説明

給紙装置

【課題】用紙残量が少なくなっても、確実に空送りを防ぐ小型・低コストの給紙装置を得る。
【解決手段】給紙台1の上方に並べて設けた複数のベルト3の内側に吸引チャンバ5を設け、その下面の開口からエアを吸引して用紙をベルト3に吸着し、ベルト3を周回駆動して吸着した用紙を送り出す。給紙台1には、用紙持ち上げ部材40を設ける。用紙残量が少なくなると、用紙束Pは用紙持ち上げ部材40によって持ち上げられ、最上位の用紙がベルト3に近づけられる。この構成により、用紙束Pの減少にともなって用紙同士の間隔が開いても、空送りすることがなく給紙を継続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙台に積載された用紙束から、最上位の用紙1枚を分離して送り出す給紙装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給紙台に積載された用紙束の上方に、内部に負圧を形成する吸引チャンバと、その周囲を周回するベルトを設け、吸引チャンバの下面に設けた開口からエアを吸引することによってベルトの下面に最上位の用紙1枚を吸着し、さらにベルトを周回駆動してその1枚を給送する給紙装置は、摩擦分離方式に比べて用紙への負荷が小さいため、用紙の厚さ、紙質を問わず高速で給紙可能な装置として広く用いられている。
【0003】
このような給紙装置の一つである特許文献1記載の装置は、積載された用紙束の用紙搬送方向下流側の端面の上層部にエアを吹付けて用紙同士を分離する。用紙を積載する給紙台は上下動可能で、給紙台に積載された用紙束の上面が所定高さに達したことを検知する上面検知センサを有する。給紙が進行して用紙束上面高さが低くなると、上面検知センサに検知されるまで給紙台を上昇させることにより、用紙残量に関わらず用紙束の上面高さを一定の高さ位置に保つようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−226068号公報 ([0075]、図4、図20、図22等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1の装置では、用紙間にエアを送り込む厚さ方向の範囲において、用紙がほぼ均等に分散して浮揚する(図8(a)参照)。したがって、用紙残量が少なくなると、その分用紙同士の間隔が大きくなる(図8(b)参照)。このため、最上位の用紙が給紙されたあと、次位の用紙が所定高さに達するまでの厚さ方向の変位が大きくなる。したがって用紙が迅速確実にこの変位分だけ上昇できるように、吹き付けるエアのエア量や強さを大きくしなければならず、コスト高につながっていた。吹き付けるエアの量や強さを抑制すると、次位の用紙の上昇が間に合わず、空送りしてしまう。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、用紙残量が少なくなっても、確実に空送りを防ぐ小型・低コストの給紙装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の給紙装置は、用紙束を積載する給紙台と、この給紙台を上下方向に移動させる給紙台移動手段と、この給紙台に積載された用紙束の上面が所定高さに達したことを検知する上面検知手段(上面検知センサ)と、この上面検知手段の検知結果に応じて前記給紙台移動手段を制御して、用紙束上面の高さ位置を一定に保つ給紙台制御手段と、給紙台の上方に設けられ、積載された用紙束上面前方(下流側寄り)の所定域に対しエア吸引力を作用させて最上位の用紙を吸着するとともに、吸着された用紙を前方へと搬送する吸引搬送手段と、給紙台に積載された用紙束端面に吹付けるようにエア吐出するエア吐出口と、給紙台に積載されている用紙束が残り少なくなったときに、前記所定域のうちの少なくとも一部における用紙束上面高さ位置が、前記上面検知手段(上面検知センサ)で検知される箇所の上面高さ位置よりも高い位置になるように用紙束を持ち上げる持ち上げ手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、用紙束の残量が少なくなると、持ち上げ手段によって用紙束が持ち上げられる。その結果、用紙束上面のうち、吸引搬送手段に吸着される範囲のうち少なくとも一部が、上面検知手段で検知される部分よりも相対的に高い位置となる。したがって、用紙残量が少なくなり、浮揚している用紙と用紙の間隔が大きくなっても、次位の用紙と吸引搬送手段の吸着面との距離が小さくなっているので、その分吸着が容易になる。したがって、吹付けるエアが比較的弱くても、空送りを防ぐことができ、装置の小型化、低コスト化、省エネルギー化に貢献するというメリットがある。
【0009】
前記持ち上げ手段は、給紙台上面から突出する突出位置と、給紙台上面から突出しない埋没位置との間を移動可能に設けられるとともに突出位置に向かって付勢されており、用紙束の残量が多いときはその重量により埋没位置とされているように構成してもよい。この構成によれば、用紙残量に応じた持ち上げ手段の動作をごく簡単な機構によって実現できるというメリットがある。
【0010】
前記用紙持ち上げ手段は、用紙束を下方から支持する支持面を有し、この支持面は、前記埋没位置にあるときに給紙台上面と面一となるように構成してもよい。この構成によれば、用紙残量が多いうちは支持面が給紙台上面と同一平面上にあるので、給紙台上面と一体的に用紙束を安定して支持することができるというメリットがある。
【0011】
前記用紙持ち上げ手段は、前記突出位置にあるときに、給紙方向下流側に向かって登り勾配となる傾斜面を有するように構成してもよい。この構成によれば、吸引搬送手段に向かって登っていくように用紙束を持ち上げることができるので、簡単な構成で用紙の吸着をより確実にするというメリットがある。
【0012】
前記用紙持ち上げ手段は、前記所定域よりも給紙方向上流側に設けられるように構成してもよい。この構成によれば、給紙台の給紙方向下流側上方に配置された吸引搬送手段に向かうようにスムーズに用紙を持ち上げることができる。
【0013】
前記吸引搬送手段の吸引力を得るためのエア吸引源で吸引したエアを、前記エア吐出口に送り込むように、エア吸引源とエア吐出口とを連通させるエア通路を有するように構成してもよい。この構成によれば、吸引エアの吸引源と吐出エアの吐出源とを共用してコストを下げられるとともに、用紙吸着時に吸引チャンバの開口がふさがれることによって吐出エアが弱くなっても、用紙残量が少なくなると用紙を持ち上げることによって、空送りを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
したがって本発明は、用紙残量が少なくなっても、確実に空送りを防ぐ小型の給紙装置が低コストで得られるという効果が有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の給紙装置を示す正面図
【図2】図1の左側から見た側面図
【図3】図1におけるB−B断面図
【図4】給紙台1上面上に用紙束Pを積載した状態を示す図
【図5】給紙が進行し、用紙束Pが残り少なくなった場合を示す図
【図6】図5におけるC−C断面図
【図7】持ち上げ部材の別の例を示す図
【図8】従来例において、用紙間にエアを吹き込んだときの用紙の浮揚状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の給紙装置を示す正面図、図2は図1の左側から見た側面図である。本発明の給紙装置は用紙束Pから最上位の用紙1枚を分離して、矢印A方向(図2参照)に給送するものである。以下、矢印A方向を下流側(あるいは「前方」)、その反対方向を上流側という。
【0018】
1は給紙台であり、その上に用紙束Pを積載する。この給紙台1は図示しない駆動機構により、その上面を水平に保ったまま上下方向に移動可能である。この給紙台1の上方に、吸引ヘッドユニット2が設けられている。この吸引ヘッドユニット2は、互いに間隔をおいて給紙方向と直交する方向(以下、幅方向という)に4本並列して設けられたベルト3と、この4本のベルト3の内側に設けられた吸引チャンバ5と、この吸引チャンバ5の上方に設けられたファン6を有している。
【0019】
吸引チャンバ5は、図1における左右方向に長く形成された中空の直方体形状であり、ブラケット11に支持されている。このブラケット11は上側と幅方向の両側の辺を有するコの字型の板金で形成されおり、このコの字の内側で吸引チャンバ5を支持している。このブラケット11の上面にファン6が固定されている。ファン6は下側に吸引口を有し、この吸引口の位置に合わせてブラケット11及び吸引チャンバ5上面に開口が設けられていることによって、ファン6の吸引口と吸引チャンバ5の内部とが連通している。したがってファン6を駆動すると、吸引チャンバ5の内部のエアを吸引し、吸引チャンバ5の内部空間には負圧が形成される。さらに吸引チャンバ5の下面には、隣接するベルト3同士の中間部分において開口が設けられ、この開口からエアを吸引するようになっている。この吸引エアにより用紙束Pの最上位の用紙がベルト3の下面に吸着される。したがって、用紙束P上面前方(下流側寄り)の、この開口に対向した領域Vにエア吸引力が作用することになる。
【0020】
吸引チャンバ5の前後にプーリ7,8が設けられ、ベルト3はこのプーリ7,8の間にかけられている。プーリ7,8はそれぞれ軸9,10に固定支持されている。この軸9,10のいずれかに、図示しない駆動源から駆動力が与えられている。この駆動力によって、ベルト3はその下面が上流側から下流側へ移動するように周回駆動される。ベルト3はその下面に分離した用紙を吸着した状態で周回することによって、吸着した1枚を下流側へ送り出す。
【0021】
ファン6はさらに、図1における左側(以下「幅方向左側」という)に吐出口を有しており、この吐出口に連通してエア通路12が設けられている。このエア通路12はファン6から幅方向左側に伸びて、ブラケット11の幅方向左側で下方に方向を変え、さらにブラケット11の下面側で図1における右側(以下「幅方向右側」という)に方向を変えて、側端ガイド13に形成されたエア吐出穴13aに連通している。
【0022】
側端ガイド13は給紙台1の幅方向左側に設けられている。また、給紙台1の下流側には前端ガイド14が設けられている。用紙束Pは、その幅方向左側端面を側端ガイド13に、下流側端面を前端ガイド14にそれぞれ突き当たるように、給紙台1上に積載される。なお図2ではエア通路12および側端ガイド13は図示省略し、エア吐出穴13aの位置のみを一点鎖線で図示した。ファン6から吐き出されたエアは、エア通路12を通じて、エア吐出穴13aから吐出する。吐出されたエアは用紙束の下流側端部の用紙間に送り込まれるので、用紙束が捌かれる。なお、エア吐出口は用紙束の下流側端面に向かって吹付けるように配置してもよい。また、本実施形態ではファン6は用紙吸引のための吸引源と用紙束を捌くためのエア吐出源とを兼ねているが、各々別のファンが設けられていても良い。
【0023】
吸引ヘッドユニット2の上流側には、レベルセンサ15が設けられている。このレベルセンサ15は、レバー16と、レバー16を回動自在に支持する支持軸17と、光学センサ18と、支持ブラケット19とで構成される。用紙束Pを積載した給紙台1が上昇すると、用紙束Pの上面がこのレバー16の下端に当接し、レバー16を押し上げる。レバー16は支持軸17を中心に時計方向に回動する。この回動によりレバー16が光学センサ18の光軸をふさぐと、給紙台1の上昇が停止することによって、用紙束Pの上面は一定の位置に保たれる。
【0024】
前端ガイド14は用紙束Pの前端をガイドする前端ガイド部14aと、前端ガイド部14aの上端から下流側に曲げられた部分であって、給送される用紙の下面をガイドする下面ガイド部14bを有する。この下面ガイド14bの曲げ線に近い位置に、開口14c、14dが設けられている。開口14c、14dは互いに同形状で幅方向に離間して形成され、それぞれ幅方向に細長く形成されている。
【0025】
この開口14c、14dに挿通されて、それぞれ第1分離部材20、第2分離部材30が設けられている。
【0026】
第1分離部材20は、図1における左側から2本目のベルト3と、左側から3本目のベルト3との間に形成され、上下方向に長く、隣り合うベルト3同士の中間部分に収容できる幅を有する板状の部材である。第2分離部材30は、図1における最も左側のベルト3に、上端が接触するように設けられている。
【0027】
図2に示すように、第2分離部材30は、下方の支持部材31に貼付またはビス止めによって固定支持されている。支持部材31の下方にはラック32が形成され、ピニオンギヤ33と噛み合っている。このピニオンギヤ33の軸(図示せず)をユーザが回転操作するか、あるいはモータ等(図示せず)で駆動回転することによって、第1分離部材30の高さを調整可能とすることができる。また、図1には現れていないが、第1分離部材20も同様の構成によって高さ調整が可能である。
【0028】
用紙束Pの最上位の用紙がベルト3下面に吸着される際に、通常は最上位の1枚のみが吸着される。しかし、吸引エアが強すぎたり、重ねると互いに密着しやすい紙質であったり、静電気が発生しやすい環境であったりする場合など、2枚以上の用紙が吸着されることがあり、そのままベルト3を周回させると、1度に2枚以上の用紙を送り出す重送が発生することになる。しかしこの送り出しの際に、第1分離部材20、及び第2分離部材30によって次位の用紙P2の前進を阻止するので、最上位の用紙P1のみを送り出すことができる。第1、第2分離部材20、30の材質は、ウレタンゴムや人工織布のような弾性材料が良い。
【0029】
吸引ヘッドユニット2よりも上流側の、給紙台1の上面から突出するように、用紙持ち上げ部材40が設けられている。用紙持ち上げ部材は略直方体状の部材であって、その上面に支持面40aが形成されている。
【0030】
図3は図1におけるB−B断面図である。図3に示すように、用紙持ち上げ部材40は給紙台1に支持された軸41を支点として回動可能である。用紙持ち上げ部材40の上流側端部には、バネ掛け部40bが形成され、このバネ掛け部40bにはまるように、バネ42が入れられている。このバネ42により、持ち上げ部材40は図3における右回りに回動する方向に付勢されている。さらに給紙台1にはアングル43が固定されている。このアングル43は2つの曲げ部を有し、一端部43aが給紙台1の下面に溶接等で固定されている。そして他端部43bには、バネ42で押し下げられた持ち上げ部材40の上流側下端40cが当接するようになっている。
【0031】
したがって、支持面40aに何ら力が加わっていない間は、バネ42によって持ち上げ部材40の上流側下端40cを押し下げてアングル43の他端部43bに当接させ、持ち上げ部材の下流側端部40dが給紙台1の上面から突出した突出位置で静止するようになっている。この突出位置においては、支持面40aは、下流側に向かって、すなわち領域V側に向かって登り勾配となっている。
【0032】
支持面40aに上方から押し下げる力が働いた場合、押し上げ部材40はバネ42の付勢に抗して軸41を中心よして図3における反時計方向に回動する。支持面aを押し下げる力が一定以上になると、押し上げ部材40は図3において一点鎖線で示す埋没位置となる。この埋没位置においては、支持面40aは、給紙台1の上面1aに対し面一になっている。
【0033】
この本発明の給紙装置の動作を説明する。まず用紙束Pを給紙台1上に積載する。図4はこの給紙台1上面上に用紙束Pを積載した状態を示す。図4においては、用紙束Pの重量で押し上げ部材40の支持面40aが押し下げられて、押し上げ部材40は埋没位置になっている。したがって、支持面40aと給紙台1の上面1aとが面一になって用紙積載面を形成しているので、用紙束Pは全体として水平に載置されている。
【0034】
次に装置をスタートさせると、図示しない駆動源が動作して給紙台1が上昇する。用紙束Pの上面がレベルセンサ15のレバー16を押し上げ、このレバー16が光学センサ18で検知されると給紙台1が上昇停止する。次にファン6が作動し、エア通路12を通じてエア吐出口13aからエアを吹出して、用紙束Pの用紙間にエアを送り込み、用紙束Pの下流側端部を浮揚させて捌く。同時に、吸引ヘッドユニット2の下面におけるベルト3とベルト3の中間部分で吸引チャンバ5下面に形成された開口部を通じてエアを吸引し、用紙束Pのうち最上位の1枚をベルト3下面に吸着する。
【0035】
次にベルト3を周回駆動させ、吸着されている1枚を下流側へ送り出す。このとき、第1、第2分離部材20,30が2枚目の用紙P2が送り出されるのを阻止する。送り出された用紙がその下流側の搬送ローラ等(図示せず)に把持されると、ベルト3の周回駆動は停止する。送り出された用紙は搬送ローラ等によってさらに下流側へ搬送されるとともに、次の用紙がベルト3の下面に吸着され、適宜のタイミングで再びベルト3が周回駆動して次の用紙が送り出される。こうして用紙束Pの用紙を1枚ずつ連続的に送り出す。
【0036】
このように繰り返し給紙を継続し、用紙束Pの上面レベルが下がると、レバー16の先端が下降して光学センサ18の検知範囲外に移動する。すると、レバー16が再度光学センサ18で検知されるまで給紙台1を上昇させる。この動作によって用紙束Pの最上面の高さを一定位置に保つ。
【0037】
こうして給紙を繰り返すと、用紙束Pの枚数が減少する。図5は給紙が進行し、用紙束Pが残り少なくなった場合を示す図、図6はそのC−C断面図である。用紙束Pが残り少なくなると、用紙束Pの重量が減少し、持ち上げ部材40の支持面40aを押し下げる力が弱くなる。給紙が進行して用紙束Pが減少するにつれて、支持面40aを押し下げる力は徐々に弱くなり、バネ42の付勢力が打ち勝って、埋没位置から徐々に突出位置に向かって持ち上げ部材40が回動する。支持面40aは徐々に給紙台1の上面1aから突出し、用紙束Pを持ち上げる。用紙束Pが所定量よりも少なくなると、図5,6に示すように持ち上げ部材40は完全に突出位置となる。図6に示すように、用紙束Pは支持面40a上においては支持面40aの勾配に従い、下流側の領域Vに向かって登り勾配となるように持ち上げられる。
【0038】
この結果、領域Vにおける用紙束P上面の最も高い位置の高さ位置h1が、レベルセンサ15(上面検知手段)で検知される位置の用紙束P上面の高さ位置h2よりも、高い位置になる。用紙束Pの残量が多い場合は、用紙束Pが水平に支持されているので、レベルセンサ15で検知される用紙束Pの上面高さ位置h3と、領域Vにおける用紙束Pの上面高さ位置h4とが一致している(図4参照)。用紙持ち上げ部材40が設けられていない従来の給紙装置は、用紙束が残り少なくなっても、この高さ位置h3とh4とが一致した状態を保ったまま給紙台を上昇させる。
【0039】
これに対し本発明の給紙装置では、用紙束が残り少なくなると、用紙持ち上げ部材40が用紙束Pを持ち上げる結果、用紙束Pの上面におけるエアの吸引力が作用する領域Vのうち、最も高い部分の高さ位置h1の方が、レベルセンサ15で検知される位置の用紙束P上面の高さ位置h2よりも高くなっている。給紙台1はレベルセンサ15で検知される位置の上面高さに応じて上昇するから、少なくとも領域Vのうち最も高い部分は、従来技術よりも吸引ヘッドユニット2の吸引用開口に近づいた位置に保たれている。したがって、用紙束が残り少なくなって、用紙同士の間隔が開いても、問題なく吸着することができるので、空送りが発生しない。
【0040】
本実施形態において、用紙持ち上げ部材40は、領域Vに向けて登り勾配とすることによって、回動機構という簡単な構成と動作で用紙持ち上げ部材40を埋没及び突出可能にするほか、吸引搬送手段に向かって登っていくように用紙束を持ち上げる。したがって、小さな持ち上げ部材であっても、効率よく吸着しやすい形に用紙束を持ち上げることができる。
【0041】
しかし本発明は勿論この実施形態に限られることはなく、用紙持ち上げ部材40は、用紙束Pが残り少なくなったときに、領域Vのうち少なくとも一部における用紙束Pの上面高さ位置が、レベルセンサ15で検知される部分の上面高さ位置よりも高くなるように用紙束を持ち上げるのであれば、給紙台1のどの位置にどのような形状で突出していても良い。
【0042】
図7に持ち上げ部材の別の例を示す。図7(a)に示す給紙装置は、持ち上げ部材40に代えて、持ち上げ部材50を有する。持ち上げ部材50は、吸引ヘッドユニット2の真下に円筒状の突起51を有する。
【0043】
図7(b)、(c)はこの持ち上げ部材50の詳細を示す図であって、図7(a)におけるD−D断面図である。持ち上げ部材50は用紙束を持ち上げる円筒部材51を有する。円筒形部材51は給紙台1の開口1bを通してその上面に飛び出す突起部51aと、給紙台1の下方に形成されているフランジ部51bと、フランジ部51bよりも小径で下方に続くバネ受け部51cとを有する。給紙台1の下面には、この円筒部材51を支持するためのアングル52が固定され、このアングル52のバネ受け面52aに開口52bが形成されている。バネ受け部51cはこの開口52bを通して下方に突出している。そしてアングル52のバネ受け面52aとフランジ部51bとの間に、バネ受け部51cに巻きつくようにバネ53が設けられている。
【0044】
この構成によって、用紙残量が少ない場合は図7(b)に示すように、突起部51aが給紙台1の上面から突出して用紙束を持ち上げ、用紙残量が多い場合は図7(c)に示すように、バネ53を圧縮して突起部51aが下降し、突起部51aの上面と給紙台1の上面が同一平面となる。したがってこの図7の構成も、本発明を実施するための形態の一例である。
【0045】
図1乃至図6に示す装置は、用紙束Pを側端ガイド13に突き当てて載置する片側基準の装置であるので、用紙持ち上げ部材40は小サイズ紙でも持ち上げられるように給紙台1の幅方向の中央よりも側端ガイド13寄りに配置されているが、センター基準の給紙装置であれば、センターあるいはセンターに近い位置に配置するのが望ましい。
【0046】
しかしいずれの場合においても用紙持ち上げ部材40は、レベルセンサ15で検知される部分(レバー16が接触する部分)の真下を避けて配置する必要がある。レベルセンサ15の真下に用紙持ち上げ部材を配置すると、レベルセンサ15で検知される部分の用紙束上面が最も高くなってしまうからである。
【符号の説明】
【0047】
1;給紙台、2;吸引ヘッドユニット、15;レベルセンサ、16;レバー、18;センサ、40・50;持ち上げ部材、40a;支持面、42・53;バネ、h1・h2・h3・h4;高さ位置、P;用紙束、V;領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙束を積載する給紙台と、
この給紙台を上下方向に移動させる給紙台移動手段と、
この給紙台に積載された用紙束の上面が所定高さに達したことを検知する上面検知手段と、
この上面検知手段の検知結果に応じて前記給紙台移動手段を制御して、用紙束上面の高さ位置を一定に保つ給紙台制御手段と、
給紙台の上方に設けられ、積載された用紙束上面前方の所定域に対しエア吸引力を作用させて最上位の用紙を吸着するとともに、吸着された用紙を前方へと搬送する吸引搬送手段と、
給紙台に積載された用紙束端面に吹付けるようにエア吐出するエア吐出口と、
給紙台に積載されている用紙束が残り少なくなったときに、前記所定域のうちの少なくとも一部における用紙束上面高さ位置が、前記上面検知手段で検知される箇所の上面高さ位置よりも高い位置になるように用紙束を持ち上げる持ち上げ手段と、
を有することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記持ち上げ手段は、給紙台上面から突出する突出位置と、給紙台上面から突出しない埋没位置との間を移動可能に設けられるとともに突出位置に向かって付勢されており、用紙束の残量が多いときはその重量により埋没位置とされることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記用紙持ち上げ手段は、用紙束を下方から支持する支持面を有し、この支持面は、前記埋没位置にあるときに給紙台上面と面一となることを特徴とする請求項2記載の給紙装置。
【請求項4】
前記用紙持ち上げ手段は、前記突出位置にあるときに、給紙方向下流側に向かって登り勾配となる傾斜面を有することを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の給紙装置。
【請求項5】
前記用紙持ち上げ手段は、前記所定域よりも給紙方向上流側に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の給紙装置。
【請求項6】
前記吸引搬送手段の吸引力を得るためのエア吸引源で吸引したエアを、前記エア吐出口に送り込むように、エア吸引源とエア吐出口とを連通させるエア通路を有することを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−213478(P2011−213478A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86002(P2010−86002)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000109727)株式会社デュプロ (195)
【Fターム(参考)】