説明

組織処理装置の操作方法

【課題】組織処理装置を操作するための方法を明確に特定することであり、その方法で、所要の試薬が所定の工程ステップに適切かどうかを簡単に確認できるか、又は、その方法が簡単な手法で適切な濃度の試薬の生産に寄与すること。
【解決手段】 組織処理装置(20)の操作中、試薬は容器(26)から組織処理装置(20)のレトルト(密封容器)(22)へ供給され、レトルトには如何なる組織試料も含んでいない。その後、試薬は容器(26)に戻る。(試薬の)供給中、送り戻し中、及び/又は、(その供給と送り戻しとの)間に、試薬の濃度を代表する値である、測定値(AV_CON)が組織処理装置のセンサーにより検出される。(試薬の)この供給中も、この送り戻し中も、及び/又は、その(供給と送り戻しとの)間でも、組織試料はレトルト(22)に配置されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組織処理装置(プロセッサ)を操作するための方法に関し、試薬が容器(コンテナ)から処理装置のレトルトないし処理容器(retort)に供給される操作に関する。
【背景技術】
【0002】
組織処理装置は組織学的組織試料の自動処理のために使用される。そうすることで、組織試料はミクロトームによって、それ以降のセクション調製のための調製がなされ、顕微鏡試験が続く。幾つかの段階で、組織試料は、最初に脱水され、洗浄ないし除去(清澄)され、硬化され、引き続き、キャリア物質、例えば、パラフィンで安定化される。これは、組織試料が曝露される、異なる試薬を使用して行われる。試料の大量自動処理を可能にする組織処理装置が例示され、かつ、記載されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
組織処理装置により実行される、異なる工程ステップにおいては、試薬が異なる濃度で要求される。部分的に、試薬が所要の濃度で最終産物としてもたらされることができ、また、部分的に、所要の濃度が、例えば、試薬(特に、試薬のなかでもストック溶液)を希釈することによって、自己生産(self-produced)される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Leica ASP 300”、Leica Microsystems Nussloch GmbH, Order-No.0704-2-1-103, April 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、組織処理装置を操作するための方法を明確に特定することであり、その方法で、所要の試薬が所定の工程ステップのために適切かどうかを簡単に確認できるか、又は、その方法が簡単な手法で適切な濃度によって試薬の生産に寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴によって解決される。本発明の有利な展開は、下位請求項に特定される。
【0007】
本発明は、試薬がレトルトに供給されて、その後、容器に戻る(容器へ送り戻される)際に、組織試料がレトルトに存在しないことを特徴とする。(試薬のレトルトへの)供給中、(試薬の容器への)送り戻し中、及び/又は、その(供給と送り戻しとの)間に、代表的な試薬の濃度である測定値が組織処理装置(プロセッサ)のセンサーにより検出される。(試薬の)供給中も、(試薬の)送り戻し中も、また、その(供給と送り戻しとの)間でも、組織試料はレトルトに配置されない。
【0008】
このように、組織処理装置は試薬の濃度の決定のために使用される。全操作中にレトルトに組織試料がないという事実は、試薬の濃度がこの操作中に変化しないことを保証する。それとは対照的に、試薬が組織試料と接触すれば、試薬はコンタミネーションを生じ、その濃度は変化し得る。よって、特に、さらなる計測機器を必要とせずに、試薬が所定の工程ステップのために、又は、所定濃度で試薬を生産するために、適切かどうかを容易に確認することができる。
【0009】
試薬が低濃度で試薬を生産するためのストック溶液である場合、試薬が所定の最低濃度を有するかどうかを一つの展開で確認される。必要であれば、その後、結果として生じる混合液が所定の工程ステップに適するように試薬が混合されるべき、希釈液の量で好ましい実施態様において決定される。その後、対応する混合比率は、例えば、ディスプレイである出力ユニットを介して出力できる。
【0010】
ストック溶液と希釈液の混合液の生産後、その混合液が所定の工程ステップのために実際に適切であるかどうかを好ましい実施態様において確認される。さらに、その混合液が所定の工程ステップのために適さない場合、所定の工程のステップのために適切にさせる、混合液に添加する際の試薬又は希釈液の量が決定される。次いで、対応する試薬又は希釈液の量は、出力ユニットを介して出力される。
【0011】
一つの展開において、希釈液又はストック溶液の量の正確な決定のために、試薬又は混合液はレトルトに完全に送出(pumped into)される。そのときに、その量は、注入レベルセンサーにより検出され、また、混合液を生産するための、希釈液又はストック溶液の、それぞれの量の決定において考慮される。
【0012】
以下において、本発明は概略図を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は組織プロセッサを示す。
【図2】図2は組織プロセッサを作動するためのフローダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
同一の要素は、すべての図面を通して、同じ参照番号によって特定される。
【0015】
図1は組織試料を処理するためのレトルト(ないし処理容器)22を有する組織プロセッサ20を示す。チューブシステム(例示せず)及びベローズ23を介して、試薬は内部容器24からレトルト22に供給され、また、戻される(ないし再循環)。内部容器24は通風孔29を有するボトムプレート27上に位置している。ボトムプレート27は、入れ子式レールによって組織プロセッサ20から引き抜かれる、引き抜き(プルアウト)装置25の一部である。内部容器24に加えて、外部容器26が組織プロセッサに接続される。
【0016】
試薬がレトルト22に供給されたとき、試薬は、センサー、特に、密度センサーを通過して導かれる。センサーはコントロールユニット32に接続される。コントロールユニット32は、特に、ディスプレイである、出力ユニット34を有する。
【0017】
試薬は、脱水試薬、洗浄試薬、中間(試薬)(intermedia)、組織試料又はキャリア(担体)物質を硬化するための試薬である。(これらの)試薬は、特に、アルコール、キシレン又はパラフィンを含む。組織試料がレトルト22に配置される場合、組織試料は、複数の工程ステップの各々で、(各)試薬によって脱水され、洗浄され、硬化され、そして、キャリア物質に埋め込まれる。そうすることで、全ての各工程ステップにおいて、特定濃度の特定試薬が予め定められる。
【0018】
組織試料がレトルト22に配置しない場合には、組織プロセッサは、試薬、特に、アルコール又はキシレンの濃度の決定のために、特に良好に適している。加えて、決定された濃度に依存して、試薬及び組織試料の処理で作業を容易にする、さらなる計算がなされ得る。
【0019】
図2は組織プロセッサ20を操作するためのコントロールユニット32の記憶装置に保存される、プログラムのフローダイアグラムを示す。プログラムは、試薬の濃度を決定し、試薬がストック溶液として又は所定の工程ステップのために適切であるかどうかを確認し、所定の工程ステップにおける試薬の適切な濃度が生成できる手段によって希釈を提案し、及び/又は、もし試薬若しくは混合液が所定の工程ステップに適しない場合には、適切な訂正提案を決定し、かつ出力する、作動をする。
【0020】
プログラムは、好ましくは、ステップS1で開始され、例えば、組織プロセッサ20の立ち上げ(スタートアップ)直後に開始される。ステップS1において、変数は必要に応じて初期化される。
【0021】
ステップS2において、適合性テストの問合せ“TEST”は、ストック溶液としての、又は、所定の工程のための試薬(例えば、アルコール若しくはキシレン)の適合性が確認されるかどうかを問われることによってなされる。組織プロセッサ20の使用者は、この質問を出力ユニット34によって問われる。適合性テストが実行されない場合、プログラムはステップS3で終了される。適合性テストが実行される場合、プログラムはステップS4に続く。
【0022】
ステップS4では、指示“INSTR”が出力ユニット34に表示される。指示“INSTR”は、試薬又はストック溶液の所定量が、希釈されずに、内部又は外部容器24、26に満たされることを含む。例えば、その量は5リットルである。さらに、その指示は、それぞれの容器24、26が引き抜き(プルアウト)装置25での所定位置に配置されること、又は、所定の外部接続に接続されること、及び/又は、吸引ランス(suction lance)がそれぞれの容器24、26内に導入されることを示すことができる。
【0023】
ステップS5では、適合性テストが続けられるかどうかを継続問合せ“NEXT”によって問われる。適合性テストが継続されない場合、プログラムはステップS6で終了できる。適合性テストが継続される場合、プログラムはステップS7に継続される。
【0024】
ステップS7では、試薬は、ポンプ(送出)指示“PUMP”に依存し、容器24,26からレトルト22へ送出される。
【0025】
ポンプ(送出)操作の間、測定値AV_CONがステップS8で決定され、その測定値は試薬の濃度を代表するものである。測定値AV_CONは、密度センサー28によって検出される。
【0026】
ステップS9で、試薬は、さらなるポンプ(送出)指示“PUMP”によって、それぞれの容器24、26に逆送出ないし送り戻される。
【0027】
ステップS7乃至S9の実行中、レトルト22に組織試料は配置されない。ここに、プログラムの実行中に試薬の濃度が変わらないことが保証される。好ましくは、組織試料がレトルト22に含まれなくてよいこと、又はレトルトに配置されなくてよいことが出力ユニット34によって表示される。
【0028】
ステップS10で、決定された濃度が、所望濃度を代表する値である、所定の所望値SP_CONに等しいかどうかが確認される。ステップS10の条件が合致すれば、その後、処理はステップS11に継続される。ステップS10の条件が合致しない場合、その後、処理はステップS13に継続される。
【0029】
ステップS11では、適切な濃度で試薬を生成するための混合比率“MIX”が実行されるかどうかを計算問い合わせ“CALC”によって問われる。ステップS11の条件が合致すれば、その後、処理はステップS12に継続される。ステップS11の条件が合致しなければ、その後、処理はステップS15で終了される。
【0030】
ステップS12では、混合比率“MIX”が決定され、出力ユニット34に出力される。特に、試薬(特に、ストック溶液)に添加される希釈液の量が決定され、そのため、結果として生じる混合液は所定の工程ステップのために適切である。混合比率“MIX”に加えて、希釈液の正確な量が決定かつ表示でき、例えば、ストック溶液が完全にレトルト22に送出され、かつ、レトルト22でストック溶液の存在量が注入レベルセンサー36によって決定される。あるいは、ストック溶液の存在量は非例示の入力ユニットを介して入力できる。
【0031】
ステップS13では、訂正比率“COR”が決定されたかどうかを計算問い合わせ“CALC”によって問われる。訂正比率“COR”は、結果として生じる混合液が所定の工程ステップに適するように混合液が混合されるべき、ストック溶液又は希釈液の量で示す。ステップS13の条件が合致しなければ、その後、プログラムはステップS15で終了される。ステップS13の条件が合致すれば、その後、プログラムはステップS14に継続される。
【0032】
ステップS14では、訂正比率“COR” が決定され、出力ユニット34に出力される。
【0033】
ステップS15で、プログラムが終了される。
【0034】
本発明は上述の実施態様に制限されない。例えば、ディスプレイないし表示に代えて、又は追加して、別の出力ユニット、例えば、プリンタ若しくは音響的出力ユニットが提供できる。さらに、組織プロセッサは、内部容器24及び外部容器26を接続するための多少の内部又は多少の外部接続をそれぞれ有することができる。さらには、組織プロセッサを操作するためのプログラムは、高次プログラムで実行できる。代替として、プログラムは、個別のサブプログラムに分割でき、それぞれのサブプログラムは、濃度の決定において専用的に、混合比率“MIX”の決定において専用的に、又は、訂正比率“COR”の決定において専用的に使用できる。さらにまた、密度センサー28の代替として、それぞれの試薬の濃度の決定のために別のセンサーも使用できる。
【符号の説明】
【0035】
20 組織処理装置(プロセッサ)
22 レトルト(処理容器)
24 内部容器
26 外部容器
28 密度センサー
32 制御(コントロール)装置
34 出力ユニット
36 注入レベルセンサー
START プログラムの開始
TEST 適合性テストの問合せ
INSTR 指示
NEXT 継続問合せ
PUMP ポンプ(送出)指示
AV_CON 測定値
SP_CON 最低濃度
CALC 計算指示
MIX 混合比率
COR 訂正比率
END プログラムの終了
S1−S15 S1乃至S15の各ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織処理装置(20)を操作するための方法であって、
該方法では、試薬が容器(26)から該組織処理装置(20)のレトルトないし処理容器(retort)(22)に供給され、ここで、該レトルトは如何なる組織試料も含まず、
試薬は該容器(26)に戻されること、
(試薬の該レトルトへの)供給中、(試薬の容器への)送り戻し中、及び/又は、その(供給と送り戻しとの)間に、測定値(AV_CON)が該組織処理装置のセンサーにより検出され、ここで、該測定値は該試薬の濃度を代表する値であること、さらに
(試薬の該レトルトへの)この供給中も、(試薬の容器への)この送り戻し中も、及び/又は、その(供給と送り戻しとの)間でも、組織試料は前記レトルト(22)に配置されないこと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記検出された測定値(AV_CON)に依存して、前記試薬が所定の最低濃度(SP_CON)を有するかどうかを確認される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結果として生じる混合液が所定の工程ステップに適するように、如何なる希釈液の量において前記試薬が混合されるべきか決定され、また、対応する混合比率(MIX)は、出力ユニット(34)を介して出力される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬と希釈液の混合液は前記レトルト(22)に供給され、また、前記混合液が前記所定の工程ステップのために実際に適するかどうかを同時に確認される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記混合液が前記所定の工程ステップのために適さない場合、前記所定の工程ステップのために該混合液を適切にさせる、(該混合液に)添加する際の試薬又は希釈液の量が決定され、また、該試薬又は希釈液の対応する量が出力ユニット(34)を介して出力される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レトルト(22)の注入レベルセンサー(36)によって、前記試薬又は希釈液の存在量が決定され、かつ、該試薬又は希釈液の実際に存在する量が、前記混合液を生産するための希釈液または試薬の量の決定に考慮される、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−43497(P2011−43497A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173387(P2010−173387)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】