説明

給湯器

【目的】 給湯器の出湯特性を向上する。
【構成】 ミキシングタイプの給湯器において、所定圧力差以上で閉弁するチャッキ弁10を設けた循環用配管9により給水管2と給湯管4とを連通し、給湯停止時に給湯管内の湯温が所定温度以下に下がったときにヒータ21を作動させて循環回路20内の水を自然循環加熱する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷水と高温湯とを混合して設定温度の給湯を行なうミキシングタイプの給湯器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、給湯器の出湯特性、特に給湯停止から短時間で再び給湯開始するといった間欠使用時の出湯特性を向上させるために、図5に示すような、冷水と高温湯とを混合して出湯するミキシングタイプの給湯器aが用いられている。この給湯器aでは、入水温,入水量に応じてバーナbの燃焼量を調整して熱交換器cの出口から高温湯を給湯管dに送り出し、給水管eから分岐したミキシング管fから導いた冷水と給湯管dの高温湯とを湯水混合装置gで混合し、混合湯温が設定温度になるように混合比をフィードバック制御している。即ち、設定温度の湯を熱交換器でダイレクトに作るのでなく、熱交換器で加熱された設定温度よりも高い高温湯と冷水とを混合するのである。従って、間欠使用時では、出湯開始直前に配管内(給湯管,熱交換器)に溜まっていた湯が設定温度よりも高い状態にあるため、湯温制御により出湯開始時期の出湯特性、つまり図4に示すような設定温に対する偏差Dを小さくすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうしたミキシングタイプの給湯器においても、良好な出湯特性を有する期間は、放熱の関係から給湯停止からほんの4,5分程度である。また、実際には、配管内に溜まっている湯の温度分布の不均衡による冷水サンドイッチ現象が起きてしまい出湯開始の湯温が不安定となる場合が多い。しかも、給湯停止からある程度時間が経過した場合には、設定温になるまでの立ち上がり時間が長くなってしまう。これらの結果、従来の給湯器はユーザーにとってあまり使い勝手が良いものではなかった。本発明は上記課題を解決し、出湯特性を向上して使い勝手の良い給湯器を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の第1の給湯器は、バーナにより加熱される熱交換器と、上記熱交換器に水を送る給水管と、上記熱交換器の下流側に設けられる給湯管と、上記給水管から分岐して設けられるミキシング管と、上記ミキシング管を経由して送られる水と上記給湯管から送られる湯とを混合して設定温度の出湯を行なう湯水混合装置とを備えた給湯器において、上記給水管のミキシング管分岐部の下流側と、上記給湯管の湯水混合装置の上流側とを連通する循環用配管と、上記循環用配管に設けられ、その配管内の差圧が所定圧を超える場合に流路を閉じるチャッキ弁と、上記給水管,熱交換器,給湯管,循環用配管からなる閉回路の任意の位置に設けられるヒータと、上記閉回路内の温度を検出する温度検出手段と、上記検出した温度の低下に基づいて上記ヒータを作動させるヒータ制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0005】また、本発明の第2の給湯器は、第1の給湯器のチャッキ弁に代えて、上記ヒータが作動するときに上記循環用配管の流路を開く制御弁を備えたことを要旨とする。
【0006】
【作用】上記構成を有する本発明の第1の給湯器においては、給水管と給湯管とが循環用配管により連通されるが、給湯中では循環用配管内の差圧によりチャッキ弁が閉じるため、給水管からの水は循環用配管を通過できず熱交換器とミキシング管とに送られ、熱交換器で加熱された湯とミキシング管からの冷水とを湯水混合装置で混合して設定温度になるように出湯する。
【0007】給湯停止時においては、循環用配管内の圧力差が無いためチャッキ弁が開いて給水管,熱交換器,給湯管,循環用配管からなる閉回路が構成され、この閉回路内の温度の低下に基づいてヒータにより閉回路内の湯(水も含む)を加熱する。つまり、温度検出手段により検出した閉回路内の温度が低い場合には、ヒータ制御手段によりヒータを作動させて閉回路内の湯を加熱する。この加熱により、閉回路内で湯が自然循環する。この場合、自然循環する湯の流れは緩やかであるため、チャッキ弁は閉じない。こうして、自然循環によりヒータ部分だけでなく閉回路内全体にわたって湯が加熱され、しかも、その温度分布はなだらかとなる。
【0008】また、この閉回路内では湯が循環加熱されるものの、その自然循環のために閉回路より上流側の給水管への熱移動が少なく、給水管上流側やミキシング管内の水はあまり高温にならない。従って、出湯が再開された時の温度特性が良好となる。つまり、出湯開始時には水流に対して燃焼の応答遅れが生じるが、この遅れに対応した管路内温度分布が得られ、湯温の早い立ち上がりと沸騰防止が図られ、安定した出湯特性が得られる。
【0009】一方、本発明の第2の給湯器においては、チャッキ弁に代えて、ヒータが作動するときに循環用配管の流路を開く制御弁が設けられているため、給湯中および給湯後の閉回路内の温度が高い場合には循環用配管の流路が閉じている。そして、閉回路内の湯温低下により制御弁が開き、第1発明と同様に閉回路内で湯が自然循環して上述したような安定した出湯特性が得られる。
【0010】
【実施例】以上説明した本発明の構成・作用を一層明確にするために、以下本発明の給湯器の好適な実施例について説明する。図1は、一実施例としての給湯器1の概略構成図である。給湯器1は、上水道に接続される給水管2と、給水管2により導かれた冷水をバーナ30での燃焼熱で加熱する熱交換器3と、熱交換器3で加熱された湯を送り出す給湯管4と、給水管2から分岐して設けられ途中に逆止弁5を有するミキシング管6と、ミキシング管6からの冷水と給湯管4からの湯とを混合して設定温度になるように混合比を制御する湯水混合装置7と、混合された設定温の湯を図示しない外部配管に導く出湯管8とを備える。湯水混合装置7は、サーモワックスを用いて混合比を自動調整するサーモミキシングバルブや、混合湯温を検出するサーミスタ(図示略)の出力に応じて水側の弁開度あるいは湯水両方の弁開度をモータ等で調整するものであってもよい。
【0011】更に、給水管2のミキシング管6分岐部下流側と、給湯管4の湯水混合装置7の僅かに上流側とを連通する循環用配管9が設けられる。この循環用配管9の途中には、図2に示すチャッキ弁10が設けられる。このチャッキ弁10は、給湯中のように給湯側に対して給水側の圧力が高い時に閉じる流量制御弁で、弁軸受11に摺動可能に挿通された弁軸12の先端に設けられる弁体13が、圧力差によりバネ14の付勢に反して図面左側に移動することで弁シート15に当接し、循環用配管9の流路を閉じるよう構成される。このバネ14の強さ(弁体13を図面右側に押す力)は、給湯中に弁体13が弁シート15に確実に当接して流路を閉じるよう、かなり弱く設定されている。以下、給水管2,熱交換器3,給湯管4,循環用配管9により構成される閉回路を循環回路20と呼ぶ。
【0012】また、循環用配管9と熱交換器3との間の給湯管4にはヒータ21が装着され、更にその上流側に給湯管4内の湯温を検出するためのサーミスタ22が設けられる。このヒータ21は、ヒータ制御回路23に接続されサーミスタ22により検出した湯温に応じて駆動される。
【0013】次に、給湯器1の動作について説明する。給湯中においては、循環用配管9のチャッキ弁10が閉じるため、図3(A)の矢印に示すように、給水管2→熱交換器3→給湯管4→湯水混合装置7という流路と、給水管2→ミキシング管6→湯水混合装置7という流路の2つの流路に別れ、熱交換器3で加熱された高温湯とミキシング管6からの冷水とが湯水混合装置7で混合されて出湯管8に送られる。この場合、バーナ30の燃焼量は、熱交換器3への入水温と入水量とに基づいて(これらは図示しないセンサにより検出される)、熱交換器3の出口温度が一定温度の高温湯となるように比例制御弁31(図1参照)の制御により調整される。そして、この高温湯とミキシング管6からの冷水とを湯水混合装置7で混合し、その混合湯温が予め設定された湯温になるように混合比がフィードバック制御される。
【0014】給湯停止時においては、循環用配管9内の圧力差が無くなりチャッキ弁10が開いた状態になる。そして、サーミスタ22により給湯管4の湯温を検出して、放熱により湯温が第1基準温度(本実施例では65℃)まで低下したときヒータ21を駆動する。このため、図3(B)に示すように、ヒータ21により給湯管4内で加熱された湯は上昇して熱交換器3に移動すると同時に、この移動に伴って給水管2A側(循環用配管9分岐部より下流側の給水管2)の水は循環用配管9に引き込まれるように移動する。つまり、給湯管4→熱交換器3→給水管2A→循環用配管9→給湯4管→……と循環回路20を自然循環するのである。この場合、水の流れはかなり弱いため、循環用配管9に設けられたチャッキ弁10は図2に示すように開状態を維持して、自然循環を妨げない。
【0015】このような自然循環により、循環回路20内の湯温は高温に維持され、しかもその温度分布はなだらかになる。また、上流側の給水管2(以下必要に応じて、循環用配管9とミキシング管6との間の給水管を2B、その上流側を2Cと呼ぶ)への熱移動を小さく抑えることができる。例えば、図3(B)に示すように、循環回路20を構成する給水管2Aの水温を60℃にまで昇げた場合でも(給湯管4は75℃)、給水管2B,2Cの水温を40℃,30℃に抑えることができる。
【0016】このことは、燃焼開始時での湯温の安定と沸騰防止とを可能にすることを意味する。つまり、蛇口(図示略)が開かれて燃焼が開始されたとき、燃焼制御および熱交換器3の伝熱の応答性の遅れから、給水管2Aに溜まっていた水は熱交換器3を通過しても本来の熱量だけ加熱されないが、給水管2B,2Cに溜まっていた水では熱交換器3を通過するときには上流側ほど充分加熱される。従って、給水管2Aの水を高温に、給水管2B,2Cの水を低温にしておくことで、応答遅れに対応した水の温度分布が得られ、熱交換器3での沸騰やサンドイッチ現象が防止され出湯温度を安定させることができる。
【0017】更に、この自然循環によりミキシング管6内の水を低温に維持できること、および、給湯管4の循環用配管9接続部から湯水混合装置7までの距離が短いためこの部分でも循環湯と同様に高温に維持できることから、高温湯と冷水とを即混合することができ出湯特性が改善される。尚、ヒータ21による加熱は、サーミスタ22により湯温75℃(第2基準温度)を検出したときに停止し、その後放熱により第1基準温度(65℃)にまで低下した時に再開する。
【0018】以上の動作は、運転スイッチ(図示略)がオンしている場合に行なわれるもので、当然凍結防止としての機能も働く。そこで、運転スイッチをオフにした場合にも凍結防止機能を持たせるために、図1の破線で示すサーミスタ24(燃焼量を制御するための入水温度センサ)を用いて、検知温度が例えば3℃以下に低下したときにヒータ21をオンし、6℃まで上昇したときにオフするといった構成にしてもよい。従って、凍結防止ヒータやサーモスタットを別に設ける必要がなくなる。しかも、循環用配管9により閉回路内の水が自然循環するため、効率良く暖めることができる。
【0019】以上説明した本実施例の給湯器1では、チャッキ弁10により給湯停止時の自然循環を可能にしているが、このチャッキ弁10に代えて水電磁弁等を用いてもよい。つまり、ヒータ駆動時にのみ水電磁弁を開くようにし、上述した循環回路20内で循環加熱するのである。尚、水電磁弁の開弁期間は、ヒータ駆動期間と完全に一致させる必要はなく、ヒータ駆動後所定時間経過後に開くようにしてもよい。
【0020】以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な態様で実施し得ることは勿論である。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように本発明の給湯器によれば、閉回路内で湯が循環加熱され、しかも、その温度分布が燃焼加熱の応答遅れに対応したものとなるため非常に出湯特性が向上するという優れた効果を奏する。こうして、設定温度までの立上がり時間の短縮,間欠使用時の出湯温度の安定を図ることができ、使用者にとって非常に使い勝手の良いものとなる。また、自然循環による保温のため、循環ポンプが不要となる。更に、ヒータによる循環加熱を凍結防止として働かせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例としての給湯器の概略構成図である。
【図2】チャッキ弁の概略断面図である。
【図3】給湯器内の水の流れを表す説明図である。
【図4】間欠使用時の出湯温度の変化を表すグラフである。
【図5】従来の給湯器の概略構成図である。
【符号の説明】
1…給湯器,2…給水管,3…熱交換器,4…出湯管,6…ミキシング管,7…湯水混合装置,9…循環用配管,10…チャッキ弁,20…循環回路,21…ヒータ,22…サーミスタ,23…ヒータ制御回路,30…バーナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 バーナにより加熱される熱交換器と、上記熱交換器に水を送る給水管と、上記熱交換器の下流側に設けられる給湯管と、上記給水管から分岐して設けられるミキシング管と、上記ミキシング管を経由して送られる水と上記給湯管から送られる湯とを混合して設定温度の出湯を行なう湯水混合装置とを備えた給湯器において、上記給水管のミキシング管分岐部の下流側と、上記給湯管の湯水混合装置の上流側とを連通する循環用配管と、上記循環用配管に設けられ、その配管内の差圧が所定圧を超える場合に流路を閉じるチャッキ弁と、上記給水管,熱交換器,給湯管,循環用配管からなる閉回路の任意の位置に設けられるヒータと、上記閉回路内の温度を検出する温度検出手段と、上記検出した温度の低下に基づいて上記ヒータを作動させるヒータ制御手段とを備えたことを特徴とする給湯器。
【請求項2】 バーナにより加熱される熱交換器と、上記熱交換器に水を送る給水管と、上記熱交換器の下流側に設けられる給湯管と、上記給水管から分岐して設けられるミキシング管と、上記ミキシング管を経由して送られる水と上記給湯管から送られる湯とを混合して設定温度の出湯を行なう湯水混合装置とを備えた給湯器において、上記給水管のミキシング管分岐部の下流側と、上記給湯管の湯水混合装置の上流側とを連通する循環用配管と、上記給水管,熱交換器,給湯管,循環用配管からなる閉回路の任意の位置に設けられるヒータと、上記閉回路内の温度を検出する温度検出手段と、上記検出した温度の低下に基づいて上記ヒータを作動させるヒータ制御手段と、上記ヒータが作動するときに上記循環用配管の流路を開く制御弁とを備えたことを特徴とする給湯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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