説明

給湯装置

【課題】熱回収運転をおこなう際に、熱回収運転の運転停止を最適化することにより、システム効率を向上させ省エネルギー性を高めた給湯装置を提供すること。
【解決手段】貯湯槽1と、前記貯湯槽1の水を加熱する第1の加熱手段2と、前記貯湯槽1外に設けられ、前記第1の加熱手段2による加熱温度よりも低温の熱源3と、前記熱源3からの熱により前記貯湯槽1の水を加熱する第2の加熱手段4と、前記貯湯槽1内の水温を検知する複数の貯湯温検知手段8と、制御手段9とを備え、前記複数の貯湯温検知手段8の検知温度に基づいて、前記第2の加熱手段4による加熱運転を停止させることを特徴とする給湯装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯槽の水を加熱する給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯装置は、例えば図11のようなものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の給湯装置を示すものである。
【0004】
図11に示すように、貯湯槽1と、この貯湯槽1の水を加熱する第1の加熱手段2と、貯湯槽1の外部の熱源としての浴槽3と、貯湯槽1内に設けられた第2の加熱手段としての風呂熱交換器4と、この風呂熱交換器4に浴槽3の水を搬送するポンプ5と、風呂熱交換器4に流入する水温を検知する流入温度検知手段6と、風呂熱交換器4から流出する水温を検知する流出温度検知手段7とを設け、使い終わった浴槽3の水で貯湯槽1の水を加熱する、いわゆる熱回収運転中に流入温度検知手段6と流出温度検知手段7との差に基づいて、この熱回収運転の停止条件を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−250588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、浴槽3からの熱回収の状態だけで熱回収運転の停止条件を決定する前記従来の構成では、熱回収運転の結果として貯湯槽1の水温が上昇するのであるが、第1の加熱手段2の方式によってはその水温上昇の性状で加熱効率に影響を与える。
【0007】
とくに第1の加熱手段2としてヒートポンプを用いる場合、加熱前の水温が高いとヒートポンプの運転効率は大きく低下するために、より多くの熱を回収することが必ずしもシステム全体の効率を向上させることにつながらず、省エネルギーにならない場合があるという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、熱回収運転をおこなう際に、熱回収運転の運転停止を最適化することにより、システム効率を向上させ省エネルギー性を高めた給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯装置は、貯湯槽と、前記貯湯槽の湯水を加熱する第1の加熱手段と、前記貯湯槽外に設けられ、前記第1の加熱手段による加熱温度よりも低温の熱源と、前記熱源からの熱により前記貯湯槽の湯水を加熱する第2の加熱手段と、前記貯湯槽内の湯水温度を検知する複数の貯湯温検知手段と、制御手段とを備え、前記複数の貯湯温検知手段のうち少なくともひとつの検知温度に基づいて、前記第2の加熱手段による加熱運転を停止させることを特徴とするものである。
【0010】
これにより、熱回収運転をおこなう際に、熱回収運転の運転停止を最適化することにより、システム効率を向上させ省エネルギー性を高めた給湯装置を提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱回収運転をおこなう際に、熱回収運転の運転停止を最適化することにより、システム効率を向上させ省エネルギー性を高めた給湯装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯装置の構成図
【図2】同給湯装置の熱回収運転制御手段のブロック図
【図3】同給湯装置の熱回収運転による貯湯槽内の温度分布の変化を示した図
【図4】同給湯装置の第1の加熱手段であるヒートポンプユニットの運転効率を示した図
【図5】同給湯装置の熱回収量とヒートポンプユニットの入力の関係を示した図
【図6】同給湯装置の熱回収運転動作のフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2における給湯装置の構成図
【図8】本発明の第3の実施の形態における給湯装置の構成図
【図9】同給湯装置の熱回収運転時の水および湯の流れ方向を示した回路構成図
【図10】同給湯装置の沸き上げ運転時の水および湯の流れ方向を示した回路構成図
【図11】従来の給湯装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、貯湯槽と、前記貯湯槽の湯水を加熱する第1の加熱手段と、前記貯湯槽外に設けられ、前記第1の加熱手段による加熱温度よりも低温の熱源と、前記熱源からの熱により前記貯湯槽の湯水を加熱する第2の加熱手段と、前記貯湯槽内の湯水温度を検知する複数の貯湯温検知手段と、制御手段とを備え、前記複数の貯湯温検知手段のうち少なくともひとつの検知温度に基づいて、前記第2の加熱手段による加熱運転を停止させることを特徴とする給湯装置である。
【0014】
これにより、熱回収運転をおこなう際に、熱回収運転中の貯湯槽の温度分布に基づき、熱回収運転の運転停止を最適化することにより、システム効率を向上させ省エネルギー性を高めた給湯装置を提供できる。
【0015】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記第2の加熱手段による加熱運転停止後の、前記第1の加熱手段の運転時における入力が略最小となるように、前記第2の加熱手段による加熱運転を停止させることを特徴とするものである。
【0016】
これにより、熱回収運転中の貯湯槽の温度分布に基づき、第1の加熱手段によって所定の貯湯量を沸き上げるための消費熱量(消費電力)が最小となる時点を判断して、第2の加熱手段による熱回収運転を停止するので、本来の目的であるシステム全体としての効率向上を実現し、省エネルギー性を高める効果がある。
【0017】
第3の発明は、特に第1または2の発明において、前記第1の加熱手段は、前記貯湯槽外に設けられたヒートポンプユニットで、前記貯湯槽下部から湯水を取り出して前記ヒートポンプユニットにて加熱した後、前記貯湯槽上部に戻す構成としたことを特徴とするものである。
【0018】
これにより、第2の加熱手段による貯湯槽内水温の上昇により必要な沸き上げ量が少なくなる効果と、加熱する前の水温が高いほど運転効率が低下するヒートポンプの特性との関係を最適化することができるため、省エネルギー性の高い運転が可能となる。
【0019】
第4の発明は、特に第1〜第3のいずれかの発明において、前記第2の加熱手段は前記貯湯槽外に設けられ、前記貯湯槽から取り出した湯水を、前記熱源から搬送された熱と前
記第2の加熱手段にて熱交換して、前記貯湯槽に戻す構成としたことを特徴とするものである。
【0020】
これにより、第2の加熱手段は熱源の状態に応じた搬送熱量の制御や、貯湯槽への戻し位置などの考慮で貯湯槽内の温度分布を最適にできるなど、設計の自由度が高くなることによって省エネルギー効果をより向上させることができる。
【0021】
第5の発明は、特に第1〜第3のいずれかの発明において、前記第2の加熱手段は前記貯湯槽内に設けられ、前記熱源から搬送された熱を、前記貯湯槽内で前記第2の加熱手段にて熱交換する構成としたことを特徴とするもので、簡易な構成で所望の効果を実現できる。
【0022】
第6の発明は、特に第3または第4の発明において、前記熱源は浴槽の湯で、前記第2の加熱手段は前記貯湯槽内の湯水と前記浴槽内の湯水とが熱交換する熱交換器で、かつ、前記熱交換器に前記浴槽内の湯水が循環するように接続された浴槽循環路と、前記貯湯槽内の略上部の湯が前記熱交換器に流れるように切換手段を介して前記熱交換器に接続された熱交往き管と、前記熱交換器で前記浴槽の湯水と熱交換された湯水が再び前記貯湯槽内へ戻るように前記貯湯槽に接続された熱交戻り管と、前記貯湯槽の略下部の湯水が前記熱交換器に流れるように、前記第1の加熱手段、前記切換手段を順に介して前記熱交換器に接続された熱回収往き管と、前記第1の加熱手段にて加熱された湯水が前記貯湯槽内に戻るように、前記切換手段から前記貯湯槽に接続された沸き上げ戻り管とを備え、前記熱交換器により前記浴槽の湯の有する熱で前記貯湯槽の湯水を加熱する加熱運転を行うときには、前記熱回収往き管、前記加熱手段、前記切換手段、前記熱交換器、前記熱交戻り管の順に前記貯湯槽からの湯水が流れるように、また、前記第1の加熱手段により前記貯湯槽内の湯水を加熱する沸き上げ運転を行うときには、前記熱回収往き管、前記第1の加熱手段、前記切換手段、前記沸き上げ戻り管の順に前記貯湯槽からの湯が流れるように、前記制御手段が前記切換手段を切り換える構成としたことを特徴とするものである。
【0023】
これにより、浴槽の湯の有する熱で貯湯槽の湯水を加熱する加熱運転時に使用する配管の一部を、貯湯槽内の湯水の沸き上げ運転時にも使用する構成とすることができ、低コスト化を実現した給湯装置を提供できる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における給湯装置の構成を示す図である。
【0026】
図1において、給湯装置は、貯湯槽1と、この貯湯槽1内の湯水を加熱する第1の加熱手段としてのヒートポンプユニット2を備えている。
【0027】
また、熱源として熱回収をおこなう対象の浴槽3と、貯湯槽1内の湯水を加熱するために、浴槽3の湯と貯湯槽1内の水とを熱交換するように構成された第2の加熱手段である風呂熱交換器4を備えている。
【0028】
また、この風呂熱交換器4に、貯湯槽1内の湯水を循環させる貯湯槽水循環ポンプ5aと、風呂熱交換器4に浴槽3の湯水を循環させる浴槽水循環ポンプ5bとを備えている。
【0029】
さらに、貯湯槽1内の水温を検知する複数の貯湯温検知手段8a〜8eと、これら複数の貯湯温検知手段8a〜8eの出力に基づいて、第2の加熱手段である風呂熱交換器4に
て貯湯槽1内の湯水を加熱するために、貯湯槽水循環ポンプ5a、浴槽水循環ポンプ5bの運転動作を制御する加熱手段制御手段としての熱回収運転制御手段9を備えている。
【0030】
図2は熱回収運転制御手段9のブロック図を示している。
【0031】
熱回収運転制御手段9は、ヒートポンプユニット2による沸上運転を制御する沸上運転制御手段(図示せず)から貯湯後の給湯利用に必要な貯湯熱量を取得する所要貯湯熱量取得部10と、貯湯温検知手段8a〜8eにより貯湯温度分布を測定する貯湯温度分布測定部11と、これら所要貯湯熱量取得部10と貯湯温度分布測定部11で得られた結果に基づいて必要な沸上熱量を算出する必要沸上熱量算出部12と、貯湯温度分布測定部11による現在の温度分布と必要沸上熱量算出部12から沸上完了時の温度分布を推定する沸上完了時貯湯温度分布推定部13とを有している。
【0032】
さらに、熱回収運転制御手段9は、貯湯温度分布測定部11による現在の温度分布から沸上完了時貯湯温度分布推定部13での沸き上げ完了時の推定温度分布に至る間のヒートポンプユニット2への入力を推定する沸上所要入力推定部14と、この沸上所要入力推定部14による入力推定値の時間変化に基づいて貯湯槽水循環ポンプ5a、浴槽水循環ポンプ5bとを制御するポンプ制御部15とを有している。
【0033】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0034】
一般的な家庭での湯の利用における基本的な動作として、朝には貯湯槽1にその日使う分の湯が貯えられており、活動している時間帯に順次給湯に利用される。給湯利用中に貯湯量が不足する場合には必要に応じてヒートポンプユニット2を運転し、追加で貯湯運転をおこなうこともある。
【0035】
一日の給湯利用が終わる時点で貯湯槽1内の湯は大部分が給水と置換され、その後の深夜に再び次の利用のための貯湯運転がおこなわれる。
【0036】
このとき、入浴のために浴槽3に供給された湯は、給湯利用終了時には貯湯槽1内の水温に対して比較的高温で残されていることが多いので、ヒートポンプユニット2による深夜の貯湯運転の前、あるいは運転中に貯湯槽1に熱回収をおこなう。
【0037】
ここで、この浴槽3に残された湯の熱回収の動作を、図3〜図5を用いて説明する。
【0038】
熱回収運転は、貯湯槽水循環ポンプ5aと浴槽水循環ポンプ5bの稼動により、貯湯槽1下部の水と浴槽3内の湯とが風呂熱交換器4に送られ、この貯湯槽1下部の水を浴槽3の水で加熱して貯湯槽1上部に戻すことによっておこなう。
【0039】
熱回収運転により貯湯槽1内の温度分布は図3に示す16、17、18の順に変化する。この貯湯温度は当然ながら給湯に必要とされる貯湯温度よりも低い温度域であるため、ヒートポンプユニット2で再加熱して利用する。
【0040】
ヒートポンプユニット2の運転効率は、図4に示すように加熱前の水温が高いほど低下する。
【0041】
図3に示した貯湯槽1の温度分布からわかるように、熱回収運転後のヒートポンプユニット2による加熱量は、浴槽3からの回収熱量が増加するほど少なくなるが、それと同時にヒートポンプユニット2で加熱する前の水温は高くなって、再加熱時の運転効率は低下するので、できるだけ多くの熱回収をおこなうことが必ずしも省エネルギーにつながらな
い。
【0042】
すなわち、ヒートポンプユニット2への入力(消費熱量あるいは消費電力)は、所要貯湯熱量を得るための熱回収前の必要加熱量から熱回収運転によって得られた回収熱量を減じたものを、ヒートポンプユニット2による貯湯運転中の平均効率で除したものとなり、この値は図5に示すように、回収熱量に対して最小値を有する場合がある。
【0043】
したがって、浴槽3からの熱回収運転を、熱回収運転停止後に行われる再加熱運転において、ヒートポンプユニット2への入力が略最小となる時点で停止することが、より高い省エネルギー効果を得るために必要である。
【0044】
略最小値となる時点を見つける具体的な方法としては、所定の時間間隔で測定される貯湯槽1の温度分布に基づいて予想されるヒートポンプユニット2への入力値の刻々の変化の推移を求めて、その値の減少度合いが小さいか減少しなくなる、あるいは増加に転じることで判断する。
【0045】
先にも述べたが、図4に示すように、貯湯槽1内の湯水をヒートポンプユニット2にて加熱する場合、貯湯槽1からヒートポンプユニット2に水を搬送させる部位の温度(本実施の形態においては、貯湯槽1の下部の温度)が低くなるにつれて、ヒートポンプユニット2の運転効率は高くなるが、浴槽3からの熱回収運転時、浴槽3からの熱回収した湯水が貯湯槽1内に入湯してくることで、貯湯槽1からヒートポンプユニット2に水を搬送させる部位の温度が上昇し始める状態が存在する。
【0046】
従って、浴槽3からの熱回収運転時に、貯湯槽1のヒートポンプユニット2に水を搬送させる部位の温度を測定し、その温度の上昇度合いが増加に転じる付近で、浴槽3からの熱回収運転動作を停止させることで、熱回収運転後の加熱運転時におけるヒートポンプユニット2の運転効率の略最大を実現できるのである。
【0047】
図6は、熱回収運転制御手段9の動作のフローチャートである。熱回収運転中の動作は、まず所要貯湯熱量取得部10で取得された所要貯湯熱量と貯湯温検知手段8a〜8eにより測定された現在の貯湯槽1の温度分布およびヒートポンプユニット2の沸き上げ温度等の運転条件から貯湯運転完了時の貯湯槽1内の温度分布を予測する。
【0048】
そして、それを現在の温度分布と比較して、その時点からヒートポンプユニット2で加熱する場合の残りの加熱量Qrを求める(ステップ1)。
【0049】
次に、測定された現在の温度分布から、予測された貯湯運転完了時の温度分布に達するまでの間にヒートポンプユニット2で沸き上げる前の平均水温を推定する(ステップ2)。
【0050】
さらにステップ2で求めた平均水温と図4で示したヒートポンプユニット2の特性とから貯湯運転時の平均効率を求め、ステップ1で求めた残りの加熱量Qrをこの平均効率で除して、貯湯運転時の入力Qinを推定する(ステップ3)。
【0051】
Qinは前回の評価時刻において求めた値であるQin−fとの差を求め、それがあらかじめ定めた偏差qより小さい場合、すなわち推定入力の変化が次第に小さくなって最小値と判断されたら、ステップ5で貯湯槽水循環ポンプ5aと浴槽水循環ポンプ5bとを停止して熱回収運転を終了する。
【0052】
QinとQin−fとの差がq以上の場合は熱回収運転を継続し、次の評価時刻になれ
ば(ステップ7)、以上の動作を繰り返す。
【0053】
なお、補足として熱回収運転開始後一回目の動作時は、ステップ4での比較はおこなわずにステップ6を実行する。
【0054】
ここでは、最小値の判断を減少度合いが小さくなったことでおこなっているが、評価時刻間の入力の差qが0となる場合、またはqの符号が前回の評価時刻と逆になる場合、すなわち推定入力が増加に転じるときを最小値として、熱回収運転を停止してもよい。
【0055】
また、測定される貯湯槽1の温度の値の測定誤差等により、推定入力は最小値に至る間に増減のあることも多い。したがって、最近の数回の評価時刻における推定入力を記憶しておき、その移動平均値を用いて最小値に達したかどうかを判断することによって、最小値に達したかどうかの判定精度をより高められる場合もある。
【0056】
また、以上説明したような、その都度温度分布を評価して入力を求める方法は精度が高いものの計算が煩雑となり、熱回収運転制御手段9の負荷が大きい。
【0057】
その場合は、入力に対して最も影響を与える位置の貯湯温の変化をあらかじめ把握しておき、その位置に対応する貯湯温検知手段8a〜8eのうち、いずれかの温度が上昇し始めたときや所定の温度上昇がみられたとき、あるいは、たとえば貯湯温検知手段8dの検知温度が上昇し、かつ、貯湯温検知手段8eの検知温度は上昇しない間は熱回収運転を継続するというように、二つ以上の温度の組み合わせに応じて停止の判断をしてもよい。
【0058】
具体的には、比較的貯湯槽1の下部に近い温度が上昇してくることを検出して熱回収運転を停止させることによってもヒートポンプユニット2の効率を損なうことが少なくなって所望の効果を得ることができる。さらに、貯湯槽1のより上部の温度の変化を考慮すれば、熱回収運転による回収熱量の確保を同時に評価でき、精度は向上する。
【0059】
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、所要貯湯熱量を沸き上げるためのヒートポンプユニット2への入力が最小となる時点で熱回収運転を停止することによって、本来の目的であるシステム全体としての効率向上を実現し、省エネルギー性を高めることができる。
【0060】
構成としては、貯湯槽1下部の水を取り出して風呂熱交換器4で加熱し、貯湯槽1上部へ戻しているが、熱回収運転による貯湯槽1内の温度分布はこの取り出し位置や戻し位置の違いによって変わる。
【0061】
さらに、貯湯槽水循環ポンプ5aの能力制御によって熱回収の速度なども制御でき、これら構成や制御の違いに応じて運転効率も変化する。
【0062】
したがって、この実施の形態では、使われ方や貯湯槽1の容量などを考慮して適切な取り出し位置や戻り位置を設定したり、貯湯槽水循環ポンプ5aの能力制御をおこなえるといった最適化設計の自由度が高いために複数の異なる機種に適用しやすく、その結果、多くの使用者に提供することによって大きな省エネルギー効果を得ることができる。
【0063】
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態における給湯装置の構成を示す図である。
【0064】
第1の実施の形態と異なる点は、第2の加熱手段として、貯湯槽1内下方に設置した風呂熱交換器4に、浴槽水循環ポンプ5bで浴槽3内の湯水を搬送する構成としたことであ
る。
【0065】
動作と主な効果は第1の実施の形態で説明したものと同様である。異なる効果としては第1の実施の形態で説明したような設計の自由度は低いものの、配管構成が簡単かつポンプが一個で済むというように、簡易な構成で所望の効果を得られる。
【0066】
また、配管が少ないことや、風呂熱交換器4が露出していないことから、無駄な放熱が小さくなって、省エネルギーに有利な点を有する。
【0067】
(実施の形態3)
図8は、本発明の第3の実施の形態における給湯装置の構成を示す図である。
【0068】
図8において、第1の実施の形態と異なる点は、切換手段20を設け、風呂熱交換器4の一次側入口に、切換手段20を介して貯湯槽1に接続された熱交往き管21を接続するとともに、貯湯槽1の下部と切換手段20とを、ヒートポンプユニット2を介して、熱回収往き管22にて接続している。
【0069】
さらには、貯湯槽1の上部と切換手段20とを沸き上げ戻り管23にて接続し、貯湯槽水循環ポンプ5aを熱回収往き管22に配設している。
【0070】
また、熱交戻り管24を貯湯槽1の略中央部に接続している。25は風呂熱交換器4に浴槽3内の湯水が循環するように接続された浴槽循環路、26は沸き上げ運転制御手段である。
【0071】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。動作全体については第1の実施の形態で説明したものと同様であり、回路の違いによる湯水の経路が異なる部分について説明する。
【0072】
風呂熱交換器4により浴槽3の湯の有する熱を貯湯槽1の湯水に回収する熱回収運転を行うときには、図9に示すように、熱回収運転制御手段9が、まず浴槽3の湯を風呂熱交換器4の二次側流路に搬送するために浴槽水循環ポンプ5bを運転することによって、浴槽循環路15に浴槽3の湯水を循環させる。
【0073】
その後、貯湯槽1の下部から、熱回収往き管22、ヒートポンプユニット2、切換手段20、風呂熱交換器4の一次側流路、熱交戻り管24、貯湯槽1の略中央部へと順に貯湯槽1からの湯水を流すよう、貯湯槽水循環ポンプ5aを運転する。これにより、浴槽3の湯が有する熱が貯湯槽1の湯水に回収される。
【0074】
なお、浴槽水循環ポンプ5bによる湯の搬送量を貯湯槽水循環ポンプ5aによる湯水の搬送量より大きくすることで、浴槽水循環ポンプ5bによる必要流量が確保されて、浴槽3内の温度分布が均一化され、浴槽3から安定的に熱回収を行うことができるとともに、貯湯槽水循環ポンプ5aによる搬送流量が過大になって、貯湯槽1内の湯水が攪拌されることなく、温度成層を保持できるため、後述する貯湯槽1内の湯水の沸き上げ運転を効率的に行うことが可能となる。
【0075】
また、ヒートポンプユニット2により、貯湯槽1内の湯水を加熱する沸き上げ運転を行うときには、図10に示すように、沸き上げ運転制御手段26によって切換手段20の流路方向を上述した熱回収運転時とは異なる方向に切り換えて、貯湯槽水循環ポンプ5aを運転することで、貯湯槽1の下部から、熱回収往き管22、ヒートポンプユニット2、切換手段20、沸き上げ戻り管23、貯湯槽1の上部へと順に貯湯槽1からの湯水を流し、
ヒートポンプユニット2通過後の湯が、所定の沸き上げ温度になるように、貯湯槽水循環ポンプ5aによる湯水の搬送量を制御する。
【0076】
これにより、貯湯槽1下部の水がヒートポンプユニット2で加熱されて、貯湯槽1の上部に戻され、高温湯が貯湯槽1内で貯湯される。
【0077】
なお、熱回収運転と沸き上げ運転のいずれの場合も、風呂熱交換器4の一次側に貯湯槽1の下部の湯水を搬送するために、熱回収往き管22に設けた貯湯槽水循環ポンプ5aを用いたが、熱回収運転を行う場合には、熱交戻り管24にポンプを設けてもよい。
【0078】
この実施の形態では、切換手段20を用いることで熱回収運転と沸き上げ運転の流路のかなりの部分を共用できるため、使用する配管部材を少なくできることから、省資源化、低コスト化が実現できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明にかかる給湯装置は、複数の熱源による貯湯槽への蓄熱において、システムの効率を向上させることができるので、前記したような家庭用の給湯装置に適用できるほか、熱源と貯湯槽を有するシステムにおいて業務用などの規模の大きい用途にも適用し、優れた給湯温度制御性を提供できる。
【符号の説明】
【0080】
1 貯湯槽
2 第1の加熱手段(ヒートポンプユニット)
3 浴槽(熱源)
4 第2の加熱手段(風呂熱交換器)
5a 貯湯槽水循環ポンプ
5b 浴槽水循環ポンプ
8a〜8e 貯湯温検知手段
9 熱回収運転制御手段
20 切換手段
21 熱交往き管
22 熱回収往き管
23 沸き上げ戻り管
24 熱交戻り管
25 浴槽循環路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽と、前記貯湯槽の湯水を加熱する第1の加熱手段と、前記貯湯槽外に設けられ、前記第1の加熱手段による加熱温度よりも低温の熱源と、前記熱源からの熱により前記貯湯槽の湯水を加熱する第2の加熱手段と、前記貯湯槽内の湯水温度を検知する複数の貯湯温検知手段と、制御手段とを備え、前記複数の貯湯温検知手段のうち少なくともひとつの検知温度に基づいて、前記第2の加熱手段による加熱運転を停止させることを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記第2の加熱手段による加熱運転停止後の、前記第1の加熱手段の運転時における入力が略最小となるように、前記第2の加熱手段による加熱運転を停止させることを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記第1の加熱手段は、前記貯湯槽外に設けられたヒートポンプユニットで、前記貯湯槽下部から湯水を取り出して前記ヒートポンプユニットにて加熱した後、前記貯湯槽上部に戻す構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記第2の加熱手段は前記貯湯槽外に設けられ、前記貯湯槽から取り出した湯水を、前記熱源から搬送された熱と前記第2の加熱手段にて熱交換して、前記貯湯槽に戻す構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記第2の加熱手段は前記貯湯槽内に設けられ、前記熱源から搬送された熱を、前記貯湯槽内で前記第2の加熱手段にて熱交換する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項6】
前記熱源は浴槽の湯で、前記第2の加熱手段は前記貯湯槽内の湯水と前記浴槽内の湯水とが熱交換する熱交換器で、かつ、前記熱交換器に前記浴槽内の湯水が循環するように接続された浴槽循環路と、前記貯湯槽内の略上部の湯が前記熱交換器に流れるように切換手段を介して前記熱交換器に接続された熱交往き管と、前記熱交換器で前記浴槽の湯水と熱交換された湯水が再び前記貯湯槽内へ戻るように前記貯湯槽に接続された熱交戻り管と、前記貯湯槽の略下部の湯水が前記熱交換器に流れるように、前記第1の加熱手段、前記切換手段を順に介して前記熱交換器に接続された熱回収往き管と、前記第1の加熱手段にて加熱された湯水が前記貯湯槽内に戻るように、前記切換手段から前記貯湯槽に接続された沸き上げ戻り管とを備え、前記熱交換器により前記浴槽の湯の有する熱で前記貯湯槽の湯水を加熱する加熱運転を行うときには、前記熱回収往き管、前記加熱手段、前記切換手段、前記熱交換器、前記熱交戻り管の順に前記貯湯槽からの湯水が流れるように、また、前記第1の加熱手段により前記貯湯槽内の湯水を加熱する沸き上げ運転を行うときには、前記熱回収往き管、前記第1の加熱手段、前記切換手段、前記沸き上げ戻り管の順に前記貯湯槽からの湯が流れるように、前記制御手段が前記切換手段を切り換える構成としたことを特徴とする請求項3または4に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−32899(P2013−32899A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20569(P2012−20569)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】