説明

結合回路

【課題】電気的特性の劣化を伴うことなく、かつ、形状を大きくすることなく位相量の可変範囲を拡大することが可能な結合回路を提供する。
【解決手段】
回転結合導体(21)の結合部(21b)を介して出力側マイクロストリップ線路(15)の円弧状結合部(15a)に入力された高周波電力は、円弧状結合部(15a)で分配されて各出力端子(15b、15c)から出力される。回転結合導体(21)は、支軸(40)を中心とする回転に伴って結合部(21b)が円弧状結合部(15a)上を移動する。付加誘電体(30)は、回転結合導体(21)が形成された誘電体基板(20)に嵌合されて、回転結合導体(21)と共に回転する。円弧状結合部(15a)は、出力側マイクロストリップ線路(15)が形成された誘電体基板(10)と付加誘電体(30)とによって挟まれる。付加誘電体(30)の誘電率は、誘電体基板(10)の誘電率よりも高いので、円弧状結合部(15a)の実効誘電率が増大される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を分配し、かつ、分配した高周波信号の位相を連続的に変化させることができる結合回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号の位相を連続的に変化させる機能を有した結合回路は、例えば、下記特許文献1、2によって提案されている。
この従来の結合回路は、誘電体基板に形成された入力側ストリップ線路および出力側ストリップ線路と、上記入力側ストリップ線路にその一端部が結合かつ枢支された回転結合導体とを備えている。上記出力側ストリップ線路は、上記回転結合導体の枢軸を中心とする円周上に位置した円弧状結合部を有し、上記回転結合導体の他端部がこの円弧状結合部に対し移動可能に結合している。
【0003】
この結合回路においては、入力側ストリップ線路に設けられた入力端子に高周波信号が入力される。入力された高周波信号は、回転結合導体を介して出力側ストリップ線路の円弧状結合部に入力された後に2分配され、その分配された高周波信号が出力側ストリップ線路の一端および他端に設けられた一方および他方の出力端子に供給される。
【0004】
上記円弧状結合部に対する回転結合導体の結合位置は、該回転結合導体の回転操作によって変化する。そして、この回転結合導体の結合位置の変化は、該結合位置から出力側ストリップ線路の各出力端子に至る二つの経路の長さの変化をもたらすので、結果的に、上記各出力端子に供給される高周波信号の位相量を変化させることになる。
つまり、この結合回路は、入力電力を等分した電力を各出力端子に分配供給する分配器としての機能と、各出力端子に分配される電力の位相を回転結合導体の回転に伴って連続的に変化させる移相器としての機能とを併せ持つ。
【特許文献1】特許第3095676号
【特許文献2】特許第3095677号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記結合回路では、誘電体基板の誘電率、出力側マイクロストリップ線路の円弧状結合部の円弧径、および、回転結合導体の可動範囲が可変位相量を決定する要素となる。
【0006】
そこで、上記位相量の可変範囲をより大きくするための手段として以下の方法が考えられる。
方法1:誘電体基板の誘電率を大きくする。
出力側マイクロストリップ線路の実効誘電率が大きくなるので、位相量
の可変範囲が拡大する。
方法2:出力側マイクロストリップ線路の円弧状結合部の円弧径を大きくする。
回転結合導体の結合位置から出力側ストリップ線路の各出力端子に至る
二つの経路の長さの比を大きく変化させることが可能になるので、位相
量の可変範囲が拡大する。
【0007】
しかし、上記方法1では、入力側マイクロストリップ線路の実効誘電率も大きくなる。一般的に、誘電体基板の誘電率には、製作に伴うある範囲の誤差が含まれているが、誘電体基板の誘電率を大きくした場合には、この誤差の範囲も大きくなる。このため、入力側マイクロストリップ線路および出力側マイクロストリップ線路の特性インピーダンス(例えば50Ω)を規定する線路幅のバラツキや絶対位相量のバラツキが大きくなって、VSWR特性の劣化、損失の増大などの問題を生じ、その結果、量産性が低下する。
一方、上記方法2は、円弧状結合部を形成するために大きなスペースを必要とするので、全体形状が大きくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、電気的特性の劣化を伴うことなく、かつ、形状を大きくすることなく位相量の可変範囲を拡大することができる結合回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、第1の誘電体基板に形成され、一端に入力端子を有する入力側マイクロストリップ線路と、前記第1の誘電体基板に形成され、第1の出力端子、第2の出力端子およびこれらの出力端子間に介在する円弧状結合部を有する出力側マイクロストリップ線路と、第2の誘電体基板に形成され、前記円弧状結合部の曲率中心を通る支軸によって枢支された回転結合導体と、前記第2の誘電体基板に付加され、該第2の誘電体基板と共に前記支軸を中心として回転する付加誘電体とを備える結合回路を提供する。
前記回転結合導体は、前記枢支部位において前記入力側マイクロストリップ線路の他端部と結合する第1の結合部を有するとともに、前記円弧状結合部と結合する第2の結合部を有する。前記付加誘電体は、前記第1の誘電体基板の誘電率よりも高い誘電率を有するように、かつ、前記円弧状結合部における前記第2の結合部の結合部位を除いた部位を覆うように形成され、前記第2の結合部は、前記円弧状結合部におけるその結合部位の特性インピーダンスがその結合部位を除いた部位の特性インピーダンスと同一となるようにその大きさが設定される。
【0010】
実施の態様において、前記回転結合導体は、前記第2の結合部からλg/4(λgは、前記回転結合導体上における使用周波数の波長)だけ前記第1の結合部側に寄った箇所に至る部位に4分の1波長変成器としての機能を有する負荷インピーダンス回路を形成し、これによって前記第1の結合部におけるインピーダンス整合を図るようにしている。
また、実施の態様において、前記付加誘電体は切欠き部を有し、該切欠き部を前記第2の誘電体基板に嵌合させることによって前記軸を中心として回転可能な円板状の回転体を構成するように形成されている。
【0011】
前記回転結合導体の第2の結合部は、該回転結合導体の長手方向中心軸線から前記出力側マイクロストリップ線路の第1の出力端子側に寄った部位もしくは第2の出力端子側に寄った部位に電力分配調整スタブを備えることができる。前記第2の結合部にこの電力分配調整スタブを具備させることにより、前記出力側マイクロストリップ線路の第1の出力端子と第2の出力端子から出力させる電力の分配比を調整することが可能になる。
実施の態様において、前記電力分配調整スタブは、前記回転結合導体の長手方向中心軸線からλg/4(λgは前記回転結合導体上における使用周波数の波長)以下の距離をおいて設けられている。
【0012】
前記回転結合導体の第1、第2の結合部は、これらの結合部の機械的接触に起因する雑音の発生や相互変調の問題が回避するために、それぞれ電気絶縁性の膜を介して結合させることが望ましい。
【0013】
本発明は、第1の誘電体基板に形成され、一端に入力端子を有する入力側マイクロストリップ線路と、前記第1の誘電体基板に形成され、それぞれが第1の出力端子、第2の出力端子および該各出力端子間に介在する円弧状結合部を有し、それぞれの前記円弧状結合部が異径かつ同心で互いに並行している複数の出力側マイクロストリップ線路と、第2の誘電体基板に形成され、前記各円弧状結合部の同心位置を通る支軸によって枢支された回転結合導体と、前記第2の誘電体基板に付加され、該第2の誘電体基板と共に前記支軸を中心として回転する付加誘電体とを備える結合回路も提供する。
前記回転結合導体は、前記枢支部位において前記入力側マイクロストリップ線路の他端部と結合する第1の結合部を有するとともに、前記各円弧状結合部とそれぞれ結合する複数の第2の結合部を有する。
前記付加誘電体は、前記第1の誘電体基板の誘電率よりも高い誘電率を有するように、かつ、前記各円弧状結合部における前記各第2の結合部の結合部位を除く部位を覆うように形成され、前記各第2の結合部は、対応する前記円弧状結合部におけるその結合部位の特性インピーダンスがその結合部位を除いた部位の特性インピーダンスと同一となるようにその大きさが設定される。
【0014】
実施の態様において、前記回転結合導体は、前記各第2の結合部からλg/4(λgは、前記回転結合導体上における使用周波数の波長)だけ前記第1の結合部側に寄った箇所に至る複数の部位にそれぞれ4分の1波長変成器としての機能を有する負荷インピーダンス回路形成し、これによって前記第1の結合部におけるインピーダンス整合を図るようにしている。
また、実施の態様において、前記付加誘電体は切欠き部を有し、該切欠き部を前記第2の誘電体基板に嵌合させることによって前記軸を中心として回転可能な円板状の回転体を構成するように形成されている。
【0015】
前記回転結合導体の各第2の結合部は、該回転結合導体の長手方向中心軸線から対応する前記出力側マイクロストリップ線路の第1の出力端子側に寄った部位もしくは第2の出力端子側に寄った部位にそれぞれ電力分配調整スタブを備えることができる。前記各第2の結合部に前記電力分配調整スタブを具備させることにより、前記対応する出力側マイクロストリップ線路の第1の出力端子と第2の出力端子から出力させる電力の分配比を調整することが可能になる。
【0016】
実施の態様において、前記各電力分配調整スタブは、前記回転結合導体の長手方向中心軸線からλg/4(λgは前記回転結合導体上における使用周波数の波長)以下の距離をおいて設けられている。
【0017】
前記回転結合導体の第1の結合部および各第2の結合部は、これらの結合部の機械的接触に起因する雑音の発生や相互変調の問題が回避するために、それぞれ電気絶縁性の膜を介して結合させることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、付加誘電体によって出力側マイクロストリップ線路の円弧状結合部の実効誘電率を増大させている。したがって、出力側マイクロストリップ線路が形成された誘電体基板の誘電率を高くするという手法によって上記実効誘電率を増大させた場合の問題点である電気的特性の劣化やバラツキを回避して、量産性を向上することができる。また、上記円弧状結合部の円弧径を大きくするという手法によって上記実効誘電率を増大させた場合には、全体形状が大きくなるという問題を生じるが、本発明によれば、そのような不都合を回避することができる。
さらに、出力側マイクロストリップ線路を複数設けるようにした第2の発明によれば、上記の利点に加えて、上記出力側マイクロストリップ線路の数に対応した数の分配出力電力を得ることができるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明に係る結合回路の実施の形態について説明する。
図1は、2GHz帯の周波数に適用し得るように、また、1:1の電力分配比が得られるように構成した本実施形態に係る結合回路の分解斜視図である。本実施形態に係る結合回路は、誘電体基板10、20および付加誘電体30を備えている。
【0020】
誘電体基板10の上面には、入力側線路導体11および出力側線路導体12がそれぞれ金属箔(例えば銅箔)を着設することによって形成され、また、該誘電体基板10の下面全域には同様の金属箔によって接地導体13が形成されている。
図2(a)に示すように、入力線路導体11は、誘電体基板10の中央部から前端に向かって直線上に延び、図1に示す接地導体13と共に入力側マイクロストリップ線路14を構成している。入力側マイクロストリップ線路14は、基端に入力端子14aを有し、先端に円形の結合部14bを有している。
【0021】
出力側線路導体12は、上記円形結合部14bの中心を曲率中心とする円弧状部位と、該円弧状部位の一端および他端からそれぞれ誘電体基板10の前端に向かって直線上に延びる導体部をそれぞれ備え、図1に示す接地導体13と共に出力側マイクロストリップ線路15を構成している。
出力側マイクロストリップ線路15は、出力側線路導体12の円弧状部位において円弧状結合部15aを形成し、かつ、誘電体基板1の前端側に位置した一端
部及び他端部において出力端子15bおよび15cをそれぞれ形成している。
本実施形態においては、上記円弧状結合部15aが半径R1=0.24λ(λは使用周波数の波長である)の円周上に位置している。したがって、この円弧状結合部15aの線路長L1はπ・0.24λである。
【0022】
次に、誘電体基板20について説明する。図2(b)に示すように、この誘電体基板20は細長に形成され、その下面に回転結合導体21が上記金属箔によって形成されている。
回転結合導体21は、その基端側(入力側)に設けられた円形結合部21aと、その先端側(出力側)に設けられた線路状結合部21bと、これらの結合部21a、21b間に位置された方形状の幅広部21cとを備えている。
上記幅広部21cは、線路状結合部21bからλg/4(λgは、回転結合導体21上における使用周波数の波長)だけ円形結合部21a側に寄った箇所に形成されている。線路状結合部21b、幅広部21cおよびこれら間に介在する導体部分は、周知の4分の1波長変成器としての機能を有する後述の負荷インピーダンス回路22を構成している。なお、上記幅広部21の形状は方形に限らず、例えば円形であっても良い。
【0023】
図1に示すように、誘電体基板10には、前記入力側マイクロストリップ線路14の円形結合部14aの中心を支軸40が貫通している。誘電体基板20は、回転結合導体21の円形結合部21aの中心に上記支軸40を貫通させることによって誘電体基板10に回転可能に支持される。このとき、図3に示すように、円形結合部21aが入力側マイクロストリップ線路14の円形結合部14b上に重ね合わされるとともに、線路状結合部21bが出力側マイクロストリップ線路15の円弧状結合部15a上に重ね合わされる。したがって、誘電体基板20を上記支軸40を中心として回転させれば、回転結合導体21の線路状結合部21bが円弧状結合部15a上を移動することになる。
なお、本実施形態における誘電体基板10、20は、厚さが1.6mmに、また、誘電率が2.6にそれぞれ設定されている。
【0024】
次に、負荷インピーダンス回路22について説明する。出力側マイクロストリップ線路15の特性インピーダンスをZout、回転結合導体21の入力側部分の特性インピーダンスをZinとすると、出力側マイクロストリップ線路15が回転結合導体21の線路状結合部21bの結合部位で左右に分岐していることから、この線路状結合部21bから出力側マイクロストリップ線路15側を見た負荷インピーダンスは略Zout/2になる。
本実施形態において、Zin、Zoutは50Ωに設定される。したがって、通常、このままでは出力側結合部21bでの整合をとることはできない。しかし、本実施形態では、回転結合導体21に上述した負荷インピーダンス回路22が設けられているので、これによるインピーダンス変換作用によって整合をとることができる。
【0025】
すなわち、負荷インピーダンス回路22の部分の静電容量をC、信号の群速度をVpとすると、この部分の等価特性インピーダンスZoはZo=(Vp・C)−1と表される。線路状結合部21bにおけるインピーダンス整合条件はZin・Zout=Zoである。負荷インピーダンス回路22は、幅広部21cによる上記静電容量Cの増大によって上記等価特性インピーダンスZoを小さくし、それによって、上記整合条件を満足させる機能を有する。
【0026】
なお、上記負荷インピーダンス回路22は、出力側マイクロストリップ線路15の円弧状結合部15aの寸法や、入力側マイクロストリップ線路14の円形結合部14aの寸法などのパラメータを考慮して4分の1波長変成器としての機能を持つように適宜設計すればよいので、本実施形態の構成に限定されない。例えば、回転結合導体21における線路状結合部21bからλg/4だけ円形結合部14a側に寄った箇所に至る区間の線路幅を単に広くする等の手段によっても負荷インピーダンス回路22を構成することができる。
【0027】
本実施形態によれば、回転結合導体21の線路状結合部21bと、出力側マイクロストリップ線路15の円弧状結合部15aとがインピーダンス整合されるので、線路状結合部21bの長さをλg/4よりも小さくすることが可能である。これは、上記円弧状結合部15aにおける回転結合導体21の回転可能範囲が広くなることを意味する。
【0028】
次に、付加誘電体30について説明する。図2(c)に示すように、この付加誘電体30は、円板状誘電体にその半径方向に沿った切欠き部31を形成した構成を有する。切欠き部31の形状は、図2(b)に示す誘電体基板20の外形と一致しているので、この切欠き部31を誘電体基板20に嵌合した場合、図3に示すように、前記支軸40を中心として回転可能な円板状回転体が構成される。
本実施形態における付加誘電体30は、半径R2が0.27λに、厚さが1.6mmに、誘電率が20にそれぞれ設定されている。
【0029】
図3から明らかなように、出力側マイクロストリップ線路15には、誘電体基板20もしくは付加誘電体30によって覆われる第1の部分、換言すれば、誘電体基板10と誘電体基板20もしくは誘電体基板10と付加誘電体30によって挟まれる部分(円弧状結合部15aはこの部分に含まれている)と、そうでない第2の部分とが存在する。
図2(a)に示すように、上記第1の部分の線路幅w1は、上記第2の部分の線路幅w2よりも小さく設定されている。線路幅w1は、該当領域の線路が誘電体基板10と付加誘電体30とで挟まれた状態下で所定の特性インピーダンス(本実施形態では50Ω)を示すように設定される。本実施形態において、線路幅w1は1.86mmである。
【0030】
ところで、上記幅w1の線路には、誘電体基板20によって覆われる部位、換言すれば、誘電体基板10と該誘電体基板20とによって挟まれる部位が存在する。上記したように、幅w1の線路は、誘電体基板10と付加誘電体30とで挟まれた状態下で所定の特性インピーダンス(本実施形態では50Ω)を示す。誘電体基板20の誘電率(本実施形態では2.6)は、付加誘電体30の誘電率(本実施形態では20)に比して大幅に低いので、上記誘電体基板10と該誘電体基板20とによって挟まれる部位の特性インピーダンスは、上記所定の特性インピーダンスからずれることになる。
そこで、本実施形態では、上記誘電体基板10と該誘電体基板20とによって挟まれる部位の特性インピーダンスが上記所定の特性インピーダンス50Ωを示すように、上記回転結合導体21の線路状結合部21bの線路幅w3(図2(b)参照)を4.01mmに設定している。
【0031】
出力側マイクロストリップ線路15の線路幅w1および線路状結合部21bの線路幅w2を上記のように設定した本実施形態によれば、回転結合導体21の回転位置によらず出力側マイクロストリップ線路15の特性インピーダンスを50Ωに維持することが可能となる。
なお、出力側マイクロストリップ線路15における上記第2の部分、すなわち、誘電体基板20および誘電体30のいずれにも覆われない部分は、その特性インピーダンスが50Ωになるようにその線路幅w2が設定されている。本実施形態において、線路幅w3は4.42mmである。
【0032】
次に、入力側マイクロストリップ線路14について説明する。この入力側マイクロストリップ線路14には、誘電体基板20によって常時覆われる(誘電体基板10、20によって常時挟まれる)第1の部分と、付加誘電体30によって常時覆われる(誘電体基板10と付加誘電体30とによって常時挟まれる)第2の部分と、誘電体基板20および付加誘電体30のいずれによっても覆われない第3の部分とが存在する。
そこで、本実施形態では、上記第1、第2および第3の部分の特性インピーダンスがいずれも50Ωを示すように、上記第1の部分の線路幅w4を4.01mmに、上記第2の部分の線路幅w5を1.86mm(=w1)に、また、上記第3の部分の線路幅w6を4.42mm(=w3)にそれぞれ設定している。
【0033】
上記構成の本実施形態に係る結合回路においては、入力側マイクロストリップ線路14の円形結合部14bと回転結合導体21の円形結合部21aとが高周波的に結合され、また、回転結合導体21の線路状結合部21bと、出力側マイクロストリップ線路15の円弧状結合部15aとが高周波的に結合されている。
したがって、入力側マイクロストリップ線路14の入力端子14aに入力された高周波電力(本実施形態では、2GHz帯の周波数を有する)は、該入力側マイクロストリップ線路14と回転結合導体21とを介して出力側マイクロストリップ線路15の円弧状結合部15aに供給される。このとき、回転結合導体21の線路状結合部21bでの電力の反射は生じない。なぜなら、線路状結合部21bは、4分の1波長変成器としての機能を持つ上記した負荷インピーダンス回路22によって円弧状結合部15aとのインピーダンス整合が取れた状態にあるからである。
【0034】
出力側マイクロストリップ線路15は、円弧状結合部15aにおける線路状結合部21bの結合部位において左右に分岐することになる。したがって、円弧状結合部15aに入力された高周波電力は、上記分岐点から一方の出力端子15bに向う電力と他方の出力端子15cに向う電力に分配される。なお、本実施形態における電力の分配比は1:1である。
上記出力端子15bから出力される電力の位相量と上記出力端子15cから出力される電力の位相量との差は、上記線路状結合部21bの結合位置から出力端子15b、15cに至る各線路の長さの差に対応する。そして、この線路の長さの差は、回転結合導体21の回転位置に応じて変化することになる。
【0035】
回転結合導体21の回転によって変化される位相量は、出力側マイクロストリップ線路15の円弧状結合部15aの実効誘電率εeffに比例する。
ここで、付加誘電体30を使用しない比較例に係る結合回路について考察する。この比較例に係る結合回路の場合、上記円弧状結合部15aは、50Ωの特性インピーダンスをもたすために、その線路幅w1が4.42mm(=w2)に設定される。この円弧状結合部15aは、実効誘電率εeffが2.17、波長短縮率εeff−0.5が0.68であるので、周波数2.045GHzにおける線路長1mmあたりの位相量が3.61°になる。したがって、円弧状結合部15aの円弧半径を0.24λ、回転結合導体21の回転角度±θを±90°とした場合の可変位相量は±204°となる。
【0036】
これに対して、本実施形態に係る結合回路によれば、円弧状結合部15aが誘電体基板10と該誘電体基板10よりも高い誘電率を有する付加誘電体30とによって挟まれるため、円弧状結合部15aの実効誘電率εeffが5.15に、また、波長短縮率εeff−0.5が0.44になり、その結果、2.045GHzにおける線路長1mmあたりの位相量が5.57°になる。
したがって、上記と同様に、出力側マイクロストリップ線路15の円弧半径を0.24λ、回転結合導体21の回転角度±θを±90°とした場合、可変位相量が±315°となる。
【0037】
このように、本実施形態に係る結合回路によれば、誘電体基板10の誘電率よりも高い誘電率を有する付加誘電体30を備えているので、出力側マイクロストリップ線路15の実効誘電率が増大され、その結果、全体形状の大きさを変えることなく可変位相量を大きくすることができる。
付加誘電体30は、その誘電率が誘電体基板10の誘電率よりも高く設定されていれば、出力側マイクロストリップ線路15の実効誘電率の増大をもたらす。したがって、この付加誘電体30の誘電率の値は、上記実施形態の値20に限定されず、20以下であってもあるいは20より大きくてもよい。そして、付加誘電体30の誘電率を20よりも高い値に設定すれば、上記した±315°よりも大きな可変位相量を得ることができる。
なお、本実施形態では、誘電体基板20の誘電率を誘電体基板10の誘電率の値2.6と同じ値に設定しているが、回転結合導体21の設計に支障をきたさない範囲内であれば、2.6とは異なる値に設定してもよい。
【0038】
上記のように付加誘電体30は、円弧状結合部15aの実効誘電率を大きくするように作用する。したがって、誘電体基板10の誘電率が小さい場合においても、付加誘電体30の誘電率を適宜設定することにより、円弧状結合部15aに充分高い実効誘電率を持たすことが可能である。つまり、本実施形態に係る結合回路によれば、低誘電率の誘電体基板10を使用することが可能であり、これは、次のような利点をもたらす。
すなわち、誘電体基板は、その誘電率が高いほど製作上における誘電率の誤差の範囲が大きくなる傾向を示す。低誘電率の誘電体基板10を使用することが可能な本実施形態によれば、上記誘電率の誤差の影響による入力側マイクロストリップ線路14の特性インピーダンス(50Ω)のバラツキや、絶対位相量のバラツキ等が抑制されるため、VSWR(定在波比)特性などの電気特性の安定化や損失の低減を図ることが可能となり、これは量産性の向上に寄与する。
【0039】
ところで、入力側マイクロストリップ線路14の円形結合部14bと回転結合導体21の円形結合部21a相互、および、回転結合導体21の線路状結合部21bと出力側マイクロストリップ線路15の円弧状結合部15a相互を機械的に接触させた場合、雑音の発生や相互変調の問題、耐久性の低下等を生じるおそれがある。
このため、本実施形態では、少なくとも誘電体基板20の下面、もしくは、該下面が摺動する誘電体基板10の上面を厚さ0.2mm程度の電気絶縁性の膜で被覆して上記した各要素相互の機械的接触を回避し、それによって信頼性の向上を図っている。
なお、上記被覆処理に際しては、その処理が各線路の特性インピーダンスに影響を与えないように被覆材の膜厚等を考慮することが望ましい。
【0040】
図4は、本実施形態に係る結合回路のリターンロス特性を示す。また、図5の(a)および(b)は、それぞれ本実施形態に係る結合回路の右側出力端子16bおよび左側出力端子16c(図3参照)での通過損失特性を示す。なお、これらの特性は、回転結合導体21が図3に示す0°位置にある状態で測定したものである。
図4において、周波数0.94f(1.92GHz)、周波数f(2.045GHz)および周波数1.06f(2.17GHz)での反射損失は、それぞれ−23.407dB、−23.656dBおよび−19.404dBである。
また、図5(a)において、周波数0.94f、周波数fおよび周波数1.06fでの通過損失は、それぞれ−3.5945dB、−3.6764dBおよび−3.5546dBである。
さらに、図5(b)において、周波数0.94f、周波数fおよび周波数1.06fでの通過損失は、それぞれ−3.5465dB、−3.6564dBおよび−3.5298dBである。
図4および図5に示すように、本実施形態に係る結合回路は、良好なリターンロス特性および通過損失特性を示す。
【0041】
図6において、実線および太点線は、本実施形態に係る結合回路の右側出力端子16bおよび左側出力端子16cでの位相変化量特性をそれぞれ示す。また、この図6において、一転鎖線および細点線は、付加誘電体30を併用しない比較例に係る結合回路の右側出力端子16bおよび左側出力端子16cでの位相変化量特性をそれぞれ示す。なお、前記したように、比較例に係る結合回路では、円弧状結合部15aの線路幅w1が4.42mmに設定される。
この図6から明らかなように、付加誘電体30を使用する本実施形態に係る結合回路によれば、比較例に係る結合回路に比して大きな位相変化量を得ることができる。
【0042】
本実施形態に係る結合回路は、例えばアレーアンテナの各アンテナ素子の前段に配置して使用する。この場合、アレーアンテナの給電信号の位相を連続的に変化させて、該アレーアンテナからの放射のメインローブ方向を連続して変化させることが可能になる。
【0043】
本実施形態に係る結合回路における電力の分配比は1:1である。しかし、移動体通信に用いるアレーアンテナの指向性制御に適用する場合には、個々のアンテナ素子に給電される電力の振幅が必ずしも均一にならないので、所望の分配比の電力を取り出せる機能を上記結合回路に持たせることが望ましい。
図7に所望の分配比の電力を取り出せる機能を有した本発明に係る結合回路の実施形態を示す。
この結合回路において、誘電体基板200および付加誘電体300は、それぞれ図1に示す誘電体基板20および付加誘電体30に対応するものである。本実施形態の結合回路は、誘電体基板200に設けられた回転結合導体210の構成および付加誘電体300の切欠き部310の形状においてのみ、図1に示した結合回路と相違している。
【0044】
回転結合導体210は、図1に示す円形結合部21a、線路状結合部21bおよび幅広部21cに対応する円形結合部210a、線路状結合部210bおよび幅広部210cに加えて、金属箔からなる電力分配調整スタブ210dを備えている。
電力分配調整スタブ210dは、図8に示すように、回転結合導体210の長手軸線に沿う形態で線路状結合部210bから円形結合部21a側に向かって延びている。この電力分配調整スタブ210dの長手軸線と回転結合導体210の長手軸線とのなす間隔Dは、λg/4以下に設定され、本実施形態では0.052λgに設定されている。また、この電力分配調整スタブ210dの長さL2は、所望の電力分配比が得られるように適宜設定され、本実施形態では0.294λgに設定されている。
付加誘電体300の切欠き部310は、誘電体基板200の外形に合致するように形成されている。
【0045】
本実施形態に係る結合回路によれば、線路状結合部210bを介して円弧状結合部15aに流入して出力端子15c側に向う電力の一部が上記分配調整スタブ210dによって反射される。この反射された電力は、出力端子15b側に向かって移動し、その結果、出力端子15bに分配される電力が出力端子15cに分配される電力よりも大きくなる。すなわち、本実施形態では、出力端子15bに分配される電力と出力端子15cに分配される電力の比が例えば2:1になる。
【0046】
以上の説明から明らかなように、電力分配比は、電力分配調整スタブ210dによる電力の反射量に依存する。そして、この電力の反射量は、上記電力分配調整スタブ210dの配置距離Dおよび形状要素(長さL2並びに幅)によって規定される。それ故、本実施形態に係る結合回路によれば、上記電力分配調整スタブ210dの配置距離Dおよび/または形状要素の調整によって、所望の電力分配比を設定することが可能である。もちろん、本実施形態に係る結合回路は、前記実施形態に係る結合回路の利点を併せ持つ。
なお、上記電力分配調整スタブ210dは、回転結合導体210の長手軸線を基準として出力側マイクロストリップ線路15の出力端子15c側に設けられているが、同線路15の出力端子15b側に設けてもよい。
【0047】
図9は、2分配された高周波電力を複数出力するように構成された本発明の実施形態を示す。
本実施形態に係る結合回路は、誘電体基板10に出力側マイクロストリップ線路15'を追加形成した点と、回転結合導体21に線路状結合部21b'および幅広部21c'を追加形成した点において図1に示した結合回路と相違する。以下、この相違点のみについて説明する。
【0048】
出力側マイクロストリップ線路15'は、入力側マイクロストリップ線路14と出力側マイクロストリップ線路15との間に形成され、該出力側マイクロストリップ線路15の円弧状結合部15aおよび出力端子15b、15cに対応する円弧状結合部15a'および出力端子15b'、15c'を備えている。
この出力側マイクロストリップ線路15'の線路幅は、出力側マイクロストリップ線路15の線路幅に準じて設定されている。したがって、円弧状結合部15a'は、誘電体基板10と付加誘電体30とによって挟まれた状態において50Ωの特性インピーダンスを示す。
【0049】
線路状結合部21b'は、円弧状結合部15a'と結合し得る位置に設けられている。そして、この線路状結合部21b'は、誘電体基板10と誘電体基板20とによって挟まれた状態での円弧状結合部15a'が50Ωの特性インピーダンスを示すようにその大きさが設定されている。
線路状結合部21b'、幅広部21c'およびこれら間に介在する導体部分は、周知の4分の1波長変成器としての機能を有する負荷インピーダンス回路22'を構成している。もちろん、この負荷インピーダンス回路22'は、線路状結合部21b'と円弧状結合部15a'とのインピーダンス整合をとるために設けられている。
以上の構成により、回転結合導体21の回転位置によらず線路状結合部21b'と円弧状結合部15a'とがインピーダンス整合され、かつ、円弧状結合部15a'の特性インピーダンスが50Ωに維持される。
【0050】
本実施形態に係る結合回路によれば、出力側マイクロストリップ線路15の各出力端子15b、15cから等分配された電力が出力され、同様に、出力側マイクロストリップ線路15'の各出力端子15b'、15c'からも等分配された電力が出力される。そして、回転結合導体21の回転操作に伴って、出力端子15b、15cおよび15b'、15c'から出力される電力の位相が図6に例示したような形態で変化される。
【0051】
なお、本実施形態に係る結合回路は、前記各実施形態の結合回路と同様に、少なくとも誘電体基板20の下面、もしくは、該下面が摺動する誘電体基板10の上面が厚さ0.2mm程度の電気絶縁性の膜で被覆される。
また、本実施形態に係る結合回路では、2つの出力側マイクロストリップ線路15、15'を設けているが、2つよりも多い出力側マイクロストリップ線路を備える結合回路を構成することも当然可能である。もちろんこの場合には、回転結合導体21において個々の出力側マイクロストリップ線路に対応する線路状結合部および幅広部が設けられることになる。
【0052】
図9に示した実施形態においても、回転結合導体21の線路状結合部21b、21b'に対して図8に例示した電力分配調整スタブ210dに相当する電力分配調整スタブ(図示せず)を付設することができる。
この場合、個々の電力分配調整スタブの配置距離(図8の距離D参照)および/または形状要素の調整によって、個々の出力側マイクロストリップ線路の各出力端子から出力される電力の分配比を任意に設定することができる。したがって、個々の出力側マイクロストリップ線路の各出力端子から出力される電力の分配比を全て同一もしくは相違させることや、特定の出力側マイクロストリップ線路の各出力端子から出力される電力の分配比を他の出力側マイクロストリップ線路の各出力端子から出力される電力の分配比と相違させることなどが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る結合回路の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は入力側マイクロストリップ線路および出力側マイクロストリップ線路の形状構成を示す平面図、(b)および(c)はそれぞれ回転結合導体および付加誘電体の形状構成を示す平面図である。
【図3】図1に示す各要素を組み合わせた状態を示す平面図である。
【図4】本発明に係る結合回路のリターンロス特性を例示したグラフである。
【図5】(a)および(b)は、それぞれ本発明に係る結合回路における右側出力端子および左側出力端子での通過損失特性を例示したグラフである。
【図6】本発明に係る結合回路の位相変化特性と比較例に係る結合回路の位相変化特性とを例示したグラフである。
【図7】回転結合導体に電力分配調整スタブを設けた本発明に係る結合回路の実施形態を示す分解斜視図である。
【図8】電力分配調整スタブの形状構成を示す平面図である。
【図9】複数の出力側マイクロストリップ線路を備えた本発明に係る結合回路の実施形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
10 誘電体基板
11 入力側線路導体
12 出力側線路導体
13 接地導体
14 入力側マイクロストリップ線路
14a 入力端子
14b 円形結合部
15 出力側マイクロストリップ線路
15a 円弧状結合部
15b、15c、15b'、15c' 出力端子
20 誘電体基板
21、210 回転結合導体
21a、210a 円形結合部
21b、21b'、210b 線路状結合部
21c、21c'、210c 幅広部
22、22' 負荷インピーダンス回路
30、300 付加誘電体
31,310 切欠き部
40 支軸
210d スタブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の誘電体基板に形成され、一端に入力端子を有する入力側マイクロストリップ線路と、
前記第1の誘電体基板に形成され、第1の出力端子、第2の出力端子およびこれらの出力端子間に介在する円弧状結合部を有する出力側マイクロストリップ線路と、
第2の誘電体基板に形成され、前記円弧状結合部の曲率中心を通る支軸によって枢支された回転結合導体と、
前記第2の誘電体基板に付加され、該第2の誘電体基板と共に前記支軸を中心として回転する付加誘電体と、を備え、
前記回転結合導体は、前記枢支部位において前記入力側マイクロストリップ線路の他端部と結合する第1の結合部を有するとともに、前記円弧状結合部と結合する第2の結合部を有し、
前記付加誘電体は、前記第1の誘電体基板の誘電率よりも高い誘電率を有するように、かつ、前記円弧状結合部における前記第2の結合部の結合部位を除いた部位を覆うように形成され、
前記第2の結合部は、前記円弧状結合部におけるその結合部位の特性インピーダンスがその結合部位を除いた部位の特性インピーダンスと同一となるようにその大きさが設定されていることを特徴とする結合回路。
【請求項2】
前記回転結合導体は、前記第2の結合部からλg/4(λgは、前記回転結合導体上における使用周波数の波長)だけ前記第1の結合部側に寄った箇所に至る部位に4分の1波長変成器としての機能を有する負荷インピーダンス回路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の結合回路。
【請求項3】
前記付加誘電体は、切欠き部を有し、該切欠き部を前記第2の誘電体基板に嵌合させることによって前記軸を中心として回転可能な円板状の回転体を構成するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の結合回路。
【請求項4】
前記回転結合導体の第2の結合部は、該回転結合導体の長手方向中心軸線から前記出力側マイクロストリップ線路の第1の出力端子側に寄った部位もしくは第2の出力端子側に寄った部位に電力分配調整スタブを備えることを特徴とする請求項1に記載の結合回路。
【請求項5】
前記電力分配調整スタブは、前記回転結合導体の長手方向中心軸線からλg/4(λgは前記回転結合導体上における使用周波数の波長)以下の距離をおいて設けられることを特徴とする請求項4に記載の結合回路。
【請求項6】
前記回転結合導体の第1、第2の結合部は、それぞれ電気絶縁性の膜を介して結合させたことを特徴とする請求項1に記載の結合回路。
【請求項7】
第1の誘電体基板に形成され、一端に入力端子を有する入力側マイクロストリップ線路と、
前記第1の誘電体基板に形成され、それぞれが第1の出力端子、第2の出力端子および該各出力端子間に介在する円弧状結合部を有し、それぞれの前記円弧状結合部が異径かつ同心で互いに並行している複数の出力側マイクロストリップ線路と、
第2の誘電体基板に形成され、前記各円弧状結合部の同心位置を通る支軸によって枢支された回転結合導体と、
前記第2の誘電体基板に付加され、該第2の誘電体基板と共に前記支軸を中心として回転する付加誘電体と、を備え、
前記回転結合導体は、前記枢支部位において前記入力側マイクロストリップ線路の他端部と結合する第1の結合部を有するとともに、前記各円弧状結合部とそれぞれ結合する複数の第2の結合部を有し、
前記付加誘電体は、前記第1の誘電体基板の誘電率よりも高い誘電率を有するように、かつ、前記各円弧状結合部における前記各第2の結合部の結合部位を除く部位を覆うように形成され、
前記各第2の結合部は、対応する前記円弧状結合部におけるその結合部位の特性インピーダンスがその結合部位を除いた部位の特性インピーダンスと同一となるようにその大きさが設定されていることを特徴とする結合回路。
【請求項8】
前記回転結合導体は、前記各第2の結合部からλg/4(λgは、前記回転結合導体上における使用周波数の波長)だけ前記第1の結合部側に寄った箇所に至る複数の部位にそれぞれ4分の1波長変成器としての機能を有する負荷インピーダンス回路が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の結合回路。
【請求項9】
前記付加誘電体は、切欠き部を有し、該切欠き部を前記第2の誘電体基板に嵌合させることによって前記軸を中心として回転可能な円板状の回転体を構成するように形成されていることを特徴とする請求項7に記載の結合回路。
【請求項10】
前記回転結合導体の各第2の結合部は、該回転結合導体の長手方向中心軸線から対応する前記出力側マイクロストリップ線路の第1の出力端子側に寄った部位もしくは第2の出力端子側に寄った部位にそれぞれ電力分配調整スタブを備えることを特徴とする請求項7に記載の結合回路。
【請求項11】
前記各電力分配調整スタブは、前記回転結合導体の長手方向中心軸線からλg/4(λgは前記回転結合導体上における使用周波数の波長)以下の距離をおいて設けられることを特徴とする請求項11に記載の結合回路。
【請求項12】
前記回転結合導体の第1の結合部および各第2の結合部は、それぞれ電気絶縁性の膜を介して結合させたことを特徴とする請求項1に記載の結合回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−74710(P2010−74710A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242184(P2008−242184)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000217653)電気興業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】