説明

結晶性シュウ酸デカルボキシラーゼおよび使用方法

シュウ酸デカルボキシラーゼの架橋結晶などの安定化結晶を含むシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶が開示される。また、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を使用して高シュウ酸濃度に関連する障害を治療する方法が開示される。さらに、タンパク質結晶を生成する方法が開示される。一実施形態では、結晶性シュウ酸デカルボキシラーゼは、哺乳動物に、例えば経口でもしくは胃に直接的に投与して、シュウ酸塩レベルを低減し、かつ/または哺乳動物のシュウ酸カルシウム沈着によって生じる損害を低減することができる。さらに、細胞抽出物からタンパク質結晶を生成する方法が開示される。シュウ酸デカルボキシラーゼ(「OXDC」)およびその架橋形態(「CLEC」)の結晶を含む組成物、例えば医薬組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
シュウ酸は、式HOC−COHのジカルボン酸である。シュウ酸は、主にシュウ酸の塩の形態であるシュウ酸塩として生物有機体中に存在する。シュウ酸塩は、ホウレンソウ、ダイオウ、イチゴ、クランベリー、ナッツ、ココア、チョコレート、ピーナツバター、モロコシ、および茶などの食物に見られる。シュウ酸塩は、ヒトおよび他の哺乳動物の最終的代謝産物でもある。シュウ酸塩は、腎臓によって尿に排出される。カルシウムと組み合わさると、シュウ酸は不溶性生成物であるシュウ酸カルシウムを生成するが、これは腎臓結石に最も一般に見られる化合物である。
【0002】
哺乳動物は、シュウ酸塩を分解する酵素を合成しないため、個体中のシュウ酸塩レベルは、排出および食餌性シュウ酸塩の吸収を低減することによって正常に抑制される。シュウ酸塩の高濃度は、原発性高シュウ酸尿症、腸管性高シュウ酸尿症、および特発性高シュウ酸尿症などの様々な病理に関連している。Leumannら、Nephrol. Dial. Transplant.14巻:2556〜2558頁(1999年)およびEarnest、Adv. Internal Medicine24巻:407〜427頁(1979年)。シュウ酸塩の増大は、食物からのシュウ酸塩の過消費、腸管からのシュウ酸塩の過剰吸収、およびシュウ酸塩生成異常によって引き起こされ得る。胆汁酸および脂肪吸収不全の疾患;回腸切除;ならびに、例えばセリアック病、膵外分泌機能不全、腸疾患、および肝疾患による脂肪便によって引き起こされる過剰吸収を含む、結腸および小腸のシュウ酸塩の過剰吸収が、腸疾患に関連し得る。
【0003】
高シュウ酸尿症、または尿中シュウ酸塩排出の増大は、腎組織(腎石灰沈着症)または尿路(例えば、腎臓結石、尿結石、および腎結石)へのシュウ酸カルシウムの沈着に関係する幾つかの健康問題に関連している。シュウ酸カルシウムは、例えば、目、血管、関節、骨、筋肉、心臓、および他の主な器官に沈着し、それらに損害を与える恐れもある。例えば、非特許文献1および非特許文献2参照。シュウ酸塩レベルの増大作用は、様々な組織に現れ得る。例えば、小血管への沈着は、疼痛を伴う非治癒性の皮膚潰瘍を生じ、骨髄への沈着は貧血を生じ、骨組織への沈着は骨折を生じ、子どもの成長に影響を与え、心臓へのシュウ酸カルシウム沈着は、心拍異常または心機能低下を生じる。
【0004】
高シュウ酸塩レベルを治療する既存の方法は、必ずしも効果的とは限らず、原発性高シュウ酸尿症の多くの患者に集中的な透析および臓器移植が必要とされ得る。様々な高シュウ酸尿症に対する既存療法には、高用量ピリドキシン、オルトリン酸塩、マグネシウム、鉄、アルミニウム、クエン酸カリウム、コレスチラミン、およびグリコサミノグリカン治療、ならびに食事および水分摂取の調節のため、透析のため、ならびに腎移植および肝移植などの外科的介入のためのレジメンが含まれる。これらの療法(例えば、低シュウ酸塩または低脂肪食、ピリドキシン、適切なカルシウム、および水分増大)は、部分的にのみ有効であり、オルトリン酸塩、マグネシウム、またはコレスチラミン補充の胃腸作用ならびに透析および手術のリスクなどの望ましくない副作用を有する恐れがある。したがって、身体から安全にシュウ酸塩を除去する方法が必要とされる。さらに、シュウ酸塩を分解して生体サンプル中のシュウ酸塩レベルを低減する方法は、例えば、シュウ酸塩の吸収またはクリアランス増大を阻害するだけの療法よりも有利である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Leumannら、J. Am. Soc. Nephrol.12巻:1986 1993頁(2001年)
【非特許文献2】Monicoら、Kidney International62巻:392 400頁(2002年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シュウ酸デカルボキシラーゼ(「OXDC」)およびその架橋形態(「CLEC」)の結晶、ならびにシュウ酸塩関連障害、例えば高シュウ酸尿症を治療するためのそれらの使用に関する。一実施形態では、結晶性シュウ酸デカルボキシラーゼは、哺乳動物に、例えば経口でもしくは胃に直接的に投与して、シュウ酸塩レベルを低減し、かつ/または哺乳動物のシュウ酸カルシウム沈着によって生じる損害を低減することができる。さらに、細胞抽出物からタンパク質結晶を生成する方法が開示される。シュウ酸デカルボキシラーゼ(「OXDC」)およびその架橋形態(「CLEC」)の結晶を含む組成物、例えば医薬組成物も開示される。
【0007】
一態様では、本発明は、架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を提供する。架橋剤は、多官能性であってよく、幾つかの実施形態では、その薬剤は、グルタルアルデヒドなどの二官能性薬剤である。幾つかの実施形態では、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は酵素活性を著しく変えない濃度、例えば少なくとも約0.02%(w/v)の濃度のグルタルアルデヒドで架橋される。諸実施形態では、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶の架橋レベルは、0.02%(w/v)グルタルアルデヒドでの処理によってもたらされるレベルに等しい。架橋レベルは、当技術分野で知られている方法、または本明細書に開示の方法、例えば実施例10〜11に開示の、例えばタンパク質浸出レベルの決定によって決定することができる。
【0008】
本発明はさらに、シュウ酸脱炭酸結晶、例えば可溶性シュウ酸脱炭酸物と比較して、例えば少なくとも約100%、200%、300%、400%、または500%高い活性を有するシュウ酸脱炭酸結晶を提供する。
【0009】
本発明はさらに、酸性条件下で、類似の酸性条件下(例えば約2〜3の酸性pH)の可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼが保持する活性および/または安定性の少なくとも2−、3−倍高い活性および/または安定性を保持する安定化した、例えば架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を提供する。諸実施形態では、安定化シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、酸性条件下で、可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼの少なくとも200%、300%、400%より活性かつ/または安定である。
【0010】
本発明はさらに、プロテアーゼの存在下で、類似の条件下の可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼが保持する活性および/または安定性の少なくとも2−、3−倍高い活性および/または安定性を保持する、安定化した、例えば架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を提供する。諸実施形態では、安定化シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、プロテアーゼの存在下で、可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼの少なくとも200%、300%、400%、より活性かつ/または安定である。プロテアーゼは、例えば、ペプシン、キモトリプシン、またはパンクレアチンの1つまたは複数から選択することができる。諸実施形態では、安定化結晶もしくは可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼを、所定期間、例えば少なくとも1、2、3、4、または5時間(例えば、本明細書の実施例に記載のように)、酸性条件および/またはプロテアーゼに曝露した後、安定化または可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼの活性を測定する。
【0011】
関連の一態様では、本発明は、可変pH条件下(例えば、約pH2.5または3〜7.5または8.5)、および/または例えば、ペプシン、キモトリプシン、もしくはパンクレアチンの1つまたは複数から選択することができる、例えばプロテアーゼの存在下で実質的に活性であり安定な架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を特徴とする。諸実施形態では、架橋した結晶は、本明細書に記載のように、酸性条件下(例えば約2〜3の酸性pH)およびプロテアーゼの存在下で、可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼが保持する活性の少なくとも2−、3−倍高い活性を保持する。他の実施形態では、安定化シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、本明細書に記載のように、酸性条件下(例えば約2〜3の酸性pH)およびプロテアーゼの存在下で、可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼよりも少なくとも200%、300%、400%安定である。
【0012】
本明細書に記載の結晶および/または架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を含む組成物、例えば医薬組成物も本発明の範囲に含まれる。
【0013】
幾つかの実施形態では、結晶は、特に枯草菌(Bacillus subtilis)、エノキタケ(Collybia velutipes)またはエノキタケ(Flammulina velutipes)、コウジカビ(Aspergillus niger)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、シアノバクテリア属(Synechocystis sp.)、ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)、トラメテスヒルステ(Trametes hirsute)、菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、カワラタケ(T.versicolor)、ポスティアプラセンタ(Postia placenta)、ミロテシウムベルカリア(Myrothecium verrucaria)、ツクリタケ(Agaricus bisporus)、メチロバクテリウムエクストルクエンス(Methylobacterium extorquens)、シュードモナスオキザラチカス(Pseudomonas oxalaticus)、ラルストニアユートロファ(Ralstonia eutropha)、カプリアビダスオキザラチカス(Cupriavidus oxalaticus)、ウォルテシア属(Wautersia sp.)、オキザリシバクテリウムフラバム(Oxalicibacterium flavum)、アンモニフィルスオキザラチカス(Ammoniiphilus oxalaticus)、ビブリオオキザラチカス(Vibrio oxalaticus)、A.オキサラチボランス(A.oxalativorans)、バリオボラックスパラドキサス(Variovorax paradoxus)、キサントバクターオートトロフィカス(Xanthobacter autotrophicus)、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、ペニシリウム属(Penicillium sp.)、およびムコール属(Mucor species.)からの植物、バクテリア、および菌などの天然源に見られるシュウ酸デカルボキシラーゼ配列と同じまたは実質的に同じ配列を有するシュウ酸デカルボキシラーゼを含む。他の実施形態では、シュウ酸デカルボキシラーゼは、組み換えによって産生される。
【0014】
一態様では、本発明は、本明細書に開示のシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶、例えば架橋したシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を含む組成物、例えば医薬組成物を投与することによって、対象のシュウ酸濃度を低減する方法を提供する。一実施形態では、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、グルタルアルデヒドなどの架橋剤によって安定化する。組成物の投与によって、シュウ酸濃度を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%以上低減することができる。幾つかの実施形態では、組成物は、経口によって、または体外装置によって投与される。一実施形態では、体外装置は、カテーテル、例えばシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶でコーティングしたカテーテルである。他の実施形態では、組成物は、懸濁剤、乾燥粉剤、カプセル剤、または錠剤として投与される。一実施形態では、哺乳動物のシュウ酸濃度を低減する方法は、尿、血液、血漿、または血清サンプルなどの哺乳動物の生体サンプルのシュウ酸濃度をアッセイするステップを含む。
【0015】
他の態様では、本発明は、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶および/または安定化した、例えば架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を哺乳動物に投与することによって、哺乳動物の高シュウ酸濃度に関連する障害を治療し、予防し、かつ/またはその進行を遅延する方法を提供する。一実施形態では、高シュウ酸濃度に関連する該障害は、腎疾患、関節疾患、眼疾患、肝疾患、胃腸障害、または膵臓障害である。幾つかの実施形態では、障害は、原発性高シュウ酸尿症、腸管性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール中毒、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、尿結石、腎結石、慢性腎疾患、血液透析、および胃腸バイパスである。
【0016】
他の態様では、本発明は、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶、例えば架橋したシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(例えば、本明細書に開示の結晶および/または架橋した結晶)を含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶、例えば架橋したシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(例えば、本明細書に開示の結晶および/または架橋した結晶)を含む、有効量の医薬組成物を投与することによって、哺乳動物を治療する方法を提供する。
【0018】
他の態様では、本発明は、タンパク質結晶、例えば酵素結晶(例えば、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶)を生成する方法を提供し、該方法は、タンパク質を含有する細胞抽出物またはペレット/沈殿物/溶液の調製物を提供するステップ、およびその調製物からタンパク質を結晶化するステップを含む。諸実施形態では、該方法は、タンパク質を発現する原核生物の宿主細胞培養を培養するステップ、所望のタンパク質を含有するペレットもしくは抽出物の調製物を得るステップ、ペレットの調製物を可溶化するステップ、タンパク質結晶を形成するステップ、および/または架橋によって結晶をさらに安定化するステップの1つまたは複数を含む。一般に、タンパク質は組み換えによって発現する。諸実施形態では、ペレット調製物は封入体を含む。
【0019】
諸実施形態では、可溶化ステップは、低い変性濃度(例えば約1M〜約3Mの濃度の、例えば尿素または塩酸グアニジン)を含む溶液;例えば約0.3〜約0.8Mの濃度の塩濃度の、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、または他の塩の1つまたは複数から選択される高い塩濃度を含む溶液;塩基条件下、例えば約9〜約12のpHで低い変性濃度を含む溶液;あるいは高い変性濃度、例えば約4M〜約8Mの尿素または塩酸グアニジンを含む溶液の1つまたは複数をペレットの調製物に添加するステップを含む。
【0020】
諸実施形態では、精製ステップは、例えば1つもしくは複数のスピンもしくは遠心分離ステップによってペレットの可溶化調製物を例えば分離し、かつ/または上清を収集することによって、ペレットから残屑を除去するステップを含む。精製ステップは、任意選択で、ペレットの可溶化調製物をイオン交換クロマトグラフィーに通すステップ、および/または可溶化調製物を濾過するステップをさらに含むことができる。
【0021】
諸実施形態では、結晶化ステップは、精製タンパク質を濃縮し、それによって結晶化タンパク質を形成するステップを含む。諸実施形態では、結晶化タンパク質は、分離ステップ後、例えば1つまたは複数のスピンまたは遠心分離ステップ後に収集された上清から得られる。結晶化ステップはさらに、結晶化タンパク質を架橋剤と、例えば本明細書に開示の架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド)と接触させるステップを含むことができる。使用される架橋剤の濃度は、0.01%〜20%w/v、典型的には0.02%〜10%w/vの範囲、より典型的には0.02%、0.5%、または1%w/vであり得る。
【0022】
諸実施形態では、ペレット調製物中のタンパク質の収率は、ペレット調製物が得られる細胞調製物に見られる特定のタンパク質の少なくとも約50%、60%、70%、80%である。他の実施形態では、可溶化タンパク質の収率は、ペレット調製物に見られるものの少なくとも約90%、95%、またはそれ以上である。さらに別の実施形態では、結晶化タンパク質の収率は、ペレット調製物に見られるものの少なくとも約50%、60%、70%、80%である。
【0023】
本発明はさらに、タンパク質結晶、例えば本明細書に開示の方法によって生成される酵素結晶(例えば、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶)を提供する。
【0024】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、添付の図および以下の説明に示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼ(「可溶性」)、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「結晶」)、および架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「CLEC」)のpH活性プロファイルを示すグラフである。
【図2】OXDC−CLECの投与後のSprague Dawleyラットの尿中シュウ酸塩レベルを示す棒グラフである。各棒は、平均±SE(標準誤差)を表す。アスタリスクは、スチューデント両側t検定を使用した時点のp<0.05における対照群と3つの処理群の間の有意な差異を示す。
【図3】エチレングリコール−チャレンジしたAGT1ノックアウト(KO)マウスの尿中シュウ酸塩レベルの減少に対するOXDC−CLECの作用を示す棒グラフである。各棒は平均±SEを表す。アスタリスクは、スチューデント両側t検定を使用して算出した時点のp<0.05における対照群と3つの処理群の間の有意な差異を示す。
【図4】エチレングリコール−チャレンジしたAGT1KOマウスのクレアチニンクリアランスに対するOXDC−CLECの作用を示す棒グラフである。各棒は平均±SEを表す。アスタリスクは、スチューデント両側t検定によるp<0.05における対照群と80mg処理群の間の有意な差異を示す。
【図5】OXDC−CLECでの処理後の、腎実質へのシュウ酸カルシウム沈着の防止を示す画像である。図5Aは、80mgのOXDC−CLECで処理したEGチャレンジマウスからの腎実質片である。図5Bおよび5Cは、対照群からの腎実質片である。図5Bの片部は中程度の腎石灰沈着症を示し、図5Cの片部は重篤な腎石灰沈着症を示す。暗色の斑点はシュウ酸カルシウム沈着(白色矢印で示される例)であり、明色の斑点は間質性線維症(灰色矢印で示される例)の領域である。
【図6】3つの異なる用量のOXDC−CLECまたはビヒクル対照で処理したEG−チャレンジマウスの生存時間を比較する、カプラン−マイヤー生存プロットである。
【図7】低pHにおける示された時間間隔での可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼ(「Sol」)、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「XTAL」)、および架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「CLEC」)の安定性を示すグラフである。
【図8】ペプシンの存在下、pH3.0における示された時間間隔での可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼ(「Sol」)、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「XTAL」)、および架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「CLEC」)の安定性を示すグラフである。
【図9】キモトリプシンの存在下、pH7.5における示された間隔での可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼ(「Sol」)、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「XTAL」)、および架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「CLEC」)の安定性を示すグラフである。
【図10】刺激を与えた腸液とパンクレアチンの存在下、pH6.8における示された間隔での可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼ(「Sol」)、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「XTAL」)、および架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(「CLEC」)の安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、シュウ酸デカルボキシラーゼ(OXDC)の結晶の投与によって、哺乳動物の高シュウ酸尿症の症候を低減できるという発見に部分的に基づいている。OXDC結晶を投与して、様々なシュウ酸塩関連障害を治療する方法が、本明細書に記載される。さらに、OXDC結晶および架橋した結晶(CLEC)と、それらを含む組成物およびその使用が提供される。さらに、原核生物の宿主細胞の細胞抽出物から、多量のタンパク質結晶を生成する方法が開示される。
【0027】
定義
本発明をより容易に理解できるように、幾つかの用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明を通して示される。
【0028】
本明細書で使用されるように、「生体サンプル」は、例えば検体を検出するために、細胞、組織、器官、または有機体から収集される生物材料である。例示的生体サンプルには、体液、細胞、または組織サンプルが含まれる。生体液には、例えば血清、血液、血漿、唾液、尿、または汗が含まれる。細胞または組織サンプルには、生検、組織、細胞懸濁液、または臨床サンプルなどの他の標本およびサンプルが含まれる。
【0029】
「結晶」は、三次元で周期的に反復するパターンに配列された原子を含む、物質の固体状態の1つの形態である(例えば、Barret、Structure of Metals、第2版、McGraw−Hill、New York(1952年)参照)。ポリペプチドの結晶形態は、例えば第2の形態−非晶質固体状態とは異なっている。結晶は、形状、格子構造、溶媒パーセント、および例えば屈折率などの光学特性を含む特徴的な特性を示す。
【0030】
「体外装置」は、個体の治療において体液をOXDC結晶と接触させるための、身体内部には無い構造である。体外装置は、好ましくは腎臓透析を含む透析に使用される装置、持続的動静脈血液濾過のための装置、膜型人工肺、または血流から老廃物を濾過するために使用される他の装置である。同様に、例えば管、多孔質材料、または膜を含む、老廃物を濾過するための装置の部品も該用語に包含される。特に、体外装置は透析装置であってよい。また体外装置は、透析装置の膜であってもよい。
【0031】
OXDCの「機能性フラグメント」は、シュウ酸塩の脱炭酸の触媒能などのOXDCの1つまたは複数の生物活性を保持するOXDCポリペプチドの一部分である。本明細書で使用されるように、機能性フラグメントは、別段の指定が無い限り1つまたは両方の末端からの末端切断部を含むことができる。例えば、機能性フラグメントは、OXDCポリペプチドのアミノおよび/またはカルボキシル末端から切断された1、2、4、5、6、8、10、12、15、または20もしくはそれ以上の残基を有することができる。切断部は、好ましくは1つまたは両方の末端からの20個以下のアミノ酸である。機能性フラグメントは、任意選択で1つまたは複数の異種配列に結合することができる。
【0032】
「個体」または「対象」という用語は、それに限定されるものではないが、ヒト、ヒトではない霊長類、霊長類、ヒヒ、チンパンジー、サル、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギ、猫、犬、馬、牛、羊、山羊、豚等を含む、任意の分類動物を含む任意の哺乳動物を指す。
【0033】
「単離された」という用語は、実質的にその元々の環境にはない分子を指す。例えば単離したタンパク質は、それが由来する細胞または組織源からの細胞材料または他のタンパク質を実質的に含まない。この用語は、単離タンパク質が治療組成物として投与されるのに十分に純粋な、または少なくとも70%〜80%(w/w)純粋、より好ましくは少なくとも80%90%(w/w)純粋、さらにより好ましくは90〜95%純粋、最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、もしくは100%(w/w)純粋な調製物を指す。
【0034】
本明細書で使用されるように、「約」は、その用語が修飾する値の最大±10%を指す。例えば、約50mMは50mM±5mMを指し、約4%は4%±0.4%を指す。
【0035】
本明細書で使用されるように、「シュウ酸塩関連障害」は、それに限定されるものではないが、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、腸管性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール(シュウ酸塩)中毒、特発性尿路結石症、腎不全(進行性、慢性、または末期腎不全を含む)、脂肪便、吸収不良、回腸疾患、外陰部疼痛(vulvodynia)、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、膵外分泌機能不全、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎石灰沈着症、尿結石、および腎結石を含むシュウ酸またはシュウ酸塩の病理レベルに関連する疾患または障害を指す。かかる状態および障害は、場合によっては急性または慢性であり得る。腎臓、骨、肝臓、胃腸管、および膵臓に関連するシュウ酸塩関連障害は、当技術分野で知られている。さらに、シュウ酸カルシウムは、それに限定されるものではないが、目、血管、関節、骨、筋肉、心臓、および他の主な器官を含む多様な組織に沈着して、幾つかのシュウ酸塩関連障害をもたらす恐れがあることが周知である。
【0036】
「シュウ酸」は主に、尿および腸液のpH(pKa1=1.23、pKa2=4.19)で、その塩の形態であるシュウ酸塩として(対応する共役塩基の塩として)存在する。Earnest、Adv. Internal Medicine24巻:407 427頁(1979年)。「シュウ酸」および「シュウ酸塩」という用語は、本開示を通して同義に使用される。リチウム、ナトリウム、カリウム、および鉄(II)を含むシュウ酸塩は可溶性であるが、シュウ酸カルシウムは、一般に、非常に水に溶けにくい(例えば、18℃で約0.58mg/100mlしか溶解しない。Earnest、Adv. Internal Medicine24巻:407 427頁(1979年))。食物からのシュウ酸は、食餌性シュウ酸塩とも呼ばれる。代謝過程によって生成されるシュウ酸塩は、内因性シュウ酸塩と呼ばれる。循環シュウ酸塩は、血液などの循環体液中に存在するシュウ酸塩である。
【0037】
「治療有効用量」または「治療有効量」という用語は、原発性高シュウ酸尿症または腸管性高シュウ酸尿症などの高シュウ酸尿症を含む、シュウ酸塩関連状態を防止し、その症候の発症を遅延し、またはその症候を緩和する化合物の量を指す。治療有効量は、例えば、高シュウ酸濃度に関連する障害の1つまたは複数の症候を治療し、防止し、その重篤度を低減し、発症を遅延し、かつ/またはその発症リスクを低減するのに十分な量となろう。有効量は、当技術分野で周知でありこの説明の後の部分で記載される方法によって決定することができる。
【0038】
「治療」、「治療法」という用語、およびそれらの同語源語は、既存の障害の治療および/または予防/防止手段を指す。治療を必要とするものには、特定の医学的障害を既に有する個体、ならびにその障害の危険性がある、または有している個体、あるいは最終的にその障害に罹患する恐れがある個体が含まれ得る。治療の必要性は、例えば、障害の発症、障害の存在または進行に関連する1つまたは複数の危険因子の存在、あるいは障害を有する対象の治療に受容される可能性が高いことによって評価される。治療には、障害の進行の遅延または後退が含まれ得る。
【0039】
シュウ酸デカルボキシラーゼ。本明細書で使用されるように、シュウ酸デカルボキシラーゼ(OXDC)(EC4.1.1.2)は、シュウ酸塩カルボキシ−リアーゼ酵素を指す。シュウ酸デカルボキシラーゼは、以下の反応に従って、二酸化炭素およびギ酸塩へのシュウ酸塩の酸素分子(O)独立酸化を触媒できることが当技術分野で知られている酵素群である。
HOC−COH→1CO+HCOOH
シュウ酸デカルボキシラーゼのイソ型、およびそれらのイソ型の糖型が、この定義に含まれる。枯草菌、エノキタケまたはエノキタケ、コウジカビ、シュードモナス属、シアノバクテリア属、ストレプトコッカスミュータンス、トラメテスヒルステ、菌核病菌、カワラタケ、ポスティアプラセンタ、ミロテシウムベルカリア、ツクリタケ、メチロバクテリウムエクストルクエンス、シュードモナスオキザラチカス、ラルストニアユートロファ、カプリアビダスオキザラチカス、ウォルテシア属、オキザリシバクテリウムフラバム、アンモニフィルスオキザラチカス、ビブリオオキザラチカス、A.オキサラチボランス、バリオボラックスパラドキサス、キサントバクターオートトロフィカス、アスペルギルス属、ペニシリウム属、およびムコール属などのバクテリアおよび菌からの真性シュウ酸デカルボキシラーゼを含む、植物、バクテリア、および菌からのOXDCが、その用語に包含される。任意選択で、OXDCはさらに、腸管内有機体からのOXDCなどの補酵素Aに依存することになろう。特定の状況では、OXDCは可溶性の六量体タンパク質である。
【0040】
シュウ酸デカルボキシラーゼは、より高等な植物、バクテリア、および菌によって生成され、シュウ酸塩カルボキシ−リアーゼ酵素活性を有する。シュウ酸デカルボキシラーゼには、枯草菌、エノキタケまたはエノキタケ、コウジカビ、シュードモナス属、シアノバクテリア属、ストレプトコッカスミュータンス、トラメテスヒルステ、菌核病菌、カワラタケ、ポスティアプラセンタ、ミロテシウムベルカリア、ツクリタケ、メチロバクテリウムエクストルクエンス、シュードモナスオキザラチカス、ラルストニアユートロファ、カプリアビダスオキザラチカス、ウォルテシア属、オキザリシバクテリウムフラバム、アンモニフィルスオキザラチカス、ビブリオオキザラチカス、A.オキサラチボランス、バリオボラックスパラドキサス、キサントバクターオートトロフィカス、アスペルギルス属、ペニシリウム属、およびムコール属によって生成される、一般にcupin型OXDCとして同定されるものが含まれる。cupin−様タンパク質は、特定の構造特性を共有する、大きな種類のタンパク質である。モリノカバレタケ属(Collybia sp.)からのG−OXDCなどのOXDCは、例えば六量体糖タンパク質として活性である。
【0041】
結晶を調製するために使用され、本明細書に記載の方法で使用されるシュウ酸デカルボキシラーゼは、例えば、天然源から単離することができ、または天然源由来のものであってよい。本明細書で使用されるように、「由来する」という用語は、供給源に天然に生じるアミノ酸または核酸配列を有することを意味する。例えば、枯草菌に由来するシュウ酸デカルボキシラーゼは、枯草菌シュウ酸デカルボキシラーゼタンパク質の一次配列を含み、またはシュウ酸デカルボキシラーゼもしくはその変性物をコードする枯草菌に見られる配列を含む核酸によってコードされよう。ある供給源由来のタンパク質または核酸は、供給源から単離され、組み換えによって産生され、かつ/または化学的に合成もしくは改変される分子を包含する。本明細書で提供される結晶は、シュウ酸塩分解活性を保持するOXDCのアミノ酸配列またはOXDCの機能性フラグメントを含むポリペプチドから形成することができる。好ましくは、OXDCは、天然に生じるOXDCの少なくとも1つの機能特性を保持しており、例えば、シュウ酸塩分解の触媒能、多量体化能、および/またはマンガン必要量の1つまたは複数を保持している。
【0042】
単離したシュウ酸デカルボキシラーゼ。シュウ酸デカルボキシラーゼは既に単離されており、したがって枯草菌、エノキタケまたはエノキタケ、コウジカビ、シュードモナス属、シアノバクテリア属、ストレプトコッカスミュータンス、トラメテスヒルステ、菌核病菌、カワラタケ、ポスティアプラセンタ、ミロテシウムベルカリア、ツクリタケ、メチロバクテリウムエクストルクエンス、シュードモナスオキザラチカス、ラルストニアユートロファ、カプリアビダスオキザラチカス、ウォルテシア属、オキザリシバクテリウムフラバム、アンモニフィルスオキザラチカス、ビブリオオキザラチカス、A.オキサラチボランス、バリオボラックスパラドキサス、キサントバクターオートトロフィカス、アスペルギルス属、ペニシリウム属、およびムコール属を含む多くの供給源から利用可能である。OXDCは、例えばSigmaなどの市販の業者から購入することもできる。天然源からOXDCを単離する方法は、例えば以下の参照において既に説明されている。Tannerら、The Journal of Biological Chemistry.47巻:43627〜43634頁(2001年);Dashek、W.V.およびMicales、J.A.、Methods in plant biochemistry and molecular biology. Boca Raton、FL: CRC Press.5巻:49〜71頁(1997年);Magroら、FEMS Microbiology Letters.49巻:49〜52頁(1988年);Anandら、Biochemistry.41巻:7659〜7669頁(2002年);ならびにTanner and Bornemann、S. Journal of Bacteriology.182巻:5271〜5273頁(2000年)。これらの単離されたシュウ酸デカルボキシラーゼを使用して、本明細書に記載の結晶および方法を形成することができる。
【0043】
組み換え型シュウ酸デカルボキシラーゼ。あるいは、組み換え型OXDCを使用して、本明細書に記載の結晶および方法を形成することができる。幾つかの場合、組み換え型OXDCは、天然に生じるOXDC配列からの配列を包含し、またはそれによってコードされる。さらに、天然に生じる配列と相同であるか、または実質的に同一のアミノ酸配列を含むOXDCを本明細書に記載する。また、天然に生じるOXDCをコードする核酸と相当であるか、または実質的に同一の核酸によってコードされるOXDCが提供され、本明細書に記載のように結晶化し、かつ/または投与することができる。
【0044】
本明細書において「組み換え型」と呼ばれるポリペプチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/または制限酵素を使用するベクターへのクローニングなどの人工的組み換え法による手順によって作製されるものを含み、組み換え型DNA法によって産生されたポリペプチドである。「組み換え型」ポリペプチドは、宿主細胞などの細胞中で組み換えによって改変された発現を伴う天然に生じるポリペプチドなどの、変化した発現を有するポリペプチドでもある。
【0045】
一実施形態では、OXDCは、枯草菌またはエノキタケOXDC核酸配列と相同な核酸から組み換えによって産生され、例えば異種宿主における組み換え型の産生を増大または最適化するために改変されることがある。かかる改変された配列の一例は、配列番号1(核酸)で提供され、カンジダボイジニ(Candida boidinii)での発現のためのエノキタケOXDCのオープンリーディングフレームの核酸配列を含む。そのGC含量を低減するために改変されたOXDC配列は、α接合因子分泌シグナル配列に結合しており、遺伝子組み換えされた制限エンドヌクレアーゼ切断部位が脇に配置されている。別の実施形態では、OXDCは、配列番号2またはGenBank Accession No:Z99120で利用可能な、改変されていない枯草菌OXDC核酸配列から組み換えによって産生される。配列番号2によってコードされるアミノ酸配列は、配列番号3として提供される。
【0046】
OXDC結晶の形成に有用なOXDCポリペプチドは、OXDCポリペプチドまたはその機能性フラグメントのコード配列を含む核酸構造を含む宿主細胞などの宿主細胞に発現することができる。OXDCの発現に適した宿主細胞は、酵母、バクテリア、菌、昆虫、植物、もしくは哺乳動物細胞、または例えば、トランスジェニック植物、トランスジェニック動物、もしくは無細胞系であってよい。宿主細胞は、好ましくは必要に応じてOXDCポリペプチドに糖類付加することができ、ジスルフィド結合することができ、OXDCを分泌することができ、かつ/またはOXDCポリペプチドの多量体化を支持することができる。好ましい宿主細胞には、それに限定されるものではないが、大腸菌(E.coli)(大腸菌Origami Bおよび大腸菌BL21を含む)、ピキアパストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、枯草菌、アスペルギルス、Sf9細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、293細胞(ヒト胎児腎臓)、および他のヒト細胞が含まれる。また、トランスジェニック植物、豚、牛、山羊、馬、鶏、およびウサギを含むトランスジェニック動物が、OXDC産生に適した宿主である。
【0047】
OXDCの組み換え型の産生のために、宿主または宿主細胞は、OXDCまたはその機能性フラグメントをコードする少なくとも1つの核酸を含む、プラスミド、ベクター、ファージミド、または転写もしくは発現カセットの形態の構造を含むべきである。単一コピーもしくは複数コピーに維持されるか、または宿主細胞染色体に組み入れられる構造を含む様々な構造が利用可能である。組み換え型発現のための多数の組み換え型発現系、成分、および試薬が、例えばInvitrogen Corporation(カリフォルニア州カールスバッド);U.S.Biological(マサチューセッツ州スワンプスコット);BD Biosciences Pharmingen(カリフォルニア州サンディエゴ);Novagen(ウィスコンシン州マディソン);Stratagene(カリフォルニア州ラホーヤ);およびDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)、(ドイツ、Braunschweig)から市販で入手可能である。
【0048】
OXDCの組み換え型発現は、構造性および/または誘導性プロモーターを含む異種プロモーターによって任意選択で制御される。例えば、T7、アルコールオキシダーゼ(AOX)プロモーター、ジヒドロキシ−アセトン合成(DAS)プロモーター、Gal1,10プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、銅メタロチオネイン(CUP1)プロモーター、酸性ホスファターゼプロモーター、CMVおよびプロモーターポリヘドリンなどのプロモーターも適している。特定のプロモーターは、宿主または宿主細胞をベースに選択される。さらに、メタノール、硫酸銅、ガラクトースによって、低リン酸塩によって、アルコール、例えばエタノールによって例えば誘導されるプロモーターを使用することもでき、それらは当技術分野で周知である。
【0049】
OXDCをコードする核酸は、任意選択で異種配列を含むことができる。例えば幾つかの実施形態では、OXDCポリペプチドのN−末端で分泌配列が含まれる。α接合因子、BGL2、酵母酸性ホスファターゼ(PHO)、キシラナーゼ、αアミラーゼからのもの、他の酵母によって分泌されたタンパク質からのもの、および宿主細胞から直接分泌することができる他の種に由来する分泌シグナルペプチドなどのシグナル配列が有用となり得る。同様に、リンカー(例えば、切断部位または制限エンドヌクレアーゼ部位を含む)ならびに1つまたは複数の発現制御因子、エンハンサー、終止剤、リーダー配列、および1つまたは複数の転写シグナルなどの他の異種配列が、本説明の範囲に含まれる。これらの配列は、任意選択で構造内に含まれ、かつ/またはOXDCをコードする核酸に結合することができる。別段の指定が無い限り、「結合」配列は、互いに直接または間接的に関連することができる。
【0050】
同様に、ヒスチジン、HA(血球凝集素ペプチド)、マルトース結合タンパク質、AviTag(登録商標)、FLAG、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどのエピトープまたはアフィニティー標識は、任意選択でOXDCポリペプチドに結合することができる。標識は、産生または精製された後にOXDCから任意選択で開裂することができる。当業者は、適切な異種配列、例えばマッチ(match)宿主細胞、構造、プロモーター、および/または分泌シグナル配列を容易に選択することができる。
【0051】
OXDCホモログまたは変異体は、1つまたは複数の残基によって、OXDC参照配列とは異なっている。構造的に類似のアミノ酸は、例えば特定のアミノ酸の幾つかを代替することができる。構造的に類似のアミノ酸には、(I、L、およびV);(FおよびY);(KおよびR);(QおよびN);(DおよびE);ならびに(GおよびA)が含まれる。アミノ酸の欠失、付加、または置換は、本明細書に記載のOXDCホモログにも包含される。かかるホモログおよび変異体には、(i)多形変異体および天然または人工変異体、(ii)1つまたは複数の残基が修飾されている修飾ポリペプチド、ならびに(iii)1つまたは複数の修飾残基を含む変異体が含まれる。
【0052】
OXDCポリペプチドまたは核酸は、参照配列と少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同じである場合に、「相同」(または「ホモログ」)である。ホモログが参照配列と同じでない場合、それは「変異体」である。ホモログは、そのホモログのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、1、2、3、4、5、8、10、20、または50個以下の残基だけ参照配列とは異なっており(例えば切断、欠失、置換、または付加によって)、シュウ酸塩分解の触媒能を保持する(またはそれを保持するポリペプチドをコードする)場合に、参照OXDC配列と「実質的に同一」である。変異体および/または実質的に同一の配列を含み、シュウ酸デカルボキシラーゼのフラグメントはホモログであり得る。例えばホモログは、OXDCの様々な供給源由来のものであってよく、あるいは切断、欠失、置換、または付加変異体によって参照配列に由来するまたは関連することができる。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の識別パーセントは、例えば、Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻:403 410頁(1990年)に記載のBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlemanら、J. Mol. Biol.、48巻:444 453頁(1970年)のアルゴリズム、またはMeyersら、Comput. Appl. Biosci.4巻:11 17頁(1988年)のアルゴリズムなどの標準の整列アルゴリズムによって決定することができる。かかるアルゴリズムは、BLASTN、BLASTP、および「BLAST2配列」プログラム(McGinnisおよびMadden、Nucleic Acids Res.32巻:W20〜W25頁、2004年に総説)に組み込まれる。かかるプログラムが使用される場合、デフォルトパラメータを使用することができる。例えばヌクレオチド配列に関して、「BLAST2配列」では以下の設定を使用することができる。プログラムBLASTN、マッチに対する報酬2、ミスマッチに対するペナルティ2、オープンギャップおよびエクステンションギャップペナルティがそれぞれ5および2、ギャップ×_ドロップオフ50、予測10、文字サイズ11、フィルタON。アミノ酸配列に関して、「BLAST2配列」では以下の設定を使用することができる。プログラムBLASTP、マトリックスBLOSUM62、オープンギャップおよびエクステンションギャップペナルティがそれぞれ11および1、ギャップ×_ドロップオフ50、予測10、文字サイズ3、フィルタON。本明細書に記載の結晶を形成するのに適切なOXDCに対するアミノ酸および核酸配列は、相同な、変異体、または実質的に同一の配列を含むことができる。
【0053】
シュウ酸デカルボキシラーゼの精製。シュウ酸デカルボキシラーゼタンパク質またはポリペプチドは、結晶化の前に、天然または組み換え型供給源などの供給源から精製することができる。本明細書で「単離した」と呼ぶポリペプチドは、それらの発生源(例えば、細胞、組織(即ち植物組織)、または流体もしくは媒体(分泌ポリペプチドの場合))のタンパク質、脂質、および/または核酸などのその自然環境から実質的に自由になっているポリペプチドである。単離したポリペプチドには、本明細書に記載の方法または他の適切な方法によって得られるものが含まれ、実質的に純粋または本質的に純粋であるポリペプチド、ならびに化学合成によって、組み換え型産生によって、または生物学的および化学的方法の組合せによって産生されるポリペプチドが含まれる。単離したタンパク質を、任意選択で、その産生後に精製ステップなどのさらなる処理にかけた。
【0054】
精製は、緩衝剤交換およびクロマトグラフのステップを含むことができる。任意選択で、例えば透析、クロマト分画クロマトグラフィーによる、および/または緩衝剤交換に関連する濃縮ステップを使用することができる。幾つかの場合、精製のために、Q−セファロース、DEAEセファロース、DE52、スルホプロピルセファロースクロマトグラフィーもしくはCM52、または類似のカチオン交換カラムを含むカチオンまたはアニオン交換クロマトグラフィーが使用される。任意選択で緩衝剤交換がクロマトグラフ分離に優先し、ダイアフィルトレーションなどの接線流濾過によって実施することができる。幾つかの調製では、OXDCは少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、または99.9%純粋である。
【0055】
グラム規模実施の精製がOXDCの調製に適しており、手順は、効率的で安価な製造規模のOXDC精製に合わせて最適化される。例えば、精製手順では、少なくとも0.5、1、2、5、10、20、50、100、500、または1000グラムもしくはそれ以上のOXDCの精製が提供される。例示的な一手順では、少なくとも10L、50L、100L、500L、1000L、またはそれ以上の出発サンプルの接線流濾過が提供され、緩衝剤交換および汚染タンパク質の沈殿が可能となる。OXDCの精製のために、単一のQ−セファロースカラムが任意選択で使用される。
【0056】
精製OXDCの結晶化は汚染物質を除去し、例えばOXDC調製物をさらに精製することもできる。例えば、実施例2〜6に記載のように結晶化したOXDCは、可溶性の精製OXDCと比較して、低分子量の汚染物質レベルを低減した。幾つかの態様では、0〜10KDa、1〜10KDa、0.5〜5KDa、または2〜5KDaの測定質量(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)による)を有する汚染物質が、結晶形態から選択的に排除される。例えば、約2.5、3.0、3.7、3.8、4.0、4.2、または5.0KDaの測定質量を有する汚染物質を、結晶化によって実質的に除去することができる。結晶化による精製は、例えば発酵媒体を含有する粗シュウ酸デカルボキシラーゼを使用して行うこともできる。
【0057】
シュウ酸デカルボキシラーゼの結晶化。シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、上記のように(Anandら、Biochemistry41巻:7659〜7669頁(2002年)参照)、六量体などのOXDCポリペプチドを使用して調製することができる。蒸気拡散(例えば、懸滴およびシッティングドロップ法など)、および例えば結晶化のバッチ法を使用することができる。シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、水溶液または有機溶媒を含む水溶液からタンパク質を制御結晶化することによって成長させることができる。制御される条件には、例えば溶媒の蒸発速度、適切な共溶質および緩衝剤の存在、pH、ならびに温度が含まれる。
【0058】
シュウ酸塩レベルに関連する状態または障害を治療するためなどの治療投与に関して、様々なOXDC結晶寸法が適している。幾つかの実施形態では、平均寸法約500μm未満の結晶が投与される。長さが平均、最大、または最小寸法(例えば)約0.01、0.1、1、5、10、25、50、100、200、300、400、500、または1000μmのシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶も提供される。微結晶シャワーも適している。
【0059】
諸範囲が適しており、当業者には明らかとなろう。例えば、タンパク質結晶は、約0.01μmおよび約500μmの間、あるいは0.1μmおよび約50μmの間の最長寸法を有することができる。特定の一実施形態では、最長寸法は、約0.1μm〜約10μmの範囲である。結晶はまた、球、針、棒、六角形および四角形などの板、菱形、立方体、両錐、ならびに角柱から選択される形状を有することができる。例示的実施形態では、結晶は、5μm未満の最長寸法を有する立方体である。
【0060】
一般に結晶は、結晶化するタンパク質と、塩または有機溶媒などの適切な水性溶媒または適切な結晶化剤を含有する水性溶媒とを組み合わせることによって生成される。溶媒をタンパク質と組み合わせ、任意選択で、結晶化の導入に適切でありタンパク質の活性および安定性の維持に許容可能な、実験によって決定される温度で撹拌する。溶媒は、一価または二価のカチオン、補因子またはカオトロープなどの共溶質、ならびにpH制御のための緩衝剤種を任意選択で含むことができる。結晶化を容易にするために、共溶質の必要性およびそれらの濃度が実験によって決定される。工業規模のプロセスでは、結晶化をもたらす制御沈殿は、タンパク質、沈殿剤、共溶質と、任意選択で、例えばバッチプロセスの緩衝剤の組合せによって実施することができる。透析または蒸気拡散などの実験室での代替結晶化法および条件を採用することができる(McPhersonら、Methods Enzymol.114巻:112〜20頁(1985年)およびGilliland、Crystal Growth90巻:51〜59頁(1998年))。場合によっては、架橋剤と結晶化媒体の間の不相溶性により、架橋前に緩衝剤(溶媒)を変える必要があり得る。
【0061】
実施例に記載のように、シュウ酸デカルボキシラーゼは、広いpH範囲(例えば、pH3.5〜8.0)を含む幾つかの条件下で結晶化する。記載の幾つかの実施形態では、ポリエチレングリコール(例えば、PEG200、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG2000、PEG3000、PEG8000[実施例7および8参照])などの沈殿剤または2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)などの有機共溶媒が含まれる。使用できる一般的な塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニア、酢酸亜鉛等が含まれる。
【0062】
シュウ酸デカルボキシラーゼは、結晶化ブロス中、例えば少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100mg/ml、もしくはそれ以上の濃度であってよい。結晶化反応の効率または収率は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上である。一実施形態では、シュウ酸デカルボキシラーゼの結晶は、シュウ酸デカルボキシラーゼ溶液と適切な緩衝剤を混合することにより、バッチプロセスによって成長または生成される。幾つかの実施形態では、緩衝剤は、100mMのTris−HCl緩衝剤、pH8.0、および100mMのNaClと2mMのシステイン−HClである。
【0063】
細胞または細胞抽出物からの結晶化。結晶は、細胞または粗細胞抽出物から直接調製することができる。一実施形態では、シュウ酸デカルボキシラーゼを発現するバクテリア細胞が回収される。DNaseを用いてまたはそれなしに細胞を再懸濁し、ホモジナイズする。塩溶液を細胞溶解物に添加して、約0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、またはそれ以上の塩濃度を達成する。添加される塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、または他の塩であってよい。タンパク質は、細胞残屑を除去することによって細胞混合物から任意選択で抽出することができる。一実施形態では、ホモジナイズした細胞混合物を遠心分離にかけ、上清溶液中にタンパク質を残す。結晶は、細胞混合物またはタンパク質溶液の塩濃度を低減することによって生成される。一実施形態では、塩は、タンパク質濃度を維持するための透析によって除去される。結晶収率を増大するために、溶液の塩濃度を低減する前に、タンパク質溶液を濃縮することができる。結晶は、pH約6、7、または8の溶液で生成することができる。
【0064】
結晶は、タンパク質沈殿物またはペレットから調製することができる。一実施形態では、所望のタンパク質を発現する細胞を回収し、シュウ酸デカルボキシラーゼタンパク質を沈殿物またはペレットとして収集する。シュウ酸デカルボキシラーゼタンパク質を含有するペレットまたは沈殿物は、塩溶液に可溶化する。結晶は、タンパク質溶液中の塩濃度を低減することによって形成される。結晶収率を増大するための可溶化タンパク質溶液中の塩濃度は、結晶を生成するためにそれを低減する前では、少なくとも約0.3M、0.4M、0.5M、またはそれ以上である。
【0065】
結晶は、タンパク質溶液から調製することもできる。一実施形態では、シュウ酸デカルボキシラーゼタンパク質溶液は塩溶液として濃縮され、その溶液の塩濃度を低減するときに結晶が形成する。結晶収率を増大するための塩濃度は、結晶を生成するためにそれを低減する前では、少なくとも約0.3M、0.4M、0.5M、またはそれ以上である。
【0066】
安定化結晶。シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶が適切な媒体中で成長すると、架橋などによって、任意選択でそれらを安定化することができる。架橋の結果、結晶の構成要素であるタンパク質分子間に共有結合が導入されることによって結晶格子が安定化する。これにより、結晶格子の存在またはそのままのタンパク質の存在と通常なら不相溶性であろう代替環境に、タンパク質を移すことが可能となる。シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、例えば、リシンアミン基、チオール(スルフヒドリル)基、および炭水化物部分を介して架橋することができる。架橋した結晶は、本明細書では「OXDC−CLEC」、「CLEC−OXDC」、または「CLEC」とも呼ばれる。
【0067】
架橋した結晶は、酵素安定性(例えば、pH、温度、機械的および/または化学的安定性)、OXDC活性のpHプロファイル、可溶性、結晶寸法もしくは体積の均一性、結晶からの酵素の放出速度、および/または基礎をなす結晶格子における個々の酵素分子間の細孔径および形状を変えることができる。
【0068】
有利には、本発明の架橋または安定化は、結晶が、可溶性OXDCと比較して少なくとも60%、80%、100%、150%、200%、250%、300%、またはそれ以上の活性を示すOXDCを含むように実施される。安定性は、可溶性OXDCと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、またはそれ以上増大することができる。安定性は、例えばpH安定性、温度安定性、消化管プロテアーゼに対する安定性、溶解安定性、およびインビボ生物学的安定性などの保存条件下で測定することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、架橋は、結晶中OXDCポリペプチドの溶液への溶解を遅延させ、タンパク質分子を微結晶粒子に効果的に固定化する。保存以外の使用条件下などの架橋タンパク質結晶の周囲環境において、あるトリガーに曝露される際、タンパク質分子はゆっくり溶解し、活性なOXDCポリペプチドを放出し、かつ/またはOXDC活性を増大する。溶解速度は、例えば以下の因子の1つまたは複数によって制御される。架橋度、架橋剤にタンパク質結晶を曝露する時間、タンパク質結晶に架橋剤を添加する速度、架橋剤の性質、架橋剤の鎖長、pH、温度、システイン、グルタチオンなどのスルフヒドリル試薬の存在、架橋タンパク質結晶の表面積、架橋タンパク質結晶の寸法、および架橋タンパク質結晶の形状。
【0070】
架橋は、多官能性薬剤を含む多様な架橋剤の1つまたは組合せを、同時(並行)に、または順に使用して達成することができる。周囲環境において、または所与の時間にわたってあるトリガーに曝露される際、かかる多官能性架橋剤で架橋したタンパク質結晶間の架橋は減少または減衰し、タンパク質の溶解または活性の放出に至る。あるいは架橋が連結点で切断して、タンパク質の溶解または活性の放出に至ることもある。米国特許第5,976,529号および第6,140,475号参照。
【0071】
幾つかの実施形態では、架橋剤は、少なくとも2、3、4、5、またはそれ以上の活性部分を有する多官能性架橋剤である。様々な実施形態では、該薬剤は、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、オクタンジアルデヒド、グリオキサル、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、3,3’ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ジメチル3,3’−ジチオビスプロピオンイミデートHCl、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノオクタン、エチレンジアミン、無水コハク酸、フェニルグルタル酸無水物、サリチルアルデヒド、アセトイミデート、ホルマリン、アクロレイン、コハク酸セミアルデヒド、ブチルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、グリセルアルデヒド、およびトランス−オクト−2−エナールから選択することができる。
【0072】
さらなる多官能性架橋剤には、ハロトリアジン、例えば塩化シアヌル;ハロ−ピリミジン、例えば2,4,6−トリクロロ/ブロモピリミジン;脂肪族または芳香族モノ−またはジ−カルボン酸の無水物またはハロゲン化物、例えば無水マレイン酸、塩化(メタ)アクリロイル、塩化クロロアセチル;N−メチロール化合物、例えばN−メチロールクロロ−アセトアミド;ジ−イソシアネートまたはジ−イソチオシアネート、例えばフェニレン−1,4−ジ−イソシアネート、およびアジリジンが含まれる。他の架橋剤には、例えばジ−エポキシド、トリ−エポキシド、およびテトラ−エポキシドなどのエポキシドが含まれる。一実施形態では、架橋剤は、グルタルアルデヒド、二官能性薬剤であり、グルタルアルデヒドは、単独で、またはエポキシドと順に使用される。他の架橋試薬(例えば、Pierce Chemical Companyの1996年カタログ参照)も、以下に記載のものなどの可逆性架橋剤と同時(並行)に、または順に使用することができる。
【0073】
本発明の代替の一実施形態によれば、架橋は、可逆性架橋剤を並行にまたは順に使用して実施することができる。得られる架橋タンパク質結晶は、あるトリガーが別個の群として組み込まれる反応性多官能性リンカーを特徴とする。反応性官能基は、タンパク質中の反応性アミノ酸側鎖と一緒になって結合することに関与し、そのトリガーは、周囲環境の1つまたは複数の条件(例えば、pH、還元剤の存在、温度、または熱力学的水分活性)を変えることによって切断できる結合からなる。
【0074】
架橋剤は、同種官能性または異種官能性であってよい。反応性官能基(または部分)は、例えば以下の官能基の1つから選択することができる(ただし、R、R’、R’’、およびR’’’は、アルキル、アリール、または水素基であってよい)。
【0075】
I.反応性アシル供与体、例えばカルボン酸エステルRCOOR’、アミドRCONHR’、アシルアジドRCON、カルボジイミドR−N=C=N−R’、Nヒドロキシイミドエステル、RCO−O−NR’、イミドエステルR−C=NH2(OR’)、無水物RCO−O−COR’、炭酸塩RO−CO−O−R’、ウレタンRNHCONHR’、酸ハロゲン化物RCOHal(ただし、Hal=ハロゲン)、アシルヒドラジドRCONNR’R’’、およびOアシルイソ尿素RCO−O−C=NR’(−NR’’R’’’)など。
【0076】
II.反応性カルボニル基、例えば、アルデヒドRCHOおよびケトンRCOR’、アセタールRCO(H)R’、およびケタールRR’CO2R’R”(タンパク質固定化および架橋の技術者には知られている、官能基を含有する反応性カルボニルは文献に記載されている(Pierce Catalog and Handbook、Pierce Chemical Company、Rockford、Ill.(1994年);S. S. Wong、Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1991年)))など。
【0077】
III.アルキルまたはアリール供与体、例えばアルキルまたはアリールハロゲン化物R−Hal、アジドR−N、硫酸エステルRSOR’、リン酸エステルRPO(OR’)、アルキルオキソニウム塩RO+、スルホニウムRS+、硝酸エステルRONO、マイケル受容体RCR’=CR’’’COR’’、フッ化アリールArF、イソニトリルRN+=C−、ハロアミンRN−Hal、アルケン、およびアルキンなど。
【0078】
IV.硫黄含有基、例えばジスルフィドRSSR’、スルフヒドリルRSH、およびエポキシドRC_CR’など。ならびに、
V.塩、例えばアルキルまたはアリールアンモニウム塩RN+、カルボン酸塩RCOO−、硫酸塩ROSO−、リン酸塩ROPO’’、およびアミンRNなど。
【0079】
可逆性架橋剤は、例えばトリガーを含む。トリガーには、架橋するタンパク質と反応できる活性基をもつアルキル、アリール、または他の鎖が含まれる。これらの反応基は、とりわけハロゲン化物、アルデヒド、炭酸塩、ウレタン、キサンタン、およびエポキシドを含む、求核、フリーラジカル、または求電子置換を受けやすいものなどの任意の様々な基であってよい。例えば反応基は、酸、塩基、フッ化物、酵素、還元、酸化、チオール、金属、光分解、ラジカル、または熱に対して不安定であり得る。
【0080】
可逆性架橋剤のさらなる例は、T. W. Green、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons(Eds.)(1981年)に記載されている。可逆性保護基に対して使用される任意の様々な戦略を、可逆的に制御可溶化することができる架橋タンパク質結晶の生成に適した架橋剤に組み込むことができる。様々な手法が、この目的のWaldmannの概説、Angewante Chemie Inl. Ed. Engl.、35巻:2056頁(1996年)に列挙されている。
【0081】
他の種類の可逆性架橋剤は、ジスルフィド結合含有架橋剤である。かかる架橋剤によって形成された架橋を破壊するトリガーは、架橋タンパク質結晶の環境への、システインなどの還元剤の添加である。例示的ジスルフィド架橋剤は、Pierce Catalog and Handbook(1994〜1995年)に記載されている。かかる架橋剤および方法の例は、米国特許第6,541,606号に開示されており、その関連部分は参照によって組み込まれる。
【0082】
さらに、炭水化物部分間または炭水化物部分とアミノ酸との間を架橋する架橋剤を使用することもできる。
【0083】
架橋剤の濃度は、溶液中、約0.01%〜20%、約0.02%〜10%、または約0.05%〜5%w/vであってよい。一般に、架橋剤は、約0.5%または約1%w/vである。例えば、架橋剤の濃度は、溶液中、例えば約0.01%、0.02%、0.05%、0.075%、0.1%、0.2%、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、3.5%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、または20%w/vであってよい[実施例の表2参照]。架橋の前に緩衝剤を交換する必要があり得る。CLECを含む結晶は、任意選択で凍結乾燥し、そうでなければ配合することができる。
【0084】
本明細書に記載の架橋した結晶を含む結晶は、本明細書に記載の治療法およびシュウ酸塩レベルを低減する方法に有用である。OXDC結晶は、工業プロセス(例えば、合成、処理、バイオレメディエーション、消毒、滅菌)に関連する方法、および例えばSvedruzicら、Arch. Biochem. Biophys.433巻:176〜192頁(2005年)に例えば概略のような、植物の真菌感染症などの植物の処理方法にも有用である。可溶性または非晶質OXDCのかかる非治療適用は、例えば米国特許第5,866,778号、第6,218,134号、第6,229,065号、第6,235,530号、および第6,503,507号に記載されている。本明細書に記載の結晶は、シュウ酸デカルボキシラーゼ酵素の安定性の増大など、上記の安定化OXDC結晶の1つまたは複数の特性に基づいて、これらの使用に適用することができる。
【0085】
シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶の乾燥。シュウ酸デカルボキシラーゼの結晶は、N、空気、または不活性ガスでの乾燥を含む手段による水分、有機溶媒、または液体ポリマーの除去、真空オーブン乾燥、凍結乾燥、揮発性有機溶媒での洗浄後の溶媒の蒸発、換気フード中での蒸発、箱形乾燥、流動床乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、またはローラー乾燥によって乾燥される。一般に、結晶が自由流動性粉末になるときに乾燥が実現する。乾燥は、湿潤結晶上にガス流を通過させることによって実施することができる。ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、空気、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0086】
主に乾燥結晶は、凍結乾燥によって調製することができる。しかしこの技術は、材料の急速な冷却を要し、凍結状態で安定な生成物にしか適用することができない。一実施形態では、まず、結晶性シュウ酸デカルボキシラーゼを含有する水溶液を−40℃および−50℃の間で凍結し、真空下で除去する。
【0087】
シュウ酸デカルボキシラーゼの結晶生成物またはかかる結晶を含む配合物もしくは組成物。一態様では、シュウ酸デカルボキシラーゼの結晶、またはかかる結晶を含む配合物もしくは組成物が開示される。かかる組成物は、以下の方法に従って調製することができる。
【0088】
まず、シュウ酸デカルボキシラーゼを結晶化する。次に、糖、糖アルコール、粘度増加剤、湿潤剤または可溶化剤、緩衝塩、乳化剤、抗菌剤、抗酸化剤、およびコーティング剤から選択される賦形剤または成分を、母液に直接添加する。あるいは、母液を除去した後、結晶を最小1時間〜最大24時間の間、賦形剤溶液に懸濁する。賦形剤濃度は、一般に約0.01%および約10%(w/w)の間である。成分濃度は、約0.01および約90%(w/w)である。結晶濃度は、約0.01および約99%(w/w)の間である。
【0089】
次いで、母液を濾過または遠心分離によって結晶スラリーから除去する。その後任意選択で、室温または約−20℃〜約25℃の間の温度で、約50〜100%(w/w)の、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、または酢酸エチルなどの1つまたは複数の有機溶媒の溶液で結晶を洗浄する。
【0090】
次いで、窒素、空気、または不活性ガス流をそれらの上に通過させることによって、結晶を乾燥させる。あるいは、空気乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、または真空乾燥によって結晶を乾燥させる。乾燥は、最終生成物の含水量が約10重量%未満、最も好ましくは約5重量%未満になるまで、洗浄後最少約1時間〜最大約72時間実施される。最後に、必要に応じて結晶の微粉化(寸法の縮小)を実施することができる。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、シュウ酸デカルボキシラーゼの結晶またはかかる結晶を含む配合物もしくは組成物を調製する場合、結晶化中に、界面活性剤などの増強剤は添加されない。結晶化後に、約1および約10%(w/w)の間の濃度、あるいは約0.1および約25%(w/w)の間の濃度、あるいは約0.1および約50%(w/w)の濃度で賦形剤または成分を母液に添加する。賦形剤または成分を、約0.1〜約3時間、母液中で結晶と共にインキュベートし、あるいはインキュベーションを約0.1〜約12時間実施し、あるいはインキュベーションを約0.1〜約24時間実施する。
【0092】
本発明の別の実施形態では、成分または賦形剤を母液以外の溶液に溶解し、母液から結晶を除去し、賦形剤または成分の溶液に懸濁する。成分または賦形剤の濃度およびインキュベーション時間は、上記のものと同じである。
【0093】
本発明の別の利点は、ミクロスフィアを含む組成物を形成するためにポリマー性担体内に封入されるシュウ酸デカルボキシラーゼの結晶またはその配合物を、凍結乾燥によって乾燥できるということである。凍結乾燥または冷凍−乾燥によって、組成物から水を分離することができる。まず、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶組成物を冷凍し、次いで高真空中に置く。真空下では、結晶性の水が昇華し、強固に結合した水のみを含有するシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶組成物が残る。かかる処理によって、組成物はさらに安定化し、典型的に遭遇する周囲温度での容易な保存および移動が可能になる。
【0094】
噴霧乾燥によって、結晶調製物から水を分離することが可能になる。これは、溶液、乳液、およびポンプ移動可能な(pumpable)懸濁液としての液体原料から、粉末、顆粒、または凝集形態としての乾燥固体を連続的に生成するのに非常に適している。噴霧乾燥は、液体原料を液滴の噴霧に噴霧化し、その液滴を乾燥チャンバー内で熱した空気に接触させることを含む。噴霧は、回転(輪)またはノズル噴霧器によって生成される。液滴からの水分の蒸発および乾燥粒子の形成は、制御された温度および気流条件下で進められる。噴霧乾燥操作には、相対的に高温が必要とされる。しかし、臨界乾燥期間中の蒸発冷却効果のため、およびその後の乾燥材料の高温への曝露時間を非常に短縮できるために、生成物への熱による損害は一般にごくわずかである。粉末は、乾燥チャンバーから継続的に排出される。操作条件および乾燥設計は、生成物および粉末仕様の乾燥特性によって選択される。噴霧乾燥は理想的なプロセスであるが、ここで最終生成物は、粒経分布、残留含水量、バルク密度、および粒形に関して正確な質標準に従わなければならない。
【0095】
組成物。架橋した結晶を含むOXDC結晶は、医薬組成物などの組成物として提供される(例えば、タンパク質結晶の配合物および組成物を記載している米国特許第6,541,606号参照)。OXDC結晶を含む医薬組成物は、OXDC結晶と、それに限定されるものではないが、糖および生体適合性ポリマーを含む1つまたは複数の成分または賦形剤を含む。賦形剤の例は、American Pharmaceutical AssociationおよびPharmaceutical Society of Great Britainによって共同出版されているHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されており、さらなる例を以下に記載する。
【0096】
OXDC酵素は、組成物中の結晶として、生理的に許容される様々な塩の形態のいずれかとして、かつ/または医薬組成物の部分として許容される医薬担体および/もしくは添加剤と共に投与することができる。生理的に許容される塩の形態および標準的な医薬配合技術および賦形剤は当業者に周知である(例えば、Physician’s Desk Reference(PDR)2003年、第57版、Medical Economics Company、2002年;およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、eds. Gennadoら、第20版、Lippincott、Williams & Wilkins、2000年参照)。本願の目的では、「配合物」には「結晶配合物」が含まれる。
【0097】
本発明の方法に有用なシュウ酸デカルボキシラーゼは、賦形剤と組み合わせることができる。本発明によれば、「賦形剤」は、医薬組成物中に使用される充填剤または充填剤の組合せとして作用する。組成物に使用される例示的成分および賦形剤を以下に示す。
【0098】
生体適合性ポリマー。生体適合性ポリマーは、非抗原性(助剤として使用されない場合)、非発癌性、非毒性のポリマーであり、他の形では生体と本質的には非適合性でないポリマーであり、それを本明細書に記載のOXDC結晶組成物に使用することができる。それらの例には、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(乳酸)またはPLAなどのポリ(エステル)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)またはPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(ジオキサノン);ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロースおよびセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリカミノグリカン、硫酸化多糖類、それらのブレンドおよびコポリマーが含まれる。
【0099】
生分解性ポリマー、即ちOXDC結晶組成物に含まれ得る、加水分解または可溶化によって分解するポリマー。分解は、異種(主に粒子の表面で生じる)であっても、同種(ポリマーマトリックス中で均一に分解する)であってもよい。
【0100】
1つまたは複数の賦形剤もしくは医薬成分などの成分または賦形剤が、OXDC結晶組成物に含まれ得る。成分は、不活性または活性成分であってよい。
【0101】
OXDC結晶でのシュウ酸塩関連障害の治療法。本発明の方法は、シュウ酸デカルボキシラーゼ、例えばOXDCの結晶またはその架橋形態を哺乳動物対象に投与して、高シュウ酸塩レベルに関連する状態を治療、予防し、またはその発症の危険性を低減するステップを含む。シュウ酸塩の高レベルは、尿、血液、血清、または血漿を含む体液などの対象の生体サンプル中に検出され得る。幾つかの実施形態では、尿中シュウ酸塩レベルが検出される。結晶および/または結晶を含む組成物は、本明細書に記載の方法で投与することができる。
【0102】
幾つかの実施形態では、原発性高シュウ酸尿症、腸管性高シュウ酸尿症、外科的介入によって生じる高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、シュウ酸症の個体の高シュウ酸尿症の治療法が提供される。他の場合には、腎臓、骨、肝臓胃腸管、および膵臓の高シュウ酸塩関連障害が、本明細書に開示の方法の治療対象となる。本明細書で提供される方法によって治療されるさらなる障害または疾患には、それに限定されるものではないが、エチレングリコール(シュウ酸塩)中毒、特発性尿路結石症、腎不全(進行性、慢性、または末期腎不全を含む)、脂肪便、吸収不良、回腸疾患、外陰部疼痛、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、膵外分泌機能不全、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎石灰沈着症、骨粗鬆症、尿結石、および腎結石が含まれる。かかる状態および障害は、場合によっては急性または慢性であり得る。
【0103】
本発明の方法は、治療を受けない対象または対照となる対象のレベルと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上、対象のシュウ酸塩レベルを低減することができる。幾つかの実施形態では、低減量は、OXDC投与の前後で対象のシュウ酸塩レベルを比較することによって測定される。幾つかの実施形態では、本発明は、シュウ酸塩関連の状態または障害を治療または緩和して、その状態または障害の1つまたは複数の症候を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上改善することができる方法を提供する。幾つかの実施形態では、該方法は、内因性シュウ酸塩のレベルおよび/または食餌性シュウ酸塩の吸収を低減する。
【0104】
幾つかの実施形態では、例えば、アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ、グリオキシル酸還元酵素/ヒドロキシピルビン酸還元酵素、肝臓のグリコール酸オキシダーゼ、またはシュウ酸塩代謝に関与するもしくは高シュウ酸尿症に関連する別の酵素の活性を低減する変異体に対してホモ接合性またはヘテロ接合性である個体など、高シュウ酸塩レベルに関連する遺伝子型を有する個体の治療法が提供される。他の実施形態では、オキサロバクターホルミゲネス(Oxalobacter formigenes)腸内コロニー形成が減少または欠失している個体の治療法が提供される。
【0105】
開示の方法は、シュウ酸塩の高レベルに関連する状態の危険性がある、その状態を受けやすい、または罹患している哺乳動物対象に、治療有効量のシュウ酸デカルボキシラーゼを投与するステップを含む。本発明の方法によって治療される集団には、それに限定されるものではないが、例えば、原発性高シュウ酸尿症または腸管性高シュウ酸尿症などのシュウ酸塩関連障害に罹患している、またはその発症の危険性がある対象が含まれる。
【0106】
本発明の方法に従って治療される対象には、それに限定されるものではないが、ヒト、ヒトではない霊長類、霊長類、ヒヒ、チンパンジー、サル、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギ、猫、犬、馬、牛、羊、山羊、豚等が含まれる。
【0107】
兆候、症候、および疾患指標。シュウ酸塩関連障害または高シュウ酸塩レベルに関連する状態の発症または進行を評価するために、多くの方法が利用可能である。かかる障害には、それに限定されるものではないが、先に定義の任意の状態、疾患、または障害が含まれる。シュウ酸関連障害の発症または進行は、例えば、尿中シュウ酸塩、血漿シュウ酸塩の測定、腎臓もしくは肝臓機能の測定、またはシュウ酸カルシウム沈着の検出によって評価することができる。
【0108】
状態、疾患、または障害は、例えば尿サンプルまたは他の生体サンプルもしくは体液中のシュウ酸濃度を検出または測定することによって同定できる。高シュウ酸尿症の初期症候は、一般に腎臓結石であり、これは重篤なもしくは急激な腹痛もしくは脇腹痛、血尿、頻尿、排尿の際の痛み、または発熱および悪寒に関連することがある。腎臓結石は、症候性または無症候性であり得、例えばx線、超音波、またはコンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより腹部を画像化することによって視覚化できる。高シュウ酸尿症が制御されない場合、腎臓が損傷を受け、腎機能が損なわれる。腎臓が不全になる恐れもある。腎不全(および腎機能低下)は、排尿(糸球体濾過率)の減少または欠失、全体的な病感、倦怠感、および顕著な疲労感、吐き気、嘔吐、貧血、ならびに/あるいは若年の子どもの正常な成長および発育の不全によって同定することができる。他の組織および器官のシュウ酸カルシウム沈着は、直接可視化(例えば目視)、x線、超音波、CT、心エコー図、または生検(例えば、骨、肝臓、または腎臓)を含む方法によって検出することもできる。
【0109】
腎臓および肝臓機能、ならびにシュウ酸濃度は、当技術分野で認識されている直接的および間接的アッセイを使用して評価することもできる。化学物質含量または尿、血液、もしくは他の生体サンプルは、周知の技術によって試験することもできる。例えば、シュウ酸塩、グリコール酸塩、およびグリセリン酸塩レベルを測定することができる。例えば、酵素欠損のための肝組織の分析およびシュウ酸塩沈着のための腎組織の分析などの、肝臓および腎臓機能のアッセイが周知である。原発性高シュウ酸尿症を生じることが知られているDNA変化について、サンプルを試験することもできる。
【0110】
治療のための他の兆候には、それに限定されるものではないが、先および以下の部分に論じるものを含む1つまたは複数の危険因子の存在が含まれる。状態、疾患、または障害を発症するまたは受けやすい危険性のある対象、あるいはシュウ酸デカルボキシラーゼでの治療に特に受容性があり得る対象は、1つまたは複数のかかる危険因子、診断上の指標、または予後指標の存在または非存在を究明することによって同定できる。同様に、シュウ酸塩関連障害を発症する危険性がある個体は、1つまたは複数の遺伝子マーカーまたは表現型マーカーの分析によって同定することができる。
【0111】
開示の方法は、24時間またはそれ以上につき、シュウ酸塩が少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、または400mgの尿中シュウ酸塩レベルの対象において有用である。幾つかの実施形態では、シュウ酸塩レベルは、1つまたは複数の症候または病状に関連している。シュウ酸塩レベルは、血液、血清、血漿、または尿を含む体液などの生体サンプルで測定することができる。任意選択で、シュウ酸塩は、尿中クレアチニンなどの標準タンパク質または物質に標準化される。幾つかの実施形態では、特許請求する方法は、治療前1、3、5、7、9、12、または15日以内にシュウ酸デカルボキシラーゼを投与して、対象における循環シュウ酸塩レベルを検出不能なレベルに、または対象のシュウ酸塩レベルを1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、もしくは80%未満に低減するステップを含む。
【0112】
ヒトにおける高シュウ酸尿症は、1日当たり40mg(約440μmol)または30mgを超える尿中シュウ酸塩排出を特徴とし得る。例示的臨床カットオフレベルは、例えば男性については43mg/日(約475μmol)であり、女性については32mg/日(約350μmol)である。高シュウ酸尿症は、1日当たり尿中クレアチニン1グラムにつき30mgを超える尿中シュウ酸塩排出と定義することもできる。軽度高シュウ酸尿症のヒトは、1日当たりシュウ酸塩を少なくとも30〜60(342〜684μmol)または40〜60(456〜684μmol)mg排出することができる。腸管性高シュウ酸尿症のヒトは、1日当たり尿中シュウ酸塩を少なくとも80mg(912μmol)排出することがあり、原発性高シュウ酸尿症のヒトは、1日当たり少なくとも200mg(2280μmol)排出することができる。例えば、Borowski A.E、Langman CB.Hyperoxaluria and Oxalosis:Current Therapy and Future directions. Exp Opinion Phrama(2006年、近刊)。
【0113】
OXDC結晶およびその組成物の投与
本発明の方法によるシュウ酸デカルボキシラーゼの投与は、いかなる特定の送達系にも制限されず、上部消化管、例えば口(例えばカプセル剤、懸濁剤、錠剤で、または食物により)もしくは胃、または腸上部(例えばチューブまたは注入)を介して投与して、個体のシュウ酸塩レベルを低減することを含む。幾つかの場合、OXDCは、内因性シュウ酸塩レベルおよび/または濃度を低減するために投与される。OXDCは、透析装置、カテーテル、または個体からの生体サンプルに接触する構造もしくは装置などの体外装置によって提供することもできる。
【0114】
個体への投与は、単回用量または繰り返し投与で、様々な生理的に許容される形態のいずれかとして、ならびに/あるいは医薬組成物の部分として許容される医薬担体および/もしくは添加剤(上記)と共に投与することができる。開示の方法では、シュウ酸デカルボキシラーゼは単独で投与することができ、例えば、ピリドキシン(ビタミンB−6)、オルトリン酸塩、マグネシウム、グリコサミノグリカン、カルシウム、鉄、アルミニウム、マグネシウム、クエン酸カリウム、コレスチラミン、有機海産親水コロイド、例えばバナナの茎の汁もしくはビートの汁などの植物の汁、またはL−システインなどの1つまたは複数の追加の生物活性剤と、間隔を重複してまたは重複しないで同時にまたは連続して投与することができる。シュウ酸塩レベルを低減し、またはOXDCの活性もしくはアベイラビリティを増大する生物活性剤が提供される。逐次投与では、シュウ酸デカルボキシラーゼおよび追加の1つまたは複数の薬剤を、任意の順序で投与することができる。幾つかの実施形態では、重複間隔の長さは、2、4、6、12、24もしくは48週超、またはそれ以上であってよい。
【0115】
シュウ酸デカルボキシラーゼは、単一の活性化合物として、または別の活性な化合物もしくは組成物と組み合わせて投与することができる。別段の指定が無い限り、シュウ酸デカルボキシラーゼは、症候の重篤度および疾患の進行度に応じて、約10μg/kg〜25mg/kgまたは100mg/kgの用量で投与される。OXDCの適切な治療有効量は担当医によって選択され、約10μg/kg〜20mg/kg、10μg/kg〜10mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg/kg〜1mg/kg、100μg/kg〜10mg/kg、500μg/kg〜5mg/kg、500μg/kg〜20mg/kg、1mg/kg〜5mg/kg、1mg/kg〜25mg/kg、5mg/kg〜100mg/kg、5mg/kg〜50mg/kg、5mg/kg〜25mg/kg、および10mg/kg〜25mg/kgの範囲となろう。さらに、実施例またはPhysician’s Desk Reference(PDR)2003年、第57版、Medical Economics Company、2002年に示される特定投与量を使用することができる。
【0116】
本発明のシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、シュウ酸デカルボキシラーゼを患者に送達するなどのために、体外装置またはカテーテルを介して投与することができる。カテーテル、例えば導尿カテーテルは、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を含有する組成物でコーティングすることができる。
【0117】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するものである。本発明の精神または範囲を変更することなく実施することができる数々の改変および変更を、当業者は認識されよう。かかる改変および変更は、本発明の範囲内に包含される。実施例は、いかなる方法でも本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0118】
(実施例1)シュウ酸デカルボキシラーゼの発酵および精製
枯草菌からのシュウ酸デカルボキシラーゼ(OXDC)は、6個の同一のモノマーからなる261kDaのホモ六量体タンパク質である。各モノマーは、算出分子量が約43から44kDaであり、等電点が5.2の385アミノ酸を含有する。かつてyvrKとして知られていたOXDC遺伝子は、枯草菌ゲノムDNAをテンプレートとして使用して増幅したPCRであった。
【0119】
増幅OXDC遺伝子を、まずpCRIIベクター(Invitrogen、Carlsbad、カリフォルニア)にクローニングし、次いで大腸菌BL21(DE3)pLysS細胞を使用して、pET−11a発現ベクターからサブクローニングし発現させた。pET−11aベクターの遺伝子発現はT7プロモーターの制御下にあるので、OXDC発現は、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)での誘導によって調整された。
【0120】
大腸菌中での組み換え型OXDCの高発現レベルを達成するために、発酵を使用した。カゼイン加水分解物(USB Corporation、オハイオ州クリーブランド)または大豆ペプトン、酵母抽出物(USB Corporation)、NaCl(Fisher Scientific)、PPG2000アンチフォーム(PPG)、KOH(Mallinckrodt Baker、Inc.、ニュージャージー州フィリップスバーグ)、およびアンピリシン(USB Corporation)を含有する800L(リットル)の発酵媒体で発現を実施した。OXDCは、マンガン依存性酵素なので、5mMのMnCl・4HO(Mallinckrodt Baker、Inc.)を発酵媒体に入れた。0.4mMのIPTG(Lab Scientific)を添加することによって、OXDCの発現を誘発した。OXDCを発現する細胞を、振とうフラスコまたは発酵槽中で増殖させた。この方法によって、OXDCは主にペレット調製物として発現した。
【0121】
発酵には、pET11a−OXDCで形質転換したBL21細胞のグリセロールストックを使用した。800Lの発酵について、予め播種した培養物を、それぞれ50mlの媒体(LB+アンピリシン100μg/ml)を含有する2×250mlのフラスコで調製した。2×0.5mlの接種材料を使用した。培養物を、35℃、250rpmで6時間インキュベートした。次いでこの培養物を、それぞれ1Lの媒体(LB+アンピリシン100μg/ml)を含有する6×2Lのフラスコに移した。各フラスコ中、出発培養物10mlを添加した。これらの培養物を、35℃、250rpmで12時間インキュベートした。この培養物6Lを、先に記載のように適切な媒体を含有する800Lの発酵槽に移した。OD600が約0.3に達するまで、培養物を100rpmにて溶解酸素で約30〜40回振とうして、37℃、pH7.0で増殖させた(このプロセスは約2〜3時間要した)。OXDCの発現は、0.4mMのIPTG+5mMのMnCl・4HOで誘発した。37℃、100rpmで4時間、培養を誘発した。次いで細胞を回収し、後の使用のために凍結した。回収時のOD600は約5.5〜8.0であった。
【0122】
50mMのTris pH8、100mMのNaClを含有する緩衝剤4Lにつき細胞ペースト1kgの比で、DNase15〜25U/mlの存在下または非存在下で細胞を再懸濁した。細胞懸濁液を、4℃で終夜ブレンドした(50〜60rpm)。細胞懸濁液を、氷上で3回、予冷したホモジナイザに通過させた。細胞溶解の効率を顕微鏡で調査し、非崩壊細胞の懸濁液を対照として使用した。細胞を、1Lの瓶中、4℃において4,000rpmで40分間遠心分離にかけた。上清およびペレットを保存して、SDS−PAGEによって特徴付けた。OXDCの発現をSDS−PAGEによって分析した。封入体を含むペレットおよび他の沈殿物にOXDCの大部分が見られた。ペレットを、4000rpmで40分間遠心分離にかけることによって回収し、直に使用し、または後の使用のために−70℃で凍結した。
【0123】
800Lの発酵反応から、細胞5,000gおよび5,500gの間の細胞を得、2,800gおよび3,000gの間の湿潤重量のペレットを得た。
【0124】
(実施例2)弱変性濃度でのペレットの可溶化、その後のアニオン交換クロマトグラフィーによるシュウ酸デカルボキシラーゼの結晶化
OXDC結晶を調製するために、−20℃で凍結保存したOXDCペレットを使用した。
【0125】
この手順では、変性濃縮およびpHの穏やかな条件下でペレットを可溶化した。次いで、アニオン交換マトリックスカラムを使用して、可溶化タンパク質をリフォールドした。
【0126】
2Mの尿素、100mMのTris pH10.0、10mMのDTT、および100mMのNaCl(1:10w/v)にペレット可溶化した。溶液を室温(RT)で2時間撹拌し、次いでその溶液を、4℃において15Kで30分間遠心分離にかけた。上清を注意深くデカントし保存した。ペレットを注意深く秤量し、個々に保存した。
【0127】
上清中の可溶化ペレットを、2Mの尿素、100mMのTris pH8.0、1mMのDTT、および1mMのMnClを含有する溶液10体積に、絶えず穏やかに撹拌しながら流速10ml/分で滴加した。上清を完全に添加した後、タンパク質溶液を室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、4℃における15Kでの30分間の遠心分離によるアニオン交換クロマトグラフィー用にタンパク質溶液を準備して、起こり得る任意の沈殿物を除去した。
【0128】
ガラスカラムにQセファロースマトリックスを充填することによって、アニオン交換クロマトグラフィーカラムを調製した。カラムをFPLCに取り付け、0.5Mの尿素、100mMのTris pH8.0、1mMのDTT、および1mMのMnClの溶液の10カラム体積(CV)で洗浄することによって平衡化した。流速を6ml/分に維持した。可溶化ペレットをカラムに搭載した。タンパク質搭載量は、マトリックス1ml当たり8〜10mgであった。サンプルの搭載後、100mMのTris pH8.0、1mMのDTT、および1mMのMnCl少なくとも10CVを用いて、カラムを流速6ml/分で洗浄した。このステップによって、結合タンパク質サンプルから尿素を除去し、タンパク質をその天然構成にリフォールドした。
【0129】
1MのNaCl、100mMのTris pH8.0、および1mMのDTTを用いて、段階勾配または段階溶出によってタンパク質をカラムから溶出した。タンパク質溶離液を280nmでモニタし、画分10mlを収集した。ピーク画分を一緒にプールし、SDS−PAGEおよび酵素活性によって試験した。
【0130】
10,000MWCO膜を使用して細胞を撹拌し、100mMのTris pH8.0、100mMのNaCl、および1mMのDTT10体積に対して透析することによって、OXDCを含有するピーク画分を15mg/mlに濃縮した。1時間間隔で2回の緩衝剤変更を行い、3回目の緩衝剤変更後、最大結晶回収のために終夜透析を継続した。サンプルを4℃において2Kで15分間遠心分離にかけることによって、透析バッグ中で結晶化したタンパク質を回収した。透析後、リフォールドされたOXDCの約70%が結晶化した。結晶は立方体の形状であり、均質な寸法であった。結晶は、約44単位の活性を示した。
【0131】
(実施例3)高変性濃度を使用するペレットの可溶化、その後のアニオン交換クロマトグラフィーによるシュウ酸デカルボキシラーゼの結晶化
この方法では、5Mの尿素、50mMのTris pH8.6、100mMのNaCl、10mMのDTT(1:5w/v)にペレットを可溶化した。溶液を室温で2時間撹拌し、次いでその溶液を、4℃において15Kで30分間遠心分離にかけた。上清を注意深くデカントし保存した。ペレットを秤量し、個々に保存した。
【0132】
ガラスカラムにQセファロースマトリックスを充填することによって、アニオン交換クロマトグラフィーカラムを調製した。カラムをFPLCに取り付け、4Mの尿素、100mMのTris pH8.6、および10mMのDTTの3カラム体積(CV)で洗浄することによって平衡化した。100mMのNaCl、50mMのTris pH8、1mMのMnCl、10mMのDTT中、7CVでカラムをさらに洗浄し、0.5MのNaCl、50mMのTris pH8.0、1mMのDTT、1mMのMnClの3CVを用いて、単一ステップで溶出した。
【0133】
適切な画分を収集し、タンパク質をSDS−PAGEおよび活性アッセイによって同定した。可溶性タンパク質を、高塩(0.5MのNaCl)の存在下で濃縮した。0.5Mの塩で全体積450mlを溶出し、100mMのNaCl、50mMのTris pH8.0、1mMのDTTへのpellicon濾過で45mlに濃縮した。タンパク質濃縮後、塩濃度を0.5Mから0.1MのNaClに低減するために希釈した。この時点で、OXDC結晶が形成し始めた。この例では、体積を、100mMのNaCl、50mMのTris pH8.0、1mMのDTT当量中210mLにした。形成した結晶をスピンし、1mMのDTTの存在下または非存在下で、100mMのNaClおよび50mMのTris pH8.0中に回収した。
【0134】
(実施例4)高pHおよび低変性濃度を使用するペレットの可溶化、その後の中空繊維での濃縮によるシュウ酸デカルボキシラーゼの結晶化
封入体および他の沈殿物を含有するペレット(3.93kg)を、50mMのTris pH12、500mMのNaCl、2Mの尿素、10mMのDTT9.5Lに、室温で2時間可溶化した。最終体積は12L、pH9.9であった。サンプルを7000rpmで45分間スピンし、上清を回収した。スピン後の全体積は11.1L、pH9.9であった。サンプルを、1時間、中空繊維で濃縮して5Lにし、次いで50mMのTris pH8.0、500mMのNaCl、2Mの尿素、10mMのDTTでその体積をゆっくり20Lにした。この過程を1時間で行った。この時点での尿素の最終濃度は、尿素約0.5Mと推定される。その体積を、中空繊維で2.5時間濃縮して6Lにした。サンプルを、50mMのTris pH8.0、500mMのNaCl、1mMのDTT、1mMのMnCl、200mMのL−アルギニンで30分間希釈して24Lにした。この時点で尿素の濃度は125mMと推定された。もう一度濃縮を行い、最終体積を5Lにした。サンプルを、50mMのTris pH8.0、500mMのNaCl、1mMのDTT、1mMのMnClで希釈して18Lにし、再度濃縮して6.5Lにした。この時pHは8.1であった。サンプルを7000rpmで45分間スピンし、最終ペレットを分析のために保存した。遠心分離後、50mMのTris pH8.0、1mMのDTTでの希釈ステップを実施して、結晶を得た。希釈物を、蠕動ポンプを使用して室温で混合して30Lにした。希釈物の流速は、50ml/分と推定された。この希釈は、約9時間かかった。結晶を遠心分離によって回収し、上清を分析のために保存した。結晶を、50mMのTris、100mMのNaCl pH8で3回洗浄し、50mMのTris、100mMのNaCl pH8に再懸濁した。結晶を4℃で保存した。
【0135】
(実施例5)高塩を使用する細胞抽出物からのシュウ酸デカルボキシラーゼの結晶化
(1)高塩濃度を使用するタンパク質−含有ペレットの可溶化、その後の濃縮および希釈による結晶化
実施例1の凍結ペレット(465g)を、室温で2時間、100mMのTris、1mMのL−システインHCL、0.5MのNaCl、pH8.0、2.3Lに可溶化し、可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼを形成した。サンプルを7000rpmで45分間スピンし、上清を回収した。最終体積は2.15Lであり、測定タンパク質濃度は24.14mg/mlであった。接線流濾過(10kD Pall)によってサンプルを1時間濃縮して550mlにし、次いで流速73ml/分で30分かけて100mMのTris pH8.0、1mMのL−システインHClで希釈して2,750Lにし、室温で1時間撹拌した。冷却室内で終夜結晶を形成した。結晶を遠心分離によって回収し、上清を分析のために保存した。結晶を、100mMのTris、100mMのNaCl pH8で3回洗浄し、次いで100mMのTris、100mMのNaCl pH8に再懸濁した。結晶を4℃で保存した。大腸菌発現媒体から精製した組み換え型枯草菌OXDCは、標準アッセイ条件下で約50〜60U/mgの比活性を示す(実施例15参照)。
【0136】
(2)高塩濃度を使用するペレットの可溶化、その後の濃縮および透析による結晶化
実施例1の凍結ペレット(510g)を、室温で2時間、100mM Tris、1mMのL−システインHCL、0.5MのNaCl、pH8.0、3Lに可溶化した。サンプルを7000rpmで30分間スピンし、上清を回収した。接線流濾過(10kD Pall)によってサンプルを1時間濃縮して500mlにし、次いで撹拌しながら100mMのTris pH8.0に対して透析した。冷却室内で終夜結晶を形成した。結晶を遠心分離によって回収し、上清を分析のために保存した。結晶を、100mMのTris、pH8で3回洗浄し、次いで100mMのTris pH8.0に再懸濁した。結晶を4℃で保存した。結晶収率は60%であった。
【0137】
(3)高塩濃度を使用するペレットの可溶化、その後の濃縮および透析による結晶化
実施例1の凍結ペレット(510g)を、室温で2時間、100mM Tris、1mMのL−システインHCL、0.5MのNaCl、pH8.0、3Lに可溶化した。サンプルを7000rpmで30分間スピンし、上清を回収した。接線流濾過(10kD Pall)によってサンプルを1時間濃縮して500mlにし、次いで撹拌しながら100mMのTris pH7.5に対して透析した。冷却室内で終夜結晶を形成した。結晶を遠心分離によって回収し、上清を分析のために保存した。結晶を、100mMのTris、pH7.5で3回洗浄し、次いで100mMのTris pH7.5に再懸濁した。結晶を4℃で保存した。結晶収率は67%であった。
【0138】
(4)高塩濃度を使用するペレットの可溶化、その後の濃縮および透析による結晶化
実施例1の凍結ペレット(510g)を、室温で2時間、100mM Tris、1mMのL−システインHCL、0.5MのNaCl、pH8.0、3Lに可溶化した。サンプルを7000rpmで30分間スピンし、上清を回収した。接線流濾過(10kD Pall)によってサンプルを1時間濃縮して500mlにし、次いで撹拌しながら100mMのTris pH7.0に対して透析した。冷却室内で終夜結晶を形成した。結晶を遠心分離によって回収し、上清を分析のために保存した。結晶を、100mMのTris、pH7.0で3回洗浄し、次いで100mMのTris pH7.0に再懸濁した。結晶を4℃で保存した。結晶収率は約80%であった。
【0139】
(5)高塩濃度を使用するペレットの可溶化、その後の濃縮および透析による結晶化
実施例1の凍結ペレット(510g)を、室温で2時間、100mM Tris、1mMのL−システインHCL、0.5MのNaCl、pH8.0、3Lに可溶化した。サンプルを7000rpmで30分間スピンし、上清を回収した。接線流濾過(10kD Pall)によってサンプルを1時間濃縮して500mlにし、次いで撹拌しながら100mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤pH6.5に対して透析した。冷却室内で終夜結晶を形成した。結晶を遠心分離によって回収し、上清を分析のために保存した。結晶を、100mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤、pH6.5で3回洗浄し、次いで100mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤pH6.5に再懸濁した。結晶を4℃で保存した。結晶収率は約70%であった。
【0140】
(6)高塩濃度を使用するペレットの可溶化、その後の濃縮および透析による結晶化
実施例1の凍結ペレット(510g)を、室温で2時間、100mM Tris、1mMのL−システインHCL、0.5MのNaCl、pH8.0、3Lに可溶化した。サンプルを7000rpmで30分間スピンし、上清を回収した。接線流濾過(10kD Pall)によってサンプルを1時間濃縮して500mlにし、次いで撹拌しながら100mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤pH6.0に対して透析した。冷却室内で終夜結晶を形成した。結晶を遠心分離によって回収し、上清を分析のために保存した。結晶を、100mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤、pH6.0で3回洗浄し、次いで100mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤pH6.0に再懸濁した。結晶を4℃で保存した。結晶収率は約60%であった。
【0141】
(7)均質化および可溶化後の細胞ペーストからのOXDCの結晶化
100mMのTris pH7.5、500mMのNaCl、5mMのシステイン、および1mMの塩化マンガンを含有する緩衝剤3Lにつき細胞ペースト1kgの比で、細胞を再懸濁した。細胞懸濁液を、終夜4℃でブレンドした(50〜60rpm)。細胞懸濁液を、氷上で2回、予冷したホモジナイザに通過させた。細胞溶解の効率を、顕微鏡で調査し、非崩壊細胞の懸濁液を対照として使用した。懸濁液を10Lにし、室温で3時間、オーバーヘッド撹拌機で混合した。次いで粗抽出物を、4℃において7000rpmで30分間遠心分離にかけ、上清を回収した。上清およびペレットを保存して、SDS−PAGEによって特徴付けた。OXDCの発現をSDS−PAGEによって分析した。上清にOXDCの大部分が見られた。最終体積は10Lであり、測定タンパク質濃度は34mg/mlであった。接線流濾過(10kD Pall)によってサンプルを1時間濃縮して3.5Lにし、次いで室温で1時間、結晶化緩衝剤(100mMのTris、100mMのNaCl pH7.5)を使用して、撹拌しながら希釈した。結晶を遠心分離によって回収し、上清を分析のために保存した。結晶を、100mMのTris、100mMのNaCl pH7.5で3回洗浄し、次いで100mMのTrisおよび100mMのNaCl、pH7.5に再懸濁した。結晶を4℃で保存した。
【0142】
(実施例6)可溶性タンパク質からのOXDCの結晶化
振とうフラスコ内の大腸菌でOXDCを発現させた。25U/mlのDNase Iを含有する25mMのTris−HCl緩衝剤、pH8.0、100mMのNaClで、マイクロ流動化装置(microfluidizer)によって細胞を溶解した。細胞溶解物を室温で1時間インキュベートして、OXDC結晶を形成した。結晶をスピンして沈降させ、100mMのTris、100mMのNaCl pH8で再構成した。
【0143】
(実施例7)蒸気拡散によるOXDCの結晶化
市販で利用可能なスパースマトリックス結晶化キット:Crystal Screen(Hampton Research;カリフォルニア州アリソビエホ)、Crystal Screen2(Hampton Research)、Wizard I(Emerald Biosystems;Bainbridge、ワシントン州アイランド)、Wizard II(Emerald Biosystems)、Cryo I(Emerald Biosystems)、およびCryo II(Emerald Biosystems)を使用して、懸滴結晶化試験を実施した。
【0144】
試薬600μlを各ウェルに入れた。試薬3μlを、顕微鏡のガラスカバースリップ上に分注し、OXDC3μlを、最小限の混合を伴って試薬ドロップに分注した。この6μlの試薬およびOXDCドロップから、最大5つのさらなるドロップを作成した。これらのドロップを最小限に混合すると、その後の(小)ドロップのそれぞれは、タンパク質対試薬の異なる未知の比を有しており、したがって短期間で結晶を得る可能性が増大する。室温で終夜インキュベートした後、顕微鏡で結晶について懸滴を調査した。表1に示すように、多数の結晶化条件を得た。
【0145】
【表1】

【0146】
OXDC濃度は、ブラッドフォードアッセイによって決定して約1.7mg/mLであった。
【0147】
(実施例8)マイクロバッチによるOXDCの結晶化
シュウ酸デカルボキシラーゼを、幾つかの結晶化条件からマイクロバッチ法によって結晶化することができた。
【0148】
(i)濃度23.46mg/mlの精製OXDC10μlを、10μlの16%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。幾らかの沈殿物と共に、大型結晶を形成した。
【0149】
(ii)濃度23.46mg/mlの精製OXDC10μlを、10μlの20%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。沈殿物なしに大型結晶を形成した。
【0150】
(iii)濃度23.46mg/mlの精製OXDC10μlを、10μlの24%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。より小さい立方形結晶を形成した。
【0151】
(iv)濃度23.46mg/mlの精製OXDC10μlを、10μlの28%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。非常に小型の立方形結晶を形成した。沈殿物はなかった。
【0152】
(v)濃度23.46mg/mlの精製OXDC8μlを、12μlの24%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。非常に小型の立方形結晶を形成した。沈殿物はなかった。
【0153】
(vi)濃度23.46mg/mlの精製OXDC9μlを、11μlの24%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。小型の立方形結晶を形成した。沈殿物はなかった。
【0154】
(vii)濃度23.46mg/mlの精製シュウ酸デカルボキシラーゼ10μlを、10μlの24%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。小型の立方形結晶を形成した。沈殿物はなかった。
【0155】
(viii)濃度23.46mg/mlの精製シュウ酸デカルボキシラーゼ11μlを、9μlの24%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。立方形結晶を形成した。沈殿物はなかった。
【0156】
(ix)濃度23.46mg/mlの精製OXDC12μlを、8μlの24%PEG8000と混合した。結晶化は、2〜5秒で即座に生じた。立方形結晶を形成した。沈殿物はなかった。
【0157】
(実施例9)可溶性OXDCおよびOXDC結晶の活性
ペレットを可溶化し、スピンし、上清を回収した後、実施例5に記載のように可溶性OXDCを収集した。結晶を回収し洗浄した後、実施例5に記載のようにOXDC結晶を収集した。可溶性OXDCおよびOXDC結晶の活性を、実施例15に従って測定した。一実施形態では、可溶性OXDCの活性は12単位/mgであり、OXDC結晶の活性は35単位/mgであった。
【0158】
可溶性OXDCを実施例2〜5のいずれかに記載のように収集し、OXDC結晶を実施例2〜8のいずれかに記載のように回収する。可溶性OXDCおよび結晶OXDCの活性を、実施例15に従って測定する。OXDC結晶の活性は、可溶性OXDCの活性の少なくとも約100%、200%、300%、400%、または500%となり得る。
【0159】
(実施例10)グルタルアルデヒドでのシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶の架橋
実施例2〜8のいずれかに従って調製したシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を、グルタルアルデヒドを使用して架橋した。結晶化後、OXDC結晶を濃縮して20〜30mg/mlにした。25%グルタルアルデヒド0.8mlを、結晶20mlに添加して、1%グルタルアルデヒド溶液を生成し、結晶を室温で18時間撹拌した。架橋した結晶を、100mMのTris、pH7.00で5回洗浄し、10mMのTris、pH7.00に再懸濁した。
【0160】
結晶性OXDCおよび架橋OXDC(OXDC−CLECと呼ぶ)の比活性を比較し(6つの試験)、架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶が、様々な調製物において結晶性タンパク質の元の活性の30%超〜50%超を保持していることを示した。
【0161】
酵素活性へのグルタルアルデヒド濃度変化の作用を試験するために、OXDC結晶(60mg/ml)1mlアリコートを、pH8.0において25℃で18時間、様々な濃度のグルタルアルデヒド(0.05%〜2%、最終濃度)で架橋した。エッペンドルフチューブ中、2000rpmでの遠心分離による架橋結晶の分離に次いで、1mlの100mMのTris HCl、pH7.0への架橋結晶の再懸濁によって架橋を終了した。次いで、架橋OXDC(OXDC−CLEC)を、100mMのTris HCl緩衝剤、pH7.5で5回洗浄した後、10mMのTris HCl緩衝剤、pH7.5で3回洗浄した(以下の表2の結果を参照)。
【0162】
(実施例11)架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶のpH制御された可溶性
様々な架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶の可溶性を、pH7.5から3.0へのpH低減に従って調査した。架橋した結晶を、50mMグリシン HCl(pH3.0)中、1mg/mlでインキュベートした。撹拌を伴う37℃での5時間のインキュベーション後、アリコートを除去した。2000rpmでの遠心分離による非溶解架橋結晶の分離および0.22μmフィルタを介する上清の濾過後、OD280nmで可溶性タンパク質濃度を測定した。結果を以下の表2に記載する。
【0163】
【表2】

【0164】
これらの結果は、実質的に安定なグルタルアルデヒドOXDC架橋結晶が、少なくとも約0.05%(最終濃度)グルタルアルデヒドの存在下で形成されることを示している。
【0165】
(実施例12)可溶性OXDC、結晶性OXDC、およびOXDC−CLECのpH活性プロファイル
実施例2〜8に記載のように調製したシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を、グルタルアルデヒド(Sigma)の添加によって架橋した。OXDC結晶(30〜40mg/ml)のアリコート1mlを、pH8.0において25℃で18時間、1%グルタルアルデヒド(最終濃度)で架橋した。エッペンドルフチューブ中、2000rpmでの遠心分離による架橋結晶の分離に次いで、1mlの100mMのTris HCl、pH7.0への架橋結晶の再懸濁によって架橋を終了した。次いでOXDC−CLECを、100mMのTris HCl緩衝剤、pH7.0で5回洗浄した後、10mMのTris−HCl緩衝剤、pH7.0で3回洗浄した。OXDC−CLECのpH活性プロファイルを、実施例15に記載のように結晶の活性を測定することによって、pH2.0および3.0における50mMのグリシンHCl緩衝剤;pH4.0、5.0、および6.0における50mMのコハク酸塩緩衝剤;ならびにpH7.0における50mMのTris緩衝剤の、様々な緩衝剤およびpHを使用してアッセイした。各pHにおける活性レベルを2回測定し、平均活性を算出した。図1に示す結果は、OXDC−CLECが、pH3.5および6.0の間でその可溶性対応物よりも活性であることを示している。非架橋結晶は、様々なpHにおいて、シュウ酸デカルボキシラーゼの可溶性形態よりも約50%〜約200%、300%または400%以上の範囲のかなり高い活性を示した。
【0166】
(実施例13)腸管性高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるシュウ酸デカルボキシラーゼ療法
腸管性高シュウ酸尿症のラットモデル、用量範囲試験:高シュウ酸塩の食餌を与えた雄性Sprague Dawley(SD)ラットは、腸管性高シュウ酸尿症の試験に対して適切な動物系を構成する。この試験では、1.1%食餌性シュウ酸カリウムの投与の結果、尿中シュウ酸塩が5〜10倍増加した。
【0167】
生後35日未満で100〜120グラムの体重のSprague Dawley(SD)ラット20匹を、対照群と実験群に無作為に分割した(各群当たりラット5匹)。処理前に7日間、ラットを個々の代謝ケージ(LabProducts、Inc.;デラウェア州シーフォード)に順応させた。この期間中、ラットには不断で補給酸性水を供給し、1.1%カリウムシュウ酸塩および低(0.5%)濃度カルシウムを有する合成食(Research Diets TD89222PWD;Harlan Teklad;ウィスコンシン州マディソン)を与えた。治療期間中、ラットをこの食餌で維持した。
【0168】
順応期間後、1%グルタルアルデヒドで架橋した結晶(例えば実施例9参照)として配合された、3つの異なる用量の組み換え型シュウ酸デカルボキシラーゼを、4週間連続で試験ラットに投与した。結晶を、凍結/乾燥させた食餌の酵素混合物として経口投与した(10mMのTris HCl pH7.0中、5mg、25mg、および80mgのOXDC−CLECスラリーを、それぞれ個別に15gの食餌と混合し、凍結乾燥させる;各朝、食餌容器を約20gの食餌/酵素混合物で再充填した)。処理前に、ラットをそれらの基礎尿中シュウ酸塩をベースにして対照群と実験群に無作為に分割した。
【0169】
尿サンプルの分析:尿中アスコルビン酸とシュウ酸塩との自発的破れを最小限に抑えるために、代謝ケージにおいて24時間の尿サンプルを酸で収集した(6Nの塩酸250μlを、24時間の間に収集した尿サンプルと混合した)。さらなる分析まで、サンプルを−70℃で保存した。シュウ酸塩およびクレアチニン測定のために、毎日の利尿および数回の24時間の尿サンプルを収集した。シュウ酸塩およびクレアチニンのアッセイを、実施例15に記載する。シュウ酸塩およびクレアチニンの尿排出を、24時間の尿サンプルで検出されたシュウ酸塩およびクレアチニンのμmolとして表した。全データを、スチューデントt検定を使用して統計的に分析した。
【0170】
図2に示すように、慢性高シュウ酸尿症のSDラットへのOXDC−CLECの経口投与の結果、治療4日目から、尿中シュウ酸塩が持続的に低減した。25〜40%の間の最大連続減を、最高用量群として記録した(OXDC−CLEC80mg)。5mgおよび25mgのより低い用量のOXDC−CLECでは、尿中シュウ酸塩の低減はより小さかった(それぞれ最大、25mg群で30%および5mg群で20%)。25mgおよび80mgの用量では、全ての試験日の間で有意に低減したが(25mg群の21日目を除く)、最小用量5mgでは最小の効果であり、有意ではなかった。この結果によって、OXDC−CLEC療法の用量依存効果が明らかとなる。
【0171】
(実施例14)原発性高シュウ酸尿症の動物モデルにおける経口によるシュウ酸デカルボキシラーゼ療法
I型原発性高シュウ酸尿症のマウスモデル:AGT1ノックアウトマウスは、肝臓のペルオキシソーム酵素アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼを欠失しており、これは原発性高シュウ酸尿症I型を引き起こす欠陥である。キメラマウスを、C57Bl6および129/sv背景系統でホモ接合性に育てた。全てのホモ接合性Agxtマウスが、野生型(0.2mmol/L)と比較して、正常値を超える5〜10倍の尿中シュウ酸塩上昇となる軽度高シュウ酸尿症(1〜2mmol/L)を示した。雄性の30〜50%および雌性の0%が、高齢期(月齢4〜7カ月)に軽度腎石灰沈着症および尿路のシュウ酸カルシウム結石を発症したことも見出された。興味深いことに、均質なC57Bl6系統で変異体を分析すると、高シュウ酸尿症はいずれの性別においても尿路結石の発症には関連しておらず、これは、この疾患に典型的に観測される表現型の変動を強調するものである。
【0172】
合計44匹の雄性マウス(La Laguna Tenerife、スペイン、Salido博士によって育てられた系統AGT1KO/129sv)をこれらの実験で使用した。マウスを、対照群と3つの実験群に無作為に分割した。マウスは20〜25グラムの体重で、月齢6カ月未満であった。
【0173】
AGT1KO(129sv)マウスを、エチレングリコール(EG)でチャレンジして、重篤な高シュウ酸尿症および腎実質へのシュウ酸カルシウム沈着形成を引き起こした。EGは、肝臓でシュウ酸塩に代謝される一般的アルコールである。通常、2〜6週のEGチャレンジ後、129/sv背景のAGT1KOマウスは、(i)尿中のシュウ酸塩の可変排出、(ii)クレアチニンクリアランスの減少、および(iii)最終的には腎不全および死に至る腎石灰沈着症によって決定される腎機能障害の徴候を示す。
【0174】
処理の前に7日間、マウスを個々の代謝ケージ(Tecniplast USA Inc、米国ペンシルベニア州エクストン)に順応させ、シュウ酸塩0.02〜0.08%未満およびカルシウム約0.5〜0.9%を含有する標準ブリーダー食(タンパク質17%、脂肪11%、炭水化物53.5%)を与えた。順応期間後、マウスを4群に分割し、3つの処理群に食餌と混合したシュウ酸デカルボキシラーゼ−CLECを与え、マッチした対照群には、試験物質の添加なしに同じ食餌を与えた。処置の初日から試験の最後まで、全マウスに0.7%EGを補充した飲料水を不断で与えた。チャレンジの数日後、マウスは1日当たり約3〜6mmol/Lのシュウ酸塩を尿中に排出するが、それは野生型(チャレンジなし)マウスの約10〜20倍高い。
【0175】
OXDC−CLEC酵素の投与;用量範囲試験:系統AGT1KO/129svからの合計44匹の雄性マウスを、OXDC−CLECの用量試験に使用した。マウスは体重が20〜25グラムであり、月齢6カ月未満であった。マウスをEGでチャレンジし、次いで対照群と実験群に無作為に分割した。架橋した結晶(1%グルタルアルデヒド;実施例9参照)として配合された3つの異なる用量の組み換え型シュウ酸デカルボキシラーゼの効率を、連続4週間かけてモニタした。この実施例で使用される用語「OXDC−CLEC」は、架橋した結晶(1%グルタルアルデヒド、実施例9に記載として配合された組み換え型シュウ酸デカルボキシラーゼを指す。OXDC−CLECを、凍結/乾燥させた食餌の酵素混合物として、見掛けの用量5、25、および80mg/日で経口投与した。10mMのTris−HCl緩衝剤(pH7.0)中の適量の酵素スラリーを食餌3.5gと混合し、凍結乾燥した。各朝、食餌容器を、食餌/酵素混合物約7gで再充填した。
【0176】
OXDC−CLECの効率の評価:酵素療法の効率を、尿中シュウ酸塩低減、腎実質におけるシュウ酸カルシウム沈着の防止、および生存によってモニタした。試験の終了時に生存マウスを屠殺し、クレアチニン測定のために血液サンプルを採取した。
【0177】
尿サンプルの分析:尿中アスコルビン酸とシュウ酸塩との自発的破れを最小限に抑えるために、代謝ケージにおいて24時間の尿サンプルを酸で収集した(尿3〜4ml当たり6Nの塩酸50μl)。さらなる分析まで、尿サンプルを−20℃で保存した。シュウ酸塩およびクレアチニンレベルのために、毎日の利尿および数回の24時間の尿サンプルを収集し分析した。シュウ酸塩およびクレアチニンのアッセイを、実施例15に記載する。シュウ酸塩およびクレアチニンの尿排出を、24時間の尿サンプル(mL)に排出されたシュウ酸塩またはクレアチニンのμmolとして表した。スチューデントt検定を使用してデータを統計的に分析した。
【0178】
血液サンプルの分析:試験の終了時にマウスを屠殺し、血清サンプルを収集した。、血清クレアチニン測定では、Jaffe反応法をわずかに改変したもの(例えば、the Creatinine Microassay Plate Kit from Oxford Medical Research、Inc.;Slot、Scand J. Clin. Lab. Invest.17巻:381頁、1965年;およびHeinegard D、Clin. Chim. Acta43巻:305頁、1973年参照)を使用した。非希釈血清サンプル80μlを、アルカリピクリン酸800μlとキュベット内で混合し、室温で30分間インキュベートした。510nmにおいて分光光度法で発色を測定し、次いで、60%の酢酸33.3μlを添加して非特異性反応をクエンチした。サンプルを十分に混合し、5分後に、室温でのインキュベーションを510nmにおいて再度読み取った。最終吸光度は、2つの読み取り値の差として存在する。標準曲線については1mMクレアチニン溶液の連続希釈を使用した。
【0179】
クレアチニンクリアランスの測定によって、腎機能を間接的にモニタした。クレアチニンクリアランスを、クレアチニン(Ucr×V)の排出率として表し、Ucrは、血漿クレアチニン(Pcr)で除算した尿サンプルのクレアチニン濃度(μmol/L)を表す。これは、
cr=(Ucr×V)/Pcr=mL/h
として表される。
【0180】
試験中にモニタした安全性パラメータは、死亡、食餌および水分摂取、ならびに体重であった。試験中、死亡のチェックおよびケージ側部での臨床観察を1日1回実施した。食餌摂取を毎日測定し、水分摂取を週毎記録した。全動物の体重を、試験の最初および試験の最後に記録した。
【0181】
図3に示すように、EG−チャレンジAGT1KO(129sv)マウスへのOXDC−CLECの経口投与は、マッチした非処理対照マウスと比較して、処理の4日目から試験の最後まで、尿中シュウ酸塩レベルを有意に低減した。3つの全処理群において30%および50%の間の減少が観測され、最高用量群(OXDC−CLEC80mg)では最大減少が観測された。OXDC−CLEC25mgおよび5mgの低用量では、尿中シュウ酸塩を最大35%低減した。
【0182】
不対のスチューデント両側t検定によって結果を分析する。試験の最初に、各投与群はn=11のマウスを有していたが、エチレングリコールチャレンジによって試験過程中に数匹のマウスが死亡した。提示された結果は、尿のシュウ酸塩測定の特定日に生存していたマウスのみを含む。対照群における尿中シュウ酸塩排出の釣鐘型曲線は、尿中シュウ酸塩の最初の上昇が、腎石灰沈着症、腎臓濾過機能の低下、および経時的なシュウ酸塩排出率の結果的な低下、ならびに最悪の場合には最終的な死亡をもたらすという観測によって最も十分に説明が付く。
【0183】
クレアチニンクリアランス測定による腎機能の評価。試験の最後に、4週間のEGチャレンジを生き残った全動物を屠殺し、血液を収集して血漿クレアチニンおよびクレアチニンクリアランスを測定した。80mg投与群の全11匹のマウスが4週間のEGチャレンジを生き残り、25mgのOXCD−CLEC投与群において11匹のうち8匹のマウスが生き残り、5mgのOXCD−CLEC投与群において11匹のうち8匹のマウスが生き残り、対照群において11匹のうち7匹が生き残った。血清クレアチニン測定では、上記のわずかに改変したJaffe反応法を使用した(例えば、the Creatinine Microassay Plate Kit from Oxford Medical Research、Inc.;Slot、Scand J. Clin. Lab. Invest.17巻:381頁、1965年;およびHeinegard D、Clin. Chim. Acta43巻:305頁、1973年参照)。
【0184】
経口投与したOXDC−CLECの腎機能に対する効率を、クレアチニンクリアランスを測定することによって評価した。全1カ月間の試験期間を生き残ったマウスのクレアチニンクリアランスを図4に示す。対照群と比較すると、クレアチニンクリアランスは、OXDC−CLEC80mgを投与された生存マウス(p<0.05)においてより有意に高かった。
【0185】
OXDC−CLEC80mg処理群の全マウス(11/11)は、4週のEGチャレンジレジメンを生き残ったが、対照群ではわずか7匹のマウス(7/11)がレジメンを生き残った。クレアチニンクリアランスによってアッセイした腎臓濾過率も、80mg投与群のものより有意に低かった(図4)。
【0186】
腎臓組織病理分析:マウスの腎臓を、パラフィン包埋のために定期的に処理し、腎臓の完全な断面が得られるように位置した。各腎臓を、腎臓1個当たり4μmの12枚の連続切片に切断し、組織学的定期試験のためにヘモトキシリンおよびエオシンのいずれかで染色し、または腎組織のシュウ酸カルシウム結晶の存在を検出するための特定のYasue金属置換組織化法によって染色した。20×倍率を使用して顕微鏡でスライドを調査し、腎臓内の解剖学的領域(皮質、髄質、および乳頭)のそれぞれに対して同じ基準を適用して、4つの分類尺度の下で調査者が切片に点数付けした。点数は、(i)なし(いかなる領域にもシュウ酸塩結晶がない);(ii)最小(どの領域にも1〜5個の結晶);(iii)中程度(どの領域にも6〜10個の結晶);および(iv)重篤(全ての領域が結晶の多数の収集を含む)とした。
【0187】
処理動物と対照動物の両方からの腎組織の代表的画像を、図5A〜5Cに示す。Yasue−陽性のシュウ酸カルシウム結晶は、腎実質において20×倍率で可視であった。80mgのOXDC−CLECで処理した処理群の全マウスは、シュウ酸カルシウム沈着の痕跡のない、正常で健康な腎臓を有していた(図5A)。対照群および低用量処理群の数匹のマウスに、中程度の腎石灰沈着症(図5B)および重篤な腎石灰沈着症(図5C)が観測された。白色矢印は、シュウ酸カルシウム沈着を示し、図5Cの灰色矢印は、間質性線維症を伴う大領域を示している。
【0188】
特定のYasue金属置換法を使用する腎臓の組織学的試験によって、主に腎臓の皮質および髄質部分への沈着が示された。重篤な腎石灰沈着症(図5C)の場合、シュウ酸カルシウム沈着は、腎臓内に無作為に分布していた。線維症および炎症の徴候も可視であり、場合により糸球体内にシュウ酸カルシウム沈着が形成されることによって、糸球体の形態が変化していた。80mg投与群の全マウス(11/11)は、剖検の際には正常な形態の腎臓を有しており、腎臓にも膀胱にもシュウ酸カルシウム沈着の痕跡はなかった。それとは逆に、未処理対照群のマウスの100%(11/11)にシュウ酸カルシウム沈着があった。低処理群(OXDC−CLEC25mgまたは5mg)では、マウスの63%(7/11)に腎臓へのシュウ酸カルシウム沈着があった。これらの結果は、EG−チャレンジAGT1KOマウスにおけるOXDC−CLECでの経口療法の、高シュウ酸尿症の低減および腎臓へのシュウ酸カルシウム結晶沈着の防止に対する、用量依存性のプラス効果を示すものである。4群全てのマウスからの組織病理分析の概要を、表3に示す。
【0189】
【表3】

【0190】
対照マウスおよび3つの異なる処理群のマウスにおける尿路結石形成頻度に対する経口OXDC−CLEC処理の効果も評価した。シュウ酸カルシウム一水和物結石およびシュウ酸カルシウム二水和物結石の、結石の主な2つのタイプがEG AGT1KOマウスの膀胱に見出された。光沢のある可視の膀胱結石が、対照群のマウスの36%(4/11)に存在し、2つの低処理群のマウスの19%(2/11)に存在した。80mgの高用量OXDC−CLEC群には、膀胱結石は観測されなかった。白っぽい粗い芽のような(budding)表面を伴う結石がシュウ酸カルシウム一水和物から主になり、鋭利な結晶角を伴う比較的大型の結石がシュウ酸カルシウム二水和物に相当することが、X線回折分析によって示された。
【0191】
カプラン−マイヤー推定量による生存率分析。エチレングリコールでチャレンジしたマウスの生存率へのOXDC−CLEC処理の効果を、カプラン−マイヤー法を使用して分析し、ここでは幾つかの時点で死亡した対象の生存率を、その時点でまだ試験下にあった対象の数で除算する。この方法は、試験における各群間の差異を如実に示すものである(図6)。算出にはKaleidaグラフおよびSTATSなどの統計プログラムがしばしば使用される。
【0192】
OXDC−CLECでの経口治療によって、マッチした対照の生存率と比較して、EG−チャレンジAGT1KOマウスの生存率が増大した。80mgOXDC−CLEC処理群の全マウス(11/11)が、疾患の徴候なしに30日の試験期間を生き残り、対照群の11匹のマウスのうち4匹が、尿路結石の発症と共に重篤な腎石灰沈着症を有していた。
【0193】
OXDC−CLECは経口投与を対象としているため、胃腸(GI)組織への架橋結晶の副作用の潜在的可能性を評価した。処理したEG−チャレンジAGT1KOマウスの消化管を肉眼で調査し、胃(胃体および胃洞)および小腸(空腸および回腸)を含むGI管の様々な部分でヘモトキシリン−エオシン染色での組織学的分析を実施した。OXDC−CLECでの4週間の経口治療は良好な耐用性を示し、GI管に構造的または形態的変化を生じなかったことが、評価によって確認された。大腸についても類似の結果が観測された。
【0194】
シュウ酸デカルボキシラーゼ−CLECで経口治療したEG−チャレンジAGT1KOマウスにおける用量範囲試験の概要。原発性高シュウ酸尿症動物モデルにおけるOXDC−CLECでの経口治療は安全であり、効果的であった。概して、OXDC−CLECでの4週間の経口治療は、尿中シュウ酸塩を30〜50%だけ低減した。3つの用量の評価試験物質のぞれぞれで、有意な持続的低減が記録された。最高治療用量での4週間の経口治療で、腎実質のシュウ酸カルシウム沈着が防止された。4週間の経口治療によって、2つの低用量での生存率が増大し、研究された最高用量では動物の死亡が防止された。最終的に、4週間の治療レジメンではGI管における巨視的または微視的変化はもたらされなかった。
【0195】
(実施例15)アッセイ
タンパク質濃度決定。シュウ酸デカルボキシラーゼの濃度を、280nmでの吸光度を測定することによって決定した。1.36の光学密度(OD)の吸光度を1mg/mlとみなした。
【0196】
OXDC活性アッセイ。改変したSigma Aldrichプロトコル(シュウ酸デカルボキシラーゼの酵素アッセイ EC4.1.1.2)を使用して、可溶性シュウ酸デカルボキシラーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶、および架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶(OXDC−CLEC)の活性を測定した。これは、2つのステップによる活性のアッセイであり、第1の反応ではOXDCによって、基質のシュウ酸塩がギ酸塩および二酸化炭素に変換する。第2の反応では、ギ酸水素を化学量論的にNADに転移して、ギ酸デヒドロゲナーゼによってNADHを形成する。NADHのその後の濃度を、分光光度によって340nmにおいて定量化する。酵素活性の単位(u)は、以下に従って定義される。1単位のシュウ酸デカルボキシラーゼは、pH5および37℃において1分当たり、1.0μmolのシュウ酸塩をギ酸塩および二酸化炭素に形成する。
【0197】
5mMのリン酸カリウム緩衝剤pH7.0と1mMのDTT(Sigma)において、OXDC結晶およびOXDC−CLECについてそれぞれ0.007〜0.02mg/mLおよび0.009〜0.03mg/mLの濃度で、アッセイサンプルを標準化した。タンパク質濃度は、280nmにおける吸光度によって決定した。使用前に、40U/mLのギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)を冷却したジ(di)HO中で調製した後、氷上で維持した。他の全ての試薬を室温で維持した。試薬を、以下の順で2mlのマイクロチューブに撹拌しながら添加した。300μLの100mMリン酸カリウムおよび200μLのシュウ酸カリウムpH4.0を混合し、37℃の水浴中で5分間温め、次いで100μLの5mMリン酸カリウムと1mMのDTTを、空のバイアルに入れ、100μLの希釈シュウ酸デカルボキシラーゼを、他の全てのバイアルに添加した。2分後、150mMの二塩基性リン酸カリウムで反応を停止した。第2の反応では、25μLのNAD溶液を100μLのFDH溶液に添加し、さらに20分間インキュベーションを続けた。次いで全サンプルを、16,100rpmで1分間遠心分離にかけた。次いで、反応混合物を1.5mLのUVキュベットに移し、Shimadzu BioSpec(Shimadzu Scientific Instruments、メリーランド州コロンビア)を使用して340nmにおける吸光度を決定し記録した。
【0198】
酵素比活性を以下のようにして算出した。
OXDC複数単位/mL=[Abs×全体積(1.725mL)×希釈係数]/(吸光係数(Ext.)NADH=6.22)(体積OXDC=0.1mL)(アッセイ時間=2/5分)
特定の実験では、シュウ酸デカルボキシラーゼの架橋結晶(OXDC−CLEC)(終夜撹拌することによって、1%グルタルアルデヒドで架橋したダイヤモンド型結晶、実施例9参照)を、OXDC結晶と比較した。OXDC−CLECは、対応する結晶性OXDC調製物の活性の50%を保持していた。
【0199】
比色分析法によるシュウ酸塩決定。尿中シュウ酸塩の定量的決定のためのシュウ酸塩比色分析キットを、Trinity Biotech USA(ミズーリ州セントルイス)またはGreiner Diagnostic AG(スイス、Dennliweg 9)から購入した。尿サンプルを希釈し、製造者の指示に従って処理した。このアッセイは、2つの酵素反応を含む。(a)シュウ酸塩オキシダーゼによって、シュウ酸塩を二酸化炭素および過酸化水素に酸化すること、ならびに(b)このようにして形成した過酸化水素を、ペルオキシダーゼの存在下、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)および3−(ジメチルアミノ)安息香酸(DMAB)と反応させて、590nmにおける吸光度によって検出できるインダミン色素を得ること。生成された色の強度は、サンプル中のシュウ酸塩濃度と正比例する。尿中シュウ酸塩値を、標準曲線から算出する。
【0200】
比色分析法によるクレアチニン決定。尿中クレアチニンの定量的決定のためのクレアチニン比色分析キットを、Quidel Corporation(カリフォルニア州サンディエゴ;METRAクレアチニンアッセイキット)またはRandox Laboratories(英国アントリム州)から購入した。このアッセイは、クレアチニンがアルカリ性溶液中でピクリン酸と反応して、492nmの吸光度を有する生成物を形成するという原理に基付いている。形成された錯体の量は、クレアチニン濃度に正比例する。単一代謝ケージから収集した24時間のラットの尿サンプルを、再蒸留水で15倍に希釈した。希釈した尿サンプル20μlを、20μlのピクリン酸/水酸化ナトリウム(1:1)と混合した。室温での2分間のインキュベーションでインキュベートした後に、492nmにおける吸光度を測定した。標準曲線から尿中クレアチニン値を算出した。
【0201】
(実施例16)ヒトのシュウ酸塩関連障害の治療のためのOXDC療法
高シュウ酸尿症などのシュウ酸塩関連障害の治療または防止の必要があるヒトを、架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶の経口投与によって治療することができる。シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶は、疾患の症候および進行の重篤度に応じて担当医によって決定されるように、約10μg/kg〜25mg/kg;1mg/kg〜25mg/kg、または5mg/kg〜100mg/kgの用量で投与される。シュウ酸デカルボキシラーゼ架橋結晶は、1日に1、2、3、4、または5回投与されるか、または週1回もしくは2回など回数を減らして投与される。このOXDC−CLECの経口投与は、少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、またはそれ以上の尿中シュウ酸塩レベルの減少をもたらす。
【0202】
(実施例17)シュウ酸デカルボキシラーゼの組み換え産物
ヒト胎児腎臓(HEK293)細胞において。OXDCをコードするDNA(例えば、配列番号1または2)を、適切な発現ベクターにクローニングする。配列確認後、ベクターを線形化することができ、6cm直径皿中、Lipofectamine(商標)2000トランスフェクション試薬を使用して、予め播種したHEK293細胞への線形化ベクターの形質転換を行うことができる。適切な媒体中で、トランスフェクション反応物を終夜培養し、次いで0.5g/Lのネオマイシンを補充した媒体中で形質転換体を選択する。安定にトランスフェクトしたHEK293細胞クローンを、ネオマイシン含有媒体中で最大3週間増殖させた後に同定する。次いでクローンを単離し繁殖させ、OXDC発現に使用する。
【0203】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において。OXDC遺伝子をコードするDNAを、適切な発現ベクターにクローニングする。次いで、培養したCHOlec3.2.8.1細胞をトリプシン消化によって分離し、遠心分離によって回収する。次いでその細胞をエレクトロポレーションリン酸緩衝生理食塩水緩衝剤(EPBS)に懸濁して最終濃度約1×10/mlにし、エレクトロポレーションによって線形化ベクターで形質転換する。終夜の培養後、その媒体を、0.5g/Lのネオマイシンを補充した媒体と交換する。媒体の連続的な変更を行って、安定にトランスフェクトしたCHO細胞クローンをスクリーニングする。安定にトランスフェクトした細胞クローンが確立し繁殖すると、その細胞をOXDC発現に使用する。
【0204】
ピキアパストリスにおいて。OXDC遺伝子をコードするDNAを、適切な発現ベクターにクローニングする。配列確認後、ベクターを線形化し、次いでピキアパストリス宿主細胞に形質転換する(Whittakerら、J. Biol. Inorg. Chem.7巻:136〜145頁、2002年参照)。形質転換体をZeocinで選択し、緩衝グリセロール錯体媒体(BMGY)中で増殖させ、メタノールで誘発した。次いでOXDCを培地から単離した。
【0205】
サッカロマイセスセレビシエにおいて。合成OXDC遺伝子は、例えば発現のためのGal1プロモーター(pGal)および終止配列を含有する適切な発現ベクターにクローニングすることができる。配列確認後、発現ベクターをエレクトロポレーションによってコンピテントなサッカロマイセスセレビシエW303−1Aに形質転換する。形質転換体をスクリーニングし、OXDC発現への使用前に繁殖させる。
【0206】
昆虫細胞において。OXDCをコードするDNAを、例えばバキュロウィルス系などの適切な発現ベクターにクローニングすることができる。配列確認後、ベクターをコンピテントなDH10Bac大腸菌細胞に形質転換することができ、組み換え型バクミドを含有する大腸菌細胞をスクリーニングし検証することができる。組み換え型バクミドDNAを単離し、Cellfectin(商標)試薬(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)などの試薬を使用して昆虫のSf9細胞をトランスフェクトするために使用する。次いで、組み換え型バキュロウィルス粒子を単離し繁殖させ、滴定(titer)した後に使用してOXDC発現のためにSf9細胞を感染させた。
【0207】
大腸菌において。OXDCをコードするDNAを、適切な大腸菌発現ベクターにクローニングする。配列確認後、ベクターをコンピテントな大腸菌BL21または必要に応じて大腸菌Origami B(DE3)に形質転換し、それによってこの系統で発現する組み換え型タンパク質におけるジスルフィド結合の形成が可能となる。抗生物質を含有する栄養プレートで形質転換体を増殖することによって形質転換体をスクリーニングし、OXDC遺伝子特異的プライマーを使用してコロニーPCRによって検証する。次いで、形質転換体を液体媒体中で培養し、OXDC発現のためにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発する。
【0208】
(実施例18)配列
カンジダボイジニでの発現のためのエノキタケ配列(配列番号1)。2つのノットI配列にアンダーラインを引いている。太字のATAトリプレットはスペーサーコドンである。二重アンダーラインの配列は、C.ボイジニに合わせて最適化したα接合因子配列である。OXDCをコードする配列を小文字で示す。
【0209】
【数1】

【0210】
【数2】

【0211】
枯草菌配列(配列番号2):アンダーラインを引いた位置705の「G」は、A→G塩基置換を示す。この塩基置換は、アミノ酸配列を変えるものではない。
【0212】
【数3】

【0213】
枯草菌配列から翻訳されたシュウ酸デカルボキシラーゼタンパク質を以下に示す(Swiss−Prot:O34714)(配列番号3)。
【0214】
【数4】

【0215】
(実施例19)低pH3.0における可溶性OXDC、結晶性OXDC、およびOXDC−CLECの安定性
可溶性OXDC、2.5mg/mL(実施例5)、結晶性OXDC、5.0mg/mL(実施例5)、およびOXDC−CLEC、5.0mg/mL(実施例10)を、それぞれエッペンドルフチューブ内でクエン酸ナトリウム緩衝剤pH3.0、1mLに入れ、37℃において5時間インキュベートした。酵素の安定性測定のために、0、2、および5時間目にサンプルを採取した。活性を実施例15のように決定した。pH3.0における0、2、および5時間後のOXDCおよびOXDC−CLECの安定性を示す結果を図7に示す。OXDC−CLECは、pH3.0における5時間のインキュベーション後に約100%の活性を保持していたが、可溶性OXDCは、最初の2時間以内に約51%の活性を喪失し、5時間後には元のものと比較してわずか約40%の活性が残った。結晶性OXDCは、1時間で約68%の活性、2時間で約67%の活性を保持していることから、可溶性OXDCよりもより安定であった。
【0216】
(実施例20)ペプシンの存在下での可溶性OXDC、結晶性OXDC、およびOXDC−CLEC結晶の安定性
可溶性OXDC、1.0mg/mL(実施例5)、結晶性OXDC、10.0mg/mL(実施例5)、およびOXDC−CLEC、1.0mg/mL(実施例10)を、それぞれエッペンドルフチューブ内でクエン酸ナトリウム緩衝剤pH3.0、1mLに入れ、OXDC対ペプシン50:1の比でペプシンを用いて37℃において5時間インキュベートした(ペプシンストックは、25mMのTris−HCL緩衝剤、pH7.5中、1mg/mLの濃度で生成した)。酵素の安定性測定のために、サンプルを0、2、および5時間目に採取した。活性を実施例15のように決定した。ペプシンの存在下での0、2、および5時間後の可溶性OXDC、結晶性OXDC、およびOXDC−CLECの安定性を示す結果を図8に示す。
【0217】
図8に示すように、可溶性OXDCに対するOXDC−CLEC配合物の優位性は、共に低pHでペプシンの存在下で明らかになった。OXDC−CLECサンプルは、37℃における5時間のインキュベーション後に約60%の活性を保持しており、可溶性OXDCおよび非架橋結晶性OXDCの大部分は、2時間後にはペプシンによって分解され、5時間後には約20%の活性しか残っていなかった。
【0218】
(実施例21)キモトリプシンの存在下での可溶性OXDC、結晶性OXDC、およびOXDC−CLECの安定性
可溶性OXDC、1.0mg/mL(実施例5)、結晶性OXDC、10.0mg/mL(実施例5)、およびOXDC−CLEC、1.0mg/mL(実施例10)を、それぞれエッペンドルフチューブ内で25mMのTris−HCl緩衝剤pH7.5、1mLに入れ、OXDC対キモトリプシン50:1の比でキモトリプシンを用いて37℃において5時間インキュベートした(キモトリプシンストックは、新しく調製した25mMのTris−HCl緩衝剤、pH7.5中、1mg/mLの濃度で生成した)。酵素の安定性測定のために、サンプルを0、2、および5時間目に採取した。活性を実施例15のように決定した。キモトリプシンの存在下での0、2、および5時間目の可溶性OXDC、結晶性OXDC、およびOXDC−CLECの安定性を示す結果を図9に示す。
【0219】
図9の結果によって、OXDC−CLECおよび非架橋結晶性OXDCは、37℃における5時間のインキュベーション後に安定であり、キモトリプシンによるタンパク質分解切断に対して耐性があったことが示される。分析によって、OXDC−CLECおよび非架橋結晶性OXDC酵素が、5時間でその最初の値と比較して約100%の活性を保持していたことが示された。同時に、可溶性タンパク質は、キモトリプシンへの2時間の曝露後に約50%の活性を喪失し、5時間後には全ての可溶性OXDCが分解され、残った活性は0%であった。
【0220】
(実施例22)パンクレアチンで刺激を与えた腸液における可溶性OXDC、結晶性OXDC、およびOXDC−CLECの安定性
可溶性OXDC、5.0mg/mL(実施例5)、結晶性OXDC、10.0mg/mL(実施例5)、およびOXDC−CLEC、10.0mg/mL(実施例10)を、それぞれエッペンドルフチューブ内で、刺激を与えた腸液(刺激を与えた腸液を、USBの推奨に従って生成した。一塩基性リン酸カリウム6.8gmを、水250mlに溶解し、0.2Nの水酸化ナトリウム77mlおよび脱イオン水500mlと混合し、次いでパンクレアチン10gmを添加し、pHを0.2Nの塩酸または0.2Nの水酸化ナトリウムのいずれかで調節してpH6.8にし、水を添加して1Lにした)1mLに入れ、37℃で2時間インキュベートした。酵素の安定性測定のために、サンプルを0、1、および2時間目に採取した。活性を実施例15のように決定した。結果を図10に示す。
【0221】
図10に示された結果は、OXDC−CLECが、パンクレアチンで刺激を与えた腸液中で安定であり、約100%の活性が保存されていたことを示す。それとは対照的に、可溶性OXDCの大部分は、1時間以内にパンクレアチン(リパーゼ、アミラーゼ、およびプロテアーゼのミックス)によって分解され、それぞれ1時間および2時間のインキュベーション後には約26%〜28%の間の活性しか残っていなかった。非架橋結晶性OXDCは、パンクレチンの存在下ではその可溶性形態よりもかなり安定であり、非架橋結晶性OXDCは、1時間および2時間のインキュベーション後にはそれぞれ約76%および約49%だけ活性を喪失した。
【0222】
さらにOXDC−CLECは、ペプシンおよびキモトリプシンなどのプロテアーゼからの切断から酵素を保護する。OXDC−CLECの安定性は、同じ条件下では、可溶性OXDCの安定性の少なくとも約100%、200%、300%、400%、またはそれ以上のものであり得る。OXDC−CLECは、同じ条件下でその活性を維持している可溶性OXDCよりも少なくとも約2、3、または4倍高い活性を維持している。したがって可溶性OXDCと比較すると、OXDC−CLECは、約2.5または3の酸性pH〜約7.5または8.5のpHの範囲であり、様々なプロテアーゼを含有する腸の厳しい条件下で活性であり、かつ安定である。
【0223】
本発明の幾つかの実施形態を説明してきた。しかしなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な改変を行い得ることが理解されよう。したがって、他の実施形態も先の請求の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記結晶が、シュウ酸デカルボキシラーゼの可溶性形態よりも活性な、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記結晶の活性が、pH4における可溶性形態の活性より少なくとも約100%高い、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶が、架橋剤で架橋されており、シュウ酸デカルボキシラーゼの可溶性形態の活性の少なくとも約100%を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶が、架橋剤で架橋されており、シュウ酸デカルボキシラーゼの可溶性形態の活性の少なくとも約150%を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶が、約0.02%〜約1.5%(w/v)のグルタルアルデヒドで架橋されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記結晶が、約0.5%(w/v)のグルタルアルデヒドで架橋されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
哺乳動物中のシュウ酸塩を低減する方法であって、該シュウ酸塩を低減するのに十分な量で、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を含む組成物を哺乳動物に投与するステップを含む方法。
【請求項10】
前記シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶が、架橋剤によって共有結合している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記結晶が、哺乳動物の胃腸管において活性かつ安定である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶が、約pH2〜約pH8で活性かつ安定である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が経口投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が体外装置内で使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物の投与によって、シュウ酸塩を少なくとも約15%低減する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が経口投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
シュウ酸塩濃度をアッセイする方法であって、生体サンプルを調製するステップ、およびシュウ酸デカルボキシラーゼ結晶または架橋シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を使用してサンプル中のシュウ酸濃度を測定するステップを含む方法。
【請求項18】
哺乳動物の高シュウ酸濃度に関連する障害を治療する方法であって、該障害に関連する1つまたは複数の症候を低減するのに十分な量で、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶を哺乳動物に投与するステップを含む方法。
【請求項19】
前記障害が、腎臓または肝臓機能に関連する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記障害が、原発性高シュウ酸尿症、腸管性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール中毒、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、尿結石、腎結石、慢性腎疾患、血液透析、および胃腸バイパスからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
(a)塩濃縮物中にタンパク質を可溶化し、またはタンパク質を濃縮するステップ、および
(b)前記塩濃縮物を還元して結晶を形成するステップ
を含む、タンパク質の結晶化法。
【請求項22】
ステップ(a)の前記塩濃度が少なくとも約0.3Mである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(a)の前記塩濃度が約0.5Mである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記塩が、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記タンパク質がシュウ酸デカルボキシラーゼである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
(a)細胞に塩を添加して、塩濃縮物としての細胞混合物を形成するステップ、および
(b)前記塩濃縮物を還元して結晶を形成するステップ
を含む、細胞抽出物からタンパク質を結晶化する方法。
【請求項27】
ステップ(a)の前記塩濃度が少なくとも約0.3Mである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(a)の前記塩濃度が約0.5Mである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記塩が、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞混合物がホモジナイズされる、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記タンパク質がシュウ酸デカルボキシラーゼである、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
請求項21に記載の方法によって生成される、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶。
【請求項33】
請求項22に記載の方法によって生成される、シュウ酸デカルボキシラーゼ結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−545622(P2009−545622A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523059(P2009−523059)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/075091
【国際公開番号】WO2008/105911
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(500498730)アルタス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】