説明

給紙装置および画像形成装置

【課題】シートの特性に関わらず高い生産性を実現することができる給紙装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】分離部107は、装置が対応する最小サイズのシート束1の積載位置のシート搬送方向における中央位置から上流端の間に配置されるよう構成した。また、分離部107が分離されたシートを搬送し、底板7に積載されたシート束1を上昇および下降させる底板上昇アーム8を備え、底板上昇アーム8によりシート束1を最上位のシート1aが分離部107に接触する上昇位置に上昇させ、分離部107を所定時間停止させて最上位のシート1aを吸着し、所定時間経過後にシート束1を上昇位置に上昇させたままで分離部107がシート1aの搬送を開始するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電吸着方式によりシート束から最上位の1枚のシートを分離して搬送する給紙装置およびこの給紙装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート束から最上位の1枚のシートを分離して搬送する給紙装置として、積載された原稿や記録紙等のシートを、摩擦力により分離給送するもの(例えば、特許文献1参照)、またはエア吸引により分離給送するもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
このうち、特許文献1に記載されたような、摩擦力によりシートを分離する摩擦分離方式の給紙装置では、給送ローラにゴム材料等を用いるため、給送ローラの摩擦力が磨耗等の経時変化によって変化すると給送性能が低下してしまっていた。また、バラツキにより摩擦係数が一定でないシートを分離給送する場合や、摩擦係数の異なるシートを同時に分離給送する場合には、給送ローラとシートとの間の摩擦力が変化するため、分離が不能であったり、複数枚が同時に給送される重送が発生してしまうという問題があった。さらに、給送ローラをシートに圧接する必要があるため、シートが汚れたり傷んでしまうという問題があった。
【0004】
一方、特許文献2に記載されたような、エア吸引によりシートを分離するエア吸引方式の給紙装置は、給送ローラとシートとの間の摩擦力に依存しない非摩擦分離方式であるため、上記のような問題を回避し得るが、エア吸引のためのブロワやダクトを必要とするために装置が大型化したり、エア吸引音が騒音となってしまい、オフィスで使用する装置としては適さないという問題があった。
【0005】
そこで、非摩擦分離方式の一種で、誘電体ベルトに電界を形成し、この誘電体ベルトをシートに接触させて吸着し、シートを分離する静電吸着分離方式が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0006】
具体的には、特許文献3、4に記載の給紙装置は、まず、複数のローラに巻き掛けられた無端状の誘電体ベルトに交番電荷を付与し、この誘電体ベルトをシートに対して揺動または平行移動させてシート束に近接または接触させ、次いで、所定時間待機して最上位のシートを吸着し、次いで、この誘電体ベルトをシート束から離間する方向に移動させることで最上位のシートを分離してこのシートを搬送するようになっている。
【0007】
また、他の静電吸着分離方式の給紙装置としては、給送回転体の配置位置よりもシート給送方向の上流側の位置に、最上位のシートを静電吸着させる静電吸着部材を備えることにより、確実にシートを1枚ずつ給送でき、単純な構成により小型化および低コスト化を実現できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3〜5に記載されたような、静電吸着分離方式を採用した給紙装置は、摩擦分離方式における給送ローラの磨耗やシートの痛みが無い点、およびエア吸引方式における装置の大型化や騒音の発生等の問題が無い点で優れているが、電気特性上吸着しにくい種類のシートや、厚いシートを分離給送する場合には、シートを静電吸着するために所定時間待機する工程において、「所定時間」を長くする必要があり、生産性、すなわち時間当たりの給紙毎数が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、シートの特性に関わらず高い生産性を実現することのできる給紙装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る給紙装置は、シート束を積載するシート積載手段と、前記シート束の最上位のシートを静電気力で吸着して前記シート束から分離および搬送する吸着分離搬送手段と、を備えた給紙装置であって、前記吸着分離搬送手段は、装置が対応する最小サイズのシート束の積載位置のシート搬送方向における中央位置から上流端の間に配置されたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、吸着分離搬送手段の位置がシート束のシート搬送方向上流側にあるほど吸着分離搬送手段の下を最上位のシートが通り過ぎるのが早いので、吸着分離搬送手段が2枚目のシートに早く接触することができ、2枚目のシートの吸着時間をより長く確保することができる。これにより、装置が対応する最小サイズのシート束であっても、吸着時間をより長く確保することができる。したがって、静電吸着分離方式において、シートの特性に関わらず高い生産性を実現することができる。
【0012】
また、本発明に係る給紙装置は、前記シート積載手段に積載されたシート束を上昇および下降させる昇降手段を備え、前記昇降手段により前記シート束を前記最上位のシートが前記吸着分離搬送手段に接触する上昇位置に上昇させ、前記吸着分離搬送手段を所定時間停止させて前記最上位のシートを吸着し、前記所定時間経過後に前記シート束を前記上昇位置に上昇させたままで前記吸着分離搬送手段により前記シートの搬送を開始することを特徴とする。
【0013】
この構成により、静電吸着分離方式においては、マクスウェルの応力の作用に基づき、吸着分離搬送手段が発生する電界は最初はシート束の複数枚のシートに対して作用し、これら複数枚のシートに対して吸着力が発生するが、所定時間後は最上位のシート内で自由電子が吸着分離搬送手段の側に集まって吸着分離搬送手段の電界と相殺作用を起こし、吸着分離搬送手段の吸着力が最上位のシートに対してのみ作用することとなる。これにより、昇降手段によりシート束を上昇および下降させたり吸着分離搬送手段を上下動させて吸着分離搬送手段をシートから離隔させることなく、吸着分離搬送手段によりシートの搬送を開始することができる。
【0014】
また、本発明に係る給紙装置は、前記吸着分離搬送手段が、前記シート搬送方向と直交する方向の中央に配置されることを特徴とする。
【0015】
この構成により、シートを吸着したときに、シートの重量の片寄りにより吸着分離搬送手段からシートが剥がれ落ちることを防止することができる。また、吸着後にシートを搬送するときに、シートの片寄りによるシートのスキュー(斜行)や、スキューに起因するシワの発生を防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る給紙装置は、前記吸着分離搬送手段が、複数のローラと、前記複数のローラに張架された誘電体からなる無端状のベルトと、から構成され、前記複数のローラのうち前記シート搬送方向の最も上流のローラが駆動されることを特徴とする。
【0017】
この構成により、最も上流のローラが駆動されることでシート搬送方向にベルトを回転させたときにベルトの下面側にたるみが発生するので、シートの表面が波打ち等により凹凸形状となっている場合であっても、ベルトとシートとの接触面積の確保が可能となり、ベルトへのシートの吸着力を確保することができる。
【0018】
また、本発明に係る給紙装置は、ローラ対を有し、前記吸着分離搬送手段により分離および搬送されたシートを前記ローラ対でニップして更に搬送するシート搬送手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る給紙装置は、前記吸着分離搬送手段と前記シート搬送手段は、前記吸着分離搬送手段と前記シート束で形成されるニップ部の接線と前記シート搬送手段のローラ対のニップ部の接線が略同一線上になるように配置されることを特徴とする。
【0020】
この構成により、従来では、吸着分離搬送手段が、装置が対応する最小サイズのシート束の積載位置のシート搬送方向における中央位置から上流端の間に配置されていると、シートのシート搬送方向下流端(シート進行方向先端)において搬送挙動が安定しなかったり、ガイド部材を設けた場合に、ガイド部材によって曲げられて紙詰まり等の不具合が発生する恐れがあるが、本発明では、吸着分離搬送手段とシート搬送手段は、吸着分離搬送手段とシート束で形成されるニップ部の接線とシート搬送手段のローラ対のニップ部の接線が略同一線上になるように配置されるので、シート搬送手段のニップ部にシートが入りやすくなり、シートが搬送路で曲げられることがないため、シートのシート搬送方向下流端における搬送挙動を安定化し、ガイド部材によって曲げられて紙詰まり等の不具合が起きることを防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る給紙装置は、前記シート積載手段に積載されたシート束のシート搬送方向上流端から前記吸着分離搬送手段のシート搬送方向下流端のニップ部までの幅X1と、前記シート積載手段に積載されたシート束のシート搬送方向下流端から前記シート搬送手段のローラ対のニップ部までの距離X2が、X1>X2を満たすことを特徴とする。
【0022】
この構成により、シート搬送手段のニップ部にシートが入りやすくなり、且つ、幅X1を小さくすることができるため、装置を小型化することができる。
【0023】
また、本発明に係る給紙装置は、前記吸着分離搬送手段と前記シート搬送手段の間であって、前記吸着分離搬送手段と前記シート束で形成されるニップ部の接線、および前記シート搬送手段のローラ対のニップ部の接線と略平行に配置され、前記吸着分離搬送手段から前記シート搬送手段に前記最上位のシートを案内する平面状のガイド部材を設けたことを特徴とする。
【0024】
この構成により、吸湿や乾燥により変形を生じたシートが搬送されても、シートのシート搬送方向下流端を滑らかにシート搬送手段のニップ部に導入することができる。また、ガイド部材が、吸着分離搬送手段とシート束で形成されるニップ部の接線、およびシート搬送手段のローラ対のニップ部の接線と略平行に配置された平面状の部材であるので、シートのシート搬送方向下流端がガイド部材により曲げられることがない。
【0025】
また、本発明に係る給紙装置は、前記吸着分離搬送手段の搬送力より、前記シート搬送手段の搬送力を大きくしたことを特徴とする。
【0026】
この構成により、従来では、吸着分離搬送手段とシート搬送手段との間の搬送路でシートがスリップすると、吸着分離搬送手段とシート搬送手段の間にシートの撓みが形成されてしまい、その状態でシートがシート搬送手段のニップ部に進入するとシートにシワが発生する恐れがあったが、本発明では、吸着分離搬送手段の搬送力より、シート搬送手段の搬送力を大きくすることにより、シートに撓みが形成されることを抑制できるので、シワが発生することを防止することができる。また、シート搬送手段の搬送力を大きくすることにより、吸着分離搬送手段とシート搬送手段との間の搬送路の曲率を大きくすることが可能となり、設計自由度を高めることができる。
【0027】
また、本発明に係る給紙装置は、上記の給紙装置と、該給紙装置から給紙されるシートに対して画像を形成する画像形成部と、該シートを前記画像形成部に搬送する搬送手段と、を備えることを特徴とする。
【0028】
この構成により、画像形成装置において、シートの特性に関わらず高い生産性を実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、静電吸着分離方式において、シートの特性に関わらず高い生産性を実現することのできる給紙装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る給紙装置を備えた画像形成装置の概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る給紙装置の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る給紙装置の斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る給紙装置の動作を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は、図4(a)〜(c)に続く動作を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る給紙装置の断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施の形態に係る給紙装置の動作を示す断面図である。
【図8】(a)、(b)は、図7(a)〜(c)に続く動作を示す断面図である。
【図9】(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る給紙装置の上面図であり、(b)は、側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
(第1の実施の形態)
まず、構成について説明する。
【0033】
図1に示すように、画像形成装置101は、電子写真方式のデジタル複写機として構成されており、原稿を読取る原稿読取部102と、給紙装置104から給紙されるシート(記録紙)1aに対し原稿読取部102が読取った画像を形成する画像形成部103と、画像形成部103にシート1aを給紙する給紙装置104とを備えている。なお、本実施の形態の画像形成装置101では、画像形成部103と給紙装置104とは分割可能となっている。
【0034】
給紙装置104により給紙されたシート1aは、搬送手段としての搬送ローラ対108により画像形成部103に移送され、画像形成部103で形成されたトナー画像が転写装置109により転写され、このトナー画像が定着器110により熱転写され、排紙ローラ対111により排紙トレイ112に排出されるようになっている。
【0035】
なお、画像形成装置101は、電子写真方式に限らず、例えばインクジェット方式等、他の方式を採用してもよい。また、画像形成装置101は、複写機に限らず、ファクシミリ装置、印刷機または複合機として構成してもよい。
【0036】
図2、図3に示すように、給紙装置104は、シート束1を収納する給紙トレイ12と、この給紙トレイ12の底部に配置されシート束1が載置される底板7と、この底板7を上昇および下降させる底板上昇アーム8と、シート束1の上面に当接し、シート束1から最上位の1枚のシート1aを静電気力で吸着して分離し、分離されたシート1aを搬送する分離部107とを備えている。
【0037】
分離部107は、下流ローラ5と、上流ローラ6と、これらの下流ローラ5と上流ローラ6とに巻掛けられ、無端状の誘電体からなるベルト2とを備えている。なお、分離部107によるシート1aの吸着、分離および搬送は主としてベルト2により行われるものであり、分離部107の実体は実質的にはベルト2であるため、以下では、分離部107に代わってベルト2についての詳細を説明する。
【0038】
上流ローラ6は、図示しない駆動源から駆動力が連結される駆動ローラとして構成されており、下流ローラ5は、上流ローラ6の回転によりベルト2を介して従動回転する従動ローラとして構成されている。上流ローラ6には、図示しない駆動源からの駆動力が電磁クラッチ16を介して伝達されるようになっている。上流ローラ6は、給紙信号に応じて電磁クラッチ16が作動することにより間欠的に駆動されるようになっている。
【0039】
上流ローラ6の表面は、抵抗値が10Ω・cm程度の導電性ゴム層から構成され、下流ローラ5の表面は金属から構成されている。上流ローラ6および下流ローラ5は電気的に接地されている。下流ローラ5は、ベルト2からシート1aを曲率により分離するのに適した小径となっている。すなわち、下流ローラ5の径を小さく設定して曲率を大きくすることにより、ベルト2に吸着されて分離および搬送されたシート1aが、下流ローラ5から離れてシート搬送方向下流側のガイド板対10の間に入ることができるようになっている。
【0040】
従動ローラである下流ローラ5と駆動ローラである上流ローラ6は、これら下流ローラ5と上流ローラ6により作られるベルト2の下側接線がシート1aの上面と水平となるよう配置されている。
【0041】
ベルト2は、10Ω・cm以上の抵抗を有する誘電体により構成されている。ベルト2を構成する誘電体としては、例えば厚さ100μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレート等のフィルムを用いることができる。
【0042】
ベルト2は、上流ローラ6が空回りしない程度に下側に弛むよう下流ローラ5と上流ローラ6とに張架されており、下側に弛んだ状態でシート1aに接触することで、シート1aに波打ちが発生していても接触面積が確保されるようになっている。
【0043】
なお、本実施の形態では、ベルト2は、下流ローラ5と上流ローラ6の2つのローラに張架されるようになっているが、更に多くのローラにベルト2が張架され、複数のローラのうち最もシート搬送方向上流側のローラを駆動ローラとするように構成してもよい。
【0044】
ベルト2は、装置が対応する最小サイズのシート束1の積載位置のシート搬送方向における中央位置から上流端の間に配置されている。例えば、対応するシート1aのサイズがA5〜A3の装置であるとき、ベルト2は、最小サイズであるA5サイズのシート1aのシート搬送方向長さ(210mm)の中央から上流端(先端から105mm〜210mmの位置)に、ベルト2のシート搬送方向下流端(下流ローラ5のシート1aへの接地位置)が位置するように配置される。
【0045】
また、ベルト2は、シート搬送方向と直交する方向の中央に配置される。すなわち、シート搬送方向と直交した幅方向(図1の奥行方向)に関しては、中央基準にて設置されるシート束1の中央位置とベルト2の中央位置が一致するよう、ベルト2がシート束1に対して配置されている。なお、ベルト2の幅は、対応する最大サイズのシート1aの幅から左右20mmずつ短い長さとしている。
【0046】
ベルト2のシート搬送方向下流側には、シート1aの搬送をガイドするガイド板対10と、ガイド板対10に入ったシート1aを搬送する給紙ローラ対9とが設けられている。
【0047】
ベルト2の両側端縁の内側にはリブ17が設けられており、ベルト2のリブ17が、下流ローラ5および上流ローラ6の両側端面と係合することで、ベルト2の幅方向へのズレや下流ローラ5と上流ローラ6からの脱落が防止されるようになっている。
【0048】
分離部107のシート搬送方向上流側には、底板上昇アーム8によりシート束1が上昇してシート束1の最上位のシート1aがベルト2に接触する給紙位置にあることを検知するフィラーセンサ18が設けられている。フィラーセンサ18は、シート束1の幅方向の端部に配置されており、ベルト2がシート搬送方向上流側に配置されてもベルト2と接触しないようになっている。
【0049】
ベルト2が上流ローラ6に巻回された位置には、このベルト2の外周面に接触して従動回転する帯電用のローラ電極3が設けられており、ローラ電極3は、交流の電源4に接続されている。
【0050】
なお、ローラ電極3のベルト2の回転方向上流側で、かつ、シート束1とベルト2の分離位置より下流側に、図示しない除電電源(交番電源)に接続した除電用のローラ電極をベルト2に接触して従動回転するように設けてもよい。その場合、帯電用のローラ電極3および除電用のローラ電極は、給紙ローラ対9にシート1aのシート搬送方向下流端が当接する位置でベルト2上の吸着力が除去されているように制御される。除電用のローラ電極は必ずしも必要ではなく省略することができるため、本実施の形態では、除電用のローラ電極を備えず帯電用のローラ電極3のみを備えるものとして説明している。
【0051】
次に、給紙装置104の動作を説明する。
【0052】
まず、図4(a)に示すように、図示しない制御部からの給紙指令信号を受け取ると、電磁クラッチ16が入り、上流ローラ6が回転駆動されて周動を開始したベルト2には、ローラ電極3を介して電源4より交番電圧が印加される。これにより、ベルト2の表面には交流電源周波数とベルト2の周動速度に応じたピッチ(ピッチは4mm〜16mm程度とするのが良い)で交番する電荷パターンが形成される。
【0053】
ベルト2への帯電完了後、下降していた底板7が底板上昇アーム8により上昇を開始し、シート束1の最上位のシート1aがベルト2に接触した上昇位置にあることをフィラーセンサ18が検知すると、底板7の上昇が停止する。なお、底板7を上昇させる際には、底板7の上昇前のシート1aの上面位置をフィラーセンサ18で感知しておいてベルト2の下面との高さの差を算出することで、底板7の上昇するべき量を決定するようにしてもよい。
【0054】
次いで、図4(b)に示すように、ベルト2とシート束1の最上位のシート1aが接触した状態において、シート種毎に予め設定された所定時間だけ待機することにより、誘電体である最上位のシート1aには、ベルト2の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、マクスウェル(Maxwell)の応力が働き、最上位のシート1aのみがベルト2に吸着して保持される。
【0055】
なお、ベルト2と最上位のシート1aが接触した直後は、マクスウェルの応力の作用に基づき、ベルト2の不均一帯電により発生する電界がシート束1の複数枚のシートに対して作用し、これら複数枚のシートに対して吸着力が発生するが、所定時間の経過後は、最上位のシート1a内で自由電子がベルト2の側に集まってベルト2の電界と相殺作用を起こし、ベルト2の吸着力が最上位のシート1aに対してのみ作用することとなる。
【0056】
次いで、図4(c)に示すように、シート束1が上昇位置に上昇した状態のまま、ベルト2が回転してシート1aの搬送を開始する。シート1aは、下流ローラ5の箇所でこの下流ローラ5の曲率によりベルト2から分離する。ベルト2の回転によるシート1aの搬送は、ベルト2とシート1aとの間の摩擦力を利用するのではなく、静電吸着力を利用している。このため、ベルト2とシート1aとの接触圧は充分小さくすることができるので、最上位のシート1aと2枚目のシート1bとの間の摩擦力により最上位のシート1aと2枚目のシート1bが重なったまま同時に搬送されること(重送)が防止される。給紙ローラ対9とベルト2の線速は同一にされており、給紙ローラ対9がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は、ベルト2も間欠駆動されるように制御される。
【0057】
次いで、図5(a)に示すように、シート1aのシート搬送方向上流端が上流ローラ6の対向位置に達する前に底板7を所定時間下降させてシート束1からベルト2を離間させる。これにより、最上位のシート1aを搬送している間に、シート束1の2枚目のシート1bがベルト2に吸着されないようになっている。また、ベルト2とシート束1が離間した状態で次のシート1bの吸着に備えてベルト2を帯電させる。
【0058】
次いで、図5(b)に示すように、シート1aのシート搬送方向上流端が下流ローラ5の対向位置を通過した後に底板7を上昇させ、図4(a)と同様に、シート束1(シート1bが最上位)をベルト2に接触させる。ベルト2により分離および搬送されたシート1aは、ガイド板対10の間を通って、給紙ローラ対9により画像形成部103へ搬送される。
【0059】
なお、電源4は交流に限らず、直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、その波形は、矩形波であっても正弦波であってもよい。本実施の形態では、ベルト2の表面に対して4KVの振幅を持った矩形波を印加している。
【0060】
なお、除電用のローラ電極を備える場合は、除電用のローラ電極によりベルト2に交番電圧を印加することにより、帯電したベルト2の電荷を除電することができる。
【0061】
具体的には、ベルト2の外周面に除電用のローラ電極を接触させ直流電源により直流電圧を印加した場合、ベルト2は印加される直流電圧がある電圧以下の電圧では帯電されず、この電圧を帯電開始電圧と言うが、帯電開始電圧の値Vはベルト2の厚さや体積抵抗等により変化する。
【0062】
そこで、帯電開始電圧の値Vをピーク値として持つような交番する電圧を除電用のローラ電極に印加すると、帯電しているベルト2の表面電位がほぼ0Vに除電されることが確認されている。これは、印加電圧のピーク値を帯電開始電圧の値Vとすることにより、この印加電圧では誘電体である被帯電体を帯電させる能力はないが、被帯電体に帯電している空間電荷には移動させる力が働き、除電できることを意味する。また、交互に交番する印加電圧を用いることから、誘電体が(+)、(−)のどちらに帯電していても除電効果がある。しかし、帯電開始電圧以下の印加電圧では、除電不足が発生し、帯電開始電圧以上では、印加周波数(120Hz、v/f=1mm周期)の帯電が生じ、0Vに除電することができないので、除電用のローラ電極に印加する交番電圧は、ピーク値がベルト2に対する帯電開始電圧になるように制御すればよい。
【0063】
以上のように、本実施の形態に係る給紙装置104は、シート束1を積載する底板7と、シート束1の最上位のシート1aを静電気力で吸着してシート束1から分離および搬送する分離部107と、を備えた給紙装置104であって、分離部107は、装置が対応する最小サイズのシート束1の積載位置のシート搬送方向における中央位置から上流端の間に配置されるよう構成されている。
【0064】
このため、分離部107の位置がシート束1のシート搬送方向上流側にあるほど分離部107下を最上位のシート1aが通り過ぎるのが早いので、分離部107が2枚目のシート1bに速く接触することができ、2枚目のシート1bの吸着時間をより長く確保することができる。これにより、装置が対応する最小サイズのシート束1であっても、吸着時間をより長く確保することができる。したがって、静電吸着分離方式を採用した給紙装置104において、シートの特性に関わらず高い生産性を実現することができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る給紙装置104は、分離部107により分離および搬送されたシートを更に搬送する給紙ローラ対9と、底板7に積載されたシート束1を上昇および下降させる底板上昇アーム8を備え、底板上昇アーム8によりシート束1を最上位のシート1aが分離部107に接触する上昇位置に上昇させ、分離部107を所定時間停止させて最上位のシート1aを吸着し、所定時間経過後にシート束1を上昇位置に上昇させたままで分離部107が給紙ローラ対9に向けてシート1aの搬送を開始するよう構成されている。
【0066】
このため、静電吸着分離方式においては、マクスウェルの応力の作用に基づき、分離部107のベルト2の不均一帯電より発生する電界は最初はシート束1の複数枚のシートに対して作用し、これら複数枚のシートに対して吸着力が発生するが、所定時間後は最上位のシート1a内で自由電子がベルト2の側に集まってベルト2の電界と相殺作用を起こし、ベルト2の吸着力が最上位のシート1aに対してのみ作用することとなる。これにより、底板7を昇降させたり分離部107を上下動させてベルト2をシート1aから離隔させることなく、分離部107を駆動してシート1aの搬送を開始することができる。
【0067】
また、本実施の形態に係る給紙装置104は、分離部107が、シート搬送方向と直交する方向の中央に配置されるよう構成されている。
【0068】
このため、シート1aを吸着したときに、シート1aの重量の片寄りにより分離部107からシート1aが剥がれ落ちることを防止することができる。また、吸着後にシート1aを搬送するときに、シート1aの片寄りによるシート1aのスキュー(斜行)や、スキューに起因するシワの発生を防止することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係る給紙装置104は、分離部107が、上流ローラ6および下流ローラ5と、上流ローラ6および下流ローラ5に張架された誘電体からなる無端状のベルト2と、から構成され、上流ローラ6および下流ローラ5のうちシート搬送方向の最も上流のローラである上流ローラ6が駆動されるよう構成されている。
【0070】
このため、上流ローラ6が駆動されることでシート搬送方向にベルト2を回転させたときにベルト2の下面側にたるみが発生するので、シート1aの表面が波打ち等により凹凸形状となっている場合であっても、ベルト2とシート1aとの接触面積の確保が可能となり、ベルト2へのシート1aの吸着力を確保することができる。
【0071】
また、本実施の形態に係る画像形成装置101は、上記の給紙装置104を備えて構成されている。
【0072】
このため、画像形成装置101において、シート1aの特性に関わらず高い生産性を実現することができる。
【0073】
(第2の実施の形態)
次に、図6〜図9を参照して本発明の第2の実施の形態に係る給紙装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
図6に示すように、本実施の形態の給紙装置104においては、ベルト2は、装置が対応する最小サイズのシート束1の待機位置(底板7に積載されたシート束1の位置)のシート搬送方向における中央位置から上流端の間に配置されている。例えば、対応するシート1aのサイズがA5〜A3の装置であるとき、ベルト2は、最小サイズであるA5サイズのシート1aのシート搬送方向長さ(210mm)の中央から上流端(先端から105mm〜210mmの位置)に、ベルト2のシート搬送方向下流端(下流ローラ5のシート1aへの接地位置)が位置するように配置される。なお、シート搬送方向上流端とは、図6における左方向の端部を示す。
【0075】
ベルト2のシート搬送方向下流側には、シート1aの搬送をガイドするガイド板30、31と、ガイド板30、31の間に入ったシート1aを搬送する給紙ローラ対9とが設けられている。
【0076】
また、図6に示すように、給紙装置104においては、ベルト2の下面とシート束1(具体的には、シート1a)とで形成されるニップ部の接線19と、ベルト2のシート搬送方向下流側の給紙ローラ対9のニップ部の接線20が略同一線上(同一平面上)に配置されている。
【0077】
このため、ベルト2の回転により搬送されたシート1aが給紙ローラ対9のニップ部に入りやすくなり、また、シート1aが曲げられることがない。
【0078】
なお、ニップ部を形成する部材であれば、2つのローラから成る給紙ローラ対9に代わって、ベルト対ローラを採用したり、ベルトやローラに対してパッドが当接している構成を採用してもよい。
【0079】
ガイド板31は、互いに略同一線上に配置されたニップ部の接線19、20と略平行に配置されている。具体的には、ガイド板31は、シート束1の上方において、ニップ部の接線19、20と略平行に配置されている。シート束1とガイド板31との間隔は、シート1aを給紙ローラ対9に確実に案内できる程度に狭く、且つ、接触によりシート1aの搬送を妨げることのない程度に広く設定されている。また、ガイド板31のシート搬送方向下流端は、シート1aを給紙ローラ対9のニップ部の中心に導くよう給紙ローラ対9のニップ部の中心に向って傾斜している。なお、図6において、ニップ部の接線19、20には、シート1aの搬送方向を示すために矢印を付している。
【0080】
このため、吸湿や乾燥により変形を生じたシート1aが搬送された場合であっても、シート1aのシート搬送方向下流端を滑らかに給紙ローラ対9のニップに導入することができる。
【0081】
また、ガイド板31が、ニップ部の接線19、20と略平行に配置されているので、シート1aのシート搬送方向下流端がガイド板31により曲げられることがない。
【0082】
一方、ガイド板30は、シート束1と給紙ローラ対9の間であって、シート1aより下方となる位置に配置されている。ガイド板30は、シート1aを給紙ローラ対9のニップ部の中心に導くよう給紙ローラ対9のニップ部の中心に向って傾斜している。
【0083】
なお、ガイド板30、31のシート1aに対する摩擦係数は小さいことが望ましいため、ガイド板30、31は、例えばABS樹脂の基材の表面に摩擦係数の小さいフッ素樹脂等をコーティングしたものから構成すると好適である。
【0084】
また、図9(a)、図9(b)に示すように、給紙装置104においては、待機時のシート束1のシート搬送方向上流端からベルト2のシート搬送方向下流側のニップ部までの幅X1と、待機時のシート束1のシート搬送方向下流端から給紙ローラ対9のニップ部までの距離X2が、X1>X2を満たしている。
【0085】
すなわち、底板7に積載されたシート束1のシート搬送方向上流端からベルト2のシート搬送方向下流端のニップ部までの幅X1と、底板7に積載されたシート束1のシート搬送方向下流端から給紙ローラ対9のニップ部までの距離X2が、X1>X2を満たしている。
【0086】
このため、ベルト2により搬送されたシート1aが給紙ローラ対9のニップ部に入りやすくなり、且つ、幅X1を小さくすることができるため、装置を小型化することができる。
【0087】
また、給紙装置104においては、ベルト2の幅Y1と給紙ローラ対9の幅Y2の関係をY1<Y2とし、且つ、表面摩擦の高い給紙ローラ対9を用いる構成とすることにより、ベルト2の搬送力より、給紙ローラ対9の搬送力が大きくなるようにしている。
【0088】
このため、従来では、ベルト2と給紙ローラ対9との間の搬送路でシート1aがスリップすると、ベルト2と給紙ローラ対9の間にシート1aの撓みが形成されてしまい、その状態でシート1aが給紙ローラ対9のニップ部に進入するとシート1aにシワが発生する恐れがあったが、上記の構成とすることにより、シート1aに撓みが形成されることを抑制できるので、シワが発生することを防止することができる。また、給紙ローラ対9の搬送力を大きくすることにより、ベルト2と給紙ローラ対9との間の搬送路の曲率を大きくすることが可能となり、設計自由度を高めることができる。なお、給紙ローラ対9を、幅方向(図9(a)の上下方向)に複数に分割し、分割された各ローラ対が独立して回転できるように構成してもよい。
【0089】
次に、給紙装置104の動作を説明する。
【0090】
まず、図7(a)に示すように、図示しない制御部からの給紙指令信号を受け取ると、電磁クラッチ16が入り、上流ローラ6が回転駆動されて周動を開始したベルト2には、ローラ電極3を介して電源4より交番電圧が印加される。これにより、ベルト2の表面には交流電源周波数とベルト2の周動速度に応じたピッチ(ピッチは4mm〜16mm程度とするのが良い)で交番する電荷パターンが形成される。
【0091】
ベルト2への帯電完了後、下降していた底板7が底板上昇アーム8により上昇を開始し、シート束1の最上位のシート1aがベルト2に接触した上昇位置にあることをフィラーセンサ18(図6参照)が検知すると、底板7の上昇が停止する。なお、底板7を上昇させる際には、底板7の上昇前のシート1aの上面位置をフィラーセンサ18で感知しておいてベルト2の下面との高さの差を算出することで、底板7の上昇するべき量を決定するようにしてもよい。
【0092】
次いで、図7(b)に示すように、ベルト2とシート束1の最上位のシート1aが接触した状態において、シート種毎に予め設定された所定時間だけ待機することにより、誘電体である最上位のシート1aには、ベルト2の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、マクスウェル(Maxwell)の応力が働き、最上位のシート1aのみがベルト2に吸着して保持される。
【0093】
なお、ベルト2と最上位のシート1aが接触した直後は、マクスウェルの応力の作用に基づき、ベルト2の不均一帯電により発生する電界がシート束1の複数枚のシートに対して作用し、これら複数枚のシートに対して吸着力が発生するが、所定時間の経過後は、最上位のシート1a内で自由電子がベルト2の側に集まってベルト2の電界と相殺作用を起こし、ベルト2の吸着力が最上位のシート1aに対してのみ作用することとなる。
【0094】
次いで、図7(c)に示すように、シート束1が上昇位置に上昇した状態のまま、ベルト2が回転してシート1aの搬送を開始する。シート1aは、下流ローラ5の箇所でこの下流ローラ5の曲率によりベルト2から分離する。ベルト2の回転によるシート1aの搬送は、ベルト2とシート1aとの間の摩擦力を利用するのではなく、静電吸着力を利用している。このため、ベルト2とシート1aとの接触圧は充分小さくすることができるので、最上位のシート1aと2枚目のシート1bとの間の摩擦力により最上位のシート1aと2枚目のシート1bが重なったまま同時に搬送されること(重送)が防止される。給紙ローラ対9とベルト2の線速は同一にされており、給紙ローラ対9がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は、ベルト2も間欠駆動されるように制御される。
【0095】
次いで、図8(a)に示すように、シート1aのシート搬送方向上流端が上流ローラ6の対向位置に達する前に底板7を所定時間下降させてシート束1からベルト2を離間させる。これにより、最上位のシート1aを搬送している間に、シート束1の2枚目のシート1bがベルト2に吸着されないようになっている。また、ベルト2とシート束1が離間した状態で次のシート1bの吸着に備えてベルト2を帯電させる。
【0096】
次いで、図8(b)に示すように、シート1aのシート搬送方向上流端が下流ローラ5の対向位置を通過した後に底板7を上昇させ、図7(a)と同様に、シート束1(シート1bが最上位)をベルト2に接触させる。ベルト2により分離および搬送されたシート1aは、ガイド板30、31により形成される搬送路を通って、給紙ローラ対9により画像形成部103へ搬送される。
【0097】
以上のように、本実施の形態に係る給紙装置104は、ローラ対を有し、分離部107により分離および搬送されたシートをこのローラ対でニップして更に搬送する給紙ローラ対9を備えたことを特徴とする。
【0098】
また、本実施の形態に係る給紙装置104は、分離部107と給紙ローラ対9は、分離部107とシート束1で形成されるニップ部の接線19と給紙ローラ対9のニップ部の接線20が略同一線上になるように配置されている。
【0099】
このため、分離部107が、上記のように装置が対応する最小サイズのシート束1の積載位置のシート搬送方向における中央位置から上流端の間に配置されていると、シート1aのシート搬送方向下流端(シート進行方向先端)において搬送挙動が安定しなかったり、ガイド板30、31によって曲げられて紙詰まり等の不具合が発生する恐れがあるが、上記のように、分離部107と給紙ローラ対9は、分離部107とシート束1で形成されるニップ部の接線19と給紙ローラ対9のニップ部の接線20が略同一線上になるように配置されているので、給紙ローラ対9のニップ部にシート1aが入りやすくなり、シート1aが搬送路で曲げられることがないため、シート1aのシート搬送方向下流端における搬送挙動を安定化し、ガイド板30、31によって曲げられて紙詰まり等の不具合が起きることを防止することができる。
【0100】
また、本実施の形態に係る給紙装置104は、底板7に積載されたシート束1のシート搬送方向上流端から分離部107のシート搬送方向下流端のニップ部までの幅X1と、底板7に積載されたシート束1のシート搬送方向下流端から給紙ローラ対9のニップ部までの距離X2が、X1>X2を満たすことを特徴とする。
【0101】
このため、給紙ローラ対9のニップ部にシート1aが入りやすくなり、且つ、幅X1を小さくすることができるため、装置を小型化することができる。
【0102】
また、本実施の形態に係る給紙装置104は、分離部107と給紙ローラ対9の間であって、分離部107とシート束1で形成されるニップ部の接線19、および給紙ローラ対9のニップ部の接線20と略平行に配置され、分離部107から給紙ローラ対9に最上位のシート1aを案内する平面状のガイド板31を設けたことを特徴とする。
【0103】
このため、吸湿や乾燥により変形を生じたシート1aが搬送されても、シート1aのシート搬送方向下流端を滑らかに給紙ローラ対9のニップ部に導入することができる。また、ガイド板31が、分離部107とシート束1で形成されるニップ部の接線19、および給紙ローラ対9のニップ部の接線20と略平行に配置された平面状の部材であるので、シート1aのシート搬送方向下流端がガイド板31により曲げられることがない。
【0104】
また、本実施の形態に係る給紙装置104は、分離部107の搬送力より、給紙ローラ対9の搬送力を大きくしたことを特徴とする。
【0105】
このため、従来では、分離部107と給紙ローラ対9との間の搬送路でシート1aがスリップすると、分離部107と給紙ローラ対9の間にシート1aの撓みが形成されてしまい、その状態でシート1aが給紙ローラ対9のニップ部に進入するとシート1aにシワが発生する恐れがあったが、分離部107の搬送力より、給紙ローラ対9の搬送力を大きくすることにより、シート1aに撓みが形成されることを抑制できるので、シワが発生することを防止することができる。また、給紙ローラ対9の搬送力を大きくすることにより、分離部107と給紙ローラ対9との間の搬送路の曲率を大きくすることが可能となり、設計自由度を高めることができる。
【0106】
また、本実施の形態に係る画像形成装置101は、上記の給紙装置104と、給紙装置104から給紙されるシート1aに対して画像を形成する画像形成部103と、シート1aを画像形成部103に搬送する搬送ローラ対108と、を備えることを特徴とする。
【0107】
このため、画像形成装置101において、シート1aの特性に関わらず高い生産性を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明したように、本発明に係る給紙装置および画像形成装置は、シートの特性に関わらず高い生産性を実現することができるという効果を有し、シート束から最上位の1枚のシートを分離して搬送する給紙装置およびこの給紙装置を備えた画像形成装置として有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 シート束
1a、1b シート
2 ベルト
3 ローラ電極
4 電源
5 下流ローラ
6 上流ローラ
7 底板(シート積載手段)
8 底板上昇アーム(昇降手段)
9 給紙ローラ対(シート搬送手段)
10 ガイド板対
12 給紙トレイ
16 電磁クラッチ
17 リブ
18 フィラーセンサ
30 ガイド板
31 ガイド板(ガイド部材)
101 画像形成装置
104 給紙装置
107 分離部(吸着分離搬送手段)
108 搬送ローラ対(搬送手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特開2005−335915号公報
【特許文献2】特開2007−051011号公報
【特許文献3】特開平5−139548号公報
【特許文献4】特許第3159727号公報
【特許文献5】特開2009−23813号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束を積載するシート積載手段と、
前記シート束の最上位のシートを静電気力で吸着して前記シート束から分離および搬送する吸着分離搬送手段と、を備えた給紙装置であって、
前記吸着分離搬送手段は、装置が対応する最小サイズのシート束の積載位置のシート搬送方向における中央位置から上流端の間に配置されたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記シート積載手段に積載されたシート束を上昇および下降させる昇降手段を備え、
前記昇降手段により前記シート束を前記最上位のシートが前記吸着分離搬送手段に接触する上昇位置に上昇させ、前記吸着分離搬送手段を所定時間停止させて前記最上位のシートを吸着し、前記所定時間経過後に前記シート束を前記上昇位置に上昇させたままで前記吸着分離搬送手段により前記シートの搬送を開始することを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記吸着分離搬送手段が、前記シート搬送方向と直交する方向の中央に配置されることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記吸着分離搬送手段が、複数のローラと、前記複数のローラに張架された誘電体からなる無端状のベルトと、から構成され、
前記複数のローラのうち前記シート搬送方向の最も上流のローラが駆動されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の給紙装置。
【請求項5】
ローラ対を有し、前記吸着分離搬送手段により分離および搬送されたシートを前記ローラ対でニップして更に搬送するシート搬送手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の給紙装置。
【請求項6】
前記吸着分離搬送手段と前記シート搬送手段は、前記吸着分離搬送手段と前記シート束で形成されるニップ部の接線と前記シート搬送手段のローラ対のニップ部の接線が略同一線上になるように配置されることを特徴とする請求項5に記載の給紙装置。
【請求項7】
前記シート積載手段に積載されたシート束のシート搬送方向上流端から前記吸着分離搬送手段のシート搬送方向下流端のニップ部までの幅X1と、前記シート積載手段に積載されたシート束のシート搬送方向下流端から前記シート搬送手段のローラ対のニップ部までの距離X2が、X1>X2を満たすことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の給紙装置。
【請求項8】
前記吸着分離搬送手段と前記シート搬送手段の間であって、前記吸着分離搬送手段と前記シート束で形成されるニップ部の接線、および前記シート搬送手段のローラ対のニップ部の接線と略平行に配置され、前記吸着分離搬送手段から前記シート搬送手段に前記最上位のシートを案内する平面状のガイド部材を設けたことを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れかに記載の給紙装置。
【請求項9】
前記吸着分離搬送手段の搬送力より、前記シート搬送手段の搬送力を大きくしたことを特徴とする請求項5乃至請求項8の何れかに記載の給紙装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れかに記載の給紙装置と、
該給紙装置から給紙されるシートに対して画像を形成する画像形成部と、
該シートを前記画像形成部に搬送する搬送手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−173724(P2011−173724A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124595(P2010−124595)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】