説明

細胞断面の高速画像化

断面画像化システムは、細胞の高分解能、高速の部分画像化を実施する。このようなシステムは、フル画像サイトメトリーから得られる情報の多くを提供するが、データ解析がフル画像サイトメトリーと比べて大幅に削減されることもあって、はるかに高速で実施されうる。システムは、光源と、光源からの光を走査位置における小さいスポットに収束させるレンズとを含む。輸送機構が走査位置における細胞とスポットとの間に相対運動を提供する。光源による照射の結果として、センサーが細胞から発生する光の強度を示す信号を発生する。システムは、光強度信号を繰り返し読み取って、細胞全域において実質的に直線状の経路に沿った光強度の特性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
サイトメトリーは、生体細胞の計数および特性評価に関する技術専門分野である。図1は、フローサイトメトリーとして知られる一技術の簡易図である。フローサイトメトリーの基本構成では、細胞101が流体中に分散されて細い透明チューブ102内に一列に取り込まれる。取り込みは、流体力学的収束を含む複数の方法のいずれかによって実現されうる。光源103が測定位置104を通過する各細胞101を照射する。光源103は、たとえば、レーザーであってもよい。光源103からの光は、測定対象の細胞101によって散乱される。一部の光105は、一般に移動する方向と同じ方向に散乱されて細胞101に達する。光105は、「前方散乱」と呼ばれることもあり、前方センサー106によって集められてもよい。一部の光は、他の方向に散乱されることもある。この光は「側方散乱」と呼ばれることもあり、側方散乱光107の一部は1つまたは複数の他のセンサー108によって集められてもよい。センサー106および108からの出力信号はコンピュータ109に送られ、コンピュータ109はこの信号を保存して解析することができる。散乱光の量および分布を解析することによって、各細胞に関する情報、たとえば、細胞のサイズ、および細胞の内部構造に関する一部の限られた情報を識別することが可能である。
【0002】
フローサイトメトリーでは、散乱光を直接測定してもよく、蛍光を利用してもよい。蛍光サイトメトリーでは、細胞は1つまたは複数の蛍光色素分子で標識されて、蛍光色素分子は光源103からの光によって励起されて蛍光による光を発生する。放射光の性質によって、細胞に関する新たな情報が明らかにされる。
【0003】
図1に示す技術は、細胞構造に関する情報を推論するために散乱光の測定に全面的に依存するものであるが、個々の細胞の画像を生成するものではない。「画像サイトメトリー」と呼ばれる別の技術では、個々の細胞の画像がカメラまたは走査顕微鏡によって記録されてもよい。画像サイトメトリーでは、細胞の構造に関する詳細情報が提供されるが、散乱光のみを使用する技術よりもはるかの多くのデータが得られる。その結果として、画像サイトメトリーは、比較的長い時間がかかり、大量のデータの記憶と解析とを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断面画像化システムは、細胞の高分解能、高速の部分画像化を実施する。このようなシステムは、フル画像サイトメトリーから得られる情報の多くを提供するが、データ解析がフル画像サイトメトリーと比べて大幅に削減されることもあって、はるかに高速で実施されうる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】フローサイトメトリーとして知られる技術の簡易図を示す。
【図2】一実施形態に基づく細胞断面の高速画像化システムの簡易概念図を示す。
【図3】1個の細胞から取り込まれる測定値を表わすデータセットの例を示す。
【図4】一実施形態に従って同時多色断面サイトメトリーを実施するシステムを示す。
【図5】半共焦点像を示す。
【図6】調査対象の細胞の回転運動と検知システムの並進運動を提供するシステムの例を示す。
【図7】別の実施形態に従って同時マルチライン断面画像化を実施するシステムを示す。
【図8】別の実施形態に従ってマルチライン断面画像化を実施するシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
サイトメトリーに関する一部の用途では、純粋に散乱光に基づく技術から得られる比較的多くの情報を必要とするが、フル画像サイトメトリーから得られる情報のすべてを必要としない場合がある。たとえば、研究者は、具体的な生物活性が細胞表面や細胞核で発生するかそれとも細胞質で発生するかを調査したい場合がある。一定の分子は蛍光タグで標識されて調査対象の細胞の中に組み込まれてもよい。米国カリフォルニア州のカールズバッドのライフ・テクノロジーズ・コーポレイション(Life Technologies Corporation)が販売する蛍光色素分子のALEXA FLUOR(商標)シリーズなど、蛍光色素分子とも呼ばれる様々な標識化合物が入手可能である。
【0007】
図2は、一実施形態に基づく断面細胞の高速画像化システム200の簡易概念図を示す。図2のシステムはフロー・サイトメトリー・システムであるが、後述の実施形態を含む他の種類のサイトメトリーに本発明の実施形態を利用してもよいことを当業者は認識するであろう。
【0008】
システム200では、細胞101は、流体に取り込まれてチューブ102の中を一列になって進む。システムは、様々な種類の細胞の特性を評価するために使用されてもよいが、典型的な用途では、細胞101は、たとえば、直径が約10〜20μmであってもよく、たとえば、毎秒5〜50mmの速度でチューブ102の中を進んでもよい。光源201は特定の波長域の光を反射する反射鏡202および第1のレンズ203を通して細胞を照射する。光源201は、コヒーレント光を放射するレーザーであってもよく、あるいは別の種類の光源、たとえば、発光ダイオード(LED)、アーク灯、白熱ランプ、または別の種類の光源であってもよい。光源201はコヒーレント光または非コヒーレント光のいずれを放射してもよく、また光を連続的に発生してパルス化してもよい。特定の波長域の光を反射する反射鏡202は、たとえば、反射鏡202に入射する光の大部分を反射すると同時に一部分を透過するように構成されてもよい。不完全反射率は、全波長が一般的に等しく影響を受けるという点において中性密度であってもよい。あるいは、反射鏡202は、光源201の波長における実質的にすべての光を通過させ、かつ他の波長の実質的にすべての光を反射するように構成されたダイクロイックミラーであってもよい。別の実施形態では、反射鏡202は光源201からの光を通過させることができる孔を有しているだけでよい。
【0009】
光源201はビーム204を発生し、その一部は特定の波長域の光を反射する反射鏡202を通過して第1レンズ203によって細胞101の小さい領域に収束される。(光の一部は、反射鏡202から反射される可能性があるが、図2には示されていない。)細胞101の照射領域の直径は、たとえば、直径が数百μmまたは数千μmであるビーム204の収束されない直径と比べて数μmにすぎない。
【0010】
光源201からの光の一部は、細胞101から反射されてもよい。さらに、細胞101内の1つまたは複数の蛍光色素分子マーカーはビーム204によって励起されてもよく、蛍光によって光を発生してもよい。典型的に、蛍光によって放射される光は、レーザー励起光よりも波長が長くなる。細胞101から発生する光205は、反射、蛍光のいずれも、図2に破線で示される。発生された光205の一部は、第1のレンズ203によって集められて少なくともある程度は平行にされる。第1のレンズ203を通過した後、発生された光は特定の波長域の光を反射する反射鏡202に達し、その光のほとんどが反射鏡202で第2のレンズ206の方向に反射される。(発生された光の一部は反射鏡202をさらに通過する可能性があるが、これは図2に示されていない)。任意のフィルター209は、たとえば、反射光を選択的に除去して、細胞101からの蛍光により発生する光波長が通過するように光205をさらに調整する。第2のレンズ206は、発生された光の方向を光センサー207の方向へ変える。レンズ203および206は、無限遠補正光学系を形成して、レンズ間の光路に反射鏡202およびフィルター209などの他の構成要素を挿入できるようにする。光センサー207は、受け入れた光をセンサー207に入る光の強度を表わす電気信号210に変換する。この信号はディジタル化されて解析を記録する処理ユニット208に送られてもよい。一部の用途では、センサー207は、たとえば、20〜200kHzの速度でサンプリングされて細胞当たり多数のサンプルが提供されてもよい。処理ユニット208は、コンピュータシステムであってもよく、またスタンドアロンであってもよく、他のシステム構成要素を含む試験ステーションに組み入れられてもよい。
【0011】
システムの分解能は、サンプルレート、走査位置を通過する細胞の輸送速度、および細胞101の光スポットサイズに依存する。X方向の公称分解能はν・dtに等しく、ここで、νはサンプル配送速度であり、dtはサンプリング周波数である。光スポットサイズが公称分解能に対して大きい場合は、分解能がさらに制限される。好ましくは、νは、個々の流動実験の前に予め定められるか、細胞がシステムを通過する過程で測定される既知のパラメータである。理想的には、走査対象の細胞はその走査線を通過中に回転およびジッターがあってはならない。
【0012】
光センサー207は、たとえば、フォトダイオード、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、シリコンフォトダイオード、またはその他の適切な種類のセンサーであってよい。信号210が繰り返しサンプリングされて細胞101の運動と関連付けられる場合、得られるデータは単一の実質的に直線状経路に沿って細胞101の表面または内部の位置から発生される光の高分解能図を提供する。図3は、経路301に沿って1つの細胞から得られる測定値を表わすデータセットの例を、従来の散乱ベースサイトメトリーを用いて得られる測定値と比較して示す。図から明らかなように、本発明の実施形態によって得られる測定値は、図3において「断面画像」で表示され、散乱のみに基づくデータから得られる図よりも細胞101内の活性についてのはるかに詳細な図を提供する。
【0013】
一部の実験では、図3に示すデータによって、研究者が関心を集める疑問に十分に答えることができる。本発明の実施形態による断面画像化は、たとえば、毎秒数千の細胞速度で極めて高速に実施される。他の実験では、具体的な関心の一部はフル画像サイトメトリーを用いてさらに解析されるように断面画像データは細胞のソーティングに有用である。図3のトレースは、フル画像走査からの1列の画素であると考えられてもよい。このような1列の画像は、細胞の2次元フル画像から得られる情報の多くを提供して、格段に速く取得されて処理される。
【0014】
他の実施形態では、システムは、反射光または蛍光、あるいはこれら両方の種々の波長域を検知することによって種々の波長を有する複数の励起光源を用いて多色サイトメトリーを実施するように構成されてもよい。図4は、一実施形態に従って同時多色断面サイトメトリーを実施するシステム400を示す。
【0015】
システム400では、3つの異なる光源401a、401b、401cは、各々が他とは異なる狭帯域の光波長にあるビーム402a、402b、402cを発生する。たとえば、光源401a、401b、および401cは、異なるレーザーであってもよい。ビーム402a、402b、および402cは、それぞれ反射鏡403a、403b、および403cから反射する。一実施形態では、反射鏡403cは簡単な反射鏡であるが、反射鏡403aおよび403bはそれぞれの光源401aおよび401bによって発生される光波長の実質的にすべてを反射し、一方で他の光源によって発生される波長の実質的にすべてを通過させるように構成されたダイクロイックミラーである。それゆえ、得られる合成レーザービーム404は、3つの光源401a、401b、および401cによって発生される3つの狭帯域波長を含む。合成ビーム404は、反射鏡202を実質的に通過し、レンズ203によって細胞101の表面に収束される。それゆえ、システムは、複数の波長域を含む光源を有する。細胞101から発生される光205は、細胞101からの反射によるものであれ、蛍光の結果としてであれ、レンズ203によって集められて少なくとも部分的に平行にされる。発生された光205は、ほとんどが反射鏡202から反射鏡405a、405b、405cの方向に向かって反射する。1つまたは複数のオプションのフィルター209は、図示のような光路または別の位置に設置されてよい。
【0016】
反射鏡405aおよび405bは、発生された光205の一定の波長成分を優先的に反射するように構成されたダイクロイックミラーであることが好ましい。たとえば、反射鏡405は、光源401aによって励起された第1の蛍光色素分子の蛍光によって発生される波長の光を反射してもよいが、反射鏡405bは光源401bによって励起された第2の蛍光色素分子の蛍光によって発生された波長の光を反射してもよい。反射鏡405a、405b、および405cによって反射された光は、レンズ406a、406b、および406cを通過して、それぞれ、センサー407a、407b、および407cに達する。それゆえ、センサー407a、407b、および407cは、種々の波長域の光を受け取る。本開示において、様々である波長域は、一部の波長が両方の波長域に含まれるように重複していてもよい。センサー407a、407b、407cの出力は、保存、解析、および表示のために、ディジタル化されて処理ユニット208に送られることが好ましい。本開示において、個々のセンサーおよびその関連構成要素は「チャネル」と呼ばれる。
【0017】
3つの光源401a、401b、401cおよび3つのセンサー407a、407b、407cを有するシステム例400が示されているが、これら以外の他の数の光源、センサー、またはこれら両方が使用されてもよいことを当業者は認識するであろう。システム400などのシステムは、様々な形で構成されてよい。たとえば、反射鏡405a、405b、および405cは、細胞101から反射される光が測定されるように、光源401a、401b、401cの波長域にある光を反射するように構成されてもよい。あるいは、反射鏡405a、405b、405cの1つまたは複数はそれぞれの光源の波長域の光を反射するように構成されてもよいが、蛍光断面画像化が実施されるように、1つまたは複数の他の反射鏡はそれぞれの光源によって励起される蛍光色素分子によって放射される波長の光を選択的に反射するように構成されてもよい。あるいは、3つすべての反射鏡405a、405b、405cは蛍光によって細胞101から発生された光を選択的に反射するように構成されてもよい。上記のいかなる組合せも可能である。たとえば、反射光を検知する1つのチャネルは、個々の細胞の幾何学的制限を測定するために使用されてもよく、蛍光によって発生される光を読み出すチャネルからのデータは特定の生物活性が発生する場所を示すために形状データと関連付けられてもよい。別の例では、センサーよりも少ない光源が使用されるように、単一光源が、複数の蛍光色素分子を励起させるように使用されてもよい。光源よりも少ないセンサーを含む他の実施形態も想定される可能性がある。
【0018】
チャネルのいずれかまたはすべては、任意として、共焦点または半共焦点であるように構成されてもよい。共焦点光学系では、センサーの近くに設置されたアパーチャーを使用してシステムの焦点面以外の位置から発生する光を選択的に除去する。図4にはアパーチャー408a、408b、および408cが示され、図5はこれらの機能を簡易光学系500に関連して示す。システム500では、実線で示す第1の光線束501が、細胞101における焦点面502から発生する。この光線は、レンズ504によって集められてアパーチャー506を通過した後、センサー505で収束される。破線で示す第2の光線束503は、焦点面502から離れ、かつレンズ504からさらに遠い点507から発生する。光線束503は、センサー505の前方にある点508で収束し、したがって、光線がアパーチャー506に達する時までに既に発散されて、光線束503の大部分がアパーチャー506から外れてセンサー505に達しない。このように、システムは、システムの焦点面以外から発生する光線を選択的に除去する。この種のシステムは、アパーチャー506などのアパーチャーのないシステムよりも高いコントラストを有する画像を生成する。アパーチャー506は、様々な方法のいずれかでサイズまたは形状が定められてよい。アパーチャーを大きくすると、除去される光線が少なくなり、システムは「半共焦点」であると考えられてもよい。アパーチャーは円形である必要がない。たとえば、これは楕円形であってもよく、したがって、その性能は2つの直交軸の間で異なる。
【0019】
これまでに示した実施形態では、固定された走査位置を細胞が通過することによって評価対象の細胞と検知システムの間に相対運動が提供される。代替的な実施形態では、検知システムを移動させ細胞を固定したままにすることによって相対運動を提供してもよく、あるいは検知システムと細胞の間に相対運動が生じている限り検知システムと細胞の両方が移動していてもよい。
【0020】
別の実施形態では、相対運動は回転走査システムによって提供される。図6は、調査対象である細胞の回転運動と、検知システムの並進運動とを提供するシステム例600を示す。システム600では、細胞101などの細胞は、回転盤または基板601に固着される。回転盤601は、たとえば、直径が約100〜150mmのポリカーボネートまたはアクリルなどのポリマー製の円盤であってもよい。また、他のサイズや材料が採用されてもよい。回転盤601は透明であってもよい。
【0021】
回転盤601は、細胞が図2に示す光学系200などの光学系の下で通過されるように回転されるが、いかなる実施形態による光学系も採用されうる。また、光学系200は、通常、半径方向の経路602に沿って並進可能であり、したがって、回転盤601の表面の大部分は光学系200による走査のために利用されうる。この実施形態では、個々の細胞全域の走査経路は円弧となる。しかしながら、弧の半径は個々の細胞の寸法に比べて非常に大きく、単一細胞の経路は基本的に直線状であると考えられてもよい。システム600などのシステムを採用するとき、コンパクトディスク(CD)やディジタル多用途ディスク(DVD)がオーディオまたはビデオシステムによって読み出されるのとほぼ同様に、多数の細胞が光学系の併進と回転盤の回転との協調によって回転盤を系統的に走査して特性評価されてもよい。回転盤601は、光学系200によるように上から、あるいは代替光学系200aによって下から「読み出し」が行なわれてよい。
【0022】
一部の実施形態では、回転盤601が走査されるかまたはその他の方法で両側から協調的に利用されてもよい。たとえば、光学系200および200aは、いずれも回転盤601に固着された細胞を走査してもよい。2つの光学系は、種々の励起波長、測定対象である細胞から発生される光の種々のろ過(filtration)、またはこれらの両方を用いて走査してもよい。
【0023】
別の実施形態では、回転盤601の上から行なわれる個々の細胞の測定から、細胞がさらなる検討を必要とする活性または特性を示すことが判明する場合、回転盤601の下から供給される突発的な光によって細胞は回転盤601から解放される。図6の詳細図に示すように、回転盤601の上面は、特定波長の光を受けると回転盤に固着された細胞を解放する波長選択可溶面602を含んでいてもよい。解放された細胞は、回転盤601の表面から洗い流され、たとえば、フル画像サイトメトリーまたは顕微鏡検査によるさらに詳細な解析のために集められてもよい。
【0024】
図7は、別の実施形態に従って同時マルチライン断面画像化を実施するシステムを示す。一部の用途では、各細胞全域で複数のトレースを走査することが有益である。たとえば、1つの断面画像が各細胞のほぼ中心で収集され、もう1つの画像が細胞の外縁付近で収集されてもよい。2つの画像が同じ分解能で収集されると、各細胞から集められる情報量が名目上2倍になるが、それでもフル画像サイトメトリーよりもはるかに少ないデータしか得られない。他の数、たとえば、3つ、4つ、またはどんな数のトレースが集められてもよいが、5つ以下が好ましい。同様に、トレースはすべてが同じ分解能である必要はない。
【0025】
図7の例では、光源201は、平行ビーム204を発生し、これは特定の波長域の光を反射する反射鏡202を実質的に通過してレンズ701に達する。前述の実施形態とは対照的に、レンズ701は、多角形の「蝿の目」レンズ、回折レンズ、ホログラフィックレンズ、またはビーム204を分割する別の種類の光学系であり、ビーム204の一部分を細胞101の2つの異なるスポットに収束させる。2つのスポットは互いに離れており、したがって、これらは細胞101が走査範囲だけ輸送されるときに細胞101全域で離れた平行経路702、703をたどる。スポットの変位は、細胞101の移動方向から角度θだけずれた方向にある。好ましくは、θは0°よりも大きく、約90°であってもよい。(θ=0であれば、単線の断面画像と比較されるような細胞101に関する新たな情報は集められないが、細胞101は二度サンプリングされてもよく、これによって、ノイズが低減された断面画像の構成が可能になる。)
光205は、反射によるものであれ、蛍光によるものであれ、あるいはこれら両方によるものであれ、細胞101への照射スポットから発生し、レンズ701によって集められて少なくとも平行にされる。光は、反射鏡202から実質的に反射し、フィルター209および反射鏡704および705などの反射鏡に達してもよく、最終的にレンズ706および707に達する。(レンズ701とレンズ705および707との間の光路205を図7に簡単に示す。)反射鏡704および705は、たとえば、レンズ706および707に向けられる光205から種々の波長域を選択的に分離するダイクロイックミラーであってもよい。レンズ706および707は、反射鏡、フィルター、またはその他の構成要素をこれらレンズの間に挿入しうる無限遠補正光学系を形成するためにレンズ701と協働することが好ましい。レンズ701と同様に、レンズ706および707は、多角形の「蝿の目」レンズ、回折レンズ、ホログラフィックレンズ、またはレンズ706および707に達する光の一部分を変位させて画像を2組のセンサー708aおよび708bと709aおよび709bに向ける他の光学系であってもよい。それぞれの画像は、細胞101に照射される2つのスポットに対応する。センサー708a、708b、709a、および709bによって生成される信号は、保存、解析、表示などのために、処理ユニット208に送られる。
【0026】
それゆえ、図7のシステムは、細胞101の2つの分離経路702、703に沿って断面画像を走査する。各経路では、画像が2つの波長域で走査される。システム700は、種々の波長域の光を放射する複数のレーザーなど複数の照明源を使用するように適合されうることも、波長域が少ない画像対や多い画像対を走査するように適合されうることも当業者は認識するであろう。
【0027】
図8は、別の実施形態に従ってマルチライン断面画像化を実施するシステム800を示す。この実施形態では、照明光と測定される細胞から発生する光とを分割するための光学手段を使用せずに2つの断面画像システムが横変位を有する流路に沿って設置され、したがって、細胞全域の1つの経路は第1の光学系によって最初に画像化され、細胞全域の別の経路が別の光学系によってその後に画像化される。システム800では、保存、解析、表示などのために処理ユニット208に信号を提供する図2のものと同様の2つの光学系が示される。2つよりも多くのシステムが採用されうる。図2のシステムでは唯一の励振源201と1つのセンサー207が利用されるが、システム800はより多くの励振源、センサー、またはこれら両方を使用するように容易に適合されうることを当業者は認識するであろう。たとえば、システム800は、図4の2つまたはそれ以上の光学系を使用するように適合されうる。
【0028】
システム800における第1の光学系は、細胞101を光源201で照射し、最終的にセンサー207によって検知される光を生じる。システムは、経路801に沿って細胞101を走査するように配列され、経路801はこの例では細胞の中心に近い。第2の光学系(ダッシュ記号付き参照番号で示される)は、第2の走査位置において通過する細胞に光源201’を照射し、センサー207’によって検知される光を発生する。第2の光学系は、経路802に沿って細胞を走査するように配列され、経路802はこの例では通過する各セルの端に近い。個々の細胞101は両方の光学系によって走査されるが、同時には走査されない。処理ユニット208は、第1の断面画像の結果を記憶し、これらを第2の画像の結果と関連付けて、各細胞の1組の断面画像を生成してもよい。
【0029】
本発明の実施形態は直線状のチューブに閉じ込められた細胞あるいは回転基板に固着された細胞を走査するものとして説明してきたが、本発明の実施形態は電気泳動、圧力駆動流、光ピンセット、電動並進ステージなどを含む、広範な細胞供給技術のいずれかを用いたシステムで利用されてもよいことを当業者は認識するであろう。細胞は、油乳剤中、エレクトロウェッティング駆動液滴中、あるいは磁気ビーズ標識の助けを借りた磁気輸送によるペイロードとして搬送されてもよい。特許請求の範囲は利用される細胞供給方法によって制限されないものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトメトリーを実施するシステムであって、
光源と、
前記光源からの光を走査位置におけるスポットに収束させるレンズと、
前記走査位置における細胞と前記スポットとの間に相対運動を提供する輸送機構と、
前記光源による照射の結果として前記細胞から発生する光の強度を示すセンサーと、
前記光の強度の指示を繰り返し読み取って前記細胞全域において実質的に直線状の経路に沿った前記光の強度の特性を評価する処理ユニットと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記光源は少なくとも1つのレーザーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光源は、コヒーレント光源、非コヒーレント光源、連続光源、およびパルス光源からなる群から選択される少なくとも1つの光源を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサーは、前記光源からの光の反射によって前記細胞から発生する光の強度を少なくとも部分的に示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記センサーは、前記光源によって励起される蛍光の結果として前記細胞から発生する光の強度を少なくとも部分的に示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記細胞は、流体中に分散され、
輸送機構は、前記流体の流れによって前記細胞を前記走査位置を通り越えて輸送する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記細胞が固着される回転基板をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記レンズは、前記センサーの方向に向かって前記細胞から発生する光を集める、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムが半共焦点画像化を実施するように前記センサーに隣接したアパーチャーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記光源は少なくとも第1および第2の波長域の光を発生する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記光センサーは第1の光センサーであり、前記システムは第2のセンサーをさらに備え、前記第1および第2のセンサーは種々の波長域の光を受け取る、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
サイトメトリーを実施するシステムであって、
光源と、
前記光源からの光を走査位置における少なくとも2つのスポットに収束させる光学系であって、前記スポットは互いに変位されている、前記光学系と、
前記走査位置における細胞と前記少なくとも2つのスポットとの間に相対運動を提供する輸送機構と、
少なくとも2つ1組のセンサーであって、各センサーは前記スポットのそれぞれ1つにおいて前記光源による照射の結果として前記細胞から発生する光の強度を示す、前記センサーと、
前記少なくとも2つのセンサーからの前記光の強度の指示を繰り返し読み取って、前記少なくとも2つのスポットによって辿られる前記細胞全域において少なくとも2つの変位された実質的に直線状の経路に沿った前記光の強度の特性を評価する処理ユニットと、
を備える、システム。
【請求項13】
前記光学系は多角形レンズ、回折レンズ、およびホログラフィックレンズからなる群から選択される少なくとも1つの部材を備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも2つ1組のセンサーは第1の組であり、前記システムは第2の組の少なくとも2つのセンサーをさらに備え、各々は前記スポットのそれぞれ1つにおいて前記光源による照射の結果として前記細胞から発生する光の強度を示し、2組のセンサーは種々の波長域の光を受け取る、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記光源は少なくとも1つのレーザーを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記光源はコヒーレント光源、非コヒーレント光源、連続光源、およびパルス光源からなる群から選択される少なくとも1つの光源を備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも1つのセンサーは、前記光源からの光の反射によって前記細胞から発生する光の強度を少なくとも部分的に示す、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
少なくとも1つのセンサーは、前記光源によって励起された蛍光の結果として前記細胞から発生する光の強度を少なくとも部分的に示す、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
サイトメトリーを実施するシステムであって、
少なくとも2つの光源と、
少なくとも2つの光学系であって、各光学系は少なくとも2つのそれぞれの走査位置の1つにおけるそれぞれのスポットに前記光源の1つからの光を収束させる、前記光学系と、
細胞が前記少なくとも2つの走査位置を順番に通過するように、前記細胞と前記走査位置の間に相対運動を提供する輸送機構と、
少なくとも2つのセンサーであって、各センサーは前記細胞がそれぞれの走査位置を通過するとき前記光源による照射の結果として細胞から発生する光の強度を示す、前記センサーと、
とを備え、
前記光学系は、各スポットが前記細胞全域において異なる実質的に直線状の経路を辿るように配列され、前記システムは前記少なくとも2つのセンサーから前記光の強度の指示を繰り返し読み取って、前記それぞれの実質的に直線状の経路に沿って前記光の強度の特性を評価する処理ユニットをさらに備える、システム。
【請求項20】
前記2つの光源の少なくとも1つは少なくとも1つのレーザーを備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記2つの光源の少なくとも1つは、コヒーレント光源、非コヒーレント光源、連続光源、およびパルス光源からなる群から選択される少なくとも1つの光源を備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記センサーの少なくとも1つは、前記光源からの光の反射によって前記細胞から発生する光の強度を少なくとも部分的に示す、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記センサーの少なくとも1つは、前記光源によって励起される蛍光の結果として前記細胞から発生する光の強度を少なくとも部分的に示す、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
サイトメトリーを実施する方法であって、
光学系を用いて、走査位置におけるスポットに光源からの光を収束させること、
輸送機構によって、前記走査位置における細胞と前記スポットとの間に相対運動を提供すること、
前記光源による照射の結果として前記細胞から発生する光の強度を検出すること、
コンピュータ化された処理ユニットを用いて、前記光の強度の指示を繰り返し読み取って前記細胞全域において実質的に直線状の経路に沿って前記光の強度の特性を評価することを備える方法。
【請求項25】
前記光源からの光を収束させることは、少なくとも1つのレーザーによって発生される光を収束させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記光源からの光を収束させることは、コヒーレント光源、非コヒーレント光源、連続光源、およびパルス光源からなる群から選択される少なくとも1つの光源によって発生される光を収束させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞から発生する光の強度を検出することは、前記細胞から反射される光の強度を検知することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞から発生する光の強度を検出することは、前記光源によって励起される蛍光の結果として前記細胞から発生する光の強度を検知することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞を流体中に分散させること、
前記流体の流れによって前記走査位置を通り越えて前記細胞を輸送することをさらに備える、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞から発生する光の強度を検出することは、少なくとも2つの波長域の光の強度を検出することを備える、請求項24に記載の方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−502590(P2013−502590A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525739(P2012−525739)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046215
【国際公開番号】WO2011/022686
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(595154074)バイオ−ラド ラボラトリーズ インコーポレイテッド (12)