説明

絶対値レゾルバのバツクアツプ方法および装置

【構成】 1相の励磁コイル11を設けた回転子と90°位相の異なる2相の検出コイル12を設けた固定子とを備えたレゾルバ1と、前記励磁コイル12の励磁回路2とを含むバックアップ領域に常時、主直流電源8により電力を給電し、かつ、前記直流電源8と並列にバックアップ電池9を設け、前記励磁回路2によりパルス波を発生して前記励磁コイル11を励磁し、前記2相出力の検出コイル12に接続された前記励磁回路2と同期してサンプルするサンプルホールド回路3により検出信号をホールドすることにより、90°位相の異なる二つの正弦波信号を得るようにしたものである。
【効果】励磁をパルス波で行うため、励磁による損失が従来の正弦波励磁に比較して非常に小さく、バックアップ領域の消費電力が小さくなり、通常のレゾルバの場合、主直流電源に並列に設けた数個の乾電池で十分バックアップが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、絶対位置を検出するレゾルバに関し、とくに停電時におけるバックアップ方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アクチュエータにレゾルバを結合してアクチュエータの絶対位置を検出する場合、停電時においてもレゾルバによって絶対位置を得る方法がある。その第1の例として、図5に示すように、レゾルバRとそれに付随する励磁回路L、R/DコンバータC、コンパレータP、回転量記憶回路Mなどをすべてバックアップ用電池Bにより動作させてバックアップしておき、常に回転量を記憶しておく方法がある。第2の例として、図6に示すように、励磁回路L、同期整流回路S、回転量記憶回路Mをバックアップしておき、停電時にはレゾルバRの信号を同期整流して記憶しておき、起動時にR/DコンバータCの信号と組み合わせて絶対値を得る方法がある。また、第3の例として、図7に示すように、レゾルバRとは別の回転検出器Kと波形整形回路Hとを設け、その回転検出器Kをバックアップして停電時の回転方向と回転量を記憶しておき、起動時に上記第2の例と同じ方法で絶対値を得る方法がある。また、第4の例として、2相励磁1相出力のレゾルバにおいて、通電時は正弦波励磁を行い、停電時はパルス波励磁を行い、励磁パルスと検出パルスの時間的タイミングからレゾルバの回転方向と回転量を得る方法がある(例えば特開昭63−214617号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、第1や第2の例ではR/Dコンバータや励磁回路で発生するロスが非常に大きく、バックアップに必要な電池に大きな容量を必要とするため、電池に占めるスペースが大きくなったり、頻繁に電池を交換しなければならないなどの欠点があった。また、第3の例では内部抵抗の大きい磁気抵抗効果素子などを使用すると消費電力の問題は生じないが、機構が大きくなることや、モータの温度上昇が検出素子の使用温度によって制限されるなどの欠点があった。また、第4の例では、通電時と停電時とにそれぞれ正弦波発生器とパルス発生器という異なった波形を発生する二つの励磁回路が必要となるため、コントローラの機構が大きくなることや、励磁回路の切替時に信号が正弦波から矩形波に変化するため、検出誤差が生じ易い。そのため、位置決め精度を低下させる欠点がある。本発明は、通電時も停電時も一つの励磁回路で動作させ、バックアップ回路の消費電力を著しく小さく抑えることのできるレゾルバを提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、1相の励磁コイルを設けた回転子と90°位相の異なる2相の検出コイルを設けた固定子とを備えたレゾルバと、前記励磁コイルの励磁回路とを含むバックアップ領域をバックアップ電池により電力を供給するレゾルバのバックアップ方法および装置において、前記バックアップ領域に常時給電し、前記励磁回路によりパルス波を発生して前記励磁コイルを励磁し、前記2相出力の検出コイルに接続された前記励磁回路と同期してサンプルするサンプルホールド回路により検出信号をホールドすることにより、90°位相の異なる二つの正弦波信号を得るもので、とくに、前記バックアップ電池を、前記バックアップ領域に直流電圧を加える主直流電源と並列に設けたものである。また、前記サンプルホールド回路にコンパレータを接続し、前記コンパレータの出力を回転量記憶回路によりカウントして記憶するようにしたものである。また、前記励磁回路により多相の励磁パルスを発生させ、複数の前記レゾルバのそれぞれの前記励磁コイルをそれぞれ位相の異なる励磁パルスにより励磁するものである。
【0005】
【作用】バックアップ領域にあるレゾルバの励磁コイルを励磁回路によりパルス波励磁しているので、通常の正弦波によって励磁する場合に比べて消費電力が非常に小さく、バックアップ電池の寿命を著しく長くすることができる。また、パルス波励磁の周波数をレゾルバの回転子の速さに応じて変化させ、更に励磁回路と同期したサンプルホールド回路により検出信号をホールドするようにしてあるので、常に回転角を示す2つの正弦波が得られる。また、複数のレゾルバを励磁する場合、励磁回路により多相パルス励磁を行い、それぞれの励磁コイルがそれぞれ位相の異なるパルスを取り出して励磁するので、バックアップ電池の電圧変動を小さくすることができ、その寿命を長くすることができる。
【0006】
【実施例】本発明を図に示す実施例について説明する。図1は本発明の実施例を示すブロック図で、レゾルバ1は被検出回転軸に固定され、1相の励磁コイル11を設けた回転子と、90°位相の異なる2相の検出コイル12a,12bを設けた固定子とを備えている。励磁コイル11は図2(a)に示すように、励磁パルスVi を所定のタイミングで発生する励磁回路2によってパルス励磁されるようにしてある。検出コイル12a,12bには励磁回路2と同期して出力するサンプルホールド回路3が接続され、回転子がn回転することにより励磁コイル11に発生する正弦波励磁されたn相のレゾルバ信号を、図2(b)に示すような、同期整流した後の信号と同じ機械角2πでn個の山をもつ90°位相の異なる正弦波信号V0a,V0bとして得るようにしてある。サンプルホールド回路3にはコンパレータ4が接続され、正弦波信号V0a,V0b。に対応する図2(c)に示すような矩形波の位置のA,B相信号Va ,Vbを出力し、コンパレータ4に接続された回転量記憶回路5に回転信号Nとして記憶される。また、サンプルホールド回路3にはレゾルバ/デジタル(R/D)コンバータ6が接続され、サンプルホールド回路3の出力である正弦波信号V0a,V0bをデジタル信号に変換して回転角θを出力する。回転量記憶回路5の回転量信号NとR/Dコンバータ6の出力である回転角θとがコントローラ7に入力され、レゾルバ1の絶対値信号が得られる。R/Dコンバータ6およびコントローラ7には±5V、または±12Vの直流電圧を加える主直流電源8の+側を接続線81により接続し、−側を接続線82により接続してある。また、励磁回路2、サンプルホールド回路3、コンパレータ4、回転量記憶回路5よりなるバックアップ領域Aには主直流電源8を、+側にダイオード83を介して接続線84により接続し、−側にダイオード85を介して接続線86により接続して電力を供給しているさらに、主直流電源8に並列にバックアップ電池9を設け、バックアップ電池9の+側をダイオード91を介して接続線84に接続し、−側をダイオード92を介して接続線86に接続してある。したがって、通常は主直流電源8によりR/Dコンバータ6、コントローラ7および励磁回路2、サンプルホールド回路3、コンパレータ4、回転量記憶回路5よりなるバックアップ領域Aに直流電圧を加えているが、停電時に主直流電源8がシャットダウンもしくは電圧低下を起こした時、バックアップ電池8によってバックアップ領域Aに直流電圧が加えられ、バックアップがなされる。
【0007】ここで、バックアップ領域A用バックアップ電池8の寿命は励磁回路2の消費電力によってほぼ決められる。しかし、この場合、励磁回路2をパルス波によって励磁しているので、従来の正弦波励磁に比べて消費電力が非常に小さい。例えば、正弦波励磁の場合、図3R>3(a)に示すような電圧および電流波形となり、パルス波励磁で5%デューテイの場合、図6(b)に示すような電圧および電流波形となる。励磁電圧を6V、検出電圧を1Vとしたとき、正弦波励磁の検出電流は20mA、消費電力は252mWであるのに対し、パルス波励磁の検出電流は5mA、消費電力は4.5mWであり、パルス波励磁の消費電力は正弦波励磁の場合の約50分の1であった。したがって、励磁回路をパルス波によって励磁することにより、バックアップ電池の寿命を著しく長くすることができる。また、図4に示すように、複数のレゾルバ1を一つのバックアップ電池8によってバックアップする場合、励磁回路2に励磁パルスの発生を多相のパルス発生器を使用することにより多相パルス励磁を行い、それぞれの励磁コイル11がそれぞれ位相の異なるパルスを取り出して励磁するので、電源の電圧変動を小さく抑えることができ、電源としているバックアップ電池8の寿命を長くすることができる。
【0008】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次のような効果がある。
(1)励磁をパルス波で行うため、励磁による損失が従来の正弦波励磁に比較して非常に小さく、バックアップ領域の消費電力が小さくなり、通常のレゾルバの場合、主直流電源に並列に設けた数個の乾電池で十分バックアップが可能となる。
(2)パルス波励磁の周波数を回転軸の速さに応じて変化させることにより、常に安定した二つの正弦波がサンプルホールド回路により得られるため、安定した位置決め精度が得られる。
(3)複数のレゾルバを励磁する場合、励磁回路により多相パルス励磁を行い、それぞれの励磁コイルがそれぞれ位相の異なるパルスを取り出して励磁するので、バックアップ電池の電圧変動を小さくすることができ、電池寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】励磁パルス、A,B相正弦波信号の説明図である。
【図3】正弦波励磁とパルス波励磁との比較説明図である。
【図4】他の実施例を示すブロック図である。
【図5】従来例を示すブロック図である。
【図6】従来例を示すブロック図である。
【図7】従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 レゾルバ 2 励磁回路
3 サンプルホールド回路 4 コンパレータ
5 回転量記憶回路 6 R/Dコンバータ
7 コントローラ 8 主直流電源
9 バックアップ電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】 1相の励磁コイルを設けた回転子と90°位相の異なる2相の検出コイルを設けた固定子とを備えたレゾルバと、前記励磁コイルの励磁回路とを含むバックアップ領域をバックアップ電池により電力を供給するレゾルバのバックアップ方法において、前記バックアップ領域に常時給電し、前記励磁回路によりパルス波を発生して前記励磁コイルを励磁し、前記2相出力の検出コイルに接続された前記励磁回路と同期してサンプルするサンプルホールド回路により検出信号をホールドすることにより、90°位相の異なる二つの正弦波信号を得ることを特徴とする絶対値レゾルバのバックアップ方法。
【請求項2】 前記サンプルホールド回路にコンパレータを接続し、前記コンパレータの出力を回転量記憶回路によりカウントして記憶するようにした請求項1記載の絶対値レゾルバのバックアップ方法。
【請求項3】 前記励磁回路により多相の励磁パルスを発生させ、複数の前記レゾルバのそれぞれの前記励磁コイルをそれぞれ位相の異なる励磁パルスにより励磁する請求項1または2記載の絶対値レゾルバのバックアップ方法。
【請求項4】 1相の励磁コイルを設けた回転子と90°位相の異なる2相の検出コイルを設けた固定子とを備えたレゾルバと、前記励磁コイルの励磁回路を含むバックアップ領域をバックアップするバックアップ電池を備えたレゾルバのバックアップ装置において、1相のパルス波を発生する前記励磁回路と、前記2相の検出コイルに接続され、前記励磁回路と同期してサンプルし、前記検出コイルの検出信号をホールドして90°位相の異なる二つの正弦波信号を出力するサンプルホールド回路とを備えたことを特徴とする絶対値レゾルバのバックアップ装置。
【請求項5】 前記バックアップ電池を、前記バックアップ領域に直流電圧を加える主直流電源と並列に設けた請求項4記載の絶対値レゾルバのバックアップ装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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