説明

組織アンカー

本発明は、第1部分(5a)及び第2部分(5b)を備える組織アンカー(1)を提供する。少なくとも1つの先端部(6p)が第1部分(5a)上に設けられ、弾性デバイス(7x)が第1部分(5a)と第2部分(5b)の間に設けられる。第1部分(5a)上の1つ又は複数の先端部(6p)は鋭利にされ、高密度の組織を貫通できる。弾性デバイス(7x)は第1及び第2部分(5a、5b)を相互に離れる方向に偏倚し、これら両方の部分を第2の開いた形状になるように押動する。第1及び第2部分(5a、5b)は閉じた挿入形状に変形可能である。第1及び第2部分(5a、5b)は弾性デバイス(7x)の偏倚に対抗して相互に近接する方向の、閉じた挿入形状になるように押動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織アンカー、特に、骨、軟骨及び体の他の組織において使用する組織アンカーに関する。
【背景技術及び課題】
【0002】
組織アンカーは、縫合糸及び他の拘束デバイスを保持及び固定するために手術において広く使用されている。現在の設計は、一般に、骨にドリルであけられた穴に挿入される非対称のアンカーを採用している。いくつかの例では、アンカーは、糸を通す穴内にはめ込むための糸を備え、あるいは、骨又は他の組織内に固定するための非対称の設計を有する。既存の設計の組織アンカーは一般に形が大きく、例えば手及び足といった、特定の骨における有効性を制限する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明によれば、第1部分及び第2部分と、第1部分上の少なくとも1つの先端部と、第1部分と第2部分との間の弾性デバイスとを備える組織アンカーが提供される。
【0004】
第1部分上の先端部は鋭利にされ、第1及び第2部分が相互に対して第1形状に保持されているとき、高密度の組織を貫通することができる。先端部が、例えば骨などの組織を貫通すると、弾性デバイスは第1部分と第2部分と間に力を加えることにより、第2形状に変形して、組織から貫通の反対方向に引き抜かれるのを防止するようになっている。
【0005】
典型的には、組織アンカーは第1部分上の主の先端部の反対方向に向いているかえし(barb)を有する。好ましい実施形態では、第1及び第2部分は鏡像部分であり、前方で対向する先端部と、異なる方向に突き出るかえしとを備えている。
【0006】
好ましい形態では、各部分は一般に、組織を貫通するために前方を向いている端部と、後端で後方に向いているかえしとを有する、フックの形態をとる。このかえしは、一般に、前端における先端部よりさらに外側に放射状に広がる。
【0007】
弾性デバイスは単に、弾性ワイヤ又は弾性プラスチック材料からなる一部片又は2つのフックを接続する弾性鋼などの金属部品であってもよく、好ましい実施形態では、弾性デバイスは、力を加えられていないときに、2つの部分が相互に離れるように偏倚する。
【0008】
デバイスが挿入されると、2つの部分は通常、弾性デバイスの本来の偏倚に対抗して相互に近接する方向に押動され、その後、組織アンカーが組織に挿入される。ダブルフック形状を有するデバイスの好ましい実施形態では、これにより、第1及び第2部分上のそれぞれのフックの先端を相互に近接する方向に押動して、前端の先端部が接触するようになり、この加えられた力は通常、組織アンカーが挿入されている間、第1及び第2部分を第1形状に維持する。組織アンカーが組織内の所望の位置に挿入されると、デバイスを第1形状構成に維持する力は除去され、好ましい実施形態では、弾性部材はその後第1及び第2部分の前端で先端部を離す方向に広がり、またかえしをさらに離す方向に移動させ、弾性デバイスにより加えられる力で組織内に組織アンカーを確実に保持する。
【0009】
場合によって、組織アンカーを挿入する軸周りに捻り、組織内でより強固にかえし及び先端部を保持するようにできる。
【0010】
いくつかの実施形態では、組織アンカーは、閉じた形状に押動されて、縫合糸を組織アンカーに通し、及び縫合糸を挿入スリーブに通すことによって挿入される(上述のとおり、フックの前端の両先端部を近接する方向に押動する)。次に、縫合糸及び組織アンカーを挿入スリーブに対して引っ張ることにより、スリーブが縫合糸に沿ってスライドして、組織アンカーに対して力を加えるようにする。挿入スリーブにより加えられるこの力は通常、第1及び第2部分を、自然に広がった開いた形状から、前端の両先端部を近接する方向に押動された閉じた形状に移動させる。縫合糸及び挿入スリーブによって加えられる圧力は通常、挿入工程の間は最後まで組織アンカーを閉じた形状に維持する。この利点の1つは、挿入スリーブを、組織アンカーをアンビルとして使用する位置にハンマーで打ち込みできることである。
【0011】
いくつかの他の実施形態では、フックの両先端は、上述のとおり、弾性デバイスの作用により近接する方向に押される。この弾性デバイスは、挿入スリーブの制限作用により、適切な形状となるように押動されて、これを達成できる。例えば、この実施形態によるいくつかの弾性デバイスは一般に、狭くなった端部に接続されたフックを有するループ状の涙滴形である。このような実施形態では、涙滴形のループ部分は挿入スリーブの制限作用により圧縮され、両先端部を近接する方向に押す。この種類の実施形態は、挿入の間においてフックの両先端部を近接する状態に維持するために、縫合糸を引っ張るか又は他の外部力を加える必要を無くする。
【0012】
組織アンカーが必要とされる位置に達すると、挿入スリーブは容易に組織から引き抜かれ、組織アンカーを正しい位置に固定して残し、縫合糸はすでに必要な経路から引き出されている。
【0013】
典型的には、挿入スリーブの直径は、閉じた形状にあるときの組織アンカーのかえしの直径より小さい。これにより、後方の対向するかえしが挿入スリーブにより形成される組織の開口部の公称直径を超えて固い骨に食い込むため、組織アンカーを妨害することなく挿入スリーブを引き抜くことができる。
【0014】
組織アンカーが組織から引き抜かれる場合、組織アンカーは閉じた形状になるように付勢され、挿入スリーブ又は単に縫合糸のいずれかの上により大きな直径の回収スリーブを挿入することにより、引き抜くことができる。回収スリーブの直径は通常、第2の形状における広がったかえしの直径よりも大きく、このため、組織からの組織アンカーの引き抜きの間において、後方に対向するかえしは組織アンカーの引き抜きを妨害しない。
【0015】
回収スリーブの前端は、組織に穴を形成し、それによりスリーブの除去を容易にするための切断用形状を備える。回収スリーブの内面は、組織アンカー上の横方向の最も外側のかえしを収容するための環状の溝を備える。
【0016】
本発明の第1の態様によれば、組織内にアンカーを配置する方法がさらに提供される。この方法は、
第1及び第2部分を有する組織アンカーを設けるステップと、
上記第1及び第2部分を、上記組織アンカーが弾性デバイスに付勢する第1形状になるように押動するステップと、
上記第1部分上に設けられた少なくとも1つの先端部を上記組織に挿入するステップと、
上記第1及び第2部分に加わる力を除去して、上記組織アンカーを上記組織内に固定することにより、上記第1及び第2部分を、両部分が相互に間隔を空ける第2形状を形成するようにするステップと、
を備える。
【0017】
この方法は上記第1部分の上記先端部を用いて高密度の組織を貫通するステップを含むことができる。
【0018】
この方法はまた、上記組織アンカーを上記組織に挿入する前に、上記第1及び第2部分を、上記弾性デバイスの偏倚に対抗して上記第1形状になるように押動するステップを含むことができる。この方法は、上記組織アンカーを上記組織内に挿入する間、上記第1及び第2部分を上記第1形状に維持するステップを含むことができる。
【0019】
この方法は、上記組織アンカーを挿入スリーブ内に導入して、上記組織アンカーを上記第2形状になるように押動するステップを含むことができる。この方法は、上記組織アンカーから上記挿入スリーブを引き抜き、上記組織アンカーを上記第1形状から上記第2形状に変形可能にするステップを含むことができる。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、組織内に配置された組織アンカーを回収する方法が提供される。上記組織アンカーは、弾性デバイスにより相互に間隔を空けた第2形状の状態にある第1部分及び第2部分を有し、これにより、上記組織アンカーが上記組織内に固定される。この回収方法は、上記第1及び第2部分を、上記弾性デバイスの偏倚に対抗して上記第1形状になるように押動するステップと、上記組織アンカーを回収スリーブ内にはめ込むステップと、上記回収スリーブを引き抜くことにより上記組織アンカーを回収するステップと、を備える。
【0021】
この方法は、上記第1及び第2部分のそれぞれに設けられたフックの横方向の長さより短い寸法の直径を有するスリーブ内に上記組織アンカーを導入するステップと、上記スリーブを各フックの後面に接触させて押し付け、これにより上記第1及び第2部分を上記弾性デバイスの偏倚に抗して押すステップと、を含むことができる。
【0022】
この方法は、上記組織アンカーに接続される縫合糸を上記スリーブの貫通孔内に収容するステップを含むことができる。この方法はまた、上記スリーブを上記固定された縫合糸に沿って滑らせ、これにより上記スリーブを上記組織を通して上記組織アンカーに案内して、上記組織アンカーの除去及び調整を容易にするステップを含むことができる。
【0023】
この方法はまた、上記回収スリーブの引き抜き及び上記組織アンカーの回収の前に、上記回収スリーブ内に上記スリーブ及び上記組織アンカーを収容するステップを含むことができる。
【0024】
この方法はまた、上記回収スリーブの内面に環状の溝を設けることにより、上記組織アンカーを上記回収スリーブの上記孔内に保持し、上記フックの横方向の最も外側の部分を上記溝内にはめ込むステップを含むことができる。
【0025】
この方法はさらに、上記組織アンカーを回収する前に、上記回収スリーブの前端を使用して組織を切断して、上記組織アンカーにアクセスするステップを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を例として添付図面を参照して説明する。
【0027】
図面を参照して以下に説明する。図1は、アーム5a及び5bの形状の第1及び第2部分を有する組織アンカー1の側面図を示している。各アーム5はアンカー1の前端に鋭利な先端部6pを有するフック部分6と、前端から離れる方向に向いているかえし(barb)6bとを備える。フック部分6は、随意に、かえし6bと先端部6pとの間で滑らかに湾曲しており、これによりかえし6bの先端は先端部6pから放射状に外側に離れている。フック6の下側面61はアームに対して90°未満の角度で傾斜されており、そのため各フック部分のかえし6bはデバイスの前端から離れる方向に向いている(先端部6pで)。
【0028】
各アームは剛性ワイヤ又は鋼のストリップ(帯状体)から形成されている。図示実施形態では、2つのアームは単一の連続的な可撓性のある鋼のストリップ又はワイヤから作られているが、弾性材料又は剛性材料のいずれかから別個にアームを形成し、板ばね、ヒンジ又は特定の他のデバイスといった、弾性デバイスによってそれらアームを接続してもよい。
【0029】
次に、図2を参照すると、両アームは略V形であり、V形の頂点7xで弾性デバイスに接続されている。V形以外の他の形状を用いることもできる。図示された実施形態では、2つのアームは弾性鋼の連続的な部品から形成され、その端部には、図示されるとおりフックが取り付けられている。Vの頂点7xは弾性デバイスとして作用し、このため両アームは離れる方向に偏倚され、静止状態においては、図1及び図2に示される略V形になる。弾性鋼のストリップの固有の弾性により、組織アンカーは、図2に示されているとおり、力が加えられると屈曲する。力が取り除かれると、組織アンカーは、図1及び図2に示されているとおり、開いた形状に戻る。
【0030】
各フック6は図示実施形態では3つの側面を有する。先端部6pとかえし6bとの間に延びる側面は全体に弓状であり、わずかに凹んだ形状をとる。凹んだ形状は、組織を通るフックの通過を助けるが、この実施形態では直線状の側面でも十分である。フック6の別の側面はフックをアーム7の端部に接続する。アーム7の端部は一般に、この先端部にフックを接続する結果により、又は、アームの端部が固有の剛性材料から作られていることにより、屈曲に抗する。フックの残りの下側面61はかえし6bとアーム7との間に延びる。フック6のこの下側面61とアーム7との間で形成される角度は一般に90°より小さく、このため、かえし6bは先端部6pにおける前端から離れて、アーム7間の頂点7xにおける後端の方向に向く。この例では90°の角度は十分であるが、フックの後方に向く下側面61により形成される鋭角により、かえし6bを挿入後に組織内でより効果的に固定でき、挿入スリーブを装着することにより両先端6pを近接するように押すため、デバイスの装填を容易にする。
【0031】
使用時には、組織アンカー1の自然の状態では、図1及び図2に示されているとおり、フック6の先端部6pは、アーム7の弾性鋼の自然な弾性により離れる方向に広がっている。縫合糸9は、図2に示されるとおり、アーム7a、7b間に通され、その後、図3に示されるとおり、縫合糸の自由端は、集められて挿入チューブ10の遠位端10d内に挿入され、挿入チューブ10の近位端10pから取り出される。その後、縫合糸9は挿入チューブ10の近位端10pを通して引っ張ることができる。これにより、頂点7x及びアーム7a、7bを挿入チューブ内に引き込み、引くことによりフックの下側面61を挿入チューブ10の遠位端10bに接触させる。これにより、図4に示されるとおり、各フック上の両先端部6pは近接するように押動される。図3及び図4に示される実施形態では、挿入チューブ10の外径は、図4に示される閉じた状態におけるかえし6bの間の距離より短く、そのためかえし6bの端部は挿入チューブ10の外周部を超えて放射状に突出し、挿入チューブ10の外周部がフック6の後方に向く下側面61の中間部を押し付ける。
【0032】
縫合糸9が挿入チューブ10を通して強く引かれ、組織アンカー1の前端の先端部6pが図3及び図4に示されるとおり近接したならば、その後、組織アンカーは、縫合糸9の張力を維持させてフックの両先端部6pを近接する状態に維持しながら、体内に挿入される。組織アンカー1は、単に挿入スリーブを組織内に押し込むことにより、又は挿入スリーブの近接端10pをハンマーで打ち込むことにより、挿入される。組織アンカー1が、組織中への挿入スリーブの挿入角度及び深さにより判断されるとおりの、要求される位置に達すると、次に、アセンブリは随意的に挿入スリーブ10の軸周りに強制的に回転され、一方又は両方の回転方向にかえし6bをねじることができる。このねじり動作は、フック6が挿入中に組織を切断した経路から外れるようかえし6bを移動させ、固い骨又は他の組織内にかえし6bを保持し、これによりさらに組織アンカー1の引き抜きを阻止する傾向がある。
【0033】
その時点で、挿入スリーブ10に対する縫合糸9に加えられる張力を取り除くことにより、挿入スリーブ10の取り外しを可能にし、組織アンカー1を組織内に強固に保持できる。張力が縫合糸9から取り除かれ、遠位端10dがフック6から引き下げられると、組織アンカー1の弾性デバイスの自然な弾性力は、アーム7a、7bを相互に離れる方向に広げ、フック6を動かし、その結果図5に示されるとおり、両かえし6bはさらに間隔を広げ、これにより、組織アンカーを組織内にさらに埋め込み、引き抜きを阻止する。挿入スリーブ10は縫合糸9を覆って引き抜かれ、挿入中に組織アンカー1により切断された経路の所定の位置に縫合糸9を残すことができる。縫合糸はその後、別の組織アンカー又は他の埋め込みデバイスに固定され、あるいは、必要に応じて他の組織に固定される。
【0034】
治療の完了又は不適切な配置のいずれかの理由で、組織アンカーが除去される場合、挿入スリーブ10を再挿入して、組織アンカー1を閉じ、引き抜きを可能にするが、好ましい実施形態では、除去は図6に示されるように、別の回収スリーブ12によって容易になる。
【0035】
回収スリーブ12は一般に、挿入スリーブ10より大きい外径を有し、縫合糸9を覆って配置され(挿入スリーブが存在する又は存在しない)、組織アンカー1に押し付けられる場合、回収スリーブ12の遠位端12dはかえし6bの先端に当接し、回収スリーブ12の外径は一般に、閉じた位置にあるときの両かえし6bの間の距離より大きい。したがって、後方に向くかえし6bは回収スリーブ12により覆われるため、かえし6bは、回収スリーブ12にはめ込まれていると、組織からの引き抜きを妨害しない。縫合糸9は随意に、挿入スリーブ10に関して説明されたのと同一の方法で回収スリーブ12に対して張力を掛けられ、フック6の先端部6pを閉じ、この結果、その後の引き抜き工程の間、組織アンカー1を、かえし等が組織を損傷することなく組織から引き抜くことができる。フック6の後方を向く面とアーム7との間に形成される角度は通常、十分に鋭角であって、デバイスの開いた形状及び閉じた形状の両方で鋭角を生成する。適切な角度は50°〜80°である。デバイスのいくつかの実施形態では、回収スリーブ12は、遠位先端に面取りされた又は彫られた前端などのような切断用形状を有し、アンカーの挿入により作られる穴を拡大する。挿入スリーブはまた随意に、遠位端に環状溝を有し、フックの放射状の最も外側端を収容する。
【0036】
図7は、ステープルの形態をとる組織アンカー21の変形実施形態を示しており、このアンカー21は、フック26、アーム27及び2つのアームを接続するバー28を備えている。バー28は弾性デバイスを提供すべく弾性を有し、板ばねの形態をとり、あるいはまた、単に、弾性鋼がアーム27とバー28の間の接続を形成するために提供される。弾性デバイスは、アーム27を図7bに示される開いた状態に偏倚し、組織アンカー21は、挿入スリーブを使用してアーム27を閉じた形状に押動することにより、前述した実施形態に対して説明したように、図7aに示される閉じた形状で挿入できる。
【0037】
図8は、前に説明したのと同様のフック36及びアーム37を有する組織アンカー31の別の実施形態を示している。実施形態31と上述の第1実施形態との異なる点は、2つのフック及び2つのアームの代わりに、少なくとも4つのフック36a、b、c、dを有し、それぞれがアーム37a、b、c及びd上に配置されていることである。これは単に、頂点を一緒にして十字形の構成に溶接して、2つの組織アンカー1を接続することにより達成される。なお、図8及び図9に示される組織アンカー31は3、4、5、6、7又は任意の他の数のアーム及びフックを有してもよく、図示されている例は、単に原理の例証であって、限定を意図していないことは理解されるであろう。図面の符号31で示されている実施形態の1つの利点は、別の縫合糸39a及び39bをアーム37の異なる部分に取り付けできることである。例えば、実施形態31は、アーム37a、37d及びフック36a及び36dを備える第1の組織アンカーと、アーム37b、37c及びフック36b及び36cを備える第2の組織アンカーとから形成される1対の組織アンカーと見なされ、組織アンカーの頂点が溶接、接着又はいくつかの他の種類の結合により一体に接続されている場合、縫合糸39a及びbは、4つの異なる位置のいずれかの上に、例えばアーム37a、b、c又はdのいずれかの上にループを形成できる。これは、複数の異なる縫合糸を、縫合糸が互いに干渉する危険なく、単一の組織アンカー31に取り付けできることを意味する。これは極めて有用である。その理由は、組織アンカーが組織内に埋め込み保持された後に張力が縫合糸に加えられた場合、従来技術のデバイスでは、1つの縫合糸の張力により、同一の組織アンカーに取り付けられた別の縫合糸が第1縫合糸の張力によるものと誤って判断され、これより外科医が第2の縫合糸が堅く結ばれている(実際にはそうではないが)と考えることになり、重要なことには、糸結び技術を妨害する、第2の縫合糸の自由な操作を妨害する、ことが多く発生する。個別のアーム37a、b、c及びdにより個別の及び分離した取付け先端部が得られることは、複数の縫合糸を単一の組織アンカー31に取り付けて、張力を掛ける間に互いにもつれる危険性を低減できることを意味する。ここに示されている組織アンカー31は、それぞれが各アーム37a、b、c及びdの上にループを形成する、4つの個別の縫合糸について説明しているが、他の複数の縫合糸も本発明の範囲内であることは明らかである。
【0038】
図10は組織アンカー1’の別の実施形態を示しており、この実施形態では、組織アンカー1’はデバイス1’が閉じた形状にあり、挿入スリーブ10の孔内に保持されているときは、一体に形成されてほぼ涙滴形状に圧縮されるアーム7’を有する。アーム7’は弾性鋼を備え、アーム7’のループ部分に作用する挿入スリーブの圧力により閉じた形状で維持される。フックが涙滴形状の細い端部でアームに接続されるため、フックの先端は、スリーブの孔の内面によりアームに加えられる力により、体に挿入される間に、圧縮されて近接し、この実施形態では、閉じた形状に維持するための付加的な力を必要としない。
【0039】
図11は組織アンカー1’’の同様の実施形態を示しており、この実施形態では、組織アンカー1’’もまた、図10の実施形態と同様に、デバイス1’’が閉じた形状にあり、挿入スリーブ10の孔内に保持されているときは、一体に形成されてほぼ涙滴形状に圧縮されるアーム7’’を有する。この実施形態1’’もまた、アーム7’’の近接端に縫合糸のループ91を有し、アーム7’’の周りでの縫合糸の滑りを制限する。
【0040】
図10及び図11の実施形態はさらに、張力を掛けている間、アームの頂点での極めて細くもろい縫合糸の締付けが回避されるため、縫合糸上の不具合を少なくする。
【0041】
本発明の範囲から逸脱することなく、修正及び改良を組み込むことができる。例えば、いくつかの構成では、フック6は図1〜6に示されているとおり平面形状であってもよく、又は図8及び9に示されているとおり鋤形状であってもよい。必要に応じて、他の形のフックも採用できる。特定の実施形態では、挿入スリーブ10に挿入深さを示すための目盛り(例えばレーザーマーキング)を設けることにより、組織内での正確な組織アンカーの位置合わせにおいて外科医を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】開いた形状の組織アンカーを示している。
【図2】開いた形状の組織アンカーの側面図である。この形状においては、後部の対向するかえしは、取り付けられた縫合糸を用いる、体からの組織アンカーの引き抜きに抵抗する。
【図3】挿入スリーブを備える図1の組織アンカーの側面図である。
【図4】組織アンカーの先端部を閉じるために、挿入スリーブ及び縫合糸によって加えられる力により閉じた形状にある、図2の組織アンカー及びスリーブの拡大図である。
【図5】図3と同様の側面図であるが、挿入スリーブ及び縫合糸により加えられる力を除去し、弾性デバイスにより加えられる力の結果として組織アンカーの先端部が広がっていることを示している。
【図6】図2〜4と同様の側面図であり、縫合糸及び回収チューブにより加えられる力により閉じている組織アンカーを示している。
【図7a】組織アンカーの第2の実施形態の側面図であって、挿入のために閉じた形状にあるアンカーを示している。
【図7b】組織アンカーの第2の実施形態の側面図であって、挿入スリーブを引き抜いた後の開いた形状にあるアンカーを示している。
【図8】組織アンカーの第3の実施形態の斜視図である。
【図9】図8の実施形態の平面図である。
【図10】組織アンカーの別の実施形態の側面図である。
【図11】組織アンカーの別の実施形態の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分及び第2部分と、前記第1部分上の少なくとも1つの先端部と、前記第1部分と前記第2部分との間の弾性デバイスとを備える組織アンカー。
【請求項2】
前記第1部分上の前記少なくとも1つの先端部が鋭利にされ、高密度の組織を貫通することができるようになっている、請求項1に記載の組織アンカー。
【請求項3】
前記第1部分及び前記第2部分が前記弾性デバイスの偏倚に抗して相互に近接する方向に押動されている閉じた挿入形状に、前記第1部分及び前記第2部分が可動である、請求項1又は2に記載の組織アンカー。
【請求項4】
前記弾性デバイスが前記第1部分及び前記第2部分を相互に離れる方向に偏倚させ、これら両部分を第2の開いた形状になるように押動する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項5】
前記弾性デバイスが、前記第2の開いた形状において前記組織からの引き抜きに抵抗するようになっている、請求項4に記載の組織アンカー。
【請求項6】
前記組織アンカーが、前記少なくとも1つの先端部と関連付けられ且つ該先端部と異なる方向に向く少なくとも1つのかえしを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項7】
前記少なくとも1つのかえし及び前記少なくとも1つのアンカーが、前記第2の開いた形状においてほぼ反対の方向に向くように配置されている、請求項6に記載の組織アンカー。
【請求項8】
前記第1部分及び前記第2部分が鏡像部分である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項9】
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれが少なくとも1つの先端部及び対応するかえしを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項10】
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれが、組織を貫通するための先端部を有する前端を備えるフック形状であり、前記先端部が、後端にある後方に向いたかえしに向かって後方に延びる、請求項6〜9のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項11】
前記かえしが、前記前端における前記先端部より横方向に長く延びている、請求項6〜10のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項12】
前記弾性デバイスが弾性のワイヤである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項13】
前記弾性デバイスが弾性プラスチック材料からなる一部片である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項14】
前記組織アンカーが挿入の軸周りに少なくとも一定量の回転運動が可能であり、これにより、前記かえし及び前記先端部を前記組織内で保持することができるようになっている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項15】
前記弾性デバイスがループ形状の略涙滴形である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組織アンカー。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項による組織アンカーと、前記組織アンカーを前記閉じた挿入形状になるように偏倚させるようになっている挿入スリーブとを備える組織アンカーシステム。
【請求項17】
前記挿入スリーブの直径が、前記閉じた挿入形状のときの前記組織アンカーの前記かえしの横方向の長さより短い、請求項16に記載の組織アンカーシステム。
【請求項18】
前記挿入スリーブが、前記アンカーに接続される縫合糸を収容する貫通孔を有する、請求項16又は17に記載の組織アンカーシステム。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の組織アンカーシステムと、前記弾性デバイスの少なくとも一部を収容するようになっている回収スリーブとを備える、組織アンカーシステム。
【請求項20】
前記回収スリーブが前記組織アンカーの前記かえしの横方向の長さより大きい直径である、請求項19に記載の組織アンカーシステム。
【請求項21】
前記回収スリーブの前端が切断用形状となっている、請求項19又は20に記載の組織アンカーシステム。
【請求項22】
前記回収スリーブの内面が、前記組織アンカーの前記横方向の最も外側のかえしを収容するために環状の溝を備える、請求項19〜21のいずれか一項に記載の組織アンカーシステム。
【請求項23】
前記回収スリーブが挿入スリーブを収容するための貫通孔を備える、請求項19〜22のいずれか一項に記載の組織アンカーシステム。
【請求項24】
組織に組織アンカーを固定する方法であって、
第1部分及び第2部分を有する組織アンカーを設けるステップと、
前記第1部分及び前記第2部分を、前記組織アンカーが弾性デバイスに付勢する第1形状になるように押動するステップと、
前記第1部分上に設けられた少なくとも1つの先端部を前記組織に挿入するステップと、
前記第1部分及び前記第2部分に加わる力を除去して、前記組織アンカーを前記組織内に固定することにより、前記第1部分及び前記第2部分を、両部分が相互に間隔をあける第2形状を形成するようにするステップと、
を備える方法。
【請求項25】
前記第1部分の前記先端部を用いて高密度の組織を貫通するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組織アンカーを前記組織に挿入する前に、前記第1部分及び前記第2部分を、前記弾性デバイスの偏倚に抗して前記第1形状になるように押動するステップを含む、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記組織アンカーを前記組織内に挿入している間、前記第1部分及び前記第2部分を前記第1形状に維持するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組織に挿入する前に、前記組織アンカーを挿入スリーブ内に導入して、前記組織アンカーを前記第2形状になるように押動するステップを含む、請求項24〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記アンカーを前記組織に挿入後、前記組織アンカーから前記挿入スリーブを引き抜き、前記組織アンカーを前記第1形状から前記第2形状に変形可能にするステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
組織に配置された組織アンカーを回収する方法であって、前記組織アンカーが、弾性デバイスにより相互に間隔を空けた第2形状の状態にある第1部分及び第2部分を有し、これにより、前記組織アンカーが前記組織内に固定されるものであり、
当該方法が、
前記第1部分及び前記第2部分を、前記弾性デバイスの偏倚に抗して前記第1形状になるように押動するステップと、
前記組織アンカーを回収スリーブ内にはめ込むステップと、
前記回収スリーブを引き抜くことにより前記組織アンカーを回収するステップと、
を備える方法。
【請求項31】
前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれに設けられたフックの横方向の長さより短い寸法の直径を有するスリーブ内に前記組織アンカーを導入するステップと、
前記スリーブを各フックの後面に接触させて押し付け、これにより前記第1部分及び前記第2部分を前記弾性デバイスの偏倚に抗して押動するステップと
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組織アンカーに接続される縫合糸を前記スリーブの貫通孔内に収容するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記スリーブを前記固定された縫合糸に沿って滑らせ、これにより前記スリーブを前記組織を通して前記組織アンカーに案内して、前記組織アンカーの除去及び調整を容易にするステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記回収スリーブの引き抜き及び前記組織アンカーの回収の前に、前記回収スリーブ内に前記スリーブ及び前記組織アンカーを収容するステップを含む、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記回収スリーブの内面に環状の溝を設けることにより、前記組織アンカーを前記回収スリーブの前記孔内に保持し、前記フックの横方向の最も外側の部分を前記溝内にはめ込むステップを含む、請求項30〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記組織アンカーを回収する前に、前記回収スリーブの前端を使用して組織を切断して、前記組織アンカーにアクセスするステップを含む、請求項30〜35のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−520263(P2008−520263A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540724(P2007−540724)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004409
【国際公開番号】WO2006/054071
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507089908)
【氏名又は名称原語表記】GRAMPIAN HEALTH BOARD
【出願人】(505229922)ザ ロバート ゴードン ユニヴァーシティー (3)
【Fターム(参考)】