説明

組換えMVAおよびその生産方法

【課題】組換えMVAウィルスの生産に使用できるMVA変異体、変異MVAウィルスで感染させた宿主細胞を提供する。
【解決手段】MVA K1L遺伝子配列、そのプロモーター配列またはその機能性部分が、変異、欠失またはその両方によってMVAゲノムにおいて不活性化されている新規MVA変異体、前記変異MVAウィルスで感染させた宿主細胞。さらにDNA−ベクター構築物、変異MVAウィルスおよびDNA-ベクター構築物の使用による組換えMVAの生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えMVAウィルスの生産に使用できるMVA変異体に関し、同様に、こ
れらの変異MVAウィルスで感染させた宿主細胞に関する。本発明は、さらに、DNAベ
クター構築物、前記変異MVAウィルスおよびDNA-ベクター構築物の使用によって組
換えMVAを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクシニアウィルス(VV)は、ポックスウィルスファミリーのオルソポックスウィル
ス属に属している。ワクチニアウィルスのある株は、長い間、天然痘に対する免疫のため
の生菌ワクチンとして使用されており、例えば、Lister Institute (英国)のElstree株
があげられる。ワクチン接種に由来する合併症のため(Schar, Zeitschr. fur Praventivm
edizin 18, 4144 [1973])、天然痘は根絶されたというWHOによる1980年の宣言以
来、今日ではハイリスクの人々にのみ天然痘に対する予防接種がなされている。
【0003】
ワクシニアウィルスは、外来抗原の生産やデリバリーのためのベクターとして使用され
ている (Smith et al., Biotechnology and Genetic Engineering Reviews 2, 383407 [1
984])。これは、ワクシニアウィルスのゲノムに、DNA組換え技術によって導入された
外来抗原をコードするDNA配列(遺伝子)を内含する。ウィルスのライフサイクルに必
須ではないウィルスDNA内の部位で前記遺伝子が結合されている場合、新たに生産され
た組換えワクシニアウィルスは、感染、すなわち外来細胞に感染でき、このため結合した
DNA配列を発現することも可能となる(EP Patent Applications No. 83,286 およびNo.
110,385)。このようにして調製された組換えワクシニアウィルスは、一方では感染予防
のための生菌ワクチンとして使用でき、他方、真核細胞における異種タンパク質の調製の
ための生菌ワクチンとして使用できる。
【0004】
ワクシニアウィルスは、中でも最も広範囲にわたって評価されている生菌ベクターであ
り、組換えワクチンとしての使用をサポートする特有の特徴を有している。すなわち、極
めて安定、安価に製造でき、処理が容易であり、多数の外来DNAに適用できるという点
である。また、抗体応答と細胞毒応答の両方を誘発するという利点を有し、より自然な方
法において免疫システムへの抗原の提示を可能とし、また、広い様々な種類の動物モデル
における感染疾患を防御するベクターワクチンとしての使用も成功している。加えて、ワ
クシニアベクターは、組換えタンパク質の構造−機能の相関性を分析し、体液性および細
胞媒介免疫応答のターゲットを決定し、また、特定の疾患の防御に必要な免疫防御のタイ
プを調べるための、極めて価値のあるリサーチツールである。
【0005】
しかしながら、ワクシニアウィルスは、ヒトへの感染性を示し、試験室において発現ベ
クターとして使用することは、安全性の問題や規制に影響する。さらに、例えば、ヒトに
対する新規治療や予防への取組みのために、組換えタンパク質または組換えウィルス粒子
を生産するというような、組換えワクシニアウィルスの将来的な適用可能性は、組換えワ
クシニアベクターの増殖複製により妨げられる。文献に記載された組換えワクシニアウィ
ルスの多くは、ワクシニアウィルスの Western Reserve(WR)株に基づいている。他方
、この株は、高神経毒性であり、ヒトや動物での使用にあまり適していないことが知られ
ている (Morita et al., Vaccine 5, 6570 [1987])。
【0006】
VV標準株の安全性の問題は、in vitroでの制限された複製能力やin vivoでの無毒性
を特徴とする非常に弱毒化されたウィルス株からのワクシニアベクターの開発により対処
されている。望ましくない副作用を避けるために特別に培養されたウィルス株が長年知ら
れている。そして、トリ線維芽細胞におけるワクシニアウィルス(CVA)Ankara
株の長期連続的な継代により、改変されたワクシニアウィルスAnkara(MVA)の
培養が可能となっている(Mayr, A., Hochstein-Mintzel, V. and Stickl, H. (1975) In
fection 3, 6-14; Swiss Patent No. 568 392)。MVAウィルスは、ブタペスト条約の
要求を遵守して、CNCM(Institut Pasteur, Collectione Nationale de Cultures de
Microorganisms, 25, rue de Docteur Roux, 75724 Paris Cedex 15)に、1987年1
2月5日、寄託番号I−721で寄託された。
【0007】
MVAウィルスは、ゲノムにおける変化を決定するために、野生株CVA株と比較して
分析されている。6個の主な欠失(欠失I、II、III、IV、VおよびVI)が同定されてい
る(Meyer, H., Sutter, G. and Mayr A. (1991) J. Gen. Virol. 72, 10311038)。この改
変されたワクシニアウィルスAnkaraは、ワクチン接種に使用した際、結果として副
作用を起こさないという極めて低い毒性を示す。このため、免疫無防備状態の患者の初回
接種に特に適している。MVA株の優れた特性は、多くの臨床試験において証明されてい
る(Mayr et al., Zbl. Bakt. Hyg. I, Abt. Org. B 167, 375390 [1987], Stickl et al.
, Dtsch. med. Wschr. 99, 23862392 [1974])。
【0008】
改変されたワクシニアウィルスAnkara(MVA)は、組換え遺伝子の発現のため
に安全なウィルスベクターとして有用なツールであり、タンパク質機能のin vitro研究ま
たは抗原特異性細胞応答もしくは体液性免疫応答のin vivo誘導のような異なる目的にも
使用できる。MVAの主な利点は、ヒトや多くの哺乳類細胞における複製欠陥にかかわら
ず、高レベルの遺伝子発現が可能であることである。優れた安全性の実績を有するワクチ
ンであるMVAは、生物学的安全性レベル1での取扱いが可能であり、動物に異種抗原を
導入した際の、免疫原性および安全性が立証されており(1−8)、さらに、第1のヒト
候補ワクチンについての臨床試験が進められている(9−11)。
【0009】
新たな構築物の評価についての要求が増加しているが、ウィルスの増殖欠損や発生する
細胞障害効果の減少のため、複製コンピテント組換えワクシニアウィルスと比較した場合
、MVAベクターの生産は異なっている。組換えMVAの迅速且つ簡便な製造方法が、多
数候補構築物の相対評価を可能とするために必要である。
【0010】
親株と比較して、MVAは、K1L遺伝子のほとんどを含む親株のゲノムの約15%(
30,000塩基対)の構成を欠失している。長さ263bpの断片のみが、MVAゲノ
ムにまだ存在する。MVAのK1L遺伝子配列は、文献(Antoine, G., F. Scheiflinger
, F. Dorner, and F. G. Falkner. 1998)に開示されるように、20685−20981
の部位で、MVAゲノムにおけるORF 022Lのはじめの263bpを示す。改変さ
れたワクチニアAnkara株の完全なゲノム配列および他のオルソポックスウィルス属
との比較は、文献(Virology 244:365-396)に開示されている。
【0011】
以前より、ワクシニアウィルス宿主域遺伝子K1Lのトランジェント発現の選択に基づ
く、組換えMVAの容易且つ高効率な製造方法が開発されている。この方法は、ウサギ腎
臓RK-13細胞におけるMVA生育を助けるためのストリンジェントマーカーとなるワ
クシニアウィルスK1L遺伝子機能を用いて、トランジェンント宿主域遺伝子発現による
組換えMVAの選択に基づいている(12)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
新たなMVAベクタープラスミドの構築物とその使用は、トランジェント選択可能マー
カーとしてワクシニアウィルス宿主域遺伝子K1Lの発現カセットを備えることが開示さ
れている。これらのプラスミドは、MVAゲノムに、付加的な組換え遺伝子を安定に挿入
すること、MVAゲノム配列の正確なターゲット変異のいずれも可能とする。K1L遺伝
子をフランキングする反復DNA配列は、非選択生育条件下、相同組換えによりウィルス
ゲノムからマーカー遺伝子を除去するようにデザインされた。
【0013】
クラゲAequorea victoria由来の緑色蛍光タンパク質(gfp)遺伝子を含む異種遺伝
子配列を有する多重組換えMVAの構築のために、この簡単な選択プロトコールを使用す
る際、発明者らは、単離した組換えMVAの一部は、RK13細胞で生育できるが、目的
のターゲット遺伝子を発現しないことを観察した。多重単離MVAの分子分析において、
二つの異なる失敗が明らかとなった。すなわち、(i)組換え遺伝子の挿入ではなく、K1
Lマーカー遺伝子のみが存在する組換え遺伝子の挿入部位で、(ii)MVAゲノム内の天
然欠失II領域が、影響/トランケートされているということである(図1A)。第1の考
察は、MVAゲノムにおけるflank I遺伝子配列と、従来のトランスファープラス
ミドのflank I反復配列との間における、第1の単交雑(single cross)の事象が
原因であり、残りのflank I配列間での相同組換えという第2の事象が続き、結果
として、MVAゲノムへのK1Lマーカー配列のみの安定した挿入となる。第2の考察は
、相同組換え事象がMVAにおけるK1L遺伝子配列とトランスファープラスミドとの間
で起きる場合に生じる。後者の組換え事象の可能性は、Tscharke & Smith(13)により示
唆されている。
【0014】
そこで、本発明の目的は、前述の問題を回避した、組換えMVAの改良された生産方法
の提供である。さらに、本発明の目的は、このような組換え方法に使用できる、MVA変
異体およびDNAベクター構築物の提供である。これは、従属クレームの主題により実行
される。本発明の好ましい形態は、従属クレームに示す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、MVA K1L遺伝子配列(以下に示す断片のみからなる)、好まし
くはそのプロモーター配列またはその機能性部分が、変異、欠失またはその両方によって
MVAゲノムにおいて不活性化されていることを特徴とする、新規MVA変異体が提供さ
れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】MVAゲノム(HindIII制限地図)およびベクタープラスミドpIIIdHRのマップ図
【図1B】MVAゲノムからのK1L配列の除去を示すであって、上図は、MVAゲノムのHindIII制限地図、下図は、K1L遺伝子の断片を含む、MVAゲノム内の欠損II部位でのORFsを示す。
【図1C】新規MVAトランスファープラスミドpIIIΔHRを示す図。
【図2】HCV nonstructuralタンパク質3の遺伝子配列を含む組換えMVAの構築およびゲノム構造を示す図。
【図3】MVA-P7.5-NS3のin vitro特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のように、K1L遺伝子の長さ264bpの断片のみがMVAゲノム(コード配列
)に存在する。さらに、個々の制御配列は、約100bpの付加塩基を含む。MVA K
1遺伝子配列は、文献(Antoine, G., F. Scheiflinger, F. Dorner, and F. G. Falkner
. 1998)に記載されているように、MVAゲノムのnt20685−20981位のOR
F 022Lの部分である。このように、MVA K1L遺伝子配列および制御配列の機能
性部分の不活性化は、本発明の目的を実行するために十分であることがわかる。「不活性
化」とは、MVAゲノム内の天然欠失II領域(region of natural deletion II)におけ
る影響(affection)/トランケーション(truncation)(および、目的の遺伝子の発現
を欠くという結果)の原因となる、MVAにおけるK1L遺伝子とトランスファープラス
ミド(DNAベクター構築物)との間での相同組換えを避けるための配列における改変を
意味する。
【0018】
好ましい形態において、MVA K1L遺伝子は、好ましくは、そのプロモーター配列
もしくはその機能性部分と共に、ウィルスゲノムからの欠失により不活性化されている。
また、K1L配列機能における組換えMVAの欠陥は、例えば、K1L遺伝子に特異的な
組換えの阻害を通じてK1L配列の不活性化を導く挿入突然変異等の配列突然変異により
発生してもよい。この組換えMVAは、外来遺伝子の導入方法、および、例えば、組換え
MVAを生産する方法等、その後の形質転換株の選択方法に有益に使用できる。
【0019】
上述のように、MVAゲノムの不活性は、不活性程度を意味し、この結果、一般的に、
MVAにおけるK1L遺伝子配列とトランスファープラスミド(ベクター構築物)との間
の相同組換えを妨げることとなる。変異の場合、本発明の不活性化K1L配列とVV K
1L遺伝子との間の相同性は、50%以下であり、好ましくは10〜50%の範囲、より
好ましくは15〜40%、特に好ましくは20〜30%の範囲である。相同性0%であっ
てもよい。
【0020】
欠失による不活性の場合、欠失断片は、MVA K1L遺伝子の少なくとも100bp
を含み、より好ましくは150または200bpを含む。上述のように、全264bpを
欠失することも可能である。さらに、制御配列は、相同組換えの事象を避けるために、広
い範囲で欠失することが望ましい。コード配列および制御配列の両方からなる全K1L配
列を欠失してもよい(例えば、約360bpの欠失)。
【0021】
近年確立されたプラスミドDNAのトランスフェクション方法を使用して一次トリ線維
芽細胞(CEF)をMVAに感染させ、引き続き、ミコフェノール酸存在下で、β-ガラ
クトシダーゼを生産するウィルスの選択を行い(Sutter, G. and B. Moss. 1992, PNAS US
A 89:10847-10851.)、ウィルスゲノムから欠失したK1Lコード配列を有する変異MVA
を生産した。
【0022】
本発明の基本原理は、MVAが、誘導された適当なDNA配列(K1Lコード配列、お
よび、さらに任意で、異種タンパク質をコードするようなDNA配列)なしにRK-13
細胞に存在する間は、複製は起こらないという点である。このため、本発明の方法/MV
A変異体/DNA構築物は、組換えMVAの選択に適しており、組換えMVAの効率良い
生産のツールとして使用できる。
【0023】
ここで、「組換えMVA」とは、例えば、DNA組換え技術により遺伝的に変化したM
VAを意味し、これは、例えば、ワクチンとして、または、発現ベクターとしての使用に
適用できる。
【0024】
本発明によれば、組換えMVAワクシニアウィルスは、以下のように調製できる。しか
しながら、当業者は、本発明の範囲内で技術常識に基づいて変更できると理解できる。さ
らに、ここで述べる文献は引用により取り入れる。
【0025】
ワクシニアウィルス(VV)K1Lタンパク質またはK1L由来ポリペプチドをコード
するDNA配列、および、例えば、MVAゲノム内の欠失III等の天然に発生する欠失の
ような非本質的な部位をフランキングするDNA配列によって両側がフランキングされた
外来ポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNA構築物は、細胞に導入され、好ま
しくは、真核細胞に導入される。好ましくは、鳥類、哺乳類およびヒト細胞が使用できる
。好ましい真核細胞は、相同組換えが起きるように、本発明の変異MVAで感染させたB
HK-21(ATCC CCL-10)、BSC-1(ATCC CCL-26)、CV-1(E
CACC 87032605)またはMA14(ECACC 85102918)細胞である
。さらに好ましい宿主細胞は、トリ線維芽細胞、ウズラ線維芽細胞、QT-9細胞、ベロ
細胞、MRC-5細胞、B-細胞またはヒト一次細胞(例えば、一次線維芽細胞、樹状細胞
である。
【0026】
上述のように、DNA構築物は、VV K1L遺伝子または機能的に等しい遺伝子をコ
ードする配列を含む。本発明において機能的に等しいとは、機能を変化することなく、V
V K1L遺伝子の核酸と比較した場合に、1以上の置換、挿入および/または欠失を含
むような核酸を意味する。これらは好ましくは1であり、2、3、4またはそれ以上のヌ
クレオチド、5’末端、3’末端または核酸配列内において欠失し、これらのヌクレオチ
ドは、他により置換されてもよい。本発明によれば、VV K1Lと同等のタンパク質を
コードする核酸は、例えば、オリジナルのVV K1L遺伝子(上記)の核酸との相同性
が、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%または95%である。
【0027】
このような関係において、特に、例えば、“サイレント”チェンジと呼ばれる配列内で
の欠失、挿入および/または置換がなされた、VV K1Lタンパク質と同等なタンパク
質をコードするVV K1L遺伝子の変異体は、本発明の部分とみなされる。
【0028】
例えば、核酸配列におけるこのような変化は、同等のアミノ酸で置換することが考えら
れる。例えば、保存アミノ酸置換のように、類似する構造および/または化学特性である
類似アミノ酸で1つのアミノ酸を置換するアミノ酸置換が好ましい。
【0029】
アミノ酸置換は、関連する残基の極性、荷電、溶解性、疎水性、親水性および/または
両親媒性(親媒性)の特性の類似性に基づいて行うことができる。例えば、疎水性アミノ
酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリ
プトファンおよびメチオニンである。極性、中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオ
ニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む。正電荷(塩基性)
は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンを含む。負電荷アミノ酸は、アスパラギン酸お
よびグルタミン酸を含む。
【0030】
「挿入」または「欠失」は、通常、1〜5アミノ酸の範囲である。許される変異の程度
は、組換えDNA法を用いたポリペプチド分子におけるアミノ酸の挿入、欠失または置換
の順序的な適用を通じて経験的に決定できる。結果として得られる変異体は、生物活性で
試験できる。
【0031】
タンパクのN末端およびC末端に影響するヌクレオチド変化は、通常、タンパク質活性
を変化しない。これらの部分は、通常、生物活性に関与しないからである。示唆された修
飾は、それぞれ、技術分野の範囲であり、コードされる産物の生物活性の維持に基づく範
囲である。
【0032】
DNA構築物が、真核細胞に導入され、K1LコードDNAおよび外来DNAが、ウィ
ルスDNAと結合すると、例えば、RK-13細胞のようなウィルス成育をサポートする
K1L機能を必要とする細胞内での継代を通じて、所望の組換えワクシニアウィルスMV
Aを単離できる。組換えウィルスのクローニングは、プラーク精製のような公知技術で可
能である(Nakano et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 15931596 [1982], Franke
et al., Mol. Cell. Biol. 19181924 [1985], Chakrabarti et al., Mol. Cell. Biol. 3
4033409 [1985], Fathi et al., Virology 97105 [1986])。
【0033】
挿入されるDNA構築物は、鎖状でも環状でもよい。環状DNAが好ましく使用される
。特に好ましくはプラスミドの使用である。
【0034】
DNA構築物は、例えば、MVAゲノム(Sutter, G. and Moss, B. (1992) Proc. Natl
. Acad. Sci. USA 89, 1084710851)内の欠失III部位、MVAゲノム内のK1Lを遺伝子
工学で欠失させた部位、または、本発明の変異MVAゲノム内の非必須部位であるような
、非必須部位の左右をフランキングする配列を含んでもよい。
【0035】
外来DNA配列は、例えば、自然に欠損が生じるような、非必須部位をフランキングす
る配列の間に挿入されてもよい。
【0036】
外来DNA配列は、治療用ポリペプチドをコードする遺伝子でもよい。前記治療用ポリ
ペプチドは、ワクチン接種の目的または治療もしくは科学的に価値のあるポリペプチドの
生産に好ましく使用できる、例えば、抗体ポリペプチド、ケモカイン、サイトカインもし
くはインターフェロン等の分泌タンパク質、または、病原性物質由来のポリペプチドであ
る。病原性物質は、生物における多種多様な非限定的な腫瘍細胞や、疾患の原因となり、
これにより病理学的発達を導く、ウィルス、細菌および寄生虫があげられる。このような
病原性物質の例は、Davis, B.D. ら(Microbiology, 3rd ed., Harper International Edi
tion)により報告されている。病原性物質の好ましい遺伝子は、インフルエンザウィルス
、はしか呼吸性シンシチウムウィルス(measles and respiratory syncytial viruses)
、デング熱ウィルス、例えば、HIV IおよびHIV IIのようなヒト免疫不全ウィルス
、例えば、HCVやHBV等のヒト肝炎ウィルス、ヘルペスウィルス、パピローマウィル
ス、プラスモジウムマラリア原虫、および、結核を引き起こすマイコバクテリアの遺伝子
等である。
【0037】
腫瘍関連抗原をコードする好ましい遺伝子は、例えば、チロシナーゼ、チロシナーゼ関
連タンパク質1および2等のメラノーマ関連分化抗原、例えば、MAGE-1、-2、-3
およびBAGEのような腫瘍精巣(cancer testes)抗原、および、Her-2/neu、
MUC-1ならびにp53のような、ガンにおいて過剰発現する非変異共用(non-mutated
shared)抗原の遺伝子である。
【0038】
外来DNA配列または遺伝子を発現するために、DNAに存在する遺伝子の翻訳に必要
とされる制御配列が必要である。このような制御配列(プロモーターと呼ばれる)は、当
該技術分野において公知である。例えば、EP-A-198,328に開示されるワクシニ
ア11kDa遺伝子、EP-A-110,385に開示されるプロモーターのような、ワク
シニアウィルスに特異的なプロモーター、もしくは、ワクシニアウィルスに特異的な転写
を可能にする異種ポックスウィルスプロモーター、またはワクシニアウィルスに特異的な
転写を可能にする合成プロモーター等があげられる。
【0039】
好ましい対応において、本発明のDNA−ベクター構築物は、以下の
・ VVのK1Lコード配列を含むK1Lマーカー遺伝子および転写ユニット、好ましく
は、その真正プロモーターの転写制御配列を含む、
・ 相同組換えによって組換えMVAから前記マーカーを後に除去するための、K1Lマ
ーカー遺伝子をフランキングする2つのDNA配列、好ましくは、2つの同一挿入DNA
断片(例えば、E.coli LacZ由来)、
・ クローニングサイト、好ましくは、任意に異種遺伝子が挿入されるマルチプルクロー
ニングサイト、
・ ワクシニアウィルスに特異的な転写のためのプロモーター、好ましくはワクシニアウ
ィルス誘導プロモーター、またはワクシニアウィルスに特異的な転写を可能にする異種ポ
ックスウィルスプロモーター、または、ワクシニアウィルスに特異的な転写を可能とする
合成プロモーター、
という機能性関連組成(functionally linked components)を含み、
前記組成が、上述の本発明の変異MVAゲノム内の非必須部位、MVAゲノム内の欠失
III部位、または、MVAゲノム内のK1Lを遺伝子工学で欠失させた部位への、外来遺
伝子の標的挿入に必須である2つのMVA-DNA配列によりフランキングされている。
【0040】
DNA構築物は、例えば、カルシウムリン酸沈殿法 (Graham et al., Virol. 52, 4564
67 [1973]; Wigler et al., Cell 777785 [1979])、エレクトロポレーション法 (Neumann
et al., EMBO J. 1, 841845 [1982])、マイクロインジェクション法(Graessmann et al
., Meth. Enzymology 101, 482492 (1983))、リポソーム法 (Straubinger et al., Meth
ods in Enzymology 101, 512527 (1983))、スフェロプラスト法 (Schaffner, Proc. Natl
. Acad. Sci. USA 77, 21632167 (1980))、または、当該技術分野の公知の方法であるト
ランスフェクションによって細胞に導入できる。カルシウムリン酸沈殿法によるトランス
フェクションが好ましく使用できる。
【0041】
ワクチンの調製のため、本発明により生産されるMVAワクシニアウィルスは、生理学
的に許容できる形状に変化してもよい。これは、天然痘に対するワクチン接種に使用する
ワクチン調製における長年の経験に基づいて行うことができる(Kaplan, Br. Med. Bull.
25, 131135 [1969])。一般的に、組換えMVA約106〜108粒子が、アンプル(好ま
しくはガラスアンプル)において、2%ペプトンおよび1%ヒトアルブミンを含むリン酸
緩衝生理食塩水(PBS)100ml中で凍結乾燥される。凍結乾燥は、非経口投与に適
した希釈剤(マンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトース、またはポリビニ
ルピロリドン)または他の助剤(抗酸化剤、安定化剤等)を含んでもよい。そして、ガラ
スアンプルは密封し保存できる。好ましくは−20℃で数ヶ月である。
【0042】
ワクチン接種のため、凍結乾燥物は、0.1〜0.2mlの水溶液(好ましくは生理食
塩水)に溶解でき、例えば、皮内接種により非経口的に投与できる。本発明のワクチンは
、好ましくは皮内注射される。わずかな腫れ物および赤味、時々痛みが、注射部位に見ら
れる(Stickl et al., supra)。投与方法、投与量や投与数は、当業者により最適化でき
る。外来抗原に対する高いレベルの免疫応答を得るためには、長期間に渡り数回ワクチン
を投与することが適切な手法である。
【0043】
要約として、組換えMVAの生産に関する本発明の方法は、変異MVAで上述のように
宿主細胞を感染させる工程、本発明のDNAベクター構築物で前記宿主細胞をトランスフ
ェクトする工程、および、ウサギ腎臓RK-13細胞、または、MVAもしくは請求項1
記載の変異MVAの増殖生育を可能とするK1L遺伝子機能を本質的に必要とする他の細
胞の生育により、回復したMVAを選択する工程を含む。
【0044】
図面の簡単な説明
図1:K1Lに基づく宿主範囲の選択の可能なpit-fallおよびそれらの除去に関する図

(A)MVAゲノム(HindIII制限地図)およびベクタープラスミドpIIIdHRのマ
ップ図。欠失II部位:K1L遺伝子の断片(斜線のボックス)を含むORFsの表示。欠
失III部位:flank-Iおよびflank-IIは、MVAゲノム内の欠失III部位への外
来遺伝子のターゲット挿入に必須であるMVA-DNA配列である。flank-1-re
pは、相同組換えによりK1L発現カセットの欠失を可能とするflank-Iの右末端
に相同の283bp反復MVA-DNA断片の部分を示す。K1Lマーカー:真正のプロ
モーターを含むK1L遺伝子配列、Pvv:ワクシニアウィルス特異的プロモーター、MC
S:マルチプルクローニングサイト。1および2:通常のK1L選択を用いた潜在的に不
必要な相同組換え事象(点線で示す)。(B)MVAゲノムからのK1L配列の除去。上
は、MVAゲノムのHindIII制限地図、下は、K1L遺伝子の断片(斜線のボックス
)を含む、MVAゲノム内の欠損II部位でのORFsを表す。pIInewLZ-gpt-de
l:K1L欠失プラスミド、261bpK1L断片をフランキングするMVA配列(N2
LおよびK2L遺伝子配列)を有する、N2L-rep:N2L ORFの5’領域の31
5bp反復、P11:ワクシニアウィルス後期プロモーター、P7.5:ワクシニアウィ
ルス早期/後期プロモーター、LacZ:β-ガラクトシダーゼをコードするE.col
i LacZ遺伝子、gpt:キサンチン-グアニン-ホスホリボシル-トランスフェラーゼ
をコードするE.coli gpt 遺伝子。下は、MVA−IInewの欠損II領域を示す。
(C)新規MVAトランスファープラスミドpIIIΔHR。flank-Iおよびflan
k-IIは、MVAゲノム内の欠損II部位への外来遺伝子のターゲット挿入に必須のMVA-
DNA配列である。K1L-マーカー:真正のプロモーターを含むK1L遺伝子配列、Pv
v:ワクシニアウィルス特異性のプロモーター、MCS:マルチプルクローニングサイト。
同一のlacZ-誘導DNA断片(del)の2つのコピーは、相同組換えにより組換え
MVAから選択性マーカーを後に除去するために、K1Lマーカー遺伝子のそれぞれの末
端に位置している。
【0045】
図2:HCV nonstructuralタンパク質3の遺伝子配列を含む組換えMVAの構築およ
びゲノム構造
制限エンドヌクレアーゼHindIIIに対するMVAゲノムの概略地図を上に示す。HC
Vコード配列は、ワクシニアウィルス早期/後期プロモーターP7.5の転写制御下に置
かれており、MVAゲノム内の欠失III部位で相同組換えにより挿入されている。fla
nk1およびflank2は、欠失III部位に隣接するMVA-DNA配列であり、MVA
ゲノムへの組換えをターゲットとするために働く。Rec2は、flank1の末端に対
応し、相同組換えにより最終的な組換えウィルスのゲノムからK1L選択性マーカーを除
去するための、283bp反復MVA-DNA配列の部分を示す。組換えMVA-HCV-
NS3のゲノム構造の説明は以下に示す。
【0046】
図3:MVA-P7.5-NS3のin vitro特性
左図:欠失III部位に挿入された遺伝子配列およびNS-3特異的配列をモニターする、
ウィルスDNAのPCR分析。野生型MVAのゲノムDNA、MVA-HCV-NS3およ
びトランスファープラスミドpIII-dHR-P7.5-NS3を、アガロースゲル電気泳動
により分離した特有のDNA断片の増幅のため、鋳型DNAとして使用した。1-kB-L
adder(Gibco)をマーカーとして使用した(レーン1)。右図:CEF細胞に
10 IU/細胞のMVAまたはMVA−P7.5-NS3を感染させ、24時間宿主感染
を行った。溶解細胞からのタンパク質は、SDS-10%PAGEで分離し、ポリクロー
ナルHCV特異的抗血清を用いたウェスタンブロットにより分析した。部位およびタンパ
ク質標準の分子量(kDa)は、レーンMWに示す。
【0047】
以下に示す実施例は、本発明のさらなる理解に貢献するものであるが、本発明を実施例
の主題に限定するためのものではない。
【実施例1】
【0048】
実施例
トランジェントK1L選択技術を改良するため、発明者らは、K1Lを有さないMVA
の構築(例:MVA(IInew)、図1B)および新規DNAベクター構築物(トランスフ
ァープラスミド)(例:pIIIΔHR、図1C)のデザインという2つの手段を採用した。
【0049】
1.ウィルスの生育および精製
1.1 MVAおよびMVA変異ウィルスの生育
MVAウィルスは、トリ胚線維芽(CEF)培養において原株であるCVA株の連続継
代により生産される、非常に弱毒化されたワクチンウィルスである。ワクシニアのMVA
株の生産、特性および使用に関する沿革の一般的なレビューとして、Mayrら(Mayr et al
. in Infection 3, 614 [1975].)により開示された要約を参照することができる。CE
Fへの適合のため、他の細胞システムにおけるMVAウィルスの生育は、非常に制限され
る。容易にセルラインを維持できるという特徴を示す乳児ハムスター腎臓細胞(BHK−
21)は、高効率CEFのように、MVA生育、組換え遺伝子の優れた発現をサポートし
、発現ベクターおよび生菌組換えワクチンの発展において、標準化されたMVAの生育の
ために推奨される(Drexler et al. 1998, J. Gen. Virol., 79, 347-352)。
【0050】
MVAウィルスは、一般にCEF細胞で生育され、その宿主細胞に適応する。CEF細
胞の調製のため、インキュベートした鶏卵から11日胚を単離し、四肢を除去し、胚を小
さな断片にカットして、室温で2時間、25%トリプシン含有溶液内でゆっくり解離させ
た。得られた細胞懸濁を、5%ウシ胎児血清(FCS)、ペニシリン(100units
/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)および2mMグルタミンを含む等量
の培地I(MEMイーグル:例えば、Gibco(Basle, Switzerland;Order No. 0721500)
より入手可能)に希釈し、セルスクリーン(例えば、Technomara AG(Zurich, Switzerlan
d;Order No. Bellco 1985;150 mesh)より入手可能)を通してろ過した。そして、ベン
チ遠心機(Hermle KG, D7209 Gosheim, FRG)において、室温で5分、2000rpmの遠
心により、細胞を沈殿させた。細胞沈殿物を1/4量の培地Iにより回収し、この方法に
より得られたCEF細胞を細胞培養皿に撒いた。これらを、所望の細胞密度に応じて、1
〜2日、37℃で、CO2インキュベーターにより培地中で生育させ、直接、または、さ
らに1〜2細胞継代の後、感染に使用した。初代培養の調製の明確な記載は、R.I. Fresh
neyによる「“Culture of animal cell", Alan R. Liss Verlag, New York [1983] Chapt
er 11, page 99 et seq.」に見出すことができる。
【0051】
本発明のMVA変異は、10%ウシ胎児血清(FCS)を添加した最小必須培地(ME
M)で生育させたCEF細胞または乳児ハムスター腎臓BHK−21細胞(American Type
Culture Collection ATCC CCL-10)で定法により増殖させる。BHK−21細胞は、37
℃、5%CO2の湿雰囲気下に維持させた。
【0052】
ウィルスは、以下に示すようにして感染に使用した。細胞を175cm2細胞培養ボト
ルで培養した。80〜90%気密で、培地を除去し、リン酸緩衝食塩水(PBS/Dul
becco;例えば、Animed AG(Muttenz, Switzerland, Order No. 23.100.10)のMV
A懸濁液(細胞あたり0.01感染粒子、0.01ml/cm2)とともに、細胞を1時
間インキュベートした。それから、培地を添加し(0.2ml/cm2)、細胞の約80
%が丸くなるまで、約2〜3日間、37℃で前記ボトルをインキュベートした。更なるプ
ロセス(精製等)の前、溶解したウィルスは、細胞および培地とともに、処理することな
く前記細胞培養ボトル中で−30℃に保存した。
【0053】
1.2 ウィルスの精製
出来るだけ精製され、宿主細胞に特異的な成分を含まないウィルス調製物を得るために
行われる精製工程は、MVAおよびWRウィルスで同一とした(Joklik, Virology 18, 91
8 [1962], Zwartouw et al., J. gen. Microbiol. 29, 523529 [1962])。感染させて−3
0℃で保存した細胞培養を解凍し、残存細胞を振り落とすか、プラスチック基板でかき取
り、細胞およびウィルスを遠心分離によって培地から除去した(Sorvall centrigue、GS
Aローター、1時間、500rpm、10℃)。ウィルスおよび細胞粒子からなる沈殿物
を、1回PBS(沈殿量の10〜20倍)に懸濁し、懸濁液を上述のように遠心分離した
。新たな沈殿物を10倍量のRSB緩衝液(10mM TrisHCl(pH8.0)、
10mM KCl、1mM MgCl2)に懸濁し、残存している無傷細胞を分裂させ、細
胞膜からウィルス粒子を遊離させるために、懸濁液を超音波(4mm直径チップを備えたLa
bsonic 1510、Bender and Hobein(Zurich, Switzerland);2×10秒、60ワット、
室温)で簡単に処理した。細胞核および大きな細胞デブリスを、後の簡単な懸濁液の遠心
分離において除去した(Sorvall GSAローター、DuPont Co., D6353 Bad Nauheim, FRG;
3分、3000rpm、10℃)。沈殿物は、上述のように、再度RSB緩衝液に懸濁し
、超音波処理、遠心分離処理を行った。遊離ウィルス粒子を含む回収した上清をあわせて
、35%スクロース含有10mM Tris−HCl(pH8.0)10mlからなるパ
ッドに層状に広げ、そして、Kontron TST 28.38/17 ローターで遠心分離した(Kontron In
strumente, Zurich, Switzerland; Beckman SW 27 rotorに相当;90分、14,000
rpm、10℃)。上清をデカンタし、ウィルス粒子を含む沈殿を10mM Tris−H
Cl(pH8.0)10mlで回収し、超音波(2×10秒、室温、上述の機器)による簡
単な処理でホモジネートし、さらなる精製のためにステップグラジェントに供した。この
グラジェントステップは、それぞれ、スクロースの10mM Tris−HCl(pH8
.0)溶液5ml(スクロース濃度ステップ:20%、25%、30%、35%および4
0%)の組成とした。グラジェントは、Kontron TST 28.38/17ローターを用いて、14,
000rpm、10℃、35分で遠心した。この遠心後、ウィルス粒子を含むいくつかの
分離ゾーンが、30%〜40%スクロースの間におけるグラジェント領域でみられた。こ
の領域をグラジェント(10ml)から吸い上げ、スクロース溶液をPBS(20ml)
で希釈し、ウィルス粒子を遠心分離によってそこから沈殿させた(Kontron TST 28.38/17
ローター、90分、14,000rpm、10℃)。純粋なウィルス粒子でほぼ構成され
ている沈殿を、ウィルス濃度が平均1〜5×109pfu/mlに相当するようにPBS
で回収した。精製されたウィルス原液は、後続の実験のため、直接またはPBSで希釈し
て使用した。
【0054】
2.変異MVAウィルスの構築および特性
2.1 K1L欠失プラスミド
MVAゲノムから、MVA ORF 022L(Antoine, G., F. Scheiflinger, F. Dor
ner, and F. G. Falkner. 1998. Virology 244:365-396に開示されているように、全欠失
配列は、MVAゲノムのnt20719〜21169から構成される)のプロモーター配
列とともに、残りの263bpのK1L配列を除去するために、発明者らは、欠失プラス
ミドpIInewLZ-gpt-del(pUCII−LZのflank 1)(14)を構築した。こ
のプラスミドは、MVAゲノム内の欠失II部位(the site of deletion II)への相同組
換えに予め使用されるものであり、K1L遺伝子を含まず、以下のPCRによって単離さ
れた新たなflank(K2L)により置換されている。前記PCRは、MVAゲノム遺
伝子から、プライマーIIf1newAおよびIIf1newBを用いて行われる。
IIf1newA:5' CAG CTG CAG CGG CCG CCT TAC ACC GTA CCC 3' (SEQ ID NO: 1)
IIf1newB:5' CAG GCA TGC GTA GAA CGT AGA TCC GG 3' (SEQ ID NO: 2)
さらに、N2Lオープンリーディングフレーム(ORF)の5’領域315bp反復(以
下のプライマーdelIIAおよびdelIIBを用いたPCRにより単離)は、LacZ-gpt-カ
セットの下流に挿入され、これによってpIInewLZ-gpt-delが作製され、N2L
遺伝子配列の相同組換えによりマーカーカセットを欠失できる。
delIIA:5' CAG CTG CAG CCA TAA TGG TCA ATC GCC 3'
(SEQ ID NO: 3)
delIIB:5' CAG GCG GCC GCG GTA TTC GAT GAT TAT TTT TAA CAA AAT AAC 3'
(SEQ ID NO: 4)
【0055】
2.2 MVA変異の生成
MVA(IInew)は、MVA(クローン分離株F6(clonal isolate F6))を感染させた
初代トリ線維芽(CEF)へのpIInewLZ-gpt-del DNAのトランスフェクショ
ンによって生産され、続いて、上述のような(7)ミコフェノール酸存在下でβ−ガラク
トシダーゼを生産するウィルスの選択が行われた。組換えMVAの選択後、選択プレッシ
ャーを除去し(selective pressure was removed)、マーカーフリーのウィルスを単離し
た(図1B)。
【0056】
3. 組換えMVAウィルスの生産
3.1 ベクタープラスミドの構築
さらに、MVAトランスファープラスミドにおけるMVAゲノム配列とMVA反復配列
との間での相同組換えの可能性を排除するために、我々は、lacZ遺伝子由来の2つの
短い216bp反復配列により挟まれた、K1Lマーカーカセットを含む新たなプラスミ
ドpIIIΔHRをデザインした。
【0057】
K1Lマーカーカセット、その真正プロモーターの転写制御下における完全なK1Lコ
ード配列は、ワクシニアウィルスWestern Reserve株(Dr. B. Moss(LVD-NIH, Bethesda M
D, USA)より提供)のゲノムDNA由来1100bpDNA断片として、オリゴヌクレオ
チドK1L-5'-3 CAG CAG CCC GGG TGC GAT AGC CAT GTA TCT ACT AAT CAG (SEQ ID NO: 5)
およびK1L-3'-1 CAG CAG CCC GGG GGA AAT CTA TCT TAT ATA CAC (SEQ ID NO: 6)を用い
たPCRにより増幅した(制限酵素SmaIの部位を下線で示す)。
【0058】
この両末端に同方向繰り返しを有するK1Lマーカーカセットは、先に開示(12)さ
れたpΔK1Lより切り離し、pIIIΔHR(図1C)を生産するために、pIIIdHRに
K1Lマーカーおよびflank I反復に代えて挿入した。最終のMVA組換えウィル
スのゲノムは、ターゲット遺伝子配列および1つのLacZ遺伝子断片を含む。付加する
外来DNAの挿入は、結果として「無害(clean)」ではないベクターウィルス生じ、さ
らに、この挿入配列は、組換えMVAの簡便な同定のために、一般的な遺伝子マーカーと
して働くこともできる。
【0059】
3.2 組換えMVAの構成および単離
感染/トランスフェクション実験における組換え効率についてのこれらの変化の効果を
測定した。CEF細胞を、MVA(F6)またはMVA(IInew)で感染し、pIIIdHR
-gfpまたはpIIIΔHR-gfpでトランスフェクトした。サンプルは、48時間で回
収され、一部分がRK13モノレイヤーの感染に使用された。3日後、感染させたモノレ
イヤーを完全に回収し、RK13細胞への第2継代を行った。3日のポスト感染で、多数
の可視/gfp蛍光細胞凝集体が、光/UV光顕微鏡観察により測定された。それから、
発明者らは、例えば、K1Lマーカーカセットやgfp遺伝子のMVAへの挿入のような
、正しい組換え事象のパーセンテージを算出するためにこのデータを使用した(表1)。
発明者により作成された通常の選択システム(MVA(F6)およびpIIIdHR-gfp
)を使用したところ、第2RK13継代後におけるK1Lおよびgfpに対するて全ての
フォーカス組換えの30.5%であることがわかった。MVAゲノムからの残りのK1L
配列の除去は、適切な組換え事象をわずかに促進した(45%、MVA(IInew)およびp
IIIdHR-gfp)。これに対して、MVAトランスファープラスミドからのflank
1反復配列の除去は、残りのK1L配列を持つMVAを使用した場合でさえ、所望の組換
え事象(71%)という明らかな増加結果となった。発明者らは、新規MVAおよびgf
pトランスファープラスミド(MVA(IInew)およびpIIIΔHR-gfp)を使用した場
合に、事実上100%効率を得た。RK13細胞におけるはじめのブラインド継代は、希
釈液のプレーティングおよびフォーカス量の測定前に行われた。これは、第1RK13継
代におけるGFPポジティブ細胞凝集体の測定をする際、結果が適切な組換え事象の高い
数値を示唆し、さらに、次の継代に入る時、約半分のウィルス単離体が、GFPポジティ
ブウィルスフォーカスを誘導できないことが観察されたためである。この観察は、おそら
く不安定な単一組換え事象および/またはキャリーオーバープラスミドDNA由来のとラ
ンジェントgfp発現に基づく。
【0060】
発明者らは、さらに、(i)MVAゲノム内の残存K1L配列の除去、(ii)トランジ
ェントマーカー遺伝子を欠失するための相同性非MVA配列を有する新規MVAトランス
ファープラスミドのデザインによって、K1Lに基づく選択技術を改良した。各方法は、
異なる程度であっても、すでに所望の組換えウィルスの生産を改善した。修飾されたMV
Aベクタープラスミドと、K1L配列を有さないMVAバックボーンウィルスとの組み合
わせは、効率的な選択およびターゲットゲノム部位への遺伝子の正確な移動を可能とし、
事実上、MVA組換えウィルスのみを単離することを可能とする。
【0061】
4.rMVAの生産/選択の方法
HCV-J株(遺伝子型1b)のnonstructural 3(NS3)オープンリーディングフ
レーム(ORF)を発現する組換えMVA(rMVA)の構築は、内因性K1L配列を欠
くMVA親ウィルス(MVA-IInew)を基礎としてrMVAを生産し、異種、非MVA反
復要素(LacZ)を有するプラスミドを使用する、我々の新規技術の有益な使用の実施
例として供給できる。はじめから、我々は、Staib C.,ら(Staib C., et al. 2000, Biot
echniques 28:1137-1148)に開示されているような我々の通常の宿主範囲選択プロトコー
ルを使用する、HCV-J株(遺伝型1b)のHCV NS3遺伝子(MVA-HCV/N
S3)の発現のためのrMVAの生産を試みていた。
【0062】
HCV cDNAを含むプラスミドは、慢性肝炎の日本人患者由来であり、京都大学(D
r. Kunitada Shimotohno)より入手した。これを、PCR増幅を用いたNS3遺伝子 (H
CV ポリプロテインアミノ酸1028−1658)の調製に使用し、また、対応するPC
R産物をMVAトランスファーベクターpIII-dHR-P7.5(図2)へのクローニン
グのために使用した。MVA(clonal isolate F6)でのCEFモノレイヤーの感染なら
びにpIII-dHR-P7.5-NS3でのトランスフェクションの後、選択マーカーとして
K1Lを使用して、RK13細胞におけるいくつかのプラーク精製工程を行った。我々は
、真の(bona fide)組換えウィルスを得ることができなかった。我々は、rMVAゲノ
ムの欠失3(del3)部位内に安定に結合したK1L配列のみを有するMVAを単離し
たが、安定に生育するウィルス継代は得られなかった。改善策として、我々は、改良した
新規K1L選択技術の使用を決定し、NS3遺伝子配列を新規MVAプラスミドpIII-Δ
HR-P7.5にクローニングし、相同組換えによる発現カセットの結合のために、レセ
プターウィルスとしてK1Lフリーの改善された単離MVA-IInewを使用した。戦略の変
更により、数回のプラーク精製ステップのみで所望の組換えウィルスMVA-HCV/N
S3を生産し単離することができた。図3は、ちょうどMVAゲノムdel3部位でのN
S3 ORFの適切な挿入および完全なK1L選択マーカーカセットの除去をモニターす
るPCR分析(左図)によるrMVAのin vitro特性を示す。さらに、新たに生産された
組換えMVA-HCV/NS3は、ウェスタンブロット分析(図3、右図)に示すように
、CEF細胞の感染において、適切なNS3ポリペプチドを生産できる。MVA-HCV
/NS3は、現在、ヒトのHCV感染に対する予防および/または治療の改善のための、
有望な候補ベクターウィルスとして評価できる。重要な新規のrMVA構築物は、標準方
法によって作製することは不可能でないとしても非常に困難であると推測されるが、本特
許出願に開示された我々の改善した方法論により、実際に重要な新規のrMVA構築物を
得ることが今や可能となった。
【0063】
参考文献
1. Amara, R. R., Villinger, F., Altman, J. D., Lydy, S. L., SP, O. N., Stapra
ns, S. I., Montefiori, D. C., XU, Y., Herndon, J. G., Wyatt, L. S., Candido, M.
A., Kozyr, N. L., Earl, P. L., Smith, J. M., Ma, H. L., Grimm, B. D., Hulsey, M.
L., Miller, J., McClure, H. M., McNicholl, J. M., Moss, B., and Robinson, H. L.
(2001). Control of a Mucosal Challenge and Prevention of AIDS by a Multiprotein
DNA/MVA Vaccine. Science 292(5514), 69-74.
2. Belyakov, I.M., L.S. Wyatt, J.D. Ahlers, P. Earl, C.D. Pendleton, B.L. Kel
sall, W. Strober, B. Moss and J.A. Berzofsky. 1998. Induction of a mucosal cytot
oxic T-lymphocyte response by intrarectal immunization with a replication-defici
ent recombinant vaccinia virus expressing human immunodeficiency virus 89.6 enve
lope protein. J. Virol. 72:8264-8272.
3. Drexler, I., E. Antunes, M. Schmitz, T. Wolfel, C. Huber, V. Erfle, P. Rie
ber, M. Theobald and G. Sutter. 1999. Modified vaccinia virus Ankara for deliver
y of human tyrosinase as melanoma-associated antigen: induction of tyrosinase- a
nd melanoma-specific human leukocyte antigen A*0201-restricted cytotoxic T cells
in vitro and in vivo. Cancer Res. 59:4955-4963.
4. Hirsch, V.M., Fuerst, T.R., Sutter, G., Carroll, M.W., Yang, L.C., Goldste
in, S., Piatak, M., Elkins, W.R., Alvord, W.G., Montefiori, D.C., Moss, B. and L
ifson, J.D. (1996) Patterns of viral replication correlate with outcome in simia
n immunodeficiency virus (SIV)- infected macaques: Effect of prior immunization
with a trivalent SIV vaccine in modified vaccinia virus Ankara. J. Virol. 70, 37
41-3752.
5. Moss, B. 1996. Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expr
ession, vaccination, and safety. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:11341-11348.
6.Schneider, J., S.C. Gilbert, T.J. Blanchard, T. Hanke, K.J. Robson, C.M. Han
nan, M. Becker, R. Sinden, G.L. Smith and A.V. Hill. 1998. Enhanced immunogenici
ty for CD8+ T cell induction and complete protective efficacy of malaria DNA vac
cination by boosting with modified vaccinia virus Ankara. Nat Med. 4:397-402.
7. Sutter, G. and B. Moss. 1992. Nonreplicating vaccinia vector efficiently e
xpresses recombinant genes. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10847-10851.8. Sutt
er, G., L. S. Wyatt, P. L. Foley, J. R. Bennink and B. Moss. 1994. A recombinant
vector derived from the host range-restricted and highly attenuated MVA strain
of vaccinia virus stimulates protective immunity in mice to influenza virus. Vac
cine 12:1032-1040.
9. Corona Gutierrez CM, Tinoco A, Lopez Contreras M, Navarro T, Calzado P, Va
rgas L, Reyes L, Posternak R, Rosales R. (2002). Clinical protocol. A phase II s
tudy: efficacy of the gene therapy of the MVA E2 recombinant virus in the treatm
ent of precancerous lesions (NIC I and NIC II) associated with infection of onco
genic human papillomavirus. Hum Gene Ther 13(9):1127-40
10. Hanke T, McMichael AJ, Mwau M, Wee EG, Ceberej I, Patel S, Sutton J, Tom
linson M, Samuel RV. (2002). Development of a DNA-MVA/HIVA vaccine for Kenya. Va
ccine 20(15):1995-8
11. Hill AV, Reece W, Gothard P, Moorthy V, Roberts M, Flanagan K, Plebanski
M, Hannan C, Hu JT, Anderson R, Degano P, Schneider J, Prieur E, Sheu E, Gilber
t SC. (2000).DNA-based vaccines for malaria: a heterologous prime-boost immunisa
tion strategy. Dev Biol (Basel) 104:171-9
12.Staib, C., Drexler, I., Ohlmann, M., Wintersperger, S., Erfle, V., Sutter,
G. (2000) Transient host range selection for genetic engineering of modified va
ccinia virus Ankara. BioTechniques 6,1137-42, 1144-6, 1148.
13.Tscharke, D. C., and Smith, G. L. (2002). Notes on Transient Host Range Se
lection for Engeneering Vaccinia Virus Strain MVA. BioTechniques 33: 186-188.
14. Sutter, G., Ohlmann, M., and Erfle, V. 1995. Non-replicating vaccinia ve
ctor efficiently expresses bacteriophage T7 RNA polymerase. FEBS Lett. 371(1):9-
12.
【0064】
【表1】

【0065】
表1:通常、新規MVAおよびトランスファープラスミドを使用した組換え効率
パーセンテージは、gfp発現フォーカスと光顕微鏡下で可視のフォーカスとの非として
算出した。かっこ内の数値は、各サンプルの2つの異なる10倍希釈についてのカウント
したフォーカスの絶対値を示し、3回の試験の表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MVA変異体であって、MVAゲノムにおけるK1L遺伝子配列およびそのプロモータ
ー配列、または、前記これらの配列の機能性部分が、不活性であり、好ましくは欠失また
は変異により不活性である、MVA変異体。
【請求項2】
宿主細胞であって、請求項1記載のMVAで感染された宿主細胞。
【請求項3】
宿主細胞が、真核細胞である、請求項2記載の宿主細胞。
【請求項4】
請求項3記載の真核細胞であって、トリ線維芽細胞、ウズラ線維芽細胞、QT-9細胞
、BHK-21細胞、BS-C-1細胞、MA104細胞、CV-1細胞、ベロ細胞、MRC
-5細胞、B-細胞またはヒト一次細胞(例えば、一次線維芽細胞、樹状細胞)である細胞。
【請求項5】
DNAベクター構築物であって、ワクシニアウィルス(VV)K1L遺伝子をコードする
配列、または、機能的に同等な遺伝子をコードする配列を含むDNAベクター構築物。
【請求項6】
さらに外来タンパク質またはその機能性部分をコードするDNA配列を含む、請求項5
記載のDNAベクター構築物。
【請求項7】
外来タンパク質が、治療ポリペプチドおよび病原性物質ならびにそれらの機能性部分か
らなる群由来の異種タンパク質である、請求項6記載のDNAベクター構築物。
【請求項8】
治療ペプチドが、例えば、抗体のポリペプチド、ケモカイン、サイトカインまたはイン
ターフェロンのような分泌タンパク質からなる群由来のペプチドである、請求項7記載の
DNAベクター構築物。
【請求項9】
病原性物質が、腫瘍細胞、腫瘍細胞関連抗原ならびにこれらの機能性部分、および、ウ
ィルス、細菌、原虫および寄生虫からなる群由来である請求項8記載のDNAベクター構
築物。
【請求項10】
ウィルスが、インフルエンザウィルス、はしか(measles)ならびに呼吸シンシチウム
(respiratory syncytial)ウィルス、デング熱ウィルス、ヒト免疫不全ウィルス、ヒト
肝炎ウィルス、ヘルペスウィルスおよびパピローマウィルスからなる群から選択される、
請求項8記載のDNAベクター構築物。
【請求項11】
原虫がPlasmodium falciparumである、請求項9記載のDNAベクター構築物。
【請求項12】
細菌が、結核の原因であるMycobacteriaである、請求項9記載のDNAベクター構築物

【請求項13】
腫瘍関連抗原、例えば、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク1ならびに2のよう
なメラノーマ関連分化抗原、MAGE−1、−2、−3ならびにBAGEのような腫瘍精
巣抗原、および、Her-2/neu、MUC-1ならびにp53のような、ガンにおいて
過剰発現する非変異共用(non-mutated shared)抗原からなる群から選択される、請求項
9記載のDNAベクター構築物。
【請求項14】
VV K1Lおよび外来タンパク質コード領域が、それぞれ、MVAゲノム内の非必須
部位をフランキングするDNA配列によってフランキングされている、請求項6〜13の
いずれか一項に記載のDNAベクター構築物。
【請求項15】
非必須部位が、MVAゲノムにおける欠失III部位、MVAゲノム内でK1Lを遺伝子
工学で欠失させた部位、または、請求項1記載の変異MVAゲノム内の非必須部位である
、請求項14記載のDNAベクター構築物。
【請求項16】
ベクターが、
・ VVのK1Lコード配列を含むK1Lマーカー遺伝子および転写ユニット、好ましく
は、その真正プロモーターの転写制御配列を含む、
・ 相同組換えによって組換えMVAから前記マーカーを後に除去するための、K1Lマ
ーカー遺伝子をフランキングする2つのDNA配列、好ましくは、2つの同一挿入DNA
断片(例えば、E.coli LacZ由来)、
・ クローニングサイト、好ましくは、任意に異種遺伝子が挿入されるマルチプルクロー
ニングサイト、
・ ワクシニアウィルスに特異的な転写のためのプロモーター、好ましくはワクシニアウ
ィルス誘導プロモーター、またはワクシニアウィルスに特異的な転写を可能にする異種ポ
ックスウィルスプロモーター、または、ワクシニアウィルスに特異的な転写を可能とする
合成プロモーター、
という機能性関連組成(functionally linked components)を含み、
前記組成が、請求項1記載の変異MVAゲノム内の非必須部位、MVAゲノム内の欠失
III部位、または、MVAゲノム内のK1Lを遺伝子工学で欠失させた部位への、外来遺
伝子の標的挿入に必須である2つのMVA-DNA配列によりフランキングされている、
請求項5〜15のいずれか一項に記載のDNAベクター構築物。
【請求項17】
構築物がプラスミドである、請求項5〜16のいずれか一項に記載のDNAベクター構築
物。
【請求項18】
組換えMVAの生産方法であって、
請求項1記載のMVA変異体または野生型MVAにより、MVA宿主細胞を感染させる
工程、
請求項5〜17のいずれか一項に記載のDNAベクター構築物で、前記宿主細胞をトラ
ンスフェクトする工程、および、
ウサギ腎臓RK-13細胞、または、MVAもしくは請求項1記載の変異MVAの増殖
生育を可能とするK1L遺伝子機能を本質的に必要とする他の細胞の生育により、回復し
たMVAを選択する工程を含む組換えMVAの生産方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−55840(P2011−55840A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255796(P2010−255796)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【分割の表示】特願2006−501879(P2006−501879)の分割
【原出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(597121382)ヘルムホルツ ツェントラム ミュンヘン ドイチェス フォーシュングスツェントラム フュール ゲズントハイト ウント ウンヴェルト ゲーエムベーハー (4)
【氏名又は名称原語表記】HELMHOLTZ ZENTRUM MUENCHEN DEUTSCHES FORSCHUNGSZENTRUM FUER GESUNDHEIT UND UMWELT GMBH
【Fターム(参考)】