説明

給紙装置及び画像形成装置

【課題】ピックアップローラを上昇させる際の騒音を低減させる。
【解決手段】ADF120は、ピックアップローラ11、アーム15、規制部材1291、駆動モータ14、及び制御部20を備える。ピックアップローラ11は、下降位置と上昇位置との間で回動するアーム15に軸支される。駆動モータ14は、アーム14へ回動のための駆動力を供給する。規制部材1291は、アーム15が上昇位置を越えて上昇することを規制する。制御部20は、アーム15を上昇位置近傍から上昇させる第1駆動要因の発生時には、駆動モータ14の設定速度を駆動モータ14の駆動音の低減重視の第1速度に設定し、アーム15を下降位置から上昇させる第2駆動要因の発生時には、規制部材1291との当接音の低減重視の第2速度に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、昇降自在なピックアップローラを備えた給紙装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
読み取られるべき画像を有するシート体又は画像を形成されるべきシート体を給紙する給紙装置の中には、シート体のセット時やジョブ終了後等にはシート体の最大積載高さよりも高い退避位置で退避し、給紙動作時にシート体に当接するよう給紙位置へ下降するピックアップローラを備えたものがある。ピックアップローラは、回動自在なアームの先端部に軸支され、アームが上昇位置に配置されることでピックアップローラが退避位置に配置され、アームが下降位置に配置されることで、ピックアップローラが給紙位置に配置される。下降位置は、アームの下降時に、積載されたシート体束の上面にピックアップローラが当接した高さによって決定され、上昇位置は、アームの上昇時に、所定高さに配置された規制部材によってアームが上昇を規制されることで決定される。
【0003】
アームは、駆動モータから駆動力を供給されることで、上昇位置と下降位置との間で昇降する。駆動モータには、アームの下降時及び上昇時に、それぞれ予め設定された速度で所定量を昇降するように駆動信号が入力する。アームは、給紙動作時以外の時は上昇位置に保持されるが、振動等によって所定の上昇位置よりも少し下がってしまうことがある。このため、アームは、上昇位置から下がってしまっていると考えられる所定のタイミングで規制部材に規制される位置まで上昇することで位置を初期化し、給紙動作の実行時には所定の上昇位置から下降を開始する。
【0004】
アームの下降時には、給紙の要求から実際に給紙されるまでの時間の高速化の要請があることや、アームの下降動作とピックアップローラの回転動作とが連動している場合は給紙のための回転トルクが必要なことから、高い速度及び大きいトルクが必要とされる。また、このような給紙装置の中には、上昇速度と下降速度とが同じであるものがある。このため、アームの昇降にともなって大きな当接音が発生する虞がある。
【0005】
そこで、従来の給紙装置の中には、アームが上昇位置から下降位置へ移動する際に、その途中から下降速度を低減させることで、ピックアップローラがシート体に当たる際の当接音を低減させようとするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−220026公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の従来の給紙装置では、アームの上昇時に、アームが規制部材に当接する当接音を低減させることはできない。また、駆動モータには駆動モータ自身が発生する駆動音があり、駆動音の大きさはその駆動回転速度によって異なるが、従来の給紙装置では、駆動モータの駆動音を低減させることもできない。
【0008】
この発明の目的は、ピックアップローラを上昇させる際の当接音や駆動音といった騒音を低減させることができる給紙装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の給紙装置は、ピックアップローラ、アーム、規制部材、駆動モータ、及び制御部を備える。ピックアップローラは、シート体に当接しつつ回転することでシート体を送り出す給紙動作を行う。アームは、第1端部を装置フレームに軸支されて第2端部にピックアップローラを軸支し、ピックアップローラがシート体に当接する下降位置とピックアップローラがシート体から離間する所定の上昇位置との間で回動自在である。駆動モータは、アームへ回動のための駆動力を供給する。規制部材は、アームが上昇位置を越えて上昇することを規制する。制御部は、アームを上昇位置の近傍から上昇位置へ上昇させる第1駆動要因の発生時には、駆動モータの設定速度を駆動モータの駆動音の低減重視の所定の第1速度に設定し、アームを下降位置から上昇位置へ上昇させる第2駆動要因の発生時には、設定速度を規制部材との当接音の低減重視の所定の第2速度に設定する。
【0010】
この構成では、アームを下降位置から上昇位置へ上昇させる際には駆動モータが第2速度に設定されることで、規制部材との当接音が低減する。また、アームが上昇位置の近傍から上昇位置へ上昇する際には、駆動モータは第1速度に設定されるが、アームの回動距離が短いのでアームが規制部材に規制されるまでに駆動モータが第1速度に達せず、設定速度を高く設定したとしても、規制部材との当接音が大きくならない。このため、アームが上昇位置の近傍から上昇位置へ上昇する際には駆動モータが第1速度に設定されることで、規制部材との当接音が大きくならずに、駆動モータの駆動音が低減される。
【0011】
また、アームを上昇又は下降させるために駆動モータに入力する駆動信号は、アームを確実に上昇位置又は下降位置まで移動させるために、回動させるべきアームの回動角度よりも大きい角度を回動するように設定されるのが一般的である。このため、アームが上昇位置近傍から上昇位置へ上昇する際に、規制部材によって上昇を規制された後にも駆動モータが駆動を続ける時間があるが、第1速度で回転することで、この時間の駆動モータの駆動音が低減する。
【0012】
上述の構成において、制御部は、アームの上昇時に、下降時のトルク重視の第1励磁方式から、駆動モータの駆動音の低減重視の第2励磁方式へ、駆動モータの励磁方式を変更することが好ましい。アームの下降時には、給紙のための回転トルクが必要なことから第1励磁方式で駆動モータが駆動することで回転トルクが大きくなる。一方、アームの上昇時には、第2励磁方式で駆動モータが駆動することで駆動モータの駆動音が低減する。
【0013】
また、一例として、第1励磁方式は2相励磁方式であり、第2励磁方式は1−2相励磁方式である。アームの下降時には、駆動モータが2相励磁方式で駆動することで回転トルクが大きくなり、アームの上昇時には、1−2相励磁方式で駆動することで、駆動モータの駆動音がさらに低減する。
【0014】
さらに、第2速度は、第1速度よりも低速であることが好ましい。アームを下降位置から上昇位置へ上昇させる際には、上昇位置近傍から上昇位置へ上昇させる際よりも低速に設定することで、規制部材との当接音が低減する。
【0015】
また、規制部材は、アームが上昇位置へ上昇した際にピックアップローラの周面に当接するように構成されることで、規制部材との当接音がより低減する。
【0016】
この発明の画像形成装置は、上述のいずれかの構成の給紙装置を備える。この構成では、アームを下降位置から上昇位置へ上昇させる際には駆動モータが第2速度に設定されることで、規制部材との当接音が低減する。アームが上昇位置の近傍から上昇位置へ上昇する際には駆動モータが第1速度に設定されることで、駆動モータの駆動音が低減され、規制部材との当接音も大きくならない。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ピックアップローラを上昇させる際の騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態に係る給紙装置を適用された画像形成装置の概略の構成を示す断面図である。
【図2】給紙装置の一例であるADFの斜視図である。
【図3】アームが下降位置にある状態のADFの断面図である。
【図4】アームが上昇位置にある状態のADFの断面図である。
【図5】アームが上昇位置近傍にある状態のADFの断面図である。
【図6】ADFの一部の拡大図である。
【図7】ピックアップローラ昇降機構の斜視図である。
【図8】制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】第1駆動要因及び第2駆動要因のそれぞれを例示した図である。
【図10】駆動モータの回転速度と駆動音の大きさとの関係を示す図である。
【図11】変形例に係るADFの一部の拡大図である。
【図12】この発明の給紙装置が画像形成装置の給紙部に適用された場合の第1駆動要因及び第2駆動要因のそれぞれを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、この発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すように、画像形成装置100は、装置本体110、及び自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)120を備えている。ADF120は、給紙装置の一例である。画像形成装置100は、原稿から生成した画像データ又は外部から入力した画像データに基づいて、用紙に多色又は単色の画像を形成する。原稿は、給紙装置によって給紙されるシート体の一例である。用紙として、普通紙、印画紙、OHPフィルム等のシート状の記録媒体が挙げられる。
【0020】
ADF120は、装置本体110の上に配置され、背面側端部を装置本体110に軸支されることで前面側端部が上下方向に回動するように構成されている。
【0021】
装置本体110は、画像読取部130、画像形成部140、及び給紙部150を備えている。
【0022】
画像読取部130は、装置本体110の上部に配置されており、上面に第1原稿台131及び第2原稿台132を備えている。第1原稿台131及び第2原稿台132の上面は、ADF120によって開閉自在にされている。固定原稿読取モード時に、画像読取部130は、第1原稿台131上に配置された原稿の画像を読み取って画像データを生成する。また、搬送原稿読取モード時に、ADF120は、原稿積載トレイ121に収容された原稿を、第2原稿台132の上面を経由して原稿排出トレイ122へ至るように1枚ずつ搬送し、画像読取部130は、第2原稿台132の上面を経由する原稿の画像を読み取って画像データを生成する。
【0023】
画像形成部140は、光走査装置60、4個の画像形成ステーション30A,30B,30C,30D、中間転写ユニット40、二次転写ユニット50、定着装置70、及び用紙排紙トレイ85を備え、用紙に画像形成処理を行う。
【0024】
中間転写ユニット40は、中間転写ベルト41、駆動ローラ42、従動ローラ43、及びテンションローラ44を有している。中間転写ベルト41は、駆動ローラ42、従動ローラ43、及びテンションローラ44によって張架されてループ状の移動経路を形成している。
【0025】
画像形成部140は、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ及びイエローの4色の各色相のトナー像(現像剤像)を、画像形成ステーション30A〜30Dにおいて形成する。画像形成ステーション30A〜30Dは、中間転写ベルト41の移動経路に沿って一列に配置されている。画像形成ステーション30B〜30Dは、画像形成ステーション30Aと実質的に同様に構成されている。
【0026】
ブラックの画像形成ステーション30Aは、感光体ドラム1A、帯電器2A、現像装置4A、一次転写ローラ5A、及びクリーニングユニット6Aを備えている。
【0027】
感光体ドラム1Aは、駆動力を伝達されることで所定方向に回転する。帯電器2Aは、感光体ドラム1Aの周面を所定の電位に帯電させる。
【0028】
光走査装置10は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによって変調されたレーザ光のそれぞれを、画像形成ステーション30A〜30Dのそれぞれの感光体ドラム1A,1B,1C,1Dに照射する。感光体ドラム1A〜1Dの周面には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データに基づく静電潜像がそれぞれ形成される。
【0029】
現像装置4Aは、感光体ドラム1Aの周面に、画像形成ステーション30Aの色相であるブラックのトナー(現像剤)を供給し、静電潜像をトナー像に顕像化する。
【0030】
中間転写ベルト41の外周面は、感光体ドラム1A〜1Dの周面に順に対向する。中間転写ベルト41を挟んで感光体ドラム1Aに対向する位置に、一次転写ローラ5Aが配置されている。中間転写ベルト41と感光体ドラム1A〜1Dとが互いに対向する位置のそれぞれが、一次転写位置である。
【0031】
一次転写ローラ5Aには、トナーの帯電極性(例えば、マイナス)と逆極性(例えば、プラス)の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。画像形成ステーション30B〜30Dにおいても同様である。これによって、感光体ドラム1A〜1Dのそれぞれの周面に形成された各色相のトナー像が中間転写ベルト41の外周面に順次重ねて一次転写され、中間転写ベルト41の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0032】
但し、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの色相の一部のみの画像データが入力された場合は、4個の感光体ドラム1A〜1Dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行われ、一部の色相のトナー像のみが中間転写ベルト41の外周面に一次転写される。
【0033】
クリーニングユニット6Aは、現像及び一次転写の後に感光体ドラム1Aの周面に残留したトナーを回収する。
【0034】
一次転写位置のそれぞれにおいて中間転写ベルト41の外周面に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト41の回転によって、中間転写ベルト41と、二次転写ユニット50に備えられた二次転写ローラ51と、の対向位置である二次転写位置へ搬送される。
【0035】
給紙部150は、給紙カセット81、手差しトレイ82、第1用紙搬送路83、及び第2用紙搬送路84を備えている。
【0036】
給紙カセット81には、使用頻度の比較的高いサイズ及び種類の用紙が収容される。給紙カセット81に収容された用紙は、ピックアップローラ85によって給紙されることで、第1用紙搬送路83へ1枚ずつ供給される。
【0037】
手差しトレイ82には、使用頻度の比較的低いサイズや種類の用紙が載置される。手差しトレイ82に載置された用紙は、ピックアップローラ86によって給紙されることで、第1用紙搬送路83へ1枚ずつ供給される。
【0038】
第1用紙搬送路83は、給紙カセット81及び手差しトレイ82のそれぞれから二次転写位置及び定着装置70を経由して用紙排紙トレイ85へ至るように形成されている。第2用紙搬送路84は、両面印刷用の用紙搬送路であり、一方の面に画像を形成された用紙が表裏を反転された状態で再び二次転写位置へ搬送されるように形成されている。
【0039】
二次転写ローラ51は、中間転写ベルト41を挟んで駆動ローラ42に所定のニップ圧で圧接している。
【0040】
給紙部150から給紙された用紙が二次転写位置を経由する際に、二次転写ローラ51に、トナーの帯電極性(例えば、マイナス)と逆極性(例えば、プラス)の二次転写バイアスが定電圧制御によって印加され、これによって、中間転写ベルト41の外周面に担持されたトナー像が、用紙に二次転写される。
【0041】
トナー像が用紙に転写された後の中間転写ベルト41上に残留したトナーは、中間転写ベルト用クリーニング装置45によって回収される。
【0042】
トナー像が転写された用紙は、定着装置70へ導かれる。定着装置70は、加熱ローラ71及び加圧ローラ72を備え、加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過する用紙を加熱及び加圧することで、用紙にトナー像を定着させる。トナー像が定着した用紙は、トナー像が定着した面を下にして用紙排紙トレイ85上へ排出される。
【0043】
図2〜図6に示すように、ADF120は、原稿積載トレイ121及び原稿排出トレイ122の他に、原稿搬送路123、ピックアップローラ11、搬送ローラ12、分離ローラ124、複数の送りローラ125,126,127,128、メンテナンス用ドア129を備えている。
【0044】
原稿積載トレイ121は、原稿排出トレイ122の上方に配置されている。原稿搬送路123は、原稿積載トレイ121から第2原稿台132の上面を経由して原稿排出トレイ122へ至るようにU字状に形成されている。
【0045】
ピックアップローラ11は、周面がゴム製であり、原稿搬送方向において原稿積載トレイ121の下流側端部に配置されている。搬送ローラ12は、原稿搬送方向においてピックアップローラ11の下流側に配置されている。
【0046】
図7に、ピックアップローラ昇降機構10を示す。ピックアップローラ昇降機構10は、ピックアップローラ11、搬送ローラ12、駆動軸13、駆動モータ14、アーム15、及び無端ベルト16を含む。
【0047】
搬送ローラ12は、駆動軸13とともに回転する。駆動軸13は、ADF120の装置フレームに軸支されている。駆動軸13は、駆動モータ14から駆動力を供給されることで回転する。駆動モータ14の駆動は、制御部20によって制御されている。
【0048】
アーム15の原稿搬送方向に沿った第1端部は、駆動軸13を中心に回転する。アーム15は、原稿搬送方向に沿って第1端部の反対側の第2端部にピックアップローラ11を軸支している。駆動軸13と、ピックアップローラ11の回転軸とに、無端ベルト16が張架されている。駆動軸13の回転力は、無端ベルト16を介してピックアップローラ11に伝達される。
【0049】
アーム15は、駆動モータ14から駆動軸13を介して駆動力を伝達されることで、図3に示すようにピックアップローラ11が原稿に当接する下降位置と、図4に示すようにピックアップローラ11が原稿から離間する所定の上昇位置と、の間で回動自在に構成されている。アーム15が下降位置に配置されることで、ピックアップローラ11が給紙位置に配置され、アーム15が上昇位置に配置されることでピックアップローラ11が退避位置に配置される。
【0050】
図6に示すように、メンテナンス用ドア129は、ピックアップローラ昇降機構10の上方に配置されている。メンテナンス用ドア129は、下面であって、ピックアップローラ11を軸支するアーム15の第2端部の上方に、規制部材1291を有している。アーム15は、上昇時に第2端部が規制部材1291に当接することで、上昇位置を越えて上昇することを規制され、上昇位置に配置される。例えば、規制部材1291として、スポンジ等のクッション部材やポリウレタン製プレート部材といった緩衝部材が用いられる。
【0051】
メンテナンス用ドア129は、図3における左側端部1292を中心にして、ピックアップローラ昇降機構10及び原稿搬送路123の上流側の略半分領域を、外部に露出する開放位置と、外部から覆う閉鎖位置との間で開閉自在に構成されている。メンテナンス用ドア129を開放位置に配置することで、原稿詰まりを起こした原稿の除去や部品交換等のメンテナンス作業が可能となる。
【0052】
メンテナンス用ドア129が開放位置に配置されると、駆動モータ14と駆動軸13との間で駆動力が伝達されなくなるので、メンテナンス用ドア129が一旦開放された後に閉鎖された場合、アーム15は、図3に示すように下降位置に配置される。
【0053】
また、第1原稿台131への原稿の載置等のためにADF120が開閉されると、アーム15は、振動等によって、図5に示すように、上昇位置から少し垂れ下がってしまうことがある。このため、アーム15は、上昇位置から下がってしまっていると考えられる所定のタイミングで規制部材1291に規制される位置まで上昇することで位置を初期化し、給紙動作の実行時には所定の上昇位置から下降を開始する。
【0054】
ピックアップローラ11は、原稿積載トレイ121に収容された原稿に当接しつつ回転することで原稿を原稿搬送路123へ送り出す給紙動作を行う。
【0055】
分離ローラ124は、搬送ローラ12に下方から圧接している。ピックアップローラ11によって給紙された原稿は、搬送ローラ12と分離ローラ124との間に送り込まれ、搬送ローラ12と分離ローラ124との作用によって1枚ずつに分離されて原稿搬送路123をさらに下流側へ搬送される。原稿は、送りローラ124〜128によって原稿搬送路123を搬送され、原稿排出トレイ122へ排出される。
【0056】
次に、アーム15を昇降させる際の駆動制御について説明する。
【0057】
制御部20は、アーム15を下降させる際には、トルク重視の第1励磁方式の駆動信号を駆動モータ14へ出力する。一例として、第1励磁方式は、2相励磁方式である。例えば、制御部20は、アーム15を下降させる際に、駆動モータ14に、2相励磁方式で、速度912.83pps(pulse per second)、回転量150パルスの駆動信号を出力する。アーム15を下降させる際には2相励磁方式の駆動信号を出力することで、給紙動作において1−2相励磁方式と比較して大きなトルクが得られる。
【0058】
図8に示すように、制御部20は、アーム15を上昇させる駆動要因が入力すると(S1)、その駆動要因が予め設定された第1駆動要因であるか否かを判定し(S2)、第1駆動要因である場合は、第1駆動モードを設定する(S3)。また、S2において、駆動要因が第1駆動要因ではなく、予め設定された第2駆動要因である場合は(S4)、第2駆動モードを設定する(S5)。制御部20は、設定された駆動モードで駆動モータ14を駆動する(S6)。
【0059】
図9に示すように、第1駆動要因は、上昇を開始する際にアーム15が上昇位置から少し垂れ下がった上昇位置近傍にあると考えられる状況になるものであり、一例として、電源がオンされたこと、節電モードから通常モードへ復帰したこと、及びADF120が開けられた後に閉じられたことが挙げられる。
【0060】
第2駆動要因は、アーム15が下降位置にあると考えられる状況になるものであり、一例として、原稿積載トレイ121から原稿搬送路123への原稿の給紙が終了したこと、及び、メンテナンス用ドア129が一旦開放された後に閉鎖されたことが挙げられる。
【0061】
制御部20は、アーム15を上昇させる際には第1駆動要因の発生時及び第2駆動要因の発生時のいずれにおいても、駆動モータ14の駆動音の低減重視の第2励磁方式の駆動信号を出力する。一例として、第2励磁方式は、1−2相励磁方式である。アーム15の上昇時には下降時と比較してトルクを必要としないので駆動モータ14の駆動音を低減させることで、アーム15を上昇させる際の騒音を低減させることができる。
【0062】
第1駆動モードは、駆動モータ14の駆動音の低減重視の所定の第1速度に設定するモードであり、一例として、1−2相励磁方式で速度2500pps、回転量300パルスの駆動信号が出力される。
【0063】
第2駆動モードは、規制部材1291との当接音の低減重視の所定の第2速度に設定するモードであり、一例として、1−2相励磁方式で速度1800pps、回転量300パルスの駆動信号が出力される。この実施形態では、アーム15を下降位置から上昇位置へ上昇させる際には、上昇位置近傍から上昇位置へ上昇させる際よりも、駆動モータ14の回転速度は低速に設定される。なお、1−2相励磁方式における回転量300パルスと、2相励磁方式における回転量150パルスとは、駆動モータ14の回転量としては同等である。
【0064】
図10に示すように、この実施形態で使用される駆動モータ14は、1−2相励磁方式で2500ppsの速度で回転するときに最も駆動音が小さくなり、2500ppsよりも遅いときは低音の大きな音が発生し、2500ppsよりも早いときは高音の大きな音が発生する。
【0065】
以上のような構成によって、アーム15を下降位置から上昇位置へ上昇させる際には、駆動モータ14が第2速度即ち例えば1800ppsに設定され、1800ppsの速度で規制部材1291に当接することで、規制部材1291との当接音が、第1速度即ち例えば2500ppsで規制部材1291に当接する場合と比較して低減する。
【0066】
また、アーム15が上昇位置近傍から上昇位置へ上昇する際には、駆動モータ14は第1速度即ち例えば2500ppsに設定されるが、アーム15の回動角度が小さいのでアーム15が規制部材1291に当接するまでに駆動モータ14が第1速度に達しない。
【0067】
上述の実施形態では、アーム15の下降位置と上昇位置との間の回動角度は、32度である。1−2相励磁方式において、駆動モータ14が回転を開始してから速度1800ppsに到達するまでの間にアーム15が回動する角度は17度である。駆動モータ14が回転を開始してから速度2500ppsに到達するまでの間にアーム15が回動しようとする角度は34度である。
【0068】
このため、駆動モータ14が速度2500ppsに設定された場合であって、アーム15が下降位置から上昇した場合は上昇位置において設定速度2500ppsに近い速度になるが、上昇位置近傍から上昇する場合はアーム15の回動角度が小さいので上昇位置において2500ppsはおろか1800ppsにも満たない速度にしかならない。
【0069】
よって、アーム15を上昇位置近傍から上昇させる際には、高い設定速度即ち例えば2500ppsに設定した場合でも低い速度即ち例えば1800pps未満の速度で規制部材1291に当接することとなり、規制部材1291との当接音が大きくならない。したがって、アーム15を上昇位置近傍から上昇位置へ上昇させる際には駆動モータ14を第1速度に設定することで、規制部材1291との当接音が大きくならずに、駆動モータ14の駆動音が低減する。
【0070】
また、アーム15を上昇又は下降させるために駆動モータ14に入力する駆動信号は、アーム15を確実に上昇位置又は下降位置まで移動させるために、回動させるべきアーム15の回動角度よりも大きい角度を回動するように設定される。このため、アーム15が上昇位置近傍から上昇位置へ上昇する際は、規制部材1291に当接した後にも駆動モータ14は比較的長い時間、駆動を続けることになるが、駆動モータ14が第1速度即ち例えば2500ppsで回転することで、駆動モータ14の駆動音が小さくなり、騒音を低減できる。
【0071】
なお、図11に示すように、規制部材1291は、アーム15が上昇位置へ上昇した際にピックアップローラ11の周面に当接するように構成することもできる。これによって、規制部材1291との当接音がより低減する。
【0072】
また、画像形成装置100に備えられた給紙部150に、本発明を適用することもできる。ピックアップローラ85は、図示しないアームが回動することで昇降する。給紙部150を本発明の給紙装置のように構成した場合は、給紙カセット81に収容された画像を形成されるべき用紙が、給紙装置によって給紙されるシート体であり、アームを上昇させる際の騒音が低減する。図12に示すように、第1駆動要因の一例として、電源がオンされたこと、節電モードから通常モードへ復帰したことが挙げられる。第2駆動要因の一例として、給紙カセット81から第1用紙搬送路83への用紙の給紙が終了したこと、及び、給紙カセット81を引き出した状態から所定位置に装着したことが挙げられる。
【0073】
さらに、画像形成装置100に備えられた手差しトレイ82に載置された用紙を給紙するピックアップローラ86を上昇させる際の駆動制御に本発明を適用し、ピックアップローラ86を上昇させる際の騒音を低減することもできる。
【0074】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
10 ピックアップローラ昇降機構
11,85,86 ピックアップローラ
14 駆動モータ
15 アーム
20 制御部
120 ADF(給紙装置)
121 原稿積載トレイ
122 原稿排出トレイ
123 原稿搬送路
129 メンテナンス用ドア
1291 規制部材
150 給紙部
81 給紙カセット
82 手差しトレイ
83 第1用紙搬送路
85 用紙排紙トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体に当接しつつ回転することでシート体を送り出す給紙動作を行うピックアップローラと、
第1端部を装置フレームに軸支されて第2端部に前記ピックアップローラを軸支し、前記ピックアップローラがシート体に当接する下降位置と前記ピックアップローラがシート体から離間する所定の上昇位置との間で回動自在なアームと、
前記アームへ回動のための駆動力を供給する駆動モータと、
前記アームが前記上昇位置を越えて上昇することを規制する規制部材と、
前記アームを前記上昇位置の近傍から前記上昇位置へ上昇させる第1駆動要因の発生時には、前記駆動モータの設定速度を前記駆動モータの駆動音の低減重視の所定の第1速度に設定し、前記アームを前記下降位置から前記上昇位置へ上昇させる第2駆動要因の発生時には、前記設定速度を前記規制部材との当接音の低減重視の所定の第2速度に設定する制御部と、を備える給紙装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記アームの上昇時に、下降時のトルク重視の第1励磁方式から、前記駆動モータの駆動音の低減重視の第2励磁方式へ、前記駆動モータの励磁方式を変更する、請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記第1励磁方式は2相励磁方式であり、前記第2励磁方式は1−2相励磁方式である、請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記第2速度は、前記第1速度よりも低速である、請求項1から3のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項5】
前記規制部材は、前記アームが前記上昇位置へ上昇した際に前記ピックアップローラの周面に当接する、請求項1から4のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の給紙装置を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71830(P2013−71830A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213622(P2011−213622)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】