説明

経口用固形組成物

【課題】経口用固形組成物を提供することを主な目的とし、さらに徐崩壊性及び徐放性に優れた経口用固形組成物及び当該経口用固形組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】自然薯粉末を20〜75重量%含有する、経口用固形組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然薯粉末を含有する経口用固形組成物に関し、さらに、徐崩壊性及び徐放性に優れた経口用固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与を目的とした医薬品や健康食品などの固形製剤において、徐崩壊性製剤や徐放性製剤は、生理活性成分を持続的に放出することで血中濃度を一定に保持し得ることから、効果を長時間に亘って維持でき、服用回数を減少できるという利点を有している。また、血中濃度を一定に保持できるため、副作用や毒性のコントロールが可能である点でも有用である。
【0003】
例えば、徐放性の製剤は、水溶性高分子でコーティングしたものやワックス類等の脂溶性物質を混合したものなど種々提案されているが、これらの製造方法は、作業が煩雑であり、一定の品質を有する製剤を製造する条件を確立するために相当の試行錯誤を要するという問題があった。これに対して、より簡便に徐放性の製剤を製造する方法として、非晶質寒天を配合する方法(先行文献1)や無晶化デンプンを用いる方法(先行文献2)などが提案されている。しかしながら、自然薯粉末を製剤の徐崩壊化または徐放化のために用いた例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−411604号公報
【特許文献2】特開昭61−005027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、自然薯粉末を含有する経口用固形組成物を提供することを主な目的とし、さらに徐崩壊性及び徐放性に優れた経口用固形組成物及び当該経口用固形組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、上記の目的に対し、鋭意検討した結果、自然薯粉末を20〜75重量%の割合で含有する固形状の経口摂取用組成物として調製することによって、優れた徐崩壊性及び徐放性を付与できることを見出した。また、前記所定量の自然薯粉末と薬理活性成分とを組み合わせて経口用固形組成物を調製した場合、当該薬理活性成分の徐放化が実現されることを見出した。本発明の組成物はこれらの知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、得られたものである。
【0007】
項1.自然薯粉末を20〜75重量%含有する経口用固形組成物。
項2.錠剤、丸剤又は顆粒剤である項1に記載の経口用固形組成物。
項3.素錠である項2に記載の経口用固形組成物。
項4.前記自然薯粉末が、加熱乾燥又はフリーズドライしたものを粉砕して得られるものである、項1〜3のいずれかに記載の経口用固形組成物。
項5.さらに、薬理活性成分を含む項1〜4のいずれかに記載の経口用固形組成物。
項6.自然薯粉末を含む、徐崩壊性及び徐放性を有する経口用固形組成物の製造方法であって、全組成物中の割合が20〜75重量%となるように自然薯粉末を配合することを特徴とする方法。
項7.自然薯粉末と薬理活性成分を含む、徐崩壊性及び徐放性を有する経口用固形組成物の製造方法であって、自然薯粉末を20〜75重量%配合することを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の経口用固形組成物は、自然薯粉末を20〜75重量%を含有する経口摂取用組成物であり、錠剤、丸剤、顆粒剤等の固形状製剤の調製に適している。
【0009】
また、本発明の経口用固形組成物は、前記所定量の自然薯粉末を含有することにより、優れた徐崩壊性及び徐放性を有するものである。このような本発明の経口用固形組成物の徐崩壊性及び徐放性により、自然薯自体が有している活性成分を持続的に放出することができる。従って、本発明の経口用固形組成物は、自然薯の活性成分に起因する滋養強壮作用などを継続的に発揮することができる。
【0010】
また、所定量の自然薯粉末と任意の薬理活性成分を組み合わせて得られる本発明の経口用固形組成物は、当該薬理活性成分の徐放化を実現し得るものであり、薬理活性成分の効果を長時間に亘って保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】経口用固形組成物からのカフェインの溶出率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.経口用固形組成物
以下、本発明の経口用固形組成物について詳述する。本明細書において、本発明の経口用固形組成物を、単に『本発明の組成物』と記載することがある。
【0013】
(1)自然薯粉末
本発明の組成物は、自然薯粉末を含有することを特徴とする。自然薯は、学名:Dissorea Japonica Thunb、和名:ヤマノイモとして分類され、古くから滋養強壮や疲労回復に効果があると言われ、漢方生薬(山薬)として扱われている。本発明において自然薯粉末は、肥大した茎(塊茎)を粉末状に加工した物を指す。
【0014】
本発明において使用される自然薯粉末は、自然薯の塊茎を採取し、必要に応じて切断した後、乾燥し、粉末化して得られる。乾燥方法としては、天日乾燥、加熱乾燥、フリーズドライ、マイクロウェーブ処理等の従来公知の方法が例示され、好ましくは加熱乾燥又はフリーズドライであり、滅菌等の観点からさらに好ましくは加熱乾燥である。加熱乾燥の条件としては、自然薯粉末の活性成分の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば50〜90℃、好ましくは60〜80℃にて、1〜6時間、好ましくは2〜4時間加熱する条件を採用することができる。
【0015】
得られた乾燥物を、ボールミル等の粉砕機を用いて粉末化する。このとき、得られる自然薯粉末の粒度が8〜150メッシュ、好ましくは32〜96メッシュとなるように調整する。このような粒度の粉末を使用することによって、本発明の組成物の徐崩壊性及び徐放性のばらつきを抑えることができる。
【0016】
本発明において、簡便には、商業的に入手可能な自然薯粉末を用いることもでき、例えば加熱乾燥自然薯粉末は、牧丘・西保農園又はこだま食品株式会社から、FD(フリーズドライ)自然薯粉末は、有限会社水戸屋又はこだま食品株式会社から入手することができる。
【0017】
本発明の組成物中における自然薯粉末の配合割合は、20〜75重量%、好ましくは20〜65重量%、より好ましくは25〜50重量%である。このような配合割合を充足することによって、優れた徐崩壊性及び徐放性を有し、特に錠剤や丸剤として成形する場合に適度な硬度の組成物として調製することができる。
【0018】
(2)薬理活性成分
本発明の組成物は、当該組成物の徐崩壊性及び徐放性によって自然薯自体の活性成分による効果を長時間保持することを目的するものであってもよいが、さらにその他任意の薬理活性成分を組み合わせて調製することもできる。前記所定量の自然薯粉末と薬理活性成分を組み合わせることによって、徐放性の経口用固形組成物を得ることができ、当該薬理活性成分による効果を長時間保持することができる。
【0019】
本発明の組成物に配合可能な薬理活性成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えばカフェイン、アミノ酸、ビタミン類、無機塩類等が挙げられる。
【0020】
アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等を例示することができる。
【0021】
また、ビタミン類としては、ビタミンA1、ビタミンA2、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ビオチン等が挙げられる。
【0022】
さらに、無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0023】
これらの任意の薬理活性成分の配合割合は、上記自然薯粉末の配合割合及び当該薬理活性成分の有効量を参考に適宜設定することができるが、本発明の組成物中に通常0.01〜80重量%、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは0.5〜40重量%である。
【0024】
(3)その他の成分
本発明の組成物には、上記自然薯粉末及び薬理活性成分以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の担体を配合することができる。
【0025】
担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デキストリン、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸等の賦形剤;単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、アルギン酸ナトリウム等の結合剤;乾燥デンプン、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、クロスポビドン、ポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン等保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。
【0026】
上記以外に、添加剤として、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、充填剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩を、得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択し使用することができる。
【0027】
(4)成形
本発明の組成物は、固体状の形態を有するものであればその形状は特に限定されず、例えば、丸剤、錠剤、顆粒剤、散剤等が挙げられる。また、本発明の組成物は、上記成分が均等に混合された粉末が充填されたカプセル錠の形態であってもよい。本発明の組成物として好ましい形態は、丸剤、錠剤又は顆粒剤であり、より好ましくは丸剤又は錠剤、更に好ましくは錠剤である。
【0028】
本発明において丸剤は、上記成分を均質に混合分散した後、延展板、切丸器、成丸器等を用いる従来公知の方法によって球状に製したものを指す。本発明の組成物を丸剤として調製する場合、通常、1個の重量が50〜400mg程度である。
【0029】
本発明において錠剤には、チュアブル錠、トローチ錠、錠菓等も包含され得る。錠剤形態の本発明の組成物は、前記成分をよく混合分散させた後、直接圧縮成型、顆粒圧縮法等当業界で一般的に使用されている方法に準じて行うことができる。錠剤を調製する場合としては、前記自然薯粉末に必要に応じて結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース等を添加し、所望であれば滑沢剤を更に加え、0.5〜4t程度の打錠圧で打錠する方法が例示される。錠剤の形状としては、球状、円盤形、円柱状、立方体状、円錐形、穴あき円盤状等の任意の形状を採用することができる。本発明の組成物を錠剤として調製する場合、好ましくは、総量50〜5000mg、より好ましくは100〜2000mg、さらに好ましくは100〜500mgの円盤形又は円柱状の錠剤である。本発明の組成物をチュアブル錠として製する場合も前記重量の範囲から適宜設定することができるが、通常、500〜2000mg程度であることが好ましい。
【0030】
本発明の組成物を丸剤や錠剤形態として調製する場合、コーティングを施していない丸剤や素錠の形態で用いることもできるが、本発明の組成物の徐崩壊性及び徐放性を損なわない範囲で、必要に応じてコーティングを施してもよい。例えば、錠剤にコーティングを施す場合、通常の剤皮を錠剤表面に形成すればよく、糖衣錠、ゼラチン被包錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。コーティングの成分、コーティング方法等については、従来の方法に従えばよい。また、コーティングを施す場合の被覆率は、被覆されていない丸剤又は錠剤の全体重量に対して、約0.1〜200重量%であるのが好ましい。
【0031】
また、本発明の組成物を顆粒剤とする場合、従来公知の方法に従って造粒して調製することができ、その粒径は、日本薬局方の顆粒剤の欄に記載される粒度の測定方法に従って測定することができ、通常0.1〜1.7mm、好ましくは0.5〜1.5mmである。
【0032】
(5)本発明の組成物の特徴
以上のようにして得られる本発明の組成物は、固形製剤としての形状を保持することができ、さらには優れた徐崩壊性及び徐放性を有する。
【0033】
本発明の組成物の徐崩壊性は、組成物の崩壊時間によって評価することができる。具体的には、日本薬局方一般法崩壊性試験の記載に従って、試料を精製水中で上下運動し、試料の残留物を確認し、残留物を認めない、又は認めても海綿状の物質であるか、若しくは軟質の物質、若しくは泥状の物質がわずかに認められるようになるまで(すなわち、試料が完全に崩壊するまで)の時間を計測する。本発明の組成物は、前記試験による崩壊時間が20分以上、好ましくは25分以上である。
【0034】
本発明において徐放性とは、自然薯自体が有する活性成分及び/または自然薯粉末に加えて配合された任意の薬理活性成分の溶出時間が遅延されることを指し、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)に従って評価することができる。具体的には、試料1個を精製水中でパドルを回転させ、一定時間経過後、試料溶液を採取して試料から溶出された活性成分を定量することによって行われる。本発明の組成物の徐放性は、前記試験方法によって評価した場合、20分後の溶出率が75%未満、好ましくは60%未満である。
【0035】
また、本発明の組成物を丸剤又は錠剤の形態に調製した場合、下記試験例1に記載される測定方法に従って測定した硬度が10〜200N、好ましくは20〜150Nである。また、例えば本発明の組成物をチュアブル錠として調製する場合、その硬度は10〜100N程度、好ましくは40〜90N程度である。チュアブル錠等の咀嚼容易な錠剤を調製する際の自然薯粉末の配合割合は、前記自然薯粉末の配合割合の範囲に基づいて適宜設定することができるが、特に25〜50重量%程度であれば咀嚼容易な硬度に調製可能である。
【0036】
以上のような特徴を有する本発明の組成物は、徐崩壊性及び徐放性に優れ、自然薯自体の滋養強壮作用などを持続的に維持できることから、滋養強壮用サプリメント等として使用することができる。また、本発明の組成物を、自然薯粉末に加えて、薬理活性成分と組み合わせて調製した場合、当該薬理活性成分の徐放化が可能であり、薬理活性成分よる効果を持続的に維持することができる。
【0037】
2.経口用固形組成物の製造方法
本発明は、前記本発明の経口用固形組成物の製造方法をも提供し得るものである。すなわち、本発明は、自然薯粉末を含む、徐崩壊性及び徐放性を有する経口用固形組成物の製造方法であって、全組成物中の割合が20〜75重量%となるように自然薯粉末を配合することを特徴とする方法を提供する。
【0038】
さらに、本発明は、自然薯粉末と薬理活性成分を含む、徐崩壊性及び徐放性を有する経口用固形組成物の製造方法であって、自然薯粉末を20〜75重量%配合することを特徴とする方法をも提供するものである。
【0039】
本発明の製造方法においては、所定量の自然薯粉末を、前記賦形剤等と共に攪拌混合した後、所望の剤型になるように従来公知の方法に従って調製する。各成分の具体的な種類や配合割合等については、上述の通りである。
【0040】
上記製造方法によれば、優れた徐崩壊性及び徐放性を有する組成物を、簡便に調製することが可能である。
【実施例】
【0041】
以下に試験例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
<試験例1>
下記表1に示される組成の錠剤を製造し、硬度を測定した。また、崩壊時間を測定することによって徐崩壊性を評価した。錠剤の製造方法、硬度の測定及び崩壊性の評価方法は以下の通りである。
【0043】
(錠剤の製造方法)
下記表1に示される各成分を均質になるように混合した後、直接圧縮成型により錠剤を調製した。打錠機として、油圧式打錠機:RIKEN POWER TYPE SMP−3 (理研精機株式会社)を用い、8Φの臼杵を使用して、打錠圧2tにて、1錠の重さが300mgの円盤型錠剤を得た。
【0044】
(硬度測定)
硬度測定器としてPORTABLE CHECKER PC−30(岡田精工株式会社製)を用い、添付のプロトコールに従って、錠剤の水平方向の硬度を測定した。
【0045】
(崩壊性試験)
日本薬局方一般法崩壊性試験の記載に従い、錠剤を精製水(温度37±0.5℃)中で上下運動し、試料の残留物を確認し、残留物を認めない、又は認めても海綿状の物質であるか、若しくは軟質の物質、若しくは泥状の物質がわずかに認められるようになるまで(すなわち、試料が完全に崩壊するまで)の時間を計測した。
【0046】
なお、本試験例において、硬度及び崩壊時間の測定結果は、各錠剤についてN=3の平均値として示される。
【0047】
【表1】

【0048】
*加熱乾燥自然薯粉末:加熱乾燥自然薯パウダー(こだま食品株式会社)
*FD自然薯粉末:FD(フリーズドライ)自然薯パウダー(こだま食品株式会社)
*デキストリン:パインファイバー#2(松谷化学工業株式会社)
*結晶セルロース:セオラスFD101(株式会社旭化成)
【0049】
(結果)
自然薯粉末を全く含有しない錠剤12の崩壊時間に比較して、加熱乾燥自然薯粉末を5重量%配合した錠剤1の崩壊時間はわずかに延長されただけであった。これに対し、加熱乾燥自然薯粉末を20〜75重量%配合した錠剤2〜7、及びFD自然薯粉末を25〜75重量%配合した錠剤9〜11では、自然薯粉末の配合量が増えるに従って、崩壊時間が延長された。なお、加熱乾燥自然薯粉末を80重量%含有する錠剤8は、硬度が不十分であり錠剤として製することができなかった。
【0050】
また、精製水を、日本薬局方第1液(pH=1.2:胃液の代替液)、または第2液(pH=6.8:腸液の代替液)に代えて崩壊性試験を行った場合においても同様の傾向を示す結果が得られた。
【0051】
上記の結果から、自然薯粉末を20〜75重量%配合することにより、錠剤状の経口用固形組成物に対して徐崩壊性を付与できることが明らかとなった。
【0052】
<試験例2>
本試験例においては、本発明の組成物に自然薯粉末に加えて、任意の薬理活性成分を配合した場合における徐崩壊性を評価した。本試験例においては、任意の薬理活性成分として、カフェインを使用した。また比較例として、自然薯粉末に代えて、特開平07−411604号に開示されている非晶質寒天(易溶性寒天)、特開昭61−005027号に開示されている無晶化デンプン、及び加熱乾燥ナガイモ粉末を配合した錠剤を製造し、同様に徐崩壊性を評価した。
【0053】
下記表2の組成に従って、各種粉末を配合した錠剤を製造した。錠剤の製造方法、硬度測定方法及び崩壊性試験の方法は試験1と同様である。
【0054】
なお、本試験例において、硬度及び崩壊時間の測定結果は、各錠剤についてN=3の平均値を示している。
【0055】
【表2】

【0056】
*無水カフェイン : 日本薬局方 無水カフェイン (白鳥製薬株式会社)
*非晶質寒天 : 伊那寒天UP−37 (伊那食品工業株式会社)
*無晶化デンプン : 特開平05−33209の方法に従って製造した。
*加熱乾燥ナガイモ粉末 : 加熱乾燥ナガイモパウダー (こだま食品株式会社)
【0057】
(結果)
加熱乾燥自然薯粉末を80重量%配合した錠剤18、無晶化デンプンを80重量%配合した錠剤25、並びにナガイモ粉末を配合した錠剤26及び27は、硬度が不十分であり、錠剤として製することができなかった。
【0058】
測定の結果、加熱乾燥自然薯粉末を配合した錠剤13〜17においては、カフェインを配合していない試験例1の錠剤1〜7の結果と比較して、錠剤の硬度はわずかに小さくなったものの、崩壊時間に影響は見られなかった。すなわち、カフェインを配合した錠剤においても、加熱乾燥自然薯粉末を20〜75重量%の割合で含有する錠剤については、崩壊時間が延長されていた。
【0059】
また、非晶質寒天を配合した錠剤20〜22では、錠剤13〜17の場合とは反対に、非晶質寒天の配合量が増えるにしたがって崩壊時間が短くなり、無晶化デンプンを配合した錠剤23及び24においても同様の傾向が認められた。
【0060】
<試験例3>
本試験例においては、本発明の組成物の徐放性を評価した。上記表2の組成に従って、錠剤13〜17を製造し、カフェインの溶出率を測定した。比較として、デキストリンのみを配合した錠剤19、並びに試験例2において崩壊時間の長かった錠剤20及び23についても同様にカフェインの溶出率を測定した。
【0061】
(溶出試験)
日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)に従い、試験液として精製水を用いて、温度37±0.5℃、回転数:50rpmにて試験を行った。カフェインの検出は、UV(波長254nm)によって行った。結果は、各測定時点においてN=2の平均値とし、図1に示す。
【0062】
(結果)
溶出試験の結果(図1を参照)、加熱乾燥自然薯粉末を5重量%配合した錠剤13、デキストリンのみを配合した錠剤19、非晶質寒天を20重量%配合した錠剤20、ならびに無晶化デンプンを20重量%配合した錠剤23のカフェインの溶出率は60分以内に100%に達したのに対し、加熱乾燥自然薯粉末を20〜75重量%の割合で配合した錠剤14〜17では、カフェインの溶出時間が顕著に延長された。また、加熱乾燥自然薯粉末の配合量が増えるにしたがってカフェインの溶出時間が延長された。
【0063】
すなわち、加熱乾燥自然薯粉末を25〜75重量%の割合で配合し、さらに薬理活性成分(本試験例においてはカフェイン)を組み合わせて用いることで、当該薬理活性成分の放出時間を延長させることができ、徐放性に優れた錠剤を得ることができた。
【0064】
試験例2及び3の結果に見られるように、自然薯粉末を配合した錠剤においては、崩壊時間が延長するに伴いカフェインの溶出時間が延長されている。この結果から、試験例1の錠剤においても、自然薯自体の活性成分も持続的に放出されることが予測される。従って、自然薯粉末を所定量含有する本発明の組成物は、自然薯自体の活性成分の滋養強壮作用などの効果を持続的に保持することができると考えられる。
【0065】
また、20〜75重量%の割合で自然薯粉末を配合することによって、徐崩壊性及び徐放性に優れた錠剤が得られたことから、前記所定量の自然薯粉末を含有する本発明の組成物は、丸剤又は顆粒剤として調製した場合においても、同様に、優れた徐崩壊性及び徐放性を有するものと予測される。
【0066】
以上、試験例1〜3の結果より、本発明の組成物は、徐崩壊性及び徐放性に優れ、自然薯自体の活性成分の放出のみならず、自然薯粉末に加えて薬理活性成分を配合した場合の当該薬理活性成分の放出時間を延長し得ることが示された。
【0067】
[処方例]
【0068】
(錠剤)
表3〜5に記載する処方に従って、試験例1と同様の方法で1錠300mgの錠剤(処方例1〜30)を調整した。表中の数値の単位は重量%である。
【0069】
得られた錠剤の崩壊性時間を上記試験例1に記載の方法に従って測定した結果、いずれの錠剤においても試験例1及び2同様の結果が得られた。
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
(顆粒剤)
表6に記載する処方からなる組成物(処方例31〜40)を、慣用法に従って顆粒剤として調製した。具体的には、各成分を処方に従って配合し、定方に従って混合、造粒、乾燥、および整粒して顆粒剤の形態に調製した。表中の数値の単位は重量%である。
【0074】
得られた顆粒剤の崩壊性時間を上記試験例1に記載の方法に従って測定した結果、いずれの顆粒剤においても優れた徐崩壊性が認められた。
【0075】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然薯粉末を20〜75重量%含有する経口用固形組成物。
【請求項2】
錠剤、丸剤又は顆粒剤である請求項1に記載の経口用固形組成物。
【請求項3】
前記自然薯粉末が、加熱乾燥又はフリーズドライしたものを粉砕して得られるものである、請求項1又は2に記載の経口用固形組成物。
【請求項4】
さらに、薬理活性成分を含む請求項1〜3のいずれかに記載の経口用固形組成物。
【請求項5】
自然薯粉末を含む、徐崩壊性及び徐放性を有する経口用固形組成物の製造方法であって、全組成物中の割合が20〜75重量%となるように自然薯粉末を配合することを特徴とする方法。
【請求項6】
自然薯粉末と薬理活性成分を含む、徐崩壊性及び徐放性を有する経口用固形組成物の製造方法であって、自然薯粉末を20〜75重量%配合することを特徴とする方法。

【図1】
image rotate