説明

細胞電気生理センサとその製造方法

【課題】生産効率の高い細胞電気生理センサを実現することを目的とする。
【解決手段】そしてこの目的を達成するため本発明は、貫通孔11を有する実装基板12と、貫通孔11の下端部に保持された、導通孔19を有するセンサチップ9と、実装基板12の下面上に、接着層を介して貼り合わされたテープ20とを備え、このテープ20には、貫通孔11と対向する部分において、これらの貫通孔11より内側に位置する孔が形成されているものとした。これにより本発明は、接着層の露出面積を低減でき、細胞毒性が小さく測定精度の高い細胞電気生理センサを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬品スクリーニング等に用いられる細胞電気生理センサとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように従来の細胞電気生理センサは、複数の貫通孔1を有する実装基板2と、これらの貫通孔1の下端部にそれぞれ保持されたセンサチップ3とを備えている。そして図8に示すように、センサチップ3と実装基板2との間に接着材4を塗布し、センサチップ3を貫通孔1内に固定している。またこのセンサチップ3の上下には、図7に示すようにそれぞれ電解槽5A、5Bが配置され、これらの電解槽5A、5Bには電極6、7が配置されている。
【0003】
この細胞電気生理センサは、センサチップ3の導通孔8の開口部に細胞を捕捉し、電解槽5A、5B間の電位差を計測することによって、細胞が活動する際の細胞内外における電位変化、あるいは細胞の活動によって発生する物理化学的変化を測定することができる。
【0004】
なお、上記細胞電気生理センサと類似する例を開示するものとして下記の特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特開2008−39624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の細胞電気生理センサは、測定精度が低下することがあった。
【0006】
その理由は、接着材4や測定する細胞の種類によっては、細胞に対する接着材4の細胞毒性が高くなるからである。
【0007】
すなわち従来は、接着材4でセンサチップ3を貫通孔1内に固定していたため、接着材4が基板2の表面に多く露出した状態であった。したがって、接着材4が電解槽5A、あるいは5B内の溶液に溶け出し、細胞の活動に影響を及ぼすことがあった。そしてその結果、細胞電気生理センサの測定精度を低下させていた。
【0008】
そこで本発明は、測定精度の高い細胞電気生理センサを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そしてこの目的を達成するため本発明は、実装基板の下面に、接着層を介して貼り合わされたテープを備え、このテープは、実装基板の貫通孔と対向するとともに、この貫通孔より内側に位置する孔を有するものとした。
【発明の効果】
【0010】
これにより本発明は、細胞電気生理センサの測定精度を高めることができる。
【0011】
その理由は、テープにより接着層の露出面積を低減できるからである。
【0012】
したがって、接着層の電解槽への溶出を低減でき、細胞毒性の低い細胞電気生理センサを実現できる。
【0013】
そしてその結果、細胞電気生理センサの測定精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1の断面図に示すように本発明の一実施の形態における細胞電気生理センサでは、下端部にそれぞれセンサチップ9が挿入された複数のガラス管10と、これらのガラス管10が各貫通孔11内に挿入された実装基板12とを備えている。すなわち本実施の形態では、センサチップ9は、貫通孔11の下端部に保持されている。なお、貫通孔11は実装基板12の上面から下面までを貫いている。
【0015】
またセンサチップ9の上方、下方にはそれぞれ電解槽13、14が配置され、これらの電解槽13、14にはそれぞれ電極15、16が配置されている。本実施の形態では、ガラス管10および貫通孔11内も、電解槽13として用いた。
【0016】
なお、図1の電極15、16は一例であり、この形状、位置に制限されない。すなわち電極15は電解槽13に注入される電解液と導通していればよく、電極16は電解槽14に注入される電解液と導通できればよく、たとえばこれらの電極14、15は、センサチップ9表面に直接蒸着等により形成してもよい。
【0017】
そして図2に示すように、センサチップ9は、直径1mm程度の細胞保持板17と、この細胞保持板17の外周上に配置された枠体18とを有している。また細胞保持板17には、その上下面を貫通する導通孔19が形成されている。細胞保持板17は実装基板12の上面側と下面側とを仕切る仕切り板として機能し、導通孔19は実装基板12の上面側と下面側とを連通し、導通させる連通路として機能する。また枠体18を設けることで、細胞保持板17が薄い場合も、センサチップ9全体の機械的強度を高く保つことができ、実装時のセンサチップの損傷を低減する。
【0018】
なお、本実施の形態では、細胞保持板17が底面となるように、枠体18よりも下側に配置したが、このセンサチップ9の向きは上下逆でもよい。
【0019】
また実装基板12の下面には、接着テープ20が貼り合わされており、この接着テープ20の、複数の貫通孔11とそれぞれ対向する部分には、テープ孔21が形成されている。
【0020】
これらのテープ孔21は貫通孔11の内形よりも小さく、貫通孔11よりも内側に位置するように貼り合わされている。これにより接着テープ20でガラス管10を貫通孔11内に保持し、固定することができる。
【0021】
またこのテープ孔21は、細胞保持板17の外形より大きく、細胞保持板17の下面全体は露出させている。
【0022】
また本実施の形態では、ガラス管10とセンサチップ9とはガラス溶着している。このガラス溶着は密着性が高く、接合強度も高いため、高精度な細胞電気生理センサを実現できる。またセンサチップ9の外周に疎水性である接着材を使わなくてもよい為、気泡の発生を低減できる。
【0023】
そしてガラス管10の外側面は、センサチップ9が挿入されている下端側が丸みを帯びるように湾曲し、この湾曲したガラス管10の外側面には、接着テープ20が接着されている。そして、この湾曲しているガラス管10の外側面と貫通孔11内壁の隙間22には、接着テープ20が入り込み、密着して接合している。
【0024】
また本実施の形態におけるセンサチップ9は、二酸化シリコン層の上下をシリコン層で挟んだいわゆるSOI基板を用いて形成した。
【0025】
そして本実施の形態では、このSOI基板をドライエッチング等で加工することにより、膜厚約15μmのシリコン層と、膜厚約2.0μmの二酸化シリコン層とで細胞保持板17を構成し、膜厚約400μmのシリコン層で枠体18を形成したものである。
【0026】
なお、二酸化シリコン層は絶縁性が高いため、この二酸化シリコン層を、細胞23を密着保持させる細胞保持面24として用いることが好ましい。これによりセンサチップ9を介するリーク電流を低減できる。
【0027】
さらに二酸化シリコン層は親水性が高いため、この二酸化シリコン層を細胞保持面24とすることにより、細胞23と導通孔19開口部との密着性が向上し、細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。
【0028】
そして本実施の形態では、導通孔19の深さは約7.0μmであり、この導通孔19はドライエッチングなどによって加工できる。この導通孔19は直径10μmから20μmの細胞23を捕捉するには、直径が1μm〜5μm、深さが1μm〜10μmが好ましい。したがって細胞保持板17の厚みが大きい場合は、その下面に凹部(図示せず)を形成し、膜厚を薄くしてから導通孔19を加工すればよい。
【0029】
そしてガラス管10の材料としては親水性の高いホウケイ酸ガラス(コーニング;#7052、#7056)、アルミノケイ酸塩ガラスまたはホウケイ酸鉛ガラス(コーニング;#8161)などのガラスが挙げられ、本実施の形態では、内径が1400μm、外径が2000μm、厚みが375μmのホウケイ酸ガラスからなるガラス管10を用いた。
【0030】
このように本実施の形態では、親水性の高いガラス管10でセンサチップ9外周を囲っている為、センサチップ9近傍において気泡の発生を抑制することができ、細胞電気生理センサの測定精度が向上する。
【0031】
さらに実装基板12は樹脂で構成しておくと成形しやすく、また組み立ても容易である。材料としてより好ましくは熱可塑性樹脂である。これにより、これらの材料は射出成型などの手段を用いることによって生産性良く、高均質な成形体を得ることができる。さらに好ましくは、これらの熱可塑性樹脂はポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、オレフィンポリマー、ポリメタクリル酸メチルアセテート(PMMA)のいずれか、またはこれらの組み合わせである。さらに好ましくは、これらの熱可塑性樹脂として、環状オレフィンポリマー、線状オレフィンポリマー、またはこれらが重合した環状オレフィンコポリマー、またはポリエチレン(PE)とすることが作業性、製造コストおよび材料の入手性の観点から好ましい。
【0032】
特に、環状オレフィンコポリマーは透明性、アルカリ・酸などの無機系薬剤に対する耐性が強く、本発明の製造方法もしくは使用環境に適している。
【0033】
なお、本実施の形態のように、センサチップ9を実装基板12に実装する方法は、実装基板12全体をシリコン基板で形成し、実装基板12に導通孔19を直接形成した場合と比較してコストも下がり、歩留まりも向上するとともに、一部に不良の導通孔19が存在した場合においてリペア性を有する。
【0034】
また本実施の形態では、テープとして予めテープの基材と接着層とが一体となった接着テープ20(スリーエム社製 ポリオレフィンマイクロシーリングテープ9793)を用いた。この接着テープ20の基材はポリオレフィン系樹脂からなり、接着層として、接合面に粘着材が塗布されており、実装基板12の材料であるポリカーボネート系樹脂と良好な密着性を示した。
【0035】
なお、テープは接着層と一体でなくてもよく、その場合は、テープの接合面に接着材を塗布し、接着層を形成してから実装基板12に貼り合わせるか、あるいは実装基板12の下面に接着材を塗布し、接着層を形成してからこの接着層の表面を覆うようにテープを貼り合わせればよい。また接着層は、硬化させない粘着性の材料で形成してもよく、硬化性の材料で形成してもよい。いずれの場合も、本実施の形態では、テープは電解液や薬液等と接触するため、水溶液、有機溶媒に溶けにくく、粘着材成分の溶出が少ないものが好ましい。また組み立て後の滅菌処理における変質を抑えるため、放射線やエチレンオキサイドガスに対する耐性の高い素材が好ましい。
【0036】
また接着テープ20の表面(電解槽14へ露出する面)は、表面積を増加させるために凹凸を設けるか、あるいはOを用いたアッシング、あるいはUV処理などによる親水性処理を施すことにより、親水性を高めることが好ましい。これにより、接着テープ20表面に発生する気泡を低減することができ、細胞電気生理センサの測定精度を高めることができる。
【0037】
次に本実施の形態における細胞電気生理センサを用いて細胞の電気生理活動を測定する方法について述べる。
【0038】
まず図1に示す上方の電解槽13内に細胞外液、下方の電解槽14内に細胞内液を、気泡が入らないよう充填し、細胞外液、細胞内液にそれぞれ電極15、16を接触させる。
【0039】
ここで細胞外液とはたとえば哺乳類筋細胞の場合、代表的にはK+イオンが155mM、Na+イオンが12mM程度、Cl-イオンが4.2mM程度添加された電解液であり、細胞内液とはK+イオンが4mM程度、Na+イオンが145mM程度、Cl-イオンが123mM程度添加された電解液である。
【0040】
この状態において電極15、16の間で100kΩ〜10MΩ程度の導通抵抗値を測定することができる。これは細胞外液あるいは細胞内液が導通孔19に浸透し、2つの電極15、16が細胞外液と細胞内液とを介して導通するからである。
【0041】
次に上方の電解槽13の上側から細胞を投入し、圧力伝達チューブにより減圧を行うと、図2に示すように、細胞23は導通孔19に引き付けられ、導通孔19の開口部を塞ぎ、上下の電解槽(図1の13、14)間の電気抵抗が十分に高い1GΩ以上の状態となる。この状態において細胞23の電気生理活動によって細胞内外の電位が変化した場合には、わずかな電位差あるいは電流であっても測定が可能となる。ここでこの測定時においては、図1の電解槽13、14間において、細胞23を介さない電気的パスを極力減らすことが、測定精度の向上に寄与する。
【0042】
以下に本実施の形態の細胞電気生理センサ用デバイスの製造方法を説明する。
【0043】
まずセンサチップ9を図2に示すガラス管10内へ挿入し、次にガラス管10の外方からガラス管10の下端部側面に向け、ガラス管10の水平断面とほぼ平行に燃焼炎を勢いよく噴出させる。なおこの時の加熱温度は200℃〜1500℃程度が好ましい。
【0044】
ここで本実施の形態では、強力な集中炎を噴出するため、バーナーを用いた。したがってこの炎の勢い(風圧)で、炎が直に接触するガラス管10の下端を局所的に内側(センサチップ9側)へと湾曲するように溶融できる。これにより、ガラス管10の内径がセンサチップ9外径よりも大きい場合も、ガラス管10とセンサチップ9とを密着して接合することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、センサチップ9とガラス管10との隙間が0.05mmから0.4mm程度であればセンサチップ9とガラス管10とを容易に密着接合することができた。このように、ガラス管10とセンサチップ9との間に隙間があれば、センサチップ9を挿入しやすく、挿入時にセンサチップ9が損傷するのを抑制できるとともに、センサチップ9への応力負荷を低減することができる。
【0046】
そしてガラス管10とセンサチップ9とは回転させながら溶着することによって、容易かつ均一にセンサチップ9を360°溶着することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、センサチップ9の枠体18およびガラス管10は共に円筒型としたため、加熱時の均熱性が高く、均一な溶着が可能である。
【0048】
その後センサチップ9とガラス管10との一体物を実装基板12の貫通孔11に挿入する。
【0049】
次に図3に示すように、テープ孔21のあいた接着テープ20を実装基板12の表面(図1の下面)に貼り合わせる。この時、例えば加熱しながら貼り合わせると、接着テープ20の接着層(粘着材)が軟化し、実装基板12やガラス管10表面の凹凸に合わせて密着して貼り合わせることができる。またローラ等で押圧しながら貼り合わせれば、接合界面の気泡を低減することができ、密着性が増す。
【0050】
また接着テープ20にはアライメント用の穴(溝)を設けておけば、位置決めを高精度に行うことが出来る。
【0051】
なお、ガラス管10は実装基板12表面(図1の下面)よりも突出させておくことにより、接着テープ20が貼りやすくなり、密着性が高まる。そしてその結果、液漏れやリーク電流を抑えることができる。なおガラス管10を用いない場合は、センサチップ9を実装基板12の表面(下面)よりも突出させておけばよい。
【0052】
また図2に示すように、接着テープ20を貼り合わす工程では、実装基板12の上面側から吸引し、減圧することによって、接着テープ20を実装基板12により密着させることができる。すなわち、実装基板12の上面側から吸引すると、ガラス管10の外側面と貫通孔11内壁との僅かな隙間も吸引されるため、内側に湾曲したガラス管10の外側面と貫通孔11内壁との隙間22に接着テープ20が入り込み、より強力にガラス管10を貫通孔11内に保持し、固定することができる。
【0053】
本実施の形態における効果を以下に説明する。
【0054】
本実施の形態では、細胞電気生理センサの測定精度を高めることができる。
【0055】
その理由は、接着テープ20により接着層の露出面積を低減できるからである。
【0056】
すなわち本実施の形態では、接着層の表層はテープの基材で覆われているため、接着層が電解槽14に露出する面積を極めて小さくすることができる。
【0057】
したがって、接着層の電解槽13、14への溶出を低減でき、細胞毒性の低い細胞電気生理センサを実現できる。
【0058】
そしてその結果、細胞電気生理センサの測定精度を高めることができる。
【0059】
さらに接着層がテープの基材で覆われているため、接着層からの脱ガスを低減できる。
【0060】
したがって、この脱ガスに起因するセンサチップ9表面の疎水化を抑制し、気泡の発生を抑えることができる。なお、導通孔19の近傍に気泡が発生すると、細胞の吸引や捕捉が阻害されたり、細胞保持板17の上下面の導通が図れなくなったりするなど、測定が出来なくなる場合がある。したがって本実施の形態では、気泡の発生を低減することで、細胞電気生理センサの測定精度向上に寄与する。
【0061】
また従来は、接着材を塗布することでセンサチップ9を貫通孔11内に固定していたため、接着材は高い流動性を一定に保つように管理する必要があったが、接着テープ20は接着層の流動性が低くてよいため、工程管理が簡易である。
【0062】
また本実施の形態では、生産効率の高い細胞電気生理センサを実現することができる。
【0063】
その理由は、接着テープ20により複数のセンサチップ9を一度に固定することができるからである。
【0064】
すなわち従来は、センサチップ一つずつに接着材を塗布し、固定していたため、作業時間に時間がかかり、細胞電気生理センサの生産効率が低下することがあった。
【0065】
これに対し本実施の形態では、センサチップ9を多数実装したマルチプレートにおいても、一度にセンサチップ9を実装基板12に固定することができ、固定にかかる作業時間を短縮することができる。
【0066】
また接着テープ20の接着層は、硬化させなくても、テープの基材によってセンサチップ9を保持することができるため、さらに製造時間が短縮される。そしてその結果、生産効率の高い細胞電気生理センサを実現することができる。
【0067】
また本実施の形態では、図2に示すように、ガラス管10の下端部を内側へ湾曲させているため、ガラス管10の外側面と貫通孔11内壁との隙間22にも接着テープ20が入り込み、ガラス管10の外側面も接着テープ20で保持することができる。したがって、ガラス管10の先端面のみに接着テープ20を貼り合わせる場合と比較して、接着面積が大きくなり、接合強度が高まる。また接着面積が大きくなるため、テープ孔21の位置決めが僅かにずれた場合も、高確率でガラス管10に接着テープ20を貼り合わすことができる。
【0068】
また本実施の形態では、テープ孔21はセンサチップ9の細胞保持板17の外形よりも大きくし、ガラス管10の外形よりも小さくすることで、センサチップ9を接着テープ20で貫通孔11内に固定している。このように固定すれば、細胞保持板17全体は電解槽(図1の14)に露出する。ここでテープ孔21の内周には、接着テープ20の厚み分だけ段差ができ、この段差部分が気泡を発生させる原因になる場合もあるが、細胞保持板17には接着テープ20を貼り合わせないことで、テープ孔21による段差部分を導通孔19からできるだけ遠ざけることができ、気泡の発生を低減することができる。
【0069】
また本実施の形態では、いわゆるSOI基板を用いているため、二酸化シリコン層の厚みを容易に大きくすることができ、センサチップ9における浮遊容量の低減に顕著な効果がある。なお本実施の形態では、二酸化シリコン層によって浮遊容量を10pF以下に減らすことができ、高精度な細胞電気生理センサを実現できた。
【0070】
また本実施の形態では、管としてシリコンより一般に安価なガラスを用いた。したがって、ガラス管10のサイズを大きくすることができ、センサチップ9のみを実装基板12にはめ込むよりも作業性が向上する。
【0071】
さらにガラス管10の厚みを大きくする、あるいは本実施の形態のように外側面を湾曲させることにより、接着テープ20による接着面積が大きくなり、貼り合わせも容易で接合強度も高まる。
【0072】
またガラスはセンサチップ9の主な組成であるシリコンよりも軟化点が低いため、加熱温度を制御すれば、センサチップ9とガラス管10との一体化物であっても、ガラス管10のみを軟化させて湾曲させることができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、ガラス管10を用いたが、例えば樹脂などで形成してもよい。この場合も、一般に樹脂はシリコンより軟化点が低いため、管のみの先端を湾曲させることができ、管とセンサチップ9とを溶着させることができる。
【0074】
また本実施の形態では、センサチップ9はSOI基板を用いて形成したが、例えば単結晶シリコン、ガラス、水晶等で形成してもよい。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態と実施の形態1との主な違いは、図4に示すように、センサチップ9の外周にガラス管10を配置していない点である。
【0076】
すなわち本実施の形態では、貫通孔11の下端部に直接センサチップ9を挿入している。
【0077】
したがって本実施の形態では、テープ孔21は、センサチップ9の細胞保持板17の外形よりも小さくなるように加工し、接着テープ20で直接細胞保持板17の下面を保持し、センサチップ9を貫通孔11内に固定している。
【0078】
本実施の形態においても、複数のセンサチップ9を一度に保持し、固定することができ、生産効率の高い細胞電気生理センサを実現することができる。
【0079】
なお、本実施の形態では、微小なセンサチップ9を接着テープ20で保持するため、細胞保持板17が底面となるよう、すなわち細胞保持板17が枠体18より下方にくるように配置することが好ましい。枠体18よりも細胞保持板17の方が、接着テープ20と接合できる面積が大きいため、接合強度が高まるとともに、テープ孔21の位置合わせも容易となる。
【0080】
その他実施の形態1と同様の構成および効果については説明を省略する。
【0081】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図5に示すように、小さな接着テープ20を複数個用い、これらの接着テープ20を貫通孔11毎に配置している。これらの接着テープ20には、図6に示すように、それぞれ一つずつテープ孔21が設けられ、このテープ孔21と貫通孔11とがそれぞれ対向するように貼り合わされる。
【0082】
本実施の形態でも、接着層の露出面積を低減でき、細胞毒性が低く、測定精度の高い細胞電気生理センサを実現できる。
【0083】
なお、本実施の形態では、実施の形態1および2と異なり、複数のセンサチップ9をそれぞれの貫通孔11内部に一括して固定することができないが、個別に固定する為、貫通孔11とテープ孔21との位置合わせは容易になる。また接着テープ20の面積が小さいため、実装基板12と貼り合わせる時に、気泡が入り込まないように密着して貼り合わせることが容易である。
【0084】
その他実施の形態1と同様の構成および効果については説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、種々の細胞を用いても細胞毒性を抑えることができ、測定精度の高い細胞電気生理センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態1における細胞電気生理センサの断面図
【図2】図1の要部拡大断面図
【図3】本発明の実施の形態1における細胞電気生理センサの製造工程を示す図
【図4】本発明の実施の形態2における細胞電気生理センサの断面図
【図5】本発明の実施の形態3における細胞電気生理センサの断面図
【図6】同細胞電気生理センサの製造工程を示す図
【図7】従来の細胞電気生理センサの断面図
【図8】従来の細胞電気生理センサの要部拡大断面図
【符号の説明】
【0087】
9 センサチップ
10 ガラス管(管)
11 貫通孔
12 実装基板
13 電解槽
14 電解槽
15 電極
16 電極
17 細胞保持板
18 枠体
19 導通孔
20 接着テープ(テープ)
21 テープ孔(孔)
22 隙間
23 細胞
24 細胞保持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と、
この実装基板の上面から下面までを貫通する貫通孔の下端部に保持されたセンサチップと、
前記実装基板の下面に、接着層を介して貼り合わされたテープとを備え、
前記センサチップは、前記実装基板の上面側と下面側とを連通させる導通孔を有し、
前記テープは、前記貫通孔と対向するとともにこの貫通孔より内側に位置する孔を有する細胞電気生理センサ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記実装基板に複数個設けられ、
これらの貫通孔内にそれぞれ前記センサチップが保持され、
前記テープは、前記複数の貫通孔とそれぞれ対向するとともに、これらの貫通孔より内側に位置する孔を有する請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項3】
前記センサチップは、
前記導通孔を有する細胞保持板と、
この細胞保持板上に配置された枠体とを有し、
前記細胞保持板は、前記枠体よりも前記実装基板の下面側に配置された、請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項4】
前記センサチップは管の下端部に挿入され、
この管は、前記実装基板の前記貫通孔に挿入されている請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項5】
前記センサチップは、前記導通孔を有する細胞保持板を備え、
前記テープの孔は、前記細胞保持板の外形よりも大きく、前記管の外形よりも小さい請求項4に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項6】
前記管の外側面は、
この管の下端が丸みを帯びるように湾曲している請求項4に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項7】
前記管の外側面は、
この管の下端が丸みを帯びるように湾曲し、
この湾曲した外側面には、前記テープが接着している請求項4に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項8】
前記管の下端は、
前記実装基板の下面から突出している請求項4に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項9】
前記センサチップは、
前記管と溶着されている請求項4に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項10】
前記管は、ガラスからなる請求項4に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項11】
前記テープは、ポリオレフィン樹脂からなる請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項12】
実装基板の上面から下面までを貫通する貫通孔の下端部に、前記実装基板の上面側と下面側とを連通させる導通孔を有するセンサチップを挿入し、
次に前記実装基板の下面に、
前記貫通孔と対向するとともに、この貫通孔よりも内側に位置する孔を有するテープを、接着層を介して配置し、減圧しながら貼り付ける細胞電気生理センサの製造方法。
【請求項13】
実装基板の上面から下面までを貫通する貫通孔の下端部に、前記実装基板の上面側と下面側とを連通させる導通孔を有するセンサチップを挿入し、
次に前記実装基板の下面に、接着層を介してテープを配置し、減圧しながら貼り付け、
その後、このテープの前記貫通孔と対向する部分であって、この貫通孔よりも内側の位置に孔を形成する細胞電気生理センサの製造方法。
【請求項14】
前記減圧する工程では、
前記実装基板の上面側から吸引を行う請求項12または13に記載の細胞電気生理センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−8399(P2010−8399A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19157(P2009−19157)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】