説明

経編地の加工法

【課題】 良好なストレッチ性と高品位である経編地の染色方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を含有する経編地の染色において、染色における昇温時に60℃〜80℃の温度で10〜30分間編地をリラックスする事を特徴とする経編地の加工法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を含有する経編地の染色加工に関する。
さらに詳しくは、優れたストレッチ性と高品位である経編地の加工法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
編地に優れた伸長特性を付与する方法として、種々の方法が採用されている。例えば、編地を構成する糸条として、伸長性に優れたポリウレタン糸条を用いるという方法がある。しかし、ポリウレタン糸条を用いた編地は伸長特性に優れるが、染色堅牢度に劣るという欠点があった。また、編地を構成する糸条として仮撚加工糸条を用いて、編地に伸長性を付与することも行われている。仮撚加工糸条には、加撚および解撚によるトルクが内在しており、このトルクによって糸条に伸長性が与えられているが、ポリウレタン糸条に比べて伸長性、特に伸長回復性に劣るものであった。また、粘度差を有する2種のポリエチレンテレフタレートポリマーを用い、サイドバイサイド型または偏芯シース・コア型の複合繊維からなる編地も実用的に用いられているが、仮撚加工糸を用いた布帛と同様、ポリウレタン糸条に比べて伸長性、特に伸長回復性に劣るものであった。
【0003】
また、近年、ポリウレタン糸条ほどの伸長性を有しないが、伸長回復性に優れた糸条として、少なくとも一方成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型であるポリエステル系複合繊維からなる布帛が提案されている。しかし、該複合繊維からなる布帛を、従来のポリエチレンテレフタレートからなる布帛の染色条件と同様にして染色すると、捲縮発現斑が生じ品位に劣る編地になるという問題点があった。
【0004】
特許文献1には、少なくとも一層がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする層であるサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型複合のポリエステル系複合繊維からなる布帛を染色するに際し、該染色における昇温時の50℃から105℃までを昇温制御温度範囲とし、かつ、染色温度を110℃以上とすることによって染色を行う方法が提案されている。しかしこの方法では、確かに均染性の良い編地は得られる可能性はあるが、少なくとも一層がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする層であるサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型複合のポリエステル系複合繊維の捲縮発現斑が生じ、高品位の編地は得られない。
【特許文献1】特開2005−15968号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するために成されたものであり、良好なストレッチ性と高品位である経編地の染色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討した結果、特定の方法で染色加工を行うと課題解決の目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を含有する経編地の染色において、染色における昇温時に60℃〜80℃の温度で10分間以上編地をリラックスする事を特徴とする経編地の加工法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を含有する経編地において、良好なストレッチ性と、捲縮斑のない高品位な製品の製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明について詳述する。
本発明の編地の加工法における経編地とは、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を含有する経編地であり、トリコット編機、またはラッセル編機にて製造される編地である。また、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維100%の経編地の他、該繊維以外の相手繊維が交編されていても本発明の効果は発揮でき、高品位の編地が得られる。この場合の相手繊維としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタンなどの合成繊維、また、キュプラ、レーヨンなどの再生セルロース繊維、あるいは、綿、羊毛などの天然繊維、獣毛繊維が使用でき、これらが一種以上交編されている編地である。これら相手繊維の混率については特に限定されず、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維が含まれていれば本発明の効果は発揮できるが、該ポリエステル系繊維が20%以上含有している経編地の方が本発明の効果が発揮でき、高品位の経編地が製造できるため好ましい。さらに、相手繊維についても、長繊維の原糸使いの方が本発明の効果がより発揮できるため好ましい。
【0009】
編地の組織としてはハーフ組織、サテン組織、バックハーフ組織、メッシュ組織、レース状の組織など、任意な組織が選定でき、また、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維以外の繊維以外の相手繊維との交編方法も任意な方法が選定でき、経編の筬毎に別々の繊維を仕掛ける方法などが行える。また、編機のゲージについても任意なゲージが選定でき、18〜40ゲージが好ましい範囲である。
【0010】
本発明における潜在捲縮発現性ポリエステル繊維とは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的にはサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)されているものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は特に限定されない。又、総繊度は30〜165dtex(デシテックス:以下同様の表現とする)、単糸繊度は0.3〜3dtexが好ましく用いられるがこれに限定されるものではない。
【0011】
本発明における潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであることに特徴がある。
具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものがある。
【0012】
即ち、二種のポリエステルポリマーをサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比が、1.00〜2.00が好ましく、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)が好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されると好ましい。
【0013】
このように、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を構成するポリエステル成分の少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートであるものとしては、上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されており、本発明に好ましく用いることができる。特にポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0014】
さらに、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであると好ましく、特に20〜30cN/dtexさらに20〜27cN/dtexがよい。尚、10cN/dtex未満のものは製造困難である。又、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であると好ましく、特に10〜80%より好ましくは10〜60%である。更に、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、特に85〜100%より好ましくは85〜97%である。
さらに、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、特に0.1〜0.4cN/dtexさらに0.1〜0.3cN/dtexであることが好ましい。100℃における熱収縮応力は、布帛の精錬、染色工程において捲縮を発現させるための重要な要件である。すなわち、布帛の拘束力に打ち勝って捲縮が発現するためには、100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex以上であることが好ましい。
【0015】
熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%特に180〜250%である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維があげられる。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.50(dl/g)であることが好ましく、特に0.1〜0.45(dl/g)、さらに0.15〜0.45(dl/g)がよい。例えば高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。
【0016】
また、この複合繊維自体の固有粘度即ち平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)がよく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに0.9〜1.1(dl/g)がよい。
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は質量%で50%以上である。
【0018】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
【0019】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の紡糸については、例えば上記の各種特開に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましいが、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用しても良い。
【0020】
また、繊維の形態は、マルチフィラメント糸条であり、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の単糸繊度は、0.3〜3dtexである必要があり、より好ましくは0.5〜2.5dtexである。単糸繊度が0.3dtex未満となると製織性が低下する傾向にあり、3dtexを超えると織物の耐針性能の低下並びに粗硬な風合いとなってくる。また、糸の太さは、30dtex以上とすることで、十分な実用引裂強力を得ることができ、200dtex以上では編地として厚くなりすぎ、従って、30〜200dtexであることが好ましい。
【0021】
本発明は、経編地の染色加工に際し、染色における昇温時に60〜80℃の温度で10分間以上編地をリラックスする事を特徴とする経編地の加工法である。60〜80℃でリラックス工程を設ける事により、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の捲縮を、十分に、かつ均一に発現させる事ができ、高品位の経編地が得られる。60〜80℃でリラックスする方法については、60〜80℃の間で±1℃を維持することが好ましい。リラックス温度が60℃未満の場合には少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の捲縮発現斑が生じ、このまま染色を終了すると捲縮の十分な部分と不十分の部分とが生じ高品位の経編地とならない。また、リラックス温度が80℃より高い場合にも捲縮発現斑が生じ、60℃以下でリラックスした場合よりさらに品位の劣る経編地となる。また、リラックス時間については10分間以上が必要である。10分未満の場合には少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の捲縮発現斑が生じる。長時間リラックス処理しても効果は変わらず、染色コストとの関係からリラックス時間は10〜30分とすることが好ましい。
【0022】
本発明では、染色における昇温時にリラックス工程を有する事を特徴とするが、該リラックス工程以外は通常の染色条件にて実施できる。昇温速度は0.5〜3℃/分であればよい。昇温を0.5℃/分未満で行えば、リラックス工程無しでも少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の捲縮発現斑を抑制できる可能性があるが、昇温時間がかかり過ぎ製造コストアップとなり好ましくない。また、染色温度は少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の相手素材を考慮した染色温度とし、ポリエステル繊維との交編では120〜130℃で30〜40分とする事ができる。一例を挙げると、経編地を染色釜に投入し、常温から60℃までは2℃/1分で昇温し、リラックス工程では60℃で20分間その温度を維持し、その後、60℃から120℃まで2℃/1分で昇温し、120℃で30分間維持しその後温度を下降させ、染色を終了する方法などが行える。
【0023】
本発明経編地の加工法による染色機は、液流染色機、ウインス染色機、エアフロー染色機、ビーム染色機など任意の染色機が使用できるが、染色液の温度調節が厳密に行える染色機の使用が好ましい。
本発明による染色工程以外の工程については必要に応じて通常の方法が行え、プレウェット、プレセット、この際、プレウェットについては、40〜90℃の温浴中を拡布状で連続的に経編地の処理を行えるものが好ましく、プレセットについては、110〜180℃で1分程度とし、仕上げセットについては150〜190℃で1分程度の熱処理とするのが好ましい。また、通常繊維加工に用いられる樹脂加工、柔軟加工、吸水加工、制電加工、抗菌加工、撥水加工や酵素処理などの加工を必要に応じて行える。樹脂加工、仕上げセットなど、公知の方法による処理する事が出来る。さらに、必要に応じて還元洗浄や、フィックス処理などを行っても差し支えない。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
本発明において実施例に使用した少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、以下の方法により製造した。(実施例中ではPTTと表示する)
【0025】
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtex、および、40dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/24f、および、40dtex/24fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=1.26、低粘度側が[η]=0.92であった。
【0026】
なお、固有粘度の測定は以下の方法により測定した。
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0027】
また、製造した経編地の評価を下記のように行った。
(1)捲縮発現性
経編地の捲縮発現性を仕上げた経編地を透かし検反し、下記のように4段階評価した。
◎:均一に捲縮発現しており、高品位
○:ほぼ均一に捲縮発現している
△:少し捲縮発現斑がある
×:捲縮発現斑が甚だしく、地割れ状になっており、極めて品位が悪い。
(2)製造コスト
経編地の染色に関わる製造コストを下記のように2段階評価した。
【0028】
○:コスト上問題ない
△:従来工程と比較して、ややコストアップとなるが問題ない
×:従来工程と比較して、コストアップとなリ製品単価に影響する
【0029】
[実施例1]
28ゲージのトリコット編機を使用し、フロントにカチオン可染ポリエステル繊維56dtex/24f(旭化成せんい製)、バックにPTT56dtex/24fを使用してハーフ組織により、ランナーをフロント162cm、バック130cmとして生機を編成した。この生機の耳部をタッキングし、液流染色機に投入、染料、助剤を投入して常温から70℃までを2℃/分で昇温し、70℃で20分間リラックスを行った。その後、70℃から120℃までを2℃/分で昇温し、120℃で30分間染色を行った。染色後、温度を下げ、排液、水洗を行い、染色した編地を液流染色機より取り出し、乾燥後、制電加工剤に浸漬し、マングルにてピックアップ率50%で絞った後、ピンテンンターにて170℃1分間仕上げセットを行い、72コース/インチ、60ウェール/インチの経編地を製造した。
製造した経編地の捲縮発現性を評価し、表1に結果を示す。
【0030】
[実施例2〜5、比較例1〜4]
実施例1に於いて、リラックス条件を変えて製造した以外は実施例1と同じとして経編地を製造し、捲縮発現性の評価を行った。なお、比較例4ではリラックス処理をおこなっていない。結果を表1に示す。
【0031】
[実施例6]
28ゲージのトリコット編機を使用し、フロントにW断面ポリエステル繊維34dtex/18f(旭化成せんい製)、バックにPTT40dtex/24fを使用してダブルコード組織により、ランナーをフロント155cm、バック140cmとして生機を編成した。この生機の耳部をタッキングし、液流染色機に投入、染料、助剤を投入して常温から80℃までを1℃/分で昇温し、80℃で20分間リラックスを行った。その後、80℃から130℃までを2℃/分で昇温し、130℃で30分間染色を行った。染色後、温度を下げ、排液、水洗、還元洗浄を行った後、染色した編地を液流染色機より取り出し、乾燥後、制電加工剤、柔軟剤に浸漬し、マングルにてピックアップ率50%で絞った後、ピンテンンターにて170℃1分間仕上げセットを行い、69コース/インチ、58ウェール/インチの経編地を製造した。
製造した経編地の捲縮発現性を評価し、表1に結果を示す。
【0032】
[実施例7]
28ゲージのラッセル編機を使用し、フロントにPTT56dtex/24fを使用し
バックにスパンデックス310dtex(旭化成せんい製:商品名ロイカ)として6コースサテンをフロントランナー113cm、バックランナー5.8cmとして生機編成した。
この生機を連続拡布状の精練機を使用し、40℃、60℃、90℃の3槽の温浴中を3分間で通過するように通し、ピンテンンターにて180℃1分間プレセットした。次いで液流染色機に投入、染料、助剤を投入して常温から80℃までを2℃/分で昇温し、80℃で10分間リラックスを行った。その後、80℃から130℃までを2℃/分で昇温し、130℃で30分間染色を行った。染色後、温度を下げ、排液、水洗、還元洗浄を行った後、染色した編地を液流染色機より取り出し、乾燥後、制電加工剤、柔軟剤に浸漬し、マングルにてピックアップ率50%で絞った後、ピンテンンターにて170℃1分間の仕上げセットを行い、180コース/インチ、40ウェール/インチの経編地を製造した。
製造した経編地は、経、緯方向に伸縮性があり、インナー用として最適な製品となった。この経編地の捲縮発現性を評価し、表1に結果を示す。
【0033】
[実施例8]
32ゲージのトリコット編機を使用し、フロント、バックとも1in×1outの糸配列でPTT40dtex/24fを使用したメッシュ組織を、フロントランナー120cm、バックランナー120cmとして生機を編成した。液流染色機に投入、染料、助剤を投入して常温から60℃までを1℃/分で昇温し、60℃で20分間リラックスを行った。その後、60℃から110℃までを1℃/分で昇温し、110℃で30分間染色を行った。染色後、温度を下げ、排液、水洗、還元洗浄を行った後、染色した編地を液流染色機より取り出し、乾燥後、制電加工剤、柔軟剤に浸漬し、マングルにてピックアップ率50%で絞った後、ピンテンンターにて170℃1分間仕上げセットを行い、72コース/インチ、64ウェール/インチの経編地を製造した。
製造した経編地の捲縮発現性を評価し、表1に結果を示す。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を含有する経編地において、良好なストレッチ性と、捲縮斑のない高品位な製品の製造が可能であり、水着、スパッツなどのスポーツ素材、あるいは、ファンデーションなどのインナー素材等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を含有する経編地の染色において、染色における昇温時に60℃〜80℃の温度で10分間以上編地をリラックスする事を特徴とする経編地の加工法。

【公開番号】特開2007−23404(P2007−23404A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205096(P2005−205096)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】