説明

絶縁液で満たされた高電圧設備における膨張容器内への大気からの空気供給を減少させる方法、及び前記方法を実行する装置

【課題】絶縁液で満たされた高電圧設備における膨張容器内への大気からの空気供給を減少させる方法、及び前記方法を実行する装置に関し、当該装置の構成は、変圧器の新規稼動開始時には、熱劣化が既に生じた変圧器における構成とは異なっている。湿気と酸素に促進される絶縁システムの分解を制限し、高電圧設備の寿命を長くする。
【解決手段】本方法は、大気圧に対する規定の過圧に至るまでは、膨張容器からガスが外部の緩衝空間内へ受け渡され、前記過圧を上回る場合に初めてガスが大気へ放出され、大気圧に対する規定の負圧に至るまでは、外部の緩衝空間からガスが膨張容器内へ受け渡され、前記負圧を下回る場合に初めて選択的に大気から空気又は不活性ガスが緩衝空間内へ供給され、緩衝空間容積は、高電圧設備内の絶縁液の下方及び上方の作動温度(T, T)を用いることで決定されることで特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁液で満たされた高電圧設備における膨張容器(ないし補助容器)内への大気からの空気供給を減少させる方法に関する。それに加え、本発明は、前記方法を実行する装置に関し、当該装置の構成は、変圧器の新規稼動開始時には、熱劣化が既に始まった変圧器における構成とは異なっている。
【背景技術】
【0002】
(背景技術とその問題点)
高電圧設備(例えば変圧器)は、冷却のために絶縁液(例えばミネラルオイル)で満たされている。負荷変更並びに冷却設備出力や外気温度の変動は、充填オイルの明らかな温度変化、従って充填オイルの容積変化をもたらす。充填オイルの容積変化は、変圧器タンク上方の膨張容器により受容(吸収)される。膨張容器内では、大気とオイルレベルの直接接触が成されている。大気に対する圧力平衡は、端部において空気脱湿器(ブリーザ)とオイルヘッドで閉じられている配管を介して行われる。始まる熱劣化により酸素が変圧器の活動部分で消費される場合、並びに再飽和中に絶縁液をガス抜きする場合(新規稼動開始、修理)には、更に大気からの空気供給が発生する。大気に対するこの古典的な隔離システムはヨーロッパで実証されたにも拘らず、開発はそれから遠ざかり、主として酸素を排除するため、更には空気脱湿の手間(面倒さ)を回避するためにも、空気隔離を伴う隔離システムへと向っている。酸素においては、絶縁システムの寿命に対して直接的な関係が見てとれる。しかしそのための基準は欠如していて、その監視のための信頼性のある分析方法も同様である。
【0003】
公知の技術的な解決策は、直接的な空気接触を分離膜で置き換えるか、又は膨張容器内に窒素又は真空を封入する。しかしこれらの解決策は、以下の短所をもっている:
− 特に追加装備時にかかるコストが高い。
− 停止状態において追加装備をしなくてはならない。
− 効果のための基準が欠如している。
− 意図する酸素の完全除去が技術的な限界により実行可能ではない。
【0004】
酸素の複雑な役割が未だ十分には解明されていないので、今まではその低減への要求だけが確実なものとみなされていた。
【0005】
オイル自体内で活動(ないし活性)部分の分離を行う技術が知られている。つまり特許文献1では、変圧器容器に対して平行に位置し、管状に形成され、変圧器容器と液圧的に接続されている中空体が開示されている。この中空体内では浮動配置された密閉ピストンが案内されていて、この密閉ピストンは、一方では、変圧器容器内の充填絶縁オイルの特定絶縁耐力による絶縁液を用いて付勢され、他方では、任意の絶縁耐力を有する大気圧下の絶縁オイルを用いて付勢されている。封液として用いられる絶縁オイルは、中空体の上方に配置されている平衡容器内に収容されている。
【0006】
引用文献2は、空気混合物及び水による液汚染を軽減する装置を開示している。この装置は、内部に熱源のある主容器を有し、その熱源はその下部領域において管を介して、周辺大気に自由に通じている体積膨張容器と接続されている。純粋液と暖液との間には熱成層の安定層が形成され、この層は、自然発生的に熱源の下で、下方に位置する潜在的に汚染された冷液に対する境界層において発生し、その冷液は、主容器の下部領域において接続管及び体積膨張容器内にある。
【0007】
上記の短所はこれらの技術にも該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE 10 2005 054 812 A1
【特許文献2】DE 10035947 B4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特に直接的な空気接触を伴う膨張容器を、酸素含有量の持続低減を保ち、大気からの湿気混入を低減させるために改善することである。
【0010】
従って本発明の課題は、高電圧設備の膨張容器と接続されている遮断不能な空気緩衝空間であって、規定の限界範囲内での絶縁液システムのガスの出入(Gashaushalt)に起因する大気からの空気混入を制限する空気緩衝空間を創作し、且つ絶縁システムにおいて始まる熱劣化により同時に液内の溶解酸素が消費されることを利用し、それにより膨張容器内の空気の酸素含有量の低減を獲得し、従って継続的な自己調節(フィードバック)により酸素消費を低減させ、並びに湿気混入を低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するためには、特に直接的な空気接触を伴う膨張容器に関する以下の認識が援用される:
− 変圧器の新規稼動開始後、変圧器容器オイル(即ち変圧器容器内の絶縁オイル)は6週間から18ヶ月に至るまでの期間で空気飽和に達する(NIS基準)。
− ほぼ32000ppmという空中酸素の飽和濃度は、絶縁システムの熱分解が開始し且つ酸化反応が進行(ないし終了 ablaufen)するまでの間、数年に亘り保たれる。
− 変圧器容器オイル内の酸素濃度の低減は、膨張容器の空気空間内の酸素含有量に影響を及ぼすことはなく(熱異常のある場合にだけ確認される)、これは大気からの迅速な補充が行われるためである。
【0012】
前記の課題は、各々の請求項に記載した特徴により解決される。この際、基本的な考えは、外部の呼吸緩衝器を選択可能に不活性ガスの取り入れと組み合わせて利用することである。
【0013】
本発明に従う方法は、
− 大気圧に対する規定の過圧(オーバープレッシャ Ueberdruck)に至るまでは、膨張容器からガス(気体)が外部の緩衝空間内へ受け渡され、
− 大気圧に対する規定の負圧(アンダープレッシャ Unterdruck)に至るまでは、外部の緩衝空間からガスが膨張容器内へ受け渡され、
− 緩衝(空間)容積が、高電圧設備内の絶縁液の下方及び上方の作動温度(Arbeitstemperatur T, T)を用いることで決定されること
により特徴付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
大気圧に対する前記過圧を上回る場合には、緩衝空間からガスが、小型の内側のタンクの外殻部における管開口部を介して放出される。
【0015】
大気圧に対する前記負圧を下回る場合には、大気から空気が、平衡管を介し、そして小型の内側のタンクの外殻部における管開口部を介して緩衝空間内へ供給される。
【0016】
本発明の一実施形態では、大気圧に対する前記負圧を下回る場合において大気からの空気供給をより迅速に且つより強く減少させるために、不活性ガスが緩衝空間内へ供給される。
【0017】
別の一実施形態では、ガスの出入(Gashaushalt)の安定性を、緩衝空間内で絶対圧のために上限及び下限が固定されていて且つこれらの上限及び下限以外では大気を用いた圧力平衡が行われることにより改善することができる。
【0018】
本方法の適用により直接的に膨張容器及び緩衝空間が不活性ガスを用いて清浄化(パージ)されると特に有利である。不活性ガスとしては窒素が使用される。
【0019】
タンク内における絶縁液の充填容積を減少させることにより、大気からの空気供給の減少が軽減される。他方では、膨張容器の脱湿(呼吸)器に集合配管を介して複数のタンクを接続することにより、膨張容器内への大気からの空気供給の減少が増強される。また、タンクの緩衝空間が空気を通さない緩衝バッグを用いて拡大される場合も同じことが達せられる。
【0020】
膨張容器内への大気からの空気供給の減少について効果を検証するために、膨張容器内の絶対酸素含有量が測定される。
【0021】
本方法は、絶縁液とガス空間の間で直接接触を伴う膨張容器においても、分離膜を有する膨張容器においても適用することができる。
【0022】
本発明に従う装置は、閉じた円筒状の外側のタンクを有し、該外側のタンクの蓋には、蓋を有し且つ外側のタンクよりも小型の円筒状の第2の内側のタンクが取り付けられている。内側のタンクは下方に向かって開いていて、外側のタンクの底部に対して離間している。内側のタンクの下部外殻領域には管開口部があり該タンクの補償空間の上部領域へ通じている。外側のタンクは、接続部材を介し、膨張容器の脱湿(呼吸)器(ブリーザ)と接続されている。内側のタンクの補償空間からは、下方に向かって開口した折曲管をもって終端する水平管が、外側のタンクの外殻部を貫通して外部へ通じている。外側のタンク及び内側のタンク内には正確に量定された充填容積を有する絶縁液が含まれていて、それにより外側のタンク内には緩衝空間が形成され、内側のタンク内には補償空間が形成される。外側のタンクには、好ましくは外殻部の上部領域において単路活栓(2ポート弁)が配置されている。外側のタンクの外殻部には同様にフロートスイッチを配置することもでき、このフロートスイッチは、弁を介して不活性ガスの圧力容器と接続されている。
【0023】
両方のタンクの寸法並びに絶縁液の充填容積は、選択される作動温度、規定の圧力、及び絶縁液特性から導き出される。
【0024】
緩衝空間及び補償空間の作動容積を拡大するためには、複数の本装置を集合配管を介して膨張容器の脱湿(呼吸)器と相互接続することができる。緩衝空間を拡大するためには緩衝空間を容積可変の緩衝バッグと接続することもできる。集合配管には、大気に対して自由に開口する弁と接続する圧力センサを取り付けることができる。
【0025】
可能な一構成として、外側のタンク及び内側のタンクは立方体状又は直方体状であってもよい。
【0026】
別の一構成では、内側のタンクが底部を有し、該タンクが、1つの壁部が共通して利用され且つ該壁部の下部領域に管接続部が規定の高さで配置されているように外側のタンクと並んで配置されている。
【0027】
外部の天候状況に対し、日光入射に対する保護装置、及び極端なマイナス温度に対し、加熱装置が設けられている。
【0028】
全装置は、遮断(シャットオフ)不能である。
【0029】
(発明の効果)
本発明に従う方法、及び本方法を実行する装置は、以下の長所をもたらす:
− 湿気と酸素に促進される絶縁システムの分解が制限され、高電圧設備の寿命を長くすることができる。
− 液内の溶存酸素が対流により高電圧設備内へ達し、絶縁システムにおいて生ずる熱劣化により消費され、外部から新たな酸素が供給されることはない。
− 定期監視から本装置の設置の時点を検出することができ、この時点は遅くとも絶縁システムにおける熱劣化の開始と共に開始すべきものである。
− 本装置の調達と設置は安価であり、設置のために稼動中断を必要とすることもない。
− 酸素低減の効果を、膨張容器のガスの分析により追従することができる。
− 本装置内の絶縁液の充填レベルを介し、酸素低減の効果を変更することができる。
− 複数の本装置の相互接続及び/又は本装置の緩衝バッグとの連結が、膨張容器の大きさへの適合、並びに酸素低減の効果を可能にする。
− 本装置の使用は保全不要(メンテナンスフリー)であり、膨張容器における脱湿(呼吸)器の作動をも負荷軽減する。
− 大気圧に対する前記負圧を下回る場合の不活性ガスの配量(投与量)は、大気からの空気供給のより迅速でより強い減少を可能にする。
− 変圧器の開いた隔離システムは、擬制的に(いわば)閉じたシステムとなり、この際、膨張容器内で近似的なオンライン平衡ガスが発生するが、このことは分析監視にとって極めて興味深いことである。
【0030】
以下、図面に基づき本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】膨張容器の接続されている本発明に従う装置の概要を示す図である。
【図2】補助的な浮動体並びに緩衝バック用の接続部材を備えた実施例を示す図である。
【図3】上下左右に積み重ねられた複数の本装置の概要を示す図である。
【実施例】
【0032】
図1は、変圧器の膨張容器(ないし補助容器)に設けられ、遮断不能に接続されている本発明に従う装置の概要を示している。本装置は、閉じた円筒状の外側のタンク1を有し、タンク1の蓋2には中央においてタンク1よりも小型の円筒状の第2のタンク3が取り付けられている。これらのタンク1及び3は、同様に立方体状又は直方体状であってもよい。内側のタンク3は底部をもたず、外側のタンク1の底部に対して離間しており、外殻部の下部部分において管開口部4を有していて、管開口部4は管5を介してタンク3の上部部分へ通じている。内側のタンク3は固有の蓋6をもっている。
【0033】
タンク1の外殻部は上縁の下側において接続部材7並びに単路活栓(Einweghahn)11をもっている。外側のタンク1の外殻部には下部領域においてフロートスイッチ12が配置されていて、フロートスイッチ12は、弁13を介し、不活性ガスの圧力容器と接続されている。内側のタンク3の外殻部の上部部分には平衡管8が挿入されていて、水平に外側のタンク1の外殻部を貫通して外部へ通じ、下方に向かって開口されている。
【0034】
タンク3の蓋6が外され、タンク1及び3は、正確に決定された容積の絶縁液14(例えばトランスフォーマーオイル)で部分的に満たされ、絶縁液14は品質要求に適合していなくてもよい。従って外側のタンク1内には絶縁液4の上側に緩衝空間15が発生し、緩衝空間15は脱湿(呼吸)器(ブリーザ)9を介して膨張容器10の空気空間と接続されていて、この空気空間と1つの構成ユニットを形成している。タンク3内には絶縁液14の上側に補償空間16が存在する。絶縁液14は、膨張容器10内の空気と大気との間において酸素のための拡散隔壁(ないし拡散遮断層)の役割をもつ。管5内の管開口部4は、絶縁液14を拡散隔壁として動かさないために、緩衝空間15と大気との間の自由なガス交換を担うために用いられる。その作用を向上させるために、タンク3及び管5内の絶縁液表面を覆うための浮動体17が取り入れられている。拡散隔壁の強化のために、管5は、下開口部(複数)21を有し且つタンク1も通るU字状管20でもよく、この際にはそこにも浮動体17が取り入れられる(図2)。これらの浮動体17は、例えば蓋2における2つの蓋22を介してタンク1内へ満たされる(導入される)。外側のタンク1の外殻部の上部分には、緩衝バッグ(図示省略)を接続するための栓を備えた接続部材25が装着されている。
【0035】
(外側と内側の)両方のタンク1及び3の寸法並びに絶縁液14の充填容積は、選択されている作動温度、規定の圧力、及び絶縁液特性から導き出されている。
【0036】
外側のタンク1は、絶縁液14内の温度差を抑制するために、好ましくは外部から日光入射に対して(保護装置により)保護されている。それに加え、極端なマイナス温度の場合には(加熱装置により)加熱も可能である。本発明に従う装置の設置は水平に行わなければならない。
【0037】
そのように備え付けられたタンク1は以下の作動の仕方を有する。
【0038】
脱湿(呼吸)器9に対する外側のタンク1の接続は、集合配管18を介し、支配する大気圧下において膨張容器10内のオイルレベルが想定マークU及びO間にあるときに行われ、これらの想定マークU及びOには作動温度T及びTが割り当てられていて、これらの想定マークU及びOは最小値(Min.)と最大値(Max.)の範囲内にある。集合配管18は圧力センサ23と、大気への接続を有する弁24を含んでいる。膨張容器10内のオイルレベルの変化が生ずると、Tの方向に変圧器容器オイル温度が低下するときには外側のタンク1内のオイルレベルが上昇し、Tの方向に変圧器容器オイル温度が増加するときには内側のタンク3内のオイルレベルが上昇する。タンク1及び3の寸法並びに絶縁液14の充填容積は、選択されている作動温度T及びTの範囲内において膨張容器10内の空気圧が、最適な状態で大気圧の自然な変動範囲内に位置し得る規定の圧力範囲内に位置するように算定されている。
【0039】
作動温度T及びTの外側に位置する温度のためには、外側のタンク1内への大気の導入、或いはタンク1を介した膨張容器10からの空気の放出が行われる。大気圧の変動は外側のタンク1を介して容易に緩衝される。
【0040】
作動温度T及びTの選択のためには、多くの場合、出力稼動において変圧器容器オイルの夏場の最高温度及び冬場の最低温度を基準としてとることで十分である。その際、T未満の温度では、大気からの制限付き空気供給を許容することができる。極めて僅かな酸素混入のみが溶解状態において再び消費される。
【0041】
(上限)温度Tを超える加熱時には空気が大気へと放出される。従って本発明に従い、設定された圧力限界間では、自己調整式の自然システムが存在し、この自然システムはメンテナンスを必要とすることはない。起こり得る作動条件による極端な大気圧値の重なりが、大気圧変動によってのみ与えられる圧力範囲の拡大を導かないようにするために、圧力がセンサ23を用いて測定される。規定の圧力範囲からずれがある場合には、弁24を介し、大気との平衡処理(ないし均衡処理)が適時に行われる。
【0042】
外側のタンク1と内側のタンク3の加算されたオイル柱の高さは、特に酸素であるガスのために時間的に変化する拡散隔壁(ないし拡散遮断層)である。外側のタンク1内の空気緩衝と平行的に、膨張容器10内では、空気と、対流する変圧器容器オイルとの間で継続的なガス交換が行われる。溶解酸素は、絶縁システムにおいて生ずる熱劣化により活動(作動)部分で消費される。これらの経過の継続的な自己調節(フィードバック)により、膨張容器10内、また緩衝空間15内の空気の酸素含有量の低減が進行する(低減の程度が大きくなる)。結果として膨張容器10から変圧器容器内への酸素の追加提供は途絶える。酸素の最大低減には、拡散隔壁の品質により限界が設定される。
【0043】
膨張容器10内の空気の酸素含有量の迅速でより強力な低減に対する要求がより高い場合には、本方法の適用と共に直接的に膨張容器10及び外側のタンク1を、単路活栓(ワンウェイ弁)11を介し、膨張容器10の充填配管19内へ不活性ガスを取り入れることにより清浄化(パージ)することもできる。
【0044】
酸素含有量の低減の効果(程度)の監視は、単路活栓11からの空気サンプリングにより行うことができる。
【0045】
膨張容器10内の酸素含有量の低減の効果のための基準は、空気空間内の絶対酸素含有量自体だけとすることができる。この絶対酸素含有量を介して溶解酸素含有量を推定することができる。但しその逆は成り立たない。
【0046】
大気圧に対する規定の負圧を下回る場合に緩衝空間15内へ大気からの空気が達することを防止すべき別の一実施例では、不活性ガスが、外側のタンク1の外殻部に設けられたフロートスイッチ12により制御される弁13を介し、外側のタンク1に供給される。この際、不活性ガス供給は最大で大気圧に対する規定の過圧に達するまで行われるが、このことは、最も簡単な場合、時間制限を介して算定されて可能である。それにより外部から空気がシステム内へ進入しないので、中でも脱湿(呼吸)器が保護される。
【0047】
この実施例は、新規稼動開始、及びガス抜きされた絶縁液の存在する稼動状態にとって好適である。
【0048】
他の一実施例では、センサ23により制御される、大気に対する負圧を下回る場合、弁24の代わりに弁13を切り換えることができる。
【0049】
図1の本発明に従う装置の寸法については、最適な標準サイズを固定することが有利である。大型の膨張容器10のためには、図1による装置の複数を水平及び/又は鉛直に接続部材7を介して脱湿(呼吸)器9の前で集合配管18に相互接続させることができる(図3)。選択的に又は追加的に接続部材25を介して緩衝バッグを接続することもできる。
【0050】
ここでは図示しないが可能な一実施例では、大型の閉じたタンクが接続部材を介して膨張容器10の脱湿(呼吸)器9と接続されていて、前記タンクより小型の第2のタンクが底部を有し且つ外側の前記タンクと並んで配置されていて、それにより1つの壁部が共通して利用される。共通して利用される壁部には、下部領域において規定の高さの管接続部が配置されている。規定の充填容積をもつ絶縁液は、両方のタンク内に含まれていて、それにより大型のタンク内では緩衝空間が形成され、小型のタンク内では補償空間が形成される。小型のタンクの外殻部の上部部分又は蓋には(先端が)折り曲げられて下方に向かって開口している平衡管が挿入されている。
【0051】
本発明に従う方法は、分離膜を有する平衡容器においても適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 外側のタンク
2 蓋
3 内側のタンク
4 管開口部
5 管
6 蓋
7 接続部材
8 平衡管
9 脱湿(呼吸)器(ないし除湿器、ブリーザ)
10 膨張容器
11 単路活栓(Einweghahn, ワンウェイ弁)
12 フロートスイッチ
13 弁
14 絶縁液
15 緩衝空間
16 補償空間
17 浮動体
18 集合配管(マニホールド)
19 充填配管
20 U字状管
21 開口部
22 蓋
23 圧力センサ
24 弁
25 栓を備えた接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁液で満たされた高圧設備における膨張容器内への大気からの空気供給を減少させる方法であって、
− 大気圧に対する規定の過圧に至るまでは、膨張容器(10)からガスが外部の緩衝空間(15)内へ受け渡され、
− 大気圧に対する規定の負圧に至るまでは、外部の緩衝空間(15)からガスが膨張容器(10)内へ受け渡され、
− 緩衝空間容積が、高電圧設備内の絶縁液の下方及び上方の作動温度(T, T)により決定されること
を特徴とする方法。
【請求項2】
大気圧に対する前記過圧を上回る場合には、緩衝空間(15)からガスが、外側のタンク(1)の蓋(2)に設けられている小型の内側のタンク(3)の外殻部における管開口部(4)を介して放出されること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
大気圧に対する前記負圧を下回る場合には、大気から空気が、平衡管(8)を介し、そして外側のタンク(1)の蓋(2)に設けられている小型の内側のタンク(3)の外殻部における管開口部(4)を介して緩衝空間(15)内へ受け渡されること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
大気圧に対する前記負圧を下回る場合において大気からの空気供給をより迅速に且つより強く減少させるために、不活性ガスが緩衝空間(15)内へ、最大で大気圧に対する前記過圧に達するまで供給されること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
本方法の適用によって直接的に膨張容器(10)及び緩衝空間(15)が不活性ガスを用いて清浄化ないしパージされること
を特徴とする、請求項1又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記タンク(1、3)内における絶縁液(14)の充填容積を減少させることにより、膨張容器(10)内への大気からの空気供給の減少が軽減されること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
膨張容器(10)の脱湿呼吸器(9)に集合配管(18)を介して複数の前記タンク(1、3)を接続することにより、及び/又は、外側のタンク(1)の緩衝空間(15)に接続部材(25)を介して緩衝バッグを接続することにより、膨張容器(10)内への大気からの空気供給の減少が増強されること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
集合配管(18)内の絶対圧が測定され、規定の上限に対してずれがあるときには弁(24)を介して大気との圧力平衡が行われ、下限に対してずれがあるときには弁(24)又は弁(13)を介して大気との圧力平衡が行われること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
膨張容器(10)内への大気からの空気供給の減少の効果を検証するために、膨張容器(10)内の絶対酸素含有量が測定されること
を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
高電圧設備の液がガスと直接接触状態にある該高電圧設備における膨張容器内の空気の酸素含有量を低減させる装置であって、
− 蓋(2)を有する閉じた外側のタンク(1)(第1のタンク)が、接続部材(7)を介し、膨張容器(10)の脱湿呼吸器(9)と接続されていること、
− 外側のタンク(1)の蓋(2)には、蓋(6)を有する小型の第2の内側のタンク(3)が取り付けられていると共に、該内側のタンク(3)は、下方に向かって開いており、且つ外側のタンク(1)の底部に対して離間して配されており、下外殻領域において管(5)の管開口部(4)を有すること、
− 内側のタンク(3)の外殻部の上部には平衡管(8)が挿入されていて、該平衡管(8)は、水平に外側のタンク(1)の外殻部を通じて外部へ通じ、下方に向かって開口されていること、及び、
− 外側の第1のタンク(1)内には、規定の充填容積を有する絶縁液(14)が含まれていて、それにより外側の第1のタンク(1)内には緩衝空間(15)が形成され、内側の第2のタンク(3)内には補償空間(16)が形成されていること
を特徴とする装置。
【請求項11】
高電圧設備の液がガスと直接接触状態にある該高電圧設備における膨張容器内の空気の酸素含有量を低減させる装置であって、
− 大型の閉じたタンク(第1のタンク)が、接続部材を介し、膨張容器(10)の脱湿呼吸器(9)と接続されていること、
− 小型の第2のタンクが設けられていて、該第2のタンクが底部を有し、更には1つの壁部が共通して利用され且つ該壁部の下部領域に管接続部が規定の高さで配置されているように外側の前記タンクと並んで配置されていること、
− 小型の第2のタンクの外殻部の上部部分又は蓋には、折り曲げられて下方に向かって開口する平衡管が挿入されていること、及び、
− 規定の充填容積を有する絶縁液が第1、第2の両方のタンク内に含まれていて、それにより大型の第1のタンク内には緩衝空間が形成され、小型の第2のタンク内には補償空間が形成されていること
を特徴とする装置。
【請求項12】
外側の又は大型の第1のタンク(1)の外殻部にはフロートスイッチ(12)が配置されていて、該フロートスイッチ(12)は、弁(13)を介して不活性ガスの圧力容器と接続されていること
を特徴とする、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2のタンク(3)内には浮動体(17)が満たされていること
を特徴とする、請求項10、11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記管(5)はU字状管(20)として形成されていて、該U字状管(20)の底部には開口部(21)が設けられていて、該U字状管(20)及び前記第1、第2のタンク(1、3)内には浮動体(17)が満たされていること
を特徴とする、請求項10、11又は12に記載の装置。
【請求項15】
緩衝空間(15)及び補償空間(16)の作動容積を拡大するために、複数の本装置が集合配管(18)を介して膨張容器(10)の脱湿呼吸器(9)と相互接続されていて、集合配管(18)には、圧力センサ(23)と、大気と接続されている弁(24)とが含まれていること
を特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
緩衝空間(15)の作動容積を拡大するために、該緩衝空間(15)は接続部材(25)を介して緩衝バッグと接続されていること
を特徴とする、請求項10〜15のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−517129(P2011−517129A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504414(P2011−504414)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054018
【国際公開番号】WO2009/127539
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510273684)ガトロン ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】