説明

結合分離機構およびこれを備える宇宙航行体

【課題】 簡素な構成で十分な締結力を実現できるとともに、当該締結力に比べて小さな力で結合状態を保持することができ、さらに一度分離した後であっても容易に再結合することが可能な結合分離機構を提供する。
【解決手段】 結合分離機構10Aにおいては、雄型結合体30Aと雌型結合体20Aとの結合時には、雄型結合体30Aが挿入空間S0に挿入され、レバー部材22の他端が挿入空間S0に近接している位置にあり、係止部材23の係止面23aが雄型結合体30Aの被係止面31aに対して当接している状態が維持される。そして、雄型結合体30Aと雌型結合体20Aとの分離時には、レバー部材22の他端が挿入空間S0から離れる方向に移動するので、係止面23aが引抜き方向D2に向かって移動する。これにより、係止面23aと被係止面31aとの当接が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個の結合体同士を結合して分離可能に保持することができる結合分離機構と、当該結合分離機構を備える宇宙航行体とに関するものであり、特に、結合体同士を結合させるための力(締結力)に対して、結合状態を保持する力(結合保持力)をより小さなものにできる結合分離機構と、当該結合分離機構を備える宇宙航行体とに関する。
【背景技術】
【0002】
2個の結合体同士を結合して分離可能に保持する構造(結合分離構造)としては、日常生活分野から先端技術分野に至るまで、さまざまな用途に用いられ、その用途に適した構造のものが種々提案されている。
【0003】
先端技術分野の一例として宇宙航行体の分野を挙げると、連結している2体の宇宙航行体を分離するために結合分離構造が用いられている。例えば、特許文献1には、宇宙航行体としての人工衛星およびロケットを分離可能に連結する分離機構が開示され、当該分離機構には結合分離構造が含まれている。
【0004】
前記分離機構は、ロケット本体の連結端と人工衛星の連結端とのそれぞれに設けられる鍔部と、これら鍔部同士が連結した状態で当該鍔部の外側から嵌合する嵌合部材と、当該嵌合部材を含む連結部分の外周に巻き回されるバンド部材(例えばマルマンクランプバンド)とを備えている。バンド部材は、嵌合部材の外周を締め付けた状態で、ボルト等からなる結合部材によって両端部が結合されており、当該結合部材には切断装置が取り付けられている。人工衛星の分離時には、切断装置によって結合部材が切断されるので、バンド部材の端部同士の結合が解除され、人工衛星がロケット本体から分離することになる。これら前記結合部材および切断装置が前述した結合分離構造に相当する。
【0005】
前記構成の結合分離構造としては、一般に、爆破ボルトが用いられる。典型的な爆破ボルトは、ボルトの軸芯に火薬が設けられた構成であり、人工衛星を分離するときには、火薬を爆発させることでボルトが切断し、これによってバンド部材の結合が解除される。
【0006】
ここで、近年、人工衛星としては大型のものが実用化されており、また、人工衛星を連結するロケットにおいては飛しょう速度が高速化する傾向にある。このように宇宙航行体が大型化し、また、その飛しょう速度が高速化すると、バンド部材により宇宙航行体同士の連結部を十分に締め付ける必要が生じる。それゆえ、バンド部材を結合するための結合分離構造にも、大きな締結力が要求されることになる。
【0007】
前記爆破ボルトで結合分離構造が構成されれば、1本の爆破ボルトで十分な締結力を実現できない場合には、複数本の爆破ボルトを用いればよい。しかしながら、爆破ボルトによるバンド部材の結合は、当該バンド部材を締め付けた状態で結合することになるので、複数本の爆破ボルトを用いることで、結合の作業性が低下する。また、宇宙航行体同士を適切に分離するためには、複数本の爆破ボルトを全て確実に切断しなければならないので、火薬の爆発力をより高くする必要が生じるとともに、火薬の発火の信頼性を高める必要も生じる。したがって、爆破ボルトが非常に高価なものになり得るだけでなく、爆破ボルトの切断時の爆発力によって大きな衝撃が生じて、宇宙航行体に影響を及ぼす可能性もある。
【0008】
そこで、従来から、爆破ボルト等の火工品を用いない結合分離構造が提案されている。例えば、特許文献2には、バンド部材の端部に設けられ、内面と外面とで互いに噛合う台形歯形部と、当該台形歯形部を押接するカム体と、カム体を動作させるアクチュエータとを備える構成の結合分離装置が提案されている。この構成では、アクチュエータを駆動してカム体を作動させることでバンド部材が開放されるので、バンドに対する押接状態を解除すればバンドは拡開し、その結果、他端部の台形歯形同士は互いに分離する。
【0009】
また、特許文献3には、結合分離構造の一例として、ピンを備える開放機構(release mechanism)とバルブニードルとを用いたバンド開放機構(band opening mechanism)が開示されている。バルブニードルは、粘性物質(鉛)を内部に充填した溝状チャンバ(annular chamber)と空のチャンバとをつなぐダクトを閉じている。溝状チャンバは、互いに嵌合するハウジングとピストンとの間に形成されており、空のチャンバはピストン上のキャップ内に形成されている。前記開放機構を動作させれば、ピンがバルブニードルの位置をずらすので、粘性物質がダクトを通じて溝状チャンバから空のチャンバへ移動する。これに伴って、ピストンがハウジングから連続的に移動するので、予め設定された所定の時間でバンド部材が開放される。
【0010】
これら特許文献2または3によれば、これら特許文献に開示の結合分離構造を採用することで、バンド部材の結合を解除するために大きな力を必要とせず、また、バンド部材を結合した状態で大きな締結力を実現することが可能であることが開示または示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3922718号公報
【特許文献2】特開2006−290065号公報
【特許文献3】国際公開第01/02248号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2または3に開示の結合分離構造は、爆破ボルト等の火工品を用いないものの、非常に複雑な構成となっていることに加え、バンド部材を一度分離した後に再結合できないか、再結合の作業が煩雑になってしまう。
【0013】
例えば、引用文献2に開示の結合分離構造は、複数のバンド部材を結合させるために、内面と外面とで互いに噛合う台形歯形部を用いているため、カム体を動作させることで台形歯形部の噛合いを容易に解除してバンド部材を開放することができる。その反面、複数のバンド部材を再結合させるためには、大きな力で締め付けた上で台形歯形部同士を噛み合わせなければならないので、再結合の作業は非常に煩雑となる。
【0014】
また、特許文献3に開示の結合分離構造は、時限的なプロセス(timed process)でバンド部材の張力を解放することに重点が置かれているので、バンド部材を開放するために、ダクトを介してチャンバ間で粘性物質(鉛)を移動させるという独特な機構を用いている。もし、バンド部材を再結合させるとすれば、粘性物質を元のチャンバに戻すという作業が必要になるので、実質的に1回しか用いることができないものであると判断される。なお、特許文献3には、他の構成も開示されているが、ほとんどが1回しか用いることができないものとなっている。
【0015】
一度開放したバンド部材を容易に再結合させることができれば、結合分離構造の品質管理、再現性、機能確認等のために結合分離の試験を実施することができる。それゆえ、結合分離構造の信頼性を向上させることができ、さらには当該結合分離構造を備える宇宙航行体用の分離機構の信頼性を向上させることも可能となる。
【0016】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、簡素な構成で十分な締結力を実現できるとともに、当該締結力に比べて小さな力で結合状態を保持することができ、さらに一度分離した後であっても容易に再結合することが可能な結合分離機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る結合分離機構は、前記の課題を解決するために、2つの被結合部分を互いに結合および分離するために用いられる結合分離機構であって、棒状の雄型結合体と、当該雄型結合体の挿入および引抜きがなされる挿入空間を有する雌型結合体と、を備え、前記雄型結合体は、その長手方向に交差し、引抜き方向に面する被係止面を有しており、前記雌型結合体は、前記雄型結合体が前記挿入空間に挿入されている状態を支持する形状を有する支持部材と、前記挿入空間に対面する位置に設けられ、前記支持部材に対してレバー支持連結部により一端が連結され、当該レバー支持連結部により他端が前記挿入空間とは反対側の方向に移動可能に構成されているレバー部材と、前記レバー部材の両端の間となる位置に、レバー回動連結部により一端が回動可能に連結されるとともに、前記雄型結合体の前記被係止面に対して引抜き方向から当接する係止面を有する係止部材と、前記係止部材の他端に対して、前記レバー回動連結部よりも挿入方向の側であり、かつ、前記係止面に近接して位置するリンク回動連結部により、一端が回動可能に連結されるとともに、前記支持部材に対してリンク支持連結部により、他端が回動可能に連結されているリンク部材と、を備え、前記雄型結合体および前記雌型結合体が結合しているときには、前記雄型結合体が挿入空間に挿入され、前記レバー部材の他端が前記挿入空間に近接している位置にあり、前記係止部材の前記係止面が前記雄型結合体の前記被係止面に対して当接している状態が維持され、前記雄型結合体および前記雌型結合体が分離するときには、前記レバー部材の他端が前記挿入空間から離れる方向に移動することにより、前記係止部材の前記係止面が引抜き方向に向かって移動し、これにより、当該係止面と前記雄型結合体の前記被係止面との当接が解除される構成である。
【0018】
前記構成においては、前記雄型結合体および前記雌型結合体が結合しているときには、前記レバー支持連結部および前記リンク回動連結部は、この順で、前記レバー部材から前記挿入空間に向かう方向に配置され、前記レバー回動連結部は、前記リンク回動連結部に対して引抜き方向に配置され、前記リンク支持連結部は、前記リンク回動連結部との間に前記挿入空間を介在させる位置に配置されている構成であってよい。
【0019】
前記構成においては、前記レバー部材の他端の移動を妨げるように、当該レバー部材を前記支持部材に対して解除可能に固定するレバー固定部材をさらに備えている構成であってよい。
【0020】
前記構成においては、前記支持部材は、前記雌型結合体の前部を構成し、前記雄型結合体を前記挿入空間に挿入し引き抜くための開口を有する支持前部と、前記レバー部材に対向する部位を構成する支持側部とを有し、前記レバー固定部材が、前記支持側部の挿入方向側の端部と、前記レバー部材の他端とを接続するピン部材またはひも状部材である構成であってよい。
【0021】
前記構成においては、前記支持側部の前記端部、または、前記レバー部材の他端には、前記ピン部材または前記ひも状部材の一端を挿入するための挿入孔が設けられ、当該挿入孔に隣接する位置に設けられ、当該挿入孔の内部を加熱する挿入孔加熱部をさらに備え、前記雄型結合体および雌型結合体を結合しているときには、前記ピン部材またはひも状部材の一端を前記挿入孔に挿入した上で、熱可塑性材料によって当該挿入孔を塞ぐことによって、前記支持側部の前記端部と前記レバー部材の他端とを接続する構成であってよい。
【0022】
また、本発明に係る他の結合分離機構は、前記の課題を解決するために、2つの被結合部分を互いに結合および分離するために用いられる結合分離機構であって、棒状の雄型結合体と、当該雄型結合体の挿入および引抜きがなされる挿入空間を有する雌型結合体と、を備え、当該雌型結合体は、前記雄型結合体が前記挿入空間に挿入されている状態を支持するように、当該挿入空間に平行な支持側部を有する支持部材と、前記支持側部に対向して前記挿入空間を介在する位置に設けられ、前記支持部材に対して一端が連結され、当該レバー支持連結部により他端が前記挿入空間とは反対側の方向に移動可能に構成されているレバー部材と、前記レバー部材の他端と前記支持側部とをその両端で接続することにより、前記レバー部材の他端が外側へ移動することを妨げるように固定するレバー固定部材と、を備え、さらに、前記支持側部、または、前記レバー部材の他端には、前記レバー固定部材の一端を挿入するための挿入孔が設けられ、当該挿入孔に隣接する位置に設けられ、当該挿入孔の内部を加熱する挿入孔加熱部をさらに備え、前記雄型結合体および雌型結合体を結合しているときには、前記レバー固定部材の一端を前記挿入孔に挿入した上で、熱可塑性材料によって当該挿入孔を塞ぐことによって、前記支持側部の前記端部と前記レバー部材の他端とを接続する構成である。
【0023】
前記構成においては、前記レバー固定部材は、その本体が棒状またはひも状であり、前記雄型結合体および雌型結合体を結合しているときには、前記レバー固定部材の他端を、前記支持側部、または、前記レバー部材の他端のうち、前記挿入孔が設けられていない方に機械的に固定している構成であってよい。
【0024】
前記いずれの結合分離機構においても、前記雄型結合体および前記雌型結合体は、帯状のバンド部材を閉環または開環させるために結合または分離するように構成されている構成であってよい。
【0025】
前記構成においては、前記バンド部材が、第一の宇宙航行体に第二の宇宙航行体を固定するマルマンクランプバンドである例を挙げることができ、前記第一の宇宙航行体はロケット本体であり、前記第二の宇宙航行体は人工衛星である例を挙げることができる。
【0026】
それゆえ、本発明には、前記構成の結合分離機構に加えて、前記構成の結合分離機構を備える宇宙航行体も含まれる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、簡素な構成で十分な締結力を実現できるとともに、当該締結力に比べて小さな力で結合状態を保持することができ、さらに一度分離した後であっても容易に再結合することが可能な結合分離機構を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態1に係る結合分離機構の構成を示す模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す結合分離機構における一点鎖線の領域Iの拡大図である。る。
【図2】(a)は、図1に示す結合分離機構を構成する結合体が分離したときの構成を示す模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す結合分離機構における一点鎖線の領域IIの拡大図である。
【図3】図1(a)に示す結合分離機構の結合状態において、各連結部に作用する力を説明する模式図である。
【図4】(a)〜(c)は、図1(a)に示す結合分離機構の適用例を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る結合分離機構の構成を示す模式的な部分断面図である。
【図6】(a),(b)は、図5に示す結合分離機構が備える締結部材の固定解除動作を示す模式図である。
【図7】(a)〜(c)は、図5に示す結合分離機構が備える締結部材の他の例を示す模式図である。
【図8】(a)は、本発明の実施の形態3に係る結合分離機構を備えるマルマンクランプバンドの構成を示す概略平面図であり、(b)は、(a)に示すマルマンクランプバンドがロケット本体および人工衛星の連結を支持する状態を模式的に示す部分側面図である。
【図9】図8(a),(b)に示すマルマンクランプバンドが備える結合分離機構の構成を示す概略平面図である。
【図10】(a)は、図9に示す結合分離機構における単一の雌型結合体および雌型結合体の構成の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す結合分離機構の内部構成の一例を示す概略透視図である。
【図11】(a)は、図10(a)に示す結合分離機構のレバー部材からの側面図であり、(b)は、図10(a)に示す結合分離機構の内部構成の一例を、拡大図も含めて示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0030】
(実施の形態1)
[結合分離機構の構成]
まず、本発明の実施の形態1に係る結合分離機構の具体的な構成の一例について、図1(a),(b)および図2(a)を参照して説明する。図1(a)に示すように、本実施の形態に係る結合分離機構10Aは、雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aから構成されており、雌型結合体20Aは、支持部材21、レバー部材22、係止部材23、リンク部材24、および固定用ピン部材251から構成され、雄型結合体30Aは、結合体本体31および本体支持部32から構成されている。
【0031】
雌型結合体20Aは、雄型結合体30Aの挿入および引抜きがなされる空間(挿入空間)を有するものであり、雄型結合体30Aは、雌型結合体20Aの前記挿入空間に挿入され、また、雌型結合体20Aの挿入空間から引き抜かれるように構成されている。図1(a)に示すように、雄型結合体30Aおよび雌型結合体20Aは、雄型結合体30Aが挿入された状態で互いに結合しており、図2(a)に示すように、雌型結合体20Aから雄型結合体30Aが引き抜かれることで互いに分離する。また、図1(a)および図2(a)においては、図中双方向のブロック矢印のD1側(図中上側)が挿入方向であり、D2側(図中下側)が引抜き方向である。
【0032】
本実施の形態では、支持部材21およびレバー部材22の間に挿入空間S0(図中破線矢印)が形成されている。支持部材21は、雌型結合体20Aの前部を構成し、雄型結合体30Aを挿入空間S0に挿入し引き抜くための挿入開口21cを有する支持前部21aと、レバー部材22に対向する部位を構成する支持側部21bとをから構成されている。つまり、図1(a)に示す構成では、図中下側が雌型結合体20Aの前側となり、図中上側が雌型結合体20Aの後側となる。
【0033】
雄型結合体30Aは、本実施の形態では、雌型結合体20Aの挿入空間S0に挿入される結合体本体31と、当該結合体本体31を支持する本体支持部32から構成されている。本体支持部32の具体的な構成は特に限定されず、被結合体の一部(被結合部分)が固定され得る形状を有していればよく、結合分離機構10Aの使用条件(被結合体の種類、被結合体の一部の構成、結合状態または分離の環境等)に応じて、さまざまな形状のものを用いることができ、状況によっては無くてもよい。つまり、被結合体の一部に結合体本体31が直接固定される構成であってもよい。なお、図1(a)および図2(a)に示す例では、説明の便宜上、本体支持部32を結合体本体31の長手方向に直交する方向に広がる略板状または略柱状の部材として図示している。
【0034】
結合体本体31は、図1(a)および図2(a)に示すように略棒状であって、図1(b)および図2(b)に示すように、その長手方向に交差し、引抜き方向D2に面する被係止面31aを有している。結合体本体31(雄型結合体30A)を雌型結合体20Aに挿入して結合した状態では、被係止面31aは、図1(b)に示すように、雌型結合体20Aの係止部材23に当接する。この点については後述する。なお、図1(b)は、図1(a)の領域Iの拡大図である。
【0035】
結合体本体31の具体的な形状は、棒状であって被係止面31aを有していれば特に限定されず、円柱状であってもよいし角柱状であってもよいし、細長い板状であってもよいし、被係止面31a以外の凹凸または段差を有する形状であってもよい。また、被係止面31aは、本実施の形態では、結合体本体31の先端近傍にて長手方向に直交する方向の平面として構成されているが、この構成に限定されず、釣り針の「かえし」のように、先端近傍で長手方向に傾斜するように構成されてもよいし、平面でなく曲面として構成されてもよいし、被係止面31aそのものが段差または凹凸等を有してもよい。また、結合体本体31には、複数の被係止面31aが設けられてもよい。
【0036】
さらに、後述する実施の形態3または4に例示するように、棒状の結合体本体31の先端に、当該結合体本体31の直径よりも大きい先端部を設け、この先端部と結合体本体31との段差部分を被係止面31aとする構成であってもよい。つまり、結合体本体31は、「キノコの笠」のような先端部を有してもよい。あるいは、先端近傍の外周に複数の突起を配列することによって実質的に面と見なせる係止部を形成し、これを被係止面31aとしてもよい。
【0037】
雌型結合体20Aは、雄型結合体30A(結合体本体31)の挿入および引抜きがなされる挿入空間S0を有している。そして、支持部材21により本体が構成され、当該支持部材21にレバー部材22が設けられ、支持部材21およびレバー部材22は、係止部材23およびリンク部材24と固定用ピン部材251とで連結または接続されている。
【0038】
支持部材21は、雄型結合体30A(結合体本体31)が挿入空間S0に挿入されている状態を支持する形状を有しており、本実施の形態では、支持前部21aは雄型結合体30Aの挿入方向D1(または引抜き方向D2)に対して直交する方向に広がる形状を有しており、略中央部に挿入開口21c(図中破線で示す)が形成されている。支持側部21bは、支持前部21aの一方の側方後部(図中向かって左側の後部)において、当該支持前部21aに対して垂直に立設している。したがって、支持側部21bは、雄型結合体30Aの挿入方向D1(または引抜き方向D2)に沿った方向に延びる形状を有していることになる。
【0039】
支持部材21の具体的な形状は特に限定されず、挿入された雄型結合体30Aを支持できるとともに、後述するようにレバー部材22を回動可能に固定できる形状となっていればよい。前記のとおり、支持部材21は、雌型結合体20Aの実質的な本体に相当するので、結合分離機構10Aの使用条件に応じて、単一の部材、枠体状、筐体状等のさまざまな形状で構成することができる。なお、図1(a)に示す結合状態では、雌型結合体20Aの支持前部21aと雄型結合体30Aの本体支持部32とが重なるように接しているが、前述したとおり図1(a)では、本体支持部32は模式的に図示しているので、支持前部21aと本体支持部32とは結合状態で必ず重なるように構成されているわけではない。
【0040】
レバー部材22は、支持前部21aの他方の側方後部(図中向かって右側の後部)に、レバー支持連結部261を介して取り付けられている。レバー部材22の一端が支持前部21aの側方後部に取り付けられているとすれば、他端は、支持側部21bの後端部(挿入方向D1側の端部)に固定用ピン部材251により接続されている。支持側部21bとレバー部材22との間に挿入空間S0が形成されているので、レバー部材22は挿入空間S0に対面する位置に設けられていることになる。
【0041】
レバー部材22の一端(前端)を支持前部21aに連結するレバー支持連結部261は、回動軸となっている。それゆえ、レバー部材22は、支持部材21に対して他端(後端)が移動可能に構成されている。レバー部材22の他端の移動方向は、少なくとも挿入空間S0とは反対側となる方向、図1(a)ではブロック矢印D3の方向(図中向かって右下方)であればよい。言い換えれば、レバー部材22は、図1(a)に示す結合状態では閉じているので、レバー部材22は少なくとも外側の開く方向に移動可能に構成されていればよい。もちろん、挿入空間S0に向かって閉じる方向(図中向かって左方、内側の方向)に移動可能となっていてもよいが、後述するように、レバー部材22が開くことによって、雌型結合体20Aに結合されている状態の雄型結合体30Aが引抜き可能な状態となるので、少なくともレバー部材22は開くように構成されている必要がある。
【0042】
レバー部材22の具体的な構成は特に限定されず、略棒状、略柱状、略板状等のように「レバー」として公知の構成を採用することができる。レバー部材22は、固定用ピン部材251による固定が解除されたときに、他端が開く方向に移動することで、雄型結合体30Aの結合状態を解除するので、閉じた状態(結合状態)と開いた状態(結合の解除状態)とで他端の位置が明確に異なるような長さを有していればよい。なお、図1(a)では、レバー部材22も模式的に示しており、このような柱状または板状の形状に限定されるものではない。
【0043】
レバー部材22は、他端が固定用ピン部材251で支持側部21bの後端に接続されているが、他端と先端との間も、係止部材23およびリンク部材24で連結されている。係止部材23は、一端が、レバー回動連結部262を介してレバー部材22の両端の間となる位置に回動可能に連結されており、他端が、リンク回動連結部263を介してリンク部材24の一端に回動可能に連結されている。また、リンク部材24の他端は、リンク支持連結部264を介して支持側部21bに回動可能に連結されている。
【0044】
係止部材23は、図1(b)に示すように、結合体本体31(雄型結合体30A)の被係止面31aに対して引抜き方向D2(図中下側)から当接する係止面23aを有している。図1(a)に示す構成では、係止部材23は、レバー回動連結部262とリンク回動連結部263との間に、挿入空間S0側(図中向かって左側)に突出する部位を有しており、この部位の後方(図中上側)でリンク回動連結部263に隣接する位置に、係止面23aが設けられている。
【0045】
リンク部材24は、係止部材23を支持部材21(支持側部21b)に連結するための部材であり、図1(a)に示す例では、リンク支持連結部264とリンク回動連結部263とをつなぐ長さを有する部材となっている。なお、図1(a)および図2(a)に示す例では、リンク部材24の他端(すなわちリンク支持連結部264)の位置は、支持側部21bにおける前端と後端との略中間位置となっているが、本発明はこれに限定されず、リンク部材24の他端から見て一端が引抜き方向D2に向かって移動可能な位置であれば、支持部材21のどのような箇所であっても連結することができる。
【0046】
係止部材23の他端およびリンク部材24の一端は、リンク回動連結部263を介して連結されているが、前記のとおり、リンク回動連結部263はレバー部材22の移動に伴って引抜き方向D2に向かって移動可能に構成されている。したがって、係止部材23の両端を固定するレバー回動連結部262およびリンク回動連結部263の位置関係は、レバー回動連結部262(一端側)から見て挿入方向D1の側にリンク回動連結部263(他端側)が位置している必要がある。また、係止部材23の係止面23aは、リンク回動連結部263の近傍の位置に設けられている必要がある。
【0047】
リンク回動連結部263は、挿入された雄型結合体30A(結合体本体31)の被係止面31aと係止部材23の係止面23aとを当接させ、また当接を解除させるように、係止部材23を回動させる軸心となる。また、結合体本体31の被係止面31aは、前述のとおり引抜き方向D2に面している。そして、係止部材23はレバー部材22に連結しているので、レバー部材22の動きに合わせて雄型結合体30Aから離れるように(挿入空間S0とは反対側の方向に)移動する。それゆえ、被係止面31aに当接する係止面23aを当接から解除させるためには、係止面23aは常に引抜き方向D2に向かって移動しなければならず、それゆえ、リンク回動連結部263は、レバー回動連結部262よりも挿入方向D1の側に位置することになる。
【0048】
雌型結合体20Aの前後方向を基準とすれば、リンク回動連結部263は後方、レバー回動連結部262は前方に位置しており、係止部材23は、レバー部材22の他端が開く方向(矢印D3)に移動することで、基本的に前側に移動する。結合体本体31の被係止面31aは前側に面しているので、係止部材23が前側に移動すれば、係止面23aおよび被係止面31aの当接が解除される。仮に、リンク回動連結部263がレバー回動連結部262よりも引抜き方向D2の側(前側)に位置していれば、レバー部材22が開くことにより係止部材23が挿入方向D1(後側)に移動するため、被係止面31aおよび係止面23aの当接は解除されない。
【0049】
このように、レバー回動連結部262とリンク回動連結部263との位置関係が前述のようになっていれば、レバー部材22を開くことで、雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aの結合が解除され、逆に、レバー部材22を開いた状態から閉じることで、雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aが結合される。さらに、レバー部材22の他端を、固定用ピン部材251で支持部材21に固定することで、雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aの結合状態が保持される。
【0050】
係止部材23の具体的な構成は、図1(a)に示す構成に特定されず、係止面23aを有し、レバー回動連結部262およびリンク回動連結部263により回動可能となっていれば、どのような構成でも採用することができる。また、リンク部材24の具体的な構成も、図1(a)に示す構成に特定されず、係止部材23と支持部材21とを連結できるような構成であれば、どのような構成でも採用することができる。
【0051】
また、レバー部材22の他端は、固定用ピン部材251により支持部材21の支持側部21bの後端に固定されているが、これに限定されず他の構成を用いることができる。つまり、結合分離機構10Aは、レバー部材22の他端の移動を妨げるように、レバー部材22を支持部材21に対して解除可能に固定するレバー固定部材を備えていればよく、当該レバー固定部材は固定用ピン部材251に限定されない。レバー固定部材としては、ひも状または糸状の部材を用いてもよいし、機械的機構を用いてもよいし、化学反応等を利用して固定状態を解除する部材または機構等が用いられてもよい。
【0052】
また、雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aを構成する前記各部材は、結合分離機構10Aの使用条件に応じて、公知のさまざまな材料を用いて形成することができる。また、それぞれの部材に要求される物性または条件等に応じて、異なる材料を用いることができることはいうまでもない。さらに、雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aは、前述した各部材以外の構成を含んでもよいし、一部の部材を含んでいなくてもよい。
【0053】
なお、レバー支持連結部261、レバー回動連結部262、リンク回動連結部263およびリンク支持連結部264は、それぞれ支持部材21、レバー部材22、係止部材23およびリンク部材24を回動可能に連結するものである。さらに、これら連結部は、レバー部材22、係止部材23およびリンク部材24の移動の支点となる部位でもある。それゆえ、レバー支持連結部261、レバー回動連結部262、リンク回動連結部263およびリンク支持連結部264は、それぞれ、第一支点部、第二支点部、第三支点部および第四支点部と称することもできる。
【0054】
[結合分離機構の動作]
次に、本実施の形態に係る結合分離機構10Aにおける雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aの結合と結合解除とを、図1(a),(b)および図2(a)に加えて、図2(b)および図3を参照して説明する。
【0055】
図1(a)に示すように、雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aが結合状態にあれば、雄型結合体30A(結合体本体31)が雌型結合体20Aの挿入空間S0に挿入され、レバー部材22の他端が挿入空間S0に近接している位置にある。このとき、図1(b)に示すように、係止部材23の係止面23aは雄型結合体30A(結合体本体31)の被係止面31aに対して当接している状態が維持される。
【0056】
雌型結合体20Aにおいては、前述のとおり、係止部材23の一端がレバー回動連結部262によりレバー部材22の両端の間となる位置に連結され、係止部材23の他端はリンク回動連結部263によりリンク部材24に連結されている。そして、図1(a),(b)に示す結合状態では、リンク回動連結部263は、レバー回動連結部262よりも挿入方向D1の側であって、レバー回動連結部262よりも係止面23aに近接した位置にあるので、レバー部材22が挿入空間S0とは反対側の方向に移動するために必要な力を相対的に小さくすることができる。
【0057】
すなわち、雄型結合体30Aと雌型結合体20Aとが結合している状態では、図3に示すように、雌型結合体20Aに対して雄型結合体30Aにより引抜き方向D2に向かう結合力F1(図中黒矢印)が加えられる。このとき、雄型結合体30A(結合体本体31)の被係止面31aは、係止部材23の係止面23aに当接しているので、結合力F1は、直接的には係止部材23に加えられる。それゆえ、係止部材23においては、係止面23aに近いリンク回動連結部263を中心としてレバー部材22の側に向かうトルクであるレバー側トルクF2(図中黒矢印)が生じるとともに、当該リンク回動連結部263を引抜き方向D2に押し出す力である引抜き側押力F3(図中黒矢印)が生じる。
【0058】
さらに、リンク回動連結部263よりも引抜き方向D2の側に位置するレバー回動連結部262においては、レバー側トルクF2によってレバー回動連結部262をレバー側に押し出す力であるレバー側押力F4(図中黒矢印)が生じるとともに、引抜き側押力F3も生じる。このうち、引抜き側押力F3は、レバー支持連結部261において、レバー部材22の他端を開く方向に力である外向力F5(図中黒矢印)を生じさせるが、レバー側押力F4は、レバー部材22を外側に揺動させない方向の力すなわち内側(挿入空間S0の側)に向かう力である内向力F6(図中黒矢印)を生じさせる(図中向かって右上の黒矢印も参照)。
【0059】
つまり、レバー支持連結部261においては、外向力F5および内向力F6の双方が生じるため、各連結部(支点)の位置関係によっては、外向力F5を内向力F6よりも若干大きい状態に設定したり、外向力F5を内向力F6よりも若干小さい状態に設定したりすることが可能となる。それゆえ、レバー部材22の外向力F5を十分に小さく設定することができ、あるいは、レバー部材22を小さな力で外側(開く方向)に移動させ得る状態に設定することができる。
【0060】
レバー部材22の外向力F5を十分に小さく設定すれば、固定用ピン部材251でレバー部材22を支持部材21に容易に固定することができる。そして、固定用ピン部材251によりレバー部材22が外側に移動しなければ、雄型結合体30A(結合体本体31)の被係止面31aと係止部材23の係止面23aとは当接した状態で維持されるので、雄型結合体30Aと雌型結合体20Aとの結合が保持される。
【0061】
次に、固定用ピン部材251を図1(a)に示す破線の位置で切断することで、レバー部材22を支持部材21(支持側部21b)に固定している状態を解除する。これにより、図2(a)に示すように、レバー部材22の他端が挿入空間S0から離れる方向(外側、開く方向)に移動する。この移動に伴い、係止部材23の係止面23aが引抜き方向D2に向かって移動するので、図2(b)に示すように、係止部材23の係止面23aと雄型結合体30A(結合体本体31)の被係止面31aとの当接が解除される。なお、図2(b)は、図2(a)の領域IIの拡大図である。
【0062】
なお、レバー支持連結部261、レバー回動連結部262、リンク回動連結部263およびリンク支持連結部264の位置関係は、前述したように、少なくともレバー回動連結部262およびリンク回動連結部263の位置関係が前述した関係にあればよいが、一つの好ましい位置関係として、図1(a)および図2(a)に示す位置関係を挙げることができる。
【0063】
図1(a)に示す結合状態では、レバー支持連結部261およびリンク回動連結部263は、この順で、レバー部材22から挿入空間S0に向かう方向に配置され、レバー回動連結部262は、リンク回動連結部263に対して引抜き方向D2に配置され、リンク支持連結部264は、リンク回動連結部263との間に挿入空間S0を介在させる位置に配置されている。
【0064】
前記各連結部が前記位置関係にあれば、雌型結合体20Aを引抜き方向D2の側から見たときに、少なくともリンク回動連結部263が(配置によってはリンク支持連結部264も)、最も挿入方向D1の側に位置することになる。この状態では、レバー支持連結部261、レバー回動連結部262およびリンク回動連結部263が、引抜き方向D2の側から見てこの順で配置されるため、これら各連結部に作用するレバー側トルクF2、引抜き側押力F3およびレバー側押力F4の大きさを好適な範囲内とすることができる。
【0065】
また、前記位置関係であれば、レバー部材22の他端を開放するか、小さな力で外側に移動させるだけで、リンク支持連結部264とレバー回動連結部262との間が開くように係止部材23が回動し、この回動に伴ってリンク回動連結部263の位置は、徐々に引抜き方向D2に向かって移動し、それゆえ、リンク回動連結部263に近接する係止面23aも引抜き方向D2に向かって移動する。この状態では、係止部材23の係止面23aと雄型結合体30A(結合体本体31)の被係止面31aとの当接が解除されるので、雄型結合体30Aと雌型結合体20Aとの結合状態を、レバー部材22を開放するだけ、または、小さな力で移動させるだけで解除することができる。
【0066】
[結合分離機構の適用例]
本実施の形態に係る結合分離機構10Aは、2つの被結合部分を互いに結合および分離する用途に広く好適に用いられる。結合分離機構10Aの適用例について、図4を参照して説明する。例えば、図4(a)に示すように、被結合体が帯状のバンド部材11であれば、これらバンド部材11の一端11aに雄型結合体30Aを取り付け、他端11bに雌型結合体20Aを取り付け、これらを結合分離機構10Aにより結合することで、環状のバンド部材11にすることができる。
【0067】
また、図4(a)に示す例では、単一のバンド部材11の両端11a,11bを結合分離機構10Aで結合しているが、2つのバンド部材11,11のそれぞれの一端同士を結合する場合に適用できることはいうまでもない。単一のバンド部材11を環状に結合する場合には、結合分離機構10Aは、1つの被結合体の2つの被結合部分を結合する用途に用いられることになり、2つのバンド部材11の一端同士を結合する場合には、2つの被結合体の2つの被結合部分を結合する用途に用いられることになる。
【0068】
また、図4(b)に示すように、中間部材12の両端にそれぞれ結合分離機構10Aを取り付けることで、中間部材12を介してバンド部材11を連結することができる。この場合においても、結合分離機構10Aは、単一のバンド部材11を、中間部材12を介して環状に結合するために用いられてよいし、2つのバンド部材11,11同士を互いに結合するために用いられてもよい。
【0069】
さらに、図4(c)に示すように、一対の板状部材131が回動軸部132により開閉可能に構成される開閉装置13において、板状部材131同士を、回動軸部132とは反対側となる位置で結合分離機構10Aにより結合させることもできる。
【0070】
特に本実施の形態によれば、雄型結合体30Aと雌型結合体20Aとの結合を保持するには、レバー部材22の外向力F5(図3参照)を十分に小さくすれば、小さな力でレバー部材22の移動を抑制するだけで足りる。それゆえ、バンド部材11または板状部材131を連結した状態を小さな力で保持することが可能となる。また、小さな力でレバー部材22を移動させることができるので、連結を保持したいときには、固定用ピン部材251(図1(a)および図2(a)参照)によりレバー部材22の移動の抑制しておき、連結を解除したいときには、固定用ピン部材251を切断したり除去したりして移動の抑制を解除するだけで、2つの被結合部分を分離することも可能となる。このように、本実施の形態に係る結合分離機構10Aによれば、2つの被結合体または被結合部分を結合した状態を小さな力、または、保持力なしで保持する状態を、より安定化させることができる。
【0071】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る結合分離機構は、前記実施の形態1に係る結合分離機構の構成において、レバー固定部材として、支持側部の後端にレバー部材の他端(後端)を締結する締結部材を備えている構成となっている。
【0072】
[結合分離機構の構成]
まず、本発明の実施の形態2に係る結合分離機構について、図5および図6(a),(b)を参照して説明する。図5に示すように、本実施の形態に係る結合分離機構10Bは、雌型結合体20Aおよび雄型結合体30Aから構成されており、雌型結合体20Bは、支持部材21、レバー部材22、係止部材23、リンク部材24、締結用ピン部材252、締結部材固定材253、および挿入孔加熱部27から構成され、雄型結合体30Aは、結合体本体31および本体支持部32から構成されている。
【0073】
結合分離機構10Bの基本的な構成は前記実施の形態1に係る結合分離機構10Aの構成と同様であるが、雌型結合体20Bにおいて、支持側部21bの後端およびレバー部材22の他端(後端)を貫通するように締結用ピン部材252が設けられ、この締結用ピン部材252によってレバー部材22が支持側部21bに固定されている点が異なっている。前記実施の形態1における固定用ピン部材251が、支持側部21bにレバー部材22を固定するための「固定部材」であれば、本実施の形態における締結用ピン部材252は、支持側部21bとレバー部材22とを締結する「締結部材」ということができる。
【0074】
締結用ピン部材252は、棒状のロッド部252aと頭部252bとから構成されている。頭部252bはロッド部252aよりも大きな直径を有しており、ロッド部252aの他端に一体的に設けられている。
【0075】
レバー部材22の他端には、締結用ピン部材252を挿入するための締結部材貫通孔22aが設けられている。締結部材貫通孔22aの内径は、頭部252bの直径よりも小さくなっている。一方、支持側部21bの後端には、締結用ピン部材252の一端を挿入して固定するための締結部材挿入孔21dが設けられている。締結部材挿入孔21dに隣接する位置には、当該締結部材挿入孔21dの内部を加熱する挿入孔加熱部27が設けられている。
【0076】
雄型結合体30Aおよび雌型結合体20Bを結合しているときには、締結用ピン部材252のロッド部252aを締結部材貫通孔22aに挿入して、その一端を支持側部21bに向かって突き出し、当該支持側部21bに設けられている締結部材挿入孔21d内に挿入させる。この状態では、締結用ピン部材252の他端は、頭部252bが締結部材挿入孔21dとは反対側の位置となるように締結部材貫通孔22aに挿入されていることになる。頭部252bは締結部材貫通孔22aの内径よりも大きな直径を有しているので、頭部252bは締結部材貫通孔22aを貫通することなくレバー部材22の外側に当接する。それゆえ、締結用ピン部材252(ロッド部252a)は、レバー部材22に対して機械的に係止されることになるので、締結部材貫通孔22aを通り抜けてしまうことがなく、頭部252bによって支持側部21b側(図中向かって左側)への移動が規制される。これにより、レバー部材22の他端と支持側部21bとを簡素な構成で適切に接続することができる。
【0077】
また、締結用ピン部材252(ロッド部252a)の一端は、締結部材挿入孔21dに挿入された状態で、締結部材固定材253により固定される。典型的には、図5および図6(a)に示すように、ロッド部252aの一端が締結部材挿入孔21dに挿入された状態で、当該締結部材挿入孔21dが締結部材固定材253により塞がれることで、ロッド部252aの一端を固定する。締結部材固定材253は、熱可塑性材料で構成されており、結合分離機構10Bの使用環境で想定される温度範囲内では凝固しているが、挿入孔加熱部27により締結部材挿入孔21d内が加熱されると軟化または融解する。
【0078】
前記構成によれば、図6(b)に示すように、挿入孔加熱部27を動作させることで締結部材固定材253が加熱されて軟化または融解される。そのため、締結部材固定材253により締結部材挿入孔21dに固定されていた締結用ピン部材252の一端は、締結部材挿入孔21dから脱離する。これによって、締結用ピン部材252は、図中矢印D4で示す外側に向かって移動するため、支持側部21bの後端に締結されていたレバー部材22の他端が固定状態から開放され、レバー部材22が外側(開く方向、図中矢印D3の方向)に移動する。
【0079】
レバー部材22が外側に移動すれば、雌型結合体20Bにおいては、雄型結合体30A(結合体本体31)の被係止面31aと係止部材23の係止面23aとの当接が解除され(図2(b)参照)、雌型結合体20Bおよび雄型結合体30Aの結合が解除される。それゆえ、簡素な構成で容易に雌型結合体20Bおよび雄型結合体30Aを分離することができる。
【0080】
なお、締結用ピン部材252の具体的な構成は特に限定されず、支持側部21bとレバー部材22とを締結できる程度の強度を有し、かつ、軟化または融解した締結部材固定材253から容易に分離できる性質を有する材料で構成されればよい。一例として、金属製のピン部材を挙げることができる。また、締結部材固定材253の具体的な構成も特に限定されず、前述したように公知の熱可塑性材料であればよい。一般的には、公知の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。また、挿入孔加熱部27の具体的な構成も特に限定されず、公知のヒータまたは加熱装置を好適に用いることができる。
【0081】
[変形例]
次に、本実施の形態に係る結合分離機構10Bの変形例について、図7(a)〜(c)を参照して説明する。前述したように、本実施の形態の締結部材は、締結用ピン部材252の頭部252bがレバー部材22の外側に位置し、ロッド部252aの先端が支持側部21bの締結部材挿入孔21d内で締結部材固定材253により固定される構成により実現されているが、頭部252bおよびロッド部252aの先端の位置が逆でもよい。すなわち、図7(a)に示すように、支持側部21bに締結部材貫通孔21eが形成され、レバー部材22に締結部材挿入孔22bが形成され、レバー部材22においてロッド部252aの先端が締結部材固定材253により固定される構成であってもよい。
【0082】
本発明で用いられる締結部材は、レバー部材22の他端と支持側部21bとを、その両端で接続することにより、当該レバー部材22の他端が外側へ移動することを妨げるように保持できる構成のレバー固定部材であればよい。それゆえ、本実施の形態における締結用ピン部材252のような締結部材であっても、前記実施の形態1における固定用ピン部材251のような固定部材であっても、どのような構成でも用いることができる。また、締結部材の一端は、レバー部材22および支持側部21bのいずれで固定されてもよい。
【0083】
また、締結用ピン部材252は、レバー部材22の他端(後端)と支持部材21とを締結する構成であればよく、必ずしも、レバー部材22の他端と支持側部21bの後端とを締結する構成でなくてもよい。ただし、本実施の形態で説明したように、レバー部材22の他端と支持側部21bの後端とを締結する構成であれば、レバー部材22および支持側部21bを、互いの端部同士で接続することになるため、レバー部材22および支持側部21bの長さを同等にすれば、締結用ピン部材252が長くなることを抑制することができる。
【0084】
なお、図5に示すように、支持側部21bに締結部材挿入孔21dが設けられ、レバー部材22の他端に締結部材貫通孔22aが設けられていれば、雌型結合体20Bの構成によっては、締結状態をより効果的に保持できる場合がある。例えば、支持側部21bは支持部材21の一部であり、支持部材21は雌型結合体20Bの本体の一部を構成するので、その厚みをレバー部材22よりも相対的に大きくすることができる。それゆえ、締結部材挿入孔21dを長くして、締結部材固定材253と締結部材挿入孔21dの内面との接触面積を大きくすることが可能となる。また、レバー部材22の他端は頭部252bにより機械的に固定されるので、締結部材貫通孔22aは短くてもよく、それゆえ、レバー部材22の他端をコンパクトなものとすることができる。
【0085】
また、本実施の形態で用いられる締結部材は、締結用ピン部材252に限定されず、他の構成であってもよい。例えば、図7(b)に示すように、締結用ピン部材252に代えて締結用ワイヤ254を用いることもできる。この締結用ワイヤ254の両端は、レバー部材22の他端の外側で締結用ワイヤ254をループさせて折り返すことにより、締結部材挿入孔21d内に挿入され、締結部材固定材253により固定されている。また、レバー部材22には、少なくとも外側、好ましくは外側につながる周囲に、締結用ワイヤ254を受けるワイヤ受け部22cが形成されている。このように、ワイヤ受け部22cで締結用ワイヤ254が受けられていることで、締結用ワイヤ254はレバー部材22の他端に機械的に固定(係止)される。それゆえ、締結用ワイヤ254は、締結用ピン部材252と同様に締結部材として機能することになる。
【0086】
なお、この締結用ワイヤ254は、ワイヤ単独で見れば、ループさせて折り返されることにより、その両端が締結部材挿入孔21d内に挿入されていることになるが、折り返された形状の締結用ワイヤ254を一つの締結部材として見れば、ワイヤ両端が締結部材の一端となり、ループ部分が締結部材の他端となる。それゆえ、図7(b)に示す構成では、締結部材の一端が締結部材挿入孔21dに挿入されて締結部材固定材253により固定され、締結部材の他端がレバー部材22の他端に機械的に固定されている、と表現することができる。
【0087】
さらに、本実施の形態においては、締結部材は、レバー部材22の他端に取り付けられてもよい。例えば、図7(c)に示すように、固定ワイヤ255がレバー部材22の他端の内側(締結部材挿入孔21dの側)に取り付けられ、この固定ワイヤ255の一端が、締結部材挿入孔21d内に挿入され、締結部材固定材253により固定されてもよい。このように、本実施の形態では、支持側部21bの後端またはレバー部材22の他端(後端)のいずれか一方に、締結部材の一端を挿入するための締結部材挿入孔21dまたは22bが設けられており、当該締結部材挿入孔21dまたは22bの内部に締結部材の一端が締結部材固定材253により固定されていればよい。
【0088】
ここで、締結部材としては、締結用ピン部材252または締結用ワイヤ254等に限定されず、公知の他の構成であってもよい。一般的には、レバー部材22と支持側部21bとを締結することができる長さを有するピン部材またはひも状部材を好適に用いることができるが、必ずしもピン状またはひも状でなくてもよく、レバー部材22と支持側部21bとを締結することができれば、ブロック状の構成であってもよいし、複数の部材等から構成される機械的な構成であってもよい。
【0089】
なお、本実施の形態に係る結合分離機構10Bは、締結部材と当該締結部材を支持部材21(またはレバー部材22)に固定するための構成(固定構成)とを除いて前記実施の形態1に係る結合分離機構10Aと同様の構成を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、レバー固定部材として前述した締結部材を備えていれば、他の構成の結合分離機構にも適用することができる。例えば、少なくとも支持部材21およびレバー部材22を備え、これら部材の間に挿入空間S0が形成される構成であれば、係止部材23、リンク部材24等を備えていなくてもよい。したがって、本発明に係る結合分離機構は、雄型結合体と、支持部材、レバー部材、締結部材および前記固定構成を備えている雌型結合体とから構成されていればよい。
【0090】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3では、前記実施の形態1および2に係る結合分離機構が適用された宇宙航行体の分離構造を例示して、本発明に係る結合分離機構をさらに具体的に説明する。本実施の形態に係る宇宙航行体の分離構造はマルマンクランプバンドを備えており、当該マルマンクランプバンドの結合を解除するために結合分離機構が適用されている。
【0091】
[マルマンクランプバンド]
まず、マルマンクランプバンドについて、図8(a),(b)を参照して具体的に説明する。図8(a)に示すように、本実施の形態に係るマルマンクランプバンド41は、金属製のバンド部材42と、当該バンド部材42の端部同士を分可能に結合する結合分離機構10Cと、バンド部材42を締め付けたり緩めたりするためのバンド締付部44と、バンド部材42を図示しないロケット本体に固定する複数のバンドキャッチャー45と、を備えている。
【0092】
また、図8(b)に示すように、マルマンクランプバンド41は、結合分離機構10Cをロケット本体51に固定する緩衝機構固定部材43も備えている。そして、ロケット本体51と人工衛星52とは、図示しない公知の分離構造によって固定的に連結されており、この連結部分の外周を囲むようにマルマンクランプバンド41が巻き回されて設けられている。ロケット本体51には、図中二点鎖線で示す衛星連結面51aが設けられ、当該衛星連結面51aの周囲に複数のバンドキャッチャー45と緩衝機構固定部材43とが取り付けられている。バンドキャッチャー45はバンド部材42をロケット本体51に固定した状態で支持しており、緩衝機構固定部材43は緩衝機構14(および結合分離機構10C)をロケット本体51に固定した状態で支持している。このような構成によって、マルマンクランプバンド41はロケット本体51に固定される。
【0093】
なお、図8(b)においては、結合分離機構10Cと緩衝機構固定部材43とロケット本体51との位置関係を説明する便宜上、緩衝機構固定部材43に隣接するバンドキャッチャー45は破線で図示している。また、図8(a),(b)に示すマルマンクランプバンド41を構成する各部材または機構等は特に限定されず、公知のさまざまな構成のものを好適に用いることができる。同様に、当該マルマンクランプバンド41により連結状態を分離可能に保持されるロケット本体51および人工衛星52の構成も特に限定されない。さらには、マルマンクランプバンド41で連結状態を保持される宇宙航行体もロケット、人工衛星等に限定されず、他の構成の宇宙航行体であってもよい。
【0094】
[結合分離機構]
次に、結合分離機構10Cについて、図9、図10(a),(b)および図11(a),(b)を参照して説明する。本実施の形態に係る結合分離機構10Cは、図9に示すように、2つの雌型結合体20C,20Cを、支持側部21bの後端同士で単一の締結部材支持部28により連結され、それぞれの雌型結合体20C,20Cに対して1つの雄型結合体30Cが挿入される構成となっている。したがって、結合分離機構10Cは、2つの雌型結合体20C,20Cと2つの雄型結合体30C,30Cから構成されている。
【0095】
結合分離機構10Cを構成する雄型結合体30Cと雌型結合体20Cは、10(a),(b)および図11(a),(b)に示すように、基本的に、前述した結合分離機構10A,10Bと同様の構成を有している。なお、図10(a),(b)および図11(a),(b)は、図9において略線対称につなげられている雌型結合体20C(および雄型結合体30C)を、説明の便宜上、1つのみ図示するものである。
【0096】
具体的には、各雌型結合体20C,20Cは、支持部材21、レバー部材22、係止部材23、リンク部材24を備え、これらがレバー支持連結部261、レバー回動連結部262、リンク回動連結部263およびリンク支持連結部264により連結されている。
【0097】
また、各雄型結合体30C,30Cは、それぞれ結合体本体31を有している。各結合体本体31は、図示しないが、バンド部材42のバンド端に固定されている。また、図9、図10(a),(b)および図11(a),(b)に示すように、結合体本体31の先端にはキャップ部31bが設けられており、このキャップ部31bによって、図11(b)の破線部分の拡大図に示すように、被係止面31aが形成される。
【0098】
図9に示すように、結合分離機構10Cは、締結用ワイヤ254(締結部材またはレバー固定部材)を基準として略線対称となるように、雌型結合体20C,20Cがつなげられている。また、雌型結合体20C,20Cの挿入空間S0(図10(b)および図11(b)参照)に挿入される雄型結合体30C,30Cは、図9に示すように、互いの先端が対向するような位置関係となっている。したがって、図中向かって左側の雌型結合体20C−1においては、雄型結合体30Cの挿入方向は、図中向かって右方向である矢印D5方向となり、引抜き方向は、図中向かって左方向である矢印D6方向となる。一方、図中向かって右側の雌型結合体20C−2においては、雄型結合体30Cの挿入方向は、図中向かって左方向である矢印D6方向となり、引抜き方向は、図中向かって右方向である矢印D5方向となる。
【0099】
雌型結合体20Cにおいては、図10(a),(b)に示すように、前記実施の形態1の雌型結合体20Aまたは前記実施の形態2の雌型結合体20Bとは異なり、レバー支持連結部261、レバー回動連結部262およびリンク回動連結部263が、挿入方向D1に沿うような位置関係で並んでいる。また、リンク支持連結部264は、支持側部21bの中央部ではなく支持側部21bと支持前部21aとがつながる位置に設けられている。この構成によれば、図10(b)に示すように、レバー支持連結部261、レバー回動連結部262およびリンク回動連結部263とリンク支持連結部264との間に挿入空間S0が位置する点は、前記実施の形態1または2と同様であるが、前者3つの連結部が挿入方向D1に沿うように並んでいることから、雌型結合体20Cの幅方向の寸法を小さくすることができる。
【0100】
つまり、雌型結合体20Cは、雄型結合体30C(結合体本体31)がある程度挿入された状態で保持できる大きさを有するが、係止部材23およびリンク部材24の回動を担うレバー支持連結部261、レバー回動連結部262およびリンク回動連結部263を挿入空間S0に沿うように(挿入された結合体本体31に沿うように)位置させることで、挿入方向D1に交差する方向の寸法(幅)を小さくすることが可能となる。一方、挿入方向D1の長さは、結合体本体31の挿入される長さに依存するので、連結部の位置を変えても大きく変わることがない。それゆえ、雌型結合体20C全体の寸法を小さくすることが可能となる。
【0101】
また、雌型結合体20Cにおいて、支持側部21bとレバー部材22とを締結する締結部材(レバー固定部材)として、前記実施の形態2で例示した締結用ワイヤ254が用いられている(図7(b)参照)。この締結用ワイヤ254は、図11(a)に示すようにループにより折り返されて、図10(b)に示すように締結部材固定材253により支持側部21bに固定されている(説明の便宜上、締結部材挿入孔21dは図10(b)には図示していない)。
【0102】
ここで、図9に示すように、各雌型結合体20Cのレバー部材22は、単一の締結用ワイヤ254によって締結部材支持部28に固定されている。締結部材支持部28は、それぞれの雌型結合体20C,20Cから見て支持側部21bを延長する位置に設けられているので、各雌型結合体20C,20Cのレバー部材22,22に対向する位置に存在していることになる。そして、この締結部材支持部28には、締結部材挿入孔28aが設けられ、この中に締結用ワイヤ254の両端が挿入されて締結部材固定材253により固定されている。
【0103】
また、1本の締結用ワイヤ254は、2本のレバー部材22,22の他端をまとめた状態で、締結部材支持部28(すなわち、それぞれの雌型結合体20C,20Cの支持部材21)に固定している。図9に示す構成では、図中向かって左側のレバー部材22−1の他端が締結部材支持部28に近い側(内側)に位置し、図中向かって右側のレバー部材22−2の他端が外側に位置した状態で、これら他端同士が重なっている。この重なった部分の外周に締結用ワイヤ254のループ部分が巻かれているため、単一の締結用ワイヤ254で2本のレバー部材22,22をまとめて固定することができる。また、締結部材支持部28におけるレバー部材22,22に対向する側(内側)とは反対側(外側)には、挿入孔加熱部27が設けられている。
【0104】
そして前述したとおり、挿入孔加熱部27による加熱で締結部材固定材253が軟化または融解すれば、締結用ワイヤ254が締結部材支持部28から脱離し、それぞれのレバー部材22,22が開くので、各雌型結合体20C−1,20C−2から雄型結合体30C,30Cが引き抜かれる。これにより、互いに結合していたバンド部材42のバンド端(図9には図示せず)が分離し、マルマンクランプバンド41が閉環状態から開環状態に移行する。これにより、ロケット本体51から人工衛星52が分離可能な状態となる。
【0105】
このように、本実施の形態では、結合分離機構10Cは、2つの雌型結合体20C,20Cと2つの雄型結合体30C,30Cとから構成され、マルマンクランプバンド41のバンド部材42を直接結合している。それゆえ、本発明に係る結合分離機構は、実施の形態1に係る結合分離機構を複数組み合わせた複合的な構成を採用することができる。
【0106】
なお、図10(a),(b)および図11(a),(b)は、前述したとおり、説明の便宜上、単独で使用可能な構成として図示している。それゆえ、例えば、雌型結合体20Cの支持前部21aの両外側に張り出した板状の取付枠21fが設けられている。この取付枠21fは、図11(b)の断面図に示すように、支持部材21に一体的に設けられている。このような取付枠21fを設ければ、単独使用の際に、雌型結合体20Cを固定しやすくすることができる。このように、実際の使用条件、使用環境、取り付け対象となる被結合体(被結合部分)の構成等に応じて、雌型結合体20Cの支持部材21、あるいは雄型結合体30Cの一部には、取付枠21fのようなさまざまな修飾構成が付加されてもよい。
【0107】
なお、本発明は上記の実施形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、2つの被結合部分を互いに結合および分離する用途に広く用いることがでる。しかも、本発明は、簡素な構成で十分な締結力を実現できるとともに、当該締結力に比べて小さな力で結合状態を保持することができ、さらに一度分離した後であっても容易に再結合することができるので、例えば、宇宙航行体の分野にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0109】
10A,10B,10C 結合分離機構
11 バンド部材(被結合体)
11a バンド部材の一端(被結合部分)
11b バンド部材の他端(被結合部分)
20A,20B,20C,20D 雌型結合体
21 支持部材
21a 支持前部
21b 支持側部
21d 締結部材挿入孔(挿入孔)
22 レバー部材
22b 締結部材挿入孔(挿入孔)
23 係止部材
23a 係止面
24 リンク部材
27 挿入孔加熱部
28a 締結部材挿入孔(挿入孔)
30A,30C,30D 雄型結合体
31 結合体本体(雄型結合体)
31a 被係止面
41 マルマンクランプバンド
42 バンド部材
51 ロケット本体(宇宙航行体)
52 人工衛星(宇宙航行体)
131 板状部材(被結合部分)
141 第一レバー(被結合部分)
142 第二レバー(被結合部分)
251 固定用ピン部材(レバー固定部材、ピン部材)
252 締結用ピン部材(レバー固定部材、締結部材、ピン部材)
253 締結部材固定材(熱可塑性材料)
254 締結用ワイヤ(レバー固定部材、締結部材、ひも状部材)
261 レバー支持連結部(第一支点部)
262 レバー回動連結部(第二支点部)
263 リンク回動連結部(第三支点部)
264 リンク支持連結部(第四支点部)
S0 挿入空間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの被結合部分を互いに結合および分離するために用いられる結合分離機構であって、
棒状の雄型結合体と、当該雄型結合体の挿入および引抜きがなされる挿入空間を有する雌型結合体と、を備え、
前記雄型結合体は、その長手方向に交差し、引抜き方向に面する被係止面を有しており、
前記雌型結合体は、
前記雄型結合体が前記挿入空間に挿入されている状態を支持する形状を有する支持部材と、
前記挿入空間に対面する位置に設けられ、前記支持部材に対してレバー支持連結部により一端が連結され、当該レバー支持連結部により他端が前記挿入空間とは反対側の方向に移動可能に構成されているレバー部材と、
前記レバー部材の両端の間となる位置に、レバー回動連結部により一端が回動可能に連結されるとともに、前記雄型結合体の前記被係止面に対して引抜き方向から当接する係止面を有する係止部材と、
前記係止部材の他端に対して、前記レバー回動連結部よりも挿入方向の側であり、かつ、前記係止面に近接して位置するリンク回動連結部により、一端が回動可能に連結されるとともに、前記支持部材に対してリンク支持連結部により、他端が回動可能に連結されているリンク部材と、を備え、
前記雄型結合体および前記雌型結合体が結合しているときには、前記雄型結合体が挿入空間に挿入され、前記レバー部材の他端が前記挿入空間に近接している位置にあり、前記係止部材の前記係止面が前記雄型結合体の前記被係止面に対して当接している状態が維持され、
前記雄型結合体および前記雌型結合体が分離するときには、前記レバー部材の他端が前記挿入空間から離れる方向に移動することにより、前記係止部材の前記係止面が引抜き方向に向かって移動し、これにより、当該係止面と前記雄型結合体の前記被係止面との当接が解除されることを特徴とする、結合分離機構。
【請求項2】
前記雄型結合体および前記雌型結合体が結合しているときには、
前記レバー支持連結部および前記リンク回動連結部は、この順で、前記レバー部材から前記挿入空間に向かう方向に配置され、
前記レバー回動連結部は、前記リンク回動連結部に対して引抜き方向に配置され、
前記リンク支持連結部は、前記リンク回動連結部との間に前記挿入空間を介在させる位置に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の結合分離機構。
【請求項3】
前記レバー部材の他端の移動を妨げるように、当該レバー部材を前記支持部材に対して解除可能に固定するレバー固定部材をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の結合分離機構。
【請求項4】
前記支持部材は、前記雌型結合体の前部を構成し、前記雄型結合体を前記挿入空間に挿入し引き抜くための開口を有する支持前部と、前記レバー部材に対向する部位を構成する支持側部とを有し、
前記レバー固定部材が、前記支持側部の挿入方向側の端部と、前記レバー部材の他端とを接続するピン部材またはひも状部材であることを特徴とする、請求項3に記載の結合分離機構。
【請求項5】
前記支持側部の前記端部、または、前記レバー部材の他端には、前記ピン部材または前記ひも状部材の一端を挿入するための挿入孔が設けられ、
当該挿入孔に隣接する位置に設けられ、当該挿入孔の内部を加熱する挿入孔加熱部をさらに備え、
前記雄型結合体および雌型結合体を結合しているときには、前記ピン部材またはひも状部材の一端を前記挿入孔に挿入した上で、熱可塑性材料によって当該挿入孔を塞ぐことによって、前記支持側部の前記端部と前記レバー部材の他端とを接続することを特徴とする、請求項4に記載の結合分離機構。
【請求項6】
2つの被結合部分を互いに結合および分離するために用いられる結合分離機構であって、
棒状の雄型結合体と、当該雄型結合体の挿入および引抜きがなされる挿入空間を有する雌型結合体と、を備え、
当該雌型結合体は、
前記雄型結合体が前記挿入空間に挿入されている状態を支持するように、当該挿入空間に平行な支持側部を有する支持部材と、
前記支持側部に対向して前記挿入空間を介在する位置に設けられ、前記支持部材に対して一端が連結され、当該レバー支持連結部により他端が前記挿入空間とは反対側の方向に移動可能に構成されているレバー部材と、
前記レバー部材の他端と前記支持側部とをその両端で接続することにより、前記レバー部材の他端が外側へ移動することを妨げるように固定するレバー固定部材と、を備え、
さらに、前記支持側部、または、前記レバー部材の他端には、前記レバー固定部材の一端を挿入するための挿入孔が設けられ、
当該挿入孔に隣接する位置に設けられ、当該挿入孔の内部を加熱する挿入孔加熱部をさらに備え、
前記雄型結合体および雌型結合体を結合しているときには、前記レバー固定部材の一端を前記挿入孔に挿入した上で、熱可塑性材料によって当該挿入孔を塞ぐことによって、前記支持側部の前記端部と前記レバー部材の他端とを接続することを特徴とする、結合分離機構。
【請求項7】
前記レバー固定部材は、その本体が棒状またはひも状であり、
前記雄型結合体および雌型結合体を結合しているときには、前記レバー固定部材の他端を、前記支持側部、または、前記レバー部材の他端のうち、前記挿入孔が設けられていない方に機械的に固定していることを特徴とする、請求項6に記載の結合分離機構。
【請求項8】
前記雄型結合体および前記雌型結合体は、帯状のバンド部材を閉環または開環させるために結合または分離するように構成されていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の結合分離機構。
【請求項9】
前記バンド部材が、第一の宇宙航行体に第二の宇宙航行体を固定するマルマンクランプバンドであることを特徴とする、請求項8に記載の結合分離機構。
【請求項10】
前記第一の宇宙航行体はロケット本体であり、前記第二の宇宙航行体は人工衛星であることを特徴とする、請求項9に記載の結合分離機構。
【請求項11】
請求項8または9に記載の結合分離機構を備える宇宙航行体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−136131(P2012−136131A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289110(P2010−289110)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)