説明

給水配管装置

【課題】直接給水方式において管内圧力が低下した時であっても、電気動力を使用することなく一定時間送水することができる給水配管装置を提供する。
【解決手段】ポンプ圧力により給水配管を通して給水口まで直接給水する給水配管装置において、前記給水配管の少なくとも一部は、配管の外側を覆う剛性外装材11,21と、配管の内側を覆う伸縮性内装材12,22と、前記ポンプ圧力が低下するか又はポンプ圧力が無くなったときに、その圧力に応じて前記伸縮性内装材を内方へ変位させて配管の内径を縮小させる縮径手段12,13,22とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力低下時にも一定時間送水可能な給水配管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
学校やマンション等の中層・高層の建築物に給水するための給水設備として、上水道配管から受水槽に導入して一旦貯水し、これを屋上に設置された高架貯水槽(屋上貯水タンク)に揚水ポンプで圧送して貯水し、この高架貯水槽から垂下した給水管に流下圧力により各階へ給水する方式が用いられていたが、この流下給水方式はカビ等の微生物が発生するなどの衛生上の問題から屋上の高架貯水槽が廃止され、ポンプからの直接給水方式に切り替わってきている。直接給水方式は、特許文献1および特許文献2に記載されているように、ポンプ圧力により給水配管から蛇口に直接送水する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−115506号公報
【特許文献2】特開平10−266280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の直接給水方式においては下記1)〜3)の問題点がある。
【0005】
1)送水ポンプが停止すると、給水配管の内圧が低下して即時断水する。
【0006】
2)給水配管とは別に、貯水装置、および貯水装置の内圧を調整するための圧力調整装置を設置する必要がある。
【0007】
3)給水配管の維持管理とは別に、貯水装置および圧力調整装置をそれぞれ維持管理する必要がある。
【0008】
そこで、従来の直接給水方式がかかえる上記の問題点を解消するために、下記の課題a)〜d)を解決することが要望されている。
【0009】
a)送水圧力低下時に、一定時間自動的に送水を可能とする。
【0010】
b)配管スペースとは別に、設置スペースを必要としない。
【0011】
c)配管設備の維持管理以上の手間を増やさない。
【0012】
d)上記a)を実現する際に、電気動力を使用しない。
【0013】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、直接給水方式において管内圧力が低下した時であっても、電気動力を使用することなく一定時間送水することができる給水配管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る給水配管装置は、ポンプ圧力により給水配管を通して給水口まで直接給水する給水配管装置において、前記給水配管の少なくとも一部は、配管の外側を覆う剛性外装材と、配管の内側を覆う伸縮性内装材と、前記ポンプ圧力が低下するか又はポンプ圧力が無くなったときに、その圧力に応じて前記伸縮性内装材を内方へ変位させて配管の内径を縮小させる縮径手段と、を有する。
【0015】
本発明において、縮径手段は、剛性外装材と伸縮性内装材との間に設けられ、ポンプ圧力が定常運転圧力にあるときは該ポンプ圧力に押された状態にあり、ポンプ圧力が低下するか又はポンプ圧力が無くなったときに伸縮性内装材を内方へ変位させるばね部材とすることができる。さらに、伸縮性内装材は、ばね部材の内側に張り付けられた防水性で筒状の弾性内張り部材とすることができる(図3)。
【0016】
また、本発明において、縮径手段を、防水性で筒状の弾性内張り部材からなる伸縮性内装材とすることができる(図4)。
【0017】
伸縮性内装材の材料には、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、天然ゴムなどのゴム系材料を用いるか、またはオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの弾塑性樹脂材料を用いることができる。とくに伸縮性内装材が縮径手段を兼ねる場合は、破れて漏水を生じないゴム系材料を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配管以外の他の装置を必要としないため、設備のためのイニシアルコストおよびその維持管理のためのメンテナンスコストがともに削減され、トータルコストを低減できる。
【0019】
また、本発明によれば、既設配管をそのまま転用することが可能であり、別途に設置スペースを確保する必要がない。また、従来配管と同様の管理となり、管理の手間が少なく、衛生面でのメリットも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の送水配管を有する給水配管の一例を示す配管回路図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る送水配管の一部を切り取って示す斜視図。
【図3】(a)は第1実施形態の配管の横断面図、(b)は圧力上昇時の配管の横断面図、(c)は圧力低下時の配管の横断面図。
【図4】(a)は第2実施形態の配管の横断面図、(b)は高圧力時の配管の横断面図、(c)は低圧力時の配管の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1〜図3を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0023】
直接給水方式の設備の概要を図1に示す。建造物の地下部分(または1階部分)4に受水槽2およびポンプ3が設置され、建造物近傍の上水道配管1から導入配管L1を通って受水槽2内に水道水(上水道配管1からの圧力2〜3kg/cm2)が導入され、ポンプ3の駆動により受水槽2から供給配管L2→ポンプ3→給水配管L3→L4を順次通って各階の給水口(蛇口)6に水道水が所定の圧力で圧送されるようになっている。なお、図中の符号V1は上水道配管1から受水槽2までの導入配管L1の適所に取り付けられた逆流防止弁、符号V2はポンプ吐出口近傍の給水配管L3に取り付けられた逆流防止弁である。
【0024】
ポンプ3には、遠心ポンプ、多段遠心ポンプ、斜流ポンプ、多段斜流ポンプ、軸流ポンプ、およびキャンドモータポンプなどのターボ型ポンプを用いるか、あるいはピストンポンプ、プランジャーポンプ、および渦流ポンプなどの容積型ポンプを用いることができる。ポンプ3の送水圧力は例えば2kg/cm2以上であり、好ましくは3kg/cm2以上である。
【0025】
このような直接給水方式の設備は、学校やマンション等の中層・高層建造物内の需要家への配管に適用されるものである。また、直接給水方式の設備は、断水してはならない設備(水質計器等)の配管などにも適用されるものである。
【0026】
次に、図2と図3を参照して給水配管の詳細を説明する。
【0027】
本実施形態の給水配管L3,L4には、図2と図3(a)に示すような配管部材10が用いられている。配管部材10は、外側が剛性外装材11で覆われ、内側に筒状の伸縮性内装材(伸縮性内張り材)12が内張りされ、剛性外装材11と伸縮性内装材12との間に縮径手段としてのゼンマイばね13が設けられている。すなわち、本実施形態の給水配管L3,L4の配管部材10は、剛性外装材11とゼンマイばね13と伸縮性内装材12との三層構造にしている。
【0028】
剛性外装材11は、比較的大きな外力を受けても容易に変位または変形を生じない高剛性の材料として、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼などの金属材料、または硬質塩化ビニル、硬質ポリエチレンなどの樹脂材料を用いる。
【0029】
伸縮性内装材12は、比較的小さな外力を受けて変位または変形を生じやすい伸縮性を有する材料として、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、および天然ゴムからなる群より選択される1種または2種以上のゴム系材料を用いるか、あるいはオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、およびスチレン系エラストマーからなる群より選択される1種または2種以上の弾塑性樹脂材料を用いる。一方で、伸縮性内装材12は、漏水を防止するために、容易に破れないような丈夫な材料でつくられていることが必要である。このような丈夫な材料には弾塑性樹脂材料が適している。
【0030】
ゼンマイばね13は、伸縮性内装材12に対して可能な限り均等な面圧力が伝達されるような形状につくられている。ゼンマイばね13の材料として、ばね用合金などの金属材料の他に弾性または超弾性の性質を有する樹脂材料を用いることができる。
【0031】
図3を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0032】
ポンプ3が正常に作動している定常運転時において、給水配管L3,L4に対する内圧として満水状態の通常の定常圧力が負荷されており、図3の(b)に示すように、高い水圧によりゼンマイばね13を外方に押し拡げた状態で送水される。
【0033】
これに対してポンプ3が停止するか又は故障した非定常運転時では、給水配管L3,L4に対する内圧が低下し、図3の(c)に示すように、ゼンマイばね13が収縮しようとして、これに押されて伸縮性内装材12が内方に変位しようとする。その結果、給水配管の内圧がほぼ回復する。需要家が蛇口6を開けて水が使用されると、給水配管L3,L4内の水圧が下がり、ゼンマイばね13を押し拡げていた力が弱まることで、ゼンマイばね13が収縮し、給水配管L3,L4の内径が小さくなる。これにより給水配管L3,L4内に存在する水が給水口6に向けて送られる。このようにしてポンプ圧力の低下から一定の時間のあいだだけ断水することなく、給水が継続されるようになる。
【0034】
なお、本実施形態では、給水配管の全長にわたり加圧配管部材を設置しているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、給水配管の一部のみに加圧配管部材を設置することもできる。例えば、上流側の給水配管のみに加圧配管部材を設置し、下流側の給水配管は通常の配管材料としても、本発明の効果を奏することができる。
【0035】
本実施形態の効果を説明する。
【0036】
本実施形態によれば、ポンプ停止や故障などによりポンプ送水圧力が低下した場合であっても、外部の動力を投入することなく一定の時間だけ送水を継続することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、給水配管の内圧を高める手段として、上記特許文献1に記載された装置のように加圧空気を給水配管内に導入して送水するのではなく、外部からの動力をまったく使用することなくポンプ圧力の低下や消失に応じてある一定期間だけ自動的に送水可能な状態を続けられる。このように本発明の給水配管装置は特許文献1の装置と比べて優位性を有するものである。
【0038】
(第2の実施形態)
図4を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0039】
本実施形態の給水配管L3,L4の配管部材20では、図4の(a)に示すように、剛性外装材21に伸縮性内装材22を内張りした二層構造としている。
【0040】
伸縮性内装材22は、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、および天然ゴムからなる群より選択される1種または2種以上のゴム系材料から成るか、またはオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、およびスチレン系エラストマーからなる群より選択される1種または2種以上の弾塑性樹脂材料から成るものである。とくに伸縮性内装材22が縮径手段を兼ねる本実施形態では、破れて漏水を生じないゴム系材料を用いることが望ましい。
【0041】
剛性外装材21は、比較的大きな外力を受けても容易に変位または変形を生じない高剛性の材料として、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼などの金属材料、または硬質塩化ビニル、硬質ポリエチレンなどの樹脂材料を用いる。
【0042】
本実施形態の作用を説明する。
【0043】
ポンプ3が正常に作動している定常運転時において、給水配管L3,L4に対する内圧として満水状態の通常の定常圧力が負荷されており、図4の(b)に示すように、高い水圧により伸縮性内装材22を外方に押し拡げた状態で送水される。
【0044】
これに対してポンプ3が停止するか又は故障した非定常運転時では、給水配管L3,L4に対する内圧が低下し、図4の(c)に示すように、伸縮性内装材22が収縮しようとして内方に変位しようとする。その結果、給水配管の内圧がほぼ回復する。需要家が蛇口6を開けて水が使用されると、給水配管L3,L4内の水圧が下がり、伸縮性内装材22を押し拡げていた力が弱まることで、伸縮性内装材22が収縮し、給水配管L3,L4の内径が小さくなる。これにより給水配管L3,L4内に存在する水が給水口6に向けて送られる。このようにしてポンプ圧力の低下から一定の時間のあいだだけ断水することなく、給水が継続されるようになる。
【0045】
なお、本実施形態では、給水配管の全長にわたり加圧配管部材を設置しているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、給水配管の一部のみに加圧配管部材を設置することもできる。例えば、上流側の給水配管のみに加圧配管部材を設置し、下流側の給水配管は通常の配管材料としても、本発明の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…上水道配管、2…受水槽、3…ポンプ、
4…建造物の地下部分(または1階部分)、5…建造物の地上部分、
6…給水口(蛇口)、
10,20…配管部材、
11,21…剛性外装材(剛性被覆材)、
12,22…伸縮性内装材(筒状の弾性内張り部材、縮径手段)、
13…縮径手段(ばね部材、ゼンマイばね)、
V1,V2…逆止弁、
L1…導入配管、L2…供給配管、L3,L4…給水配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ圧力により給水配管を通して給水口まで直接給水する給水配管装置において、
前記給水配管の少なくとも一部は、
配管の外側を覆う剛性外装材と、
配管の内側を覆う伸縮性内装材と、
ポンプ圧力が低下するか又はポンプ圧力が無くなったときに、その低下した圧力に応じて前記伸縮性内装材を内方へ変位させて配管の内径を縮小させる縮径手段と、
を有することを特徴とする給水配管装置。
【請求項2】
前記縮径手段は、前記剛性外装材と前記伸縮性内装材との間に設けられ、ポンプ圧力が定常運転圧力にあるときは該ポンプ圧力に押された状態にあり、ポンプ圧力が低下するか又はポンプ圧力が無くなったときに前記伸縮性内装材を内方へ変位させるばね部材からなり、
前記伸縮性内装材は、前記ばね部材の内側に張り付けられた防水性で筒状の弾性内張り部材からなることを特徴とする請求項1記載の給水配管装置。
【請求項3】
前記縮径手段が、防水性で筒状の弾性内張り部材からなる前記伸縮性内装材であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の給水配管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−58211(P2011−58211A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207240(P2009−207240)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】