説明

結束された板体の飛出し防止方法

【課題】多数枚の板体が積層された状態で結束された結束板体群を車輛に積載して輸送する際に、車輛の制動停止時や、急な加減速時に作用する力により一部の板体が飛び出すのを確実に防止し、板体の結束状態を確実に維持して積み降ろし作業の障害になったり、金属板に傷が付くのを防止する。荷台における結束板体群の積載効率が低下するのを防止しながら板体の飛び出しを有効に防止する。
【解決手段】結束板体群の走行方向前端面及び後端面に圧接する一対の挟持アームにより挟持し、走行方向に沿った板体の移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の枚数毎に結束された普通鋼板、特殊鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等の金属鋼板やベニヤ合板等の各種板体を結束した結束板体群を車輛に積載して輸送する際に、車輛の制動停止時に結束板体群から板体が飛び出すのを防止する結束された板体の突出し防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の寸法に裁断された普通鋼板、特殊鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等の金属鋼板や合板等の各種板体を足付きパレット上に、所定枚数で積層した後、該パレットの下面に通された金属バンドの両端部を板体の上面側にて締め付けて結束し、この結束状態の結束板体群を車輛等に積載して輸送している。
【0003】
上記足付きパレットの足部は、パレット下面における長手方向の前後側で、長手直交方向に延び、車輛に対する積み込みを行う際に使用するフォークリフトのフォークが差し込み可能な高さからなる。また、金属バンドは、パレットの長手直交方向へ延びて積層された板体の上面側で両端部を締め付けて結束するように配置される。
【0004】
そして上記した結束された結束板体群を輸送する際には、車輛の荷台に対し、パレットの足部が車輛の走行方向に対して直交する方向を向くように積み込んでいる。即ち、積み込まれた結束板体群を荷台から降ろす際には、荷台の側面に配置されたフォークリフトのフォークを、パレットの下面と前後の足部で形成される空間内に差し込んでパレット全体を持ち上げて積み降ろし作業を行っている。
【0005】
このため、荷台上に載置された結束板体群は、車輛の走行方向に対しては金属バンドが巻き付けられていない状態になっている。このような状態で結束された結束板体群を輸送する際、積載された結束板体群に対し、車輛の制動停止や急激な加減速による力により、金属バンドが直接接触していない内側に位置する一部の板体が車輛の走行前後方向へ飛出すおそれがある。板体が車輛外へ飛び出した場合には、他の車輛や歩行者等に危害を加える恐れがあると共に残りの金属板を結束状態に保つことが困難になって荷崩れを起こし、積み降ろし作業に手間と時間がかかったり、板体が傷付いて品質を低下させる恐れがある。
【0006】
上記した問題を解決するため、荷台の必要箇所に複数本の背柱を設け、それぞれの背柱に結束板体群の走行方向側の端面を押し当てて板体の飛び出しを防止しているが、背柱を設けるために多くのスペースを必要とする結果、結束板体群の積載効率が悪くなる問題が生じていた。
【特許文献1】実開−号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、結束された結束板体群を車輛に積載して輸送する際に、車輛の制動停止時や、急な加減速時に作用する力で金属バンドが接触していない一部の板体が飛び出して危害を加える恐れがある点にある。また、板体が完全に抜け出した場合には、結束状態が緩んで荷崩れを起こして積み降ろし作業の障害になったり、板体が傷付いて品質を低下させる点にある。更に、荷台に、結束板体群の端面が押し当てられる背柱を設けることにより上記問題を解決できるが、荷台の積載スペースが減少して積載効率が悪くなる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、積載パネル上に積層された多数枚の板体を走行直交方向に掛け渡された金属バンドにより緊締して結束した結束板体群を車輛の荷台に積載して輸送する際に、結束板体群の走行方向前端面及び後端面に圧接する一対の挟持アームにより挟持し、走行方向に沿った板体の移動を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、多数枚の板体が積層された状態で結束された結束板体群を車輛に積載して輸送する際に、車輛の制動停止時や、急な加減速時に作用する力により一部の板体が飛び出すのを確実に防止し、板体の結束状態を確実に維持して積み降ろし作業の障害になったり、金属板に傷が付くのを防止することができる。荷台における結束板体群の積載効率が低下するのを防止しながら板体の飛び出しを有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、結束板体群の走行方向前端面及び後端面に圧接する一対の挟持アームにより挟持し、走行方向に沿った板体の移動を規制することを最良の形態とする。
【実施例】
【0011】
以下に実施形態を示す図に従って本発明方法を説明する。
先ず、本発明方法で実施される結束された結束板体群に付いて説明すると、図1に示すように結束される板体としての金属鋼板1は所定の寸法に裁断された普通鋼板、特殊鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、銅板等で、積載パネル3上に所定の枚数、積層された結束金属鋼板群5を金属バンド7により結束する。短冊状の金属鋼板1にあっては、積載パネル3上に、所定の枚数で集積された結束板体群としての結束金属鋼板群5を長手直交方向へ複数列配置し、これら複数列の結束金属鋼板群5を金属バンド7により一体に結束する。なお、板体としては、上記した金属鋼板の他に、ベニヤ合板等の板状体であってもよい。
【0012】
上記該積載パネル3は、集積される一枚状の金属鋼板1、短冊状の金属鋼板1にあっては結束金属鋼板群5の配列数に応じた大きさの載置面を有した、例えば合成樹脂パネル、木質パネルの載置板3a下面で、長手方向(車輛の走行方向)の前後側に、後述するフォークリフトのフォークが差し込み可能な高さで、長手直交方向へ延びる足部3bがそれぞれ固定された構造からなる。
【0013】
そして積載パネル3上に積層された結束金属鋼板群5は、長手方向の前後側にて載置板3aの下面を通って上面側へ掛け渡された金属バンド7の両端部を締め付けて積載パネル3と共に一体に結束される。
【0014】
次に、本発明歩実施するのに使用する飛出し防止具に付いて説明すると、図2及び図3に示すように、飛出し防止具11の固定側フレーム13は、結束金属鋼板群5(金属鋼板1)の長手方向より短い長さで、例えば長手直交方向断面が横向きC形のアルミニウム押出し型材や折曲げ形成されたチャンネル鋼板で形成される。そして該固定側フレーム13の中空部内には、後述する可動フレーム19の他端部側が、長手方向へ伸縮するように挿嵌される。
【0015】
上記固定側フレーム13の一端部には、結束金属鋼板群5における長手方向の一方端面に沿って垂下する第1挟持アーム15が固定される。該第1挟持アーム15は、結束金属鋼板群5の高さに応じた長さであることが望ましいが、結束金属鋼板群5の上半分の端面に当接する長さであってもよい。固定側フレーム13の平面部には、錠止板17が長手方向に亘って固定され、錠止板17には、後述する錠止爪31が選択的に錠止する多数の錠止溝17aが長手方向へ所要の間隔をおいて形成される。
【0016】
固定側フレーム13の中空部内には、可動フレーム19が長手方向へ移動可能に挿嵌される。該可動フレーム19は、結束金属鋼板群5の長手方向より短い長さで、例えばアルミニウム押出し型材により形成される。該可動フレーム19の一端部には、結束金属鋼板群5の長手方向の他端面側に位置し、該端面に沿って垂下する第2挟持アーム21が固定される。該第2挟持アーム21は、結束金属鋼板群5の高さに応じた長さであることが望ましいが、結束金属鋼板群5の上半分の端面に当接する長さであってもよい。
【0017】
また、可動フレーム19の他端部には、支持板23が起立して固定され、該支持板23には、例えば可動フレーム19の長手方向に軸線を有した3本の支持軸25が固定される。そして各支持軸25には、取付け板27が、軸線方向へ摺動可能で、かつ若干の角度で揺動するように若干の隙間を設けて支持される。該取付け板27は、支持軸25に装着された圧縮ばね29の弾性力により可動フレーム19の他端部側に位置するように付勢され、その先端部下面には、錠止爪31が錠止溝17aに錠止可能に設けられる。
【0018】
次に、上記飛出し防止具11を使用した結束金属鋼板群5から金属鋼板1が飛出すのを防止する方法を説明する。
図4に示すように、作業者は、車輛の荷台(図示せず)上に複数の結束金属鋼板群5を所定の配置間隔で積載した後、それぞれの結束金属鋼板群5に対し、固定側フレーム13に対して可動フレーム19を結束金属鋼板群5の長手方向長さ(車両の走行方向長さ)以上に伸張させた状態で結束金属鋼板群5の上面に飛出し防止具11を配置し、第1挟持アーム15を結束金属鋼板群5の長手方向の一端面に沿って垂下するように配置すると共に該状態にて固定側フレーム13に対して可動フレーム19を縮小移動して結束金属鋼板群5の長手方向の他端面に対して第2挟持アーム21を当接させる。
【0019】
この状態にて取付け板27を、圧縮ばね29の弾性力に抗して第1挟持アーム15側へ移動して錠止爪31を揺動させながら対応する錠止溝17aに錠止させる。これにより結束金属鋼板群5の長手方向各端面を圧縮ばね29の弾性力により圧接する第1及び第2挟持アーム15・21により挟持させる。(図5参照)
【0020】
荷台に積載された結束金属鋼板群5は、上記状態で輸送されるが、車輛の急制動時や、急加速時及び急減速時には、結束金属鋼板群5の核金属鋼板1に作用する慣性力により積層されたそれぞれの金属鋼板1が滑り出て飛出そうとする。
【0021】
本例においては、上記したように結束金属鋼板群5における走行方向の前端面及び後端面に当接する第1及び第2挟持アーム15・21により結束金属鋼板群5から金属鋼板1の飛び出しを規制することができる。
【0022】
本発明を実施する際に使用する飛出し防止具11の錠止手段としては、以下のように構成してもよい。
図6に示すように支持板23の上部に、固定側フレーム13側に向かって延出する平面部23aを設け、該平面部23aの下面側に支持軸25の軸線と直交する垂直方向に軸線を有した複数本の軸61を設ける。
【0023】
一方、取付け板27の平面部27aに、支持軸25の軸線と一致する方向に延出する長孔27bを形成し、該長孔27b内に軸61の軸端部を挿通すると共に平面部23aと取付け板27の間に位置する軸61に圧縮ばね63を装着し、取付け板27を圧縮ばね63の弾性力により、常には錠止爪31が錠止孔17aに錠止するように付勢して錠止状態を保つ構成とする。尚、図6に示す変更例においては、実施例と同一の部材に付いては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0024】
図7に示すように、固定側フレーム13の可動フレーム19側端部には、図示する上下方向に軸線を有した回転軸71が軸支され、該回転軸71の下部には、歯車73が固着されている。また、該回転軸51の上端部には、回動操作するための摘み75が取付けられている。更に、回転軸71の近傍に位置する固定側フレーム13には、ストッパピン77が軸線方向へ移動可能で、かつ抜け止めされて支持されている。
【0025】
一方、可動フレーム19の上面には、長手方向に延出するラックギャ79が、歯車73と噛合うように固定されている。また、ラックギャ79のラック本体には、ストッパピン77が挿嵌されるストッパ手段の一部を構成する多数の係合孔79aが、長手方向に所要の間隔をおいて形成される。
【0026】
そして作業者は、結束金属鋼板群5における走行方向の前後端面にそれぞれの挟持アーム15・21を当接させた状態で摘み75を介して回転軸71を回動操作し、歯車73が噛み合うラックギャ79を介して可動フレーム19を固定側フレーム13側へ移動し、第1及び第2挟持アーム15・21により結束金属鋼板群5を走行方向にわたって挟持させた後、ストッパピン77を対応する係合孔79aに挿嵌して結束金属鋼板群55の結束状態を保つ。
【0027】
尚、回転軸71に回転方向が切換え可能なラチェット機構を設ける構成とすることによりストッパピン77及び係合孔79aを省略することができる。また、図7に示す変更例においては、実施例と同一の部材に付いては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0028】
図8に示すように、固定側フレーム13には、錠止手段の一部を構成する荷締め機81が取付けられている。該荷締め機81は、本体に回転可能に支持された巻取り軸(図示せず)、該巻取り軸を回転操作するレバー81a及びレバー81aの揺動操作に伴って巻取り軸の回転方向を選択するラチェット機構(図示せず)から構成される。そして荷締め機81の軸には、一端が可動フレーム19の第2挟持アーム21側に固着されたベルト(ラッシングベルト)、ワイヤー等の錠止手段の一部を構成する索条83の他端が巻き付けられる。荷締め機81に付いては、従来公知であるため、その詳細に付いては、省略する。
【0029】
そして作業者は、結束金属鋼板群5における走行方向の前後端面にそれぞれの挟持アーム15・21を当接させた状態で巻き方向が切換えられた荷締め機81のレバー81aを揺動操作して索条83を巻き取り、可動フレーム19を固定側フレーム13側へ移動して第1挟持アーム75及び第2挟持アーム79を結束金属鋼板群5における走行方向の各端面に圧接して挟持させる。
【0030】
尚、図8に示す変更例においては、実施例と同一の部材に付いては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
上記各実施例における第1及び第2挟持アーム15・21の内、少なくとも第1挟持アーム15における結束金属鋼板群5の走行方向端面に対する当接面には、磁気シートを取り付けて磁着できるようにすることにより結束金属鋼板群5に対する飛出し防止具11の取り付け作業を効率化することができる。
【0032】
また、上記各実施例における第1及び第2挟持アーム15・21にあっては、結束金属鋼板群5の高さのほぼ1/2の長さからなる固定アーム及び該固定アームに対して移動可能に挿嵌される可動アームにより構成し、結束金属鋼板群5の高さに応じて第1及び第2挟持アーム15・21の長さを可変して調整可能にしてもよい。
【0033】
更に、第1及び第2挟持アーム15・21が結束金属鋼板群5の高さより短い飛出し防止具1を使用する場合には、結束金属鋼板群5における走行方向の前後端面に金属板や木質板等の当て板を当接された状態で飛出し防止具1を取り付ければよい。この場合にあっては、第1及び第2挟持アーム15・21を短くすることができ、取り扱いを簡易化することができる。
【0034】
上記各実施例における第1及び第2挟持アーム15・21にあっては、固定側フレーム13及び可動フレーム19に対して固定的に取付ける構成としたが、少なくとも固定側フレーム13の端部に対して第1挟持アーム15を、垂直位置と該垂直位置より若干内側の傾斜位置の間で揺動するように軸支すると共に第1挟持アーム15を、線ばね等の弾性力により常には、傾斜位置に揺動するように付勢する構成であってもよい。この構成にあっては、結束金属鋼板群5の走行方向の一方端面に対して第1挟持アーム15を密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】結束金属鋼板群を示す説明図である。
【図2】飛出し防止具の概略を示す斜視図である。
【図3】図2におけるA−Aの一部破断断面図である。
【図4】結束金属鋼板群に対する飛出し防止具の取付け状態を示す説明図である。
【図5】錠止状態を示す説明図である。
【図6】飛出し防止具の変更例を示す部分断面図である。
【図7】飛出し防止具の変更例を示す一部破断斜視図である。
【図8】飛出し防止具の変更例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 板体としての金属鋼板
3 積載パネル
3a 載置板
3b 足部
5 結束板体群としての結束金属鋼板群
7 金属バンド
11 飛び出し防止具
13 固定側フレーム
15 第1挟持アーム
17 錠止板
19 可動フレーム
21 第2挟持アーム
23 支持板
25 支持軸
27 取付け板
29 圧縮ばね
31 錠止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載パネル上に積層された多数枚の板体を走行方向と直交する方向へ掛け渡されたバンドにより緊締して結束した結束板体群を車輛の荷台に積載して輸送する際に、
結束板体群の走行方向前端面及び後端面に圧接する一対の挟持アームにより挟持し、走行方向に対する板体の移動を規制する結束された板体の飛出し防止方法。
【請求項2】
請求項1において、一方の挟持アームは、固定フレームの一端部にて結束板体群の走行方向の一方端面に沿って垂下するように取付けられると共に他方の挟持アームは、固定フレームに対して移動可能に支持された可動フレームの他端部にて結束板体群の走行方向の他方端面に沿って垂下するように取付けられる結束された板体の飛出し防止方法。
【請求項3】
請求項2において、固定フレームと可動フレームには、錠止手段を設け、該錠止手段により固定フレームに対する可動フレームの移動状態を保持して一対の挟持アームによる挟持状態を保つ結束された板体の飛出し防止方法。
【請求項4】
請求項1において、一対の挟持アームの少なくとも一方における結束板体群の当接面には、磁気手段を設けると共に板体を金属鋼板とし、結束板体群の走行方向の一方端面に磁着可能にした結束された板体の飛出し防止方法。
【請求項5】
請求項1において、一対の挟持アームの少なくとも一方の挟持アームは、固定アームと、該固定アームに対して長手方向へ移動可能に支持される可動アームからなり、結束板体群の高さに応じて長さ調節可能にした結束された板体の飛出し防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−116176(P2010−116176A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289648(P2008−289648)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(307007720)
【Fターム(参考)】