説明

細胞電気生理センサ用センサチップとこれを用いた細胞電気生理センサ

【課題】細胞電気生理センサの測定精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】そしてこの目的を達成するため本発明は、導通孔22を有する細胞保持板13を備え、この細胞保持板13の上面または下面の少なくともいずれか一方において、導通孔22の外周には溝24が形成されているものとした。これにより本発明は、溝24にもダストを分散することができ、結果として細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞電気生理センサ用センサチップとこれを用いた細胞電気生理センサに関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように従来の細胞電気生理センサは、センサチップ1と、このセンサチップ1側面を支持する保持プレート2と、この保持プレート2およびセンサチップ1の上方及び下方にそれぞれ配置された電解槽3、4と、これらの電解槽3、4内にそれぞれ配置された電極5、6とを備え、センサチップ1は導通孔7を有する細胞保持板8を有している。
【0003】
この細胞電気生理センサは、上方の電解槽3に細胞9と電解液とを注入し、また下方の電解槽4に電解液を充填し、その後この下方の電解槽4内の電解液を吸引等することにより、導通孔7の開口部に細胞9を捕捉することができる。そして電極5、6間の電位差を計測することによって、細胞9が活動する際の細胞9の内外における電位変化、あるいは細胞9の活動によって発生する物理化学的変化を測定することができる。
【0004】
ここで上記のセンサチップ1は、ドライエッチング等で導通孔7が形成され、次にアルコールや水などの液体で洗浄され、その後乾燥工程を経て保持プレート2に実装されている。
【0005】
なお、上記細胞電気生理センサと類似する例を開示するものとして下記の特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特開2007−010430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の細胞電気生理センサ用センサチップ1では、細胞電気生理センサの測定精度が低いという課題があった。
【0007】
その理由は、導通孔7内にダスト10が溜まるからである。
【0008】
すなわち、微細な導通孔7内は乾燥に時間がかかる。したがってセンサチップ1を洗浄した後の乾燥工程においては、センサチップ1表面の液滴が乾燥するにつれて、この液滴に混じっていたダスト10は導通孔7内に残った液滴へと移動し、導通孔7内にダスト10が集中した状態で乾燥してしまう。
【0009】
このように導通孔7内にダスト10が溜まっていると、細胞9の吸引が阻害され、あるいは導通孔7上下間で電気的導通が図りにくくなり、結果として、細胞電気生理センサの測定精度が低下するのであった。
【0010】
そこで本発明は、細胞電気生理センサの測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そしてこの目的を達成するため本発明の細胞電気生理センサ用センサチップは、導通孔を有する細胞保持板を備え、この細胞保持板の上面または下面の少なくともいずれか一方において、導通孔の外周には溝が形成されているものとした。
【発明の効果】
【0012】
これにより本発明は、細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。
【0013】
その理由は、導通孔内に溜まるダストを低減できるからである。
【0014】
すなわち本発明は、センサチップ洗浄後の乾燥工程において、導通孔だけでなく、この導通孔外周の溝にも液滴が残り、この液滴内にダストが移動する。したがって、ダストを溝へと分散することができ、結果として細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
図1の断面図に示すように本発明の一実施の形態における細胞電気生理センサは、センサチップ11と、このセンサチップ11の側面外周を支持する保持プレート12と、この保持プレート12およびセンサチップ11の上方および下方に配置され、後述の細胞保持板13で仕切られた二つの電解槽14、15と、それぞれの電解槽14、15内に配置された電極16、17とを備えている。
【0016】
そして図2および図3(b)に示すように、センサチップ11はいわゆるSOI基板で形成され、シリコン層18と、このシリコン層18上に形成された二酸化シリコン層19とからなる細胞保持板13と、この細胞保持板13の二酸化シリコン層19上に形成されたシリコン層からなる枠体20とを有している。なお、センサチップ11の材料としてはSOI基板の他にシリコン基板でもよく、さらにはガラス基板、樹脂基板等でもよい。
【0017】
また図2および図3(a)に示すように、細胞保持板13は円板状であり、図2および図3(b)に示すように、枠体20は円筒状をしている。このようにセンサチップ11の断面が円形の場合、方向性が無くなるため、保持プレート12に挿入しやすくなる。
【0018】
そして本実施の形態では、シリコン層18の膜厚は約15μm、二酸化シリコン層19は約2μm、枠体20となるシリコン層が約400μmとした。
【0019】
なお、本実施の形態では、二酸化シリコン層19の膜厚を約2μmとすることにより、二酸化シリコン層19の厚み方向における静電容量が10pF以下となり、後述のリーク電流低減に大きく寄与する。
【0020】
ここで静電容量を小さくするため、二酸化シリコン層19の膜厚を大きくする必要がある場合も、本実施の形態のようにSOI基板を用いると、容易に膜厚を1μm以上とすることができる。
【0021】
また本実施の形態では、図3(b)に示すように、細胞保持板13のシリコン層18には直径約20μmの半球形状の凹部21が形成されており、この凹部21の最深部からシリコン層18と二酸化シリコン層19との積層体を上下方向に貫く導通孔22が形成されている。
【0022】
そして導通孔22の深さは約7μmである。ここで直径10μmから20μmの細胞(図1に示す23)を捕捉する場合、導通孔22は、直径が1μm〜5μm、深さが1μm〜10μm程度が好ましい。したがってシリコン層18の厚みが大きく、導通孔22のアスペクト比が大きくなる場合は本実施の形態のように、凹部21を設けて調整すればよい。
【0023】
なお、本実施の形態では、細胞保持板13(シリコン層18、二酸化シリコン層19)の直径と枠体20の外径はそれぞれ約700μmとした。
【0024】
そして本実施の形態では、細胞保持板13のシリコン層18表面、すなわち凹部21形成面において、凹部21および導通孔22の外周を複数の溝24が囲っている。
【0025】
なお、溝24は導通孔22近傍に配置することが好ましいが、極端に近すぎると、逆にダストが気泡の核となり、導通孔22近傍に気泡を発生させる場合がある。また溝24を細胞保持板13の細胞保持面に形成する場合は、溝24周辺に集まったダストによって細胞23と導通孔22との密着性が阻害されることがある。
【0026】
したがって本実施の形態では、溝24は、少なくとも凹部21の外周から被検体となる細胞23の直径より長く距離を開けて配置した。
【0027】
なお、同様の理由により、凹部21を形成しない場合、溝24は、導通孔22の外周から被検体となる細胞23の直径より長く距離を開けて配置することが好ましい。
【0028】
なお本実施の形態では、溝24は直径約5μm、深さ約3μm程度の円柱形であり、細胞保持板13を貫通していないものとした。
【0029】
次に本実施の形態における細胞電気生理センサを用いて細胞23の電気生理活動を測定する方法について述べる。
【0030】
まず図1に示す上方の電解槽14内に細胞外液、下方の電解槽15内に細胞内液を充填し、細胞外液、細胞内液にそれぞれ電極16、17を接触させる。
【0031】
ここで細胞内液とはたとえば哺乳類筋細胞の場合、代表的にはK+イオンが155mM、Na+イオンが12mM程度、Cl-イオンが4.2mM程度添加された電解液であり、細胞外液とはK+イオンが4mM程度、Na+イオンが145mM程度、Cl-イオンが123mM程度添加された電解液である。
【0032】
この状態において電極16、17の間で100kΩ〜10MΩ程度の導通抵抗値を測定することができる。これは細胞外液あるいは細胞内液が導通孔22に浸透し、2つの電極16、17が細胞外液と細胞内液とを介して導通するからである。
【0033】
次に上方の電解槽14の上側から細胞23を投入し、下方の電解槽15を減圧すると、細胞23は導通孔22に引き付けられ、導通孔22の開口部を塞ぐ。
【0034】
その後下方の電解槽15をさらに減圧するか、あるいは下方の電解槽15側にナイスタチンなどの抗生物質を投与することにより、導通孔22開口部を塞いでいる部分の細胞膜に孔が開く(ホールセル)。これにより、導通孔22の上下間では、細胞23を介してのみ電気的導通が図れる。また細胞23が導通孔22開口部に密着保持されていることから、上下の電解槽14、15間の電気抵抗は十分に高い1GΩ以上の状態となる(ギガシール)。
【0035】
そして上記のようなギガシール状態を形成した後、細胞23に物理化学的刺激を印加する。この時この物理化学的刺激に細胞23が反応し、電気生理活動を行った場合、その活動を電位変化(電流値変化あるいは抵抗値変化等でもよい)として電極16、17により検出することができる。
【0036】
以下に本実施の形態の細胞電気生理センサの製造方法を説明する。
【0037】
はじめに、センサチップ11を製造するため、図4に示すような、シリコン層18、20Aの間に二酸化シリコン層19を挟んだいわゆるSOI基板を準備する。SOI基板は、SIMOX(Separation by IMplantation of OXygen)方式あるいは張り合わせなどによって、予め膜厚1.0μm以上の厚い二酸化シリコン層19が形成されているものを用いた。
【0038】
次に、細胞保持板(図1の13)となるシリコン層18表面を、パターニングされたレジストマスク25で覆い、ドライエッチングによってシリコン層18表面に図1に示すような凹部21を形成し、この凹部21の最深部からシリコン層18を貫通し、二酸化シリコン層19に到達するまで導通孔22を形成する。
【0039】
なお、上述の凹部21を形成する工程では、エッチングガスとして、SF6やXeF2、またはこれらの混合ガスなどを用いた。これらはシリコンのエッチングを深さ方向だけでなく、水平方向へのエッチングも促進する作用があるため、シリコン層18を半球形状の碗型にエッチングすることができる。
【0040】
また上述の導通孔22を形成する工程では、ICPプラズマを用い、シリコンのエッチングを促進するガス(以下促進ガスという)と抑制するガス(以下抑制ガスという)を交互に導入した。
【0041】
ここで抑制ガスとしては例えばC48が挙げられる。これにより、促進するガス導入時にはシリコン層18をエッチングし、抑制ガスの導入時にはエッチングした内壁に保護膜を形成することから、これらのエッチングガスの組み合わせを最適化することによって、エッチングは直線的に進行し、凹部21の最深部から導通孔22をほぼ垂直な形状にエッチング加工することができる。
【0042】
なお、シリコン層18と二酸化シリコン層19とはエッチングレートが異なることから、二酸化シリコン層19はシリコン層18のエッチング工程において、エッチングストップ層として機能し、所望深さの導通孔22を高精度に形成することができる。
【0043】
そしてその後、二酸化シリコンを選択的にエッチングするCF4とArとの混合ガスなどを噴き付け、二酸化シリコン層19を貫通して導通孔22を形成する。
【0044】
次にシリコン層18上のレジストマスク(図4の25)を除去し、新たにマスキングをし、シリコン層18表面をドライエッチングして溝24を形成する。
【0045】
このときのドライエッチング工程は、本実施の形態では、前述の導通孔22形成時のドライエッチング工程と同様に、ICPプラズマを用い、エッチングを促進するガスと抑制するガスとを交互に導入して形成した。
【0046】
この時、溝24が細胞保持板13を貫通しないよう、エッチングのし過ぎに注意する。溝24が貫通していると、細胞を吸引する際、溝24にも細胞が捕捉されてしまい、導通孔22開口部に効率よく細胞を捕捉できないからである。
【0047】
なお、溝24を半球形状に形成する場合は、前述の凹部21形成時のドライエッチング工程と同様に、エッチングを促進するガスを用いればよい。
【0048】
次に、枠体20となるシリコン層(図4の20A)表面をマスキングし、シリコン層20A表面からエッチングを促進するガス(促進ガス)と抑制するガス(抑制ガス)とを交互に導入してシリコン層20Aをエッチングすると、細胞保持板13と枠体20とからなるセンサチップ(図1の11)を形成することができる。
【0049】
その後、このセンサチップ11をIPA(イソプロプルアルコール)等の洗浄液に含浸させ、60℃〜80℃程度に加熱しながら洗浄し、さらにこのセンサチップ11を室温の純水で洗い流す。
【0050】
次に、このセンサチップ11を乾燥させる。この時の乾燥工程は、室温条件下での自然乾燥でもよく、あるいは炉内に入れ、加熱して乾燥させてもよい。
【0051】
そしてその後、保持プレート12に貫通孔を形成し、この貫通孔内にセンサチップ11を挿入し、保持プレート12の貫通孔内壁とセンサチップ11外側面とを接着する。
【0052】
この時の接着方法としては、保持プレート12が樹脂の場合はUV硬化性接着剤等によって接合することができる。また保持プレート12がガラスの場合はガラス溶着、あるいはUV硬化性接着剤等によって接合することができる。
【0053】
本実施の形態における効果を以下に説明する。
【0054】
本実施の形態の細胞電気生理センサ用センサチップ11は、細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。
【0055】
その理由は、導通孔22内に溜まるダストを低減できるからである。
【0056】
すなわち洗浄工程において、アルコールや水などの液体(洗浄液)には、ドライエッチング工程で用いたレジストマスク(図4の25)のカスやシリコン層(図4の18、20A)の自然酸化皮膜のカスなどがダストとして混じっている。そして乾燥工程においては、センサチップ11表面の液滴が乾燥するにつれて、この液滴に混じっていたダストは導通孔22内に残った液体へと引き寄せられ、導通孔22内にダストが集中した状態で乾燥してしまうことがあった。
【0057】
このように導通孔22内にダストが溜まっていると、細胞の吸引が阻害され、あるいは導通孔22上下間で電気的導通が図りにくくなり、結果として細胞電気生理センサの測定精度が低下するのであった。
【0058】
これに対し本実施の形態では、図5に示すように、センサチップ11洗浄後の乾燥工程において、導通孔22だけでなく、その外周に形成された溝24内も乾燥が進みにくく、液滴(洗浄液)が残りやすい。したがって、この液滴内にダストが引き寄せられ、溝24へとダストを分散することができ、導通孔22内に溜まるダストを低減することができる。そしてその結果、細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、図5に示すように、枠体20を下にしてセンサチップ11を乾燥させている。その理由は、枠体20内に液滴が溜まるのを防ぐ為である。ここでこのような向きで乾燥すると、二酸化シリコン層19よりもシリコン層18上に液滴が溜まりやすい。したがって本実施の形態では、シリコン層18上に溝24を形成することにより、ダストが導通孔22に集積するのを効率よく抑制することができる。
【0060】
また本実施の形態では、図1に示すように、細胞保持板13の下面に半球形の凹部21を形成することにより、下方の電解槽15から導通孔22にかけての流路幅の変化を緩やかにしている。したがって、電解槽15と導通孔22間における流体抵抗が小さくなり、液体(細胞内液等)の流動性が向上する。特に、上述の抗生物質を用いた細胞膜に穴を開ける工程(ホールセル)において、薬液が導通孔22へまわり込み易くなり、細胞23に迅速に穴を形成することができる。
【0061】
そしてこのように凹部21を形成した場合、洗浄後の乾燥工程においては、凹部21に液体(洗浄液)が溜まりやすい。したがって、本実施の形態のように、凹部21形成面に溝24を設け、ダストを分散させることは細胞電気生理センサの測定精度向上に寄与する。
【0062】
また本実施の形態では、図1に示すように、細胞保持板13はSOI基板を用いており、細胞保持面は絶縁体である二酸化シリコン層19で構成している。したがって、センサチップ11の上下間におけるリーク電流を低減することができ、細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。
【0063】
なお、リーク電流増大の原因となる浮遊容量は、二酸化シリコン層19の膜厚に反比例することから、この二酸化シリコン層19の膜厚を大きくすることによって浮遊容量を抑え、リーク電流をさらに低減することができる。
【0064】
したがって本実施の形態では、溝24は二酸化シリコン層19には形成せず、シリコン層18側に形成したことにより、二酸化シリコン層19の膜厚が小さくなるのを回避し、細胞電気生理センサの測定精度を高く維持している。
【0065】
なお上記実施の形態では、細胞保持板13の下面(底面)側に溝24を形成したが、図6に示すように細胞保持面(上面)側に溝24を形成してもよい。
【0066】
このように細胞保持面に溝24を形成することにより、細胞保持面側において、導通孔22開口部近傍に溜まるダストを低減することができ、細胞23と導通孔22開口部との密着性が向上し、細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。
【0067】
さらに細胞捕捉面に凹部21(図6には図示せず)を形成する場合は、細胞保持面側において、凹部21内に溜まるダストも低減することができ、細胞電気生理センサの測定精度を向上させることができる。また溝24は細胞保持面及び下面両方に形成してもよい。
【0068】
また本実施の形態では、図3(a)に示すように、溝24は導通孔22外周を囲むように、所定間隔をあけて点々と配置したが、図7に示すように、輪形の溝となっていてもよく、さらには直線状の溝でもよい。
【0069】
また溝24の一部が凹部21と繋がっていてもよい。この場合、溝24に斜面を設け、溝24の外端ほど深く、導通孔22近傍ほど浅くすれば、ダストは溶媒とともに溝24の外端に集中し、導通孔22に溜まるダストを低減することができる。
【0070】
また本実施の形態では、一枚の細胞保持板13に対し一つの導通孔22を形成しているが、導通孔22は複数個形成してもよい。この場合、溝24は個々の導通孔22の外周にそれぞれ形成してもよく、あるいは導通孔22を所定数毎に区分けし、その一まとめになった導通孔22の外周に形成してもよい。また溝24を升目状に形成し、升目の内部に一または所定数の導通孔22を配置してもよい。
【0071】
(実施の形態2)
本実施の形態2と実施の形態1との違いは、図8に示すように、溝24の垂直断面を逆テーパ形状とした点である。すなわち本実施の形態では、図9に示すように、溝24の内壁と、この溝24が形成された細胞保持板13の表面との成す角θが鋭角(90度未満)となる。
【0072】
これにより本実施の形態では、溝24内部に入った液滴の、外気に露出する面積が小さくなり、溝24内部の液滴が乾燥しにくくなる。したがって、より溝24へとダストを分散させることができ、結果として細胞電気生理センサの測定精度を向上させることが出来る。
【0073】
なお、溝24と細胞保持板13表面とのなす角θは、上記の理由により鋭角としたが、尚且つ80度以上とすることが好ましい。角θが小さすぎると、液滴が溝24内部へとまわり込みにくくなるからである。
【0074】
すなわち本実施の形態では、図9の角θを80度以上90度未満とすることにより、溝24内への液滴のまわり込みやすさを維持し、かつ溝24内の液滴の乾燥を抑制できる。
【0075】
またこの溝24は、導通孔22と同様に、ICPプラズマを用いたドライエッチング加工によって容易に形成することができる。溝25のテーパ角度は、電圧や圧力、エッチングを促進するガスと、抑制するガスのガス容量や導入時間の比率、それぞれの組成等を変えることにより、適宜調整できる。例えば本実施の形態では、抑制ガスCF4を85standard cc/min(sccm)、圧力20mTorr、時間7秒の条件下で導入し、また促進ガスSF6を140sccm、アシストガスO210sccm、圧力30mTorr、時間13秒条件下で導入し、エッチングを行った。
【0076】
なお、溝24はレーザ加工やその他切削等機械的な加工などでも形成することができるが、本実施の形態ではドライエッチング加工により形成したため、複数個の溝24を一度に形成することができ、生産性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の細胞電気生理センサは、細胞電気生理測定を高精度に行うことにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1における細胞電気生理センサの断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるセンサチップの斜視図
【図3】(a)同センサチップの上面図、(b)同センサチップの断面図(図3(a)のXX断面)
【図4】同センサチップの製造工程を示す断面図
【図5】同センサチップの乾燥工程を示す断面図
【図6】本発明の実施の形態1における別の例のセンサチップの断面図
【図7】(a)本発明の実施の形態1における別の例のセンサチップの上面図、(b)同センサチップの断面図(図6(a)のXX断面)
【図8】本発明の実施の形態2における細胞電気生理センサの断面図
【図9】同細胞電気生理センサの要部拡大断面図
【図10】従来の細胞電気生理センサの断面図
【符号の説明】
【0079】
11 センサチップ
12 保持プレート
13 細胞保持板
14 電解槽
15 電解槽
16 電極
17 電極
18 シリコン層
19 二酸化シリコン層
20 枠体
20A シリコン層
21 凹部
22 導通孔
23 細胞
24 溝
25 レジストマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通孔を有する細胞保持板を備え、
この細胞保持板の上面または下面の少なくともいずれか一方において、前記導通孔の外周には溝が形成されている細胞電気生理センサ用センサチップ。
【請求項2】
前記細胞保持板は、シリコン層と二酸化シリコン層との積層体であって、
この二酸化シリコン層は前記細胞保持板の細胞捕捉面となり、
前記溝は前記シリコン層側に形成されている請求項1に記載の細胞電気生理センサ用センサチップ。
【請求項3】
前記細胞保持板の表面には凹部が形成され、
前記導通孔は、前記凹部の最深部から形成されるとともに、
前記溝は、前記細胞保持板の前記凹部形成面と同一面において、この凹部の外周に設けられた請求項1または2に記載の細胞電気生理センサ用センサチップ。
【請求項4】
前記細胞保持板は、シリコン層と二酸化シリコン層との積層体であって、
前記シリコン層の表面には凹部が形成され、
前記導通孔は、前記凹部の最深部から形成されるとともに、
前記溝は、前記シリコン層表面において、前記凹部の外周に設けられた請求項1または2に記載の細胞電気生理センサ用センサチップ。
【請求項5】
前記溝は、
垂直断面が逆テーパ形状である請求項1から4のいずれか一つに記載の細胞電気生理センサ用センサチップ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の細胞電気生理センサ用センサチップと、
このセンサチップの前記細胞保持板で仕切られた二つの電解槽と、
これらの電解槽に注入される液体とそれぞれ電気的に接続される電極とを備えた細胞電気生理センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−198180(P2009−198180A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36821(P2008−36821)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】