説明

給湯装置

【課題】 スケール詰まりの発生を的確にかつ迅速に検知して、ユーザに早期洗浄を促すことができる給湯装置を提供する。
【解決手段】入水路2からの入水を熱交換器3で加熱して出湯路5出湯させた湯と、バイパス路7に分岐入水させた水とを合流部51で混合させて設定給湯温度に温調する。熱交換器よりも下流側位置であって合流部51よりも熱交換器側である上流側位置にメッシュネットを用いた捕集手段13を介装させて、熱交換器で析出して下流側へ流出するスケールを捕集する。熱交換器でのスケール析出に加え、スケール捕集により出湯路の流路抵抗を増大させることでバイパス流量調整弁8の弁位置の閉側変動をより増幅させ、この増幅された変動を監視することでスケール詰まり発生の検知を行う

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体内の熱交換器において燃焼熱により熱交換加熱された湯と、熱交換器をバイパスするバイパス路により供給される水とを混合することにより、所定の設定給湯温度に温調した上で給湯するように構成された給湯装置に関し、特に、缶体の熱交換器の内壁におけるスケール詰まり(缶石詰まり)の発生を、より確実に・より早く検知するための対策技術に係る。
【背景技術】
【0002】
スケール詰まりとは、熱交換器での加熱対象である入水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの塩類が加熱されて析出し、スケール(缶石)となって熱交換器の内壁に付着・堆積することにより生じるものであり、このような付着・堆積によって熱交換器内の流路を狭め熱交換器を詰まらせることをいう。
【0003】
このようなスケール詰まりが生じると、熱交換器の外壁面が燃焼ガスにより加熱されてもその熱が内部を通過する水まで伝わり難くなるため、熱効率を著しく低下させるばかりでなく、熱交換器の壁面の異常加熱を招いて耐久性を損なうことになる。このため、従来からスケール詰まりの対策に係る種々の技術の提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、出湯停止後に検出される出湯温度が規定温度以上を検出すると、次回以降の再出湯運転時における燃焼バーナの最高燃焼量をより低減させていくようにすることにより、スケール詰まりに起因して後沸き温度が上昇してしまう度合を下げることが提案されている。これにより、過度の後沸き発生(異常発生)に伴う安全装置による強制燃焼停止作動をなるべく回避して、給湯装置の使用可能期間を延ばすようにしている。
【0005】
又、特許文献2には、給湯開始(給湯栓の開)の直後に、それまでの燃焼停止期間中に配管内に残留していた冷水が給湯栓から出てしまうことを改善するために、前回の燃焼作動(給湯使用)が停止した後にも循環ポンプを作動して配管内を循環させるという循環型の給湯装置での対策が提案されている。すなわち、循環型の給湯装置では、給湯栓の閉止により出湯停止した後でも熱交換器内に通水されてしまい、上記の特許文献1の技術を適用し得ないことから、強制的に通水を停止させて後沸き温度を測定することにより異常発生しているか否かの診断処理を行う、という対策が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、バーナの燃焼量が基準燃焼量よりも高いか否か、及び、基準燃焼量よりも高い場合に熱効率が基準熱効率よりも低いか否か、をみて、熱効率が低下している場合にその原因がフィン詰まりによるものか、スケール詰まりによるものか、の判定を行うようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−254615号公報
【特許文献2】特開2007−263403号公報
【特許文献3】特開2008−215657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、日本国内で供給されている水道水の硬度は一般に低く、スケール詰まりがさほど問題になることは少ないものの、特にアメリカやヨーロッパでは給湯装置に供給される水がカルシウムイオンやマグネシウムイオンを多量に含む硬水である場合が多く、硬水が原因のスケール詰まりの多発を招いている。
【0009】
このような地域では、硬水が使用される限りはスケール詰まりを発生させないという方向での技術開発は困難であるため、技術開発の方向は、ユーザにスケール詰まりの発生を的確に報知(警告)して清掃を促すために、スケール詰まりの発生をいかにして迅速にかつ確実に検知するかという技術の開発に向かっている。
【0010】
このような技術開発の場合、熱効率の変化如何によってスケール詰まりの発生を判定・検知するという手法では、検知精度が悪い上に、他の要因に基づく熱効率との峻別、例えば燃焼ススが熱交換器のフィンに付着してフィン詰まりを生じることによる熱効率の低下との峻別にも難点があるため、実用上採用し得るものではないと考えられる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スケール詰まりの早期洗浄を図ることができ、さらに、早期洗浄をユーザに促す上でスケール詰まりの発生を的確にかつ迅速に検知し得る給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、燃焼バーナと、燃焼バーナの燃焼作動により生じる燃焼ガスを受けて加熱される管路を備えた熱交換器と、この熱交換器の管路に入水させる入水路と、この入水路からの入水が上記熱交換器で熱交換加熱された後に出湯される出湯路と、上記熱交換器をバイパスするように上記入水路から分岐されて上記出湯路に合流するバイパス路とを備えた給湯装置を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記熱交換器の出口側位置の出湯路であって上記バイパス路との合流位置よりも上流側位置の出湯路に、上記熱交換器の管路内に析出して流出するスケールを捕集するための捕集手段を介装させることとした(請求項1)。
【0013】
本発明の場合、熱交換器から流出してくるスケールが捕集手段により捕集されることになり、下流側の給湯栓への給湯にスケールが混入することを回避することができる上に、捕集手段でのスケールの捕集度合によってスケール詰まり発生の検知にも活用し得ることらになる。
【0014】
本発明における捕集手段は、出湯路に対し着脱可能に配設することができる(請求項2)。この場合、スケールが捕集されて所定量溜まれば、捕集手段を取り外してスケールを廃棄した上で、再度装着させてスケールを捕集させることが可能になる。
【0015】
本発明における捕集手段として、出湯路の流路開口断面を横切るように配置されたメッシュ状の捕集フィルタにより構成することができる(請求項3)。この場合、スケールを捕集するための構成として好適なものを特定して、スケールの捕集を容易に実現させ得ることになる。
【0016】
又、本発明において、上記熱交換器の出口近傍位置の出湯路内の湯水の温度を検出する缶体温度センサと、上記熱交換器におけるスケール詰まりの発生を検知するスケール詰まり発生検知手段と、報知手段とをさらに備えることとし、上記スケール詰まり発生検知手段として、上記缶体温度センサにより検出される上記熱交換器の出口からの出湯の温度である出口温度を監視して、その出口温度が設定上限温度を超えたことの検知によりスケール詰まり発生と検知し、このスケール詰まり発生の検知により上記報知手段によりその旨を報知する構成とすることができる(請求項4)。この場合、熱交換器内にスケール詰まりが発生すると、流路抵抗が増大する結果、同じ燃焼条件であっても熱交換器の出口温度は上昇してしまうことになる。この上昇が設定上限温度を超えることで、所定量以上のスケール詰まりが発生したと判定することができ、これをもって的確にスケール詰まり発生の検知を行うことが可能となる。そして、熱交換器の出口温度が上昇するという上記のメカニズムをスケール詰まり発生の検知に活用する上で、捕集手段を出湯路に介装し、スケールの捕集により出湯路の流路抵抗を増大させ、あたかも熱交換器におけるスケール詰まりが見掛け上増大したようにすることで、上記の熱交換器の出口温度の上昇度合をより増大させることが可能になる。これに伴い、スケール詰まりの発生の検知をより的確にかつ迅速に行うことができるようになる。加えて、スケール詰まり発生の検知を迅速かつ的確に行い得るようにして、その旨の報知により早期に洗浄等を実施可能にしているため、特に、入水が硬水であるような地域で使用されている場合に、給湯装置の耐用期間を大幅に長くすることが可能になる。
【0017】
さらに、本発明において、上記バイパス路に介装されたバイパス流量調整弁と、上記熱交換器におけるスケール詰まりの発生を検知するスケール詰まり発生検知手段と、報知手段とをさらに備えることとし、上記スケール詰まり発生検知手段として、給湯運転の際の上記バイパス流量調整弁の弁体位置を監視し、この弁体位置が同じ給湯条件における初期設定位置よりも閉側に変動していることの検知によりスケール詰まり発生と検知し、このスケール詰まり発生の検知により上記報知手段によりその旨を報知する構成とすることができる(請求項5)。この場合、熱交換器にスケール詰まりが発生すると流路抵抗が増大し、その反作用でバイパス路への分岐流量が増大傾向に陥るため、バイパス路の合流部での設定給湯温度への温調のためにバイパス流量調整弁の弁体位置がより閉側に調整される結果となる。かかるメカニズムをスケール詰まり発生の検知に活用する上で、捕集手段を出湯路に介装し、スケールの捕集により出湯路の流路抵抗を増大させ、あたかも熱交換器におけるスケール詰まりが見掛け上増大したようにすることで、上記のバイパス流量調整弁の弁体位置の変動量をより増大させることが可能になる。これに伴い、スケール詰まりの発生の検知をより的確にかつ迅速に行うことができるようになる。加えて、スケール詰まり発生の検知を迅速かつ的確に行い得るようにして、その旨の報知により早期に洗浄等を実施可能にしているため、特に、入水が硬水であるような地域で使用されている場合に、給湯装置の耐用期間を大幅に長くすることが可能になる。
【0018】
加えて、給湯制御として、上記熱交換器から出湯路に対し出湯される出口温度が初期設定加熱温度まで熱交換加熱されるように燃焼バーナの燃焼作動制御を行う給湯制御手段を備えるようにし、上記給湯制御手段として、上記スケール詰まり検知手段により検知されるスケール詰まり発生の前回の検知から今回の検知までの期間である検知周期を計測し、計測された検知周期が予め設定した設定周期よりも短い場合には、上記熱交換器から出湯される出口温度についての初期設定加熱温度を低温側に変更設定した上で給湯制御を実行する構成とすることができる(請求項6)。この場合、熱交換器での燃焼作動に伴う加熱度合を低減させることが可能になり、これによりスケール析出度合を低減させることが可能になる結果、給湯装置の耐久性を延ばすことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、請求項1〜請求項7のいずれかの給湯装置によれば、熱交換器から流出してくるスケールを捕集手段により捕集することができ、下流側の給湯栓への給湯にスケールが混入することを回避することができる上に、捕集手段でのスケールの捕集度合によってスケール詰まり発生の検知にも活用することができるようになる。
【0020】
特に、請求項2によれば、スケールが捕集されて所定量溜まれば、捕集手段を取り外してスケールを廃棄した上で、再度装着させてスケールを捕集させることができるようになる。
【0021】
請求項3によれば、メッシュ状の捕集フィルタによってスケールを捕集するための構成として好適なものを特定することができ、スケールの捕集を容易に実現させることができるようになる。
【0022】
又、請求項4によれば、熱交換器内にスケール詰まりが発生すると、流路抵抗が増大する結果、同じ燃焼条件であっても熱交換器の出口から出湯される湯の出口温度は上昇してしまうことになるため、この出口温度の上昇が設定上限温度を超えることで、所定量以上のスケール詰まりが発生したと判定することができ、これをもって的確にスケール詰まり発生の検知を行うことができるようになる。加えて、熱交換器の出口温度が上昇するという上記のメカニズムをスケール詰まり発生の検知に活用する上で、捕集手段を出湯路に介装し、スケールの捕集により出湯路の流路抵抗を増大させ、あたかも熱交換器におけるスケール詰まりが見掛け上増大したようにすることで、上記の熱交換器の出口温度の上昇度合をより増大させることができ、これに伴い、スケール詰まりの発生の検知をより的確にかつ迅速に行うことができるようになる。加えて、スケール詰まり発生の検知を迅速かつ的確に行い得るようにして、その旨の報知により早期に洗浄等を実施可能にしているため、特に、入水が硬水であるような地域で使用されている場合に、給湯装置の耐用期間を大幅に長くすることができるようになる。
【0023】
請求項5によれば、熱交換器にスケール詰まりが発生すると流路抵抗が増大し、その反作用でバイパス路への分岐流量が増大傾向に陥るため、バイパス路の合流部での設定給湯温度への温調のためにバイパス流量調整弁の弁体位置がより閉側に調整される結果となる。かかるメカニズムをスケール詰まり発生の検知に活用する上で、捕集手段を出湯路に介装し、スケールの捕集により出湯路の流路抵抗を増大させて、あたかも熱交換器におけるスケール詰まりが見掛け上増大したようにすることができ、これに伴い、上記のバイパス流量調整弁の弁体位置の変動量をより増大させることができる。この結果、スケール詰まりの発生の検知をより的確にかつ迅速に行うことができるようになる。加えて、スケール詰まり発生の検知を迅速かつ的確に行い得るようにして、その旨の報知により早期に洗浄等を実施可能にしているため、特に、入水が硬水であるような地域で使用されている場合に、給湯装置の耐用期間を大幅に長くすることができるようになる。
【0024】
加えて、請求項6によれば、スケール詰まり発生検知の検知周期が短くなれば初期設定加熱温度をより低温側に変更設定させるようにすることにより、熱交換器での燃焼作動に伴う加熱度合を低減させることができ、これによりスケール析出度合を低減させることができる結果、給湯装置の耐久性を延ばすことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態を示す模式図である。
【図2】図1の捕集フィルタの具体例を示す部分断面説明図である。
【図3】第1実施形態のコントローラであって主としてスケール詰まりの発生検知に係る制御部分を示すブロック図である。
【図4】スケール詰まり度合と、バイパス流量調整弁の開度との関係を示す関係図である。
【図5】第1実施形態に属する他の形態を示す図1対応図である。
【図6】第2実施形態を示す模式図である。
【図7】スケール詰まりの有・無によるバイパス流量調整弁の開度(ステップ位置)の変化について試験した結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る給湯装置を示す。この給湯装置は、ケース1内に配設されたものであり、上流端20が水道管等に接続された入水路2から熱交換器3に導入された水を燃焼バーナ4の燃焼熱により熱交換加熱し、加熱後の湯を出湯路5に出湯し下流端50から装置外に延びる給湯配管61を通して台所や浴室等の給湯栓6等の所定の給湯先に給湯させるようになっている。上記入水路2と出湯路5との間には、上記熱交換器3をバイパスして出湯路5に給水して熱交換器3から出湯路5に出湯される湯に水を混合させるためのバイパス路7が設けられている。すなわち、バイパス路7は、入水路2の分岐部21から上流端が分岐され、出湯路5の合流点51に下流端が合流するように接続されている。このバイパス路7には出湯路5の側への通水流量を調整するバイパス流量調整弁8が介装され、バイパス流量調整弁8の弁体の位置制御による開度調整により、熱交換器3から出湯路5に出湯される湯に対する水の混合比が変更調整されて設定給湯温度に温度調整されるようになっている。
【0028】
上記熱交換器3は、多数のフィン31とこれらのフィン31を貫通するように接合された管路としてのチューブ32とを備えたフィンアンドチューブ型に構成されている。この熱交換器3及び燃焼バーナ4が缶体9内に配設され、燃焼バーナ4の燃焼作動によりその上部空間の燃焼室に向けて燃焼されると、その燃焼ガスが上方に流れる間に熱交換器3の多数のフィン31やチューブ32を加熱し、これにより、内部を通過する水が熱交換加熱されるようになっている。そして、熱交換加熱後の燃焼排ガスが排出口91から外部に放出されるようになっている。燃焼バーナ4は、図示省略の元ガス弁やガス比例弁を介装した燃料供給系からの燃料ガスの供給と、送風ファン10からの燃焼用空気の供給とを受けて燃焼作動するようになっており、複数のバーナ部に対する燃料ガスの供給切換制御によって燃焼能力が複数段階に切換可能となっている。これらのもので燃焼系11(図3参照)が構成され、コントローラ12による給湯制御等によって燃焼系11の作動制御が行われるようになっている。
【0029】
上記入水路2には、図示省略の入水流量センサや入水温度センサ22が配設されている一方、上記出湯路5には、上記缶体9の近傍位置であって上記熱交換器3の出口から出湯された直後の湯の温度である出口温度(缶体温度)を検出する缶体温度センサ52と、バイパス路7の下流端との合流部よりも下流側位置における温調後の給湯温度を検出する給湯温度センサ53と、給湯栓6の側への給湯流量を調整して燃焼バーナ4による入水の加熱を補完する過流出防止弁54とが配設されている。又、上記出湯路5には、熱交換器3の出口(缶体9の出口)よりも下流側位置であって、バイパス路7の合流点51よりも熱交換器3の側である上流側位置に対し、捕集手段13が着脱可能に配設されている。この捕集手段13は、詳細を後述するように、特に熱交換器3内から出湯路5に流出するスケール(スケールの破片)を捕集し、その捕集度合に応じて出湯路5内の流路抵抗を増大させる、換言すると出湯路5内の流路を閉塞させる側に変化させるようになっている。
【0030】
上記捕集手段13について、図2に例示する具体例に基づいてより詳細に説明する。図2の例では、捕集手段13は捕集フィルタ14により構成され、この捕集フィルタ14が出湯路15の流路開口断面を横切るように装着されるようになっている。すなわち、捕集フィルタ14は、先端が開口された筒状のメッシュフィルタ部材141と、先端側に開口し基端側が閉塞された蓋体142と、止水部材としてのOリング143とを備えている。メッシュフィルタ部材141は、出湯路5を流れる湯は通過させるものの、熱交換器3内(チューブ32内)で析出して出湯路5に流出したスケール、あるいは、析出して一旦は付着した後に剥離して出湯路5に流出したスケール破片(以下、単に「スケール」と表記する)を捕集し得るように、その流出してくるであろう捕集対象のスケールの想定サイズに応じてそのメッシュサイズを定めればよい。例えば、線径0.18mmの金属線で40メッシュ(1インチ幅に40本)の格子状のメッシュを用いればよい。そして、上記メッシュフィルタ部材141の基端側が蓋体142の基端側に開口する凹所に対し内嵌された状態で互いに連結されるととともに、メッシュフィルタ部材141の基端側が蓋体142により閉塞されている。蓋体142は外周面に多数の凸条を形成して滑り止めが施されてケース1の開口部から外部に露出状態で配設される大径の回転操作部144と、この操作部144よりも小径筒状に形成されたネジ部145とを備え、このネジ部145により捕集フィルタ14がケース1の外から着脱可能になっている。
【0031】
加えて、この捕集フィルタ14の装着は、出湯路5に介装された装着配管部15に対して行われるようになっている。すなわち、装着配管部15は、互いに偏心配置された上流側配管部151及び下流側配管部152と、両者を連通接続させるよう斜め下方に延びて装着口153を有する装着部154とが一体に形成されたものであり、上流側配管部151の上端開口と、下流側管部152の下端開口との上下で出湯路5に対し接続されて連通されている。装着部154の上流側配管部151との境界位置には当止壁部155が形成され、装着口153の内周面には上記ネジ部145と互いに螺合するネジ部156が形成されている。そして、装着口153の開口から捕集フィルタ14のメッシュフィルタ部材141の先端を差し入れ、捕集フィルタ14側のネジ部145を装着部154側のネジ部156にねじ込んで締結すれば、メッシュフィルタ部材141の先端が当止壁部155に当て止まり、装着が完了する。逆回りに回転させれば上記のネジ部145,154による締結が外れ、捕集フィルタ14をケース1の外に取り外すことができる。これにより、内部に捕集されたスケールを容易に廃棄したり洗浄したりというメンテナンスを行った上で、再度装着させることができる。
【0032】
この装着状態では、出湯路5の上流側から熱交換器3から出湯された湯(図2の実線の矢印参照)とスケール(同図の点線の矢印参照)とが上流側配管部151に流入し、これがメッシュフィルタ部材141の先端開口から内部に流入すると、湯はメッシュフィルタ部材141の周壁を通して下流側へ流れる一方、スケールはそのメッシュフィルタ部材141の周壁に捕集されて内部に蓄積されることになる。この蓄積は、まずはメッシュフィルタ部材141の周壁の内周面に対し湯の流下圧力により押し付けられ、捕集量の増加に伴いその周壁の内周面を覆う範囲も増大する結果、出湯路5内の湯に対する流路抵抗が増大していくことになる。これにより、出湯路5の流路閉塞傾向を促進させて、後述の如くスケール詰まり発生の検知精度の向上又は検知の迅速化を図るようにしている。
【0033】
以上の給湯装置は、報知手段を兼ねるリモコン121からの入力設定信号や操作信号の出力や、種々の温度センサ22,52,53等からの検出信号の出力を受けて、コントローラ12により作動制御されるようになっている。コントローラ12は、そのような作動制御のために、給湯制御手段122(図3参照)等の種々の制御手段に加え、特にスケール詰まり対策のためにスケール詰まり発生検知手段123を備えている。
【0034】
給湯制御手段122は、熱交換器3で加熱して出湯路5に出湯させた湯と、バイパス路7を通して合流部51に分岐入水させた水とを混合させて温調させることにより、給湯栓6に給湯される湯の温度がリモコン121に設定された設定給湯温度になるように作動制御するようになっている。これを実現させるために、熱交換器3で熱交換加熱されて出湯される湯の出口温度(缶体温度センサ52により検出される缶体温度)が初期設定加熱温度(例えば75℃)まで熱交換加熱されるように燃焼バーナ4の燃焼作動制御を行う一方、その初期設定加熱温度の出湯に対しバイパス路7からの水をいかなる混合比で混合すれば混合後の湯が設定給湯温度に温調されることになるかを入水温度センサ22からの入水温度や入水流量等に基づいて演算し、その混合比になるようにバイパス流量調整弁8の弁開度(通水流量)を変更設定するようになっている。そして、給湯温度センサ53からの給湯温度(混合後の湯の温度)に基づいて、その弁開度をフィードバック制御するようにしている。
【0035】
バイパス流量調整弁8の弁体はステッピングモータにより駆動され、このステッピングモータのステップ数を制御することによって弁体位置が制御され、弁体位置の制御により所定の弁開度(通水流量)になるようになっている。そして、給湯制御手段122には、入水温度、缶体温度(出口温度)、設定給湯温度、及び、バイパス流量調整弁8の弁開度の関係、すなわち、入水温度、缶体温度(出口温度)及び設定給湯温度等により規定される給湯条件を満足させるための弁開度と、その弁開度に相当する弁体位置に制御するためのステップ数との初期設定関係がテーブルにして予め初期記憶設定されている。このテーブルから割り出したステップ数をバイパス流量調整弁8に対し初期設定し、以後、上記のフィードバック制御により弁開度を調整するようになっている。
【0036】
以上のような給湯制御手段122による給湯制御の過程で、スケール詰まり発生検知手段123はバイパス流量調整弁8のステッピングモータから実際のステップ数の出力を受けてその実際のステップ数の変動を監視し、実際のステップ数が上記の初期設定関係の初期設定ステップ数よりも閉側に所定量以上変動するようになればスケール詰まり発生と検知するようになっている。
【0037】
そして、スケール詰まり発生と検知すれば、リモコン121に対し報知指令を出力してユーザに対し警告報知を行う。例えば、「スケール詰まりが発生しています。内部の洗浄作業を行って下さい。」という旨の表示をリモコン121の液晶表示画面に表示させたり、内蔵の音声回路により音声案内をさせたりすればよい。その際に、警告灯の点灯・点滅、又は、警告音の吹鳴等を併せて又は単独で実施するようにしてもよい。
【0038】
さらに、給湯制御手段122はスケール詰まり発生検知手段123からの検知情報の出力を受けて記憶し、次回のスケール詰まり発生検知手段123による検知出力までの検知周期を計測して記憶するようになっている。そして、計測された検知周期が予め設定した設定周期よりも短い場合には、上述の燃焼バーナ4の燃焼作動制御における初期設定加熱温度の温度値(例えば75℃)をより低温側の温度値(例えば60℃)に変更設定した上で、以後の給湯制御を実行するようになっている。これにより、スケール詰まり発生の検知によりユーザに報知したにも拘わらずスケール詰まりの洗浄が行われていない場合や、洗浄が行われたにも拘わらずスケール詰まりが発生し易い環境に陥っている場合等において、熱交換器3での燃焼作動に伴う加熱度合を低減させることによりスケール析出度合を低減させることができるようになる。この結果、給湯装置の耐久性を延ばすことができるようになる。
【0039】
ここで、上記のスケール詰まり発生検知手段123によるスケール詰まり発生検知のメカニズムについて、図4を参照しつつ詳細に説明する。
【0040】
すなわち、スケール詰まりとは、入水が熱交換器3で加熱されることにより、入水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオン等が析出し、スケールとなって熱交換器3のチューブ32の内壁に付着・堆積していくことである。このスケールの付着・堆積はある程度進行すると、それ以上は付着せずに湯と共に下流へ流れ出ることになる。一方、スケールの熱交換器3内への付着・堆積は圧損の原因となって熱交換器3を通過する湯水の流路抵抗を増大させることになる。するとバイパス路7との圧損のバランスが当初の正常状態のものからずれてしまい、この結果、上流側の入水路2からバイパス路7に分岐する入水がより流れ易くなってバイパス流量が増加傾向に陥る。ところが、給湯制御手段122によって給湯温度センサ53からの給湯温度が設定給湯温度に温調されるようにバイパス流量調整弁8の弁開度が調整制御されているため、設定給湯温度に温調するための混合比にすべくバイパス流量調整弁8の弁開度が本来の初期設定位置よりも閉側(ステップ数を増加する側)に変更制御されることになる。これにより、スケール詰まりが発生していても、給湯制御手段122による給湯制御によって設定給湯温度での給湯を維持し得る一方、上記のステップ数の増加変更の監視によってスケール詰まり発生の検知がスケール詰まり発生検知手段123によって検知し得ることになるのである。
【0041】
このような原理上のメカニズムに加え、本発明は次のような特殊なメカニズムに基づいて迅速かつ的確なスケール詰まり発生の検知を行うことができるようになっている。すなわち、図4にスケールの詰まり度合と、バイパス流量調整弁8の弁開度との関係を示すように、スケール詰まりが進行するとバイパス流量調整弁8の弁開度は減少し、この弁開度が減少すると、弁位置を調整するステッピングモータのステップ数は増加することになる。しかしながら、熱交換器3内のスケール詰まりは図4に「D」の矢印で示す位置までスケール詰まりが進行すると、それ以上のスケール詰まりは進行しないケースが多いという特性がある。つまり、付着したスケールの上にさらにスケールが付着して堆積していく現象には限りがあり、ある程度付着・堆積すると、それ以上の付着・堆積は生じずに剥がれて流出することになる、と考えられる。ここで、「D」の矢印で示す位置でのスケール詰まりに対応するバイパス流量調整弁8の弁開度の閉側変更量もさほどのものではない上に、スケール詰まり以外の要因に基づいて弁開度が変更されている可能性もある。従って、通常のスケール詰まりに起因するバイパス流量調整弁8の弁開度の閉側変更量(「D」の矢印位置での変更量)そのものでは、的確な検知し得る検知レベルにないのである。
【0042】
その一方、上記の「D」の矢印で示す位置までのスケール詰まりであっても、それに伴い缶体温度の上昇を招くため熱交換器3等の耐久性の悪化につながる上に、全体的なスケール詰まり度合は低くても局部的なスケール詰まりの発生により熱交換器3の早期の破損を招くおそれがある。
【0043】
以上に対し、本実施形態(本発明)では、捕集フィルタ14を設置しているため、熱交換器3自体にはある程度以上のスケール詰まりが進行しなくても、熱交換器3から流出するスケールが捕集フィルタ14により捕集されて出湯路5の流路抵抗が増大することになるため、図4の関係曲線において本来は発現しえない「F」で示す矢印位置まで見掛け上進行させることができるようになる。この結果、バイパス流量調整弁8の弁開度の閉側変動を監視することで、スケール詰まり発生の検知を的確にかつ迅速に行うことができるようになる。しかも、的確かつ迅速なスケール詰まりの検知に基づいてユーザに対し的確かつ早期に警告を報知することができ、早期の洗浄(例えば熱交換器内部の酸洗浄)を実施させることができる。特に、入水が硬水であるような地域で使用されている場合に、給湯装置の耐用期間を大幅に長くすることができるようになる。
【0044】
図5は第1実施形態に属する他の形態を示すものであり、図5に例示した形態の給湯装置であっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。図5の給湯装置は、図1の給湯装置における過流出防止弁54に代えて、バイパス路7の合流部51よりも熱交換器3側である上流側位置に過流出防止弁55を配設したものである。
【0045】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係る給湯装置を示す。第2実施形態の給湯装置は、第1実施形態のバイパス流量調整弁8を省略した点で第1実施形態と異なり、その他の構成要素は第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態のものと同一構成要素には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0046】
この第2実施形態の場合には、第1実施形態のバイパス流量調整弁8の存在がないため、スケール詰まり発生検知手段によるスケール詰まり発生の検知を、缶体温度センサ52により検出される出口温度(缶体温度)を監視することで行っている。
【0047】
すなわち、第2実施形態のスケール詰まり発生検知手段は、上記缶体温度センサ52により検出される熱交換器3からの出口温度を監視して、その出口温度が設定上限温度(例えば80℃〜90℃)を超えたことの検知によりスケール詰まり発生と検知するようになっている。つまり、初期設定加熱温度として例えば75℃を設定し、これに基づいて燃焼作動させていたとしても、出口温度が上記の設定上限温度を超えてしまう場合には熱交換器3内におけるスケール詰まり発生に起因するものであると判定し、スケール詰まり発生の検知としている。そして、このスケール詰まり発生の検知により、リモコン121に対し第1実施形態で説明したと同様の警告報知を実行する。
【0048】
この第2実施形態においても、スケール詰まり発生の検知を的確にかつ迅速に行うことができ、ユーザに対する警告報知によって早期の洗浄を実施させることができるようになる。従って、入水が硬水であるような地域で使用されている場合には、第1実施形態と同様に給湯装置の耐用期間を大幅に長くすることができるようになる。
【0049】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記第1及び第2実施形態では、捕集手段として捕集フィルタ14を開示しているが、これに限らず、他の構造のメッシュフィルタを捕集手段として用いるようにしてもよい。又、
【実施例】
【0050】
図1の給湯装置及び図2の捕集フィルタ14を用いて、捕集フィルタ14に対する閉塞無し(スケールの捕集がなし)の状態と、閉塞有り(スケールが所定量以上に捕集されて閉塞傾向にある状態を模擬的に再現させたもの)の状態とにし、各状態においてトータル流量として15L/min,10L/min,5L/minの3ケース設定して流した場合の、トータル流量、缶体流量(熱交換器3内に流れる流量)、及び、バイパス流量調整弁8のステップ数についてそれぞれ実測して比較試験を行った。これらの際、過流出防止弁54は100%の開状態にし、設定給湯温度として40℃を、燃焼バーナ4による燃焼作動を規定する加熱設定温度として75℃の一定値をそれぞれ設定した。
【0051】
この試験結果を図7に示す。この試験結果によれば、トータル流量の実測値はほぼ設定値に合致し、缶体流量の実測値はトータル流量が5L/mimに設定した場合に「閉塞有り」の状態の方が若干増加傾向であるもの、他の15L/mim及び10L/mimの場合は「閉塞無し」と「閉塞有り」とでほぼ同様の値であった。これに対し、バイパス流量調整弁8の弁体位置を表すステップ数は「閉塞有り」の方が「閉塞無し」に比べ大幅に増加(弁体位置が閉側に大幅に変動)することとなった。これにより、バイパス流量調整弁8の弁体位置(ステップ数)の閉側変動を検知することで、スケール詰まり発生の検知を行うことができることを確認することができた。なお、バイパス流量調整弁8のステップ数の制御範囲は0(全開)〜1200(全閉)の範囲である。
【符号の説明】
【0052】
2 入水路
3 熱交換器
4 燃焼バーナ
5 出湯路
7 バイパス路
8 バイパス流量調整弁
13 捕集手段
14 捕集フィルタ
31 チューブ(熱交換器の管路)
51 バイパス路との合流点
52 缶体温度センサ
121 リモコン(報知手段)
122 給湯制御手段
123 スケール詰まり発生検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼バーナと、燃焼バーナの燃焼作動により生じる燃焼ガスを受けて加熱される管路を備えた熱交換器と、この熱交換器の管路に入水させる入水路と、この入水路からの入水が上記熱交換器で熱交換加熱された後に出湯される出湯路と、上記熱交換器をバイパスするように上記入水路から分岐されて上記出湯路に合流するバイパス路とを備えた給湯装置において、
上記熱交換器の出口側位置の出湯路であって上記バイパス路との合流位置よりも上流側位置の出湯路には、上記熱交換器の管路内に析出して流出するスケールを捕集するための捕集手段が介装されている
ことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯装置であって、
上記捕集手段は出湯路に対し着脱可能に配設されている、給湯装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の給湯装置であって、
上記捕集手段は出湯路の流路開口断面を横切るように配置されたメッシュ状の捕集フィルタにより構成されている、給湯装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の給湯装置であって、
上記熱交換器の出口近傍位置の出湯路内の湯水の温度を検出する缶体温度センサと、上記熱交換器におけるスケール詰まりの発生を検知するスケール詰まり発生検知手段と、報知手段とを備え、
上記スケール詰まり発生検知手段は、上記缶体温度センサにより検出される上記熱交換器の出口からの出湯の温度である出口温度を監視して、その出口温度が設定上限温度を超えたことの検知によりスケール詰まり発生と検知し、このスケール詰まり発生の検知により上記報知手段によりその旨を報知するように構成されている、給湯装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の給湯装置であって、
上記バイパス路に介装されたバイパス流量調整弁と、上記熱交換器におけるスケール詰まりの発生を検知するスケール詰まり発生検知手段と、報知手段とを備え、
上記スケール詰まり発生検知手段は、給湯運転の際の上記バイパス流量調整弁の弁体位置を監視し、この弁体位置が同じ給湯条件における初期設定位置よりも閉側に変動していることの検知によりスケール詰まり発生と検知し、このスケール詰まり発生の検知により上記報知手段によりその旨を報知するように構成されている、給湯装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の給湯装置であって、
給湯制御として、上記熱交換器から出湯路に対し出湯される出口温度が初期設定加熱温度まで熱交換加熱されるように燃焼バーナの燃焼作動制御を行う給湯制御手段を備え、
上記給湯制御手段は、上記スケール詰まり検知手段により検知されるスケール詰まり発生の前回の検知から今回の検知までの期間である検知周期を計測し、計測された検知周期が予め設定した設定周期よりも短い場合には、上記熱交換器から出湯される出口温度についての初期設定加熱温度を低温側に変更設定した上で給湯制御を実行するように構成されている、給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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