説明

給紙装置

【課題】給紙ローラの下流側直後に余分な搬送ローラの配置を不要とし、給紙後における用紙の分離による負荷低減を行う給紙機構を低コストで実現する。
【解決手段】用紙トレイと、ピックアップローラと、給紙ローラ5と、給紙ローラ5の直下位置で当接し、用紙束を分離する分離パッド8と、分離パッド8を保持し、かつ支軸を中心に回転可能な分離パッドフォルダ9と、分離パッド8を給紙ローラ方向へ付勢する分離パッドスプリング7と、ピックアップローラと給紙ローラ5を駆動させる駆動手段と、分離された用紙を給紙するための内側給送ガイド10と、を有し、分離パッドフォルダ9は、前記駆動手段と連結され、かつ給紙ローラ5から離間可能に構成され、用紙が搬送経路内にある搬送ローラ対のニップ部に進入してから、次用紙の給紙を開始するまでの間、分離パッドフォルダ9は給紙ローラ5から離間している状態を保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、印刷機等の画像形成装置に使用される給紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給紙ローラに分離パッドを接触させ、この両者のニップに給紙対象の用紙束を送り込み、一枚ずつ分離して給紙する、いわゆる摩擦分離方式による給紙装置が広く用いられている。このような摩擦分離方式の給紙装置においては給紙ローラに分離パッドを接触したままの状態で給紙すると上記ニップの部分で挟まれながら用紙を搬送するため、この部分に起因する負荷の増大、両面給紙における裏面汚れなど従来からこれらを解決する機構が開示されている。
【0003】
分離パッドによる給紙装置において、分離パッドの給紙ローラへの脱圧を、幅方向に長尺のスライドレバーを手動操作により行う機構が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。また、分離パッドの給紙ローラへの脱圧を、給紙ローラと連動するカムにより行う機構が開示されている(たとえば、特許文献2、3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−240859号公報
【特許文献2】特許第3939880号公報
【特許文献3】特許第2966054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記に示されるような従来の特許文献1に開示されている機構にあっては、押圧手段の切り換え手段が、手動レバーのため、操作性の面で課題があった。また、特許文献2、3に開示されている機構にあっては、分離パッドと分離パッドフォルダが離間するのは、給紙ローラが1回転する間だけなので、給紙後における用紙の分離による負荷低減を行うためには給紙ローラから下流側直後(距離にして給紙ローラの円周分以下)に、搬送ローラおよび従動ローラを設けなければならず、給紙機構が複雑で、かつ高コストになるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、給紙ローラの下流側直後に余分な搬送ローラの配置を不要とし、給紙後における用紙の分離による負荷低減を行う給紙機構を低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、用紙を積載するための用紙トレイと、前記用紙トレイにある用紙束の最上面に接して回転することにより上部の用紙束を運ぶピックアップローラと、前記ピックアップローラに運ばれた用紙束のうち最上部の用紙を取り出し給紙する給紙ローラと、前記給紙ローラの直下位置で当該給紙ローラに当接し、用紙束を分離する分離パッドと、前記分離パッドを保持し、かつ支軸を中心に回転可能な分離パッドフォルダと、前記分離パッドを前記給紙ローラ方向へ付勢する分離パッドスプリングと、前記ピックアップローラと給紙ローラを駆動させる駆動手段と、分離された1枚の用紙を給紙するための給送ガイドと、を有し、前記分離パッドフォルダは、前記駆動手段と連結されており、かつ、前記給紙ローラから離間可能に構成され、給送された用紙が、搬送経路内にある搬送ローラ対のニップ部に進入してから、次用紙給紙を開始するまでの間、前記分離パッドフォルダは前記給紙ローラから離間している状態を保つことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1において、さらに、前記分離パッドフォルダまたは前記給送ガイドに設けられ、前記分離パッドが前記給紙ローラから離間した直後に、前記分離パッドフォルダを回転規制する回転規制手段と、前記回転規制手段により、前記分離パッドフォルダの回転が規制された際、その位置にて前記分離パッドフォルダが停止する停止手段と、を備え、前記停止手段は、前記分離パッドフォルダが初期位置に戻る際には、前記分離パッドフォルダの回転規制が解除されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3にかかる発明は、請求項2において、前記回転規制手段は、前記分離パッドフォルダの正回転方向および逆回転方向共に、回転を規制する第1回転規制爪、第2回転規制爪を有し、前記分離パッドフォルダが前記駆動手段により回転し、前記分離パッドが前記給紙ローラから離間した直後に、前記第2回転規制爪が前記給送ガイドに衝突し、前記分離パッドフォルダの回転を規制し、前記給紙ローラが前記分離パッドの直上位置から移動することで、前記分離パッドフォルダが、前記分離パッドスプリングから受ける付勢力により回転する際、回転直後に、前記第1回転規制爪によって前記分離パッドフォルダの回転規制を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる発明は、請求項1、2または3において、前記給送ガイドに、前記駆動手段と接続されるシャフトが組み付けられ、一方を前記シャフトに嵌合し、他方を前記分離パッドフォルダに取り付けられる連結アームを有し、前記連結アームの回転運動により、前記分離パッドフォルダも支軸を中心とした回転運動し、前記分離パッドフォルダが前記給紙ローラから離間する位置まで離間した後、離間した位置にて前記分離パッドフォルダのみが回転停止する機構が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5にかかる発明は、請求項4において、前記シャフトが回転すると前記連結アームも回転し、かつ前記連結アームに、回転方向に対して反対方向に負荷がかかっていた場合、前記シャフトが回転しても、前記連結アームは回転せず、定位置にて停止する機構であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6にかかる発明は、請求項4または5において、前記分離パッドフォルダの支軸と前記シャフトの中心とが同一になるように、両部品が配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7にかかる発明は、請求項4、5または6において、前記連結アームを前記分離パッドフォルダから一つの手動操作で付け外し可能で、かつ、前記分離パッドフォルダを前記シャフトから一つの手動操作で付け外しが可能な付け外し手段を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項8にかかる発明は、請求項7において、前記付け外し手段は、前記連結アームの片側はフック形状をなし、このフック形状を前記分離パッドフォルダに設けられた凸部に引っ掛ける機構を有し、前記シャフトに嵌合する前記分離パッドフォルダの穴がフック形状になっていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9にかかる発明は、請求項3〜8のいずれか一つにおいて、前記第1回転規制爪および第2回転規制爪と、前記給送ガイドとの間に弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項10にかかる発明は、請求項9において、前記弾性部材が吸音性の弾性部材であり、前記第1回転規制爪および第2回転規制爪に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる給紙装置は、用紙が搬送経路内の最も上流部にある搬送ローラ・従動ローラのニップ部に進入した後に、分離パッドが給紙ローラから離間することができるので、給紙ローラの下流側直後(距離にして給紙ローラ5の円周分以下)に余分な搬送ローラ・従動ローラを設ける必要がなく、給紙後における用紙の分離による負荷低減を行う給紙機構を低コストで実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる給紙装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
以下に先に述べた目的を解決するための具体的な実施の形態について説明するが、この目的に加え、下記のような第1から第9に示す課題を解決するものである。第1に、給送した用紙が搬送経路内の搬送ローラ・従動ローラニップ部に進入し、給紙装置が次用紙の給紙を開始する際、分離パッドが給紙ローラから離間している位置から初期位置まで戻るまでの間に大きなタイムラグが発生するため、単位時間あたりの給紙枚数が少なくなり、給紙装置の生産性が下がってしまう、という課題を解決する。第2に、搬送経路内にてジャムが発生した場合等に、給紙ローラを分離パッドの直上位置から移動させる必要があるが、給紙ローラを移動させると、分離パッドフォルダの回転規制手段がなくなってしまうため、代わりの回転規制手段が必要となる。この回転規制手段と、分離パッドフォルダが給紙ローラから離間する方向への回転規制手段とを、別々に設けてしまうと、機構の複雑化やコスト増大に繋がってしまうことを回避する。第3に、分離パッドが給紙ローラから離間する方向へ、分離パッドフォルダが回転するための機構が複雑でコスト増大に繋がってしまう、という課題を解決する。
【0020】
また、第4に、連結アームとシャフトとの嵌め合いが完全なしまりばめ状態であった場合、分離パッドフォルダが給紙ローラから離間する方向へ回転し、分離パッドフォルダの回転規制爪が給送ガイドに衝突した後に、シャフトは回転し続けることができないため、下記[1]と[2]までの時間を計算した上で、ギア比設定された多数のギアが駆動機構とシャフトとの間に必要となり、分離パッドフォルダが給紙ローラから遠ざかる方向へ回転するための機構の複雑化やコスト増大に繋がってしまう、という課題を解決する。
[1]分離パッドフォルダが給紙ローラから離間する方向へ回転しはじめてから、回転規制爪が給送ガイドに衝突するまでの時間。
[2]駆動機構の回転速度。さらに上記機構例であった場合、分離パッドフォルダが給送ガイドに衝突して回転停止していられる時間が非常に短時間(駆動機構とシャフトとを連結するギアのバックラッシ分)であるため、分離パッドフォルダを給送ガイドに衝突させて回転停止させることが事実上不可能であり、上記[1]、[2]までの時間を計算した上で、分離パッドが給紙ローラから離間する距離を左記時間から算出される距離よりも多くとる必要があり、結果的に、給紙装置の生産性を下げてしまう、という課題を解決する。第5に、連結アームが、分離パッドフォルダに対して、給紙ローラから遠ざかる方向に力を加える際、連結アームを回転させるシャフトのトルクを、効率良く前記力に変換できないために、駆動部の機械負荷が増大し、シャフトを回転させる駆動部の消費電力が増してしまう、という課題を解決する。
【0021】
また、第6として、下記[1]と[2]の課題を解決する。
[1]分離パッド交換時に、分離パッドフォルダを給紙装置から取り外す際、連結アームを分離パッドフォルダから、ワンタッチで取り外す機構がないと、分離パッド交換時の操作性が悪い、という課題。
[2]分離パッド交換時に、分離パッドフォルダを給紙装置から取り外す際、分離パッドフォルダをシャフト等の軸物部品から、ワンタッチで取り外す機構がないと分離パッド交換時の操作性が悪い、という課題。
【0022】
また、第7として、下記[1]と[2]の課題を解決する。
[1]分離パッド交換時に、分離パッドフォルダの取り外しを行う際、連結アームを分離パッドフォルダからワンタッチで取り外す機構が、ボタン式で連結アームを取り外す機構である等の場合、機構が複雑でコスト増大に繋がる、という課題。
[2]分離パッド交換時に、分離パッドフォルダの取り外しを行う際、分離パッドフォルダをシャフト等の軸物部品からワンタッチで取り外す機構が、ボタン式で分離パッドフォルダを取り外す機構である等の場合、機構が複雑でコスト増大に繋がる、という課題。
【0023】
また、第8として、給紙装置が給紙を行うごとに、分離パッドフォルダ回転規制爪が給送ガイドに衝突するために、分離パッドフォルダ回転規制爪および給送ガイドの耐久性の保証が困難である、という課題を解決する。また、第9として、分離パッドフォルダ回転規制爪と給送ガイドとが衝突する際の衝撃音が、ユーザにとって耳障りである、という課題を解決する。
【0024】
(実施の形態)
図1は、この実施の形態にかかる給紙装置の構成を示す斜視図である。図2は、分離パッドフォルダおよび連結アームが分離パッドフォルダシャフトに組み付けられている状態を示す説明図である。図3は、内側給送ガイドの断面をどこから見ようとしているかを示す説明図である。図4は、図3において矢印A方向から内側給送ガイドの断面をみた斜視図である。図5は、図4のうち分離パッドフォルダ近辺を拡大した図である。図6は、内側給送ガイドの断面図を平面図にて示したものである(給紙ローラも併せて載せた)。さらにこの図は、給紙ローラと分離パッドとが離間している状態を示す。図7は、図6のさらなる拡大図である。図8は、この実施の形態にかかる給紙装置のシステム構成を示す説明図である。
【0025】
これらの図1〜7において、符号1は用紙トレイ、符号2は給紙カバー、符号3はピックアップローラ、符号4は分離パッドフォルダシャフト、符号5は給紙ローラ、符号6は連結アーム、符号7は分離パッドスプリング、符号8は分離パッド、符号9は分離パッドフォルダ、符号9aは突起物、符号9bは第1回転規制用爪、符号9cは第2回転規制用爪、符号10は内側給送ガイド、符号10aは底面、符号13は弾性部材、符号14はローラフォルダ、符号15はスポンジ(発泡性ゴム)である。
【0026】
また、図8において、符号100は本装置を統括的に制御する制御部、符号101は給紙駆動部、符号102はピックアップローラ3の紙面への接触/離間のための駆動源となるソレノイド、符号103は分離パッドフォルダ9の給紙ローラ5への接触/離間を行なう接離機構、符号105,106は搬送センサ、符号107は搬送ローラ対である。
【0027】
また、上記図1〜7において、矢印Aは給送ガイド10の断面方向、矢印Bは分離パッドフォルダシャフト4の回転方向、矢印Cは分離パッドフォルダ9の回転方向、矢印Dは連結アーム6を分離パッドフォルダ9から取り外す際の回転方向、矢印Eは分離パッドフォルダ9を取り外す際に爪を逃がす方向、矢印Fは分離パッドフォルダ9の支軸を取り外す方向、矢印Gは用紙給送方向を示している。
【0028】
[給紙装置の構成]
〔用紙トレイ1、給紙カバー2、ピックアップローラ4、給紙ローラ5、分離パッドフォルダシャフト4の構成〕
図1にて示すように、用紙束を積載するための用紙トレイ1は、内側給送ガイド10に組みつけられている。給紙カバー2は、図示はしない側板にて軸支されている。また給紙カバー2は、ローラフォルダ14を軸支しており、さらに、ローラフォルダ14は、ピックアップローラ3および給紙ローラ5を軸支している。さらに、給紙カバー2は、給紙される用紙の案内を行う外側給送ガイドの機能も併せて持つ。ピックアップローラ4、給紙ローラ5は、図示しないギア・カム等を介して、給紙駆動部101の給紙モータ(たとえばステッピングモータ)によって接続されており、給紙モータの正転時にのみ、ピックアップローラ4、給紙ローラ5は駆動する構成となっている。
【0029】
〔分離パッドフォルダシャフト4、内側給送ガイド10、分離パッド8、分離パッドフォルダ9、分離パッドスプリング7の構成〕
上記説明に加えて給紙モータは、図示しないギア・カム等を介して、図1に示す分離パッドフォルダシャフト4に接続されており、給紙モータの反転時にのみ、分離パッドフォルダシャフト4は駆動されるようになっている。図1に示すように、内側給送ガイド10は、分離パッドフォルダシャフト4を軸支している。また、図1に示すように、内側給送ガイド10には、分離パッドフォルダ9が軸支されている。さらに、分離パッドフォルダ9には、たとえば両面テープなどによって、分離パッド8が取り付けられている。
【0030】
図6に示すように、分離パッドフォルダ9および分離パッド8は、給紙ローラ5の直下位置にある。図2にて示すように、分離パッドフォルダシャフト4には、分離パッドフォルダ9が軸支されている。分離パッドフォルダ9に設けた、シャフトとの嵌合部は、取り付けおよび取り外しが容易なよう、円弧状の切り欠き形状となっている。また、分離パッドフォルダ9にある突起物9aと、分離パッドフォルダシャフト4とは、連結アーム6によって連結されている。
【0031】
図2にて示すように、連結アーム6の分離パッドフォルダシャフト側先端部は、フック形状となっており、分離パッドフォルダシャフト4との取付けおよび取り外しが容易な構成になっている。また、連結アーム6は、分離パッドフォルダシャフト4の回転と連動して、分離パッドフォルダシャフト4の中心を支軸として回転可能な構成となっている。さらに、図2にて示すように連結アーム6の分離パッド側先端部は、前記突起物9aに引っかかるようにフック形状となっており、突起物9aへの取付けおよび取り外しが可能な構成となっている。連結アーム6および突起物9aは分離パッドフォルダ9の両側に設けられている。
【0032】
図7にて示すように、内側給送ガイド10には、分離パッドスプリング7を設置するための底面10aが設けられている。底面10aと分離パッドフォルダ9との間には、分離パッドスプリング7が設けられており、分離パッドスプリング7は常に、分離パッドフォルダ9を、給紙ローラ5側へと付勢している。
【0033】
前記分離パッドスプリング7の弾性力によって、給紙装置組み付け時、分離パッド8は常に、給紙ローラ5の周面に、弾性的に圧接している。すなわち、給紙装置組み付け時において、分離パッドフォルダ9の分離パッドスプリング7の弾性力による回転は、給紙ローラ5によって規制されている。
【0034】
給紙カバー2を支軸を中心に回転させ給送経路を開放し(給送経路を開放するのは、給送経路内でジャムが発生または、分離パッド8を交換するために分離パッドフォルダ9を内側給送ガイド10から取り外すときのみである)、分離パッドフォルダ9の回転規制を行っていた給紙ローラ5が、分離パッド8の真上から移動したときに、分離パッドフォルダ9の分離パッドスプリング7の弾性力による回転を規制するために、分離パッドフォルダ9には、第1回転規制用爪9bが設けられている。分離パッドフォルダ9が所定の位置まで回転したときには、図7にて示すように、第1回転規制用爪9bが内側給送ガイド10と接触することで、回転が規制される。
【0035】
〔その他(センサ)の構成〕
分離部より下流側にある搬送経路内には、搬送センサ105,106が設けられている。搬送センサ105,106は発光素子から発した光を搬送される用紙で反射して受光素子で受けることにより用紙を検知する反射型センサまたは、発光素子で発し、受光素子で受けていた光を用紙で遮断することにより用紙を検知する透過型センサなどで構成される。
【0036】
給紙装置が用紙を給紙開始後に、一定時間経過しても、搬送センサ105,106が用紙を検知しない場合、給紙装置は、給送経路内にてジャムまたは給紙部にて不給紙(不送り)が発生したとみなし、用紙の給紙動作を停止する構成となっている。また、この搬送センサ105,106が、用紙先端が搬送ローラと従動ローラからなる搬送ローラ対107のニップ部に進入するタイミングを計算、もしくは前記ニップ部通過後の用紙先端を検知することによって、給紙ローラ5を駆動させている給紙駆動部101の給紙モータを正転から反転へ切り換えさせる構成となっている。
【0037】
[給紙装置の動作]
〔給紙装置動作時〕
用紙を給紙する際、給紙モータが正転し、その駆動力によってローラフォルダ14が下降する。同時に分離ローラ6も回転する。ローラフォルダ14が下降することで、ピックアップローラ3も下降および回転する。用紙トレイ1にある積載された用紙(図示はしていない)のうち、上層部にある複数枚の用紙が、下降してきたピックアップローラ3の回転によって給紙ローラ5と分離パッド8の接触するニップ部まで運ばれ、このニップ部にて最上層の用紙のみが分離され、分離部下流にある原稿搬送経路内へと搬送される。
【0038】
給紙された用紙の先端部が搬送ローラと従動ローラとからなるニップ部に進入したことを、センサが検知すると、給紙モータは正転から反転へと切り替わり、分離ローラシャフト4が図2にて示す矢印B方向へと回転する。給紙モータ反転時になると、給紙ローラ5とピックアップローラ3の回転はおさまり、ピックアップローラは上昇する。この回転と連動して、図2に示すように、連結アーム6は支軸を中心に矢印C方向へと回転し、結果分離パッドフォルダ9が、分離パッドスプリング7の弾性力に抗して矢印C方向へと回転する。
【0039】
分離パッドフォルダ9の矢印C方向への回転は、第2回転規制用爪9cが、スポンジ15を介して底面10aに衝突するまで回転し、その結果、図6にて示すように、分離パッド8と給紙ローラ5とが離間し、給紙後の用紙16が分離部にて受ける分離負荷を最小限に抑えることができる。このとき、第2回転規制用爪9cによって、分離パッド8の回転移動量は、給紙ローラ5から離間するための必要最小限に設定されている。分離パッドフォルダ9の回転後も、分離されて給紙部に残った用紙束17は、分離パッド8にて残ったままとなる。
【0040】
再び用紙を給紙する際には、給紙モータが反転から正転に切り替わり、と同時に、分離パッドフォルダシャフト4の回転はおさまり、分離パッドフォルダ9は、分離パッドスプリング7の付勢力によって瞬時に元の位置まで戻り、分離パッド9と給紙ローラ5とは再び弾性的圧接状態となる。
【0041】
以上の作用から、本発明は、簡単な機構でもって、給紙後の用紙の分離部における負荷を低減させることができる。さらに、分離パッドフォルダ9の支軸と分離パッドフォルダシャフト4の中心が一致していることから、連結アーム6が分離パッドフォルダ9に対して、図2で示す矢印C方向に力を加える際、分離パッドフォルダシャフト4のトルクを効率良く前記力に変換できることので、分離パッドフォルダシャフト4を回転させる駆動部の機械負荷を低減でき、駆動部を動かすための消費電力を抑えることができる。
【0042】
また、分離パッドフォルダ9にある第2回転規制用爪9cに、スポンジ15を設けていることから、第2回転規制用爪9cと底面10aとが衝突する際の音を静音化することができる。さらに、第2回転規制爪9cと、給送ガイド10との衝突の際の衝撃を緩和できるため、第2回転規制爪9cと、給送ガイド10の耐久性を向上させることができる。
【0043】
〔給紙装置静止時〕
また、分離パッド8を交換するために、分離パッドフォルダ9を取り外す際には、連結アーム6を図7にて示す矢印D方向へと回転させ、さらに分離パッドフォルダ9の第1回転規制用爪9bを図7にて示す矢印E方向へと逃がし、分離パッドフォルダ9の支軸部を図7にて示す矢印F方向へと引っ張るだけで、取り外すことができ、分離パッド8の保守作業時における操作性の向上が実現する。
【0044】
したがって、上述した実施の形態によれば、用紙が搬送経路内の最も上流部にある搬送ローラ・従動ローラのニップ部(従来通りの位置にあり)に進入した後に、分離パッド8が給紙ローラ5から離間することができるので、給紙ローラ5の下流側直後(距離にして給紙ローラ5の円周分以下)に余分な搬送ローラ・従動ローラを設ける必要がなく、給紙後における用紙の分離による負荷低減を行う給紙機構を低コストで実現できる。
【0045】
また、上記に加え、分離パッドフォルダ9は、分離パッド8が給紙ローラ5から離間した直後に、回転規制されるため、分離パッドフォルダ9が、回転規制位置から初期位置までの戻るタイムラグを最小限にすることができ、給紙装置の生産性を、従来からある給紙装置とほぼ同等に維持することができる。
【0046】
また、上記に加え、分離パッドフォルダ9が、どちらの方向に回転を行おうとも、分離パッドフォルダ9に設けた一つの回転規制爪が給送ガイドに衝突することで、分離パッドフォルダ9の回転規制を行うことができるため、簡易な機構かつ低コストで、給紙後用紙の分離負荷を低減する給紙装置を実現できる。
【0047】
また、上記に加え、分離パッド8が給紙ローラ5から離間する方向へ分離パッドフォルダ9が回転するための機構が、シャフト・連結アーム・シャフト駆動部のみで実現しているため、簡易な機構かつ、低コストで、給紙後用紙の分離負荷を低減する給紙装置を実現できる。
【0048】
また、上記に加え、分離パッドフォルダ9が給紙ローラ5から遠ざかる方向へと回転し、回転規制爪が内側給送ガイド10と衝突した後は、連結アーム6の回転は停止し、シャフトは回転し続けることができるため、分離パッドフォルダ9が給紙ローラ5から遠ざかる方向へ回転する機構を簡易な機構かつ、低コストで実現することができる。さらに、上記機構であると、分離パッドフォルダ9が内側給送ガイド10に衝突し、回転停止しても駆動機構は駆動し続けることができるため、分離パッド8は、給紙ローラ5から離間した直後に、内側給送ガイド10に衝突することができ、給紙装置の生産性を落とすことがない、ということが実現できる。
【0049】
また、上記に加え、分離パッドフォルダ9の支軸とシャフト・連結アームの中心が一致していることから、連結アーム6が分離パッドフォルダ9に対して、給紙ローラ5から遠ざかる方向に力を加える際、シャフトの回転トルクを効率良く前記力に変換できることので、駆動部の機械負荷を低減させることができ、シャフトを回転させる駆動部の消費電力を抑えることができる。
【0050】
また、上記に加え、連結アーム6を分離パッドフォルダ9から、ワンタッチで取り外す機構を設け、また、分離パッドフォルダ9を、シャフト等の軸物部品からワンタッチで取り外す機構を設けているので、分離パッド8の交換の操作性を向上させることができる。
【0051】
また、上記に加え、連結アーム6の片側がフック形状であり、このフック部が分離パッドフォルダ9に引っ掛かかる構成となっており、また、分離パッドフォルダ9の、シャフト等の軸物部品との勘合部が、フック形状となっているので、分離パッドの交換時の操作性向上を、簡単な機構かつ低コストな機構で実現できる。
【0052】
また、上記に加え、分離パッドフォルダ9の回転規制爪と給送ガイドが衝突する際の衝撃を吸収することができるため、分離パッドフォルダ9の回転規制爪および内側給送ガイド10の耐久性の保証が容易にできる。また、吸音性の弾性部材が、分離パッドフォルダ9の回転規制爪が内側給送ガイド10と衝突する際の衝撃および衝突音を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる給紙装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、印刷機等の画像形成装置、紙幣自動支払機などの紙搬送装置の給紙機構に有用であり、特に、給紙された用紙に加わる分離部における負荷を低減させる機構を有する装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この実施の形態にかかる給紙装置の構成を示す斜視図である。
【図2】分離パッドフォルダおよび連結アームが分離パッドフォルダシャフトに組み付けられている状態を示す説明図である。
【図3】内側給送ガイドの断面をどこから見ようとしているかを示す説明図である。
【図4】図3において矢印A方向から内側給送ガイドの断面をみた斜視図である。
【図5】図4のうち分離パッドフォルダ近辺を拡大した図である。
【図6】内側給送ガイドの断面構成および給紙ローラと分離パッドとが離間している状態を示す平面図である。
【図7】図6をさらに拡大して示す説明図である。
【図8】この実施の形態にかかる給紙装置のシステム構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 用紙トレイ
2 給紙カバー
3 ピックアップローラ
4 分離パッドフォルダシャフト
5 給紙ローラ
6 連結アーム
7 分離パッドスプリング
8 分離パッド
9 分離パッドフォルダ
9a 突起物
9b 第1回転規制用爪
9c 第2回転規制用爪
10 内側給送ガイド
10a 底面
13 弾性部材
14 ローラフォルダ
15 スポンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を積載するための用紙トレイと、前記用紙トレイにある用紙束の最上面に接して回転することにより上部の用紙束を運ぶピックアップローラと、前記ピックアップローラに運ばれた用紙束のうち最上部の用紙を取り出し給紙する給紙ローラと、前記給紙ローラの直下位置で当該給紙ローラに当接し、用紙束を分離する分離パッドと、前記分離パッドを保持し、かつ支軸を中心に回転可能な分離パッドフォルダと、前記分離パッドを前記給紙ローラ方向へ付勢する分離パッドスプリングと、前記ピックアップローラと給紙ローラを駆動させる駆動手段と、分離された1枚の用紙を給紙するための給送ガイドと、を有し、
前記分離パッドフォルダは、前記駆動手段と連結されており、かつ、前記給紙ローラから離間可能に構成され、給送された用紙が、搬送経路内にある搬送ローラ対のニップ部に進入してから、次用紙給紙を開始するまでの間、前記分離パッドフォルダは前記給紙ローラから離間している状態を保つことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
さらに、前記分離パッドフォルダまたは前記給送ガイドに設けられ、前記分離パッドが前記給紙ローラから離間した直後に、前記分離パッドフォルダを回転規制する回転規制手段と、
前記回転規制手段により、前記分離パッドフォルダの回転が規制された際、その位置にて前記分離パッドフォルダが停止する停止手段と、
を備え、
前記停止手段は、前記分離パッドフォルダが初期位置に戻る際には、前記分離パッドフォルダの回転規制が解除されることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記回転規制手段は、前記分離パッドフォルダの正回転方向および逆回転方向共に、回転を規制する第1回転規制爪、第2回転規制爪を有し、
前記分離パッドフォルダが前記駆動手段により回転し、前記分離パッドが前記給紙ローラから離間した直後に、前記第2回転規制爪が前記給送ガイドに衝突し、前記分離パッドフォルダの回転を規制し、
前記給紙ローラが前記分離パッドの直上位置から移動することで、前記分離パッドフォルダが、前記分離パッドスプリングから受ける付勢力により回転する際、回転直後に、前記第1回転規制爪によって前記分離パッドフォルダの回転規制を行うことを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記給送ガイドに、前記駆動手段と接続されるシャフトが組み付けられ、
一方を前記シャフトに嵌合し、他方を前記分離パッドフォルダに取り付けられる連結アームを有し、
前記連結アームの回転運動により、前記分離パッドフォルダも支軸を中心とした回転運動し、前記分離パッドフォルダが前記給紙ローラから離間する位置まで離間した後、離間した位置にて前記分離パッドフォルダのみが回転停止する機構が設けられていることを特徴とする請求項1、2または3に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記シャフトが回転すると前記連結アームも回転し、かつ前記連結アームに、回転方向に対して反対方向に負荷がかかっていた場合、前記シャフトが回転しても、前記連結アームは回転せず、定位置にて停止する機構であることを特徴とする請求項4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記分離パッドフォルダの支軸と前記シャフトの中心とが同一になるように、両部品が配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の給紙装置。
【請求項7】
前記連結アームを前記分離パッドフォルダから一つの手動操作で付け外し可能で、かつ、前記分離パッドフォルダを前記シャフトから一つの手動操作で付け外しが可能な付け外し手段を有することを特徴とする請求項4、5または6に記載の給紙装置。
【請求項8】
前記付け外し手段は、
前記連結アームの片側はフック形状をなし、このフック形状を前記分離パッドフォルダに設けられた凸部に引っ掛ける機構を有し、
前記シャフトに嵌合する前記分離パッドフォルダの穴がフック形状になっていることを特徴とする請求項7に記載の給紙装置。
【請求項9】
前記第1回転規制爪および第2回転規制爪と、前記給送ガイドとの間に弾性部材を設けたことを特徴とする請求項3〜8のいずれか一つに記載の給紙装置。
【請求項10】
前記弾性部材が吸音性の弾性部材であり、前記第1回転規制爪および第2回転規制爪に取り付けられていることを特徴とする請求項9に記載の給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−254422(P2010−254422A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106343(P2009−106343)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】