説明

絶縁ブロック

【課題】形状が簡単で低コストであり、なおかつ、鉄道分岐器への設置も容易な絶縁ブロックを提供する。
【解決手段】絶縁ブロック22は、基部22aが床板16の垂直部16aに隣接してまくらぎ14に密着した状態で、基部22aから床板16の水平部16bの厚みよりも高い位置にまで立ち上がる仕切り部22bによって、床板16の垂直部16aと水平部16bとの寸法差分を埋めるものである。従って、釘や針金等の導電性の部品が絶縁板18を避けるような状態で、左右の床板16、16の水平部16b、16b間を短絡するように、床板上に載ることを防ぐ衝立として機能することで、左右の床板16、16の短絡を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁板を挟持する垂直部と該垂直部に比して幅広に形成されまくらぎに密着する水平部とを備える形態の、分岐器の左右一対の床板の、絶縁ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5(a)に示されるように、鉄道分岐器10を構成するレール12(基本レール12A、トングレール12B等)は、まくらぎ14に固定された床板16によって保持されている。そしてレール12と床板16との間は絶縁されていないことから、信号等を制御する微弱な電流に影響を及ぼすことのないように、床板16を二分割して左右一対の床板を絶縁している。
又、一部の床板16については、図5(b)、(c)に示されるように、床板16は絶縁板18(図1参照)を挟持する垂直部16aと、垂直部16aに比して幅広に形成されまくらぎ14に密着する水平部16bとを備えており、三枚の絶縁板18A、18B、18Cを介して左右一対の床板16、16をボルト20で締結することで(図1参照)、左右一対の床板16、16間の絶縁性を確保している(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−269901号公報
【特許文献2】特開2002−38403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、床板16は水平部16bに対して垂直部16aの幅が狭いことから、垂直部16aを避けて、左右の床板16、16の水平部間を短絡するように釘や針金等の導電性の部品が載ると、左右の床板16、16の絶縁が保たれなくなってしまう。かかる問題に対応するため、上記特許文献1、2に示されるカバーが実用化されているが、何れも形状が複雑でコスト高であり、又、鉄道分岐器10への設置作業も困難であるといった欠点を有するものであった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、形状が簡単で低コストであり、なおかつ、鉄道分岐器への設置も容易な絶縁ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。又、各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。よって、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)絶縁板を挟持する垂直部と該垂直部に比して幅広に形成されまくらぎに密着する水平部とを備える形態の、分岐器の左右一対の床板の、絶縁ブロックにおいて、前記床板の垂直部に隣接して前記まくらぎに密着する基部と、該基部から前記床板の水平部の厚みよりも高い位置まで立ち上がる仕切り部とを備える絶縁ブロック(請求項1)。
本項に記載の絶縁ブロックは、基部が床板の垂直部に隣接してまくらぎに密着した状態で、基部から床板の水平部の厚みよりも高い位置にまで立ち上がる仕切り部によって、床板の垂直部と水平部との寸法差分を埋めるものである。そして、釘や針金等の導電性の部品が絶縁板を避けるような状態で、左右の床板の水平部間を短絡するように、床板上に載ることを回避するものである。従って、仕切り部の高さは、上記機能を発揮し得る必要最低限の高さが確保されていれば良い。
なお、本絶縁ブロックは、基部をまくらぎに密着させて釘等によってまくらぎに固定することで、鉄道分岐器に適切に設置されるものである。
【0007】
(2)上記(1)項において、前記仕切り部は、少なくとも前記基部の外形に沿って立設された壁を含む絶縁ブロック(請求項2)。
本項に記載の絶縁ブロックは、仕切り部が、少なくとも前記基部の外形に沿って立設された壁を含み、この壁が基部から床板の水平部の厚みよりも高い位置にまで立ち上がっていることから、床板の垂直部と水平部との寸法差分を埋め、釘や針金等の導電性の部品が絶縁板を避けるような状態で、左右の床板の水平部間を短絡するように、床板上に載ることを回避するものである。
【0008】
(3)上記(2)項において、前記仕切り部は、前記基部と同一の平面投影形状を有している絶縁ブロック(請求項3)。
本項に記載の絶縁ブロックは、仕切り部は基部と同一の平面投影形状を有して、この壁が基部から床板の水平部の厚みよりも高い位置にまで立ち上がっていることから、床板の垂直部と水平部との寸法差分を埋め、釘や針金等の導電性の部品が絶縁板を避けるような状態で、左右の床板の水平部間を短絡するように、床板上に載ることを回避するものである。
【0009】
(4)上記(1)項において、仕切り部は、前記床板の垂直部と平行に立設された壁である絶縁ブロック(請求項4)。
本項に記載の絶縁ブロックは、仕切り部は、前記床板の垂直部と平行に立設された壁であり、この壁が基部から床板の水平部の厚みよりも高い位置にまで立ち上がっていることから、床板の垂直部と水平部との寸法差分を埋め、釘や針金等の導電性の部品が絶縁板を避けるような状態で、左右の床板の水平部間を短絡するように、床板上に載ることを回避するものである。
【0010】
(5)上記(4)項において、前記仕切り部は、前記基部の中間部又は一端部に立設されている絶縁ブロック(請求項5)。
本項に記載の絶縁ブロックは、仕切り部が、床板の垂直部と平行に立設された壁であって、基部の中間部又は一端部に立設されて、床板の水平部の厚みよりも高い位置にまで立ち上がっていることから、床板の垂直部と水平部との寸法差分を埋め、釘や針金等の導電性の部品が絶縁板を避けるような状態で、左右の床板の水平部間を短絡するように、床板上に載ることを回避するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明はこのように構成したので、形状が簡単で低コストであり、なおかつ、鉄道分岐器への設置も容易な絶縁ブロックを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る絶縁ブロックが設置された、鉄道分岐器の床板を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る別形状の絶縁ブロックが設置された、鉄道分岐器の床板を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る別形状の絶縁ブロックが設置された、鉄道分岐器の床板を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る別形状の絶縁ブロックが設置された、鉄道分岐器の床板を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図5】(a)は鉄道分岐器の平面図、(b)は鉄道分岐器を構成する左右一対の床板の平面図、(c)は(b)に示される左右一対の床板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る絶縁ブロックは、図1から図4に例示されるように、絶縁板を挟持する垂直部16aと、垂直部16aに比して幅広に形成されまくらぎ14に密着する水平部16bとを備える形態の、分岐器の左右一対の床板16、16間の、絶縁性をより確実なものとするためのものである。そして、図1から図4に示された各絶縁ブロック22、24、26、28は、床板16、16の垂直部16a、16aに隣接してまくらぎ14に密着する基部22a、24a、26a、28aと、基部22aから床板16の水平部16bの厚みよりも高い位置まで立ち上がる仕切り部22b、24b、26b、28bとを備え、いずれも絶縁ゴムで一体成形されたものである。
【0015】
より具体的には、図1に示される絶縁ブロック22は、基部22aが床板16、16の端面に沿った平板状に形成され、仕切り部22bは基部22aの外形の三辺に沿って壁状に立設されている。そして、基部22aをまくらぎ14に密着させ、コンクリート釘30によって基部22aをまくらぎ14に固定するものである。又、コンクリート釘30に替えて(若しくは併用して)、木ねじや接着剤による固定を行うこととしても良い(以下、図2〜図4の例も同様)。
一方、図2に示される絶縁ブロック24は、図1の基部22aと同一の平面投影形状を有する基部24aから、仕切り部24bが基部24aと同一の平面投影形状を有して、床板16の水平部16bの厚みよりも高い位置まで立ち上がっているものである。すなわち、基部24aと仕切り部24bとが連続形状をなしている。この場合には、基部24aをまくらぎ14に密着させ、コンクリート釘30を仕切り部24b、基部24aに貫通させて、まくらぎ14に固定するものである。
【0016】
又、図3、図4に示される絶縁ブロック26、28は、基部26a、28aが矩形の平板状に形成され、仕切り部26b、28bは床板16の垂直部16aと平行に立設された壁となっている。そして、図3の絶縁ブロック26は、仕切り部26bが基部26aの中間部(図示の例では中央部)に立設され、図4の絶縁ブロック28は、仕切り部28bが基部28aの一端部に立設されているものである。そして、図3、図4の例においても、基部26a、28aをまくらぎ14に密着させ、コンクリート釘30によって基部26a、28aをまくらぎ14に固定するものである。
なお、上記のごとき形状の相違から、図2の絶縁ブロック24は成型用金型の形状が最も単純となる。一方、図1、図3、図4の絶縁ブロック22、26、28は、絶縁ゴムの使用量が少なくて済み、なおかつ、コンクリート釘30がより短いものでも、まくらぎ14に対し確実に固定することが可能である。
【0017】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る絶縁ブロック22、24、26、28は、基部22a、24a、26a、28aが床板16の垂直部16aに隣接してまくらぎ14に密着した状態で、基部22a、24a、26a、28aから床板16の水平部16bの厚みよりも高い位置にまで立ち上がる仕切り部22b、24b、26b、28bによって、床板16の垂直部16aと水平部16bとの寸法差分を埋めるものである。従って、釘や針金等の導電性の部品が絶縁板18を避けるような状態で、左右の床板16、16の水平部16b、16b間を短絡するように、床板上に載ることを防ぐ衝立として機能することで、左右の床板16、16の短絡を回避することができる。
【符号の説明】
【0018】
10:鉄道分岐器、14:まくらぎ、16:床板、 18、18A、18B、18C:絶縁板、 22、24、26、28:絶縁ブロック、 22a、24a、26a、28a:基部、 22b、24b、26b、28b:仕切り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁板を挟持する垂直部と該垂直部に比して幅広に形成されまくらぎに密着する水平部とを備える形態の、分岐器の左右一対の床板の、絶縁ブロックにおいて、
前記床板の垂直部に隣接して前記まくらぎに密着する基部と、該基部から前記床板の水平部の厚みよりも高い位置まで立ち上がる仕切り部とを備えることを特徴とする絶縁ブロック。
【請求項2】
前記仕切り部は、少なくとも前記基部の外形に沿って立設された壁を含むことを特徴とする請求項1記載の絶縁ブロック。
【請求項3】
前記仕切り部は、前記基部と同一の平面投影形状を有していることを特徴とする請求項2記載の絶縁ブロック。
【請求項4】
前記仕切り部は、前記床板の垂直部と平行に立設された壁であることを特徴とする請求項1記載の絶縁ブロック。
【請求項5】
前記仕切り部は、前記基部の中間部又は一端部に立設されていることを特徴とする請求項4記載の絶縁ブロック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−229735(P2010−229735A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79388(P2009−79388)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)