説明

経鼻装置

【課題】患者の経鼻エアウエイに対して物質を配送するための改良された経鼻配送装置および方法を提供すること。
【解決手段】患者の経鼻エアウエイ1に物質を配送するための経鼻配送装置11は、患者のそれぞれの鼻孔に適合するためのノーズピース21,23をそれぞれが有する第1及び第2のノーズピースユニット17,19と、患者の経鼻エアウエイ1へ配送される物質を供給するための少なくとも1つの物質供給ユニット13,15と、前記少なくとも1つの物質供給ユニット13,15を前記ノーズピースユニット17,19のそれぞれに対して交互に選択的に流体的に接続するためのバルブユニット35,37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配伍剤(特に全身または局所薬剤)またはワクチンを含有した物質、特に懸濁または溶液としての液体、あるいは粉末の1つを、患者の経鼻エアウエイに配送するための経鼻配送装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、経鼻エアウエイ1は、鼻中隔4によって分離された2つの鼻腔2,3を備える。このエアウエイ1は、副鼻腔6に接続された副鼻腔小口5や、耳管8および中耳9に接続された耳管小口7のような多数の小口と、嗅細胞とを含み、鼻粘膜によって覆われている。経鼻エアウエイ1は、鼻咽頭、口腔および下気道と連通可能である。経鼻エアウエイ1は、口咽頭帆を開閉することによって、鼻咽頭の前部領域および口腔に選択的に連通される。
【0003】
処置を必要とする多くの鼻の状態がある。そのような状態の1つは、鼻の炎症、特に鼻炎である。これは、アレルギー性または非アレルギー性であって、しばしば感染に関連して、正常な鼻の機能を妨害する。一例を挙げれば、経鼻エアウエイのアレルギー性および非アレルギー性炎症は、一般的に人口の10〜20%に影響を与えている。鼻甲介の勃起性組織の鼻詰まり(うっ血)、流涙、水気の多い粘液の分泌、くしゃみおよびかゆみは、最も共通した症状である。後で理解されるように、鼻詰まりは、鼻呼吸を困難にして口呼吸を促進し、いびきや睡眠妨害の原因となる。他の鼻の状態には、副鼻腔から生ずる鼻ポリープ、肥大性アデノイド、分泌性中耳炎、鼻疾患、および減退した嗅覚が含まれる。
【0004】
ある種の鼻の状態を処置する場合、配伍剤の局所投与が、鼻詰まりを処置または軽減することに好ましい。特に、鼻粘膜が主たる病理学的経路である場合である。通常局所投与される配伍剤には、うっ血除去剤、抗ヒスタミン剤、クロモグリケイト、ステロイドおよび抗生物質がある。現在、既知の抗炎症薬剤の中で、局所ステロイドが鼻詰まりに効果を有することが示されている。局所うっ血除去剤もまた、鼻詰まりの軽減に使用されることが示唆されている。多少問題はあるが、局所うっ血除去剤、ステロイドおよび抗細菌剤を使用した肥大性アデノイドおよび慢性分泌性中耳炎の処置もまた提案されている。更に、薬剤の局所投与は、鼻咽頭の前部領域、副鼻腔および耳管における炎症の症状の処置または少なくとも軽減に使用されている。
【0005】
配伍剤はまた、経鼻パスウエイを通して全身的に配送することもできる。経鼻パスウエイは、オキシトシンおよびカルシトニンのようなホルモンや、抗偏頭痛組成物のような鎮痛薬等の薬剤の全身投与に対する良好な投与経路を与える。これは、鼻粘膜の高血流および大面積が迅速な全身的摂取を有利に与えるためである。
【0006】
経鼻配送は、迅速な効き始めを必要とする配伍剤、例えば鎮痛薬、制吐剤、インスリン、抗てんかん薬、鎮静剤、催眠薬や、他の薬剤、例えば心血管作用薬の投与に有利となることも期待される。経鼻投与は、注射と同等の速度で、また経口投与よりも速い速度で、素早く効き始めることが考えられる。事実、多くの急性状態の処置について、経鼻配送は経口投与よりも有利である。何故ならば、胃のうっ滞が、経口投与後の効き始めを更に緩やかにしてしまうからである。
【0007】
経鼻配送は、近代のバイオテクノロジー技術によって生成されるタンパク質およびペプチドの投与に対する効果的な配送経路を与えることも期待される。そのような物質にとって、腸内代謝と肝臓内初期通過効果は、信頼性の高いコスト効率的な配送に対する有意な障害となる。
【0008】
更に、本発明の経鼻配送技術を使用する経鼻配送は、既存の技術を使用できない多くの一般的な神経学的疾病、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、精神病、および脳内感染の処置に効果的であることを証明することが期待される。本発明の経鼻配送技術は、嗅覚領域への配送を可能にする。この領域は、鼻腔の上部領域に位置し、血液−脳障壁(BBB)を迂回すること、並びに脳脊髄液(CSF)と脳を連通させることを可能とする唯一の領域を代表する。
【0009】
また、本発明の経鼻配送技術が、ワクチンの効果的な配送を可能にすることも期待される。
【0010】
配伍剤およびワクチンの配送の他に、鼻粘膜を液体、特に塩水溶液で洗浄して、粒子や分泌物を除去したり、鼻粘膜の粘膜繊毛作用を改良することが一般に行われる。これらの溶液は、活性薬剤と組み合わせて使用できる。
【0011】
どのような種類の薬品配送に対しても、正確で信頼性の高い服用は本質的なものであるが、それは狭い治療的な窓を有した良く効く薬品や、潜在的に深刻な有害効果を有する薬品、そして深刻で生命を脅かす状態の処置用の薬品の投与に関連して特に重要である。いくつかの状態に対して、例えば糖尿病の場合に、特別な状況に対する服用量を個別化することは、本質的なことである。糖尿病に対して、そして実際には多くの他の状態に対して、薬剤の服用量は、実際の実時間測定値に基づいていることが好ましい。現在、血液サンプルは最も頻繁に使用されているが、患者の呼気に含まれる分子の分析が、いくつかの状態に対する血液分析の代わりとして提案されている。息分析は現在、胃潰瘍を引き起こすヘリコバクターピロリ感染のような状態の診断に使用されている。
【0012】
WO−A−00/51672は、物質、特に配伍剤を、鼻腔を通る双方向の流れ、即ち一方の鼻孔に入り、鼻中隔の後部縁を回って、他方の鼻孔から反対の方向に通過する空気の流れで配送するための配送装置を開示している。この双方向空気流は、鼻粘膜中の感覚神経を刺激して、この配送用に患者の状態を整え、しかもより快適な配送状況を与えることに有利に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第00/51672号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の1つの目的は、患者の経鼻エアウエイに対して物質を配送するための改良された経鼻配送装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの形態において本発明は、患者の経鼻エアウエイに物質を配送するための経鼻配送装置を提供する。この装置は、患者のそれぞれの鼻孔に適合するためのノーズピースをそれぞれが有する第1及び第2のノーズピースユニットと、患者の経鼻エアウエイへ配送される物質を供給するための少なくとも1つの物質供給ユニットと、前記少なくとも1つの物質供給ユニットを前記ノーズピースユニットのそれぞれに対して交互に選択的に流体的に接続するためのバルブユニットとを備える。
【0016】
この配送装置は、使用時に患者が排気するマウスピースを更に備えることが好ましい。
【0017】
この配送装置は、前記少なくとも1つの物質供給ユニットによって供給される物質を飛沫同伴する気体流を供給するための気体供給チャネルを更に備えることが好ましい。
【0018】
1つの実施形態では、前記マウスピースは前記気体供給チャネルに対して流体的に接続され、これにより患者の呼息によって発生された空気流は前記気体流となる。
【0019】
もう1つの実施形態では、前記気体供給チャネルを通して気体流を配送するために、前記気体供給チャネルに対して流体的に接続された気体供給ユニットを更に備える。
【0020】
前記気体供給ユニットは、呼息により作動可能なユニットであって、患者による呼息に応じて作動されるように、前記マウスピースに対して流体的に接続されていることが好ましい。
【0021】
1つの実施形態では、前記バルブユニットは、交互に流体的に、前記ノーズピースユニットの一方を前記少なくとも1つの物質供給ユニットに対して接続し且つ前記ノーズピースユニットの他方を排気するように構成され、前記気体流が鼻中隔の後部縁を回って経鼻エアウエイを通して流れることを可能にする駆動圧力下にある場合、前記一方のノーズピースユニットを通して配送された前記気体流は、前記他方のノーズピースユニットを通して排気される。
【0022】
この配送装置は、前記他方のノーズピースユニットを排気する少なくとも1つのフロー抵抗体を更に備えることが好ましい。
【0023】
1つの実施形態では、前記少なくとも1つのフロー抵抗体は一定のフロー抵抗を有して、一定のフロー抵抗を前記気体流に与えるものである。
【0024】
もう1つの実施形態では、前記少なくとも1つのフロー抵抗体は漸進性抵抗体であって、増加するフロー抵抗を前記気体流に漸進的に与えるものである。
【0025】
前記漸進性抵抗体は、漸進的に増加する抵抗を前記気体流に与える拡張可能な部材を備えることが好ましい。
【0026】
この配送装置は、前記第1及び第2のノーズピースユニットのそれぞれを通して物質を交互に配送するように前記バルブユニットを制御するための制御ユニットを更に備えることが好ましい。
【0027】
1つの実施形態では、この配送装置は、前記第1及び第2のノーズピースユニットのそれぞれに交互に配送される物質を供給するための単一の物質供給ユニットを備える。
【0028】
もう1つの実施形態では、この配送装置は、前記第1及び第2のノーズピースユニットのそれぞれに配送される物質を供給するための第1及び第2の物質供給ユニットを備える。
【0029】
前記バルブユニットは第1及び第2のバルブを備え、各バルブは前記第1及び第2のノーズピースユニットの対応する1つに流体的に接続されることが好ましい。
【0030】
もう1つの形態において本発明は、患者の経鼻エアウエイに物質を配送するための方法を提供する。この方法は、患者のそれぞれの鼻孔に第1及び第2のノーズピースユニットを適合する工程と、前記ノーズピースユニットのそれぞれを通して物質を配送する工程とを備える。
【0031】
この方法は、物質の配送中にマウスピースを通して排気する工程を更に備えることが好ましい。
【0032】
物質は気体流で配送されることが好ましい。
【0033】
1つの実施形態では、前記気体流は患者の呼息によって発生された空気流である。
【0034】
もう1つの実施形態では、前記気体流は患者の呼息とは別の気体流である。
【0035】
1つの実施形態では、物質は前記ノーズピースユニットを通して交互に配送され、且つ前記ノーズピースユニットの他方は排気され、前記気体流が鼻中隔の後部縁を回って経鼻エアウエイを通して流れることを可能にする駆動圧力下にある場合、前記一方のノーズピースユニットを通して配送された前記気体流は、前記他方のノーズピースユニットを通して排気される。
【0036】
前記気体流は1つのフロー抵抗体を通して排気されることが好ましい。
【0037】
1つの実施形態では、前記フロー抵抗体は一定のフロー抵抗を有して、一定のフロー抵抗を前記気体流に与えるものである。
【0038】
もう1つの実施形態では、前記フロー抵抗体は漸進性抵抗体であって、漸進的に増加するフロー抵抗を前記気体流に与えるものである。
【0039】
前記漸進性抵抗体は、漸進的に増加する抵抗を前記気体流に与える拡張可能な部材を備えることが好ましい。
【0040】
1つの実施形態では、物質は単一の物質供給ユニットから供給される。
【0041】
もう1つの実施形態では、物質は前記第1及び第2の物質供給ユニットのそれぞれから前記第1及び第2のノーズピースユニットに供給される。
【0042】
別の形態において本発明は、患者の経鼻エアウエイに物質を配送するための経鼻配送装置を提供する。この装置は、患者の経鼻エアウエイへ物質を配送するための少なくとも1つの物質供給ユニットと、患者の経鼻エアウエイ内に変化する圧力を加えるための気体供給ユニットとを備える。
【0043】
前記気体供給ユニットは、患者の経鼻エアウエイ内の圧力を周期的に変化させるように構成されていることが好ましい。
【0044】
前記気体供給ユニットは、患者の経鼻エアウエイ内に交互に変化する圧力を与えるように構成されていることがより好ましい。
【0045】
この配送装置は、使用時に患者が排気するマウスピースを更に備えることが好ましい。
【0046】
前記気体供給ユニットは、呼息により作動可能なユニットであって、患者による呼息に応じて作動されるように、前記マウスピースに対して流体的に接続されていることがより好ましい。
【0047】
更に別の形態において本発明は、患者の経鼻エアウエイに物質を配送するための方法を提供する。この方法は、患者の経鼻エアウエイへ物質を配送する工程と、患者の経鼻エアウエイ内に変化する圧力を加える工程とを備える。
【0048】
患者の経鼻エアウエイ内に変化する圧力を加える工程は、患者の経鼻エアウエイ内の圧力を周期的に変化させる工程を備えることが好ましい。
【0049】
患者の経鼻エアウエイ内に変化する圧力を加える工程は、患者の経鼻エアウエイ内の圧力を交互に変化させる工程を備えることがより好ましい。
【0050】
この方法は、物質の配送中にマウスピースを通して排気する工程を更に備えることが好ましい。
【0051】
更に異なる形態において本発明は、患者の経鼻エアウエイに物質を配送するための経鼻配送装置を提供する。この装置は、患者の経鼻エアウエイへ配送される物質を供給するための少なくとも1つの物質供給ユニットと、患者の経鼻エアウエイを通して所定体積の気体を交互に配送および回収して、飛沫同伴された物質が患者の経鼻エアウエイを通して交互の方向に放出されるようにするための気体供給ユニットとを備える。
【0052】
この配送装置は、使用時に患者が排気するマウスピースを更に備えることが好ましい。
【0053】
更に別のもう1つの形態において本発明は、患者の経鼻エアウエイに物質を配送するための方法を提供する。この方法は、患者の経鼻エアウエイへ物質を配送する工程と、患者の経鼻エアウエイを通して所定体積の気体を交互に配送および回収して、飛沫同伴された物質が患者の経鼻エアウエイを通して交互の方向に放出されるようにする工程とを備える。
【0054】
この方法は、物質の配送中にマウスピースを通して排気する工程を更に備えることが好ましい。
【0055】
更に別の異なる形態において本発明は、経鼻配送装置に取り付けるためのインターフェース部材を提供する。この部材は、患者の鼻孔に適合するための少なくとも1つのノーズピースと、使用時に患者が排気するマウスピースとを、一体的な要素として備える。
【0056】
このインターフェース部材は、患者のそれぞれの鼻孔に適合するための第1及び第2のノーズピースを備えることが好ましい。
【0057】
このインターフェース部材は、使い捨て部材であることが好ましい。
【0058】
1つの実施形態では、前記マウスピースは、使用時に患者が排気する管状部を備える。
【0059】
もう1つの実施形態では、前記マウスピースは、前記マウスピース内への呼息に応じて偏向される柔軟部材を含む。
【0060】
前記マウスピースは、使用時に患者が排気する空洞を備え、前記空洞の一部は前記柔軟部材によって規定されることが好ましい。
【0061】
前記柔軟部材は弾性部材を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0062】
以上のように、本発明によれば、患者の経鼻エアウエイに対して物質を配送するための改良された経鼻配送装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ヒトの患者の経鼻エアウエイを模式的に示す。
【図2(a)】本発明の第1の実施形態に係る経鼻配送装置を模式的に示す。
【図2(b)】第1の配送構成にある図2(a)の経鼻配送装置を示す。
【図2(c)】第2の配送構成にある図2(a)の経鼻配送装置を示す。
【図3(a)】本発明の第2の実施形態に係る経鼻配送装置を模式的に示す。
【図3(b)】第1の配送構成にある図3(a)の経鼻配送装置を示す。
【図3(c)】第2の配送構成にある図3(a)の経鼻配送装置を示す。
【図4(a)】本発明の第3の実施形態に係る経鼻配送装置を模式的に示す。
【図4(b)】第1の配送構成にある図4(a)の経鼻配送装置を示す。
【図4(c)】第2の配送構成にある図4(a)の経鼻配送装置を示す。
【図5(a)】本発明の第4の実施形態に係る経鼻配送装置を模式的に示す。
【図5(b)】第1の配送構成にある図4(a)の経鼻配送装置を示す。
【図5(c)】第2の配送構成にある図4(a)の経鼻配送装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の好ましい実施形態が、以下で添付図面を参照して、例として説明される。
【0065】
図2(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る経鼻配送装置11を示している。
【0066】
この配送装置11は、計量された服用量の物質を供給するための第1及び第2の物質供給ユニット13,15を備える。好ましい実施形態では、この物質は配伍剤、特に全身または局所薬剤であるか、またはワクチンである。
【0067】
この実施形態では、物質供給ユニット13,15は、物質を含有した計量された服用量の推進剤、好ましくはハイドロフロロアルカン(HFA)推進剤等を、懸濁または溶液の一方として配送するためのエアゾールキャニスターである。
【0068】
物質供給ユニット13,15のそれぞれは、この実施形態ではバイアス要素に負荷をかけることによって予め準備可能であり、また解放機構を有している。この解放機構は、この実施形態では電気的に動作されるもので、トリガされたときにバイアス要素を解放して、それぞれの物質供給ユニット13,15を作動し、計量された服用量の物質を配送する。
【0069】
1つの代替実施形態では、物質供給ユニット13,15は、作動されると計量された服用量の物質を配送する機械的な配送ポンプ、特に液体配送ポンプまたは粉体搬送ポンプで構成できる。
【0070】
もう1つの代替実施形態では、物質供給ユニット13,15は、作動されると計量された服用量の物質を乾燥粉体として配送する乾燥粉体搬送ポンプで構成できる。
【0071】
さらにもう1つの代替実施形態では、物質供給ユニット13,15は、作動されると計量された服用量の物質をエアゾールスプレーとして配送するネブライザーで構成できる。
【0072】
配送装置11は更に、患者の鼻孔のそれぞれに適合するための第1及び第2のノーズピースユニット17,19を備える。これらは、第1及び第2の物質供給ユニット13,15のそれぞれと流体的に接続されている。この実施形態では、ノーズピースユニット17,19は、患者の鼻孔のそれぞれに適合するためのノーズピース21,23と、このノーズピース21,23および物質供給ユニット13,15のそれぞれに流体的に接続するフローチャネル25,27とを備える。この実施形態では、ノーズピース21,23は、交換可能な要素である。
【0073】
配送装置11は更に、患者の唇によって把持され、そこを通して患者が排気するマウスピース31を備える。この実施形態では、マウスピース31は、交換可能な要素である。好ましい実施形態では、ノーズピース21,23とマウスピース31は、使用後の交換を可能とするように、単一要素として一体的に形成される。このようにして、配送装置11は、多くの異なる患者に対し物質を配送することに使用でき、しかも患者から患者への相互汚染を回避できる。
【0074】
配送装置11は更に、マウスピース31に対して流体的に接続された気体供給ユニット33を備える。
【0075】
配送装置11は更に、第1及び第2のバルブ35,37を有したバルブユニットを備える。これらのバルブは、第1及び第2のノーズピースユニット17,19のフローチャネル25,27のそれぞれに配設され、そして気体供給チャネル33に流体的に接続されている。この結果、ノーズピース21,23の一方とマウスピース31および物質供給ユニット13,15のそれぞれとの選択的な連通が可能とされる。この場合、ノーズピース21,23の他方は、大気に排気される。この実施形態では、バルブ35,37は、電動型バルブである。
【0076】
バルブ35,37のそれぞれは、それぞれのノーズピース21,23に流体的に接続された第1のポートと、それぞれの物質供給ユニット13,15に流体的に接続された第2のポートと、気体供給チャネル33に流体的に接続された第3のポートと、大気に排気する第4のポートとを備える。バルブ35,37のそれぞれは、第1の配送位置と第2の排気位置との間で動作可能である。第1の配送位置では、第1、第2および第3のポートが開かれ、そして第4のポートが閉じられており、これにより物質がそれぞれの物質供給ユニット13,15によって配送され、かつ患者による呼息に応じて飛沫同伴される。第2の排気位置では、第1、第2および第4のポートが開かれ、そして第3のポートが閉じられており、これにより患者の経鼻エアウエイ1を通して押し込まれた患者の呼息が大気に排気される。
【0077】
配送装置11は更に、排気される空気流に対してフロー抵抗を与えるための第1および第2のフロー抵抗体ユニット39,41を備える。これらのユニットは、バルブ35,37の第4のポートのそれぞれに流体的に接続されている。1つの実施形態では、フロー抵抗体ユニット39,41は、それぞれが物質の漏洩を防止するためのフィルタを含むことができる。
【0078】
この実施形態では、フロー抵抗体ユニット39,41は、それぞれが一定のフロー抵抗のフロー抵抗体を有して、排気される空気流に対して一定のフロー抵抗を与える。
【0079】
もう1つの実施形態では、フロー抵抗体ユニット39,41は、それぞれが漸進性のフロー抵抗体を有して、排気される空気流に対して漸進的に増加するフロー抵抗を与える。1つの実施形態では、フロー抵抗体ユニット39,41は、膨張可能なバルーンを有することができる。1つの実施形態では、フロー抵抗体ユニット39,41は、所定の圧力、例えば副鼻腔小口5および耳管小口7を開放する圧力を超える圧力の発生後に、大気に排気するように構成することができる。この構成によって、副鼻腔小口5および耳管小口7を開放する圧力を超える圧力の発生後に、フロー抵抗は次第に減少し、空気流は増加する。この圧力およびフローの形態は、経鼻エアウエイ1に浮遊粒子が沈着することを促進できる。この圧力およびフローの形態は更に、処置が終了される前に、浮遊粒子が経鼻エアウエイ1から噴出されることを確実にして、後で吸入される可能性のある浮遊粒子が経鼻エアウエイ1内に残ることを防止する。
【0080】
配送装置11は更に、第1及び第2のフローメータ43,45を備える。これらは、第1及び第2のノーズピースユニット17,19のフローチャネル25,27のそれぞれに配設され、そこを通る流体の流率を検出する。この実施形態では、フローメータ43,45は、ノーズピースユニット17,19のフローチャネル25,27のそれぞれに、それぞれのノーズピース21,23とそれぞれのバルブ35,37との間に挟まれて配設されている。
【0081】
配送装置11は更に、第1及び第2の圧力センサ47,49を備える。これらは、第1及び第2のノーズピースユニット17,19のフローチャネル25,27のそれぞれに配設され、その中の圧力を検出する。この実施形態では、圧力センサ47,49は、ノーズピースユニット17,19のフローチャネル25,27のそれぞれに、それぞれのノーズピース21,23とそれぞれのバルブ35,37との間に挟まれて配設されている。
【0082】
配送装置11は更に、その動作を制御するための制御ユニット51を備える。この制御ユニット51は、第1及び第2の物質供給ユニット13,15と、バルブユニットの第1及び第2のバルブ35,37と、第1及び第2のフローメータ43,45と、第1及び第2の圧力センサ47,49とに対し、動作可能に接続されている。これにより、第1及び第2の物質供給ユニット13,15は、検出された圧力および流率の一方または双方に応答して作動される。
【0083】
配送装置11の動作が以下で説明される。
【0084】
先ず、図2(a)に示されているように、ノーズピースユニット17,19のノーズピース21,23は患者のそれぞれの鼻孔に嵌合され、またマウスピース31は患者の唇で把持される。この構成により、配送装置11は3点固定の備えをし、これにより患者の鼻腔2,3に対する信頼性の高い繰り返し配送を確実にする。
【0085】
配送装置11を最初にとると、バルブユニットのバルブ35,37の一方、この実施形態では第1のバルブ35は配送位置にあって、気体供給チャネル33およびそれぞれの物質供給ユニット13は、それぞれのノーズピース21と流体連通している。このとき、バルブユニットのバルブ35,37の他方、この実施形態では第2のバルブ37は排気位置にあって、他方のノーズピース23を排気する。
【0086】
図2(b)に示されているように、患者はそれからマウスピース31を通して呼息することを開始する。この呼息は、患者の口咽頭帆を閉じるように作用し、呼息から吸入された空気を導入することによって経鼻エアウエイ1内の圧力を増加する。この場合、第2のフロー抵抗体ユニット41は、吸入された空気に対してフロー抵抗を与える。
【0087】
1つの動作モードでは、配送装置11は、所定の作動圧力の発生に応じて作動されるように構成されている。1つの実施形態では、第1の圧力センサ43が作動圧力の検出に利用される。もう1つの実施形態では、第2の圧力センサ45が作動圧力の検出に利用される。所定の作動圧力の検出時に、制御ユニット51は、第1の物質供給ユニット13を作動して、計量された服用量の物質を供給させる。この物質は、患者の呼息によって飛沫同伴される。
【0088】
もう1つの動作モードでは、配送装置11は、所定の流率の発生に応じて作動されるように構成されている。1つの実施形態では、第1のフローメータ47が作動流率の検出に利用される。もう1つの実施形態では、第2のフローメータ49が作動流率の検出に利用される。作動流率の検出時に、制御ユニット51は、第1の物質供給ユニット13を作動して、計量された服用量の物質を供給させる。この物質は、患者の呼息によって飛沫同伴される。
【0089】
第1の物質供給ユニット13の作動に続いて、図2(c)に示されているように、バルブユニットは制御ユニット51によって再構成される。このとき、第1のバルブ35は排気位置へ移動させられて、第1のノーズピースユニット17のノーズピース21を排気する。また、第2のバルブ37は配送位置へ移動させられて、気体供給チャネル33および第2の物質供給ユニット15を第2のノーズピースユニット19のノーズピース23と流体連通させる。
【0090】
1つの動作モードでは、バルブユニットは、所定の再構成圧力の検出時に再構成される。1つの実施形態では、第1の圧力センサ43が再構成圧力の検出に利用される。もう1つの実施形態では、第2の圧力センサ45が再構成圧力の検出に利用される。再構成圧力の検出時に、制御ユニット51は、第2の物質供給ユニット15を作動して、計量された服用量の物質を供給させる。この物質は、患者の呼息によって飛沫同伴される。
【0091】
もう1つの動作モードでは、配送装置11は、所定の再構成流量の検出時に作動されるように構成される。1つの実施形態では、第1のフローメータ47が再構成流量の検出に利用される。もう1つの実施形態では、第2のフローメータ49が再構成流量の検出に利用される。再構成流量の検出時に、制御ユニット51は、第2の物質供給ユニット15を作動して、計量された服用量の物質を供給させる。この物質は、患者の呼息によって飛沫同伴される。
【0092】
異なる動作モードでは、配送装置11は、第1の物質供給ユニット13の作動に後続した所定期間の経過時に作動されるように構成される。所定期間の経過時に、制御ユニット51は、第2の物質供給ユニット15を作動して、計量された服用量の物質を供給させる。この物質は、患者の呼息によって飛沫同伴される。
【0093】
第2の物質供給ユニット15の作動後に、バルブユニットは、制御ユニット51によって元の構成に再構成される。このとき、第1のバルブ35は、気体供給チャネル33および第1の物質供給ユニット13が第1のノーズピースユニット17のノーズピース21と流体連通させられた配送位置へと移動させられる。また、第2のバルブ37は排気位置へ移動させられて、第2のノーズピースユニット19のノーズピース23を排気する。
【0094】
1つの動作モードでは、バルブユニットは、所定の再構成圧力の検出時に再構成される。1つの実施形態では、第1の圧力センサ43が再構成圧力の検出に利用される。もう1つの実施形態では、第2の圧力センサ45が再構成圧力の検出に利用される。
【0095】
もう1つの動作モードでは、バルブユニットは、所定の再構成流量の検出時に再構成される。1つの実施形態では、第1のフローメータ47が再構成流量の検出に利用される。もう1つの実施形態では、第2のフローメータ49が再構成流量の検出に利用される。
【0096】
異なる動作モードでは、バルブユニットは、第2の物質供給ユニット15の作動に後続した所定期間の経過時に作動されるように再構成される。
【0097】
このようにして、配送装置11は、患者の鼻孔のそれぞれを通した物質の連続配送に備える。この配送は、コンプライアンスに関して有利であり、特に経鼻エアウエイ1の目標とされる後部領域への物質の配送に関して有利である。
【0098】
もう1つの実施形態において構成された配送装置11では、バルブユニットは、各動作当たり3回以上再構成される。これは、配送装置11の各動作において、患者の鼻孔に交互に物質を繰り返し配送することに備えるためである。
【0099】
図3(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る経鼻配送装置11を示している。
【0100】
この実施形態の配送装置11は、上述した第1の実施形態の配送装置11に非常に良く似ているので、不要な説明の重複を避けるために、同様の参照符号で同様の部分を示しながら、違いだけが詳細に説明される。
【0101】
この実施形態の配送装置11は、呼息作動型気体供給ユニット53を更に備える。この点は、上述した第1の実施形態と異なる。このユニットは、気体供給チャネル33に流体的に接続されて、そこへ気体流を配送する。このユニットはまた、制御ユニット51に動作可能に接続されている。マウスピース31が、気体供給チャネル33にではなく、気体供給ユニット53に流体連通されている点も異なる。これにより、気体流は、マウスピース31内への患者の呼息に応答して気体供給ユニット53によって配送される。
【0102】
気体供給ユニット53は、患者の呼息に応答してこのユニットを作動するためのトリガ機構55を有する。このトリガ機構55は、マウスピース31に動作可能に結合され、患者の呼息によって作動される。この実施形態では、トリガ機構55は、所定の作動圧力の検出に応答して気体供給ユニット53を作動するための圧力センサを備える。もう1つの実施形態では、トリガ機構55は、所定の流率の検出に応答して気体供給ユニット53を作動するためのフローメータを備える。
【0103】
この実施形態では、マウスピース31は、患者の呼息によって作用されるダイアフラムを有し、所定の作動圧力の発生時にトリガ機構55を作動する。この構成により、マウスピース31が使い捨ての場合、配送装置11のどの部分も、使い捨てのマウスピース31以外は、患者の呼息に曝されることがない。このため、配送装置11は、例えば集団免疫処置や集団予防接種において、相互汚染の危険性なく、多数の患者に対して物質を配送することに使用できる。
【0104】
配送装置11の動作は、上述した実施形態に関するものと同様である。但し、気体は、患者の呼息によって発生される代わりに、気体供給ユニット53から与えられる。
【0105】
1つの実施形態では、気体供給ユニット53は、経鼻エアウエイ1内に所定の圧力を発生するような流率で気体流を配送するように構成されている。
【0106】
もう1つの実施形態では、気体供給ユニット53は、交互に変化する流れを有した気体流であって、経鼻エアウエイ1内に交互に変化する圧力を発生する気体流を配送するように構成され得る。経鼻エアウエイ1内の圧力を周期的に変化させることによって、副鼻腔6や、耳管8や、中耳9に対し物質の改良された配送が可能になる。1つの実施形態では、配送装置11は、患者の一方の鼻孔のみを通した物質の配送に備えるように構成され得る。
【0107】
異なる実施形態では、第1及び第2のフロー抵抗体39,41の少なくとも一方は、拡張可能な部材、例えば膨張可能なバルーンを備えるように構成され得る。また、気体供給ユニット53は、患者の鼻孔の一方または交互に双方から経鼻エアウエイ1を通して、一定量の気体を交互に配送および回収するように構成され得る。この配送および回収は、物質を飛沫同伴する一定量の気体が、経鼻エアウエイ1を通して互いに逆方向に繰り返し噴出されるようにする。物質を飛沫同伴する一定量の気体を経鼻エアウエイ1を通して交互の方向に繰り返し噴出することは、物質の改良された配送に備える。1つの実施形態では、配送装置11は、患者の一方の鼻孔のみを通した物質の配送に備えるように構成され得る。
【0108】
図4(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態に係る経鼻配送装置111を示している。
【0109】
配送装置111は、計量された服用量の物質を供給するための物質供給ユニット113を備える。好ましい実施形態では、この物質は、配伍剤、特に全身的または局所的薬剤であるか、またはワクチンである。
【0110】
この実施形態では、物質供給ユニット113は、作動されると計量された服用量の物質を、ここでは連続してエアゾールスプレーとして配送するネブライザーで構成できる。
【0111】
配送装置111は更に、患者の鼻孔のそれぞれに適合するための第1及び第2のノーズピースユニット117,119を備える。この実施形態では、ノーズピースユニット117,119は、患者の鼻孔のそれぞれに適合するためのノーズピース121,123と、このノーズピース121,123のそれぞれを物質供給ユニット113に対し流体的に接続するフローチャネル125,127とを備える。この実施形態では、ノーズピース121,123は、交換可能な要素である。
【0112】
配送装置11は更に、患者の唇によって把持され、そこを通して患者が排気するマウスピース131を備える。この実施形態では、マウスピース131は、交換可能な要素である。好ましい実施形態では、ノーズピース121,123とマウスピース131は、使用後の交換を可能とするように、単一要素として一体的に形成される。このようにして、配送装置111は、多くの異なる患者に対し、例えば集団免疫処置や集団予防接種において、物質を配送することに使用でき、しかも患者から患者への相互汚染の可能性を回避できる。
【0113】
配送装置111は更に、物質供給ユニット113およびマウスピース131を流体的に接続する気体供給ユニット133を備える。
【0114】
配送装置111は更に、第1及び第2のバルブ135,137を有したバルブユニットを備える。これらのバルブは、第1及び第2のノーズピースユニット117,119のフローチャネル125,127のそれぞれに配設されている。この結果、ノーズピース121,123の一方と物質供給ユニット113およびマウスピース131との選択的な連通が可能とされる。この場合、ノーズピース121,123の他方は、大気に排気される。この実施形態では、バルブ135,137は、電動型バルブである。
【0115】
バルブ135,137のそれぞれは、それぞれのノーズピース121,123に流体的に接続された第1のポートと、物質供給ユニット113に流体的に接続された第2のポートと、大気に排気する第3のポートとを備える。バルブ135,137のそれぞれは、第1の配送位置と第2の排気位置との間で動作可能である。第1の配送位置では、第1および第2のポートが開かれ、そして第3のポートが閉じられており、これにより物質が物質供給ユニット113によって配送され、かつ患者による呼息によって飛沫同伴される。第2の排気位置では、第1および第3のポートが開かれ、そして第2のポートが閉じられており、これにより患者の経鼻エアウエイ1を通して押し込まれた患者の呼息が大気に排気される。
【0116】
配送装置111は更に、排気される空気流に対してフロー抵抗を与えるための第1および第2のフロー抵抗体ユニット139,141を備える。これらのユニットは、バルブ135,137の第3のポートのそれぞれに流体的に接続されている。1つの実施形態では、フロー抵抗体ユニット139,141は、それぞれが物質の漏洩を防止するためのフィルタを含むことができる。
【0117】
この実施形態では、フロー抵抗体ユニット139,141は、一定のフロー抵抗のフロー抵抗体を有して、排気される空気流に対して一定のフロー抵抗を与える。
【0118】
もう1つの実施形態では、フロー抵抗体ユニット139,141は、漸進性のフロー抵抗体を有して、排気される空気流に対して漸進的に増加するフロー抵抗を与える。1つの実施形態では、フロー抵抗体ユニット139,141は、膨張可能なバルーンを有することができる。1つの実施形態では、フロー抵抗体ユニット139,141は、所定の圧力、例えば副鼻腔小口5および耳管小口7を開放する圧力を超える圧力の発生後に、大気に排気するように構成することができる。この構成によって、副鼻腔小口5および耳管小口7を開放する圧力を超える圧力の発生後に、フロー抵抗は次第に減少し、空気流は増加する。この圧力およびフローの形態は、経鼻エアウエイ1に浮遊粒子が沈着することを促進できる。この圧力およびフローの形態は更に、処置が終了される前に、浮遊粒子が経鼻エアウエイ1から噴出されることを確実にして、後で吸入される可能性のある浮遊粒子が経鼻エアウエイ1内に残ることを防止する。
【0119】
配送装置111は更に、第1及び第2のフローメータ143,145を備える。これらは、第1及び第2のノーズピースユニット117,119のフローチャネル125,127のそれぞれに配設され、そこを通る流体の流率を検出する。この実施形態では、フローメータ143,145は、ノーズピースユニット117,119のフローチャネル125,127のそれぞれに、それぞれのノーズピース121,123とそれぞれのバルブ135,137との間に挟まれて配設されている。
【0120】
配送装置111は更に、第1及び第2の圧力センサ147,149を備える。これらは、第1及び第2のノーズピースユニット117,119のフローチャネル125,127のそれぞれに配設され、その中の圧力を検出する。この実施形態では、圧力センサ147,149は、ノーズピースユニット117,119のフローチャネル125,127のそれぞれに、それぞれのノーズピース121,123とそれぞれのバルブ135,137との間に挟まれて配設されている。
【0121】
配送装置111は更に、その動作を制御するための制御ユニット151を備える。この制御ユニット151は、物質供給ユニット113と、バルブユニットの第1及び第2のバルブ135,137と、第1及び第2のフローメータ143,145と、第1及び第2の圧力センサ147,149とに対し、動作可能に接続されている。これにより、物質供給ユニット113は、検出された圧力および流率の一方または双方に応答して作動される。
【0122】
配送装置111の動作が以下で説明される。
【0123】
先ず、図4(a)に示されているように、ノーズピースユニット117,119のノーズピース121,123は患者のそれぞれの鼻孔に嵌合され、またマウスピース131は患者の唇で把持される。この構成により、配送装置111は3点固定の備えをし、これにより患者の鼻腔2,3に対する信頼性の高い繰り返し配送を確実にする。
【0124】
配送装置111を最初にとると、バルブユニットのバルブ135,137の一方、この実施形態では第1のバルブ135は配送位置にあって、物質供給ユニット113は、第1のノーズピースユニット117のノーズピース121と流体連通している。このとき、バルブユニットのバルブ135,137の他方、この実施形態では第2のバルブ137は排気位置にあって、第2のノーズピースユニット119のノーズピース123を排気する。
【0125】
図4(b)に示されているように、患者はそれからマウスピース131を通して呼息することを開始する。この呼息は、患者の口咽頭帆を閉じるように作用し、呼息から吸入された空気を導入することによって経鼻エアウエイ1内の圧力を増加する。この場合、第2のフロー抵抗体ユニット141は、吸入された空気に対してフロー抵抗を与える。
【0126】
1つの動作モードでは、配送装置111は、所定の作動圧力の発生に応じて作動されるように構成されている。1つの実施形態では、第1の圧力センサ143が作動圧力の検出に利用される。もう1つの実施形態では、第2の圧力センサ145が作動圧力の検出に利用される。作動圧力の検出時に、制御ユニット151は、物質供給ユニット113を作動して、計量された服用量の物質を供給させる。この物質は、患者の呼息によって飛沫同伴される。
【0127】
もう1つの動作モードでは、配送装置111は、所定の流率の発生に応じて作動されるように構成されている。1つの実施形態では、第1のフローメータ147が作動流率の検出に利用される。もう1つの実施形態では、第2のフローメータ149が作動流率の検出に利用される。作動流率の検出時に、制御ユニット151は、物質供給ユニット113を作動して、計量された服用量の物質の配送を開始させる。この物質は、患者の呼息によって飛沫同伴される。
【0128】
物質供給ユニット113の作動後も、バルブユニットは、所定の期間、前記一方の構成のままでいる。この実施形態では、物質供給ユニット113による所定の計量された服用量の物質の配送に必要な期間の半分である。
【0129】
所定の期間の経過後に、図4(c)に示されているように、バルブユニットは制御ユニット51によって再構成される。このとき、第1のバルブ135は排気位置へ移動させられて、第1のノーズピースユニット117のノーズピース121を排気する。また、第2のバルブ137は配送位置へ移動させられて、物質供給ユニット113を第2のノーズピースユニット119のノーズピース123と流体連通させる。
【0130】
このようにして、配送装置111は、患者の鼻孔のそれぞれを通した物質の連続配送に備える。この配送は、コンプライアンスに関して有利であり、特に経鼻エアウエイ1の目標とされる後部領域への物質の配送に関して有利である。
【0131】
もう1つの実施形態において構成された配送装置111では、バルブユニットは、各動作当たり3回以上再構成される。これは、配送装置111の各動作において、患者の鼻孔に交互に物質を繰り返し配送することに備えるためである。この実施形態では、配送鼻孔の繰り返し交替は、患者の呼息を患者の鼻孔に交互に向けることによって達成される。
【0132】
代替の実施形態では、物質供給ユニット113は、物質を含有した計量された服用量の推進剤、好ましくはハイドロフロロアルカン(HFA)推進剤等を、懸濁または溶液の一方として配送するためのエアゾールキャニスターであるか、作動されたときに計量された服用量の物質を配送する機械的配送ポンプ、特に液体配送ポンプや粉体配送ポンプであるか、作動されたときに計量された服用量の物質を乾燥粉体として配送する乾燥粉体配送ユニットである。これらの物質供給ユニット113は、1つの実施形態ではバイアス要素に負荷をかけることによって準備されるものであり、また解放機構を有している。この解放機構は、この実施形態では電気的に動作されるもので、トリガされたときにバイアス要素を解放して、物質供給ユニット113を作動し、計量された服用量の物質を配送する。そのような実施形態では、物質供給ユニット113は、バルブユニットの各交替に対して作動され得る。
【0133】
図5(a)〜(c)は、本発明の第4の実施形態に係る経鼻配送装置111を示している。
【0134】
この実施形態の配送装置111は、上述した第3の実施形態の配送装置111に非常に良く似ているので、不要な説明の重複を避けるために、同様の参照符号で同様の部分を示しながら、違いだけが詳細に説明される。
【0135】
この実施形態の配送装置111は、呼息作動型気体供給ユニット153を更に備える。この点は、上述した第3の実施形態と異なる。このユニットは、気体供給チャネル133に流体的に接続されて、そこへ気体流を配送する。このユニットはまた、制御ユニット151に動作可能に接続されている。マウスピース131が、気体供給チャネル133にではなく、気体供給ユニット153に流体連通されている点も異なる。これにより、気体流は、マウスピース131内への患者の呼息に応答して気体供給ユニット153によって配送される。
【0136】
気体供給ユニット153は、患者の呼息に応答してこのユニットを作動するためのトリガ機構155を有する。このトリガ機構155は、マウスピース131に動作可能に結合され、患者の呼息によって作動される。この実施形態では、トリガ機構155は、所定の作動圧力の検出に応答して気体供給ユニット153を作動するための圧力センサを備える。もう1つの実施形態では、トリガ機構155は、所定の流率の検出に応答して気体供給ユニット153を作動するためのフローメータを備える。
【0137】
この実施形態では、マウスピース131は、患者の呼息によって作用されるダイアフラムを有し、所定の作動圧力の発生時にトリガ機構155を作動する。この構成により、マウスピース131が使い捨ての場合、配送装置111のどの部分も、使い捨てのマウスピース131以外は、患者の呼息に曝されることがない。このため、配送装置111は、例えば集団免疫処置や集団予防接種において、相互汚染の危険性なく、多数の患者に対して物質を配送することに使用できる。
【0138】
配送装置111の動作は、上述した第3の実施形態に関するものと同様である。但し、気体は、患者の呼息によって発生される代わりに、気体供給ユニット153から与えられる。
【0139】
1つの実施形態では、気体供給ユニット153は、経鼻エアウエイ1内に所定の圧力を発生するような流率で気体流を配送するように構成されている。
【0140】
もう1つの実施形態では、気体供給ユニット153は、交互に変化する流れを有した気体流であって、経鼻エアウエイ1内に交互に変化する圧力を発生する気体流を配送するように構成され得る。経鼻エアウエイ1内の圧力を周期的に変化させることによって、副鼻腔6や、耳管8や、中耳9に対し物質の改良された配送が可能になる。1つの実施形態では、配送装置111は、患者の一方の鼻孔のみを通した物質の配送に備えるように構成され得る。
【0141】
異なる実施形態では、第1及び第2のフロー抵抗体139,141の少なくとも一方は、拡張可能な部材、例えば膨張可能なバルーンを備えるように構成され得る。また、気体供給ユニット153は、患者の鼻孔の一方または交互に双方から経鼻エアウエイ1を通して一定量の気体を交互に配送および回収するように構成され得る。この配送および回収は、物質を飛沫同伴する一定量の気体が経鼻エアウエイ1を通して互いに逆方向に繰り返し噴出されるようにする。物質を飛沫同伴する一定量の気体を経鼻エアウエイ1を通して交互の方向に繰り返し噴出することは、物質の改良された配送に備える。1つの実施形態では、配送装置111は、患者の一方の鼻孔のみを通した物質の配送に備えるように構成され得る。
【0142】
終わりにあたり、本発明は、その好ましい実施形態について説明されてきたが、添付の請求の範囲によって規定される発明の範囲から逸脱しない多くの異なる形態で修正できることが理解されるであろう。
【0143】
説明された実施形態では、マウスピース31,131は、患者の唇によって把持されるように構成されている。代替の実施形態では、マウスピース31,131は、患者の歯によって把持され、そして患者の唇によって封止されるように構成され得る。好ましい実施形態では、マウスピース31,131は、配送装置が繰り返し同じ位置で把持されることを可能にする形状または幾何学的外形の一方または双方を有するように特別に構成され得る。これにより、それぞれのノーズピース21,23,121,123が鼻腔2,3内の同じ位置に信頼性良く挿入されるようになる。
【0144】
好ましい実施形態では、配送装置11,111は、患者の一方の鼻孔を通して、鼻中隔4の後部縁を回って流れるような圧力で、そして患者の他方の鼻孔から出るように、物質を配送するものとして構成される。これにより、WO−A−00/51672に開示されているように、鼻腔2,3を通る双方向の配送を達成する。代替の実施形態では、配送装置11,111は、鼻腔2,3を通る双方向の配送を達成するには十分ではない低い圧力で、物質を配送するように構成され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の経鼻エアウエイに物質を配送するための経鼻配送装置であって、
使用時に患者が排気するマウスピースと、
患者による呼息に応じて患者の経鼻エアウエイへ物質を配送するための少なくとも1つの配送ユニットと、
患者による呼息に応じて患者の経鼻エアウエイ内の圧力を周期的に変化させるための気体供給ユニットと
を備えることを特徴とする経鼻配送装置。
【請求項2】
前記気体供給ユニットは、患者の経鼻エアウエイ内に交互に変化する圧力を与えるように構成されている請求項に記載の配送装置。
【請求項3】
前記気体供給ユニットは、患者による呼息に応じて作動可能なユニットであって、患者の呼息によって作動されるように、前記マウスピースに対して流体的に接続されている請求項またはに記載の配送装置。
【請求項4】
患者の経鼻エアウエイに物質を配送するための経鼻配送装置であって、
使用時に患者が排気するマウスピースと、
患者の経鼻エアウエイへ物質を配送するための少なくとも1つの配送ユニットと、
患者の経鼻エアウエイを通して所定体積の気体を交互に配送および回収して、飛沫同伴された物質が患者の経鼻エアウエイを通して交互の方向に流されるようにするための気体供給ユニットと
を備えることを特徴とする経鼻配送装置。
【請求項5】
経鼻配送装置に取り付けるためのインターフェース部材であって、
患者の鼻孔に適合するための少なくとも1つのノーズピースと、
使用時に患者が排気するマウスピースとを、
一体的な要素として備え、
前記マウスピースは、前記マウスピース内への呼息に応じて偏向される柔軟部材を含むことを特徴とするインターフェース部材。
【請求項6】
患者のそれぞれの鼻孔に適合するための第1及び第2のノーズピースを備える請求項に記載のインターフェース部材。
【請求項7】
使い捨て部材である請求項またはに記載のインターフェース部材。
【請求項8】
前記マウスピースは、使用時に患者が排気する管状部を備える請求項のいずれかに記載のインターフェース部材。
【請求項9】
前記マウスピースは、使用時に患者が排気する空洞を備え、前記空洞の一部は前記柔軟部材によって規定される請求項のいずれかに記載のインターフェース部材。
【請求項10】
前記柔軟部材は弾性部材を備える請求項のいずれかに記載のインターフェース部材。


【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【公開番号】特開2010−12291(P2010−12291A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209845(P2009−209845)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【分割の表示】特願2003−579923(P2003−579923)の分割
【原出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願人】(302014273)オプティノーズ アズ (16)
【氏名又は名称原語表記】OPTINOSE AS
【住所又は居所原語表記】Lokkaskogen 18C, N−0773 Oslo, Norway
【Fターム(参考)】