説明

絶縁基板用積層材の製造方法

【課題】はんだ接合性が良好であり、接合界面での割れや剥離の発生及びNi層の表面の変形の発生を防止することができる絶縁基板用積層材の製造方法を提供する。
【解決手段】積層材1は、表面2aに半導体素子21が接合されるNi又はNi合金で形成されたNi層2と、Ni層2の表面2a側とは反対側に配置された中間層3と、中間層3のNi層2配置側とは反対側に配置されたTi又はTi合金で形成されたTi層4と、Ti層4の中間層3配置側とは反対側に配置されたAl又はAl合金で形成されたAl層5と、を備える。中間層3は、Al若しくはAl合金で形成されたAl層3aであるか、又は、Cu若しくはCu合金で形成されたCu層3cである。これらの層2、3、4、5を積層状に一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子の放熱に用いられる絶縁基板用積層材の製造方法、絶縁基板用積層材、絶縁基板及び半導体モジュールに関する。
【0002】
なお本明細書では、「板」の語は「箔」を含む意味で用いられる。
【背景技術】
【0003】
パワー半導体モジュール等の半導体モジュールは、半導体素子の動作により半導体素子から発生した熱を放出するため、放熱部材(例:ヒートシンク、冷却器)を備えている。さらに、この半導体モジュールでは、半導体素子と放熱部材との間に、半導体素子から発生した熱を放熱部材に伝達するための放熱用絶縁基板が配置されている。この絶縁基板は、熱的には伝導体であるが電気的には絶縁体として機能するものであり、具体的には、電気絶縁層としてのセラミック層と、その片面上に接合された配線層(回路層)を含む金属層と、を備えている(例えば特許文献1〜4参照)。そして、絶縁基板の金属層上に半導体素子がはんだ付けにより接合される。
【0004】
金属層を構成する層として、近年、Al又はAl合金で形成されたAl層が用いられてきている。その理由は、Al層は電気特性及び熱特性に優れているし、またAl層を用いると絶縁基板の製造コストの引下げを図ることができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−328012号公報
【特許文献2】特開2004−235503号公報
【特許文献3】特開2006−303346号公報
【特許文献4】特開2009−147123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、Al層ははんだ接合性が悪い。そのため、半導体素子をはんだ付けにより接合できるように、Al層の表面にNi層としてNiめっき層を形成することが行われるが、この場合には、Al層とNiめっき層との接合界面に強度の弱い脆弱な合金層が形成されてしまう。その結果、冷熱サイクルに伴い発生する熱応力(熱歪み)によってこの合金層で割れや剥離が生じ易くなり、またNi層の表面の変形(凹凸)が生じ易くなる。
【0007】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、絶縁基板に用いられる積層材であって、はんだ接合性が良好であり、接合界面での割れや剥離の発生及びNi層の表面の変形の発生を防止することができる絶縁基板用積層材の製造方法、積層材、絶縁基板及び半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1] 表面に半導体素子が接合されるNi又はNi合金で形成されたNi層と、
前記Ni層の表面側とは反対側に配置されるとともに、Al若しくはAl合金で形成された中間Al層からなるか、又は、Cu若しくはCu合金で形成された中間Cu層からなる中間層と、
前記中間層の前記Ni層配置側とは反対側に配置されたTi又はTi合金で形成されたTi層と、
前記Ti層の前記中間層配置側とは反対側に配置されたAl又はAl合金で形成されたAl層と、を積層状に一体化する一体化工程を含むことを特徴とする絶縁基板用積層材の製造方法。
【0010】
[2] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0011】
[3] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項2記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0012】
[4] 前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項2記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0013】
[5] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項4記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0014】
[6] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ni層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0015】
[7] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項6記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0016】
[8] 前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項6記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0017】
[9] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項8記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0018】
[10] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ni層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、前記中間層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ti層と前記Al層との接合を放電プラズマ焼結法により行う前項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0019】
[11] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を行う前項10記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0020】
[12] 前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ti層と前記Al層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項10記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0021】
[13] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項12記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0022】
[14] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ti層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0023】
[15] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項14記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0024】
[16] 前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項14記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0025】
[17] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項16記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0026】
[18] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものであり、
前記Ti層は、前記Al層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記中間層と前記Ti層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0027】
[19] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項18記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0028】
[20] 前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項18記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0029】
[21] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項20記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0030】
[22] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ti層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、前記Al層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合を放電プラズマ焼結法により行う前項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0031】
[23] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を行う前項22記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0032】
[24] 前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う前項22記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0033】
[25] 前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う前項24記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0034】
[26] 前記Al層は、純度4N以上の純Alで形成されている前項1〜25のいずれかに記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0035】
[27] 表面に半導体素子が接合されるNi又はNi合金で形成されたNi層と、
前記Ni層の表面側とは反対側に配置されるとともに、Al若しくはAl合金で形成された中間Al層からなるか、又は、Cu若しくはCu合金で形成された中間Cu層からなる中間層と、
前記中間層の前記Ni層配置側とは反対側に配置されたTi又はTi合金で形成されたTi層と、
前記Ti層の前記中間層配置側とは反対側に配置されたAl又はAl合金で形成されたAl層とが、積層状に一体化されていることを特徴とする絶縁基板用積層材。
【0036】
[28] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ni層と前記中間層、前記中間層と前記Ti層、及び、前記Ti層と前記Al層がいずれも放電プラズマ焼結法により接合されている前項27記載の絶縁基板用積層材。
【0037】
[29] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ni層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記中間層と前記Ti層、及び、前記Ti層と前記Al層がいずれも放電プラズマ焼結法により接合されている前項27記載の絶縁基板用積層材。
【0038】
[30] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ni層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、前記中間層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ti層と前記Al層が放電プラズマ焼結法により接合されている前項27記載の絶縁基板用積層材。
【0039】
[31] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ti層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ni層と前記中間層、及び、前記Ti層と前記Al層がいずれも放電プラズマ焼結法により接合されている前項27記載の絶縁基板用積層材。
【0040】
[32] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものであり、
前記Ti層は、前記Al層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ni層と前記中間層、及び、前記中間層と前記Ti層がいずれも放電プラズマ焼結法により接合されている前項27記載の絶縁基板用積層材。
【0041】
[33] 前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ti層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、前記Al層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ni層と前記中間層が放電プラズマ焼結法により接合されている前項27記載の絶縁基板用積層材。
【0042】
[34] 前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側にろう材層が配置されており、
前記Al層と前記ろう材層が放電プラズマ焼結法により接合されている前項27〜33のいずれかに記載の絶縁基板用積層材。
【0043】
[35] 前記Al層は、純度4N以上の純Alで形成されている前項27〜34のいずれかに記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0044】
[36] 前項27〜35のいずれかに記載の積層材を備えていることを特徴とする絶縁基板。
【0045】
[37] 前項27〜35のいずれかに記載の積層材のNi層の表面に半導体素子がはんだ付けにより接合されていることを特徴とする半導体モジュール。
【発明の効果】
【0046】
本発明は以下の効果を奏する。
【0047】
ここで本明細書では、中間層を構成するAl層を、Ti層の中間層配置側とは反対側に配置されたAl層と区別するため「中間Al層」と呼ぶ。また、中間層を構成するCu層を「中間Cu層」と呼ぶ。
【0048】
前項[1]では、積層材はNi層を備えているので、はんだ接合性が良好である。したがって、半導体素子をこのNi層の表面にはんだ付けにより確実に接合することができる。
【0049】
さらに、Ni層とAl層との間にTi層が配置されているので、次の効果を奏する。すなわち、例えばもしNi層とAl層との間にTi層を配置しないでNi層とAl層とを直接接合した場合には、Ni層とAl層との接合界面に強度の弱い脆弱な合金層が厚く形成されてしまい、その結果、冷熱サイクルに伴い発生する熱応力(熱歪み)によってこの合金層で割れや剥離が生じ易くなる。これに対して、前項[1]では、Ni層とAl層との間にTi層が配置されているので、そのような脆弱な合金層は形成されない。これにより、熱応力による積層材の接合界面での割れや剥離の発生を防止できるし、更にはNi層の表面の変形(凹凸)の発生も防止することができる。
【0050】
さらに、Al層において熱応力を緩和させることができ、そのため、積層材と絶縁基板のセラミック層とを接合する際においてセラミック層の割れを防止することができる。その結果、冷熱耐久性の高い絶縁基板を得ることができる。
【0051】
さらに、一般的にAl又はCuの融点はNi及びTiの融点よりも低いことから、Ni層とTi層との間に中間Al層又は中間Cu層からなる中間層を配置し、そして例えばNi層と中間層とTi層とAl層とを加熱することにより、Ni層と中間層とTi層とAl層とを積層状に容易に一体化することができる。
【0052】
また、中間Al層の厚さを薄くする(例えば6μm以下)にすることにより、脆弱な合金層の成長を抑え、冷熱サイクルに伴い発生する熱応力(熱歪み)に耐え得る強度を維持することが可能となる。
【0053】
前項[2]では、上述したように、一般的にAl又はCuの融点はNi及びTiの融点よりも低いことから、Ni層とTi層との間にAl層又はCu層からなる中間層を配置することにより、Ni層と中間層との接合と、中間層とTi層との接合と、Ti層とAl層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができる。これにより、積層材の製造工程数の削減を図ることができ、もって積層材の製造コストを削減することができる。
【0054】
前項[3]では、積層材を大量に製造することができる。
【0055】
前項[4]では、ろう材層付き積層材を得ることができる。これにより、ろう材層を、積層材を絶縁基板の所定の層(例:セラミック層)に接合する際のろう材として用いることができる。そのため、積層材と絶縁基板の所定の層との接合を容易に行うことができる。
【0056】
前項[5]では、ろう材層付き積層材を大量に製造することができる。
【0057】
前記[6]では、中間層がNi層上に蒸着されて形成されたものであることにより、中間層の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、中間層の材料の無駄を省くことができて、中間層の材料コストの削減を図ることができる。
【0058】
さらに、中間層とTi層との接合と、Ti層とAl層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができ、これにより、積層材の製造工程数の削減を図ることができる。
【0059】
さらに、中間層がNi層上に蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。これにより、接合作業の容易化を図ることができる。
【0060】
このように、中間層の材料コストの削減と、積層材の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材の製造コストを大幅に削減することができる。
【0061】
前項[7]〜[9]はそれぞれ前項[3]〜[5]と同様の効果を奏する。
【0062】
前項[10]では、中間層がNi層上に蒸着されて形成されたものであることにより、中間層の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、中間層の材料の無駄を省くことができて、中間層の材料コストの削減を図ることができる。
【0063】
さらに、Ti層が中間層上に蒸着されて形成されたものであることにより、Ti層の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、Ti層の材料の無駄を省くことができて、Ti層の材料コストの削減を図ることができる。
【0064】
さらに、中間層がNi層上に蒸着されて形成されるとともに、Ti層が中間層上に蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。これにより、接合作業の容易化を図ることができる。
【0065】
このように、中間層の材料コストの削減と、Ti層の材料コストの削減と、積層材の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材の製造コストを大幅に削減することができる。
【0066】
前項[11]〜[13]はそれぞれ前項[3]〜[5]と同様の効果を奏する。
【0067】
前項[14]では、中間層がTi層上に蒸着されて形成されたものであることにより、中間層の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、中間層の材料の無駄を省くことができて、中間層の材料コストの削減を図ることができる。
【0068】
さらに、Ni層と中間層との接合と、Ti層とAl層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができ、これにより、積層材の製造工程数の削減を図ることができる。
【0069】
さらに、中間層がTi層上に蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。これにより、接合作業の容易化を図ることができる。
【0070】
このように、中間層の材料コストの削減と、積層材の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材の製造コストを大幅に削減することができる。
【0071】
前項[15]〜[17]はそれぞれ前項[3]〜[5]と同様の効果を奏する。
【0072】
前項[18]では、Ti層がAl層上に蒸着されて形成されたものであることにより、Ti層の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、Ti層の材料の無駄を省くことができて、Ti層の材料コストの削減を図ることができる。
【0073】
さらに、Ni層と中間層との接合と、中間層とTi層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができ、これにより、積層材の製造工程数の削減を図ることができる。
【0074】
さらに、Ti層がAl層上に蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。これにより、接合作業の容易化を図ることができる。
【0075】
このように、Ti層の材料コストの削減と、積層材の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材の製造コストを大幅に削減することができる。
【0076】
前項[19]〜[21]はそれぞれ前項[3]〜[5]と同様の効果を奏する。
【0077】
前項[22]では、Ti層がAl層上に蒸着されて形成されたものであることにより、Ti層の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、Ti層の材料の無駄を省くことができて、Ti層の材料コストの削減を図ることができる。
【0078】
さらに、中間層がTi層上に蒸着されて形成されたものであることにより、中間層の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、中間層の材料の無駄を省くことができて、中間層の材料コストの削減を図ることができる。
【0079】
さらに、Ti層がAl層上に蒸着されて形成されるとともに、中間層がTi層上に蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。これにより、接合作業の容易化を図ることができる。
【0080】
このように、Ti層の材料コストの削減と、中間層の材料コストの削減と、積層材の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材の製造コストを大幅に削減することができる。
【0081】
前項[23]〜[25]はそれぞれ前項[3]〜[5]と同様の効果を奏する。
【0082】
前項[26]では、Al層が純度4N以上の純Alで形成されていることにより、Al層を配線層として好適に用いることができる。
【0083】
前項[27]は、前項[1]と同様の効果を奏する。
【0084】
前項[28]は、前項[2]と同様の効果を奏する。
【0085】
前項[29]は、前項[6]と同様の効果を奏する。
【0086】
前項[30]は、前項[10]と同様の効果を奏する。
【0087】
前項[31]は、前項[14]と同様の効果を奏する。
【0088】
前項[32]は、前項[18]と同様の効果を奏する。
【0089】
前項[33]は、前項[22]と同様の効果を奏する。
【0090】
前項[34]は、前項[4]と同様の効果を奏する。
【0091】
前項[35]は、前項[26]と同様の効果を奏する。
【0092】
前項[36]では、前項[27]〜[35]のいずれかと同様の効果を奏する絶縁基板を提供できる。
【0093】
前項[37]では、前項[27]〜[35]のいずれかと同様の効果を奏する半導体モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る積層材を用いて製造された絶縁基板を備えた半導体モジュールの正面図である。
【図2】図2は、同絶縁基板の断面図である。
【図3】図3は、同積層材の製造工程の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、所定の接合を筒状ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により同時に行う場合を示す断面図である。
【図5】図5は、所定の接合を、筒状ダイを用いて放電プラズマ焼結法により同時に行う場合を示す断面図である。
【図6】図6は、複数の積層体のそれぞれの積層体に対して所定の接合を筒状ダイを用いないで同時に行う場合を示す断面図である
【図7】図7は、本発明の第2実施形態に係る積層材を接合前の状態で示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の第3実施形態に係る積層材を接合前の状態で示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の第4実施形態に係る積層材を接合前の状態で示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の第5実施形態に係る積層材を接合前の状態で示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の第6実施形態に係る積層材を接合前の状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0096】
なお、以下の説明において、便宜上、各図面の上下を上下というものとする。また、各図面には、全図面を通じて同一部材には同一符号が付されている。
【0097】
図1において、20は本発明の第1実施形態に係る半導体モジュールである。この半導体モジュール20は、IGBTモジュール、MOSFETモジュール、サイリスタモジュール、ダイオードモジュール等であり、半導体素子21と絶縁基板15と放熱部材17とを備えている。絶縁基板15は、半導体素子21と放熱部材17との間に配置されており、半導体素子21から発生した熱を放熱部材17に伝達する役割を果たす。そのため、絶縁基板15は、優れた電気絶縁性と高い熱伝導性とを兼ね備えることが要求される。
【0098】
半導体素子21は、IGBTチップ、MOSFETチップ、サイリスタチップ、ダイオードチップ等である。
【0099】
放熱部材17は、空冷式又は水冷式のヒートシンクや冷却器などであり、金属製であり、具体的には例えばAl又はAl合金製である。本第1実施形態では、放熱部材17は例えば放熱フィンを有するヒートシンクである。
【0100】
図2に示すように、絶縁基板15は、本発明の第1実施形態に係る積層材1を用いて製造されたものであり、詳述すると、本第1実施形態の積層材1と、セラミック層10と、金属ベース層12とを含んでいる。
【0101】
セラミック層10は、絶縁基板15における電気絶縁層として機能するセラミックで形成されたものであり、好ましくはAlN、Al、Si、Y、CaO、BN及びBeOからなる群より選択される1種又は2種以上のセラミックで形成されたものである。このセラミック層10は、セラミック板から提供されて形成されたものである。セラミック層10の厚さは例えば300〜1000μmである。因みに、セラミック層10を形成するセラミックの融点又は分解点は、AlN:2200℃、Al:2050℃、Si:1900℃、Y:2400℃、CaO:2570℃、BN:3000℃、BeO:2570℃である。なお、セラミック層10の大きさは、電気絶縁性を確実に確保するため他の層よりも若干大きく設定されるのが望ましい。
【0102】
金属ベース層12は、セラミック層10と放熱部材17との間に配置されるものであり、熱応力の緩和を図ることを目的とするものである。この金属ベース層12は、金属板から提供されて形成されたものであり、例えばAl又はAl合金で形成されている。そして、この金属ベース層12がセラミック層10の下面側に積層状にセラミック層10とろう付けにより接合されている。金属ベース層12とセラミック層10との接合界面には、金属ベース層12とセラミック層10とを接合したろう材層11が形成されている。金属ベース層12の下面側には放熱部材17が金属ベース層12とろう付け等により接合される。
【0103】
ここで、積層材1や絶縁基板15に発生する熱応力について具体的に例示すると、次のとおりである。すなわち、絶縁基板15の金属ベース層12と放熱部材17との接合が例えばろう付けにより行われる場合、このろう付けの際に絶縁基板15の温度は室温から約600℃に上昇し、ろう付け後に室温に戻る。また、積層材1のNi層2の表面2aに半導体素子21がはんだ付けにより接合される際に絶縁基板15の温度は室温から約300℃に上昇し、はんだ付け後に室温に戻る。さらに、半導体モジュール20の動作の際に半導体素子21の温度は室温から150〜300℃程度に上昇し、その動作の停止後に室温に戻る。このような冷熱サイクルによって積層材1や絶縁基板15に熱応力(熱歪み)が発生する。
【0104】
本第1実施形態の積層材1は、セラミック層10の片面側(本第1実施形態ではセラミック層10の上面側)に積層状にセラミック層10とろう付けにより接合されるものであり、Ni層2、中間層3、Ti層4、Al層5及びろう材層6を備えている。これらの層2〜6は水平状に配置されている。そして、これらの層2〜6が積層状に一体化されることにより、積層材1が製造されている。この積層材1はろう材層6を備えているので、ろう材層付き積層材と捉えることもできる。なお図面では、ろう材層は他の層と区別し易くするためドットハッチングで図示されている。
【0105】
Ni層2は、その表面(上面)2aに半導体素子21がはんだ付けにより接合されるものである。このNi層2は、Ni又はNi合金で形成されており、詳述すると、Ni板又はNi合金板から提供されて形成されたものである。
【0106】
中間層3は、Ni層2の表面2a側とは反対側(即ち下面側)に積層状に配置されている。そして、Ni層2と中間層3とが一体化されている。この中間層3は、Al若しくはAl合金で形成されたAl層3aであるか、又は、Cu若しくはCu合金で形成されたCu層3cである(図3参照)。
【0107】
ここで本明細書では、上述したように、中間層3を構成するAl層3aを、Ti層4の中間層3配置側とは反対側に配置されたAl層5と区別するため「中間Al層3a」と呼ぶ。また、中間層3を構成するCu層3cを「中間Cu層3c」と呼ぶ。
【0108】
一般的にAl及びCuの融点はNi及びTiの融点よりも低いことから、中間Al層3a及び中間Cu層3cは、基本的にはNi層2とTi層4とを接合するための接合層としての役割を果たすものである。本第1実施形態では、中間層3は、Al板若しくはAl合金板から提供されて形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から提供されて形成されたものである。そして、Ni層2と中間層3とが放電プラズマ焼結法により接合されて一体化されている。
【0109】
ここで、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering:SPS)法は、一般に、粉体を焼結するため又は部材同士を接合するために適用されるものであり、本第1実施形態では部材同士を接合するために適用されている。なお、この放電プラズマ焼結法は、「SPS接合法」、「パルス通電圧接法(Pulsed Current Hot Pressing:PCHP)」等とも呼ばれている。
【0110】
Ti層4は、中間層3のNi層2配置側とは反対側(即ち下面側)に積層状に配置されている。そして、中間層3とTi層4とが一体化されている。このTi層4は、Ti又はTi合金で形成されている。本第1実施形態では、Ti層4は、Ti板又はTi合金板から提供されて形成されたものである。そして、中間層3とTi層4とが放電プラズマ焼結法により接合されて一体化されている。
【0111】
Al層5は、Ti層4の中間層3配置側とは反対側(即ち下面側)に積層状に配置されている。そして、Ti層4とAl層5とが一体化されている。このAl層5は、Al又はAl合金で形成されている。本第1実施形態では、Al層5は、Al板又はAl合金板から提供されて形成されたものである。そして、Ti層4とAl層5とが放電プラズマ焼結法により接合されて一体化されている。特に、このAl層5は、絶縁基板15の配線層として機能するとともに応力緩和効果を有するものであり、そのため純度4N以上(即ち純度99.99質量%以上)の純アルミニウムで形成されるのが良い。
【0112】
ろう材層6は、積層材1とセラミック層10とをろう付けにより接合する際に用いられるものであり、積層材1のAl層5のTi層4配置側とは反対側(即ち下面側)に積層状に配置されている。そして、Al層5とろう材層6とが一体化されている。このろう材層6は、Al系ろう材(例:Al−Si系合金のろう材)で形成されることが望ましい。本第1実施形態では、ろう材層6は、Al系ろう材板(例:Al−Si系合金のろう材板)から提供されて形成されたものである。そして、Al層5とろう材層6とが放電プラズマ焼結法により接合されて一体化されている。
【0113】
Ni層2の厚さは限定されるものではないが、5〜100μmの範囲内であることが、Ni層2の特性を確実に発揮させることができ且つ積層材1の熱伝導率の低下を防止できる点で望ましい。ここで、本第1実施形態では、上述したように、Ni層2はNi板又はNi合金板から提供されて形成されたものであり、この場合、厚さが5〜100μmの範囲内のNi板又はNi合金板が好適に用いられ、特にNi圧延板又はNi合金圧延板が安価に入手可能である点で好適に用いられる。
【0114】
Ti層4の厚さは限定されるものではないが、5〜100μmの範囲内であることが、Ti層4の特性を確実に発揮させることができ且つ積層材1の熱伝導率の低下を防止できる点で望ましい。ここで、本第1実施形態では、上述したように、Ti層4はTi板又はTi合金板から提供されて形成されたものであり、この場合、厚さが5〜100μmの範囲内のTi板又はTi合金板が好適に用いられ、特にTi圧延板又はTi合金圧延板が安価に入手可能である点で好適に用いられる。
【0115】
Al層5の厚さは限定されるものではないが、Al層5を絶縁基板15の配線層及び応力緩和層として確実に機能させるため、なるべく厚い方が望ましい。しかるに、本第1実施形態では、Al層5はTi層4とクラッド接合により接合されるのではなく放電プラズマ焼結法により接合されるので、厚さ0.1〜2.0mmという厚いAl層5をTi層4と接合することができる。そのため、Al層5を配線層及び応力緩和層として確実に機能させることができる。ここで、本第1実施形態では、上述したように、Al層5はAl板又はAl合金板から提供されて形成されたものであり、この場合、厚さが0.1〜2.0mmの範囲内のAl板又はAl合金板が好適に用いられ、特にAl圧延板又はAl合金圧延板が安価に入手可能である点で好適に用いられる。
【0116】
中間層3が中間Al層3aである場合、中間Al層3aの厚さは限定されるものではない。ここで、Ni層2と中間Al層3aとを放電プラズマ焼結法により接合する場合、Ni層2と中間Al層3aとの接合界面には、Ni層2のNiが中間Al層3a中へ拡散することによりNiと中間Al層3aのAlとが合金化してなる合金層が形成される。この合金層自体は脆弱であり強度が弱い。しかしながら、Ti層4は低熱膨張層であることから、このTi層4に中間Al層3aが接合されることにより、積層材1の積層構造が応力分散効果の高い傾斜構造となり、その結果、Ni層2と中間Al層3aとの接合界面に作用する熱応力が緩和される。これにより、中間層3が中間Al層3aである場合であっても、Ni層2と中間Al層3aとの接合界面での割れや剥離の発生が抑制される。更にこの合金層がより一層形成され難くするため、中間Al層3aの厚さは極力薄い方が望ましい。ここで、本第1実施形態では、上述したように、中間Al層3aはAl板又はAl合金板から提供されて形成されたものであり、この場合、厚さが5〜12μmの範囲内のAl板又はAl合金板が好適に用いられ、特にAl圧延板又はAl合金圧延板が安価に入手可能である点で好適に用いられる。
【0117】
中間層3が中間Cu層3cである場合、中間Cu層3cの厚さは限定されるものではない。ここで、本第1実施形態では、上述したように、中間Cu層3cはCu板又はCu合金板から提供されて形成されたものであり、この場合、厚さが5〜200μmの範囲内のCu板又はCu合金板が好適に用いられ、特にCu圧延板又はCu合金圧延板が安価に入手可能である点で好適に用いられる。
【0118】
ろう材層6の厚さは限定されるものではないが、積層材1とセラミック層10とをろう付けにより確実に接合できるようにするため、更には、積層材1の熱伝導率の低下を防止するため、10〜70μmの範囲内に設定されるのが特に望ましい。
【0119】
次に、本第1実施形態の積層材1及び絶縁基板15の製造方法の一例について、図3〜6を参照して以下に説明する。
【0120】
図3に示すように、Ni層2と中間層3とTi層4とAl層5とろう材層6とを準備する。Ni層2は、Ni板又はNi合金板から形成されたものである。中間層3は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものである。Ti層4は、Ti板又はTi合金板から形成されたものである。Al層5は、Al板又はAl合金板から形成されたものである。ろう材層6はろう材板から形成されたものである。
【0121】
次いで、これらの層2〜6を順次積層して積層体8を形成する(図4参照)。そして、この積層体8におけるこれらの層2〜6を、互いに隣接する層同士が固定状態になるように一体化する。この工程を「一体化工程」と呼ぶ。
【0122】
本第1実施形態においては、一体化工程では、Ni層2と中間層3との接合と、中間層3とTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う。
【0123】
このような放電プラズマ焼結法による接合は、図4、5又は6に示した接合方法により行われる。
【0124】
図4に示した接合方法について説明すると、次のとおりである。
【0125】
放電プラズマ焼結装置30は上下一対のパンチ32、32を備えている。各パンチ32は導電性を有するものであり、例えば黒鉛製である。また、各パンチ32の基部には電極33が電気的に接続されている。両パンチ32、32は、Ni層2と中間層3とTi層4とAl層5とろう材層6とが順次積層されて形成された積層体8の積層方向(即ち積層体8の厚さ方向)の両側に配置されている。積層体8の周囲には、放電プラズマ焼結用筒状ダイは配置されておらず、すなわち積層体8の周囲は筒状ダイで包囲されていない。積層体8を両パンチ32、32で挟む。そして、例えば1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体8をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで積層体8を加熱し、これにより、互いに隣接する層同士を固定状態に同時に接合する。その結果、所望する積層材1が得られる。この際の接合条件について具体的に例示すると、加熱温度は500〜570℃、加熱温度の保持時間は5〜40min、室温から加熱温度への昇温速度は15〜100℃/min、積層体8への加圧力は5〜20MPaである。
【0126】
なお図示していないが、積層体8の各最外側層(即ちNi層2及びろう材層6)の表面を各パンチ32の加圧面よりも相対的に大きくしておき、積層体8の各最外側層2、6の表面の外周縁部がパンチ32の加圧面よりも外側にパンチ32の全周に亘ってはみ出るように、積層体8の各最外側層2、6の表面に各パンチ32の加圧面を当接させ、この状態で積層体8を両パンチ32、32で加圧することが望ましい。こうすることにより、不慮の放電や電気的短絡を防止し得て、良好な接合を安定良く行うことができる。
【0127】
この積層材1を用いて絶縁基板15が製造される。その製造方法について例示すると次のとおりである。
【0128】
図3に示すように、この積層材1とセラミック層10と金属ベース層12とをろう付けにより接合する。これにより、絶縁基板15が得られる。セラミック層10と金属ベース層12との間に配置されたろう材層11は、当該両層10、12同士を接合するためのろう材である。ここで、積層材1はろう材層6を備えているので、このろう材層6をろう材として用いることにより積層材1とセラミック層10とを容易に接合することができる。なお本発明では、積層材1とセラミック層10と金属ベース層12とを炉内ろう付けにより同時に接合しても良い。
【0129】
こうして得られた絶縁基板15では、図1及び2に示すように、その金属ベース層12の下面に放熱部材17がろう付け等により接合されるとともに、Ni層2の表面2aに半導体素子21がはんだ付けにより接合される。これにより半導体モジュール20が得られる。
【0130】
本第1実施形態の積層材1及びその製造方法は、次の利点を有している。
【0131】
積層材1はNi層2を備えているので、はんだ接合性が良好である。したがって、半導体素子21をこのNi層2の表面2aにはんだ付けにより確実に接合することができる。
【0132】
さらに、Ni層2とAl層5との間にTi層4が配置されているので、次の効果を奏する。すなわち、例えばもしNi層2とAl層5との間にTi層4を配置しないでNi層2とAl層5とを直接接合した場合には、Ni層2とAl層5との接合界面に強度の弱い脆弱な合金層が形成されてしまい、その結果、冷熱サイクルに伴い発生する熱応力(熱歪み)によってこの合金層で割れや剥離が生じ易くなる。これに対して、この積層材1では、Ni層2とAl層5との間にTi層4が配置されているので、そのような脆弱な合金層は形成されない。これにより、熱応力による積層材1の接合界面での割れや剥離の発生を防止できるし、更にはNi層2の表面2aの変形(凹凸)の発生も防止することができる。
【0133】
しかも、Al層5において熱応力を緩和させることができ、そのため、積層材1と絶縁基板15のセラミック層10とを接合する際においてセラミック層10の割れを防止することができる。その結果、冷熱耐久性の高い絶縁基板15を得ることができる。
【0134】
さらに、一般的にAl又はCuの融点はNi及びTiの融点よりも低いことから、Ni層2とTi層4との間に中間Al層3a又は中間Cu層3cからなる中間層3を配置することにより、Ni層2と中間層3との接合と、中間層3とTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができる。これにより、積層材1の製造工程数の削減を図ることができ、もって積層材1の製造コストを削減することができる。すなわち、もしNi層2とTi層4との間に中間層3を配置しない場合においては、NiとTiとの共晶温度が942℃であり、これはAlの融点660℃よりも高いため、Ni層2とTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができない。したがってこの場合、まずNi層2とTi層4との接合をAlの融点よりも高い温度(例えば750℃)で行い、その後でTi層4とAl層5との接合をAlの融点よりも低い温度(例えば530℃)で行うという2工程で接合を行う必要がある。これに対して、本第1実施形態のようにNi層2とTi層4との間に中間Al層3a又は中間Cu層3cからなる中間層3を配置することにより、これらの接合を放電プラズマ焼結法により同時に行うことができる。
【0135】
さらに、積層材1はろう材層6を備えているので、このろう材層6を、積層材1を絶縁基板15の所定の層(例:セラミック層10)に接合する際のろう材として用いることができる。そのため、積層材1と絶縁基板15の所定の層との接合を容易に行うことができる。
【0136】
その上、Al層5が純度4N以上の純Alで形成されている場合には、Al層5を配線層として好適に用いることができる。
【0137】
図5に示した接合方法について説明すると、次のとおりである。
【0138】
Ni層2と中間層3とTi層4とAl層5とろう材層6との積層体8の周囲には放電プラズマ焼結用筒状ダイ31が配置されており、すなわち積層体8の周囲は筒状ダイ31で包囲されている。このダイ31は詳述すると導電性を有する円筒状のものであり、例えば黒鉛製である。そして、例えば1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で積層体8をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで積層体8を加熱し、これにより、互いに隣接する層同士を固定状態に同時に接合する。その結果、所望する積層材1が得られる。
【0139】
この接合に適用される接合条件は、図4で示した接合条件と同じである。
【0140】
この接合方法では、積層体8の周囲をダイ31で包囲した状態で放電プラズマ焼結法による接合を行っているので、両パンチ32、32間の通電を確実に確保することができ、もって安定した温度制御を行うことができる。これにより、接合を確実に行うことができる。
【0141】
図6に示した接合方法について説明すると、次のとおりである。
【0142】
Ni層2と中間層3とTi層4とAl層5とろう材層6との積層体8を複数準備する。同図では、準備した積層体8の個数は3個である。なお本発明では、積層体8の個数は3個であることに限定されるものではなく、その他に例えば、2〜40個であっても良いし、40個を超えても良い。
【0143】
次いで、複数の積層体8を互いに重なり合う各積層体8、8間に導電性離型部材としての導電性離型板35を介して積層する。つまり、互いに重なり合う2個の積層体8、8の間に導電性離型板35が介在されるように、複数の積層体8を積層する。離型板35は、互いに重なり合う積層体8、8同士が接合しないようにする役割を果たすものであり、更に、積層体8とは接合しないものである。この離型板35は、導電性を有し更に接合時に溶融しない耐熱性を有する板であることが望ましく、例えばカーボン板(グラファイト板・シートを含む)からなるものである。次いで、複数の積層体8をその積層方向に両パンチ32、32で一括して挟む。そして、例えば1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の積層体8をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで複数の積層体8を一括して加熱し、これにより各積層体8における互いに隣接する層同士を固定状態に同時に接合する。その結果、所望する積層材1が複数得られる。
【0144】
この接合に適用される接合条件は、図4で示した接合条件と同じである。
【0145】
この接合方法では、各積層体8に対して放電プラズマ焼結法による接合を同時に行うので、積層材1を大量に製造することができる。これにより、積層材1の製造コストを引き下げることができる。
【0146】
なお本発明では、図6に示した接合方法で接合を行う場合において、複数の積層体8の周囲に図5に示した筒状ダイ31を配置した状態で、放電プラズマ焼結法により接合を行っても良い。
【0147】
図7は、本発明の第2実施形態に係る積層材1の製造方法を説明する図である。本第2実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に以下に説明する。
【0148】
本第2実施形態では、Ni層2はNi板又はNi合金板から形成されたものである。中間層3は、Ni層2(詳述するとNi層2の下面)上に所定の蒸着法により蒸着されて形成されたもの、即ち蒸着膜から形成されたものである。Ti層4は、Ti板又はTi合金板から形成されたものである。Al層5は、Al板又はAl合金板から形成されたものである。ろう材層6は、ろう材板から形成されたものである。
【0149】
中間層3の形成に用いる蒸着法は、PVD(Physical Vapor Deposition:物理蒸着又は物理気相成長)法であることが望ましい。このPVD法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが適用可能である。中間層3(即ち中間Al層3a又は中間Cu層3c)がPVD法により蒸着されて形成されたものである場合において、中間層3の厚さは限定されるものではないが、30〜2000nmの範囲内であることが特に望ましい。
【0150】
本第2実施形態においては、一体化工程では、中間層3とTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う。
【0151】
このような放電プラズマ焼結法による接合は、上述した図4、5又は6に示した接合方法により行われる。
【0152】
本第2実施形態では、中間層3がNi層2上にPVD法により蒸着されて形成されたものであることにより、中間層3の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、中間層3の材料の無駄を省くことができて、中間層3の材料コストの削減を図ることができる。
【0153】
さらに、中間層3とTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができ、これにより、積層材1の製造工程数の削減を図ることができる。
【0154】
さらに、中間層3がNi層2上にPVD法により蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。すなわち、上記第1実施形態では、セットする素板の数は5枚(Ni層2、中間層3、Ti層4、Al層5、ろう材層6)であるが、本第2実施形態では4枚(Ni層2+中間層3、Ti層4、Al層5、ろう材層6)であり、セットする素板の数が5枚から4枚に減っている。これにより、接合作業の容易化を図ることができる。
【0155】
このように、中間層3の材料コストの削減と、積層材1の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材1の製造コストを大幅に削減することができる。
【0156】
さらに、積層材1はろう材層6を備えているので、このろう材層6を、積層材1を絶縁基板15の所定の層(例:セラミック層10)に接合する際のろう材として用いることができる。そのため、積層材1と絶縁基板15の所定の層との接合を容易に行うことができる。
【0157】
図8は、本発明の第3実施形態に係る積層材1の製造方法を説明する図である。本第3実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に以下に説明する。
【0158】
本第3実施形態では、Ni層2はNi板又はNi合金板から形成されたものである。中間層3は、Ni層2(詳述するとNi層2の下面)上にPVD法により蒸着されて形成されたもの、即ち蒸着膜から形成されたものである。Ti層4は、中間層3上にPVD法により蒸着されて形成されたものである。Al層5は、Al板又はAl合金板から形成されたものである。ろう材層6は、ろう材板から形成されたものである。
【0159】
中間層3及びTi層4の形成に用いるPVD法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが適用可能である。この場合において、中間層3の厚さは限定されるものではないが、30〜2000nmの範囲内であることが特に望ましい。また、Ti層4の厚さは限定されるものではないが、30〜2000nmの範囲内であることが特に望ましい。
【0160】
本第3実施形態においては、一体化工程では、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う。
【0161】
このような放電プラズマ焼結法による接合は、上述した図4、5又は6に示した接合方法により行われる。
【0162】
本第3実施形態では、中間層3がNi層2上にPVD法により蒸着されて形成されたものであることにより、中間層3の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、中間層3の材料の無駄を省くことができて、中間層3の材料コストの削減を図ることができる。
【0163】
さらに、Ti層4が中間層3上にPVD法により蒸着されて形成されたものであることにより、Ti層4の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、Ti層4の材料の無駄を省くことができて、Ti層4の材料コストの削減を図ることができる。
【0164】
さらに、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができ、これにより、積層材1の製造工程数の削減を図ることができる。
【0165】
さらに、中間層3がNi層2上にPVD法により蒸着されて形成されるとともに、Ti層4が中間層3上にPVD法により蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。すなわち、上記第1実施形態では、セットする素板の数は5枚(Ni層2、中間層3、Ti層4、Al層5、ろう材層6)であるが、本第3実施形態では3枚(Ni層2+中間層3+Ti層4、Al層5、ろう材層6)であり、セットする素板の数が5枚から3枚に減っている。これにより、接合作業の更なる容易化を図ることができる。
【0166】
このように、中間層3の材料コストの削減と、Ti層4の材料コストの削減と、積層材1の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材1の製造コストを大幅に削減することができる。
【0167】
さらに、積層材1はろう材層6を備えているので、このろう材層6を、積層材1を絶縁基板15の所定の層(例:セラミック層10)に接合する際のろう材として用いることができる。そのため、積層材1と絶縁基板15の所定の層との接合を容易に行うことができる。
【0168】
図9は、本発明の第4実施形態に係る積層材1の製造方法を説明する図である。本第4実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に以下に説明する。
【0169】
本第4実施形態では、Ni層2はNi板又はNi合金板から形成されたものである。中間層3は、Ti層4(詳述するとTi層4の上面)上にPVD法により蒸着されて形成されたものである。Ti層4は、Ti板又はTi合金板から形成されたものである。Al層5は、Al板又はAl合金板から形成されたものである。ろう材層6は、ろう材板から形成されたものである。
【0170】
中間層3の形成に用いるPVD法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが適用可能である。この場合において、中間層3の厚さは限定されるものではないが、30〜2000nmの範囲内であることが特に望ましい。
【0171】
本第4実施形態においては、一体化工程では、Ni層2と中間層3との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う。
【0172】
このような放電プラズマ焼結法による接合は、上述した図4、5又は6に示した接合方法により行われる。
【0173】
本第4実施形態では、中間層3がTi層4上にPVD法により蒸着されて形成されたものであることにより、中間層3の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、中間層3の材料の無駄を省くことができて、中間層3の材料コストの削減を図ることができる。
【0174】
さらに、Ni層2と中間層3との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができ、これにより、積層材の製造工程数の削減を図ることができる。
【0175】
さらに、中間層3がTi層4上にPVD法により蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。すなわち、上記第1実施形態では、セットする素板の数は5枚(Ni層2、中間層3、Ti層4、Al層5、ろう材層6)であるが、本第4実施形態では4枚(Ni層2、中間層3+Ti層4、Al層5、ろう材層6)であり、セットする素板の数が5枚から4枚に減っている。これにより、接合作業の容易化を図ることができる。
【0176】
このように、中間層3の材料コストの削減と、積層材1の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材1の製造コストを大幅に削減することができる。
【0177】
さらに、積層材1はろう材層6を備えているので、このろう材層6を、積層材1を絶縁基板15の所定の層(例:セラミック層10)に接合する際のろう材として用いることができる。そのため、積層材1と絶縁基板15の所定の層との接合を容易に行うことができる。
【0178】
図10は、本発明の第5実施形態に係る積層材1の製造方法を説明する図である。本第5実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に以下に説明する。
【0179】
本第5実施形態では、Ni層2はNi板又はNi合金板から形成されたものである。中間層3は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものである。Ti層4は、Al層5(詳述するとAl層5の上面)上にPVD法により蒸着されて形成されたものである。Al層5は、Al板又はAl合金板から形成されたものである。ろう材層6は、ろう材板から形成されたものである。
【0180】
Ti層4の形成に用いるPVD法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが適用可能である。この場合において、Ti層4の厚さは限定されるものではないが、30〜2000nmの範囲内であることが特に望ましい。
【0181】
本第5実施形態においては、一体化工程では、Ni層2と中間層3との接合と、中間層3とTi層4との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う。
【0182】
このような放電プラズマ焼結法による接合は、上述した図4、5又は6に示した接合方法により行われる。
【0183】
本第5実施形態では、Ti層4がAl層5上にPVD法により蒸着されて形成されたものであることにより、Ti層4の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、Ti層4の材料の無駄を省くことができて、Ti層4の材料コストの削減を図ることができる。
【0184】
さらに、Ni層2と中間層3との接合と、中間層3とTi層4との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができ、これにより、積層材1の製造工程数の削減を図ることができる。
【0185】
さらに、Ti層4がAl層5上にPVD法により蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。すなわち、上記第1実施形態では、セットする素板の数は5枚(Ni層2、中間層3、Ti層4、Al層5、ろう材層6)であるが、本第5実施形態では4枚(Ni層2、中間層3、Ti層4+Al層5、ろう材層6)であり、セットする素板の数が5枚から4枚に減っている。これにより、接合作業の容易化を図ることができる。
【0186】
このように、Ti層4の材料コストの削減と、積層材1の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材1の製造コストを大幅に削減することができる。
【0187】
さらに、積層材1はろう材層6を備えているので、このろう材層6を、積層材1を絶縁基板15の所定の層(例:セラミック層10)に接合する際のろう材として用いることができる。そのため、積層材1と絶縁基板15の所定の層との接合を容易に行うことができる。
【0188】
図11は、本発明の第6実施形態に係る積層材1の製造方法を説明する図である。本第6実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に以下に説明する。
【0189】
本第6実施形態では、Ni層2はNi板又はNi合金板から形成されたものである。中間層3は、Ti層4(詳述するとTi層4の上面)上にPVD法により蒸着されて形成されたものである。Ti層4は、Al層5(詳述するとAl層5の上面)上にPVD法により蒸着されて形成されたものである。Al層5は、Al板又はAl合金板から形成されたものである。ろう材層6は、ろう材板から形成されたものである。
【0190】
中間層3及びTi層4の形成に用いるPVD法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが適用可能である。この場合において、中間層3の厚さは限定されるものではないが、30〜2000nmの範囲内であることが特に望ましい。また、Ti層4の厚さは限定されるものではないが、30〜2000nmの範囲内であることが特に望ましい。
【0191】
本第6実施形態においては、一体化工程では、Ni層2と中間層3との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う。
【0192】
このような放電プラズマ焼結法による接合は、上述した図4、5又は6に示した接合方法により行われる。
【0193】
本第6実施形態では、Ti層4がAl層5上にPVD法により蒸着されて形成されたものであることにより、Ti層4の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、Ti層4の材料の無駄を省くことができて、Ti層4の材料コストの削減を図ることができる。
【0194】
さらに、中間層3がTi層4上にPVD法により蒸着されて形成されたものであることにより、中間層3の厚さを必要とされる厚さに容易に調整することができる。そのため、中間層3の材料の無駄を省くことができて、中間層3の材料コストの削減を図ることができる。
【0195】
さらに、Ni層2と中間層3との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行うことができ、これにより、積層材1の製造工程数の削減を図ることができる。
【0196】
さらに、中間層3がTi層4上にPVD法により蒸着されて形成されるとともに、Ti層4がAl層5上にPVD法により蒸着されて形成されたものであるから、放電プラズマ焼結法により接合を行う際にセットする素板の数を減らすことができる。すなわち、上記第1実施形態では、セットする素板の数は5枚(Ni層2、中間層3、Ti層4、Al層5、ろう材層6)であるが、本第6実施形態では3枚(Ni層2、中間層3+Ti層4+Al層5、ろう材層6)であり、セットする素板の数が5枚から3枚に減っている。これにより、接合作業の更なる容易化を図ることができる。
【0197】
このように、中間層3の材料コストの削減と、Ti層4の材料コストの削減と、積層材1の製造工程数の削減と、接合作業の容易化とが図られることにより、積層材1の製造コストを大幅に削減することができる。
【0198】
さらに、積層材1はろう材層6を備えているので、このろう材層6を、積層材1を絶縁基板15の所定の層(例:セラミック層10)に接合する際のろう材として用いることができる。そのため、積層材1と絶縁基板15の所定の層との接合を容易に行うことができる。
【0199】
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0200】
また本発明は、上述した実施形態を組み合わせて構成しても良い。
【0201】
また本発明では、上記実施形態に示したように積層材1はろう材層6を備えたものであることが望ましいが、必ずしもろう材層6を備えることを要せず、すなわち積層材1のAl層5にろう材層6が接合される必要はない。
【実施例】
【0202】
本発明の具体的な幾つかの実施例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0203】
<実施例1>
本実施例1では、図3に示した上記第1実施形態の積層材1の製造方法に従って積層材1を製造した。ただし、この積層材1はろう材層6を備えていない。
【0204】
Ni層2、中間Al層3a、Ti層4及びAl層5として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0205】
Ni層2 :直径160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
中間Al層3a:直径160mm×厚さ0.012mmのAl板
Ti層4 :直径160mm×厚さ0.01mmの純Ti板
Al層5 :直径160mm×厚さ0.6mmの純Al板。
【0206】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS(日本工業規格)1種である。中間Al層3aを形成するAl板の材質はA1100である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層5を形成するAl板の純度は4N(即ち99.99質量%)である。
【0207】
次いで、一体化工程では、図4に示すように、Ni層2と中間Al層3aとの接合と、中間Al層3aとTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行った。すなわち、Ni層2と中間Al層3aとTi層4とのAl層5との積層体8を3Paの真空雰囲気中にてその積層方向に放電プラズマ焼結装置30の一対の黒鉛製パンチ32、32で加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで積層体8を加熱し、これにより、互いに隣接する層同士を固定状態に同時に接合した。これにより積層材1を得た。この積層材1の各接合界面は拡散接合状態になっていることを確認し得た。
【0208】
この一体化工程で用いた各パンチ32の直径は150mmである。また、この一体化工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0209】
次いで、こうして得られた積層材1を縦30mm×横30mmの大きさに切断した後、積層材1と、ろう材層6と、セラミック層10と、ろう材層11と、金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した。この工程を「ろう付け工程」という。これにより絶縁基板15を得た。
【0210】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、各ろう材層6、11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0211】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形(凹凸)は発生しなかった。
【0212】
<実施例2>
本実施例2では、図3に示した上記第1実施形態の積層材1の製造方法に従って積層材1を製造した。
【0213】
Ni層2、中間Al層3a、Ti層4、Al層5及びろう材層6として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0214】
Ni層2 :直径160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
中間Al層3a:直径160mm×厚さ0.012mmのAl板
Ti層4 :直径160mm×厚さ0.01mmの純Ti板
Al層5 :直径160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層6 :直径160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0215】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。中間Al層3aを形成するAl板の材質はA1100である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層5を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層6を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0216】
次いで、一体化工程では、図4に示すように、Ni層2と中間Al層3aとの接合と、中間Al層3aとTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行った。これにより積層材1を得た。この積層材1の各接合界面は拡散接合状態になっていることを確認し得た。
【0217】
この一体化工程で用いた各パンチ32の直径は150mmである。また、この一体化工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0218】
次いで、こうして得られた積層材1を縦30mm×横30mmの大きさに切断した後、積層材1と、セラミック層10と、ろう材層11と、金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した[ろう付け工程]。これにより絶縁基板15を得た。
【0219】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、ろう材層11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0220】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形は発生しなかった。
【0221】
<実施例3>
本実施例3では、図3に示した上記第1実施形態の積層材1の製造方法に従って積層材1を製造した。
【0222】
Ni層2、中間Cu層3c、Ti層4、Al層5及びろう材層6として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0223】
Ni層2 :直径160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
中間Cu層3c:直径160mm×厚さ0.01mmのCu板
Ti層4 :直径160mm×厚さ0.01mmの純Ti板
Al層5 :直径160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層6 :直径160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0224】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。中間Cu層3cを形成するCu板の材質はC1020である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層5を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層6を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0225】
次いで、一体化工程では、図4に示すように、Ni層2と中間Cu層3cとの接合と、中間Cu層3cとTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行った。これにより積層材1を得た。この積層材1の各接合界面は拡散接合状態になっていることを確認し得た。
【0226】
この一体化工程で用いた各パンチ32の直径は150mmである。また、この一体化工程で適用した接合条件は、加熱温度540℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0227】
次いで、こうして得られた積層材1を縦30mm×横30mmの大きさに切断した後、積層材1と、セラミック層10と、ろう材層11と、金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した[ろう付け工程]。これにより絶縁基板15を得た。
【0228】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、ろう材層11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0229】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形は発生しなかった。
【0230】
<実施例4>
本実施例4では、図7に示した上記第2実施形態の積層材1の製造方法に従って積層材1を製造した。
【0231】
Ni層2、Ti層4、Al層5及びろう材層6として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0232】
Ni層2 :直径160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
Ti層4 :直径160mm×厚さ0.01mmの純Ti板
Al層5 :直径160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層6:直径160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0233】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層5を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層6を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0234】
また、中間層3は、Ni層2の下面上に蒸着されて形成されたAl蒸着膜からなる中間Al層3aである。この中間Al層3aの形成方法は次のとおりである。すなわち、Ni層2の下面上にその全面に亘ってPVD法としてのイオンプレーティング法によってAlを蒸着し、これにより、Ni層2の下面上に中間Al層3aを形成した。中間Al層3aの厚さは500nmである。この際に適用した成膜条件は、真空度:2×10−2Pa、Arガス供給量:75ml/min、プロセス圧力:2.2Pa、バイアス電圧:50V、アーク電流:70A、ヒータ温度:150℃、処理時間:5mimである。
【0235】
次いで、一体化工程では、中間Al層3aとTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行った。これにより積層材1を得た。この積層材1の各接合界面は拡散接合状態になっていることを確認し得た。
【0236】
この一体化工程で用いた各パンチ32の直径は150mmである。また、この一体化工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0237】
次いで、こうして得られた積層材1を縦30mm×横30mmの大きさに切断した後、積層材1と、セラミック層10と、ろう材層11と、金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した[ろう付け工程]。これにより絶縁基板15を得た。
【0238】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、ろう材層11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0239】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形は発生しなかった。
【0240】
<実施例5>
本実施例5では、図7に示した上記第2実施形態の積層材1の製造方法に従って積層材1を製造した。
【0241】
Ni層2、Ti層4、Al層5及びろう材層6として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0242】
Ni層2 :直径160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
Ti層4 :直径160mm×厚さ0.01mmの純Ti板
Al層5 :直径160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層6:直径160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0243】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層5を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層6を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0244】
また、中間層3は、Ni層2の下面上に蒸着されて形成されたCu蒸着膜からなる中間Cu層3cである。この中間Cu層3cの形成方法は次のとおりである。すなわち、Ni層2の下面上にその全面に亘ってPVD法としてのイオンプレーティング法によってCuを蒸着し、これにより、Ni層2の下面上に中間Cu層3cを形成した。中間Cu層3cの厚さは500nmである。この際に適用した成膜条件は、真空度:2×10−2Pa、Arガス供給量:75ml/min、プロセス圧力:2.2Pa、バイアス電圧:50V、アーク電流:80A、ヒータ温度:150℃、処理時間:5minである。
【0245】
次いで、一体化工程では、中間Cu層3cとTi層4との接合と、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行った。これにより積層材1を得た。この積層材1の各接合界面は拡散接合状態になっていることを確認し得た。
【0246】
この一体化工程で用いた各パンチ32の直径は150mmである。また、この一体化工程で適用した接合条件は、加熱温度540℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0247】
次いで、こうして得られた積層材1を縦30mm×横30mmの大きさに切断した後、積層材1と、セラミック層10と、ろう材層11と、金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した[ろう付け工程]。これにより絶縁基板15を得た。
【0248】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、ろう材層11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0249】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形は発生しなかった。
【0250】
<実施例6>
本実施例6では、図8に示した上記第3実施形態の積層材1の製造方法に従って積層材1を製造した。
【0251】
Ni層2、Al層5及びろう材層6として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0252】
Ni層2 :直径160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
Al層5 :直径160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層6:直径160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0253】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。Al層5を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層6を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0254】
また、中間層3は、Ni層2の下面上に蒸着されて形成されたCu蒸着膜からなる中間Cu層3cである。この中間Cu層3cの形成方法は次のとおりである。すなわち、Ni層2の下面上にその全面に亘ってPVD法としてのイオンプレーティング法によってCuを蒸着し、これにより、Ni層2の下面上に中間Cu層3cを形成した。中間Cu層3cの厚さは500nmである。この際に適用した成膜条件は、真空度:2×10−2Pa、Arガス供給量:75ml/min、プロセス圧力:2.2Pa、バイアス電圧:50V、アーク電流:80A、ヒータ温度:150℃、処理時間:5minである。
【0255】
また、Ti層4は、中間Cu層3c上に蒸着されて形成されたTi蒸着膜である。このTi層4の形成方法は次のとおりである。すなわち、中間Cu層3c上にその全面に亘ってPVD法としてのイオンプレーティング法によってTiを蒸着し、これにより、中間Cu層3c上にTi層4を形成した。Ti層4の厚さは1000nmである。この際に適用した成膜条件は、真空度:2×10−2Pa、Arガス供給量:75ml/min、プロセス圧力:2.2Pa、バイアス電圧:50V、アーク電流:90A、ヒータ温度:150℃、処理時間:10minである。
【0256】
次いで、一体化工程では、Ti層4とAl層5との接合と、Al層5とろう材層6との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行った。これにより積層材1を得た。この積層材1の各接合界面は拡散接合状態になっていることを確認し得た。
【0257】
この一体化工程で用いた各パンチ32の直径は150mmである。また、この一体化工程で適用した接合条件は、加熱温度540℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0258】
次いで、こうして得られた積層材1を縦30mm×横30mmの大きさに切断した後、積層材1と、セラミック層10と、ろう材層11と、金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した[ろう付け工程]。これにより絶縁基板15を得た。
【0259】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、ろう材層11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0260】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形は発生しなかった。
【0261】
<実施例7>
本実施例7では、図3に示した上記第1実施形態の積層材1の製造方法に従って積層材1を製造した。
【0262】
Ni層2、中間Al層3a、Ti層4、Al層5及びろう材層6として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0263】
Ni層2 :直径160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
中間Al層3a:直径160mm×厚さ0.012mmのAl板
Ti層4 :直径160mm×厚さ0.01mmの純Ti板
Al層5 :直径160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層6 :直径160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0264】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。中間Al層3aを形成するAl板の材質はA1100である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層5を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層6を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0265】
次いで、一体化工程では、Ni層2と中間Al層3aとTi層4とAl層5とろう材層6との積層体8を30個準備した。そして、図6に示すように、これらの積層体8を互いに重なり合う各積層体8、8間に導電性離型板35を介して積層した。離型板35は、直径150mm×厚さ2mmの円盤状のカーボン板からなるものである。そして、これらの積層体8を3Paの真空雰囲気中にてその積層方向に放電プラズマ焼結装置30の一対の黒鉛製パンチ32、32で一括して加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することでこれらの積層体8を一括して加熱し、これにより、各積層体8における互いに隣接する層同士を固定状態に同時に接合した。これにより積層材1を30個得た。この積層材1の各接合界面は拡散接合状態になっていることを確認し得た。
【0266】
この一体化工程で用いた各パンチの直径は150mmである。また、この一体化工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0267】
次いで、こうして得られた積層材1を縦30mm×横30mmの大きさに切断した後、積層材1と、セラミック層10と、ろう材層11と、金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した[ろう付け工程]。これにより絶縁基板15を得た。
【0268】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、ろう材層11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0269】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形は発生しなかった。
【0270】
<比較例1>
Ni層2、Ti層4、Al層5及びろう材層6として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0271】
Ni層2 :直径160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
Ti層4 :直径160mm×厚さ0.01mmの純Ti板
Al層5 :直径160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層6:直径160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0272】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層5を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層6を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0273】
次いで、Ni層2とTi層4とのAl層5とろう材層6との積層体を3Paの真空雰囲気中にてその積層方向に両パンチ32、32で加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで積層体を加熱し、これにより積層体における互いに隣接する層同士の接合を試みた。この際に適用した接合条件は、加熱温度540℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。その結果、Ni層2とTi層4との接合界面にて剥離が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0274】
本発明は、絶縁基板用積層材の製造方法、絶縁基板用積層材、絶縁基板及び半導体モジュールに利用可能である。
【符号の説明】
【0275】
1:積層材
2:Ni層
3:中間層
3a:中間Al層
3c:中間Cu層
4:Ti層
5:Al層
6:ろう材層
8:積層体
10:セラミック層
15:絶縁基板
17:放熱部材
20:半導体モジュール
21:半導体素子
30:放電プラズマ焼結装置
32:パンチ
35:導電性離型板(導電性離型部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に半導体素子が接合されるNi又はNi合金で形成されたNi層と、
前記Ni層の表面側とは反対側に配置されるとともに、Al若しくはAl合金で形成された中間Al層からなるか、又は、Cu若しくはCu合金で形成された中間Cu層からなる中間層と、
前記中間層の前記Ni層配置側とは反対側に配置されたTi又はTi合金で形成されたTi層と、
前記Ti層の前記中間層配置側とは反対側に配置されたAl又はAl合金で形成されたAl層と、を積層状に一体化する一体化工程を含むことを特徴とする絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項2】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項3】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項2記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項4】
前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項2記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項5】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項4記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項6】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ni層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項7】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項6記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項8】
前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項6記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項9】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項8記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項10】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ni層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、前記中間層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ti層と前記Al層との接合を放電プラズマ焼結法により行う請求項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項11】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を行う請求項10記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項12】
前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ti層と前記Al層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項10記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項13】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項12記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項14】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ti層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項15】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項14記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項16】
前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記Ti層と前記Al層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項14記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項17】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項16記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項18】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものであり、
前記Ti層は、前記Al層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記中間層と前記Ti層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項19】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項18記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項20】
前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記中間層と前記Ti層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項18記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項21】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項20記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項22】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ti層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、前記Al層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合を放電プラズマ焼結法により行う請求項1記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項23】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を行う請求項22記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項24】
前記積層材は、前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側に配置されたろう材層を備えており、
前記一体化工程では、前記Ni層と前記中間層との接合と、前記Al層と前記ろう材層との接合とを放電プラズマ焼結法により同時に行う請求項22記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項25】
前記一体化工程では、
前記Ni層と前記中間層と前記Ti層と前記Al層と前記ろう材層との積層体を複数準備するとともに、前記複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
次いで、前記複数の積層体の積層方向両側に配置された放電プラズマ焼結用の一対のパンチで前記複数の積層体をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ間にパルス電流を通電することにより、各積層体に対して所定の接合を同時に行う請求項24記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項26】
前記Al層は、純度4N以上の純Alで形成されている請求項1〜25のいずれかに記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項27】
表面に半導体素子が接合されるNi又はNi合金で形成されたNi層と、
前記Ni層の表面側とは反対側に配置されるとともに、Al若しくはAl合金で形成された中間Al層からなるか、又は、Cu若しくはCu合金で形成された中間Cu層からなる中間層と、
前記中間層の前記Ni層配置側とは反対側に配置されたTi又はTi合金で形成されたTi層と、
前記Ti層の前記中間層配置側とは反対側に配置されたAl又はAl合金で形成されたAl層とが、積層状に一体化されていることを特徴とする絶縁基板用積層材。
【請求項28】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ni層と前記中間層、前記中間層と前記Ti層、及び、前記Ti層と前記Al層がいずれも放電プラズマ焼結法により接合されている請求項27記載の絶縁基板用積層材。
【請求項29】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ni層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記中間層と前記Ti層、及び、前記Ti層と前記Al層がいずれも放電プラズマ焼結法により接合されている請求項27記載の絶縁基板用積層材。
【請求項30】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ni層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、前記中間層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ti層と前記Al層が放電プラズマ焼結法により接合されている請求項27記載の絶縁基板用積層材。
【請求項31】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ti層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、Ti板又はTi合金板から形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ni層と前記中間層、及び、前記Ti層と前記Al層がいずれも放電プラズマ焼結法により接合されている請求項27記載の絶縁基板用積層材。
【請求項32】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、Al板若しくはAl合金板から形成されたものか、又は、Cu板若しくはCu合金板から形成されたものであり、
前記Ti層は、前記Al層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ni層と前記中間層、及び、前記中間層と前記Ti層がいずれも放電プラズマ焼結法により接合されている請求項27記載の絶縁基板用積層材。
【請求項33】
前記Ni層は、Ni板又はNi合金板から形成されたものであり、
前記中間層は、前記Ti層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Ti層は、前記Al層上に蒸着されて形成されたものであり、
前記Al層は、Al板又はAl合金板から形成されたものであり、
前記Ni層と前記中間層が放電プラズマ焼結法により接合されている請求項27記載の絶縁基板用積層材。
【請求項34】
前記Al層の前記Ti層配置側とは反対側にろう材層が配置されており、
前記Al層と前記ろう材層が放電プラズマ焼結法により接合されている請求項27〜33のいずれかに記載の絶縁基板用積層材。
【請求項35】
前記Al層は、純度4N以上の純Alで形成されている請求項27〜34のいずれかに記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項36】
請求項27〜35のいずれかに記載の積層材を備えていることを特徴とする絶縁基板。
【請求項37】
請求項27〜35のいずれかに記載の積層材のNi層の表面に半導体素子がはんだ付けにより接合されていることを特徴とする半導体モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−248697(P2012−248697A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119547(P2011−119547)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)