説明

給湯システム

【課題】湯切れするおそれを可及的に防止するとともに、運転コストを可及的に低減することのできる給湯システムを提供すること。
【解決手段】貯湯槽と、出湯用端末が取付けられ、前記貯湯槽に連通連結した給湯流路と、前記貯湯槽と貯湯用主循環流路を介して連通連結した第1の熱源と、前記第1の熱源よりも相対的に加熱能力及び加熱コストが大であり、前記貯湯槽と貯湯用補助循環流路を介して連通連結した第2の熱源と、前記貯湯槽の残湯量を無段階で検出するためのセンサと、前記給湯流路へ安定した給湯を行うために、前記貯湯槽内の残湯量制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の熱源で加熱した温水を前記貯湯槽に予め一定量貯湯しておき、その後、残湯量制御実行中の時々において設定された設定残湯量となるように、前記第1の熱源及び前記第2の熱源の発停状態を制御する給湯システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は即時給湯を可能とした貯湯槽を備える給湯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、貯湯槽と、電気式のヒートポンプ給湯手段を備たえた給湯システムがあった。かかる給湯システムでは、ヒートポンプ給湯手段で、安価な夜間電力を利用して加熱した温水を貯湯槽に貯湯しておき、当該貯湯槽から出湯用端末が取り付けられた給湯流路に給湯可能としていた。
【0003】
しかし、ヒートポンプ給湯手段の加熱能力は、夜間の低給湯負荷状態を想定して決定されているため、加熱能力は低く設定される場合が多い。したがって、給湯負荷が高い時に貯湯槽の温水が多く消費された場合、給湯能力が不足して所謂「湯切れ」を起こすおそれがあった。
【0004】
そこで、貯湯槽に接続した電気式のヒートポンプ給湯手段に加え、ガス焚または油焚きによる補助給湯手段を、貯湯槽に並列に接続した給湯システムが提案された(例えば、特許文献1を参照。)。このように、補助給湯手段とヒートポンプ給湯手段とを貯湯槽に対して並列に備えることにより、ヒートポンプ給湯手段の加熱能力不足を補えるようにした給湯システムは知られている。
【0005】
また、上記特許文献1の給湯システムでは、システム全体としての総合的なエネルギ効率の向上を図るため、以下のような制御を実行している。
【0006】
すなわち、(イ)1日の内の低給湯負荷状態となる主として夜間を含む第1時間帯に、所定量の温水を前記ヒートポンプ給湯手段で加熱して前記貯湯槽に貯湯する。(ロ)1日の内の前記第1時間帯以外の第2時間帯に、前記貯湯槽の貯湯量が所定の第1貯湯量以上である場合は、前記貯湯槽からのみ前記給湯負荷へ給湯する。(ハ)前記第2時間帯に、前記貯湯槽の貯湯量が前記第1貯湯量を下回ると、前記ヒートポンプ給湯手段による温水加熱を追加する。(ニ)前記第2時間帯に、前記貯湯槽の貯湯量が前記第1貯湯量より少ない所定の第2貯湯量を下回ると、前記補助給湯手段による給湯を更に追加する。
【0007】
すなわち、安価な夜間電力を利用できる第1時間帯(例えば、22時〜8時)に、第2時間帯((例えば、9時〜21時)における給湯需要を賄うための温水を貯湯槽に貯湯するため、成績係数の高いヒートポンプ給湯手段を高効率、低コストで運転させることができる。また、昼間が主となる第2時間帯には、貯湯槽の貯湯量に応じて成績係数の高いヒートポンプ給湯手段から順番に補助給湯手段までの給湯の能力の追加を行うため、高給湯負荷時においても「湯切れ」を起こすことなく、高効率の給湯が可能となる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−349201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の制御では、ヒートポンプ給湯手段による給湯タイミングと、補助給湯手段による給湯タイミングとが、時間帯や予め規定された残湯量(貯湯量)との関係で定められているため、給湯負荷の急激な変化などに対して臨機応変に対応することが難しい。
【0010】
また、例えば、第1残湯量(貯湯量)を、第1時間帯では100%、第2時間帯では80%に設定し、第1残湯量より少ない第2残湯量(貯湯量)を第1時間帯では0%、第2時間帯では50%に設定した場合、図5に示すように、ヒートポンプ給湯手段は、残湯量が第1残湯量未満の場合は常に貯湯運転をすることになるため、第2時間帯から第1時間帯に入る時点(22時)で残湯量は既に多くなっている(85%)。したがって、仮に第1時間帯に給湯負荷がない場合は放熱するだけとなり、給湯システム全体のエネルギ効率が下がってしまう。
【0011】
しかも、第1時間帯に入る時点で残湯量が十分にある以上、図示するように、第1時間帯にはヒートポンプ給湯手段は15%分の貯湯を行うに止まり、折角の割安な夜間電力を有効に利用できていないことになり、コストメリットが小さく、運転コストの十分な低減は期待できない。また、図5に示すように、特許文献1に記載の制御では、第2時間帯における第2貯湯量の設定如何によっては、ガス焚または油焚きによる補助給湯手段の駆動も頻繁に発生し得るため、1日トータルで考えるとランニングコストの面で必ずしも有利になるとは言えない。
【0012】
本発明は上記課題を解決するために、残湯量制御実行中の時々において設定された設定残湯量となるように、前記第1の熱源及び前記第2の熱源の発停状態を制御するようにした給湯システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る給湯システムは、貯湯槽と、出湯用端末が取付けられ、前記貯湯槽に連通連結した給湯流路と、前記貯湯槽と貯湯用主循環流路を介して連通連結した第1の熱源と、前記第1の熱源よりも相対的に加熱能力及び加熱コストが大であり、前記貯湯槽と貯湯用補助循環流路を介して連通連結した第2の熱源と、前記貯湯槽の残湯量を無段階で検出するためのセンサと、前記給湯流路へ安定した給湯を行うために、前記貯湯槽内の残湯量制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の熱源で加熱した温水を前記貯湯槽に予め一定量貯湯しておき、その後、残湯量制御実行中の時々において設定された設定残湯量となるように、前記第1の熱源及び前記第2の熱源の発停状態を制御することとした。
【0014】
(2)本発明は、上記(1)の給湯システムにおいて、前記制御手段は、残湯量制御を実行する稼働時間を単位時間帯で区画し、前記設定残湯量を、過去の単位時間帯毎の給湯実績に基づいて設定し、残湯量制御実行中の時々において予測される前記給湯流路への必要給湯量を賄えるようにしたことを特徴とする。
【0015】
(3)本発明は、上記(1)又は(2)の給湯システムおいて、前記第1の熱源が前記貯湯槽に対して複数台並列に配設されており、前記制御手段は、前記貯湯槽の貯湯量が前記設定残湯量を下回った度合いに応じて駆動させる第1の熱源の台数を決定することを特徴とする。
【0016】
(4)本発明は、上記(3)の給湯システムにおいて、前記第2の熱源が前記貯湯槽に対して複数台並列に配設されており、前記制御手段は、前記貯湯槽の貯湯量が前記設定残湯量を下回った度合いに応じて、前記第2の熱源を駆動させるか否かを判定するとともに、駆動させる第2の熱源の台数を決定することを特徴とする。
【0017】
(5)本発明は、上記(1)〜(4)のいずれかの給湯システムにおいて、前記第1の熱源を電気駆動式のヒートポンプとする一方、前記第2の熱源を化石燃料を用いる温水機としたことを特徴とする。
【0018】
(6)本発明は、上記(5)の給湯システムにおいて、稼働時間となる1日を、夜間電力が適用される第1の時間帯と昼間電力が適用される第2の時間帯とに区分するとともに、前記第1の時間帯の前記設定残湯量を前記貯湯槽の容量に基づいて予め一定量に定めておき、前記制御手段は、前記第1の時間帯には、前記第1の熱源を優先的に駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、給湯負荷の状況に応じて、2つの熱源の発停状態を制御するため、所謂「湯切れ」を起こすことなしに十分な給湯を可能としつつ、かかる給湯量をまかなうための2つの熱源の1日トータルでの運転時間を可及的に少なくすることが可能となり、省エネ、省COが図れる。また、例えば前日に作った湯は当日全て使い切り、足りない分だけを当日第1の熱源又は第2の熱源で沸き増しすることも可能となるため、極めてランニングコストも低い省マネーのシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る給湯システムの模式的な全体構成図である。
【図2】同給湯システムによる給湯制御の流れの基本例を示す説明図である。
【図3】同給湯システムによる熱源の動作と貯湯量との関係を示す説明図である。
【図4】同給湯システムによる給湯制御の流れの一例を示す説明図である。
【図5】従来の給湯システムによる熱源の動作と貯湯量との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る給湯システムの1実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下では、給湯に適する所定温度以上の湯を、「湯」あるいは「温水」と表記し、それ以外は水や微温湯などを含めて「湯水」と表す。また、貯湯槽3内における残湯量を、貯湯槽3の全容量に対する割合(%)で表している。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る給湯システムは、第1の熱源としての電気駆動式のヒートポンプユニット1と、ヒートポンプユニット1よりも加熱能力が大きい第2の熱源としての温水機2と、円筒状の貯湯槽3と、給湯制御を行う制御手段としての制御部4とを備えている。第2の熱源である温水機2は、油やガスなどの化石燃料を用いているため、ヒートポンプユニット1よりも加熱能力が大きく安定しているが、燃料費は電気代よりも高いため、加熱コスト、すなわちランニングコストもヒートポンプユニット1よりは大きい。
【0023】
貯湯槽3は、密閉循環型に形成されており、原水供給流路5を介して原水供給源に連通するとともに、蛇口やシャワーヘッドなどの出湯用端末61が取付けられた給湯流路6と連通している。また、ヒートポンプユニット1は循環ポンプ11を具備するとともに、貯湯用主循環流路7を介して貯湯槽3と連通し、この貯湯槽3を介して原水供給流路5及び給湯流路6にそれぞれ連通している。また、温水機2は貯湯用補助循環流路8を介して貯湯槽3と連通しており、この貯湯槽3を介して原水供給流路5及び給湯流路6にそれぞれ連通している。貯湯用補助循環流路8の中途には、温水機用循環ポンプ81を配設している。なお、図示しないが、各流路5,6,7内には必要に応じた各種の弁機構などが適宜配設されている。
【0024】
すなわち、貯湯槽3の天井部には、複数の出湯用端末61が取付けられた給湯流路6の基端と、ヒートポンプユニット1からの湯を給湯するための貯湯用主循環流路7の一端と、同様に温水機2からの湯を給湯するための貯湯用補助循環流路8の一端とが連通連結している。
【0025】
他方、貯湯槽3の底部には、基端が水源に連通する原水供給流路5の先端と、ヒートポンプユニット1へ給水するための貯湯用主循環流路7の他端と、同様に温水機2へ給水するための貯湯用補助循環流路8の他端と、一端を給湯流路6の中途に設けた混合弁62と連通連結した給水管63の他端とが連通連結している。このように、給湯流路6へも混合弁62を介して給水できるようにしているため、混合弁62の開度調整によって水源からの給水量を調整して給湯温度を調整することができる。
【0026】
なお、図中、符号31は貯湯槽3と給湯流路6との連通部となる上部入出湯口、符号32は貯湯槽3と原水供給流路5との連通部となる下部給水口を示している。また、符号33、34は、貯湯槽3と貯湯用主循環流路7との連通部となる下部接続口、上部接続口を、符号35,36は貯湯槽3と貯湯用補助循環流路8との連通部となる下部接続口、上部接続口を、符号37は貯湯槽3と給水管63との連通口である。
【0027】
図示するように、本実施形態では理解を容易にするために、原水供給流路5、給湯流路6、貯湯用主循環流路7、貯湯用補助循環流路8及び給水管63をそれぞれ独立した配管としたが、例えば給水管63は、原水供給流路5から分岐させて構成したり、貯湯用主循環流路7と給湯流路6とを接続したりするなど、三方弁(電磁弁)などを介して適宜連結させることもできる。すなわち、図1において符号30で示す部分を貯湯槽ユニットとすれば、貯湯槽ユニット30における配管などは適宜設計変更可能である。
【0028】
また、貯湯槽3には、図示するように、その高さ方向に、所定間隔をあけて複数の温度センサ9(9a〜9h)をそれぞれ直列に配設し、この温度センサ9の検出温度から貯湯槽3内の残量量を演算可能としている。
【0029】
すなわち、貯湯槽3から給湯流路6へは上部入出湯口31から給湯されることになるが、給湯された湯に相当する水が下部入水口32から逐次補給される。したがって、最下段側から上段の順に貯湯槽3内の温度は低下していくことになる。その結果、貯湯槽3内の湯は、湯温がそれぞれ異なる層状態に貯留される。
【0030】
したがって、所定間隔毎に異なる高さに設けられた各温度センサ9(9a〜9h)の検出温度から、貯湯槽3内の残湯量を知ることができる。例えば、図1に示した例では、給湯に用いることのできる温度以上の湯が、貯湯槽3の上部に全体の約30%程度(網かけ部分)残っていることが分かる。
【0031】
特に、本実施形態では、温度センサ9を8個配設しており、残湯量を略無段階で検出可能としている。すなわち、各温度センサ9による各湯層の検出温度から、演算によって略無段階に残湯量を検出することが可能となっている。なお、理論的には温度センサ9の数が多いほど残湯量の検出精度は高くなるが、費用対効果なども勘案し、温度センサ9,9間の間隔を、例えば200mm程度の適宜な値に定め、温度センサ9の数を貯湯槽3のサイズに応じて適宜決めることができる。なお、温度センサ9の数は少なくとも5個以上設けることが好ましく、通常、5〜10個の範囲で設けられる。
【0032】
ヒートポンプユニット1は本給湯システムの主たる熱源となるものであり、それぞれ図示はしないが、冷媒を高温に圧縮する圧縮機や貯湯用熱交換器、ヒートポンプ熱交換器、アキュムレータなどが配設されて構成されている。そして、貯湯槽3の下部接続口33から取水した湯水を、圧縮機から吐出された冷媒の熱により加熱するようにしている。本実施形態に係るヒートポンプユニット1は、CO(二酸化炭素)などの自然冷媒を介して取り出された大気の熱により水を加熱している。そして、加熱した湯は上部接続口34から貯湯槽3に供給される。
【0033】
このようにヒートポンプユニット1を主に用いるようにした本給湯システムでは、大気の熱を移動するだけなので投入エネルギよりも多くの熱エネルギを利用でき、ランニングコストに優れている。すなわち、ヒートポンプユニット1は、化石燃料を燃焼させて加熱するボイラなどの加熱装置に比べて効率がよく、環境への負荷も低い。さらに、安価な夜間電力を利用した高温貯湯を行なうことで蓄えた熱を利用して貯湯温度よりも低い温度で循環給湯を行なってランニングコストの低減を図ることが可能となっている。
【0034】
一方、温水機2は、ヒートポンプユニット1に対する補助的な給湯手段として機能させるものであり、貯湯槽3の下部接続口35から取水した湯水を加熱して上部接続口36から貯湯槽3に供給するようにしている。本実施形態では、ガス焚真空式ボイラで構成されている。ガス焚真空式ボイラは、例えば、缶体内の下部にガスバーナの火炎で熱媒水を加熱する火炉を設け、缶体内の上部の減圧空気中にU字状の伝熱管を設け、缶体内の下部に封入された熱媒水をガスバーナの火炎で加熱し、その上部の減圧空気中の伝熱管を加熱して、伝熱管中を流れる水を加熱する構造のものである。本実施形態では、缶体出力が、例えば100kW程度のものとしている。
【0035】
制御部4は、残湯量演算手段としても機能するものであり、CPU、制御プログラムや後述する設定残湯量テーブルや過去の運転履歴データなどが記憶された記憶手段を備えたコンピュータと、計時可能なタイマとを備えた構成としている。なお、記憶手段としては、特に限定するものではないが、例えば、EPROMや作用用のRAMなどを備えておくとよい。
【0036】
また、制御部4は、図示するように、貯湯槽3に設けられた温度センサ9a〜9hと電気的に接続しており、各温度センサ9から出力される検出信号は当該制御部4に入力される。また、制御部4は、ヒートポンプユニット1、循環ポンプ11、温水機2、温水機用循環ポンプ81とも電気的に接続している。
【0037】
かかる構成により、制御部4は、設定残湯量テーブルや過去の運転履歴データ及び温度センサ9の検出信号に基づいて、その時々に必要な設定残湯量を演算し、かかる設定残湯量となるように、ヒートポンプユニット1や温水機2の運転と、循環ポンプ11や温水機用循環ポンプ81の運転と、されには各種電磁弁などの駆動制御を行い、残湯量の制御を行うようにしている。
【0038】
すなわち、図2に示すように、給湯システムの運転が開始されると、制御部4は、先ず、ヒートポンプユニット1(第1の熱源)を駆動して、加熱した湯を、貯湯槽3に予め一定量(例えば、貯湯槽3の80〜100%の間で予め設定しておいた量)貯湯する(ステップS1)。
【0039】
次いで、制御部4は、設定残湯量を決定する(ステップS2)。例えば、EPROMなどに、本給湯システムが導入された施設などの環境に応じた給湯量の推移に対応する設定残湯量を一日の単位時間毎に割り付けた設定残湯量テーブルを記憶させておき、CPUがこれを読み出すなどして、その時々の設定残湯量を決定する。
【0040】
次いで、制御部4は、温度センサ9の検出信号に基づいて現在の残湯量を算出し、現在の残湯量が設定残湯量よりも少ないか否かを判定する(ステップS3)。現在の残湯量が設定残湯量よりも少ないとき以外は、制御部4は、貯湯槽3のみから給湯流路6へ給湯する。
【0041】
そして、現在の残湯量が設定残湯量よりも少ないと判定した場合、制御部4は、現在の残湯量と設定残湯量との差に基づいて、貯湯槽3への給湯はヒートポンプユニット1(第1の熱源)で行うのか否か、すなわち、ヒートポンプユニット1(第1の熱源)の運転条件に合致しているか否かを判定する(ステップS4)。
【0042】
ヒートポンプユニット1の運転により給湯すると判定した場合(ステップS4:YES)、制御部4はヒートポンプユニット1を駆動し(ステップS5)、貯湯槽3へ給湯させるとともに、処理をステップS2に戻す。
【0043】
他方、ヒートポンプユニット1の運転による給湯は行わないと判定した場合(ステップS4:NO)、制御部4は、現在の残湯量と設定残湯量との差に基づいて、貯湯槽3への給湯は温水機2(第2の熱源)で行うのか否か、すなわち、温水機2(第2の熱源)の運転条件に合致しているか否かを判定する(ステップS6)。
【0044】
温水機2の運転により給湯すると判定した場合(ステップS6:YES)、制御部4は温水機2を駆動し(ステップS7)、貯湯槽3へ給湯させるとともに、処理をステップS2に戻す。また、温水機2の運転による給湯は行わないと判定した場合(ステップS6:NO)も、制御部4は処理をステップS2に戻す。
【0045】
このように、本実施形態に係る給湯システムの制御部4は、ヒートポンプユニット1で加熱した湯を貯湯槽3に予め一定量貯湯しておき、その後は、残湯量制御実行中の時々において設定された設定残湯量となるように、ヒートポンプユニット1及び温水機2の発停状態を制御するのである。
【0046】
また、制御部4による残湯量制御として、制御部4は、残湯量制御を実行する稼働時間を単位時間帯で区画し、設定残湯量を、過去の運転履歴データとしての過去の単位時間帯毎の給湯実績に基づいて設定し、残湯量制御実行中の時々において予測される給湯流路6への必要給湯量を賄えるようにすることもできる。ここで、過去の単位時間帯毎の給湯実績とは、一日(24時間)のうち、午前0時から23時までの時間帯を単位時間(1時間)で区画し、各時間帯(例えば0時〜1時)における過去の平均給湯量(湯の平均使用量)などである。なお、過去の平均給湯量としては、さらに、曜日別(祝祭日、土曜日、日曜日、平日などの区分)に区分して管理しておくことが好ましい。
【0047】
このような残湯量制御を実施した場合の各熱源(ヒートポンプユニット1及び温水機2)の動作と貯湯槽3内の貯湯量との関係を図3に示す。なお、以下では、「発明が解決しようとする課題」で説明した従来のシステムによる各熱源(ヒートポンプユニット1及び温水機2)の動作と貯湯槽内の貯湯量との関係(図5)を比較例として、適宜両者を対比しながら説明する。
【0048】
図3に示すように、本給湯システムの稼働時間となる1日(24時間)を、夜間電力が適用される第1の時間帯(22時〜8時)と昼間電力が適用される第2の時間帯(8時〜22時)とに区分しておく。そして、残湯量制御の閾値ともなる設定残湯量を、相対的に残湯量が多い第1設定残湯量と、相対的に残湯量が少ない第2設定残湯量とに設定する。
【0049】
ここでは、図示するように、第1の時間帯の設定残湯量を貯湯槽3の容量に基づいて予め一定量(例えば、100%)に定めておき、第2の時間帯では、残湯量制御実行中の時々において予測される湯の使用量を賄えるだけの残湯量が確保できるように可変に設定されるようにしている。本実施形態では、8時から16時までは単位時間帯毎に漸次10%ずつ減少させ、それ以降は20%の設定が維持されるようにしている。
【0050】
また、制御部4は、第1の時間帯には、ヒートポンプユニット1を優先的に駆動させるようにしている。つまり、第1の時間帯では、貯湯槽3が満杯になるまでヒートポンプユニット1を運転させるようにして、格安の夜間電力を有効に使うようにしている。
【0051】
また、第2設定残湯量については、第1の時間帯では10%に定める一方、第2の時間帯については、第1設定残湯量同様に可変としている。本実施形態では、第1の時間帯に入る8時には50%に設定し、その後は16時までは単位時間帯毎に漸次5%ずつ減少させ、それ以降は第1の時間帯と同じ10%の設定が維持されるようにしている。
【0052】
このような残湯量の制御は、図4に示す処理の流れで実行される。すなわち、給湯システムの運転が開始されると、制御部4は、先ず、ヒートポンプユニット1(第1の熱源)を駆動して、加熱した湯を、貯湯槽3に100%で貯湯する(ステップS11)。
【0053】
次いで、制御部4は、第1、第2設定残湯量を決定する(ステップS12)。ここでは、上述したように、第1の時間帯では、第1設定残湯量は100%、第2設定残湯量は10%に設定される。
【0054】
また、第2時間帯では、第1設定残湯量は、EPROMに記憶された過去の運転履歴データとしての過去の単位時間帯毎の給湯実績に基づいて、100%から単位時間帯毎に漸次10%ずつ減少させる設定となっている(図3参照)。一方、第2設定残湯量は、50%から単位時間帯毎に漸次5%ずつ減少させる設定となっている(図3参照)。
【0055】
制御部4は、次いで、現在の残湯量が第1設定残湯量よりも少なく、第2設定残湯量よりも多いか否かを判定する(ステップS13)。なお、現在の残湯量が第1設定残湯量以上の場合、制御部4は、貯湯槽3のみから給湯流路6へ給湯する。
【0056】
そして、確かに、第1設定残量>現在の残湯量>第2設定残量であれば(ステップS13:YES)、ヒートポンプユニット1を駆動して運転させ(ステップS14)、貯湯槽3へ給湯するとともに、処理をステップS11に戻す。
【0057】
一方、ステップS13で、第1設定残湯量>現在の残湯量>第2設定残湯量でない場合(ステップS13:NO)、制御部4は、現在の残湯量が第2設定残湯量よりも少ないか否かを判定する(ステップS15)。
【0058】
そして、第2設定残量>現在の残湯量であれば(ステップS13:YES)、温水機2を運転させて貯湯槽3へ給湯し(ステップS16)、第2設定残量>現在の残湯量でない場合(ステップS13:NO)、処理をステップS11に戻す。
【0059】
このように、本実施形態に係る給湯システムにおける残湯量制御では、貯湯槽3の残湯量が第1設定残湯量以上のとき(若しくは第1設定残湯量を上回るとき)は貯湯槽3のみから給湯流路6へ給湯するとともに、貯湯槽3の残湯量が第1設定残湯量を下回る(若しくは第1設定残湯量以下になる)とヒートポンプユニット1を駆動し、さらに、貯湯槽3の残湯量が第1設定残湯量より少ない第2の残湯量を下回る(若しくは第2設定残湯量以下になる)と温水機2を駆動するようにしており、しかも、第1設定残湯量は、給湯制御実行中の時々において予測される湯の使用量を賄えるだけの残湯量となるように可変に設定されている。
【0060】
ところで、図3に示した本実施形態における残湯量制御(以下、「本制御」ともいう)と、図5に示した比較例とでは、給湯負荷(給湯流路6への給湯量)を等しい条件(180%)としている。また、温水機2の能力をヒートポンプユニット1の倍としているため、温水機2による1時間の運転時間は、ヒートポンプユニット1の2時間の運転時間に相当する。よって、ヒートポンプユニット1、温水機2の運転割合と、両者の各運転時間の合計は表1に示すようになる。なお、表1において「HP」と表されているのはヒートポンプユニットを示している。
【表1】

【0061】
表1から明らかなように、格安な夜間料金の適用を受ける第1の時間帯におけるヒートポンプユニット1の運転割合は、本制御の方が比較例よりもはるかに大きく、また、燃料費が高くつく温水機2の運転時間は本制御の方が比較例よりもはるかに少なくて済んでいる。
【0062】
つまり、比較例では、第1設定残湯量が、第1の時間帯と第2の時間帯とで、それぞれ一定量に固定されており、第2の時間帯の未給湯時であっても第1設定残湯量を下回ると常にヒートポンプが駆動して第1設定残湯量まで貯留しようとするため、図5に示すように、22時の時点では残湯量が85%に達している。したがって、夜間料金の適用を受ける第1の時間帯で貯留する分は15%しかなく、コストメリットが少なくなってしまうのである。また、比較例では、第2の時間の第2設定残湯量を、安全を見越して50%と高めに設定しているため、給湯負荷が増大すると比較的早く温水機が作動することになる。このように、表1から明らかなように、本案の方が比較例よりもヒートポンプユニット1の1日のトータル運転率が大きく向上することが分かる。
【0063】
また、本制御では、第1の時間帯を有効に利用して貯湯槽3を満杯にした後、実際に給湯が開始されるまでの時間は2時間程度であるのに対し、図5の比較例は、満杯となった後、実際に給湯が開始されるまで8時間程度要しており、本制御に比べ、貯湯された湯が実際に給湯されるまでの時間が極めて長い。つまり、放熱負荷が大となるため、システム全体の省エネの阻害要因となっている。
【0064】
ところで、上述してきた実施形態では、それぞれ単一のヒートポンプユニット1と温水機2とを用いた例で説明した。しかし、ヒートポンプユニット1や温水機2は、複数台使用してもよい。
【0065】
例えば、ヒートポンプユニット1が貯湯槽3に対して複数台並列に配設されており、制御部4は、貯湯槽3の貯湯量が、設定残湯量を下回った度合いに応じて駆動させるヒートポンプユニット1の台数を決定するのである。
【0066】
また、温水機2が貯湯槽3に対して複数台並列に配設されており、制御部4は、貯湯槽3の貯湯量が設定残湯量を下回った度合いに応じて、温水機2を駆動させるか否かを判定するとともに、駆動させる温水機2の台数を決定するようにしてもよい。
【0067】
また、ヒートポンプユニット1及び温水機2のいずれも貯湯槽3に対してそれぞれ複数台ずつ並列に配設した構成としても構わない。そして、この場合も、制御部4は、貯湯槽3の貯湯量が設定残湯量を下回った度合いに応じて、各々駆動させる台数を決定するのである。
【0068】
このように、ヒートポンプユニット1や温水機2を複数台配設しつつ、残湯量制御実行中の時々において設定された設定残湯量となるように、ヒートポンプユニット1や温水機2の発停状態を制御するとともに、それぞれの駆動台数を決定するようにすれば、例えば、大規模の銭湯施設や温泉施設などにおいて省エネ、省COが実現でき、かつ、ランニングコストの低い給湯システムを、給湯量の規模などに応じて容易に提供することができる。
【0069】
以上、上述してきた実施形態を通して本発明を説明したが、本発明の趣旨を逸脱することのない限り、具体的な構成は適宜変更しても構わない。
【0070】
例えば、ヒートポンプユニット1として、効率的に有利なCOヒートポンプを想定して説明したが、必ずしもCOヒートポンプを用いたヒートポンプユニット1に限定するものではない。
【0071】
また、単一の貯湯槽3を用いて説明したが、貯湯槽3としては、複数台の貯湯タンクを直列に配列して構成することもできる。また、上述してきた例では、貯湯槽3を縦置型としたが、横置型であっても構わない。
【0072】
また、第2の熱源としての温水機2は、ガス焚真空式ボイラで構成したが、油焚きのボイラなどであっても良く、また、真空式に限定するものでもない。
【0073】
上述してきた実施形態より、以下の給湯システムが実現される。
【0074】
(1)貯湯槽3と、出湯用端末61が取付けられ、貯湯槽3に連通連結した給湯流路6と、貯湯槽3と貯湯用主循環流路7を介して連通連結したヒートポンプユニット1(第1の熱源)と、ヒートポンプユニット1よりも相対的に加熱能力及び加熱コストが大であり、貯湯槽3と貯湯用補助循環流路8を介して連通連結した温水機2(第2の熱源)と、貯湯槽3の残湯量を無段階で検出するための温度センサ9a〜9h(センサ)と、給湯流路6へ安定した給湯を行うために、貯湯槽3内の残湯量制御を行う制御部4(制御手段)と、を備え、制御部4は、ヒートポンプユニット1で加熱した温水を貯湯槽3に予め一定量貯湯しておき、その後、残湯量制御実行中の時々において設定された設定残湯量となるように、ヒートポンプユニット1及び前記温水機2の発停状態を制御する給湯システム。
【0075】
かかる構成によれば、相対的にランニングコストなどは低いが、給湯能力が劣る熱源(例えば、ヒートポンプユニット1)と、ランニングコストが高いが給湯能力の高い熱源(例えば、温水機2)という、2つの熱源の発停状態を、給湯負荷の状況に応じて制御するため、所謂「湯切れ」を起こすことなく、十分な給湯が可能となる。そして、かかる給湯量をまかなうための2つの熱源の1日トータルでの運転時間を可及的に少なくすることが可能となるため、省エネ、省COとなる。また、前日に作った湯を当日全て使い切り、足りない分だけを、その当日にヒートポンプユニット1又は温水機2のいずれか適切な方、あるいは両方を用いて沸き増しすることも可能となるため、ランニングコストも低い省マネーであって、なおかつ、給湯負荷の増減に対する対応能力が極めて高い給湯システムとすることができる。
【0076】
(2)上記制御部4(制御手段)は、残湯量制御を実行する稼働時間(例えば1日)を単位時間帯(1時間)で区画し、前記設定残湯量を、過去の単位時間帯毎の給湯実績に基づいて設定し、残湯量制御実行中の時々において予測される給湯流路6への必要給湯量を賄えるようにした給湯システム。
【0077】
かかる構成によれば、きめ細かい残湯量制御が可能となって、上記(1)の作用効果をより高めることができる。
【0078】
(3)上記ヒートポンプユニット1(第1の熱源)が貯湯槽3に対して複数台並列に配設されており、制御部4(制御手段)は、貯湯槽3の貯湯量が前記設定残湯量を下回った度合いに応じて駆動させるヒートポンプユニット1の台数を決定する給湯システム。
【0079】
かかる構成によれば、大規模な銭湯施設や温泉施設など、大量の給湯量が見込まれる施設への規模に応じた対応も容易に行える。
【0080】
(4)上記温水機2(第2の熱源)が貯湯槽3に対して複数台並列に配設されており、前記制御部4(制御手段)は、貯湯槽3の貯湯量が前記設定残湯量を下回った度合いに応じて、温水機2を駆動させるか否かを判定するとともに、駆動させる温水機2の台数を決定する給湯システム。
【0081】
かかる構成においても、大規模な銭湯施設や温泉施設など、大量の給湯量が見込まれる施設への規模に応じた対応も容易に行える。
【0082】
(5)上記ヒートポンプユニット1(第1の熱源)を電気駆動式のヒートポンプを備えるものとする一方、前記温水機2(第2の熱源)を化石燃料を用いるものとした給湯システム。
【0083】
かかる構成によれば、特別な熱源ではなく、品質的に安定した既存の熱源を利用することができるため、上述してきた給湯システムを実現するに際し、無用なコスト増を抑えることができる。
【0084】
(6)稼働時間となる1日を、夜間電力が適用される第1の時間帯(例えば、22時〜8時)と昼間電力が適用される第2の時間帯(例えば、8時〜22時)とに区分するとともに、前記第1の時間帯の設定残湯量を貯湯槽3の容量に基づいて予め一定量に定めておき、制御部4(制御手段)は、前記第1の時間帯には、ヒートポンプユニット1(第1の熱源)を優先的に駆動させる給湯システム。
【0085】
かかる構成によれば、格安の夜間電力を有効に使うことができ、省エネ、省コストの給湯システムの提供が可能となる。
【符号の説明】
【0086】
1 ヒートポンプユニット
2 温水機
3 貯湯槽
4 制御部(制御手段)
5 原水供給流路
6 給湯流路
7 貯湯用主循環流路
8 貯湯用補助循環流路
9 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽と、
出湯用端末が取付けられ、前記貯湯槽に連通連結した給湯流路と、
前記貯湯槽と貯湯用主循環流路を介して連通連結した第1の熱源と、
前記第1の熱源よりも相対的に加熱能力及び加熱コストが大であり、前記貯湯槽と貯湯用補助循環流路を介して連通連結した第2の熱源と、
前記貯湯槽の残湯量を無段階で検出するためのセンサと、
前記給湯流路へ安定した給湯を行うために、前記貯湯槽内の残湯量制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記第1の熱源で加熱した温水を前記貯湯槽に予め一定量貯湯しておき、その後、残湯量制御実行中の時々において設定された設定残湯量となるように、前記第1の熱源及び前記第2の熱源の発停状態を制御することを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
前記制御手段は、残湯量制御を実行する稼働時間を単位時間帯で区画し、前記設定残湯量を、過去の単位時間帯毎の給湯実績に基づいて設定し、残湯量制御実行中の時々において予測される前記給湯流路への必要給湯量を賄えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の給湯システム。
【請求項3】
前記第1の熱源が前記貯湯槽に対して複数台並列に配設されており、
前記制御手段は、
前記貯湯槽の貯湯量が前記設定残湯量を下回った度合いに応じて駆動させる第1の熱源の台数を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記第2の熱源が前記貯湯槽に対して複数台並列に配設されており、
前記制御手段は、
前記貯湯槽の貯湯量が前記設定残湯量を下回った度合いに応じて、前記第2の熱源を駆動させるか否かを判定するとともに、駆動させる第2の熱源の台数を決定することを特徴とする請求項3に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記第1の熱源を電気駆動式のヒートポンプとする一方、前記第2の熱源を化石燃料を用いる温水機としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項6】
稼働時間となる1日を、夜間電力が適用される第1の時間帯と昼間電力が適用される第2の時間帯とに区分するとともに、前記第1の時間帯の前記設定残湯量を前記貯湯槽の容量に基づいて予め一定量に定めておき、
前記制御手段は、
前記第1の時間帯には、前記第1の熱源を優先的に駆動させることを特徴とする請求項5に記載の給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−208864(P2011−208864A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76062(P2010−76062)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390001568)昭和鉄工株式会社 (27)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】