説明

組換えタンパク質の生産方法

【課題】 形質転換体からの脱落を抑制可能なポリヌクレオチドを含むベクター、および前記ベクターを利用して宿主を形質転換して得られた形質転換体により組換えタンパク質を生産する方法を提供すること。
【解決手段】 バチルス属細菌の染色体中に見出された特定の配列を含むポリヌクレオチドおよび目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを用いて宿主を形質転換して得られる形質転換体、および前記形質転換体を用いて目的タンパク質を生産する方法により、前記課題を解決する。これにより、例えば、抗生物質を含まない培養液を用いた組換えタンパク質の生産も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学的手法を用いて組換えタンパク質を生産するのに有用な新規ベクター、およびそれを用いた組換えタンパク質の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子工学的手法により得られた、遺伝子組換えタンパク質(単に組換えタンパク質とも称される)が医薬、農薬または研究試薬などの分野で数多く利用されている。
遺伝子組換えタンパク質の生産は、動物細胞、酵母、細菌などを宿主として用い生産している。なかでも、形質転換の容易さから、細菌を宿主として用いた生産技術が数多く開発されている。異種遺伝子を用いた宿主細胞の形質転換に際しては、ベクター(発現ベクターとも称される)に挿入された抗生物質を分解や修飾する酵素遺伝子、又は抗生物質を宿主外へ排出するトランスポーター遺伝子をマーカーとして利用し、抗生物質を含む培地により行なわれることが多い(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−193760号公報
【特許文献2】特開2008−245580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように作製した形質転換体を用いて組換えタンパク質を生産する際は、組換えタンパク質を効率よく生産させるため、導入したベクターが脱落していない形質転換体の割合をより高くした状態で培養が行われることが好ましい。そのため、前記形質転換体を常に適切な抗生物質の存在下で培養し、ベクターの脱落が確認されたものを培養液から除いてベクターが脱落していない形質転換体の割合を高めることにより組換えタンパク質が生産されていた。しかしながら、大量の抗生物質を含む培養液の管理等のための手間や生産コストの増加などを招くこともあり、ベクターが脱落していない形質転換体の割合を高くした状態で培養を行うことができる新たな方法が望まれている。
【0005】
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、導入されたベクターの形質転換体からの脱落を抑制可能なベクター、および前記ベクターを利用して宿主を形質転換して得られた形質転換体により組換えタンパク質を生産する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、細菌の染色体中に存在するポリヌクレオチドの中に、形質転換体からのベクターの脱落を抑制可能である機能を有するポリヌクレオチドを見出した。当該ポリヌクレオチドはさらに、形質転換効率を向上させる機能をも有していた。しかも、前記ポリヌクレオチドは、DNAの複製、分配、コンピテンシー等に関わる遺伝子群や、その周辺領域とは一切関係なく、前記ポリヌクレオチドが前述した機能を有していることは予測をはるかに超えるものであった。
【0007】
すなわち、本願発明は以下の発明を包含する。
(1)(A)配列番号1に記載の塩基配列、または(B)配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失、付加および/もしくは置換された配列からなり、形質転換体からのベクターの脱落を抑制可能であるポリヌクレオチドと、目的タンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドとを含むベクター。
(2)前記(B)の塩基配列が、前記(A)の塩基配列と80%以上の同一性を有している塩基配列である(1)に記載のベクター。
(3)前記(A)の塩基配列または前記(B)の塩基配列からなるポリヌクレオチドの上流にさらに当該ポリヌクレオチドを発現させるプロモータ領域を有する、(1)または(2)に記載のベクター。
(4)前記目的タンパク質がヒト受容体タンパク質である、(1)から(3)のいずれか1つに記載のベクター。
(5)前記ヒト受容体タンパク質が、ヒトFc受容体またはヒトエリスロポエチン受容体である、(4)に記載のベクター。
(6)(1)から(5)のいずれか1つに記載のベクターを導入することにより宿主を形質転換して得られる、形質転換体。
(7)前記宿主がバチルス属細菌である、(6)に記載の形質転換体。
(8)(6)または(7)に記載の形質転換体を培養し、当該形質転換体により産生される前記目的タンパク質を回収することを含む、組換えタンパク質の生産方法。
(9)(ア)配列番号1に記載の塩基配列、または配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失、付加および/もしくは置換された塩基配列からなり、形質転換体からのベクターの脱落を抑制可能なポリヌクレオチドを含むベクターに目的タンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを挿入する工程、および(イ)前記(ア)の工程により得られたベクターを宿主に導入する工程、を含む形質転換方法。
(10)配列番号1に記載の塩基配列、または配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失、付加および/もしくは置換された塩基配列からなり、形質転換体からのベクターの脱落を抑制可能であるポリヌクレオチドを含む、形質転換体からのベクターの脱落抑制剤。
【0008】
なお、本明細書において、ベクター(発現ベクター)とは、細菌などの宿主に当該宿主とは異なる由来の外来遺伝子を導入できる核酸分子(例えば、プラスミドDNA)をいう。また、ベクターの脱落とは、導入したベクターが例えば排出されるなどして宿主内から消失することをいう。ベクターの脱落が抑制されているか否かは、後述する方法により算出される導入遺伝子保持率(%)を基に理解することができる。
本明細書において、形質転換体とは、細菌などの宿主内にベクターなどによって宿主とは異なる由来の外来遺伝子が導入された結果、その性質が転換されたものをいう。
本明細書において、組換えタンパク質とは、宿主とは異なる由来の外来遺伝子の発現に基づき形質転換体において産生されるタンパク質をいう。さらに、本明細書において、目的タンパク質とは、組換えタンパク質のうち、形質転換体によって大量に生産されることが望まれる任意のタンパク質をいう。
本明細書において、プロモータ(プロモータ領域)とは、ベクターにおいて所定の遺伝子を発現させる遺伝子発現制御領域をいう。
本明細書において、ヒト受容体タンパク質とは、ヒトにおける外界や体内からの刺激を受け取る(例えば抗体やホルモンなどに結合する)タンパク質をいう。また、ヒトFc受容体とは、免疫グロブリン分子のFc領域に結合する一群のタンパク質をいう。ヒトFc受容体については複数のサブタイプが報告されており、免疫グロブリンG(IgG)に対するサブタイプとしては、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb及びFcγRIIIの存在が報告されている。
本明細書において、ヒトエリスロポエチン受容体とは、ヒト受容体タンパク質のうち、赤血球の産生を促進するホルモンであるエリスロポエチンに結合するタンパク質をいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、形質転換体からの脱落を抑制可能なベクター、および当該ベクターを利用して組換えタンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが導入された形質転換体により組換えタンパク質を生産する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】配列番号1のポリヌクレオチド配列および前記配列より翻訳して得られるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図2】ベクターpEDMS1の構造を示す図である。edmSは本実施形態に係るポリヌクレオチドを、oriは自立複製領域を、tetはテトラサイクリン耐性遺伝子を、PxylAはキシロースプロモータを、それぞれ示す。
【図3】比較例である市販ベクターpWH1520または実施例であるベクターpEDMS1を用いて形質転換したときの形質転換効率を示す図である。
【図4】比較例である市販ベクターpWH1520または実施例であるベクターpEDMS1を用いて得られた形質転換体の導入遺伝子保持率を示す図である。
【図5】Fc受容体発現ベクターpNCMO2FcRの作製方法を示す図である。
【図6】Fc受容体発現ベクターpEDMSxylFcRおよびpEDMSuniFcRの作製方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の1つについて詳細に説明する。
本実施形態に係るポリヌクレオチドは、形質転換体からのベクターの脱落を抑制する機能を有している。また、本実施形態に係るポリヌクレオチドはさらに、形質転換効率を向上させる機能およびベクターに挿入したポリヌクレオチドから翻訳されるタンパク質を効率的に発現する機能を有している。本実施形態に係るポリヌクレオチドは、例えば、バチルス属細菌の染色体中に見出された、配列番号1(GenBank No.Z92954の2709から2876番目の塩基に相当)に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0012】
なお、本実施形態に係るポリヌクレオチドの塩基配列は、形質転換体からのベクターの脱落を抑制する機能を有する限り、配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失、付加および/または置換されていてもよい。さらに、配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失および/または置換、および/または付加されることで、配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと比較して、発現した目的タンパク質の活性や安定性などが向上していてもよい。欠失、置換または付加される塩基の数には制限ないが、好ましくは1から10塩基、より好ましくは1から5塩基、さらに好ましくは1から2塩基である。配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失、付加および/または置換された配列と配列番号1に記載の塩基配列との同一性は80%以上であると好ましく、90%以上であるとより好ましく、95%以上であるとさらに好ましい。なお、同一性は、BLASTなど当業者の周知のソフトウェアにより、簡便に確認することができる。
【0013】
本実施形態に係るポリヌクレオチドは、染色体DNAを抽出後、これを鋳型としたPCR法により作製してもよいし、直接化学合成により作製してもよい。
【0014】
本実施形態に係るポリヌクレオチドは、宿主への形質転換を促進するために用いることができる。例えば、本実施形態に係るポリヌクレオチドおよび目的タンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド(以下、単に目的タンパク質のポリヌクレオチドとも称す)を挿入したベクターを用いて宿主を形質転換する際、形質転換体内で本実施形態に係るポリヌクレオチドの機能が発揮されると、形質転換体から目的タンパク質のポリヌクレオチドを含むベクターの脱落が抑制される。これにより、目的タンパク質のポリヌクレオチドの発現が安定に維持され、目的タンパク質の生産を高めることができる。
【0015】
本実施形態のベクターは、本実施形態に係るポリヌクレオチドと目的タンパク質の塩基配列を含むポリヌクレオチドとを含んでいる。目的タンパク質に特に限定はなく、例えばアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、コレステロールオキシダーゼ等の酵素、インシュリン、インターフェロン、インターロイキン、抗体、エリスロポエチン、成長ホルモン、およびそれらの受容体タンパク質等のヒトタンパク質、ポリ−γ−グルタミン酸、ポリ−ε−リジン、シアノファイシン、ポリヒドロキシアルカン酸等のバイオ素材を例示できる。本実施形態のベクターを用いることにより、例えば、形質転換体による、医農薬中間体等の有用合成低分子化合物の合成を触媒する酵素の生産量を高めることで、当該低分子化合物の生産を向上させることもできる。また、特に本実施形態のベクターはヒト受容体タンパク質の生産に好ましく、とりわけヒトFc受容体またはヒトエリスロポエチン受容体の生産に好ましい。ヒトFc受容体の一例としては、ヒトFcγRI、ヒトFcγRIIa、ヒトFcγRIIb、ヒトFcγRIIIが例示できる。ヒトFc受容体のさらに具体的な一例として、配列番号14に記載の天然型FcγRIアミノ酸配列のうち少なくとも22番目のアラニンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質や、配列番号14に記載の天然型FcγRIアミノ酸配列のうち少なくとも22番目のアラニンから289番目のバリンまでのアミノ酸において当該アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換されており、免疫グロブリンG(IgG)に対する結合能を有するタンパク質(より好ましくは配列番号14に記載の天然型FcγRIアミノ酸配列のうち少なくとも22番目のアラニンから289番目のバリンまでのアミノ酸と70%以上の同一性を有するアミノ酸を含むタンパク質)があげられる。目的タンパク質のポリヌクレオチドは、当該目的タンパク質のポリヌクレオチドを有する細胞から、染色体DNAや染色体外DNAを抽出後、これを鋳型としたPCR法により作製してもよいし、直接化学合成により作製してもよい。なお、目的タンパク質のポリヌクレオチドを作製する際は、形質転換させる宿主におけるコドンの使用頻度(Codon usage)を考慮するのが好ましい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のホームページにあるCodon Usage Databaseなど)を利用することによっても可能である。
【0016】
本実施形態のベクターは、例えば、公知のベクターに、本実施形態に係るポリヌクレオチドおよび目的タンパク質のポリヌクレオチドを挿入して作製することができる。当該公知のベクターは目的タンパク質のポリヌクレオチドを挿入するためのクローニング部位を有し、かつ、クローニング部位が特定の制限酵素により切断される箇所に目的タンパク質のポリヌクレオチドを挿入可能な部位を有していれば、特に制限はなく、使用する細胞に合わせて適宜選択すればよい。具体的には、プラスミドベクター、ウイルスベクター、アグロバクテリウムシステムが例示できる。より具体的には、バチルス属細菌用ベクターとしてpWH1520、pAMα1、pUB110等が、大腸菌用ベクターとしてpUC、pTrc99a、pET等が例示できる。本実施形態のベクターは、例えば、常法に従い作製すればよい。すなわち、公知のベクターを適切な制限酵素で切断後、本実施形態に係るポリヌクレオチドおよび目的タンパク質のポリヌクレオチドをDNAリガーゼにより、制限酵素で切断した箇所にライゲーションすればよい。
【0017】
なお、本実施形態のベクターを作製する際、本実施形態に係るポリヌクレオチドの上流に、本実施形態に係るポリヌクレオチドを発現させるプロモータ領域を有するように作製すると、当該プロモータにより本実施形態に係るポリヌクレオチドの発現を活性化させることができる点で、さらに好ましい。当該プロモータは、本実施形態に係るヌクレオチドの上流において当該ヌクレオチドに作動可能に連結(プロモータと発現される配列とが遺伝子発現を可能とするように結合される連結)されていればよい。また、プロモータは、本実施形態のベクターを用いて形質転換する宿主内で本実施形態に係るポリヌクレオチドの発現を活性化できるプロモータであればよく、構成的プロモータであってもよいし、誘導型プロモータであってもよい。
【0018】
本実施形態の形質転換体は、本実施形態のベクターを用いて宿主を形質転換することで作製することができる。当該宿主は、使用する本実施形態のベクターに感受性を有し、かつ挿入した目的タンパク質のポリヌクレオチドの発現に基づき目的タンパク質を産生可能なものであれば特に限定はなく、枯草菌(Bacillus subtilis)、納豆菌、大腸菌、緑膿菌、ビブリオ菌等の細菌、酵母等の真核細胞、植物細胞、動物細胞、昆虫細胞等が例示できる。その中でも、枯草菌(Bacillus subtilis)、納豆菌、Bacillus megaterium、Bacillus brevis、Bacillus anthracis、Bacillus cereusなどのバチルス属細菌が、本実施形態の形質転換体を作製する際に使用する宿主として好ましい。なお、酵母のような真核生物の細胞を、本実施形態の形質転換体を作製する際に使用する宿主として利用する場合には、本実施形態のベクター内にある、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの下流にポリ(A)シグナル配列をさらに付加すると好ましい。ポリ(A)シグナル配列は、mRNAの下流にアデニンを付加することにより、mRNAの安定性と発現効率を向上させる機能を有する。
【0019】
本実施形態のベクターを用いて宿主を形質転換するには、使用する細胞やベクターに応じた常法に従えばよい。例えば、宿主を予備的に培養して得られる培養液に本実施形態のベクターを添加後、ヒートショック法やエレクトロポレーション法などにより細胞を刺激して本実施形態のベクターを宿主内に導入する方法があげられる。また、宿主として真核細胞を用いる場合は、カルシウム法によりコンピテントセルを作製後、本実施形態のベクターを導入する方法や、プロトプラスト−PEG法等があげられる。宿主を形質転換させるときの温度は、使用する宿主の生育に適する温度とすればよい。また、本実施形態のベクターを導入するのに要する時間は、使用したベクターや宿主、DNA導入促進試薬の使用の有無などにもよるが、通常は1時間から10日間程度である。
【0020】
本実施形態の形質転換体の培養における培養温度は、使用する形質転換体の生育に適する温度、または形質転換体に導入した本実施形態のベクターにより発現される目的タンパク質の安定性や発現量に適する温度で行なえばよい。また培養時間も、適宜、培地中や形質転換体内における目的タンパク質の産生量をモニターすることで決定すればよい。
【0021】
本実施形態の形質転換体に導入した本実施形態のベクターが、本実施形態に係るポリヌクレオチドの上流にプロモータ領域を有するベクターである場合、導入したプロモータを活性化または抑制する物質を培養液中に添加することで制御しながら目的タンパク質のポリヌクレオチドを発現させると好ましい。
【0022】
本実施形態の形質転換体を培養することで、本実施形態のベクターに挿入されたポリヌクレオチドから翻訳された目的タンパク質を生産することができる。生産された目的タンパク質を回収する方法については特に限定されない。例えば、形質転換体内に目的タンパク質が生産される場合は、超音波法等の方法を用いて細胞を破砕することで目的タンパク質の抽出液を調製することができる。また、形質転換体培養液中に目的タンパク質が分泌生産される場合は、遠心分離操作等によって形質転換体を分離することで、目的タンパク質の抽出液を調製することができる。当該抽出液から目的タンパク質を精製するには、イオン交換、疎水性相互作用、ゲルろ過、アフィニティなどのカラムクロマトグラフィーを適宜組み合わせて使用することで、純度の高い目的タンパク質を調製することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係るポリヌクレオチドは、ベクターに挿入することで、当該ベクターを用いて形質転換された形質転換体におけるベクターの脱落を抑制する機能を有している。よって、本実施形態に係るポリヌクレオチドを含むベクターを形質転換処理に用いることで、ベクターの脱落が発生する形質転換体の割合を少なくすることができる。
このようにベクターの脱落が発生する形質転換体の割合を小さくすることができる結果、例えば、抗生物質が添加されていない培地で形質転換体を培養しての目的タンパク質の生産も可能となるので、抗生物質を含む培地の管理に要していた手間やコストの削減も可能となる。
さらに、本実施形態に係るポリヌクレオチドは、形質転換処理における形質転換効率を向上させる機能、およびベクターに挿入したポリヌクレオチドから翻訳されるタンパク質を効率的に発現する機能を有している。したがって、本実施形態に係るポリペプチドを含むベクターを用いて形質転換処理を行うことにより、より効率的な形質転換および目的タンパク質の生産が可能となる。
加えて、本実施形態に係るポリヌクレオチドによれば、形質転換体からのベクターの脱落抑制剤を提供することができる。当該脱落抑制剤の具体的な態様としては、例えば、本実施形態に係るポリヌクレオチド単体、本実施形態に係るポリヌクレオチドを含むプラスミドDNA、および当該ポリヌクレオチド単体またはプラスミドDNAを含む遺伝子組換えキットなどが挙げられる。遺伝子組換えキットは、プラスミドDNAのほかに、例えば培地や宿主細胞などにより構成される。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1 ベクターの調製
枯草菌(Bacillus subtilis)で発現させるためのベクターを下記に示す方法で調製した。
【0026】
(1)以下に示す方法で、配列番号1に記載の配列(図1)を含むポリヌクレオチドを調製した。
(1−1)滅菌蒸留水(50μL)に、Bacillus subtilis chungkookjang株の染色体DNA(約1μg)、LA−Taq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)(0.25μL)、LA−Taq DNAポリメラーゼキット添付のPCRバッファー(タカラバイオ社製)(5μL)、配列番号2に記載の塩基配列からなるプライマー(PEDMS−NF)(終濃度で5pmol)、配列番号3に記載の塩基配列からなるプライマー(PEDMS−CF)(終濃度で5pmol)、をそれぞれ添加することで、PCR反応液を調製した。なお、配列番号2に記載の塩基配列のうち、10番目から15番目までのヌクレオチドはSpeIサイトであり、29番目から42番目までのヌクレオチドは配列番号1の1番目から14番目までのヌクレオチドと同一である。また、配列番号3に記載の塩基配列のうち、8番目から13番目までのヌクレオチドはBamHIサイトであり、14番目から40番目までのヌクレオチドは配列番号1の132番目から168番目までのヌクレオチドの相補鎖と同一である。
(1−2)TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(タカラバイオ社製)を用いて、(1−1)のPCR反応液を94℃で9分間加熱処理した後、94℃で1分間/57℃で1分間/64℃で10分間の反応サイクルを30サイクル行ない
、最後に72℃で10分間反応することで、配列番号1に記載の配列からなるポリヌクレオチドを含むDNA断片を増幅し調製した。
【0027】
(2)(1)で調製したDNA断片をイソプロパノールで沈殿させ単離した。
【0028】
(3)単離したDNA断片を制限酵素SpeIとBamHI(タカラバイオ社製)で処理後、Ligation Highキット(東洋紡社製)を用いて、あらかじめ制限酵素SpeIとBamHIで処理したpWH1520ベクター(MoBiTec社製)と連結させた。
調製したベクターをベクターpEDMS1と命名するとともに、その構造を図2に示す。pEDMS1に導入された遺伝子配列をDNAシークエンサー(遺伝子解析装置)で解析し、配列番号1と同一であることを確認した。
【0029】
実施例2 形質転換効率試験
配列番号1に記載の配列を含むポリヌクレオチドをベクターに導入したことによる、枯草菌への形質転換効率の変化を確認した。
【0030】
(1)枯草菌(Bacillus subtilis)のうち最も形質転換効率が優れていると報告されているISW1214株、および形質転換され難い納豆菌の中でも比較的形質転換されやすいと報告されている野生株chungkookjang株の菌懸濁液(5μL)をそれぞれLB液体培地(5mL)に植菌後、30℃で一晩振とう(100rpm)培養した。
【0031】
(2)得られた培養液を再度LB培地に植菌し、600nmの吸光度が0.6の培養液を調製した。
【0032】
(3)(2)の培養液(50μL)を表1に示す組成の形質転換培地(5mL)に植菌し、37℃で4時間、振とう培養した。
【0033】
【表1】

【0034】
(4)実施例1で調製したベクターpEDMS1(図2)を滅菌蒸留水(50μL)に懸濁させることで、DNA濃度0.00015w/v%の懸濁液を調製した。なお、DNA濃度は、分光光度計を用いて測定した260nmの吸光度から算出しており、吸光度測定値が0.02の時、濃度は0.0001w/v%となる。
【0035】
(5)得られた培養液を1.5mL容チューブに100μLずつ分注後、さらに100mM塩化マグネシウム水溶液(5μL)、および(4)の懸濁液(5μL)を添加し、37℃で1時間振とう培養した。
【0036】
(6)その後、42℃のヒートショックを5分間加え、さらに1時間、培養を継続した。
【0037】
(7)並行して、LB液体培地に1.5w/v%の寒天末を加えてオートクレーブし、50℃まで温度が低下した時点で0.00125w/v%のテトラサイクリンを混和後、直ちに直径9cmのシャーレに20mLずつ分注して室温まで冷却することにより、テトラサイクリン含有LBプレートを作製した。
【0038】
(8)(6)で得られた形質転換処理菌体(20μL)を(7)のテトラサイクリン含有LBプレートに塗布し、37℃で1日間静置培養した。
【0039】
(9)生育したコロニー数を目視でカウントし、下記に示す式1から形質転換効率、すなわち、添加したDNAあたりのテトラサイクリン耐性遺伝子が発現した菌のコロニー数を算出した。また、比較のために、配列番号1に記載の配列からなるポリヌクレオチドを挿入する前の市販ベクターpWH1520についても同様に試験した。なお、pWH1520ベクターには遺伝子が導入されているか否かを確認するためのマーカーとしてテトラサイクリン耐性遺伝子を有しており、本実験では当該遺伝子を導入遺伝子として位置付けている。
【0040】
形質転換効率(cfu)
=テトラサイクリン含有LB培地上に生育したコロニー数(cfu)
÷添加したDNA重量(μg) ・・・・・式1
【0041】
上述の試験を独立して4回行ない、その形質転換効率の平均値を図3に示した。図3に示すように、ISW株では、配列番号1に記載の配列からなるポリヌクレオチドを含む本実施形態のベクターを使用することにより、DNA重量当たりの形質転換効率は10倍以上向上した(図3(1))。また、形質転換効率が低いとされるchungkookjang株では、形質転換効率は約100倍まで向上した(図3(2))。従って、本実施形態のベクターは、目的遺伝子の導入効率や発現効率を顕著に高めることが実証できた。
【0042】
実施例3 ベクターの脱落試験
(1)実施例2と同様な方法で、実施例1で作製したベクターpEDMS1(図2)、または市販ベクターpWH1520を用いてBacillus subtilis chungkookjang株を形質転換した。
【0043】
(2)得られた形質転換体の懸濁液(5μL)を、表2に示す組成のLB液体培地(5mL)に植菌した後、37℃で24時間振とう培養した(100rpm)。
【0044】
【表2】

【0045】
(3)(2)の菌体培養液を生理食塩水にて約25万倍希釈した後、実施例2で用いたLBプレート(ただしテトラサイクリンは除いている)に塗布し、室温で一晩静置培養した。また、上述のLBプレートにキシロースを添加したプレートにも塗布し、同様に静置培養した。各プレートでの一晩培養後のコロニー数を目視で計測し、そのコロニー数を脱落試験回数が0という意味でRとした。
【0046】
(4)表2に示すLB液体培地(5mL)に(2)の培養液(5μL)を植菌後、37℃で24時間振とう培養した(100rpm)。
【0047】
(5)得られた菌体培養液を、(3)で使用したテトラサイクリンを除いたLBプレート、および実施例2で用いたテトラサイクリン含有LBプレートで培養し、各プレートでのコロニー数を目視で計測し、下記に示す式2により導入遺伝子保持率(%)を算出した。得られた値は、脱落試験回数が1という意味でRとする。
【0048】
導入遺伝子保持率(%)
=[テトラサイクリン含有LB培地上に生育したコロニー数(cfu)
÷テトラサイクリン不含有LB培地上に生育したコロニー数(cfu)]
×100 ・・・・・式2
【0049】
(6)(4)から(5)の操作を繰り返し、n回目の脱落試験Rにおける導入遺伝子保持率(%)を同様に求めた。
【0050】
上述の試験を独立して5回行ない、その導入遺伝子保持率の平均値と標準偏差を図4に示す。市販ベクターpWH1520を用いて形質転換を行なった場合(図4(1))、キシロースによりpWH1520が有するキシロースプロモータを活性化させても、繰り返し培養をする毎に導入遺伝子保持率(すなわちテトラサイクリン耐性遺伝子発現率)が半減しており、導入したベクターが形質転換体から脱落していることがわかる。一方、ベクターpEDMS1を用いて形質転換を行なった場合(図4(2))、繰り返し培養を7回(R)行なっても(脱落試験回数7回目であっても)、導入遺伝子保持率(すなわちテトラサイクリン耐性遺伝子発現率)は50%以上(キシロースによるキシロースプロモータの活性化なし)、または80%以上(キシロースによるキシロースプロモータの活性化あり)を維持していた。なお、キシロースプロモータを挿入したベクターを用いた発現系の場合、培地にキシロースを添加しなければ、その下流に存在する遺伝子(すなわちテトラサイクリン耐性遺伝子)は発現しないと考えられるが、実際にはキシロースを添加しなくても(キシロースプロモータを活性化させなくても)、その下流に存在する遺伝子は半分程度発現する。すなわち、図4(2)の結果は、繰り返し培養によってもベクターは脱落し難く、効率良く発現していることを示す。
【0051】
以上をまとめると、配列番号1に記載の配列を含む本実施形態のポリヌクレオチドを挿入した本実施形態のベクターは、少なくとも繰り返し培養を7回行なっても、形質転換体からのベクターの脱落が生じないため、遺伝子工学的手法を用いた物質生産をする際に好ましいベクターといえる。
【0052】
実施例4 ヒトFc受容体の発現ベクターの構築
(1)特開2008−245580号公報(特許文献2)により開示された方法により、ヒトFc受容体を発現可能なベクターpECFcRを作製した。前記ベクターは、大腸菌宿主での発現量を高めるためコドンユーセジ(Codon usage)を大腸菌用に変換した、ヒトFc受容体の細胞外領域(配列番号14に記載のアミノ酸配列のうち22番目のアラニンから289番目のバリンまでの領域、以下「FcR」と略記)をコードするポリヌクレオチド(配列番号4)が挿入されている。
【0053】
(2)鋳型としてpECFcRベクターを、プライマーとして配列番号5(5’―CGGGATCCGCTGTGATTACGCTGCAACC―3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号6(5’―TTCCCAAGCTTAATGATGATGATGATGATGGACCGGGGTCGGCAGTTGAAG―3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表3に示す組成からなる反応液を調製し、PCR反応を行なった。PCR反応は、94℃で5分間の熱処理後、94℃で30秒間/62℃で30秒間/72℃で1分間の反応サイクルを25サイクル行ない、最後に72℃で7分間反応することで実施した。
【0054】
【表3】

【0055】
(3)PCR反応終了後、1%のアガロース電気泳動で確認したところ、設計通りのサイズのDNAバンドを確認することができた。
【0056】
(4)目的バンドを抽出(QIAquick Gel extraction kit:キアゲン社)後、制限酵素BamHIとHindIIIで処理を行い、制限酵素BamHIとHindIIIで消化したpNCMO2プラスミドベクター(タカラバイオ社製)に挿入し、大腸菌JM109株(タカラバイオ社)を形質転換し調製した。これをpNCMO2FcRとした。当該ベクターの構造を図5に示す。
【0057】
(5)(4)で調製したpNCMO2FcRを鋳型として、配列番号7(5’―TACATGCATGCAAAGGGGGAAATGACAAATGAAAAAAAGAAGGGTCG―3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをセンス側プライマーとして、また、配列番号8(5’―GAAGATCTTTAATGATGATGATGATGATGGACCGGGGTCGGCAGTTGAAG―3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをアンチセンス側プライマーとしてそれぞれ用いて表4に示す組成からなる反応液を調製し、PCR反応を行なうことで、キシロースプロモータのRBS配列(AAGGGGG)およびシグナルペプチドを含むFcRのDNA断片を増幅した。
PCR反応は、98℃で5分間の熱処理後、98℃で10秒間/55℃で5秒間/72℃で1分間の反応サイクルを25サイクル行ない、最後に72℃で5分間反応することで実施した。
【0058】
【表4】

【0059】
(6)PCR反応終了後、1%のアガロース電気泳動を行い、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて目的サイズのDNAバンドを抽出した。
【0060】
(7)抽出した目的バンドにあるDNAを制限酵素SphIとBglIIで消化後、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いて、あらかじめ制限酵素SphIとBglIIで消化したpEDMS1にライゲーションした。
【0061】
(8)ライゲーションしたベクターを用いて大腸菌JM109株を形質転換し、100μg/mLの抗生物質(カルベニシリン)を添加したLB寒天培地により選択された形質転換体からベクターを調製した。当該形質転換体から調製したベクターはpEDMSxylFcRと命名した。
【0062】
(9)センス側プライマーを配列番号7に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから配列番号9(5’―TACATGCATGCTAAGGAGGAACTACTATGAAAAAAAGAAGGGTCG―3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに変更した他は(5)から(8)と同様な方法により、ベクターpEDMS1に枯草菌に最適なRBS配列(AAGGAGGAA)およびシグナルペプチドを含むFcRのDNA断片を挿入して得られたベクターpEDMSuniFcRを調製した。
【0063】
(10)作製した2種類のベクター(pEDMSxylFcR、pEDMSuniFcR)について、配列番号10(5’−ATATTTAAAAGTATCATATC−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、または配列番号11(5’−GAGCGATCCTTGAAGCTGTC−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて、(遺伝子解析試薬(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit、アプライドバイオシステムズ社製)および遺伝子解析システム(Applied Biosystems 3130ジェネティックアナライザ、アプライドバイオシステムズ社製)にて、挿入されたFcRをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を確認した。
【0064】
pEDMSxylFcRおよびpEDMSuniFcRの構造ならびに作製方法を図6に示す。また、pEDMSxylFcRの塩基配列を配列番号12に、pEDMSuniFcRの塩基配列を配列番号13に、それぞれ示す。
【0065】
実施例5 FcRの発現
(1)実施例4で調製した2種類のベクター(pEDMSxylFcR、pEDMSuniFcR)を用いて、実施例2に記載の方法によりBacillus subtilis ISW1214株をそれぞれ形質転換し、形質転換体を得た。
【0066】
(2)各形質転換体を0.5%キシロース含有LB培地で24時間培養後、培養液を遠心分離し、発現したFcRを含む培養上清を分離回収した。
【0067】
(3)発現したFcRの抗体結合活性を下記に示すELISA法により測定した。
(3−1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellの濃度で固定した(4℃、18時間)。
(3−2)固定化終了後、StartingBlock Blocking Buffer(商品名)(PIERCE社)によりブロッキングした。
(3−3)洗浄緩衝液(0.2%(w/v)Tween 20、150mMのNaClを含む10mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0))で洗浄後、発現したFcRを含む培養上清を50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で適宜希釈し、固定化ガンマグロブリンと反応させた(30℃、1時間)。
(3−4)反応終了後、再度洗浄緩衝液で洗浄し、Horseradish Peroxidase(HRP)標識抗His−Tag抗体試薬(BETHYL社)を添加後、30℃で1時間反応させた。
(3−5)反応終了後、(3−3)と同じ組成の洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Substrate(KPL社)を添加後、3分間反応させた。
(3−6)1Mのリン酸溶液で反応を停止し、450nmの吸光度を測定した。
FcR定量のための標準物質として市販のヒトFcγRI(R&D SYSTEMS社製)を使用し、その吸光度との比較からFcR発現量を定量した。表5に示す通り、実施例4で調製したベクター(pEDMSxylFcR、pEDMSuniFcR)を用いて枯草菌を形質転換し、得られた形質転換体を抗生物質を含まない培地を用いて培養したところ、培養上清中にFcRを有意に発現できることが確認できた。
【0068】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)配列番号1に記載の塩基配列、または(B)配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失、付加および/もしくは置換された塩基配列からなり形質転換体からのベクターの脱落を抑制可能であるポリヌクレオチドと、
目的タンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドと、を含むベクター。
【請求項2】
前記(B)の塩基配列が、前記(A)の塩基配列と80%以上の同一性を有している塩基配列である請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記(A)の塩基配列または前記(B)の塩基配列からなるポリヌクレオチドの上流にさらに当該ポリヌクレオチドを発現させるプロモータ領域を含む、請求項1または2に記載のベクター。
【請求項4】
前記目的タンパク質がヒト受容体タンパク質である、請求項1から3のいずれか1つに記載のベクター。
【請求項5】
前記ヒト受容体タンパク質が、ヒトFc受容体またはヒトエリスロポエチン受容体である、請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のベクターを導入することにより宿主を形質転換して得られる、形質転換体。
【請求項7】
前記宿主がバチルス属細菌である、請求項6に記載の形質転換体。
【請求項8】
請求項6または7に記載の形質転換体を培養し、当該形質転換体により産生される前記目的タンパク質を回収することを含む、組換えタンパク質の製造方法。
【請求項9】
(ア)配列番号1に記載の塩基配列、または配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失、付加および/もしくは置換された塩基配列からなり形質転換体からのベクターの脱落を抑制可能であるポリヌクレオチドを含むベクターに目的タンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを挿入する工程、および
(イ)前記(ア)の工程により得られたベクターを宿主に導入する工程、を含む形質転換方法。
【請求項10】
配列番号1に記載の塩基配列、または配列番号1に記載の塩基配列において一つ以上の塩基が欠失、付加および/もしくは置換された塩基配列からなり形質転換体からのベクターの脱落を抑制可能であるポリヌクレオチドを含む、形質転換体からのベクターの脱落抑制剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−170331(P2012−170331A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32010(P2011−32010)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】