説明

経口ペプチド医薬投与形および製造方法

【課題】ペプチドの経口送達のための医薬組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの薬学的に許容されるpH低下剤を含む第1層および医療上有効な量のペプチドを含む第2層を有する形成層を有する医薬組成物を提供する。第2層は医療上有効な量のペプチドを含む。組成物はまた、ペプチドのバイオアベイラビリティを促進するのに有効な少なくとも1つの吸収向上剤を好ましくは第2層に、および腸溶性被膜を形成層の周りに含む。錠剤の好ましい投与形において、pH低下剤と腸溶性被膜との接触を実質的に防ぐ水溶性被膜を、形成層と腸溶性被膜との間に設ける。好ましい実施態様において、ペプチドはサケ・カルシトニン、pH低下剤はクエン酸、吸収向上剤はラウロイル l-カルニチンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口ペプチド医薬投与形(pharmaceutical dosage form)、経口投与されたペプチドのバイオアベイラビリティを高める方法、および本発明におけるペプチドの経口投与によるヒトでの障害の処置に有用な錠剤投与形(tableted dosage form)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サケ・カルシトニンは、骨からのカルシウムの摂取を低下するペプチドホルモンである。このホルモンは、骨関連疾患およびカルシウム障害(骨粗しょう症、パジェット病、悪性腫瘍の高カルシウム血症など)の処置に使用されたとき、骨密度を保持するのを助ける作用を有する。多くの型のカルシトニンが単離されている。ヒト・カルシトニン、サケ・カルシトニン、ウナギ・カルシトニン、エルカトニン、ブタ・カルシトニン、チキン・カルシトニンである。種々のカルシトニン型において顕著な構造的非相同性が存する。例えば、ヒト・カルシトニンを形成するアミノ酸とサケ・カルシトニンを形成するアミノ酸の相同性は、50%である。
【0003】
先行技術で用いられるサケ・カルシトニンは、注射または経鼻投与により通常は投与されている。しかし、カルシトニン投与についてのこれらの様式は、経口投与に比して非常に不便であり、多くの患者に不快感をもたらす。この不便や不快感はしばしば治療処置において患者が実質的に服用しないことにつながる。しかし、経口投与されたときに、サケ・カルシトニンなどのペプチドの再製的血中レベルを達成する能力について、先行技術での報告は見られない。このことは、これらのペプチドが消化管で十分な安定性を欠くこと、および腸管から血液への移行が乏しいことによると思われる。
【0004】
胃および腸のタンパク質分解酵素が、サケ・カルシトニンを分解し、カルシトニンが血流に吸収される前に不活化する。胃のプロテアーゼ(典型的に最適の酸性pHを有する)によるタンパク質分解変性を受けなかったサケ・カルシトニンは、後に小腸でのプロテアーゼおよび膵臓分泌の酵素(典型的に最適の中性から塩基性pHを有する)に遭遇する。サケ・カルシトニンの経口投与から生じる問題は、分子の比較的大きいサイズおよびその有する電荷分布にある。これによって、サケ・カルシトニンが腸壁の粘膜を通過したり、腸刷毛境界膜から血中に移行するのが一層困難になる。これらの追加的な問題がサケ・カルシトニンのバイオアベイラビリティを制限するさらなる原因となり得る。
【0005】
Stern et al. の米国特許5,912,014(特許014)はサケ・カルシトニンを小腸に送達するのに治療的に有用な経口の医薬組成物を開示している。この特許によれば、腸溶被覆でサケ・カルシトニンを保護すると、胃でのサケ・カルシトニンのタンパク質分解変性などを減少できるようである。特許014は、錠剤形態でのサケ・カルシトニンの投与を記載しているが、一般的にペプチドを含む市販可能な投与形を開示していない。例えば、特許014で調製された組成物の打錠時に、いくつかの材料が機器の表面に非可逆的に付着する。さらに、典型的な一層錠は室温条件で保存されたとき、安定性に乏しい。特許014はまた、営業的規模での製造のための単一腸溶被覆中にペプチド、界面活性剤およびpH低下剤を併用することでおきる問題の解決について記載していない。
【0006】
上記のことにもかかわらず、pH低下剤の存在でペプチドの安定性を維持する営業的に可能な投与形が当技術分野で必要である。
【発明の概要】
【0007】
(発明の要旨)
ひとつの態様において、本発明は、ペプチドの経口送達のための医薬組成物を提供する。この組成物は少なくとも2層を有する形成層を含む。第1層は少なくとも1つの薬学的に許容されるpH低下剤を含む。第2層は医療上有効な量のペプチドを含む。組成物はまた、ペプチドのバイオアベイラビリティを促進するのに有効な少なくとも1つの吸収向上剤を含む。第2層にあるのが好ましい。組成物はまた、形成層の周りに腸溶性被膜を含む。
【0008】
本発明の第2態様は、経口送達されたペプチドのバイオアベイラビリティを高めるための方法を提供する。この方法は、ペプチドが少なくとも1つのpH低下剤および少なくとも1つの吸収向上剤とともに、患者の腸に選択的に放出されることを含む。この放出は、腸溶皮膜および水溶性皮膜の保護のもとに、患者の口および胃を経てペプチド、pH低下剤、吸収向上剤が通過した後になされる。腸溶性被膜は胃プロテアーゼとペプチドとの接触を実質的に防ぎ、水溶性皮膜はさらにpH低下剤と腸溶性被膜との接触を防ぐ。
【0009】
本発明の第3態様は、ペプチドの送達のための錠剤投与形およびそれをつくる方法を提供する。この投与形は、少なくとも1つの薬学的に許容されるpH低下剤を含む第1層、および医療上有効な量のペプチドを含む第2層を有する形成層を含む。この投与形はまた、ペプチドのバイオアベイラビリティの促進に有効な少なくとも1つの吸収向上剤、形成層上につくられた水溶性被膜、水溶性被膜上につくられた腸溶性被膜を含む。下記するように、水溶性皮膜はpH低下剤と腸溶性被膜との接触を実質的に防ぎ、それによってpH低下剤による腸溶性被膜の溶解阻止を実質的に防ぐ。
【0010】
投与形をつくる方法において、pH低下剤を顆粒にして、第1層材料をつくる。ペプチドおよび少なくとも1つの吸収向上剤を合わせて第2層材料をつくる。次いで、第1層材料および第2層材料で、少なくとも2層を有する形成層をつくる。この方法は、水溶性皮膜で形成層を被覆し、被膜された形成層をつくり、ついでその形成層上に腸溶性被膜をつくることを含む。
【0011】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明は、本発明についての例示的なものであって、制限的なものでないと理解されるべきである。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明において、カルシトニンやサケ・カルシトニンなどのペプチドでの処置を必要とする患者に、製薬産業において通常の大きさの錠剤中にペプチドを含有する経口投与形を提供する。本発明において、投与形または組成物は少なくとも2層を有する形成層を含む。本明細書で使用される用語「形成層」は、確実に結合された材料の層からなるもの、しかし層間にほとんど相互作用のないものについての通常の意味を有する。第1層は少なくとも1つの薬学的に許容されるpH低下剤を含み、第2層は医療上有効な量のペプチドを含む。組成物はまた、ペプチドのバイオアベイラビリティを促進するのに有効な少なくとも1つの吸収向上剤、および形成層の周りに腸溶性被膜を含む。組成物はカプセルまたは錠剤の形態であってよく、錠剤の形態が好ましい。この場合、水溶性被膜を形成層の上、形成層と腸溶性被膜の間に適用する。下記する理由により、ペプチドがサケ・カルシトニンであり、pH低下剤がクエン酸であるとき、ラウロイルl-カルニチン(lauroyl l-carnitine)などの吸収向上剤を第2層に組み込むのが望ましい。投与の量および回数は当技術分野で周知の方法による。
【0013】
利益を受け得る患者は、ペプチドの投与により処置可能な障害および疾患の患者である。本発明は、例えば、骨粗しょう症、パジェット病、悪性腫瘍の高カルシウム血症などのペプチドで処置し得る疾患に使用し得る。
【0014】
サケ・カルシトニンが本発明における使用に好ましいペプチドである。なぜなら、このものは、広く特性が解明されており、性質が知られ、ヒト・カルシトニンに勝る多くの利点を有し、ヒト患者用の医薬として使用されているからである。ヒト骨粗しょう症の処置のためにヒト・カルシトニンの代わりにサケ・カルシトニンを用いることにより提供される利点は、大きい力価、無痛性、大きい半減期である。
【0015】
本発明の医薬組成物は、バイオアベイラビリティに対する一連の異なる非関連の天然バリアーを克服する。医薬組成物の種々の構成成分が各々に適したメカニズムによって異なるバリアーを克服するように作用して、その結果としてペプチドのバイオアベイラビリティに対する相乗的作用を得る。しかし、下記するように、ペプチド、腸溶性被膜、pH低下剤の本来の物理化学的性質は、それ以上でないが、併用されたときに、バイオアベイラビリティを強化するのに、また投与形の安定性向上に反生産的でもある。
【0016】
本発明のペプチドは、典型的には経口投与する。本発明において、胃のプロテアーゼ(大部分が酸性pH領域で活性)および腸または膵臓のプロテアーゼ(大部分が中性または塩基性pH領域で活性)によりペプチドのタンパク質分解変性が減少する。さらに、安定性が高まり、界面活性剤が腸上皮バリアーを経るペプチド活性物質の通過を助ける。
【0017】
理論に縛られるものではないが、本発明において、ペプチドとそれを変性し得る胃プロテアーゼとの接触を実質的に防ぐ腸溶皮膜などの適当な運搬体の保護の下に、ペプチドが胃を経て運ばれる。従って、投与形が胃プロテアーゼに曝露されない十分な時間、医薬組成物を被膜が実質的に保護するような腸溶性被膜についての材料および被膜の適当な厚さを選択することが望ましい。本発明の医薬組成物が胃を通過し、そして塩基性から中性のpHが支配的であり、プロテアーゼが塩基性から中性のpHを最適とする腸領域に入ると、本組成物は、ペプチドと酸を放出する(互いに接して)。
【0018】
酸が局所の腸pHを下げ、活性物質が多くの腸プロテアーゼにとっての最適領域以下のレベルに放出されると考えられる。このpHの低下は腸プロテアーゼのタンパク質分解活性を減少し、起こり得る変性からペプチドを保護する。換言すると、これらのプロテアーゼの活性がpH低下剤による一時的な酸性環境でもって減少する。好ましくは、局所腸pHが5.5以下、特に約4.0と5.5との範囲に一時的に低下するように十分な酸を供給する。下記するような(および米国特許5,912,014(出典明示により本明細書の一部とする))炭酸水素ナトリウム塩試験が必要な酸の量の指標になる。好ましくは、低下した腸pHの条件が、タンパク質変性からペプチド物質を保護するのに十分な時間、ペプチド物質の少なくともいくらか(好ましくは、大部分またはすべて)が腸壁から血流に通る機会を有するまで、持続する。
【0019】
吸収向上剤は、溶解性向上剤および/または運送向上剤であって(特許014に記載のように)、ペプチド物質の腸から血液への運送を助け、運送が腸pHの低下および腸タンパク質分解活性の低下の期間によく生じるように、プロセスの速度を速める。多くの界面活性剤が溶解性向上剤および摂取向上剤の両方として作用し得る。さらに、理論に縛られる意図でないが、溶解性の向上が(1)本発明活性成分の腸の水性部分へのいっそうの同時的放出、(2)腸壁の粘膜層でのペプチドの優れた溶解性およびそれを経る運送を提供すると考えられる。ペプチドが腸壁に達すると、摂取向上剤が腸の刷毛境界膜から血液へのよりよい輸送を、細胞または周辺通過で提供する。さらに詳しく下記するように、多くの好ましい化合物は両機能を提供し得る。この場合、両機能を用いる好ましい実施態様は、わずか1つの追加構成成分を医薬組成物に加えることにより、両機能を提供できる。なお、吸収向上剤が両機能をかならずしも提供しなければならないわけでない。注意すべきは、本明細書での用語「吸収向上剤」が溶解性向上剤あるいは運送向上剤、またはその両方として機能し得ることである。特に、ラウロイルl-カルニチンに関して、この吸収向上剤は少なくとも溶解性向上剤として機能するようである。
【0020】
本発明の医薬組成物の好ましい成分の各々を別個に下記で説明する。複数のpH低下剤または界面活性剤の組合せを、単一のpH低下剤または界面活性剤を用いるのと同様に使用できる。いくつかの好ましい組合せを下記する。
【0021】
ペプチド
ペプチドは市販されている典型的な投与形で医療上有効な量で存在する。その厳密な量は、使用するペプチド、溶解性、処置される疾患または病状、バイオアベイラビリティ、さらには当技術分野で周知の多くの他の因子によって変る。ペプチドがサケ・カルシトニンであるとき、ペプチドが全医薬組成物(被膜は除く)の全重量に比して約0.02−0.2重量%の量で存在し得ることが分かった。カルシトニンが本発明で使用する典型的なペプチドであり、サケ・カルシトニンが好ましいが、本発明で使用される他のペプチドは特許014に記載のペプチドを含む。
【0022】
ペプチド前駆体を公知の化学的または組換えの合成法によりつくり得る。しかし、後者が非常に費用効率的である。組換えサケ・カルシトニン(rsCT)は、例えば、グリシン伸長サケ・カルシトニンを大腸菌中でグルタチオン-S-トランスフェラーゼとの溶解性融合タンパク質として、特許014に記載のように、つくり得る。
【0023】
pH低下剤
ペプチドの毎投与とともに投与されるpH低下剤の全量は、放出されたときに腸の局所領域に存在するプロテアーゼの最適pH以下に局所腸pHを実質的に低下するのに十分な量であることが好ましい。必要とする量は、使用される化合物のタイプおよび実施において化合物により提供されるプロトンの均等物を含むいくつかの因子により必然的に変り得る。投与されたペプチドの優れたバイオアベイラビリティを提供するのに要する典型的な量は、0.1M炭酸水素ナトリウム10mlの溶液に加えたときに、その炭酸水素ナトリウム水溶液のpHを5.5以下に、好ましくは4.0−5.5に低下する量である。
【0024】
本発明のpH低下剤は、消化管において毒性がなく、水素イオンを放出し得るか(移行性の酸)または局所環境から高い水素イオンを誘導し得るような、薬学的に許容される塩であり得る。またこのような化合物のいかなる組合せでもあり得る。化合物の例は、特許014に記載のように周知である。本発明において、クエン酸が好ましい。
【0025】
吸収向上剤
1以上の吸収向上剤(本明細書で界面活性剤ともいう)が、ペプチドのバイオアベイラビリティを促進するのになんらかの改善を示す量で好ましくは存在する。典型的には、この量は医薬組成物(腸溶性被膜は除く)の全重量に比して約0.1−20.0重量%を構成する。好ましい吸収向上剤は、溶解性向上剤あるいは摂取向上剤またはその両方として作用する界面活性剤である。上記したように、「溶解性向上剤」は、本発明の活性構成成分が最初に放出された水性環境に溶解するか、腸壁を形成する粘膜層の親油性環境に溶解するか、またはその両方についての能力を改善する。「摂取向上剤」(しばしば、溶解性向上剤として使用されるのと同じ界面活性剤である)は、ペプチド物質が腸壁を通過するのを容易にするものである。
【0026】
本発明の範囲内において、1以上の吸収向上剤はひとつの機能のみをなし得るか(例えば、溶解性)、または1以上の吸収向上剤は他の機能のみを発揮し得る。いくつかの化合物の混合物であることも可能であり、米国特許5,912,014に記載のように、そのある物は溶解性を改善し、ある物は摂取を改善し、および/または、ある物は両方を改善する。理論に縛られる意図でないが、摂取向上剤は、(1)腸壁外膜の疎水性領域の乱雑を増加し、細胞通過の輸送を行うこと、(2)膜タンパク質のろ過により細胞通過の輸送を増加すること、または(3)細胞周辺の輸送増加のための細胞間のポア間隔を広げることにより作用し得ると考えられる。
【0027】
界面活性剤を吸収向上剤として使用するとき、この物は混合を容易にするために自由に流動し得る粉末であることが好ましい。しかし、ペプチドの本来の特性(例えば、等電点、分子量、アミノ酸組成など)からして、ある種の界面活性剤が好ましい。実際、ある物はペプチドの電荷部分と相互作用して、その吸収を妨げて、バイオアベイラビリティの低下という望ましくない結果をもたらすことがある。どのような界面活性剤がペプチドのバイオアベイラビリティを増加するのに最も適しているかを決めることは当業者の知るところである。例えば、ペプチドがサケ・カルシトニンを含むとき、吸収向上剤として使用される界面活性剤は、下記よりなる群から選択できる:(i)コレステロール誘導体であるアニオン界面活性剤(例えば、胆汁酸)、(ii)カチオン界面活性剤(例えば、アシルカルニチン、ホスホリピドなど)、(iii)非イオン界面活性剤、(iv)アニオン界面活性剤(特に直線状炭化水素領域を有するもの)のサケ・カルシトニンについての負電荷中和剤との混合物。
【0028】
ペプチドがサケ・カルシトニンであるとき、負電荷中和剤は、限定でないが、アシルカルニチン、塩化セシルピリジニウムなどを含む。好ましくは、電荷中和剤はラウロイル l-カルニチンである。吸収向上剤が酸性pH、特にpH=3.0〜5.0の範囲で溶性であることが好ましい。単一の吸収向上剤のみを用いるとき、カチオン界面活性剤が好ましい。これは、ペプチドの血中への吸収を妨害するようなペプチドとの相互作用を避けるのがその意図である。
【0029】
他の選択的成分
本発明のすべての医薬組成物は、ポビドンなどの通常の医薬結合剤、稀釈剤、滑剤、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、クロスカルメロース・ナトリウムなどの崩壊剤、保存剤、色素などを通常の大きさおよび量で選択的に含み得る。ある実施態様において、腸プロテアーゼの基質として作用し得るペプチドを加える(好ましくは、全医薬組成物(腸溶性被膜は除く)の重量に比して0.2〜10.0%)。
【0030】
腸溶性被膜
胃プロテアーゼからペプチドを保護し、本発明の活性構成成分を腸に放出するすべての腸溶性被膜が適している。腸溶性被膜は、胃などの低いpH環境で溶解しない被膜を提供することにより機能する。多くの腸溶性被膜は当技術分野で知られており、本発明において有用である。例として、酢酸フタル酸セルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合物(methacrylic acid-methyl methacrylate copolymer)がある。
【0031】
すべての活性構成成分が投与形から放出され、できるだけ同時に腸内環境で溶解されることが非常に望ましい。好ましくは、投与形が小腸中に活性構成成分を放出する。このために、腸溶性被膜材料を使用するのが望ましい。好ましくは、腸溶性被膜は医薬組成物の残留物(腸溶性被膜を除く)重量の20%を越えない。さらに好ましくは、非被膜組成物重量の3〜15%である。
【0032】
水溶性被膜
pH低下剤と腸溶性被膜との接触を実質的に防ぐいかなる水溶性被膜も適当である。多くの水溶性被膜が当技術分野で知られており、本発明において有用である。例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースがある。
【0033】
上記のように、すべての活性構成成分が投与形から放出され、できるだけ同時に腸内環境で溶解されることが非常に望ましい。しかし、pH低下剤は、局所のpHを下げることで、腸溶性被膜の分解を通常は阻止する。この問題を解決するために、本発明のひとつの実施態様において、投与形と腸溶性被膜との間に位置する水溶性被膜を準備する。この被膜によって、投与形と腸溶性被膜との接触を実質的に防止する。
【0034】
好ましくは、腸溶性被膜は医薬組成物の残留物(水溶性腸溶性被膜を除く)の20重量%を越えない。典型的には、非被膜組成物の0.5〜15重量%である。さらに好ましくは、非被膜組成物の0.5〜5重量%である。
【0035】
投与形およびその製造
本発明の投与形は、少なくとも2層の形成層をもつ錠剤を典型的に含む。第1層の主要成分は典型的に上記のようなpH低下剤である。第2層の主要成分は典型的にペプチドであり、選択的に吸収向上剤である。上記のように組合せたときに、構成物は少なくとも2層を有する錠剤を形成する。製造が比較的容易なことから2層錠が好ましいが、第2層が実質的にペプチドからなり、第3層が界面活性剤を含むような3以上の層を有することも可能である。
【0036】
第1層は、第1層材料を形成する少なくとも1つのpH低下剤を顆粒にして製造する。クエン酸が好ましいpH低下剤であるが、クエン酸単独では必要な圧縮性を発揮しない。従って、顆粒化の際または後に、他の物質をpH低下剤に加えて、機械的な性質を改善できる。具体的には、流動性基底における顆粒化の際に、微結晶性セルロースなどの充填剤およびポビドン結合剤を、当技術分野で周知の量で加え得る。ついで、得た顆粒を乾燥し、当業者に周知の方法でミルで適当なサイズとする。さらに、上記のように、滑剤および滑沢剤と組み合せて顆粒の圧縮性および流動性を改善して、第1層をつくる。
【0037】
第2層材料は、ペプチドと少なくとも1つの吸収向上剤(すなわち、界面活性剤)を組み合せてつくる。第2層も流動基底でつくることができる。ペプチドが少量で比較的高い活性を表すので、ペプチドとポビドンなどの結合剤を界面活性剤または少なくとも1つの賦形剤と界面活性剤の上に噴霧して、第2層をつくる。上記のように、本発明において、界面活性剤は典型的にアシルカルニチンであって、ラウロイル l-カルニチンが好ましい。選択的な賦形剤は、微結晶性セルロースなどの充填剤を、当業者に理解されるように、層間の適当な接着を提供するのに十分な量で典型的に含む。得られた顆粒を乾燥し、当業者に周知の方法で適当なサイズにする。最後に顆粒を混合機に移す。そこで、顆粒をクロスカルメロースなどの崩壊剤または1以上の他の崩壊剤と選択的に混合する。崩壊剤の量は顆粒の約10.0重量%までであり、約2.0重量%が好ましい。崩壊剤のないのは選択的であるが、ペプチドのバイオアベイラビリティが弱まることがある。ペプチドの完全な放出がpH低下剤と同じ時に起こり得ないからである。
【0038】
ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸などの他の滑沢剤および接着剤、およびコロイド状ニ酸化ケイ素やポビドンなどの他の賦形剤を加えて、当技術分野で知られている方法で、第2層材料の性質を改善できる。
【0039】
ついで、一部の第1層材料を標準的な二層打錠機に移し鋳型に充填する。第1層材料を部分的に圧縮して第1層をつくる。部分的圧縮は、第2層材料を鋳型に加えるときに、第1層材料と第2層材料との実質的な混合を防ぐために必要である。第1層材料の部分的圧縮に続き、第2層材料を第1層含有の鋳型に加える。ついで、第1および第2層材料を一緒に圧縮して、2層をもつ錠剤をつくる。
【0040】
典型的には、第1層材料は最終錠剤の全重量の約50〜90%を占める。好ましくは、第1層材料は最終錠剤の全重量の約70%を占める。典型的には、第2層材料は最終錠剤の全重量の約50〜10%を占める。好ましくは、第2層材料は最終錠剤の全重量の約30%を占める。
【0041】
第1層材料を層中に前もって部分的に圧縮してあるので、第2層材料と第1層材料との実質的な混合を回避できる。本発明の2層構造がpH低下剤とペプチドおよび界面活性剤との接触を実質的に防ぐ。具体的には、2層間で、0.1%以下のペプチドがpH低下剤と典型的には接触する。
【0042】
錠剤を打錠機から移し、2層錠芯を上記の組成物を有する水溶性被膜またはシール被膜で被覆する。被覆は当技術分野で知られている方法で行う。上記のように、水溶性被膜がpH低下剤と適用の腸溶性被膜との接触を実質的に防止する。
【0043】
水溶性被膜を乾燥した後、錠剤に腸溶性被膜を被覆する。上記のように、腸溶性被膜は、酸性条件(低pH)で溶解しないので、腸溶性被膜が胃の酸性状態で錠剤の溶解を実質的に防ぎ、錠中のペプチドを胃中に存在する種々のプロテアーゼおよび消化酵素から保護する。被覆された錠剤が小腸(高い局所pHを有する)に入ると、腸溶性被膜が溶解する。しかし、本発明において、腸溶性被膜とpH低下剤との間に位置する別個の被膜がないと、pH低下剤が腸溶性被膜の溶解を、pH低下剤による低局所pHでもって阻止することが分かった。このように、腸溶性被膜を効率的に溶解し、活性物質の放出の遅延を防ぐために、本発明のひとつの実施態様では、腸溶性被膜の前に水溶性被膜でもって錠剤を被覆する。従って、腸溶性被膜が錠剤中に存在するpH低下剤による阻害なしに容易に溶解できる。
【0044】
下記の実施例は、本発明の代表的なものであり、限定的なものでない。
【実施例】
【0045】
実施例1
表1は、本発明の典型的な実施態様についての例示的な記述である。第1層pH低下剤顆粒をGPCG-5流体基底ユニット(Glatt Air Techniques, Inc. 製)でもって処理した。さらに、第2層ペプチド/界面活性剤顆粒をGPCG-3流体基底ユニット(Glatt Air Techniques, Inc. 製)でもって処理した。サイズ00スクリーン装着の市販 Fitzmill を用い高速のハンマー・フォワード・モードで、顆粒化の前に界面活性剤を粉にした。水は処理のためにのみ存在し、錠への圧縮の前に蒸発せしめた。
【0046】
表1:第1および第2層の典型的な顆粒/混合物の組成
【表1】

【0047】
サケ・カルシトニン/結合物質溶液を界面活性剤および賦形剤に適用する際に、顆粒のサイズが徐々に大きくなる。しかし、これらの顆粒は乾燥中に小さい粒子に砕けて、中程度の流動性をもつ材料となることを認めた。
【0048】
ポビドン結合剤溶液をクエン酸と微結晶性セルロースとの流体基底上に噴霧して、クエン酸を顆粒にした。得られる乾燥材料は高度に顆粒化され、塊がなく流動性である。表1の下部の「最終混合」成分は、最初の顆粒化、乾燥、粉化の後に各々の顆粒に加えたものである。
【0049】
2層錠を Key BBC-4 2層打錠機(Key International, Inc., Englishtown, New Jersey 市販)でもって打錠した。クエン酸混合物を第1層として使用し、打錠機の鋳型にまず入れ、ついで部分的に圧縮した。部分的圧縮の後にサケ・カルシトニンと界面活性剤の顆粒を鋳型に加え、両層を一緒に圧縮して層化された錠剤を作った。比較例として、単層錠剤の溶解性試験を行った。ここでは、ペプチド、界面活性剤、pH低下剤を単一層に組合せた。表3に示す。
【0050】
表1記載の材料から製造された錠剤の相対的溶解性を調べるために、表に示す組成を有する錠剤を2つの1g乾燥剤円筒とともに誘導密封90ccHDPE瓶に入れた。溶解性試験の結果を表2に示す。表2において、高圧液体クロマトグラフィ−を用いて、%LD(ラベル・クレーム)を3錠の平均値として決定した。従って、最初の%LCを投与形中に存在するペプチドの量に関し、続く測定のベースラインとしてのみ使用した。「回収%」を最終%LC÷最初%LCx100で計算した。%表示の「保存条件」を相対湿度(RH)%として記載する。
【0051】
表2:上記の2層打錠により製造されたサケ・カルシトニン(ペプチド)0.2mg2層腸溶被覆錠剤の3か月の回収
【表2】

【0052】
表3記載の錠剤は、表1に表示と類似の材料を用いて Manestry Beta Press で製造した。各錠はペプチド約2mg、pH低下剤約500mg、界面活性剤約50mgを含有する。最後の例において、各錠は微結晶性セルロース約100mgも含有する。構成成分を表3記載の方法で組み合せて単層錠をつくる。
【0053】
表3:単層腸溶性被膜錠中のサケ・カルシトニンペプチドの保存3か月後の安定性についての異なる安定化法の評価
【表3】

【0054】
表2と3のデータを比較すると、多層錠においてペプチドをpH低下剤と分離することにより、ペプチドの在庫可能期間が有意に増加するのがわかる。例えば、表2に示すように、40℃および75%相対湿度で、71.8%のペプチドを2層錠から3か月後に回収した。しかし、単層錠については、表3に示すように、40℃および75%相対湿度で、安定化法に応じて14%、23%、45%のペプチドしか3か月後に回収し得なかった。
【0055】
次の実施例において、一連の2層錠を強度範囲0.05〜0.5mgで製造し、1セットの分析に供した。表4は、サケ・カルシトニン0.5mg2層腸溶錠の正確な組成を示す。ステアリン酸マグネシウムが好ましいが、表4に示すように、ステアリン酸を第2層に使用した。医薬活性成分が他の成分に比して少量存在するので、結合液中のサケ・カルシトニンの比較的少量を溶解することで、他の成分の量を保持しながら、すべての低い錠剤強度をつくった。KeyBBC-4回転圧を用いて、表5に揚げるガイドに従って、最終混合物を楕円形の無地表面2層錠(0.720x0.365x0.052)に打錠した。次いで錠芯をシールし、腸溶性被膜を施した。
【0056】
表4:サケ・カルシトニン0.5mg2層腸溶錠の組成
【表4】

【0057】
表5:サケ・カルシトニン0.5mg2層腸溶錠の打錠に用いられたガイド
【表5】

【0058】
活性医薬成分を錠剤中に非常に低レベルで組み込む。従って、錠含量の均一性に問題があるかも知れない。このために、方法の初期段階において、トップ噴霧流動基底方法がポリペプチドを多量の賦形剤に均質に分布するのに最上の手段であると結論した。表6は、サケ・カルシトニン0.05、0.1、0.2、0.5mgの2層腸溶性被膜錠についての均質的含量均一性、溶解、安定性を示す。
【0059】
表6:サケ・カルシトニン(ペプチド)2層腸溶性被膜錠についての含量均一性、溶解、安定性
【表6】

【0060】
1.10錠を用いてサケ・カルシトニンおよびラウロイル l-カルニチンの平均含量均一性および%RSRを決定した。
2.溶解結果は6錠の平均および範囲を示す。
3.30錠を2つの1g乾燥剤円筒とともに誘発密封90ccHDPE瓶に入れた。安定性は3錠の平均値の結果である。
4.最終%LC+最初LCに従い計算した。
5.腸溶性被膜錠の酸性段階の溶解を緩衝段階の120分前に試験した。
註:すべてのサンプルをHPLCで試験した。0.05、0.1、0.2mg錠についての安定性試験は、内容単一性および溶解データを得るのに使用したバッチと異なるバッチに由来する。
【0061】
最終錠剤のアッセイによると、すべての強度がサケ・カルシトニンおよびラウロイル l-カルニチンの両者について優れた含量均一性を有し、米国薬局方の含量均一性基準(全錠がLCの85%−115%、RSD6%)に合格する。個々の試験錠剤のほとんどすべてがラベルクレーム値の5%内にあり、いずれの錠剤もLCから7%を越えて異ならなかった。さらに、錠剤の相対標準偏差は範囲が0.9〜1.6%で小さかった。溶解検査において試験錠剤のいずれの酸性媒質に活性医薬成分を検出しなかった。これは、すべての錠剤用量が腸溶性被膜錠についての米国薬局方溶解要件を満足することを表す。表6に示すように、腸溶膜はサケ・カルシトニンの溶解を緩衝液中で少なくとも15分間遅らす。その後60−75分を、坦持された錠剤の75%以上の溶解に必要とする。3強度の安定結果によると、活性医薬成分の最初量の90%以上を室温保存3月後に回収できた。さらに、わずかに15%を越える薬剤しか0.5mg錠から室温での保存6か月後に認められなかった。これらのデータから、室温保存の安定性はおそらく3から6か月であろう。6か月間の冷蔵庫での保存サンプルについての分析によると、サケ・カルシトニン錠の長期間保存に5℃が必要条件であろう。
【0062】
次のサンプルで、サケ・カルシトニン0.5mgの2層腸溶性被膜錠の臨床バッチを、表4を用いて製造した。この試験で第1層および第2層の顆粒をGPGC−5液体床処理機で調製した。乾燥顆粒を Comil (Quadro Engineering, Inc., Ontario, Canada)で砕き、顆粒を砕かれた顆粒外賦形剤と24リットル Matcon Buls bin 混合機で別個に混合した。Key BBC-4 2層回転圧縮機を用いて、最終混合物を楕円形の無被覆2層錠(0.720x0.365x0.052)に打錠した。表5に記載の指針による。粉砕強度を打錠後すぐに硬度テスターで測定した。錠芯を密封被覆し、24" Accella-Cota 機で腸溶性被膜を施した。
【0063】
サケ・カルシトニン0.5mg臨床用バッチを、オープンラベル、単一用量、無作為、3処置フェーズ交差設計(Hammersmith II 試験)を採用する単一センター試験で検査した。全16人の健常ボランティアー、男性8人および女性8人が薬物試験に参加した。各対象者が試験錠の経口投与を受け、別時にポジティブ対照として吸入カルシトニン処方の1投与(0.04mg)を受けた。対象者は投与日の前夜から絶食したが、水は自由に飲むことが許されていた。各経口フェーズについて、血液サンプルを投与前および投与後30分毎に300分まで採取した。7日の洗い出し期間を次の処置フェーズまでの間に設けた。血漿カルシトニン濃度を PPD Pharmoco, Richmond, Virginia により測定した。臨床試験用証拠からの試験結果の解析で、典型的な2層製剤がサケ・カルシトニンポリペプチドの経口吸収を促進するのに有効であることを確認した。サケ・カルシトニンの定量的レベルを経口投与形の投与後に大部分(80%以上)の対象者の血漿で検出できた。一般的に、薬力学パラメーターは大きい対象者間の差異を示した。経口錠投与の平均Cmax値は範囲0−800で167±218pg/mlであった。Tは応答を示す対象者において範囲が135−360分であり、平均値が216±70であった。非常に対照的に、吸入投与を受けた対象者の19%未満が検出可能な血液レベルであった。
【0064】
次の実施例で、プラセボおよび活性サケ・カルシトニン0.1mg2層腸溶性被膜錠のパイロット的規模拡大バッチを調製し、完全な製造法に問題がないかを調べ、規模拡大での製造条件を定め、この方法の製造部署への移行の助けとした。錠剤の調製を、表4に表示の一般処方の使用で0.5mgよりも0.1mgで行い、あるいはプラセボバッチの場合に非活性医薬成分で行った。
【0065】
第1層および第2層の顆粒を、表7に記載の製造条件で、GPGC−60液体床製造機およびトップ噴霧形態で製造した。
【0066】
表7.クエン酸およびサケ・カルシトニン/ラウロイル l-カルニチンの顆粒のパイロット的規模での製造に用いられた方法条件、Glatt Air Techniques, Inc. 製のGPGC−60液体床製造機を使用
【表7】

【0067】
クエン酸顆粒の2サブロット(各65kgバッチ)およびサケ・カルシトニン/界面活性剤顆粒の1ロット(48kgバッチ)を調製した。クエン酸の各サブロットは同じ条件で顆粒化した。すなわち、ポビドン結合剤溶液をクエン酸および微結晶性セルロースの液体床上に噴霧し、ついで湿気含量1w/w%以下に乾燥した。クエン酸顆粒は高度に顆粒化されており、基本的に塊がなく、流動性である。サケ・カルシトニン/界面活性剤顆粒の調製は、ポビドンおよびサケ・カルシトニンの溶液を微結晶性セルロースおよびラウロイル l-カルニチンの床上に適用して行い、ついで顆粒をチェンバー内で湿気含量1w/w%以下に乾燥した。得られた調製物は中程度の流動性を有する細かい物であった。3顆粒の粒子サイズ分布密度を表8に示す。
【0068】
表8.パイロット的規模のGPGC−60で製造された第1および第2層の顆粒の粒子サイズ分布および密度
【表8】

【0069】
すべての顆粒が、500PPMでセットされ、サイズ 2F094R037/41 スクリーンを備える Comil (Quadro Engineering, Inc., Ohtario, Canada)を通過した。両クエン酸顆粒を、5分間15RPMで1工程で塊のない顆粒外賦形剤とともに500Lの Matcon Buls Bin 混合機で混合した。その後、ステアリン酸滑沢剤を混合物に加え、さらに3分間混合を続けた。すべての混合物は取り出す際に bin から円滑に流れ出た。
【0070】
Key BBC-4 2層回転圧縮機を用いて、最終混合物を楕円形の無被覆2層錠(0.720x0.365x0.052)に打錠した。表5に記載の指針による。圧縮を35ステーションで完全にし、18RPMで行った。粉砕強度を打錠後すぐに硬度テスターで測定した。個々の層重量は全圧縮操作を通じて一定であった。粘着の問題を、2層処方の長時間圧縮後で認めなかった。
【0071】
錠芯の脆砕性検査により、錠剤がチッピングおよび/または2層への欠損をほとんど起こさなかった(4分間の回転後で0.01%脆砕性)。錠芯を密封被覆し、24" Accella-Cota 機で腸溶性被膜を施した。最終の腸溶性被膜錠は視覚的に合格した。
【0072】
すべての錠芯を被覆レベル3w/w%のヒドロキシプロピルメチルセルロース被膜系で密封被覆した。ついで100部の固形ポリマー、20部のクエン酸トリエチル、10部のタルク(全20w/w%固体含量)を含量する Eudragit L30D を基にする(メタクリル酸およびメタクリル酸塩ポリマー(methacrylic and methacrylate polymer))腸溶性被膜分散液で、標的被覆レベル10w/w%で腸溶被覆した。被覆操作を、被膜しようとする錠芯の量によって次のいずれかを用い行った。Freund Hi-Coater Model HCT-30, Vector Corp., Marion, IA USA (<1kg錠芯)、24" Accela-Cota, Thomas Engineering, Inc., Hoffman Estates, IL, IA USA (<6kg錠芯)、48" Accela-Cota (>90kg錠芯)。
【0073】
いくつかの具体的な実施態様および実施例を参照して本発明を説明および記述したが、本発明はこのような詳細説明に限定されるべきものではない。むしろ、特許請求の範囲は、その範囲および均等域内に、本発明の精神を逸脱しない限り、種々の修飾を含むと解されるべきものである。
【0074】
本発明は、例えば以下の発明を含む。
1:ペプチドの経口送達のための医薬組成物であって、
少なくとも1つの薬学的に許容されるpH低下剤を含む第1層および医療上有効な量のペプチドを含む第2層を有する形成層;
該ペプチドのバイオアベイラビリティを促進するのに有効な少なくとも1つの吸収向上剤(absorption enhancer);
形成層の周りに腸溶性被膜;
を含む医薬組成物。
2:該第2層が該吸収向上剤をさらに含む、上記1の医薬組成物。
3:該医薬組成物が形成層の周りで該形成層と該腸溶性被膜との間に位置する水溶性被膜をさらに含む、上記1の医薬組成物。
4:該腸溶性被膜が、医薬組成物の該腸溶性被膜を除く残留物重量の20%を越えない重量で存在する、上記1の医薬組成物。
5:該腸溶性被膜が、医薬組成物の該腸溶性被膜を除く残留物重量の5−15%の重量で存在する、上記1の医薬組成物。
6:該吸収向上剤が界面活性剤(surface active agent)である、上記1の医薬組成物。
7:該界面活性剤が吸収性またはバイオ分解性である、上記6の医薬組成物。
8:該界面活性剤をアシルカルニチン、ホスホリピド、胆汁酸よりなる群から選択する、上記6の医薬組成物。
9:該界面活性剤がラウロイル−l-カルニチンを含む、上記6の医薬組成物。
10:該ペプチドがサケ・カルシトニンを含む、上記1の医薬組成物。
11:該pH低下剤を、0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液10mlのpHを5.5以下に低下するのに十分な量で加える、上記10の医薬組成物。
12:賦形剤をさらに含む、上記1の医薬組成物。
13:該賦形剤が微結晶性セルロースを含む、上記12の医薬組成物。
14:該pH低下剤がクエン酸を含む、上記1の医薬組成物。
15:経口送達されたペプチドのバイオアベイラビリティを高める方法であって、
該ペプチドが、少なくとも1つのpH低下剤および少なくとも1つの吸収向上剤とともに、腸溶性被膜および水溶性被膜の保護のもとに、患者の口および胃を経て該ペプチド、pH低下剤、吸収向上剤が通過した後に患者の腸に選択的に放出されること;
なお、該腸溶性被膜は胃プロテアーゼと該ペプチドとの接触を実質的に防ぎ、そして;
該水溶性皮膜はさらに該pH低下剤と該腸溶性被膜との接触を実質的に防ぐものである;
を含む方法。
16:該pH低下剤が、0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液10mlのpHを5.5以下に低下するのに十分な量で該医薬組成物中に存在する、上記15の方法。
17:ペプチドの経口送達のための錠剤投与形(tableted dosage form)であって、
少なくとも1つの薬学的に許容されるpH低下剤を含む第1層、および医療上有効な量のペプチドを含む第2層を有する形成層;
該ペプチドのバイオアベイラビリティの促進に有効な少なくとも1つの吸収向上剤;
該形成層上で形成された水溶性被膜;
該水溶性被膜上で形成された腸溶性被膜、なお、該水溶性被膜は該pH低下剤と該腸溶性被膜との接触を実質的に防ぐ;
を含む投与形。
18:該ペプチドがサケ・カルシトニンを含む、上記17の投与形(dosage form)。
19:該pH低下剤が、0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液10mlのpHを5.5以下に低下するのに十分な量で存在する、上記18の投与形。
20:該pH低下剤がクエン酸を含む、上記17の投与形。
21:該吸収向上剤がラウロイル−l-カルニチンを含む、上記17の投与形。
22:該水溶性被膜がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、上記17の投与形。
23:該腸溶性被膜がメタクリル酸とメタクリル酸塩の重合物である、上記17の投与形。
24:該第1層が崩壊剤をさらに含む、上記17の投与形。
25:該崩壊剤がクロスカルメロース・ナトリウムを含む、上記17の投与形。
26:該ペプチドがサケ・カルシトニンを含み;
該pH低下剤が、0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液10mlのpHを5.5以下に低下するのに十分な量で存在するクエン酸を含み;
該吸収向上剤がラウロイル−l-カルニチンを含み、
該水溶性被膜がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、
該腸溶性被膜がメタクリル酸とメタクリル酸塩の重合物を含み、
第2層がクロスカルメロース・ナトリウムをさらに含む、
上記17の投与形。
27:投与形をつくる方法であって、下記の工程:
pH低下剤を顆粒化して、第1層材料をつくること;
ペプチドおよび少なくとも1つの吸収向上剤を組合せて第2層材料をつくること;
該第1層材料を鋳型に加えること;
該第2層材料を鋳型に加えること;
該第1層材料および該第2層材料をともに圧縮して、2層を有する形成層をつくりこと;
該形成層を水溶性被膜で被覆して、被覆された形成層をつくること;
該被覆された形成層に腸溶性被膜を適用して、錠剤をつくること、なお、該水溶性被膜は該第1層と該腸溶性被膜との接触を実質的に防ぐものである;
を含む方法。
28:該第2層を鋳型に加える前に該第1層を部分的に圧縮する、上記27の方法。
29:組合せ工程が、賦形剤を該ペプチドおよび該吸収向上剤と組合すことをさらに含む、上記27の方法。
30:該賦形剤が微結晶性セルロースを含む、上記29の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドの経口送達のための錠剤の製造方法であって、以下の工程:
pH低下剤を顆粒化して、第1層材料をつくること;
ペプチドと少なくとも1つの吸収向上剤を混合して、第2層材料をつくること;
該第1層材料を鋳型に添加し、第2層材料を鋳型に添加したときに第1層材料と第2層材料間の実質的な混合が抑制されるように、該第1層材料を圧縮して、第1層をつくること;
該第2層材料を該鋳型に添加すること;
該第1層材料および該第2層材料をともに圧縮して、2層からなる形成層をつくること、ここで、該第1層および該第2層は互いに接触する接触面を有し、該接触面においてはペプチドの0.1%未満がpH低下剤に接触するようにして第1層材料と第2層材料の間の実質的な混合を抑制し、ペプチドとpH低下剤が形成層内で相互作用することを避ける;
該形成層を水溶性被膜で被覆して、被覆された形成層をつくること;および
腸溶性被膜を該被覆された形成層上に適用して、錠剤をつくること、ここで該水溶性被膜は、該第1層材料が該腸溶性被膜と接触することを実質的に抑制する、
を含む、方法。

【公開番号】特開2010−184945(P2010−184945A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127116(P2010−127116)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【分割の表示】特願2002−571034(P2002−571034)の分割
【原出願日】平成14年3月8日(2002.3.8)
【出願人】(503195300)ユニジーン・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】