胞/mlの濃度に、M199培地中に再懸濁した。1.5×106細胞を含有する0.1mlを、3月齢の系統2モルモットのわき腹に、皮内注入した。ガンが、約0.5と0.8cmとの間の直径であった場合に、処置を注入後6〜7日目に開始した。7匹の動物を、乳化緩衝液単独で処置し(コントロール)、7匹の動物をMCCを含有する乳化緩衝液で処置し、および7匹の動物をDNaseで処理されたMCCを含有する乳化緩衝液で処置した。乳濁液は、ガンおよびその周囲の正常な組織に、直接的に、滴下注入した。1mgの、MCCおよびDNaseIで処理したMCCのを含有する1mlの全容量について、0.1mlの乳濁液を、0時間および6時間で、投与した。
【0089】
ガンの直径(最も長い直径+最も短い直径)を、3週間、毎週記録した。ガンの容量を、0.5×a(最も長い直径)×b2(最も短い直径)として、mm3で算定し、そして処置の0日目に比較したガン容量の増加を、各モルモットについて算定した。統計学的分析を、反復を伴う2方向ANOVAを使用して(PHARM/PCSバージョン4.2、MCS、Philadelphia、PA)、行った。処置における差異は、p≦0.05で有意であると考えられた。
第15図において示されるように、コントロール乳濁液では、ガン容量は、3週目までに約22倍まで増加したが、MCCでは、ガン増殖は、コントロール乳濁液に比較して、有意に阻害された(第15図、表7)。DNaseIで処理したMCCでは、ガン増殖は、コントロールと有意には異ならなかった(第15図、表7)。
【0090】
【表7】

【0091】
これらのデータは、腫瘍の部位でのMCCの滴下注入は、腫瘍退行を生じることを示す。さらに、MCCと、DNaseIで処理したMCCとの間のガン増殖の阻害における有意な(p<0.01)差異は、未分解のM-DNAが、インビボでのMCCの抗ガン活性に必要であることを示す。
【0092】
〔実施例16〕
MCC細胞傷害性 細胞傷害性は、血漿膜完全性の喪失および細胞質酵素(LDH(Wyllieら、International Review of Cytology 68:251-306、1980;Phillipsら、Vaccine 14:898-904、1996)を含むがこれに制限されない)の放出によって特徴付けられる。ヒト膀胱ガン細胞は、細胞障害性薬剤で処理される場合にLDHを放出する(Rahman M. Urology International 53:12-17、1994)。
MCCの細胞傷害性を評価するために、HT-1197およびHT-1376ヒト膀胱ガン細胞を、48時間、0μg/ml〜100μg/mlのMCCとともに、または全LDH放出についてのコントロールとして、溶解緩衝液(10mM Tris、1mM EDTA、0.2% Triton X-100、pH7.5)(Filionら、Biochim Biophys Acta 1329:345-356、1997)とともに、インキュベーションした。培養上清へのLDH放出を、市販のアッセイ(Sigma-Aldrich)を使用して測定した。
LDH放出によって測定されるように、MCCは、HT-1197細胞に対しても、およびHT-1376細胞に対しても、細胞傷害性ではなかった(第17図)。細胞傷害性の不在は、MCCが、ガン細胞の増殖を阻害するために、およびガン細胞においてアポトーシスを誘導するために、直接的に作用することを実証する。
【0093】
〔実施例17〕
インビトロでのサイトカイン合成の刺激 IL-12は、いくつかのガン細胞において抗ガン活性を有することが報告される(Voestら、Journal National Cancer Institute 87:581-586、1995;Stineら、Annals NY Academy of Science 795:420-421、1996)が、GM-CSFは、いくつかのガン細胞においてガン後活性を有することが報告される(Hawkyardら、Journal of Urology 150:514-518、1993)。さらに、いくつかのガン細胞は、サイトカインを分泌することが報告される(De Reijkeら、Urology Research 21:349-352、1993;Beversら、British Journal of Urology 80:35-39、1997)。それゆえ、HT-1197およびHT-1376ヒト膀胱ガン細胞による、ならびにヒトTHP-1単球、マウスマクロファージ、マウスRAW264.7単球、ならびにマウス脾臓細胞による、IL-6、IL-12、およびGM-CSF合成に対するMCCの効果を、測定した。
【0094】
サイトカイン産生を、適切な市販のELISA(BioSource、Camarillo CA)を使用して、100μlの培養上清中のpg/mlで測定した。IL-12 ELISAは、IL-12 p70複合体および遊離のp40サブユニットの両方を測定する。
HT-1197およびHT-1376、THP-1、マクロファージ、RAW264.7、およびマウス脾臓細胞を、48時間、1μg/ml MCCとともにインキュベーションした。第1図において示されるように、MCCは、ヒト単球およびマウスマクロファージにるIL-6およびIL-12の産生を刺激したが、ヒト膀胱ガン細胞、マウス単球、または脾臓細胞による産生は刺激しなかった。MCCは、試験したどのガン細胞においても、GM-CSF産生を刺激しなかった。
これらのデータは、MCC(ここで、M.phleiの細胞壁は、第1の薬学的に受容されるキャリ
アである)は、ヒト単球およびマウスマクロファージによる抗ガンサイトカインのIL-6およびIL-12の産生を刺激することを示す。MCCは、ヒト膀胱ガン細胞によるサイトカインの産生を刺激しない。MCCは、ガン後のサイトカインGM-CSFの産生を刺激しない。
【0095】
〔実施例18〕
ヒトTHP-1単球によるIL-12産生に対する、未処理のおよびDNaseIで処理した、M.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびRegressin(登録商標)の効果 ヒトTHP-1単球を、DNaseIでの処理の前に、DNaseIでの処理の後に、およびDNaseIで処理したM.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCへのM-DNAの添加の後に、48時間、M.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびRegressin(登録商標)とともにインキュベーションした。
【0096】
【表8】

【0097】
表8において示されるように、M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCは、それぞれ、THP-1単球がIL-12を産生するのを刺激した。MCCは、M.phlei-DNAまたはMCC-DNAよりもIL-12の産生を刺激した。RegessinOは、最小のIL-12産生を刺激した。DNaseI処置は、約50%まで、M.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC刺激されるIL-12産生を減少した。RegessinOは、DNaseI処理によって影響されなかった。DNaseIで処理したM.phleiに対するM.phlei-DNAの添加、およびDNaseIで処理したMCC-DNAに対するMCC-DNAの添加は、IL-12産生のそれらの刺激を回復した。DNaseIで処理したMCCに対するMCC-DNAの添加は、IL-12産生のその刺激を回復しなかった。
【0098】
MCC(ここで、M.phlei細胞壁は、第1の薬学的に受容されるキャリアである)は、M.phlei-DNAまたはMCC-DNAよりもIL-12産生を刺激し、このことは、応答細胞に対してM-DNAを提示するために使用されたキャリアが、M-DNA刺激性のIL-12産生を達成したことを示唆する。DNaseI処理は、M-DNAを分解し、M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCC刺激性のIL-12産生を有意に減少し、このことは、M-DNAのオリゴヌクレオチド形態が、IL-12産生の至適な刺激のために保存されなくてはならないことを示唆する。DNaseIで処理したMCCへのM-DNAの添加は、IL-12産生のその刺激を回復せず、このことは、M-DNAが、MCCにおいてM.phleiの細胞壁に複合体化される様式が、ヒト単球によるIL-12の至適な刺激のために重要であることを示唆する。
【0099】
〔実施例19〕
ヒトTHP-1単球によるIL-12産生のM.phlei-DNAおよびMCC刺激に対する、オートクレーブの効果 ヒトTHP-1単球を、48時間、MCCおよびM.phlei-DNAとともに、ならびに30分間、滅菌水中でオートクレーブしたMCCおよびM.phlei-DNAとともに、インキュベーションした。
【0100】
【表9】

【0101】
表9において示されるように、DNA塩基対の大きさを減少するオートクレーブは、単球によるIl-12産生のMCCおよびM.phlei-DNA刺激を影響しなかった。
【0102】
〔実施例20〕
ヒトTHP-1単球によるMCC-DNAおよびMCC刺激性のIL-12産生に対する、CD14抗体処理の効果
ヒトTHP-1単球を、PBSとともに、または10μl/mlの抗CD14抗体(クローンMY4、Coulter-Immunotech)とともに、1時間、インキュベーションした。次いで、5μg/mlのMCC-DNAまたはMCCを添加し、そしてインキュベーションを、48時間、継続した。CD14抗体(これは、細胞表面上のCD14レセプターに結合する)は、MCC-DNA刺激性のIL-12産生の約85%の減少、およびMCC刺激性のIL-12産生の約20%の減少を引き起こした(第18図)。
【0103】
〔実施例21〕
ヒトTHP-1単球によるM.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCC刺激性のIL-12産生に対する、サイトラカシンDの効果 ヒトTHP-1単球を、48時間、10μg/mlのサイトカラシンD(Sigma Chemical Co.)の存在下および不在下、PBSとともに、または1μg/mlのM.phlei-DNA、MCC-DNA、またはMCCとともに、インキュベーションした。サイトカラシンD(これは、食作用を阻害する)は、M.phlei-DNA刺激性のIL-12産生において64%の減少、MCC-DNA刺激性のIL-12産生において50%の減少、およびMCC刺激性のIL-12産生において55%の減少を引き起こした(第19図)。
【0104】
以下の仮説に束縛されることを意図しないが、第18図および第19図において示されるデータに基づいて、M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCCは、複数の機構によって単球と相互作用することが考えられる。第18図は、それらが、GPI結合化膜レセプターCD14と相互作用し、そして内部移行されたことを示唆する。この機構は、不溶性のMCCに対してよりも、可溶性のM.phlei-DNAおよびMCC-DNAに対して特異的である。第19図は、それらが、食作用性のレセプター(例えば、スカベンジャーレセプター)と相互作用し、そして内部移行されることを示唆する。この機構は、可溶性のM.phlei-DNAおよびMCC-DNAに対してよりも、不溶性のMCCに対して特異的である。
【0105】
〔実施例22〕
ヒトTHP-1単球によるIL-12産生に対する、CG配列およびMCCの効果 BCGからの核酸調製物は、リンパ球増殖、B-リンパ球によるIL-6およびIL-12の分泌、単球によるIL-12の分泌、T-リンパ球によるIL-6およびインターフェロンγの分泌、ならびにNK細胞によるインターフェロン-γの分泌を刺激することが報告される(Klinmanら、Proceeding of the National Academy of Science USA 93:2879-2883、1996)。
BCG核酸の活性成分が、CGモチーフとして同定されているので、ヒトTHP-1単球を、48時間、0.5、1、および5μg/mlのMCCまたは5'-GCTAGACGTTAGCGT-3'DNA配列(自動化DNA合成機を使用して固相合成によって調製した)とともに、インキュベーションした。
【0106】
【表10】

【0107】
表10において示されるように、CG含有オリゴヌクレオチド配列は、試験した3つの濃度のいずれでもIL-12産生を刺激しなかったが、MCCは、1μg/mlで、IL-12産生に対する有意な刺激効果を有した。
【0108】
〔実施例23〕
マウスマクロファージによるIL-12産生の、M.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびRegressin(登録商標)の刺激に対する、熱処理およびDNaseI処理の効果 マウス腹膜のマクロファージを、48時間、M.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびRegressin(登録商標)とともに、ならびに100℃で、10分間、加熱し、次いで、氷中で、2分間冷却したM.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびRegressin(登録商標)とともに、インキュベーションした。
【0109】
【表11】

【0110】
表11において示されるように、5μg/mlの濃度で、IL-12産生は、MCCによって最も大きく、M.phlei-DNAおよびMCC-DNAによってより小さく刺激され、ならびにRegressin(登録商標)は、最も小さく刺激された。M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびRegressin(登録商標)の熱処理は、IL-12産生のそれらの刺激に対して何ら有意な効果を有しなかった。示していないが、MCCの熱処理は、わずかであるが、有意な、IL-12産生の増加を引き起こした。
マウス腹膜のマクロファージを、48時間、未処理のおよびDNaseIで処理した、MCC-DNA、MCC、およびRegressin(登録商標)とともにインキュベーションした(第20図)。IL-12産生は、MCCによって最も大きく、MCC-DNAによってより小さく、ならびにRegressin(登録商標)によって最も小さく刺激された。MCC-DNAおよびMCCのDNaseI処理は、マウスマクロファージによるIL-12産生のそれらの刺激を有意に減少した。Regressin(登録商標)のDNaseI処理は、その活性に対して何の効果も有しなかった。これらのデータはさらに、単球でのように(実施例18)、M-DNAのオリゴヌクレオチド構造が、マウスマクロファージによるIL-12産生の至適な刺激のために保存されなければならないことを示唆する。
【0111】
〔実施例24〕
マウス腹膜のマクロファージによる一酸化窒素(NO)産生に対する、M.phlei-DNA、MCC-D
NA、MCC、およびRegressin(登録商標)の効果 マクロファージ活性化は、反応性酸素種(一酸化窒素、スーパーオキシドラジカル、およびヒドロキシルラジカルを含むがこれらに制限されない)の産生を刺激する。これらの反応性酸素種は、応答細胞における細胞溶解およびアポトーシスを誘導し、それゆえ、抗ガン活性を有する。
マウス腹膜のマクロファージを、48時間、0.1、5.0、または12.5μg/mlのM.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびRegressin(登録商標)とともに、インキュベーションした。100μlの培養上清を使用して、Griess試薬とNO2-との反応による、nmol/Lで測定されるNOの産生はなかった。
【0112】
【表12】

【0113】
表12において示されるように、5μg/mlで、MCCは、M.phlei-DNA、MCC-DNA、またはRegressin(登録商標)よりも有意に、NO産生を刺激した。
マウスマクロファージを、48時間、1μg/mlの未処理のおよびDNaseIで処理したMCCとともに、ならびに未処理のM.phlei-DNAおよびMCC-DNAとともに、インキュベーションした。
【0114】
【表13】

【0115】
表13において示されるように、MCCは有意なNO産生を刺激したので、M-DNAは、M.phleiの細胞壁上で複合体化された。MCCのDNaseI処理(これは、M-DNAを分解する)は、NO産生のMCC刺激を無効にした。MCC-DNAおよびM.phlei-DNAは、最小のNO産生を刺激した。これらのデータは、M-DNAの無傷のオリゴヌクレオチド構造、およびマクロファージにこれらのオリゴヌクレオチドを提示するキャリアの両方が、NO産生の至適刺激に重要であることを実証する。
【0116】
〔実施例25〕
マウスRAW264.7単球による一酸化窒素(NO)の産生に対する、MCCの効果 マウスRAW264.7単球を、24時間、0.5〜95μg/mlのMCCとともにインキュベーションした。漸増濃度のMCCは、漸増量のNO産生を刺激した(第21図)。これは、NO誘導のレセプターが、単球において至適に発現されないので予期されず、それゆえ、NO産生は、通常、単球と関連しない。同じ条件下で、Regressin(登録商標)は、NO産生を刺激しなかった。
【0117】
〔実施例26〕
インビボでのサイトカイン合成の刺激 CD-1マウスの4つの群(それぞれ、5匹のマウスを含む)を、50mg/kgのMCCで、腹腔内注入した。血液を、注入の0、3、6、および24時間後に回収し、そして血中のIL-6、IL-10、IL-12、およびGMSFの濃度(pg/ml)を、注入の0、3、6、および24時間後に測定した(第22図)。腹腔内MCCで、IL-6、IL-10、およびIL-12の血清濃度は、注入の3および6時間後に、有意に増加され、注入の24時間後に、ほぼコントロール値(0時間)に減少した。GM-CSFの血清濃度は、注入の3、6、および24時間後で、ほぼコントロール値(0時間)のままであった。
【0118】
CD-1マウスの5つの群(それぞれ、5匹のマウスを含む)を、6.6mg/kgのMCCで、静脈内に注入した。血液を、注入の0、3、6、および24時間後に回収し、そして血清中のIL-10およびIL-12の濃度(pg/ml)を、注入の0、3、6、および24時間後に測定した(第23図)。静脈内MCCで、IL-12の血清濃度は、注入の3および6時間後に有意に増加し、そして注入の24時間後に、ほぼコントロール値(0時間)に減少した。IL-10の血清濃度は、注入の3、6、および24時間後で、ほぼコントロール値(0時間)のままであった。
【0119】
これらのデータは、M-DNAのインビボ投与(ここで、MCCのように、M-DNAは、M.phleiの細胞壁上で複合体化される)は、抗ガンサイトカインのIL-6、IL-10、およびIL-12の産生を刺激するが、ガン後のサイトカインGM-CSFの産生を刺激しないことを実証する。さらに、これらのデータは、投与されるMCCの量およびMCCが投与される経路の両方が、インビボでサイトカインの産生を刺激するMCCの能力を達成することを実証する。
CD1マウスの4つの群(それぞれ、4匹のマウスを含む)を、未処理のおよびDNaseIで処理したM.phlei-DNAおよびMCCで、腹腔内注入した。3時間後、マウスを屠殺し、心臓微小穿刺によって血液を回収し、そして血清中のIL-12の濃度(pg/ml)を測定した(表14)。
【0120】
【表14】

【0121】
表14において示されるように、MCCおよびM.phlei-DNAのインビボ投与は、抗ガンサイトカインIL-12の産生を刺激する。DNaseI処理後、MCC刺激性のIL-12産生は、40.5%に減少し、そしてM.phlei-DNA刺激性のIL-12産生は、46.5%に減少した。このことは、M-DNAのオリゴヌクレオチド構造が、インビボでのIL-12産生の至適な刺激のために保存されなけ
ればならないことを実証する。
【0122】
〔実施例27〕
MCC安定性 MCCを、1mg/mlで、暗所中、4℃にて、または6ヶ月間、0.85% w/v NaCl中の滅菌懸濁液として保存した。平均粒子直径を、光子相関分光法(N4 Plus、Coulter Electronics Inc.)を使用して算定した。MCC懸濁液を、5×104から106計数/秒間の格子計数速度に、0.85 w/v NaClで希釈した。平均粒子直径を、以下の条件を用いて、サイズ分布プロセッサーモード(SDP)において算定した:液体屈折指数1.33、温度20℃、粘性率0.93センチポアズ、90.0°の測定角度、サンプル時間10.5μs、およびサンプル作動時間100秒。電位(粒子と大量の溶媒との間の流体力学的界面での電荷)を、以下の条件を使用して、Delsa 440SX(Coulter Electronics Inc.)において測定した:電流0.7mA、振動範囲500Hz、温度20℃、液体屈折指数1.33、粘性率0.93センチポアズ、比誘電率78.3、伝導率16.7ms/cm、オンタイム2.5秒間、オフタイム0.5秒間、およびサンプル作動時間60秒間。
第24図において示されるように、MCC電荷およびMCC直径は、6ヶ月の保存の間、比較的未変化のままであった。さらに、THP-1単球における、IL-12産生のMCC刺激およびアポトーシスのMCC誘導は、6ヶ月の保存の間、未変化のままであった。
【0123】
〔実施例28〕
ヒト結腸ガンのMCC-DNAおよびMCC処置 ヒト結腸ガン細胞(ICM12C)を、免疫不全の胸腺欠損ヌードマウス(nu/nu マウス)の皮下組織における異所性の固体腫瘍細胞として確立し、マウスを5つの群に分割する。群1は、賦形剤のみを受ける。群2は、MCC-DNAを受ける。群3は、DNaseIで処理したMCC-DNAを受ける。群4は、MCCを受ける。群5は、DNaseIで処理したMCCを受ける。ガン集団を、処置の前に測定し、そして処置の4週間の間、毎週測定した。群2のマウスおよび群4のマウスは、腫瘍集団の退行を示す。
【0124】
〔実施例29〕
ヒト卵巣ガンのM.phlei-DNAおよびMCC処置 ヒト卵巣ガン細胞(36M2)を、免疫不全の胸腺欠損ヌードマウス(nu/nu マウス)の腹腔における腹水として確立し、マウスを5つの群に分割する。群1は、ベヒクルのみを受ける。群2は、M.phlei-DNAを受ける。群3は、DNaseIで処理したM.phlei-DNAを受ける。群4は、MCCを受ける。群5は、DNaseIで処理したMCCを受ける。ガン集団を、処置の前に測定し、そして処置の4週間の間、毎週測定した。群2のマウスおよび群4のマウスは、腹水ガン細胞における増殖の阻害を示す。
【0125】
〔実施例30〕
イヌ伝搬性の性病ガンのMCC処置 性病ガン(VT)を伴うイヌを、4つの群に分割する。群1は、ビンクリスチンを受ける。群2は、ビンクリスチンを、メトトレキセートおよびシクロホスファミドと合わせて受ける。群3は、キャリアと複合体化され、キャリア上で提示される(ここで、キャリアは、ミコバクテリアの細胞壁(MCC)である)MCC-DNAを受ける。群4は、ビンクリスチンおよびMCCを受ける。ガン集団を、処置の前に測定し、そして処置の12週間の間、毎週測定する。群4のイヌは、VTの退行を示す。
【0126】
〔実施例31〕
水性キャリア中での懸濁 M-DNAを、第1の薬学的に受容されるキャリア中に懸濁し、そして20%出量で、5分間、超音波処理する(W385型 Sonicator、Heat Systems-Ultrasonics
Inc)。必要に応じて、超音波処理した組成物を、1フロースルーについて15000〜30000psiで、精密流動化によってホモジナイズする(M-110Y型;Microfluidics、Newton、MA)。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】第1図。M.phlei-DNAおよびMCC-DNAのオリゴヌクレオチド分布。
【図2】第2A図。M.phlei-DNA、ウシ胸腺-DNA、ならびにニシン精子DNAによる、HT-1376、HT-1197、B-16F1、THP-1、RAW 264.7、Jurkat、HL-60、HL-60 MX-1ガン細胞の増殖の阻害。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図3】第2B図。MCC-DNA、ウシ胸腺-DNA、ならびにニシン精子DNAによる、HT-1376、HT-1197、B-16F1、THP-1、RAW 264.7、Jurkat、HL-60、HL-60 MX-1ガン細胞の増殖の阻害。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図4】第3図。MCCによる、HT-1376、HT-1197、B-16F1、THP-1、RAW 264.7、Jurkat、HL-60、HL-60 MX-1ガン細胞の増殖の阻害。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図5】第4図。M.phlei-DNA、MCC-DNA、MCC、およびhIL-12による、ヒト白血病性THP-1単球の増殖の阻害。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図6】第5A図。MCCおよびLPSによる、HT-1197およびヒト膀胱ガン細胞の増殖の阻害。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図7】第5B図。MCCおよびLPSによる、HT-1376ヒト膀胱ガン細胞の増殖の阻害。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図8】第6図(写真)。PBS、ニシン精子DNA、ならびに未処理の、およびDNaseIで処理した、M.phlei-DNAおよびMCCによる、ヒト白血病性THP-1単球におけるDNAフラグメント化の誘導。示される結果は、3つの実験のうちの1つであり、各実験のぞれぞれは、類似の結果を与えた。
【図9】第7図(写真)。PBS、未処理の、およびDNaseIで処理したニシン精子DNAおよびM.phlei-DNAによる、ならびにhIL-12による、ヒト白血病性THP-1単球におけるDNAフラグメント化の誘導。示される結果は、3つの実験のうちの1つであり、各実験のぞれぞれは、類似の結果を与えた。
【図10】第8A図(写真)。MCCおよびhIL-12による、HT-1197ヒト膀胱ガン細胞におけるDNAフラグメント化の誘導。示される結果は、3つの実験のうちの1つであり、各実験のぞれぞれは、類似の結果を与えた。
【図11】第8B図(写真)。MCCおよびhIL-12による、HT-1376ヒト膀胱ガン細胞におけるDNAフラグメント化の誘導。示される結果は、3つの実験のうちの1つであり、各実験のぞれぞれは、類似の結果を与えた。
【図12】第9図。MCC、M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびニシン精子DNAによる、ヒト白血病性THP-1単球からのNuMA放出。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図13】第10図。未処理の、およびDNase処理されたM.phlei DNA、MCC-DNA、およびMCCによるヒト白血病性THP-1単球からのNuMAの放出。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図14】第11図。漸増濃度のMCCでの、HT-1376およびHT-1197ヒト膀胱ガン細胞からのNuMAの放出。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図15】第12A図。48時間にわたる、1μg/ml MCCおよび100μg/ml MCCでの、HT-1197ヒト膀胱ガン細胞からのNuMA放出。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図16】第12B図。48時間にわたる、1μg/ml MCCおよび100μg/ml MCCでの、HT-1376ヒト膀胱ガン細胞からのNuMA放出。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図17】第13図。PBS、CH-11抗体、ZB4抗体、M.phlei-DNA;CH-11抗体+M.phlei-DNA、およびZB4抗体+M.phlei-DNAとともにインキュベートされたJurkat細胞からのNuMAの放出。
【図18】第14図。PBS、M.phlei-DNA、超音波処理されたM.phlei-DNA、BstU1消化されたM.phlei-DNA、およびメチル化されたM.phlei-DNAによる、ヒト白血病性THP-1単球からのNuMAの放出。
【図19】第15図。モルモットの10系統ヘパートームにおける、MCC、およびDNaseI処理されたMCCの抗ガン活性。結果は、各実験群において、7匹の動物の平均±SDである。
【図20】第16図。MCC細胞傷害性の指標としての、HT-1197およびHT-1376ヒト膀胱ガン細胞からのLDH放出のパーセント。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図21】第17図。HT-1197およびHT-1376ヒト膀胱ガン細胞、ヒトTHP-1単球、マウスマクロファージ、マウスRAW 264.7単球、ならびにマウス脾臓細胞による、IL-6、IL-12、およびGM-CSF産生のMCC刺激。結果は、3回の独立した実験の平均±SDである。
【図22】第18図。ヒトTHP-1単球による、MCC-DNAにおける、およびMCC誘導性のIL-12産生における、CD14レセプターに対する抗体の効果。
【図23】第19図。ヒトTHP-1単球による、M.phlei-DNA、MCC-DNA、およびMCC刺激性のIL-12に対する、サイトカラシンDの効果。
【図24】第20図。マウスマクロファージによる、IL-12産生に対する、未処置の、およびDNase処置されたMCC-DNA、MCC、およびRegressin(登録商標)の効果。
【図25】第21図。マウスRAW 264.7単球によるNO産生のMCC刺激。
【図26】第22図。50mg/kg MCCの腹腔内注射による、CD-1マウスにおけるIL-6、IL-10、IL-12、およびGM-CSFの刺激。
【図27】第23図。6.6mg/kgの静脈内投与による、CD-1マウスにおけるIL-12産生の刺激。
【図28】第24図。6ヶ月の保存の間のMCCの安定性。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. Mycobacterium phlei−DNA(M−DNA)および、(b)薬学的に許容されるキャリアを含む組成物であって、前記M-DNAが抗ガン活性を有する組成物。
【請求項2】
M-DNAの抗ガン活性がガン細胞の増殖を抑制することである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
M-DNAの抗ガン活性がガン細胞中へのアポトーシスの誘導である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
M-DNAの抗ガン活性が免疫系細胞によるサイトカイン生産の刺激である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
薬学的に許容されるキャリアが液体キャリアおよび固体キャリアからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ガン細胞中へのアポトーシスの誘導がFas、p53/p21および薬剤耐性からなる群から選択される因子に依存しない、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記ガン細胞中へのアポトーシスの誘導がガン細胞中のカスパーゼ−3活性の誘導である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記免疫系細胞がマクロファージおよび単球からなる群から選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記サイトカインが、IL-6、IL-10およびIL-12からなる群から選択される請求項4記載の組成物。
【請求項10】
前記M-DNAの抗ガン活性が免疫系細胞により生産される活性酸素種の刺激である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記免疫系細胞がマクロファージである請求項10記載の組成物。
【請求項12】
動物体内のガンを治療するための医薬組成物である請求項1から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
動物体内のガンを治療する医薬組成物を製造するための、請求項1から11のいずれかに記載される組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−208140(P2008−208140A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124958(P2008−124958)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【分割の表示】特願2000−506973(P2000−506973)の分割
【原出願日】平成10年8月5日(1998.8.5)
【出願人】(503082723)バイオニケ ライフ サイエンシーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】