説明

経皮アンモニア濃度測定装置

【課題】 肝臓疾患を有する者に対してその病状を検査するためには、血中のアンモニア濃度を調べることが行われている。このためには、採血をしなければならない。採血は侵襲であり患者が痛い思いをするだけでなく、皮膚にも悪影響を及ぼすことは間違いない。さらに、採血は医療行為であり誰でもができることではない。よって、家庭で簡単に状態を調べる等ということはできない。
【解決手段】 皮膚に接当して皮膚ガスを収集する集ガス部、キャリアガス導入口及び混合ガス出口を有する皮膚ガス採取装置、吸引ポンプ、アンモニア検出装置を有するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮アンモニア濃度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肝臓疾患を有する者に対してその病状を検査するためには、血中アンモニア濃度が測定されている。このためには、採血行為が必須である。採血は侵襲行為であり患者に苦痛を与えるだけでなく感染の危険も伴う。当然、採血のための器具も必要とする。
【0003】
さらに、採血は医療行為であり誰でもができることではない。よって、医療人、医療施設から離れることが出来ず、家庭で簡単に状態を調べる等などという平生の健康管理には使用することはできない。
【0004】
この血中アンモニアは、呼気中にアンモニアガスとして現出していることが知られており、この呼気中のアンモニア濃度を測定することで血中アンモニアを推定する方法も考えられる。
しかし、口腔内の常在嫌気性菌や歯周病菌等の嫌気性菌が有する酵素・ウレアーゼの作用によって口腔内に滲出している尿素が分解され、アンモニアが生成されており、それが肺胞経由(血中由来アンモニア)の呼気が混合されて存在する。このために、肺胞からの気体(血中由来アンモニア)だけを明確に区別して測定することは現実的には不可能である。このような理由で、呼気測定によるアンモニア計測は成立しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、別に開発した超高感度アンモニア検知センサーを用いて、生体の様々な部位、例えば、手のひら、腕、腋の下、呼気などからアンモニアが噴出していることを見出した。そのうち、手のひらなどの皮膚ガスは非侵襲で、非常に手軽な採取部位である。本発明では、この経皮的(cutaneous)に出る皮膚ガス中のアンモニア濃度を測定することにより、血中アンモニア濃度を間接的に調べようとするものである。
【課題を解決する手段】
【0006】
このような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果、本測定装置を完成したものであり、その特徴とするところは、皮膚に接当して皮膚ガスを収集する集ガス部、キャリアガス導入口及び混合ガス出口を有する皮膚ガス採取装置、吸引ポンプ、アンモニア検出ユニットを有する点にある。
【0007】
ここで、皮膚ガスとは、人体の皮膚から発散される気体をいい、通常は、微量であるが、アセトン、アンモニア、一酸化炭素、一酸化窒素等であり、一般的には血液中の揮発性分子が、それに当たる。
【0008】
この皮膚ガスを袋のような採取容器に一旦採取し、それをガスクロマトグラフィー等で測定することも考えられるが、これでは迅速な測定、連続的な測定、手軽で簡易な測定ができないことから、臨床検査、ベッドサイドでの測定には適さない。
本発明においては、簡易で、逐次連続測定が可能であることが大きなポイントである。
【0009】
皮膚ガス採取装置は、皮膚(腕、手のひらや足等が好適)に押し当てて皮膚ガスを採取するもので、単なるアンモニア発生のない空容器のようなもので、皮膚に接当する部分に開口がある。開口の周囲は皮膚ガスが漏れないように、かつ空気が入らないように弾性部材で構成し密閉するようにしたほうがよい。
【0010】
皮膚ガス採取装置の大きさは自由であるが、接当部が数cm四方程度から十cm四方程度までが好適である。
【0011】
この採取装置は皮膚から出たガスがキャリアガスによってアンモニア検出ユニットに同伴されるものである。よって、キャリアガス導入口及び混合ガス出口が設けられている。キャリアガスとは、アンモニアを全く含まない清浄ガスであり、混合ガスとは皮膚ガスとキャリアガスの混合物である。
【0012】
吸引ポンプは、通常の(ダイヤフラム式など)気体ポンプが適しており、特別なものである必要はない。能力的には、100ml/分〜1000ml/分程度でよい。
【0013】
アンモニア検出ユニットは、アンモニアの濃度が測れるものであればどのようなものでもよいが、ppb単位まで測定できるものが望ましい。キャリアガスで同伴させて測定する場合、そのキャリアガスの量によって濃度は決まるが、あまり全量が少なくても測定は難しく、濃度が低すぎても測定は難しい。
よって、前記したポンプの能力も含めて総合すると、アンモニア濃度がppb単位になるようにするのが好適である。
【0014】
キャリアガスは、アンモニアを含まなければどのようなガスでもよい(アンモニアと反応するものは望ましくない)。しかし、空気を利用するのが最も手軽で実用的で、安価でよい。そのため、アンモニアを吸着除去する吸着剤を充填した吸着部を設けるのがよい。
【0015】
また、測定値をキャリブレーション(校正)するための標準ガス(アンモニア濃度既知)のボンベを接続しておくのがよい。これによって、装置を簡単に校正できる。
【0016】
皮膚ガスの濃度は、その部位によって発散ガス濃度が異なることが知られているので、少なくとも1回は、特定部位の皮膚ガスのアンモニア濃度(測定装置の出力)と血中アンモニア濃度とを測定し、相関関係を調べておく必要がある。これを一度求めておけば、それ以降の皮膚ガスのアンモニア濃度(測定装置の出力)によって、血中アンモニア濃度を推定することが出来る。勿論、複数回この関係をチェックしながら行ってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明には、以下のような効果がある。
(1) 本発明装置を用いれば、皮膚ガスのアンモニア濃度が簡単に且つ連続的に測定できる。
(2) 家庭でも測定可能であり、自宅療養している場合でも病状の管理ができる。
(3) 入院時においても、非侵襲で血中アンモニア濃度が調べられるため、患者に負担をかけずに検査ができる。
(4) コンピューターと接続すれば血中アンモニア濃度が連続的に記録され、必要なときに簡単に過去のデータも見ることができる。
(5) 連続で測定できるので、治療効果を即時に把握できるので、濃密で信頼性の高い診療ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明装置の1例の理論を示す概略系統図である。
【図2】本発明装置の1例の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下実施例に従って本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
実施例1
図1は、本発明装置1の1例の理論を示す概略系統図である。
キャリアガス用の空気導入口2から、アンモニア吸着剤(活性炭、シリカゲルや炭酸カルシウム等)が充填された吸着部3、さらにそこから皮膚ガス採取装置4に接続されている。皮膚ガス採取装置4のキャリアガス入口5から入り、出口6から出る。
【0021】
皮膚ガス採取装置4から出たガスは、第1三方電磁弁7を通り、アンモニア検出ユニット(濃度測定装置)8で濃度を測定されて、吸引ポンプ9から大気に解放される。
【0022】
アンモニア検出器8はコンピューター10に接続され、モニター11で表示され、プリンター12で印字される。ポンプや電磁弁の操作もすべてこのコンピューター10を介して行われる。操作者はスタートボタン等のスイッチ13を押すだけでよい。
【0023】
また、標準ガスが充填されたボンベ14が第2三方電磁弁15に接続され、第1三方電磁弁の切り替えによってアンモニア検出器8に導入されるように構成されている。
【0024】
次に実際の測定手続について説明する。
初めに、スタートボタンを押す。
1 この時、第1三方電磁弁、標準ガス入口16は閉止である。そして、第2三方電磁弁のキャリアガス入口17も閉止である。
2 皮膚ガス採取装置4を被検者の手に軽く押しつける。
3 吸引ポンプ9が吸引をスタートする。
4 大気から空気が吸引され、吸着部3を通過して、皮膚ガス採取装置4に導入される。そこで皮膚からでた微量ガスを一緒になり、出口6から第1三方電磁弁7を通過し、検出装置8に入る。そこでアンモニア濃度が測定されて、吸引ポンプ9を通り大気解放される。
7 測定されたアンモニア濃度が数秒から数十秒で一定になる。この値がアンモニア濃度の測定値となる。
8 一定になって数秒から数十秒後、第1三方弁は標準ガス入口16が開になり、キャリアガス導入口は閉止される。
9 同時に第2三方弁15の標準ガス入口が開になる。キャリアガス入口17は閉のままである。
10 このようになると、アンモニア濃度既知の標準ガスが検出器に導入され、測定値が既知濃度で校正される。この校正係数によって、前記測定されたキャリアガスのアンモニア濃度が校正される。
11 これで所定量のキャリアガス移送量中のアンモニア濃度が決定される。これを、予め決定しておいた血中アンモニア濃度と皮膚ガス中アンモニア濃度との相関関係から、血中アンモニア濃度を求める。
【0025】
このような三方弁の切り替えを定期的に行えば、連続測定も可能である。
【0026】
図2は本発明皮膚ガス中のアンモニア濃度測定装置の1例の概略を示す斜視図である。皮膚ガス採取装置4以外の本体部18は、ホースによって皮膚ガス採取装置4と接続されている。
【符号の説明】
【0027】
1 本発明装置
2 空気導入口
3 吸着部
4 皮膚ガス採取装置
5 キャリアガス入口
6 出口
7 第1三方弁
8 検出器
9 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に接当して皮膚ガスを収集する集ガス部、キャリアガス導入口及び混合ガス出口を有する皮膚ガス採取装置、吸引ポンプ、アンモニア検出装置を有することを特徴とする経皮アンモニア濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−230353(P2010−230353A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75668(P2009−75668)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507027667)
【出願人】(505044451)ソナック株式会社 (107)
【Fターム(参考)】