説明

組織アンカーの迅速な配備と固定のための医療デバイス、システム、及び方法

複数の組織アンカーを送達するための、医療デバイス、システム及び関連する方法。本医療デバイスは、概括的には針と市販の針縫合糸ロックを備え、内部及び外部のシースによって使用される。本医療システムは、複数の組織アンカーと、隣接する組織アンカーの間に位置する少なくとも1つの生分解性又は吸収性のスペーサ部材を、該医療デバイスと共に含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、組織の穿孔を閉じるためなどの、体内壁に組織アンカーを配置するための医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
体内壁の穿孔は自然発生的に生じる、或いは意図的に又は無意図的に形成され得る。 永久にこれらの穿孔を閉じて、組織が適切に治癒できるようにするために、縫合糸、接着剤、クリップ、ステープルなどを用いる多数の医療デバイス及び方法が開発されてきた。そのようなデバイスの1つの分類は、一般的に組織アンカー、T字型アンカー又は臓器アンカーと呼ばれる。典型的な組織アンカーが、米国特許第5,123,914号、米国特許出願第11/946,565号、及び「組織アンカーの迅速な配備のための組織アンカーと医療デバイス(Tissue Anchors and Medical Devices for the Rapid Deployment of Tissue Anchors)」と題される、デュシャルメ(Ducharme)への米国仮出願第61/166,364号に開示されており、該出願の全内容が参照により本明細書に組み込まれている。
【特許文献1】米国特許第5,123,914号
【特許文献2】米国特許出願第11/946,565号
【特許文献3】同時係属米国特許出願第12/125,525号
【特許文献4】米国仮出願第61/166,364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の組織アンカーが穿孔を閉じるために使用することができる。複数の組織アンカーを導入針から順次押し出して配備する場合、最も遠位の組織アンカーが、隣接する組織アンカーによって直接押されるようにするために問題が生じる。すなわち、そのようにされるので、最も遠位の組織アンカーが配備される時に、近位側で隣接する組織アンカーも導入針から部分的に押し出された状態となり、容易に導入針から抜け落ちる可能性がある。多数の組織アンカーを個別に配備することは、導入針に様々な組織アンカーを個別に装填し、個別に組織アンカーを配備することになるので、面倒であり且つ時間がかかる虞がある。また、アンカーを配備するためのデバイスの位置を維持するのに困難性がある一方、新しい組織アンカーが該デバイスを通って装填され戻される。
【0004】
組織アンカーは、通常は、縫合糸に結合されたクロスバー又は幾つかのアンカー部材を含む。アンカー部材及び縫合糸は多くの形態をとることができるが、一般的には、針が組織を貫通するために使用され、組織の一方の側にアンカー部材を送り、縫合糸を組織の他方の側に延びるようにして残す。1つ以上の組織アンカーの縫合糸は、一緒に縫合糸を結ぶことによるなど、一緒に集められて、結合される。穿孔を閉じるために、縫合糸ストランドを手で互いに結びつけることは、非常に複雑で時間がかかる。例えば、内視鏡又は腹腔鏡処置などの場合のように、身体内での穿孔及び縫合へのアクセスが困難な場合は特に、医療専門家によって高いレベルの技術と調整力が要求される。手で縫合糸を結束する数多くの問題は十分に立証されている。手による縫合糸の結束のこれら及び他の問題に対処するために、様々な自動縫合結束システムが開発されてきた。残念ながら、このような自動システムは、しばしば複雑で費用がかかり、使用が困難であり、及び特定の状況での使用に限られている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、組織アンカーを送達するための医療デバイス、システム、及び関連する方法を提供する。本発明の教示に従って構成された当該医療デバイスの一実施形態では、概括的には、縫合糸に結合されているアンカー部材を有する少なくとも1つの組織アンカーを備えている。針ルーメンを有する針が、少なくとも1つの組織アンカーを摺動可能に収容できる大きさである。針と針ルーメンは、医療デバイスの長手方向軸線を画定している。
【0006】
本医療デバイスは、少なくとも1つの組織アンカーの送達後、縫合糸を固定するための針縫合糸ロックをさらに含んでいる。縫合糸ロックはプラグと保持スリーブを備えている。プラグは、第1の内部通路を画定している第1の内部壁を有する本体を持っている。保持スリーブは、第2の内部通路を画定している第2の内部壁を有する筒状本体を持っている。第2の内部通路は、そこにプラグを収容する大きさとされ、プラグと保持スリーブの第2の内部壁の間に少なくとも1つの組織アンカーの縫合糸を係合する。第1及び第2の双方の内部通路は、少なくとも1つの組織アンカーの送達中に針を摺動可能に収容できる大きさである。
【0007】
本実施形態では、内部シースは、プラグと係合可能であり、針を摺動可能に収容できる大きさの内部シースルーメンを有している。外部シースは、保持スリーブと係合可能であり、内部シースとプラグを摺動可能に収容できる大きさである外部シースルーメンを有している。内部シースの並進は、プラグを針上で摺動するようにさせる。
【0008】
また、組織アンカーを送達する方法が本発明の教示に従って提供される。この方法では、医療デバイス、例えば上記のデバイスの一つが提供される。該医療デバイスは、組織の近傍位置に送達される。内部及び外部のシースに対して針を並進させることによって、針が配備される。組織アンカーが針ルーメンを抜け出るように、針に対して組織アンカーを並進させることによって、組織アンカーが配備される。医療デバイスが、針ルーメン内に連続的に整列した複数の組織アンカーを含んでいる場合、組織アンカーを配備するステップは、複数の組織アンカーの少なくとも一部のために繰り返される。
【0009】
また、少なくとも1つのアンカーを固定する方法が本発明のさらなる教示に従って提供される。少なくとも1つのアンカーは縫合糸に結合されたアンカー部材を含む。少なくとも1つのアンカーが針内に摺動可能に配置され、針が内部シース内に摺動可能に配置され、内部シースは外部シース内に摺動可能に配置されている。内部及び外部のシースに対して針を並進させることによって針が配備される。少なくとも1つのアンカーが針ルーメンを抜け出るように、針に対して少なくとも1つのアンカーを並進させることによって、少なくとも1つのアンカーが針から配備される。少なくとも1つのアンカーの縫合糸は、縫合糸ロックで固定されている。縫合糸ロックはプラグと保持スリーブを含んでいる。プラグは、第1の内部通路を画定している第1の内部壁を有する本体を持っている。保持スリーブは、第2の内部通路を画定している第2の内部壁を有する管状本体を持っている。縫合糸は保持スリーブの第2の内部通路内に事前装填され、保持スリーブはロックされた形態で中にプラグを収容できる大きさである。第1及び第2の双方の内部通路は摺動可能に針を収容する。
【0010】
さらなる態様では、縫合糸を固定するステップは、保持スリーブとプラグを針に外挿して遠位方向に並進するステップを含む。
【0011】
本明細書に組み込まれて本明細書の一部を形成している添付の図面は、本発明の幾つかの態様を図示しており、記述と共に本発明の原理を説明するのに役立っている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の教示に従って構成された医療送達デバイスの平面図、部分的断面図である。
【0013】
【図2】本発明の教示に従って構成された医療送達デバイスの縫合糸ロックの斜視図である。
【0014】
【図3】図2に示す縫合糸ロックの一部分を形成するプラグの側面図である。
【0015】
【図4】図2に示す縫合糸ロックの一部分を形成している、保持スリーブの断面図である。
【0016】
【図5】図2に示す縫合糸ロックの斜視図であり、ロックされた形態の縫合糸ロックを示している。
【0017】
【図6】本発明の教示に従って医療デバイスを使用するための方法のステップを示している。
【図7】本発明の教示に従って医療デバイスを使用するための方法のステップを示している。
【図8】本発明の教示に従って医療デバイスを使用するための方法のステップを示している。
【図9】本発明の教示に従って医療デバイスを使用するための方法のステップを示している。
【図10】本発明の教示に従って医療デバイスを使用するための方法のステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これより図を参照してゆくが、図1は本発明の教示に従って構成された医療デバイス20を示している。医療デバイス20は概括的には針22と縫合糸ロック48を備え、これらは内部及び外部のシース24及び26によって使用することができる。医療デバイス20は、例えば、逆流性食道炎(GERD)の治療又は吻合が形成される肥満症治療において、穿孔14を閉じる又は組織を併置するために組織アンカー28a、bを組織を貫通して送達、或いは他の処置において使用するために設計されている。デバイス20は、好ましくは、針22を通ってアンカー28を該針から押し出すために延在するプッシャー25を含む。
【0019】
内部及び外部のシース24及び26とプッシャー25を介して使用される組織アンカー28a、b及び医療デバイス20は、医療システム40を形成している。即ち、医療デバイス20は多くの異なる組織アンカーを用いて利用することができるため、医療専門家が自身の選択で組織アンカーを活用できるように医療デバイス20を別個に提供することができる。一方、医療デバイス20は、「事前装填された」組織アンカー28a、bが備わっていてもよく、それによって本発明の教示による医療システム40を形成する。
【0020】
針22が針ルーメン30と医療デバイス20の長手方向軸線10を画定している。当技術分野で公知のように、他の金属、合金、及びプラスチックが針22用に使用することができるが、針22はステンレス鋼やニチノールなどの金属又は合金で構成されていることが好ましい。針ルーメン30は、そこに複数の組織アンカー28a、bを摺動可能に収容できる大きさである。特に、組織アンカー28a、bは、概括的にはアンカー部材32とそこに取り付けられた縫合糸34を備えており、アンカー部材32は縫合糸34の一部分と共に針ルーメン30内に収容されている。縫合糸34は、単一フィラメント及びマルチフィラメント線、並びに巻回及び編組線、プラスチック製ストリング、ロープ及び同種のものを含む金属線から形成されてもよいが、好ましくは、ナイロンなどの及び様々なモノフィラメントの柔軟性のある材料から形成される。縫合糸34は、好ましくは約0.20ミリメートルから約0.35ミリメートルの範囲の、最も好ましくは約0.287ミリメートルの直径を有するが、他のサイズが用いられてもよく、それに応じて大きさを縫合糸ロック48が有する。
【0021】
針22の遠位端36はまた、針22の遠位端36において長手方向に延在して長手方向に開口する針スロット38を画定している。スロット38は、そこに縫合糸34を収容できる大きさである。スロット38は、針の操作中、例えば治療の準備中に、針22の遠位端36内で組織アンカー28a、bの保持力を改良するために、該スロットに縫合糸34を摩擦係合できる大きさで係合するように構成することができる。スロット38は縫合糸34の幅以下になるサイズの幅を有してもよい。このように、針22は、針ルーメン30内に組織アンカー28a、bを保持するために縫合糸34と摩擦係合している。スロット38、即ち縫合糸34の直径よりも大きいサイズになり得るスロット38の幅の提供により、針22の尖った遠位先端37から縫合糸34を安全に保つことが好ましいが、針22がスロット38を含まなくてもよいことが認識されるであろう。
【0022】
出願人らは、複数の組織アンカーを針の遠位端から連続して配備することは、隣接して遠位方向に配置された組織アンカーの配備中に近位方向に配置された組織アンカーの早まった配備により、組織アンカーの不適切な位置決めをもたらし得ることを発見した。従って、生分解性又は吸収性スペーサ部材46は、好ましくは針ルーメン30内の組織アンカー28a、bのアンカー部材32との間に位置している。各図は2つの組織アンカー28a、bの間に配置されたスペーサ部材46を示しているが、より多くの組織アンカー28a、bが針ルーメン30内に配置されてもよく、同様に、より多くのスペーサ部材46が針ルーメン30内に配置されてもよいということが当業者によって認識されるであろう。さらに、複数のスペーサ部材46は、組織アンカー28a、bの間の距離をより大きくするために、隣接する組織アンカー28a、bの間に配置することができる。
【0023】
本明細書において、用語「吸収性」は、組織及び/又は体液と接触した際に、組織及び/又は体液に吸収される材料の機能を指す。多数の吸収性材料が、当技術分野において既知であり、任意の適切な吸収性材料を使用することができる。吸収性材料の適切なタイプの例としては、吸収性ホモポリマー、コポリマー、又は吸収性ポリマーの混合物がある。適切な吸収性材料の具体例としては、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリグリコール酸(PGA)、又はポリグリコリドなどのポリ−αヒドロキシ酸;トリ−メチレンカーボネート(tri−methlyene carbonate);ポリカプロラクトン;ポリヒドロキシ酪酸塩又はポリヒドロキシ吉草酸塩などのポリ−βヒドロキシ酸;或いはポリホスファゼンなどの他のポリマー、ポリ有機−ホスファゼン、ポリ無水物、ポリエステルアミド、ポリ−オルソエステル、ポリエチレンオキシド、ポリエステル−エーテル(例えば、ポリ−ジオキサノン)又はポリアミノ酸(例えば、ポリ−L−グルタミン酸又はポリ−L−リジン)が挙げられる。セルロース、キチン、及びデキストランなどの変性多糖類、並びに、フィブリン及びカゼインなどの変性プロタインを含む、多数の適切な天然由来の吸収性ポリマーもある。適切な吸収性材料の別の例では、生体改変可能な細胞外マトリックス材料(ECM)が含まれている。ECMの一つの好適な形態は、ブタやウシ小腸粘膜下組織(SIS)から獲得される。SISは、様々な成長因子のECMタンパク質から成る吸収性、無細胞、天然に存在する組織気質である。同様に、分解するが必ずしも身体の組織によって再吸収又は吸着されない多くの生分解性材料が当技術分野において既知であり、任意の適切な生分解性材料が使用され得る。
【0024】
組織アンカー28a、bの縫合糸34を収容できる大きさである針スロット38の長手方向の長さは、針ルーメン30内の組織アンカー28a、b及びスペーサ部材46の数と、対応する組織アンカー28a、bのアンカー部材32及びスペーサ部材46の長さに依存している。たとえば、組織アンカー28a、bのアンカー部材32がほぼ同じ長さである場合(及び複数のスペーサ部材46が使用され、それらの長さがほぼ同じである場合)、針スロット38の長さは次式で表すことができる。
【0025】
L=L(n)+L(n)−(1/2)L
【0026】
ここで、Lは針スロット38の長手方向の長さを表し、Lは組織アンカー28a、bのアンカー部材32の長さを表し、nは針ルーメン30内の組織アンカー28a、bの数を表し、Lはスペーサ部材46の長さを表し、nは針ルーメン内のスペーサ部材46の数を表す。好ましくは、スペーサ部材46の数が組織アンカー28a、bの数(n)よりも1つ少ないように、隣接する組織アンカー28a、bの間に配置された1つのスペーサ部材46がある。アンカー部材32の長さは、好ましくは約6ミリメートルと10ミリメートルの間であり、最も好ましくは約8ミリメートルである。スペーサ部材46の長さは、好ましくは約3ミリメートルと約6ミリメートルの間であり、最も好ましくは約5ミリメートルである。針22が、針ルーメン30内に配置された2つの組織アンカー28a、bと、各組織アンカーの間に配置された1つのスペース部材46を収容する1つの好ましい構成では、針22は約1.06ミリメートル(0.042インチ)の外径と約0.81ミリメートル(0.032インチ)の内径を有し、スロット38は、約12ミリメートルから約21ミリメートル、最も好ましくは約17ミリメートルの長手方向の長さを有する。現在の好ましい実施形態では、2つのアンカー及び1つのスペーサがシステム40で使用されている。
【0027】
医療デバイス20は、体内壁12を通して組織アンカー28a、bを送達した後の、組織アンカー28a、bの縫合糸34を固定するための市販の針縫合糸ロック48をさらに含んでいる。本発明の教示に従って、市販の針縫合糸ロック48は、体内壁12を通して組織アンカー28a、bを送達する間に、組織アンカー28a、bの縫合糸34が事前装着されることを可能にしている。縫合糸ロック48は概括的には、体内壁12の穿孔14を閉じるために、体内壁12の組織に対して組織アンカー28a、bの縫合糸34を固定するように協働する、ロックピン又はプラグ50、と保持スリーブ52を含む。保持スリーブ52及びプラグ50は、円形断面を有するものとして描かれているが、三角形、正方形等を含む他の断面形状が使用されてもよいことが認識されるであろう。
【0028】
図2−5に最も分かり易く示す様に、保持スリーブ52は、概括的には内部通路58を画定している内部表面56を有する管状本体54を含む。さらに本明細書において詳細に考察されるように、周辺リム60は管状本体54の遠位端において形成され、且つ保持スリーブ52の配置に使用される肩62を画定している。概括的には、保持スリーブ52は、内部通路58内に組織アンカー28a、bの縫合糸34を収容する。その後、縫合糸34は通路58内に収まって縫合糸34を締め付ける又は圧縮するように作られているプラグ50を用いて所定の位置に固定される。また、縫合糸34を固定するためにプラグ50の一部が保持スリーブ52と協働する限り、プラグ50は多様な形態(例えば、規則的な又は不規則な形状)や構成(例えば、鋳造、成形、機械加工、(ワイヤーを用いるなどの)巻回、等)を有してもよいことが認識されるであろう。
【0029】
図2−5に最も分かり易く示す様に、プラグ50は、概して摺動可能に針22を収容できる大きさである内部通路68を画定する内部表面66を有する本体64を含む。本体64と内側通路68は、長手方向軸線65を画定している。本体64はグリップ70とストッパ72を含み、各々は本体64から半径方向に延在している。図示の実施形態では、グリップ70はプラグ50の遠位端に形成されるが、該プラグは本体64の長さに沿って近位方向に移動することができる。グリップ70は、本明細書においてより詳細に考察されるように、縫合糸34を係合するために使用される環状のエッジ74を画定している。グリップ70は、環状のエッジ74の遠位方向に位置付けられた前端面76と、環状のエッジ74の近位方向に位置付けられた後続面78を含む。前端面76は縮径し、最も好ましくは、図2−3に示した(例えば、半球形の)ドーム状の表面などのように湾曲している。同時に、後続面78は長手方向軸線65に対して概ね垂直の平面である。前端及び後続の面76、78は、環状又はリング状になるようにプラグ50の内部通路68に対応する孔を有している。後続面78は図の長手方向軸線65に対して垂直に示されているが、縫合糸34の把持に適した環状のエッジ74を画定するのに十分な前端面76に対する任意の形状や角度が、用語「垂直」の使用によって本明細書に包含される。図3に示すように、本体64は、また、テーパ状の部分64a並びにグリップ70とストッパ72の間に位置する小径の部分64bを含んでいる。
【0030】
ストッパ72はグリップ70から長手方向に離間して、保持スリーブ52内のプラグ50の位置を調整するために使用される。ストッパ72は概ね遠位方向に向かう面79と近位方向に向かう面80を含む。本明細書でさらに詳細に考察されるように、近位方向に向かう面80と本体64はプラグ50を配置するために使用される肩82を画定している。ストッパ72は、グリップ70が保持スリーブ52の内部通路58を完全に通過しないように、グリップ70に相対して位置決めされる。
【0031】
これより、プラグ50と保持スリーブ52の相互接続は、縫合糸ロック48のロックされた形態を描いている図5及び図9−10を参照しながら説明してゆく(ロックされていない形態は図1−2及び図6−8に示されている)。概して、保持スリーブ52の内部通路58は、その中にプラグ50の少なくとも一部を収容できる大きさである。ロックされた形態では、本体64とグリップ70は保持スリーブ52の内部通路58内に収容されている。図10に最も分かり易く示す様に、縫合糸34はグリップ70と管状本体54の内部表面56の間で圧縮される。プラグ50が、図9−10において左から右に(即ち遠位方向に)進められる際、グリップ70のテーパ状の前端面76は、プラグ50が縫合糸34と保持スリーブ52に相対して遠位方向に並進できるようにする。しかしながら、概ね鋭い環状のエッジ74のために、縫合糸34をプラグ50に対して遠位方向に移動させることは困難である。このようにして、縫合糸34は、互いに対して、及び体内壁12の組織に対して、固定された関係で維持される。
【0032】
本明細書においてより詳細に考察されるように、縫合糸34は、一つには身体組織12の自然な弾力性により概ね張力のかかった状態にあり、該張力は概ね遠位方向に縫合糸34を引っ張ろうとしている。従って、プラグ50は、保持スリーブ52を通って進められ、縫合糸34と一緒にロックされた形態へと摺動することができ、縫合糸34の張力はまた、グリップ70を介してプラグ50とその環状のエッジ74に遠位方向に向けた力を働かせる。このように、縫合糸ロック48は、組織12に対して縫合糸34の確実な固定を促進する自発的ロックデバイスの形態である。同時に、縫合糸34は、縫合糸ロック48がロックされた形態の場合でも、縫合糸の張力、縫合糸ロックの位置、及び/又は穿孔の閉鎖を調節するために近位方向に引っ張ることができる。
【0033】
また、本体64は、管状本体54の内側表面56に対して縫合糸34を少なくとも部分的に圧縮できる大きさであるということが、図10で理解できる。同時に、テーパ状の部分64aと小径の部分64bは、縫合糸34と限定的に接触している或いは接触していない領域を提供している。これらの領域は、縫合糸の材料の種類とサイズに基づいて、例えば、縫合糸34及び縫合糸ロック48との間の摩擦のレベルを調整するために大きさがあります。ストッパ72は筒状本体54の近位端面55に当接し、これにより、プラグ50の位置を保持スリーブ52内に収めている。ストッパ72の遠位方向に向かう面79は、縫合糸34を管状本体54に押し当てて僅かに圧縮するように概ねテーパ状であり、さらに縫合糸34が縫合糸ロック48を出て近位方向に並進できるようにしている。
【0034】
縫合糸ロック48の構成部品は、ステンレス鋼、チタン、ニチノール又は他の金属/合金など様々な材料で構成することができるが、補強の線、コイル又はフィラメントの有無にかかわらない多層又は単層の構成を含めて、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(商標)、ポリテトラフルオロエチレン(即ちPTFEとEPTFE)、ポリエチレンエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド、ポリウレタン、及びポリエチレン(高、中又は低密度)などの様々なセラミックスやプラスチックも用いることができる。一つの好ましい構成では、プラグ50は約6.57ミリメートル(0.259インチ)の長さを有し、本体64は中央領域に沿って約1.65ミリメートル(0.065インチ)の外径と、(内部シース24内に収容されている)近位領域に沿って約1.52ミリメートル(0.060インチ)の外径と、内部通路68を画定している約1.14ミリメートル(0.045インチ)の内径を有し、ストッパ72は約2.03ミリメートル(0.080インチ)の外径を有し、及びグリップ70を画定している環状のエッジ74は約1.82ミリメートル(0.072インチ)の外径を有している。この構成では、保持スリーブ52は約3.81ミリメートル(0.150インチ)の長さを有しており、管状本体54は約2.54ミリメートル(0.100インチ)の外径と、内部通路58を画定している約2.03ミリメートル(0.080インチ)の内径を有している。現在好ましい実施形態のこれらの寸法を説明してきたが、サイズの異なるアンカー、縫合糸、針、シース、及び体内壁や組織構造に対応するために、該寸法は増加又は減少し、拡大又は縮小してもよい。
【0035】
内部シース24は、摺動可能に針22を収容できる大きである内部シースルーメン42を画定している。内部シース24は、プラグ50の肩82に係合又は当接することができる大きさ且つ配置とされている。外部シース26は、摺動可能に内部シース24とプラグ50を収容できる大きさである外部シースルーメン44を画定している。外部シース26は、保持スリーブ52の肩62に当接することができる大きさ且つ配置とされている。一つの好ましい構成では、(約1.52ミリメートル(0.060インチ)の外径を有する)プラグ50の本体64の近位部が内部シース24の遠位端内に圧入されるように、内部シース24は、約1.73ミリメートル(0.068インチ)の外径と、約1.14ミリメートル(0.045インチ)の内径を有しており、内部シース24はプラグ50を所定の位置に保持するように僅かに伸張している。次に、プラグ50は比較的小さい力で内部シース24から取り外すことができる。この好ましい構成では、(約2.54ミリメートル(0.100インチ)の外径を有する)保持スリーブ52の管状本体54が外部シース26の遠位端内に圧入されるように、外部シース26は、約3.33ミリメートル(0.131インチ)の外径と、約2.41ミリメートル(0.095インチ)の内径を有しており、外部シース26は保持スリーブ52を所定の位置に保持するように僅かに伸張している。次に、保持スリーブ52は、比較的小さい力で外部シース26から取り外すことができる。
【0036】
これらの寸法は、サイズの異なるアンカー、縫合糸、針、縫合糸ロック、体内壁や組織構造に対応するために、これらの寸法は増加又は減少し、拡大又は縮小してもよい。例えば、内部及び外部のシース24及び26の内径は、それぞれ、プラグ50及び保持スリーブ52と比較してより大きい寸法であってもよい。このように、プラグ50と保持スリーブ52は、接着剤又は当技術分野で公知の任意の他の適切な手段によって、それぞれ内部及び外部のシース24及び26の先端内に収容され、維持される。
【0037】
内部及び外部のシース24及び26は、好ましくは、補強線、コイル又はフィラメントの有無にかかわらない多層又は単層の構成を含めて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)、ポリエチレンエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ナイロンなどのポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレン(高、中又は低密度)、或いはサントプレン(登録商標)などのエラストマー、などのプラスチックで形成されている。針22、内部及び外部のシース24及び26、並びにプッシャー25は、好ましくは、柔軟な細長い構成であり、内視鏡や腹腔鏡処置の間など、患者の身体内の進行を可能にしている。このようにして、当技術分野において公知のように、適切な操作又は制御機構が、針22、内部及び外部のシース24及び26の近位端、及び医療専門家がこれらの構成部品を相対的に並進させるためのプッシャー25に接続される。同時に、本医療デバイス20及びシステム40はまた、切開手術(Open surgery)で、外傷で使用することができる、即ち標的組織へのアクセスに細長い医療デバイスを必要としない他の組織アンカー配置デバイスにも適用可能である。
【0038】
医療デバイス20は、内視鏡の付属チャンネルを通して又は内視鏡と一緒に、或いは内視鏡と組み合わせて使用される他のデバイス、例えば、内視鏡吸引装置や流体注入装置と併用して使用される大きさであり得る。
【0039】
医療デバイス20は、図6に示す少なくとも送達形態と、図7−8に示す配備形態の間で動作可能である。送達形態では、医療装置20を導入する間、針22の鋭い遠位端37から身体の構造を保護するために、針22は外部シースルーメン44内に実質的に含まれている。配備形態では、針22が外部シース26の遠位端27を越えて突き出るように、針22を内部及び外部のシース24及び26に対して並進させる。最も遠位の組織アンカー28aが針22の遠位先端37から抜け出て遠位方向に推し進められるように、プッシャー25を針22に対して並進させる。組織アンカー28aに結合されている縫合糸34はまた、針スロット38内で遠位方向に摺動し針2を抜け出る。最も遠位の組織アンカー28aを展開した後、針22は外部シースルーメン44内に引き戻され、医療デバイス20が再び位置決めされ、外部シース26に対して針22を、針22に対してプッシャー25を並進させるステップが、さらなる組織アンカーのために繰り返される。
【0040】
本発明の教示に従って、組織12を貫通して組織アンカー28a、bを送達し、縫合糸ロック48を使用するシステム及び方法を、これより図6−10を参照しながら説明してゆく。本方法は、図1及び図6−10に示す医療システム40のように、複数の組織アンカーと隣接する組織アンカーの間に配置された少なくとも1つの吸収性スペーサ部材、針と内部及び外部のシース、並びに縫合糸ロックを有する医療システムを提供するステップが含まれている。図6に示すように、医療システム40は、組織アンカー28a、bを配置する対象とされている身体の組織12の隣接位置に送達される。医療システム40は、組織12を位置確認する支援、組織アンカー28a、bを配備するための標的部位の識別、並びに医療装置20及びシステム40の操作の監視のための可視化システムを含んでもよい。例えば、可視化技術には、カテーテルベースの光ファイバシステム、X線透視、超音波などを含めることができる。さらに、針22はX線透視下に視認するために設計されたマーキングを有することができ、また粗くされる、くぼみ又は他の不調和を有する、或いは埋め込まれた粒子を有することなどによって、針22の遠位端36は強化された超音波反射率の表面を有することができる。
【0041】
組織アンカー28a、bは針22の遠位端36において針ルーメン30内に配置されており、スペーサ部材46が組織アンカー28a、bの間に配置されている。スペーサ部材46と組織アンカー28a、bの間の空間が、明確化のために示されているが、スペーサ部材46と組織アンカー28a、bは、概ね針ルーメン30内で端部と端部を当接することになる。縫合糸34は、針ルーメン30内から針スロット38を通ってやや蛇行した経路をたどり、保持スリーブ52及び外部シース26の内部表面と、プラグ及び内部シース24の外部表面の間の外部シースルーメン44内で近位方向に延在し、縫合糸ロック48内に効果的に事前装着されて医療デバイス20の近位端まで延在する。従って、この蛇行した経路は、内部シース24の外部表面と外部シース26の内部表面の間の縫合糸34の摩擦係合によって、針ルーメン30内に組織アンカー28a、bを保持するのに十分であり得る。
【0042】
図7に示すように、医療装置20及びシステム40は、 これらの配備形態へと操作される。特に、針22を内部及び外部シース24及び26に対して並進させることにより、針22は身体の組織12を貫通して配備される。最も遠位の組織アンカー28aは、その後、組織アンカー28aが針ルーメン30を抜け出るように組織アンカー28aを針22に対して並進させることで針22から配備される。図1に示すように、組織アンカー28a、b及びそれらの間に配置されたスペーサ部材46は、プッシャー25が内側シースルーメン24内に摺動可能に収容され、且つ最も近位の組織アンカー28bに係合するのに使用され得るように、針ルーメン30と医療デバイス20の長手方向軸線に沿って針ルーメン30内に整列して示されている。概括的には、プッシャー25は、最も近位の組織アンカー28bのアンカー部材32を押圧するようにすすめられ、該最も近位の組織アンカーは、スペーサ部材46と最も遠位の組織アンカー28aを介して順に力を伝達することになり、その結果、針ルーメン30の最も遠位の組織アンカー28aを前進させる。他の構造又はメカニズムが、プッシャー25を取り換えて効果的に組織アンカー部28a、bを進めることができることを当業者によって認識されるであろう。最も遠位の組織アンカー28aのアンカー部材32を遠位方向に並進させるときに、組織アンカー28aの全体が医療デバイス20から解放されるまで、該アンカー部材に結合されている縫合糸34を針スロット38に沿って同様に移動させる。このとき、組織アンカー28aに結合されている縫合糸34は針スロット38から放出される。
【0043】
最も遠位の組織アンカー28aの配備中に、スペーサ部材46を針の先端37を僅かに超える位置まで遠位方向に移動させると、プッシャー25を僅かに引き戻すことができ、また、スペーサ部材46と針22の内径の間の十分な隙間によって、針が組織12を貫通するときに、尖った針の先端37が残りの組織アンカー28a、bの配備のために確実に組織12を貫通して穴を開けることができるように、スペーサ部材46を針ルーメン30内で容易に近位方向に移動させられる。
【0044】
図8を参照すると、針22は、近位方向に針22を並進させることで身体の組織12を貫通して引き戻され、穿孔14の周りの異なる位置に再配置され、内部及び外部のシース24及び26に対して針22を並進させることで、組織12を貫通して戻り再配備される。次に、プッシャー25をスペーサ部材46と近位側組織アンカー28bを配備するためにさらに遠位方向に前進させ、組織アンカー20bの縫合糸34は針スロット38内から解放される。図8に示すように、スペーサ部材46は近位側の組織アンカー28bと共に、組織12を貫通して配備することができる。また、スペーサ部材46は、近位側のアンカー28bを配備するために、針22を組織12に貫通させるのに先立ち身体内に配備することができる。例えば、スペーサ部材46は、消化管内に配置することができるが、ここでスペーサ部材46は必然的に通過する。スペーサ部材46は吸収性であるため、患者の身体内に残っていることは大した問題ではない。このように、スペーサ部材46が近位組織アンカー28bと共に配備される前に、たとえ誤って針22の先端37から抜け落ちたとしても、これは重大なことではない。さらに、近位側の組織アンカー28bは、再配置の位置に適切に配備されるために、針ルーメン30内の十分に近位側に配置される。本発明のさらなる実施形態において、スペーサ部材46には、移植された組織アンカー28a、bの周りに組織12の治癒を促進する抗生物質又は他の薬剤、ホルモン、或いは成長因子が含まれてもよい。
【0045】
追加の組織アンカー28a、bと共に針22を再装填するために身体から医療デバイス20を取り出すのではなく、本発明の教示に従って、医療システム40は順次複数の組織アンカーを配備する能力を提供し、該医療システムの中で、組織アンカーと、隣接する組織アンカーの間に配置されるスペーサ部材は針22内に事前装填される。従って、針スロット38の長手方向の長さは、任意の数の縫合糸34を収容できる大きさであり得る。従って、本方法は、近位方向に針22を並進させることにより、身体の組織12から針22を撤収するステップと、その後、針22を組織12を貫通して、並進させるステップを繰り返すステップ及び別の組織アンカー28を配備するステップを含んでもよい。
【0046】
組織アンカー28a、bが身体の組織12の遠位側に配置された後、針22は身体の組織12の近位側に貫通して引き戻されて内部シースルーメン42内から除去される。針22は、現時点では医療デバイス20内から除去されてもよく、或いは組織12に対して縫合糸34を固定した後に医療デバイス20全体と共に除去されてもよい。図9−10に示すように、縫合糸ロック48は身体の組織12に縫合糸34を固定するために係合される。特に、システム40は、市販の針縫合糸ロック48を含むので、再び身体からの除去を必要としない。保持スリーブ52は外部シース26の遠位端27に取り付けられている。外部シース26は、さらに患者の体に進行させるために柔軟性を設けながら、当技術分野で公知の任意のシース又はカテーテルの形態を取ってもよいが、長手方向の力と回転力双方の伝達のために十分な強度と剛性を有していることが好ましい。代表的なシースがクックメディカル(株)から販売されている。また、ソリッドワイヤ又はワイヤガイド、クランプ、把持具及び同種のものなどの他のシース又は押し出し要素を用いてもよいことが認識されるであろう。同様に保持スリーブ52に外部シース26を解放可能に結合するために磁石を採用することもできる。
【0047】
外部シースルーメン44は保持スリーブ52の管状本体54を収容できる大きさであり、さらに外部シース26の遠位端面29は保持スリーブ52の肩62に対して当接している。概括的には、外部シース26を使用して保持スリーブ52を容易に調節及び位置決めできるように、外部シース26と保持スリーブ52は緩く圧入されている。同様に、保持スリーブ52は、プラグ50を保持スリーブ52内に配置する間に、外部シース26への結合を維持しており、同時に保持スリーブ52はまた、処置の最後に容易に外部シース26から結合を解かれる。図9−10に示すように、引っ張られている縫合糸34と組織12がプラグ50を配置する間に保持スリーブ52に外部シース26の位置を概括的には維持する必要がないので、外部シース26と保持スリーブ52は摩擦係合する大きさである必要はないことが認識されるであろう。
【0048】
図6−10を参照すると、保持スリーブ52の内部通路58を通って、且つ外部シースルーメン44を通って縫合糸34が事前装填即ち通されている。外部シース26は、保持スリーブ52を、縫合糸34を覆って組織12と穿孔14の近傍位置まで遠位方向に並進させるために使用される。縫合糸34は、閉じた穿孔14を引き寄せ、且つ保持スリーブ52の周辺リム60に組織12を押し付けるために引っ張られている。
【0049】
図6−9に示すように、内部シース24はプラグ50と押圧嵌合されるが、該2つの構造物は長手方向の並進のために互いに単純に当接してもよい。内部シース24は、外部シース26又は上記の他のカテーテルと同様の構造を有してもよい。図示の実施形態では、内部シース24は、肩82に当接、且つプラグ50の本体64を収容することができる大きさの遠位端23を含んでいる。従って、内部シース24はプラグ50に結合されており、それらは共に外部シースルーメン44を通って遠位方向に並進される。針22が縫合糸34の固定時に医療デバイス20からいまだ引き出されていない場合には、内部シース24はプラグ50に市販の針22を摺動するようにさせる。プラグ50は、縫合糸34を固定するために保持スリーブ52と係合するように押し込まれている。(例えば、近位方向に引っ張ることにより)張力のかかった縫合糸34と共に、プラグ50は保持スリーブ52の内部通路58を通って進められ、それにより、縫合糸34がグリップ70と保持スリーブ52の内部表面56の間で圧縮される。従って、外部シース26と内部シース24の相対的な並進が、ロックされた形態とロックされていない形態の間の縫合糸ロック48を操作する保持スリーブ52及びプラグ50の相対位置を調節することがわかる。
【0050】
前述のように、プラグ50が遠位方向に内部通路56を通って進められるので、グリップ70の前端面76は縫合糸34に沿って摺動される。さらに進めることにより、本体64はまた、縫合糸34を係合し、少なくとも部分的に保持スリーブ52の内部表面56に対して該縫合糸を圧縮する。グリップ70の環状の形状により、縫合糸34がグリップ70とプラグ50の外周の任意の場所に位置するようにできる。プラグ50の遠位側への移動は、最終的にはストッパ72によって制限される。即ち、ストッパ72の遠位方向に向かう面79は保持スリーブ52の近位端面55に当接する。縫合糸34の張力はグリップ70の環状のエッジ74に把持され、また遠位方向にプラグ50の移動を促進するのに役立つだけでなく、縫合糸ロック48の近位側への移動とロック解除がされないようにしている。
【0051】
ロックされた形態にある時、(及びプラグ50が保持スリーブ52内に部分的に配置されるが完全に装着されていない時のように部分的にロックされている時)、グリップ70は近位方向、即ち組織12から離れる方向への縫合糸34のさらなる並進を可能にし、且つ遠位方向、即ち組織12に向かう方向への縫合糸34の並進を防ぐように構成されている。さらに、縫合糸34がプラグ50により圧縮され、スリーブ52を保持している時、例えば縫合糸ロック48がロックされた形態にある時などでさえ、縫合糸ロック48を身体の組織12及び穿孔14に向かわせるために縫合糸34を個別に引っ張るか張力をかけることができる。このようにして、縫合糸34の張力は、穿孔14が閉じられている程度を調整するために変更することができる。これは既存の縫合糸ロックの顕著な改善を意味しているが、該既存の縫合糸ロックは通常縫合糸に沿った所定の位置に永久に固定されているので、ロック処置の間と後の、即ち部分的にロックされ最終的にはロックされた形態での調整は不可能である。
【0052】
図10に示すように、完全にロックされた形態では、縫合糸34の張力、並びに組織12の生来の弾性は、遠位方向に該縫合糸を付勢しているグリップ70に縫合糸34を介して伝達される力をもたらしている。このように、保持スリーブ52及びプラグ50は、それぞれ縫合糸34との摩擦係合及びその圧縮を介して相互接続されている。ロックされた状態では、医療デバイス20全体は一度患者から取り出されてもよく、内部及び外部のシース24及び26は、それぞれ、容易に保持スリーブ52及びプラグ50から取り外される。また、内部シース24と針22を最初に取り出してもよく、外部シース26を別個に取り出してもよい。縫合糸34は、内視鏡鋏などで必要に応じて切ってもよい。縫合糸ロック48を解放するために、縫合糸34が切断されてもよく、或いは外部シース26が保持スリーブ52を保持するために使用されてもよいが、(スネア、鉗子、又は類似のデバイスなどと共に)プラグ50は把持されて摩擦や縫合糸34の張力に逆らって物理的に回収される。
【0053】
従って、本発明は、コントロールされた方法で、複数の組織アンカーを送達できる医療システムと方法を提供するだけでなく、何度も該システム(又は複数の医療デバイス)を回収し、導入する必要なしに共に(例えば、穿孔を閉じる)アンカーをロックし、それによって時間を節約し、効率を向上させる。組織アンカーに結合されている縫合糸は市販の針縫合糸ロック内に事前装填されているので、複数の組織アンカーの送達とその縫合糸の固定の双方に対して一つの医療システムが提供されている。医療システムは、使用が簡単で信頼でき、完全な穿孔の閉鎖を提供し、様々な縫合固定や穿孔閉鎖の応用に適応可能である。例えば、任意の数の縫合糸ストランドを用いてもよいし、プラグと保持スリーブの相対的なサイズは、縫合糸のサイズ、穿孔の大きさなどに基づいて調整されてもよい。プラグと保持スリーブの相互接続は、縫合糸ロックが自発的であり、且つロックされた形態に向かって付勢されている、というようなものであり、それによって、完全な穿孔の閉鎖だけでなく、縫合糸ストランドの調整を通じて、たとえ該縫合糸ストランドが圧縮されていても、縫合されている組織に対して縫合糸ロックの位置制御を補助し促進する。プラグと保持スリーブの間の相互接続の詳しい説明は、同時係属米国特許出願第12/125,525号に見いだされることができ、該出願の全内容が参照により本明細書に組み込まれている。縫合糸ロックの個々の縫合糸の張力や位置の調整は、縫合糸ロックの配置中及びその後も可能である。それと同時に、内部及び外部のシースにより複数の組織アンカーを配備するための簡単なシステムを提供しており、該システムは患者の身体を通って最も遠い位置にでも進むことができる。
【0054】
前述の方法は概括的には体内管腔を通して組織に組織アンカーを配置するステップを含む一方、デバイス及び方法は、人間又は動物の身体、及び体内管腔に関連してもしなくてもよい任意の材料の層(例えば織物、布、ポリマー、エラストマー、プラスチック及びゴム)に使用してもよいことが理解され、これらのことは当業者によって認識されるであろう。例えば、本明細書に開示された装置及び方法は、人間又は動物の体への用途を見つけてもよいし見つけなくてもよい材料の1つ以上の層を貫通してデバイスを配置する、及び同様に身体の組織ではない材料の層の穴又は穿孔を閉じるために、実験室及び工業環境での用途を見つけることができる。幾つかの例には、裁縫又は縫合並びに同類の製造、合成組織との協働、高分子シートの結合、動物実験、及び解剖作業が挙げられる。
【0055】
以上、本発明の様々な実施形態について、例示と説明を目的に述べてきた。それにより、本発明を余すところなく説明する意図も開示されている厳密な実施形態に限定する意図もない。上記教示に鑑み、数多くの修正又は変型が可能である。考察されている実施形態は、本発明の原理及びその実際の適用を最適に例示し、それにより、当業者が本発明を様々な実施形態で、考えられる特定の用途に適応させた様々な修正を施して利用することができるように、選定され、記載された。全てのその様な修正及び変型は、付随の特許請求の範囲の請求項によって、それら請求項が公平、法的、且つ公正に権利を有するとされる一定の許容幅に従って解釈された上に定まる本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10 長手方向軸線
12 体内壁、身体の組織
14 穿孔
20 医療デバイス
22 針
23、27、36 遠位端
24 内部シース
25 プッシャー
26 外部シース
28、28a、28b 組織アンカー
29 遠位端面
30 針ルーメン
32 アンカー部材
34 縫合糸
37 尖った遠位先端、尖った針の先端
38 針スロット
40 医療システム
42 内部シースルーメン
44 外部シースルーメン
46 スペーサ部材
48 縫合糸ロック
50 プラグ
52 保持スリーブ
54 管状本体
55 近位端面
58、68 内部通路
60 周辺リム
62、82 肩部
64 本体
64a テーパ状の部分
64b 小径の部分
65 長手方向軸線
66 内部表面
70 グリップ
72 ストッパ
74 環状のエッジ
76 前端面
78 後続面
79 遠位方向に向かう面
80 近位方向に向かう面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸に結合されたアンカー部材を有する少なくとも1つの組織アンカーと、
前記少なくとも1つの組織アンカーを摺動可能に収容できる大きさである針ルーメンを有する針であって、前記針と前記針ルーメンが前記医療デバイスの長手方向軸線を画定している針と、
前記少なくとも1つの組織アンカーの送達後に縫合糸を固定するための縫合糸ロックであって、
第1の内部通路を画定する第1の内部壁を有する本体を持っているプラグと、
第2の内部通路を画定する第2の内部壁を有する管状本体を有する保持スリーブであって、第2の内部通路はプラグを収容し且つ前記プラグと当該第2の内部壁の間に前記少なくとも1つの組織アンカーの前記縫合糸を係合できる大きさであり、前記第1及び第2の内部通路の双方が、前記少なくとも1つの組織アンカーを送達するときに、前記針を摺動可能に収容できる大きさである保持スリーブと
を備える、縫合糸ロックと、
前記プラグと係合可能であり、前記針を摺動可能に収容できる大きさである内部シースルーメンを有する内部シースであって、前記内部シースをその長さ方向で動かすことにより、前記プラグが前記針に沿って摺動するようにさせる内部シースと、
前記保持スリーブと係合可能であり、前記内部シースと前記プラグを摺動可能に収容できる大きさである外部シースルーメンを有する外部シースと
を備える、医療デバイス。
【請求項2】
前記プラグは本体から各々半径方向に拡張するグリップとストッパを含んでおり、前記ストッパは近位方向に向いている第1の肩部を画定し、前記保持スリーブは近位方向に向いている第2の肩部を画定している管状本体から半径方向に拡張している周辺リムを含んでおり、前記内部シースは前記プラグの前記第1の肩部に当接することができる大きさ且つ配置とされており、前記外部シースは前記保持スリーブの第2の肩部に当接することができる大きさ且つ配置とされている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記縫合糸ロックは、組織を貫通して前記少なくとも1つの組織アンカーを送達しているときの非ロック状態と、組織を貫通して前記少なくとも1つの組織アンカーを送達した後のロック状態との間で操作可能であり、前記プラグと前記保持スリーブは、前記非ロック形態では相互に分離されて、前記ロック状態では相互に係合され、前記プラグと前記保持スリーブは、前記ロック状態で前記プラグと前記保持スリーブの前記第2の内部壁の間で前記少なくとも1つの組織アンカーの前記縫合糸を圧迫する大きさに構成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記医療デバイスは送達形態と配備形態の間で操作可能であり、前記内部シース、前記プラグ、及び前記針は前記送達形態で前記外部シースルーメン内に実質的に収容され、前記針は、前記配備形態では、前記外部シースの遠位端と前記保持スリーブを越えて突出している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの組織アンカーの前記縫合糸は、近位方向に且つ前記プラグと前記保持スリーブの間に延在している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの組織アンカーの前記縫合糸は、前記外部シースルーメン内で前記内部シースの外側に沿って近位方向に延在している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの組織アンカーの前記縫合糸は前記縫合糸ロック内に事前装填されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記針の遠位端が、前記少なくとも1つの組織アンカーの前記縫合糸を収容できる大きさである針スロットを画定している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの組織アンカーは複数の組織アンカーを含んでおり、前記複数の組織アンカーの前記アンカー部材は前記針ルーメン内に連続的に整列している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記針ルーメン内に摺動可能に収容され、前記複数の組織アンカーの最も近位のアンカー部材と係合することができる大きさ且つ配置とされているプッシャーをさらに備えている、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記複数の組織アンカーは、第1と第2のそれぞれのアンカー部材を有する第1と第2の組織アンカーを含んでおり、前記医療デバイスは前記針ルーメン内の前記第1と第2のアンカー部材の間に配置される少なくとも1つの吸収性スペーサ部材をさらに備えている、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記針の遠位端が、そこに前記複数の組織アンカーの各組織アンカーの前記縫合糸を収容できる大きさの針スロットを画定しており、前記針スロットは、前記複数の組織アンカーの前記アンカー部材の数と長さ、及び前記針ルーメン内に収容された前記スペーサ部材の数と長さによって決まるスロットの長さを有している、請求項11に記載の医療デバイス。
【請求項13】
縫合糸に結合されたアンカー部材を含む少なくとも1つのアンカーを固定する方法であり、
針を、内部及び外部のシースに対して並進させることによって配備するステップであって、前記少なくとも1つのアンカーは前記針内に摺動可能に配置され、前記針は前記内部シース内に摺動可能に配置され、前記内部シースは前記外部シース内に摺動可能に配置されている、針を配備するステップと、
前記少なくとも1つのアンカーが針ルーメンを抜け出るように、前記針に対して前記少なくとも1つのアンカーを並進させる、前記少なくとも1つのアンカーを配備するステップと、
前記少なくとも1つのアンカーの前記縫合糸を縫合糸ロックと共に固定するステップであって、前記縫合糸ロックはプラグと保持スリーブを含み、前記プラグは第1の内部通路を画定している第1の内部壁を備える本体を有し、前記保持スリーブは第2の内部通路を画定している第2の内部壁を備える管状本体を有し、前記縫合糸は前記保持スリーブの前記第2の内部通路内に事前装填され、前記保持スリーブは、ロック状態で、中に前記プラグを収容できる大きさとされ、前記第1及び第2の内部通路の双方は前記針を摺動可能に収容している、縫合糸を固定するステップと
を備えている方法。
【請求項14】
前記縫合糸を前記固定するステップは、前記保持スリーブと前記プラグを前記針に外挿して遠位方向に並進させるステップを含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記縫合糸を固定するステップが、
前記保持スリーブを前記外部シースと係合させるステップと、
張力のかかった前記縫合糸を配置するステップと、
前記プラグを前記内部シースと係合させるステップと、
前記プラグを前記保持スリーブの前記第2の内部通路内に位置付けるために、前記内部シースを前記外部シースに対して移動させるステップであって、前記縫合糸を前記プラグと前記保持スリーブの間に圧迫するステップと
を含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記縫合糸を近位方向に引っ張る一方、前記内部シースと前記プラグを遠位方向に押すステップをさらに含み、前記内部シースと前記プラグは、前記外部シースと前記保持スリーブに対して遠位方向に押される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プラグは環状のエッジを画定している本体から半径方向に拡張しているグリップを含み、前記縫合糸は、前記グリップと前記保持スリーブの前記第2の内部壁の間で圧迫される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアンカーは、前記針ルーメン内で連続的に整列された複数のアンカーを含んでおり、前記アンカーを配備するステップは前記複数のアンカーの少なくとも一部のために繰り返される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のアンカーは第1と第2のそれぞれのアンカー部材を有する第1と第2の組織アンカーを含んでおり、少なくとも1つのスペーサ部材は前記第1及び第2のアンカー部材の間に位置している、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−522600(P2012−522600A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503743(P2012−503743)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/029798
【国際公開番号】WO2010/115113
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】