説明

給湯機

【課題】人検知手段を利用して、入浴時の風呂温度の適温化を達成することで、快適性と利便性の向上を実現する給湯機を提供すること。
【解決手段】浴槽68と、前記浴槽68の湯水を加熱する風呂熱交換器73と、前記浴槽68と前記風呂熱交換器73とを接続し循環ポンプ77が配された風呂循環管路69と、前記浴槽68の湯水の温度を検出する浴槽温度検出手段78と、浴室内の人の存在の検知する人検知手段81と、前記浴槽の湯水の温度を設定する浴槽温度設定手段83と、制御手段82とを備え、前記人検知手段81が人を検出したとき、前記浴槽温度設定手段83で設定された設定温度よりも高い温度の湯を、前記風呂循環管路69に注湯するとともに、前記循環ポンプ77を駆動させることを特徴とする給湯機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人を検出したときに風呂の追い焚きを行う機能を持った給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯機として、浴室に人を検出したときに浴槽に高温の湯を注湯することで風呂の追い焚きを行う風呂追い焚き機能を持ったものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、前記公報に記載された従来の給湯機を示すものである。この給湯機は、人検知手段81が浴室80に入ってきた人を検出すると、風呂注湯弁66を開いて、風呂の設定温度よりも高い注湯温度の湯(例えば55℃)を浴槽68に所定量の注湯を行う。
【0004】
そして、この所定量の注湯が終了したら、風呂注湯弁66を閉じ、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77とを駆動し、貯湯槽57の高温の湯と浴槽68との湯を風呂熱交換器73で熱交換させることによって、風呂追い焚きを行い、浴槽68の温度が所定の温度になれば、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77とを停止し、風呂追い焚きを終了するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−19501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、次のような課題を有していた。一般的に、風呂の追い焚きは、貯湯槽57の高温の湯と浴槽68との湯を風呂熱交換器73で熱交換させることによって行うことが多い。
【0007】
これに対して、図6の従来例のように、高温の湯を浴槽に注湯すれば、早く浴槽68の温度を上げることが可能であるが、注湯した湯量だけ浴槽の湯量が増える。注湯する温度は、高いほど浴槽の温度を早く上げることができ、かつ、注湯する湯量も少ない。しかし、浴槽に入っている人が注湯された湯を熱く感じたりしないように、通常、注湯温度は60℃以下(従来例では55℃)にする場合が多い。
【0008】
この程度の湯温の場合、短時間のうちに、人が続けて入浴した場合、注湯が続くので、浴槽の湯量が多くなりすぎる場合がある。場合によっては、適量の湯量よりもかなり多くなり、浴槽68の水位が上昇し浴槽に浸かりにくかったりして快適性に課題が生じる場合がある。また、浴槽の容量が比較的小さい場合、人が浴槽に浸かった時に浴槽から湯が溢れ出ることも予測され、湯が無駄になるという課題も生じる。
【0009】
さらに、注湯する湯は、貯湯槽57上部の高温の湯と低温の給水とを混合する。この低温の給水量が増えれば増えるほど(注湯温度が低ければ低いほど)、給水される水を、上昇させたい風呂温度まで上げる熱量に使われるため、実際に、浴槽の温度を上げるために使われる熱量の割合が減少する。
【0010】
つまり、注湯温度が低ければ、貯湯槽57から持ち出した熱量のうち、有効に使われる
割合が減少するので、貯湯槽57から持ち出される高温の湯量が多くなり、湯切れする場合があり利便性に課題が生じる場合がある。
【0011】
本発明は上記課題を解決するもので、人検知手段を利用して、入浴時の風呂温度の適温化を達成することで、快適性と利便性の向上を実現する給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯機は、浴槽と、前記浴槽の湯水を加熱する風呂熱交換器と、前記浴槽と前記風呂熱交換器とを接続し循環ポンプが配された風呂循環管路と、前記浴槽の湯水の温度を検出する浴槽温度検出手段と、浴室内の人の存在の検知する人検知手段と、前記浴槽の湯水の温度を設定する浴槽温度設定手段と、制御手段とを備え、前記人検知手段が人を検知したとき、前記浴槽温度設定手段で設定された設定温度よりも高い温度の湯を、前記風呂循環管路に注湯するとともに、前記循環ポンプを駆動させることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、貯湯槽からの高温の湯は、風呂循環管路にて浴槽からの湯と混合して温度を下げてから、浴槽に入るため、浴槽に入る湯温を安全な温度(60℃以下)に設定しても、注湯温度をこの安全な温度以上の高温にできることから、注湯量を少なくすることができるため、浴槽湯量の増加が少なくなり、快適性の向上となると共に、貯湯槽から流出される高温の湯量も減るので、湯切れの発生の可能性も減少し利便性の向上となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、人検知手段を利用して、入浴時の風呂温度の適温化を達成することで、快適性と利便性の向上を実現する給湯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯機の構成図
【図2】同給湯機の風呂循環管路の放熱特性を示す特性図
【図3】同給湯機の注湯温度に対する必要注湯量及び貯湯槽から出る高温湯量を示す特性図
【図4】同給湯機の注湯温度に対する混合湯量における注湯量の割合を示す特性図
【図5】同給湯機の他の給湯機の構成図
【図6】従来の給湯機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、浴槽と、前記浴槽の湯水を加熱する風呂熱交換器と、前記浴槽と前記風呂熱交換器とを接続し循環ポンプが配された風呂循環管路と、前記浴槽の湯水の温度を検出する浴槽温度検出手段と、浴室内の人の存在の検知する人検知手段と、前記浴槽の湯水の温度を設定する浴槽温度設定手段と、制御手段とを備え、前記人検知手段が人を検知したとき、前記浴槽温度設定手段で設定された設定温度よりも高い温度の湯を、前記風呂循環管路に注湯するとともに、前記循環ポンプを駆動させることを特徴とする給湯機である。
【0017】
これにより、貯湯槽からの高温の湯は、風呂循環管路にて浴槽からの湯と混合して温度を下げてから、浴槽に入るため、浴槽に入る湯温を安全な温度(60℃以下)に設定しても、注湯温度をこの安全な温度以上の高温にできることから、注湯量を少なくすることができるため、浴槽湯量の増加が少なくなり、快適性の向上となると共に、貯湯槽から流出される高温の湯量も減るので、湯切れの発生の可能性も減少し利便性の向上となる。
【0018】
第2の発明は、高温水を貯湯する貯湯槽と、前記貯湯槽から高温水と水とを混合する混合弁とを備え、前記混合弁にて所定温度に調整した湯水を、前記風呂循環管路に注湯することを特徴とするもので、注湯時に貯湯槽の温度が変化しても、直接、注湯温度を調整することができるので、浴槽に入る温度を安定して調整でき、快適性の効果をより大きくすることが出来る。
【0019】
第3の発明は、前記浴槽の湯水の温度が所定温度になるように、前記循環ポンプの回転数を制御することを特徴とするものである。
【0020】
これにより、冬季など給湯機と浴槽を接続する風呂循環管路内の湯の温度低下が大きい時でも、浴槽からの循環量を調整できるので、冷たい温度の湯が浴槽に入ることを少なくすることができ、快適性の効果をより大きくすることが出来る。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における給湯機の構成図である。図1において、給湯機の熱源である加熱手段は、圧縮機51、給湯熱交換器52、減圧装置53および大気熱を吸熱する蒸発器54からなるヒートポンプサイクルを構成したヒートポンプユニット55である。そして、高圧側の冷媒圧力が臨界圧力以上となる二酸化炭素を冷媒とする。
【0023】
貯湯ユニット56に収納された貯湯槽57への給水は貯湯槽57下部に接続された給水管58を通ってなされ、貯湯槽57上部の高温の湯は出湯管59を通り給湯混合弁60で給水と混合することによって所定の温度の湯にしてから給湯管61を通って端末(蛇口62)から給湯される。
【0024】
また、貯湯槽57の下部から循環ポンプ63,給湯熱交換器52および貯湯槽57の上部を順次接続する沸き上げ回路を構成することによって、貯湯槽57から循環ポンプ63で送られてきた水は前記給湯熱交換器52で冷媒熱により加熱されて貯湯槽57の上から貯湯される。64は沸き上げ温度検出手段であり、ヒートポンプ熱源で加熱した湯温を検出するため給湯熱交換器52の水側の出口に設けられている。
【0025】
また、前記出湯管59から分岐し、風呂給湯混合弁65と風呂注湯弁66とを備えた浴槽注湯管路67は、後述する利用側水回路75の途中に設けた接続口50に接続され、風呂往き配管70と風呂戻り配管71によって、浴槽68と接続されている。また、利用側水回路75の接続口50の下流側には注湯された湯と利用側循環ポンプ77で送られてきた浴槽の湯とが混合した後の湯の温度を検出する混合温度検出手段90が設けられている。さらに、風呂循環管路69は、利用側水回路75と風呂往き配管70と風呂戻り配管71とからなっている。
風呂加熱手段72は、水−水熱交換器である風呂熱交換器73と、それに接続された熱源側水回路74と利用側水回路75と、この熱源側、利用側水回路74、75にそれぞれ設けられた熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77などからなる。そして、熱源側水回路74は、貯湯槽57の上部と下部とに接続され、利用側水回路75は風呂往き配管70と風呂戻り配管71とに接続されている。
【0026】
また、利用側水回路75には、浴槽68の温度を検出する浴槽温度検出手段78と浴槽68の水位を検出する浴槽水位検出手段79とが設けられている。浴槽68の加熱は、熱源側循環ポンプ76で貯湯槽57から風呂熱交換器73に送られてきた高温の温水と、利用側循環ポンプ77で浴槽68から風呂熱交換器73に送られてきた水又は温水とが熱交
換することによって行われる。
【0027】
また、浴室80には浴室内の人を検出する人検知手段81を設ける。さらに、制御手段82は浴室80内に設けた人検知手段81が人を検出した場合、浴槽68の温度を設定する浴槽温度設定手段83で設定された温度よりも高い温度の湯を注湯するように風呂給湯混合弁65と風呂注湯弁66を制御する。
【0028】
また給湯混合弁60で混合した給湯温度を検出する給湯温度検出手段84を給湯混合弁60の混合出口側に設け、風呂給湯混合弁65で混合した風呂給湯温度を検出する風呂給湯温度検出手段85を風呂給湯混合弁65の混合出口側に設ける。さらに、86a、86b、86cは貯湯槽57の上下方向の異なる位置に取り付けられた残湯温度検出手段86であり、貯湯槽57の上下の異なる位置の温度を検出する。なお、人検知手段81としては、赤外線センサなどがある。
【0029】
以上のように構成された給湯機について、以下にその動作、作用を説明する。図1において、先ず、給湯加熱運転について説明する。いま、貯湯槽57を沸き上げる要求(図示せず)があると、ヒートポンプユニット55で大気熱を利用した給湯加熱運転を行う。
【0030】
この場合、圧縮機51から吐出された臨界圧力以上の高温高圧の冷媒が給湯熱交換器52に流入し、ここで貯湯槽57の下部から送られてきた水と熱交換し放熱した後、減圧装置53で減圧し、さらに、蒸発器54で大気から熱を吸熱し、ガス化して圧縮機51に戻る。
【0031】
この時、給湯熱交換器52に流入する貯湯槽57の下部から送られてきた水は、給湯熱交換器52の出口での温度が所定温度となるように循環ポンプ63の回転数を制御することによって、所定の温度の湯が貯湯槽57の上部から流入し貯湯される。
【0032】
次に、浴槽68の温度を検出する浴槽温度検出運転について説明する。この運転は、利用側循環ポンプ77を駆動し、浴槽68の湯を貯湯ユニット56との間で循環させる。そして、ある一定の時間(例えば1分間)循環させた後に、浴槽68の湯の温度を浴槽温度検出手段78によって検出する。
【0033】
この検出した温度が、浴槽温度設定手段83で設定された温度から決まり、前記設定温度よりも低い風呂追い焚き開始温度よりも低ければ、浴槽温度検出運転を終了し、次の風呂追い焚き運転に移行する。一方、検出した温度が、前記風呂追い焚き開始温度以上であれば浴槽温度検出運転を終了し、次の浴槽温度検出運転まで待機する。
【0034】
次に、浴槽68の加熱運転である風呂追い焚き運転について説明する。使用者が希望する浴槽の温度は浴槽温度設定手段83で行う。一般的に、給湯機のリモコンを浴室80や台所(図示せず)に設置し、浴室80に設置した浴室リモコン87に前記浴槽温度設定手段83を設ける構成とすることが多い。
【0035】
なお、台所に設置した台所リモコン(図示せず)に前記浴槽温度設定手段83を設けてもよい。前述したように、浴槽温度検出手段78によって検出した温度が、前記風呂追い焚き開始温度よりも低ければ、風呂追い焚き運転を行う。
【0036】
すなわち、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77をと駆動する。利用側循環ポンプ77によって浴槽68から送られてきた湯は、熱源側循環ポンプ76によって送られてきた貯湯槽57上部の高温の湯と風呂熱交換器73で熱交換して加熱され温度上昇して浴槽68に戻る。
【0037】
一方、風呂熱交換器73で浴槽68からの湯を加熱した貯湯槽57からの高温の湯は、温度低下し40から50℃程度の中温湯になって、貯湯槽57の下部に戻る。このとき、浴槽温度検出手段78は、利用側循環ポンプ77の駆動によって送られてきた浴槽68の湯の温度を検出する。
【0038】
そして、この検出した温度が、浴槽温度設定手段83で設定された温度から決まり、前記設定温度かまたは設定温度より高い風呂追い焚き停止温度よりも低ければ、そのまま風呂追い焚き運転を続ける。そして、検出した温度が、前記風呂追い焚き停止温度以上になれば、風呂追い焚き運転を終了する。
【0039】
なお、風呂追い焚き開始温度と風呂追い焚き停止温度は次のように決めればよい。浴槽68の温度を1℃程度に制御したいときは、浴槽温度設定手段83で設定した設定温度に対して、風呂追い焚き開始温度を(設定温度−1℃)とし、風呂追い焚き停止温度を(設定温度)とすればよい。
【0040】
また、浴槽68の温度を0.5℃程度に制御したいときは、浴槽温度設定手段83で設定した設定温度に対して、風呂追い焚き開始温度を(設定温度−0.5度)とし、風呂追い焚き停止温度を(設定温度)とすればよい。
【0041】
次に、浴槽68に適量を湯張りし、その後、所定の時間、浴槽68の保温運転を行う浴槽自動運転について説明する。このとき、希望の浴槽温度や浴槽の湯量や保温時間を設定することができる。使用者が希望する浴槽の温度や浴槽の湯量や保温時間は、それぞれ浴槽温度設定手段83、浴槽湯量設定手段88、保温時間設定手段89で行う。
【0042】
一般的に、給湯機のリモコンを浴室80や台所(図示せず)に設置し、浴室80に設置した浴室リモコン87に前記浴槽温度設定手段83や浴槽湯量設定手段88や保温時間設定手段89を設ける構成とすることが多い。
【0043】
なお、台所に設置した台所リモコン(図示せず)にこれらの設定手段83、88、89を設けてもよい。また、人検知手段81は単独の設置でもよいが、図1に示すように、浴室リモコン87内に設けた構成としてもよい。この場合、人検知手段81と浴室リモコン87とを別々に設置する必要がないので、工事性がよくなる利点がある。
【0044】
浴槽自動運転が開始されると、浴槽温度設定手段83と浴槽湯量設定手段88で設定された温度と湯量となるように、貯湯槽57から浴槽68へ注湯することによって浴槽68に湯張りを行う。
【0045】
すなわち、制御手段82は、風呂注湯弁66を開いて、注湯を開始する。そして、浴槽68の温度が浴槽温度設定手段83で設定された温度になるように、風呂給湯温度検出手段85からの信号に基づいて、風呂給湯混合弁65の混合割合を制御する。浴槽水位検出手段79で検出した水位が、浴槽湯量設定手段88で設定された湯量の相当する水位になれば、制御手段82は、この注湯動作である湯張りを終了する。その後、保温時間設定手段89で設定された時間に応じて、浴槽68の温度が低下すれば浴槽68を風呂追い焚きすることによって、保温運転を行う。
【0046】
先ず、浴室80にいない場合について説明する。人検知手段81は、浴室80に人を検出しないので、制御手段82は、時間間隔t(例えば、15分間隔)毎に浴槽温度検出運転を行い、浴槽68の温度が低くなれば、風呂追い焚き運転を行う。このときの動作は、図6で示す従来例の場合と同様である。
【0047】
すなわち、制御手段82は、利用側循環ポンプ77を駆動して浴槽68の湯を貯湯ユニット側に循環させて、 浴槽温度検出手段78で浴槽68の温度を検出する。この検出された浴槽68の温度が風呂追い焚き開始温度よりも高ければ風呂追い焚きは行わないので、制御手段82は利用側循環ポンプ77を停止し、次の浴槽温度検出運転まで待機する。
【0048】
反対に、この検出した浴槽68の温度が、風呂追い焚き開始温度よりも低ければ風呂追い焚きを行う。すなわち、制御手段82は、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77とを駆動し、風呂追い焚きを行うとともに、浴槽温度検出手段78で浴槽68の温度を検出する。浴槽68の温度が上昇し、浴槽温度検出手段78の検出温度が、風呂追い焚きを終了する温度である風呂追い焚き停止温度以上になれば、制御手段82は熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77とを停止し、風呂追い焚き運転を終了し、次の浴槽温度検出運転まで待機する。
【0049】
次に、浴室80に人が居る場合について説明する。浴室80に人が入ってきたら、人検知手段81は人を検出する。そして、人検知手段81からの検出信号を受けて、制御手段82は、入浴者が希望の風呂温度として、浴槽温度設定手段83で設定した設定温度よりも高い温度の湯を注湯すると共に、浴槽68の湯を循環させる。
【0050】
すなわち、制御手段82は、風呂注湯弁66を開き、さらに、利用側循環ポンプ77を駆動する。このとき、注湯された湯と利用側循環ポンプ77で送られてきた浴槽68の湯とが混合した後の湯の温度が、所定の混合温度(例えば60℃)になるように、混合温度検出手段90からの信号に基づいて、風呂給湯混合弁65での混合割合(貯湯槽57上部の湯と給水管58からの水との混合)を制御する。
【0051】
ここで、浴槽温度設定手段83で設定された設定温度(例えば40℃)近傍まで加熱するため、前記所定の混合温度(例えば60℃)はこの設定温度(例えば40℃)よりも高い温度であり、さらに、風呂給湯混合弁65で制御されて注湯される湯の温度は、この所定の混合温度(例えば60℃)よりも高い温度である。
【0052】
そして、浴槽68の温度を検出する浴槽温度検出手段78が、所定の注湯終了温度(例えば、設定温度−0.5℃)に達したら、風呂注湯弁66を閉じて注湯を終了する。さらに、制御手段82は、熱源側循環ポンプ76を駆動し、風呂追い焚き運転を行うとともに、浴槽温度検出手段78で浴槽68の温度を検出する。
【0053】
浴槽68の温度が上昇し、浴槽温度設定手段83で設定した浴槽温度から決まる風呂追い焚き終了温度(例えば、設定温度)になれば、風呂追い焚き運転を終了する。すなわち、制御手段82は、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77の駆動を停止する。
【0054】
次に、注湯温度と必要な注湯量及びそのときに貯湯槽の上部から持ち出される高温の湯量の関係について説明する。風呂を加熱するときの負荷としては、浴槽68の湯と、浴槽68と貯湯ユニット56とを接続する風呂循環管路69中にある湯とがある。図2は、横軸に時間をとり、縦軸に温度をとって、周囲温度7℃のときの時間に対する風呂循環管路69中にある湯の温度変化を示したものである。
【0055】
同図に示す風呂循環管路69の特性は、一般に使用されている10mmの厚みの断熱材で保温された内径13mmの架橋ポリエチレン管を用いた場合で、実験によって求めた特性である。同図からわかるように、15分間で9℃の温度低下がある。風呂循環管路69の長さを10mとすると、風呂循環管路69の内容積は2.65Lとなる。浴槽68の湯量は200Lとし、風呂温度が設定温度40℃から冷えて39℃となり、この状態から風
呂を加熱するものとする。
【0056】
すなわち、先ず、注湯することで、39℃の風呂温度を39.5℃になるように昇温するものとする。次に、39.5℃から40℃までの昇温は、風呂追い焚き運転で説明したように、浴槽68から送られてきた湯と、貯湯槽57上部の高温の湯とを風呂熱交換器73で熱交換させることによって行う。
【0057】
注湯時に給水管58から給水される温度を9℃とし、貯湯槽57上部の高温湯の温度を85℃とすると、注湯は、貯湯槽57上部の85℃の高温湯と給水管58から給水される9℃の水とを風呂給湯混合弁65で所定の注湯温度になるように混合して行われる。
【0058】
図3は、上記条件において、39℃、200Lの浴槽68の湯を、注湯によって、39.5℃にするための注湯特性を示したものである。すなわち、横軸に注湯温度をとり、縦軸に湯量をとって、注湯温度に対する必要な注湯量及びそのときに貯湯槽の上部から持ち出される高温の湯量の関係を熱量計算によって求めたものである。
【0059】
同図からわかるように、注湯温度が60℃の場合、注湯量及び貯湯槽の上部から持ち出される高温の湯量は、それぞれ、約6L、4Lであり、注湯温度が80℃の場合は、それぞれ、3L、2.8Lである。この注湯量が浴槽68に入り、浴槽68の湯量を増加させ、浴槽68の水位を上昇させることになる。浴槽68の湯量の増加量は、60℃の注湯に対して、80℃の場合は、約半分になる(6Lが3Lになる)。
【0060】
貯湯槽の上部から持ち出される高温の湯量は、60℃の注湯に対して、80℃の場合は、約70%になる(4Lが2.8Lになる)。従来例のように注湯温度が55℃と80℃を比較した場合は、更にその差は大きくなる。
【0061】
このように、注湯温度が高い方が、浴槽68の湯量増加や貯湯槽57の上部から持ち出される高温の湯量を少なくすることができる。しかし、高温の湯をそのまま浴槽68に入れたのでは、浴槽68に入っている人に熱い湯が当たり、不快に感じる場合があるので、通常、浴槽68に入る湯の温度を60℃以下にしている。
【0062】
そこで、上記で説明したように、高温の注湯された湯と浴槽68からの湯と混合させることによって、高温の注湯された湯の温度を下げてから、浴槽68に入れるようにすれば良い。
【0063】
今、浴槽68の湯の温度を39.5℃として、この浴槽68からの湯と注湯された湯と混合してから浴槽68に入る湯の60℃とした場合、注湯温度に対する前述混合した湯量に占める注湯量の割合を、熱量計算して求めたものが図4である。
【0064】
同図において、注湯された湯と浴槽から循環してきた湯との混合湯量に対する注湯量の割合をR1とした場合、注湯温度をT1℃にすれば、混合温度は60℃になる。実際の動作としては、前述したように、所定の混合温度(例えば60℃)になるように、混合温度検出手段90からの信号に基づいて、風呂給湯混合弁65での混合割合(貯湯槽57上部の湯と給水管58からの水との混合)を制御することで、このときの混合湯量に対する注湯量の割合に応じた注湯温度T1となる。
【0065】
このように、浴室80に人が入ってきたことを検出したら、注湯を開始すると共に利用側循環ポンプを駆動することによって、貯湯槽57からの高温の湯を風呂給湯混合弁65で適当な温度にして注湯した湯と、浴槽68からの湯とを混合してから浴槽68に入れるため、浴槽68に入れる湯温を安全な温度(60℃以下)にしても注湯温度をこの安全な
温度以上の高温にできるので、注湯量を少なくすることができるため浴槽湯量の増加が少なくなり快適性の向上となる。
【0066】
また、貯湯槽57から持ち出される高温の湯量も減るので湯切れの発生の可能性も減少するので利便性の向上となる。特に、注湯時に貯湯槽57の温度が変化しても、直接、注湯温度を制御することができるので、浴槽68に入る温度を安定して調整でき、快適性の効果をより大きくすることが出来る。
【0067】
図1の構成よりもより広い条件で同様な作用効果を得るために、図5に示すように、図1の浴槽注湯管路67の途中に、流量制御装置91を設ける構成にしても良い。この流量制御装置91は浴槽注湯管路67を流れる注湯流量を調整するもので、流路断面積(図示せず)を変えて流路抵抗を変化させて、注湯流量を制御する。
【0068】
給湯機の設置の場所や状態によっては、給水管58からの給水圧力が高い時や、風呂循環管路69が長く利用側循環ポンプ77による浴槽68からの循環流量が少ない時に、風呂給湯混合弁65を制御しても前述した所定の混合温度(例えば60℃)にできないことがある。
【0069】
このときは、流量制御装置91で浴槽注湯管路67を流れる注湯量を少なくして、風呂給湯混合弁65を制御すれば、所定の混合温度(例えば60℃)にすることができる。このような構成にしても、図1の場合と同様な効果が得られる。
【0070】
なお、図1及び図5では、接続口50を利用側循環ポンプ77の下流(吐出)側に設けた構成としたが、接続口50を利用側循環ポンプ77の上流(吸入)側に設けた構成にしても良い。この場合も、図1、図5と同様の作用、効果が得られる。
【0071】
以上は、風呂給湯混合弁65によって注湯温度を制御することによって、注湯された湯と浴槽68からの湯とが混合した後の湯の温度を、所定の混合温度(例えば60℃)になるようにした。これに対して、注湯温度を一定として、浴槽68からの湯量を制御することによっても、同様の作用、効果が得られる。
【0072】
図4に示すように、注湯温度がT2の場合、注湯された湯と浴槽68から循環してきた湯との混合湯量に対する注湯量の割合をR2とすればよい。すなわち、浴室80に人が入ってきたら、人検知手段81は人を検出する。
【0073】
そして、人検知手段81からの検出信号を受けて、制御手段82は、入浴者が希望の風呂温度として、浴槽温度設定手段83で設定した設定温度よりも高い温度の湯を注湯すると共に、浴槽68の湯を循環させる。
【0074】
すなわち、制御手段82は、風呂注湯弁66を開き、さらに、所定の初期回転数で利用側循環ポンプ77を駆動する。そして、注湯された湯と利用側循環ポンプ77で送られてきた浴槽68の湯とが混合した後の湯の温度が、所定の混合温度(例えば60℃)になるように、混合温度検出手段90からの信号に基づいて、利用側循環ポンプ77の回転数を調整して循環量を制御する。
【0075】
ここで、浴槽温度設定手段83で設定された設定温度(例えば40℃)近傍まで加熱するため、前記所定の混合温度(例えば60℃)はこの設定温度(例えば40℃)よりも高い温度であり、さらに、風呂給湯混合弁65で制御されて注湯される湯の温度は、この所定の混合温度(例えば60℃)よりも高い温度である。
【0076】
そして、浴槽68の温度を検出する浴槽温度検出手段78が、所定の注湯終了温度(例えば、設定温度−0.5℃)に達したら、風呂注湯弁66を閉じて注湯を終了し、さらに、所定の混合温度(例えば60℃)になるように、混合温度検出手段90からの信号に基づいて、利用側循環ポンプ77の回転数を調整していた循環量の制御も終了する。
【0077】
さらに、制御手段82は、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77とを駆動し、風呂追い焚き運転を行うとともに、浴槽温度検出手段78で浴槽68の温度を検出する。浴槽68の温度が上昇し、浴槽温度設定手段83で設定した浴槽温度から決まる風呂追い焚き終了温度(例えば、設定温度)になれば、風呂追い焚きを終了する。すなわち、制御手段82は、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77の駆動を停止する。
【0078】
このように、浴室80に人が入ってきたことを検出したら、注湯を開始すると共に利用側循環ポンプ77を駆動することによって、貯湯槽57からの高温の湯を、浴槽68からの湯と適当な混合割合にしてから浴槽68に入れるため、浴槽68に入れる湯温を安全な温度(60℃以下)にしても注湯温度をこの安全な温度以上の高温にできるので、注湯量を少なくすることができるため浴槽湯量の増加が少なくなり快適性の向上となる。
【0079】
また、貯湯槽57から持ち出される高温の湯量も減るので湯切れの発生の可能性も減少し利便性の向上となる。特に、冬季など給湯機と浴槽を接続する風呂循環管路内の湯の温度低下が大きい時でも、浴槽68からの循環量を調整できるので、冷たい温度の湯が浴槽68に入ることを少なくすることができ、快適性の効果をより大きくすることが出来る。
【0080】
前述したように、図1の構成よりもより広い条件で同様な作用効果を得るために、図5に示すように、図1の浴槽注湯管路67の途中に、流量制御装置91を設ける構成にしても良い。給湯機の設置の場所や状態によっては、給水管58からの給水圧力が高い時や、風呂循環管路69が長く利用側循環ポンプ77による浴槽68からの循環流量が少ない時に、利用側循環ポンプ77の回転数を制御しても前述した所定の混合温度(例えば60℃)にできないことがある。
【0081】
このときは、流量制御装置91で浴槽注湯管路67を流れる注湯量を少なくし、利用側循環ポンプ77の回転数を制御すれば、所定の混合温度(例えば60℃)にすることができる。このような構成にしても、図1の場合と同様な効果が得られる。
【0082】
なお、図1及び図5では、接続口50を利用側循環ポンプ77の下流(吐出)側に設けた構成にしたが、接続口50を利用側循環ポンプ77の上流(吸入)側に設けた構成にしても良い。この場合も、図1、図5と同様の作用、効果が得られる。
【0083】
以上は、風呂給湯混合弁65や利用側循環ポンプ77の回転数を制御することによって、注湯された湯と浴槽68からの湯とが混合した後の湯の温度を、所定の混合温度(例えば60℃)になるようにした。
【0084】
これに対して、注湯温度を一定にし、利用側循環ポンプ77の回転数を一定にして、注湯量を制御することによっても、同様の作用、効果が得られる。すなわち、図5に示すように、浴槽注湯管路67の途中に、流量制御装置91を設ける。この流量制御装置91は浴槽注湯管路67を流れる注湯流量を調整するもので、流路断面積(図示せず)を変えて流路抵抗を変化させることによって、注湯流量を制御する。
【0085】
図4に示すように、注湯温度がT3の場合、注湯された湯と浴槽68から循環してきた湯との混合湯量に対する注湯量の割合をR3とすればよい。すなわち、浴室80に人が入ってきたら、人検知手段81は人を検出する。
【0086】
そして、人検知手段81からの検出信号を受けて、制御手段82は、入浴者が希望の風呂温度として、浴槽温度設定手段83で設定した設定温度よりも高い所定の注湯温度の湯を注湯すると共に、浴槽68の湯を循環させる。
【0087】
すなわち、制御手段82は、風呂注湯弁66を開き、風呂給湯混合弁65で所定の注湯温度に調整した温度で注湯し、さらに、所定の初期回転数で利用側循環ポンプ77を駆動する。このとき、注湯された湯と利用側循環ポンプ77で送られてきた浴槽68の湯とが混合した後の湯の温度が、所定の混合温度(例えば60℃)になるように、混合温度検出手段90からの信号に基づいて、流量制御装置91の流路断面積を調整して注湯量を制御する。
【0088】
ここで、浴槽温度設定手段83で設定された設定温度(例えば40℃)近傍まで加熱するため、前記所定の混合温度(例えば60℃)はこの設定温度(例えば40℃)よりも高い温度であり、さらに、風呂給湯混合弁65で混合されて注湯される湯の温度は、この所定の混合温度(例えば60℃)よりも高い温度である。
【0089】
そして、浴槽68の温度を検出する浴槽温度検出手段78が、所定の注湯終了温度(例えば、設定温度−0.5℃)に達したら、風呂注湯弁66を閉じて注湯を終了する。さらに、制御手段82は、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77とを駆動し、風呂追い焚きを行うとともに、浴槽温度検出手段78で浴槽68の温度を検出する。浴槽68の温度が上昇し、浴槽温度設定手段83で設定した浴槽温度から決まる風呂追い焚き終了温度(例えば、設定温度)になれば、風呂追い焚きを終了する。すなわち、制御手段82は、熱源側循環ポンプ76と利用側循環ポンプ77の駆動を停止する。
【0090】
このように、浴室80に人が入ってきたことを検出したら、注湯を開始すると共に利用側循環ポンプ77を駆動し、注湯流量を調整することによって、貯湯槽57からの高温の湯と浴槽68からの湯と適当な混合割合にしてから浴槽68に入れるため、浴槽68に入れる湯温を安全な温度(60℃以下)にしても注湯温度をこの安全な温度以上の高温にできるので、注湯量を少なくすることができるため浴槽湯量の増加が少なくなり快適性の向上となる。また、貯湯槽から持ち出される高温の湯量も減るので湯切れの発生の可能性も減少し利便性の向上となる。
【0091】
特に、給湯機の設置の場所や状態によっては、給水管58からの給水圧力が高い時や、風呂循環管路69が長く利用側循環ポンプ77による浴槽68からの循環流量が少ない時に、直接熱源となる高温の注湯流量を制御するので、より安定した制御が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明にかかる給湯機は、人検知手段が人を検出したとき、風呂の設定温度よりも高い温度の湯を、浴槽に注湯するとともに、循環ポンプを駆動することで、浴槽の湯の増加が少なく、かつ、湯切れの発生の可能性も少なくすることができ、快適性と利便性の向上を図ることができるものである。
【符号の説明】
【0093】
55 ヒートポンプユニット(加熱手段)
57 貯湯槽
58 給水管
65 風呂給湯混合弁
66 風呂注湯弁
67 浴槽注湯管路
68 浴槽
69 風呂循環管路
73 風呂熱交換器
77 利用側循環ポンプ
78 浴槽温度検出手段
80 浴室
81 人検知手段
82 制御手段
83 浴槽温度設定手段
91 流量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、前記浴槽の湯水を加熱する風呂熱交換器と、前記浴槽と前記風呂熱交換器とを接続し循環ポンプが配された風呂循環管路と、前記浴槽の湯水の温度を検出する浴槽温度検出手段と、浴室内の人の存在の検出する人検知手段と、前記浴槽の湯水の温度を設定する浴槽温度設定手段と、制御手段とを備え、前記人検知手段が人を検知したとき、前記浴槽温度設定手段で設定された設定温度よりも高い温度の湯を、前記風呂循環管路に注湯するとともに、前記循環ポンプを駆動させることを特徴とする給湯機。
【請求項2】
高温水を貯湯する貯湯槽と、前記貯湯槽から高温水と水とを混合する混合弁とを備え、前記混合弁にて所定温度に調整した湯水を、前記風呂循環管路に注湯することを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
前記浴槽の湯水の温度が所定温度になるように、前記循環ポンプの回転数を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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