説明

給水栓

【課題】洗い動作中の手の動作量を低減させることができる、あるいは水跳ねを減少させることができるキッチン用の給水栓を提供する。
【解決手段】水が吐水される吐水口2,3と、前記吐水口2,3へ前記水を導く配水管と、を備え、吐水口2,3から吐水された水は、シンク上面及びシンク底面に対して斜めに吐水され、且つシンク上面と、シンク前面とシンク後面との中央部と、が交差する所定領域を通過するように所定流量で吐水され、水の少なくとも一部は、シンク前面と、シンク後面と、の中央部よりも前方側のシンク底面に着水させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチン用の給水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
調理中などにおいて、包丁や野菜、食器などに付着している汚れを落とすために、洗い動作を行うことがある。このような洗い動作は、2種類の洗い動作に分けることができる。一方は、汚れの少ないものを洗う動作であり、これを「簡単洗い」と呼ぶことにする。他方は、汚れの落ち難いものを洗う動作であって、これを「丁寧洗い」と呼ぶことにする。
【0003】
「簡単洗い」は、主にすすぎ洗いを行う動作であり、具体的には、包丁、まな板、あるいは汚れの少ない野菜などを洗う動作である。洗浄時間は短く、例えば約2秒程度である。また、簡略的な洗い動作であるため、シンクの側方に設けられた調理台の前に立ちつつ、水栓の方向に向かって野菜などを差し出して洗うことができると便利である。すなわち、調理台から斜め方向に野菜などを差し出して洗うことができると便利である。
【0004】
これに対して、「丁寧洗い」は、主にこすり洗いを行う動作であり、具体的には泥汚れ、油汚れ、あるいは肉や魚の「ヌメリ」などを洗う動作である。洗浄時間は、「簡単洗い」よりも長く、例えば約10秒以上である。また、汚れの落ち難いものを洗う動作であるため、シンクおよび水栓の正面に立って魚を切った後のまな板などを差し出して洗うことが多い。
【0005】
「簡単洗い」および「丁寧洗い」のいずれの洗い動作であっても、洗浄効果を向上させて、洗い動作中の手の動作量を低減させることが好ましい。また、水栓から吐水された水が洗浄物に当たって跳ね返る現象、いわゆる「水跳ね」を減少させることが好ましい。なお、「簡単洗い」は、簡略的な洗い動作であるため、洗い動作中の手の動作量を低減させることがより好ましい。
【0006】
そこで、洗浄効果を向上させる、あるいは「水跳ね」を低減させることができる噴射ノズル付き流し台のシンクがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された噴射ノズル付き流し台のシンクは、ノズルから噴射された水が当たるシンク底面の少なくとも一部をシンク奥行き方向に傾斜させている。また、噴射された水は、所定の広がりをもってキッチンカウンター上面、すなわち水平面に対して斜めに噴射されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された噴射ノズル付き流し台のシンクにおいては、噴射された水の着水点は、使用者から見てシンクの奥側であるため、手および洗浄物が噴射水に届きにくい。更に、「簡単洗い」の場合においては、使用者が調理台前に立った状態から手及び洗浄物を挿入するため、噴射水に対して更に届きにくい状況となり、身体を前のめりにする、あるいは手を伸ばして洗う等の動作が発生してしまう。つまり、洗い動作中の手の動作量を低減させることができないという問題がある。
【0008】
一方、手洗いなどを容易にすることができる吐水口口金がある(例えば、特許文献2)。特許文献2に記載された吐水口口金は、斜めに水を吐水させることによって、洗面器上面などに水がかからないようにしている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載された吐水口口金は、特許文献1と同様に、吐水された水の着水点は、使用者から見て洗面器の奥側であるため、これをキッチン用の給水栓に流用しても、使用者が手や洗浄物を挿入する際に吐水へ届きにくいという問題が発生してしまう。特に「簡単洗い」を行う場合においては、更に遠方に手や洗浄物を挿入することになるので、動作量、及び身体への負荷が大きくなる。したがって、洗い動作中の手の動作量を低減させることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】登録実用新案第3055105号公報
【特許文献2】実用新案登録第2605836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、洗い動作中の手の動作量を低減させることができる、あるいは水跳ねを減少させることができるキッチン用の給水栓を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、水が吐水される吐水口と、前記吐水口へ前記水を導く配水管と、を備え、前記吐水口から吐水された前記水は、シンク上面及びシンク底面に対して斜めに吐水され、且つ前記シンク上面と、シンク前面とシンク後面との中央部と、が交差する所定領域を通過するように所定流量で吐水され、前記水の少なくとも一部は、前記シンク前面と、前記シンク後面と、の中央部よりも前方側の前記シンク底面に着水することを特徴とするキッチン用の給水栓が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗い動作中の手の動作量を低減させることができる、あるいは水跳ねを減少させることができるキッチン用の給水栓を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施した第一実施形態の給水栓全体を示す斜視図である。
【図2】本発明を実施した第一実施形態の給水栓の正面図である。
【図3】本発明を実施した第一実施形態の給水栓の右側面図である。
【図4】本発明を実施した第一実施形態の給水栓の左側面図である。
【図5】本発明を実施した第一実施形態の給水栓の底面図である。
【図6】本発明を実施した第一実施形態の給水栓の平面図である。
【図7】本発明を実施した第一実施形態の給水栓の背面図である。
【図8】本発明を実施した第一実施形態の給水栓の吐水口を正面から見た図である。
【図9】本発明を実施した第一実施形態の給水栓のA−A部分拡大図である。
【図10】本発明を実施した第一実施形態の給水栓のB−B断面図である。
【図11】本発明を実施した第一実施形態の給水栓のC−C断面図である。
【図12】本発明を実施した第一実施形態の給水栓のD−D断面図である。
【図13】本発明を実施した第二実施形態の給水栓全体を示す斜視図である。
【図14】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の正面図である。
【図15】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の右側面図である。
【図16】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の左側面図である。
【図17】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の底面図である。
【図18】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の平面図である。
【図19】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の背面図である。
【図20】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の吐水口を正面から見た図である。
【図21】本発明を実施した第二実施形態の給水栓のA´−A´部分拡大図である。
【図22】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の内部機構を省略したB´−B´断面図である。
【図23】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の内部機構を省略したC´−C´断面図である。
【図24】本発明を実施した第二実施形態の給水栓の内部機構を省略したD´−D´断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施形態について図1及至図12を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるキッチン用の給水栓の斜視図である。
本実施形態にかかるキッチン用の給水栓1は、整流用吐水口2と、シャワー用吐水口3とを有している。なおここで、「整流」とは水流が略一本の吐水形態を意味し、「シャワー」とは水流が複数本の吐水形態を意味するものとする。
【0016】
キッチン用の給水栓1は、使用者から見て不図示のシンクの奥側、すなわちシステムキッチンの後方、且つシンク上面に設けられている。キッチン用の給水栓1の下方部、すなわちシンクに取り付けられている近傍の部分は、シンク上面に対して略垂直に設けられているが、所定の寸法よりも上方部は、シンク上面に対して傾斜している。
【0017】
これに伴い、整流用吐水口2およびシャワー用吐水口3は、シンク上面およびシンク底面に対して傾斜した状態でシンクに向かって設けられている。そのため、整流用吐水口2およびシャワー用吐水口3から吐水された水は、シンク上面およびシンク底面に対して斜めに吐水される。なお、本願明細書において「水」という場合には、「湯」を含むものとする。
【0018】
図9は、本実施形態にかかる整流用吐水口2およびシャワー用吐水口3近傍の部分拡大図である。図10乃至図12の記載からも明らかなように、整流用吐水口2はほぼ円形の開口部を有し、シャワー用吐水口3はトラック型の縦長形状の開口部を有している。前記トラック型の開口部には、シャワー吐水を可能とする散水板が設けられている。
【0019】
整流水が吐水される場合、水は整流用吐水口2から吐水される。水は、前述したように、シンク底面に対して斜め方向に吐水される。また、整流用吐水口2から吐水された水は、シンク上面と、シンク前面とシンク後面との中央部と、が交差する領域(以下、「洗浄領域」という)を通過する。すなわち、水が洗浄領域を通過するように、適宜設定された一定流量の水が吐水される。一定流量の水を吐水させるためには、流量あるいは水圧を固定して定流量にて吐水させることができる定量弁や定圧弁などを設けることができる。
【0020】
洗浄領域の詳細について説明するに、使用者が手を伸ばさない状態、特に肘を曲げた状態での作業が、身体に対する負担が最も少ないとされている。そのため、洗浄領域の場所としては、肘を曲げた状態でのキッチン用の給水栓1側の手の可動域と、キッチン用の給水栓1からの吐水範囲と、が交差する部分が、最も身体に負担の無い洗浄領域であると言える。そこで本発明においては、シンクの前後方向に対する中心と、キッチン用の給水栓1から吐水される吐水の中心と、が交差する点を洗浄領域の略中心とする。例えば、成人女性が肘を曲げて楽に作業できる手の可動域は、一般的に人体の中心に対して半径約300mmの範囲であり、シンクの一般的な奥行き方向(前後方向)は500〜600mm程度であるため、シンクの奥行き方向に対しての長さの中心を洗浄領域の中心に設定することで、キッチンの様々なシンクに対して身体の負担が少ない洗浄領域を供給することが可能となる。特に調理台からの洗浄に関しては、キッチン用の給水栓1を調理台側によせて設置することにより、洗浄領域と使用者が肘を曲げた状態における手の可動領域とを重複させることが可能なため、調理台からの洗いに関しても、身体の負荷を低減することが可能となる。
【0021】
次に、洗浄領域の前後方向に対する領域長さL1について記載する。領域長さL1は、調理器具や手、または洗浄物を持った手に対して全面に吐水が当たるような設定が望ましい。このような設定を行うことにより、洗浄物の全面に対して吐水を一斉にかけることが可能となるため、洗浄物を移動させて全面に吐水をかける動作を低減させることが可能となる。そのため、使用者は洗浄領域に対して洗浄物を差し出すだけで、前後方向へ細かく揺さぶる等の動作を低減することが可能となる。領域長さL1は、例えば、包丁の刃の長さの平均値、まな板の短辺側の長さの平均値、成人の手の大きさなどを考慮して、一度に全体に水を吐水可能な長さ、すなわち中心から前後方向に100mmずつ(全長200mm)の長さを有することが望ましい。
【0022】
また、洗浄領域の上下方向に対する領域長さL2について示す。本実施形態においては、シンク上面に対して斜め方向に吐水されているため、シンクの前後方向に対して手の挿入場所が異なると、上下方向に対しても挿入場所が異なってしまう。ここで、使用者は洗浄物が大きなものに対してはシンク底面と洗浄物との接触を逃れるため、シンクの上下方向に対して上方向に洗浄領域を移動させる。一方、水はねを気にする使用者はシンク後面やシンク左側面などのシンク側面に対して水はねを発生させ、シンク外側への水はねを低減させるために、洗浄領域をシンクの下側に移動させる。
そのため、洗浄領域の上下方向に対しては、上記のような傾向を持たせるために幅を持ってしまう。上下方向の洗浄領域の幅の中心は、手の負荷が最も少ない肘を曲げた状態で挿入可能なシンク上面と洗浄水とが交差する場所となる。そのため、洗浄領域の上下方向の領域長さL2はシンク上面と同一面上で、洗浄水と交差する場所を中心とする。この中心値に対して、上記の幅を持った領域となる。領域長さL2寸法に関しては、例えば、上記のような水はねの低減、洗浄物とシンク底面との衝突を避けることを考慮すると、中心値に対して上下75mm(全高150mm)とするのが望ましい。
【0023】
続いて、洗浄領域を通過した水は、シンク前面とシンク後面との中央部よりも前方側のシンク底面に着水する。すなわち、使用者から見て手前側のシンク底面に着水する。ここで、斜めに吐水され、且つシンクの前方側に吐水が着水することにより、使用者の手の可動領域に対して洗浄領域が交差する領域が広がる。そのため、使用者は手の可動領域と洗浄領域とが僅かな範囲で交差する時よりも、楽な姿勢で作業することができる。そのため、使用者毎の洗浄領域に対する手の挿入場所のバラツキがあった場合においても、身体への負荷がかからない状態を広範囲にわたって維持できるため、どのような使用者に対しても、洗浄における身体の負荷を低減することが可能となる。
【0024】
また、斜めに吐水され、且つシンクの前方に吐水されることで、吐水がシンク底面に着水した場合における水跳ねに影響する。斜め方向で、且つシンクの洗浄領域の略下方に着水した場合、着水時の水の入射角度に応じて水跳ねが発生するため、シンクの上下方向に対しての水跳ねが多くなり、使用者やシンク上面に対しての水はね量は多くなってしまう。また、シンク前面に対して着水するようにすると、当然のことながらシンク上面側に飛散するため、使用者に対して水跳ねが発生してしまう。これに対して、本発明においては、洗浄領域とシンク前面との間に着水するために、吐水のシンク底面に入射する角度が小さくなるため、水跳ねが発生すると、シンクの前後方向に発生する。そのため、水はねした水滴は、シンク前面の方向に飛散するため、シンク上面を越えて使用者やシンク上面に達することが無くなる。以上の構成により、着水点を洗浄領域からシンク前面までの間にすることで、使用者等に対する水はね量を大幅に低減することが可能となる。
【0025】
本実施形態にかかるキッチン用の給水栓1からシャワー水が吐水される場合、水はシャワー用吐水口3から吐水される。水は、前述したように、シンク底面に対して斜め方向に吐水される。また、シャワー用吐水口3から吐水された水は、整流水の場合と同様に、洗浄領域を通過する。すなわち、シャワー水の場合においても、水が洗浄領域を通過するように、適宜設定された一定流量の水が吐水される。そのため、吐水形態に応じて使用者が適宜洗浄領域を変更することなく洗浄を行うことが出来、且つ手の負荷が少ない領域にて洗浄を行うことが可能となるため、使用者の洗浄における身体の負荷を低減することが可能なる。
【0026】
続いて、洗浄領域を通過した水の少なくとも上方側の水は、シンク前面とシンク後面との中央部よりも前方側のシンク底面に着水する。すなわち、少なくとも上方側の水は、使用者から見て手前側のシンク底面に着水する。ここでも、上記に記載したように、着水点を洗浄領域からシンク前面の間のシンク底面に対して設定するため、使用者やシンク上面に対する水はねを大幅に低減することが可能となる。
【0027】
図13乃至図24は、本発明を実施した第二実施形態の給水栓である。給水栓の基本的な構造は第一実施形態と同様であり、キッチン用の給水栓21には、整流用吐水口22およびシャワー用吐水口23が設けられている。整流用吐水口22はほぼ円形の開口部を有し、シャワー用吐水口23はトラック型の縦長形状の開口部を有している。前記トラック型の開口部には、シャワー吐水を可能とする散水板が設けられている。本変形例によれば、給水栓21の本体上方部を第一実施形態のものよりもシンク上面に対して立ち気味に傾斜させている。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定さ
れるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、
本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わ
せることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包
含される。
【符号の説明】
【0029】
1、21…キッチン用の給水栓
2、22…整流用吐水口
3、23…シャワー用吐水口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が吐水される吐水口と、前記吐水口へ前記水を導く配水管と、を備え、前記吐水口から吐水された前記水は、シンク上面及びシンク底面に対して斜めに吐水され、且つ前記シンク上面と、シンク前面とシンク後面との中央部と、が交差する所定領域を通過するように所定流量で吐水され、前記水の少なくとも一部は、前記シンク前面と、前記シンク後面と、の中央部よりも前方側の前記シンク底面に着水することを特徴とするキッチン用の給水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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