説明

継合式中通し釣竿

【課題】内部に溜まった水の抵抗を釣糸が受け難く構成する。
【解決手段】竿管の前端部内側か後端部内側の少なくとも一方に釣糸案内用の釣糸ガイドリングGを有する継合式の中通し釣竿であって、少なくとも一本の前記竿管14の前記釣糸ガイドリングGと竿管本体との間に、該釣糸ガイドリングの近傍の前側釣竿内部空間14Kと後側釣竿内部空間12Kとを連通させる流路Rを設けるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は継合式中通し釣竿に関し、継合式では、振出式、並継式、逆並継式の何れも含まれる。
【背景技術】
【0002】
中通し釣竿は、釣りの最中においては糸絡みが防止されて使い勝手が良いという利点を有する反面、釣糸が竿管内部を挿通しているため、竿管内部には水が溜まり易い。また、仕掛けを放出する投擲時に釣糸が竿管内面に直接に接触して強い抵抗を受けないように、竿管内部に釣糸ガイド用の螺旋状釣糸ガイドや環状の釣糸ガイドリングを設けている。下記2つの特許文献には竿管内部の螺旋状釣糸ガイドや環状の釣糸ガイドリングが開示されている。環状の釣糸ガイドリングは、振出式や並継式では各竿管の後端部に設けられており、逆並継式では、各竿管の先端部に設けられている。
【特許文献1】特開平9−168351号公報
【特許文献2】特開平10−94346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記釣糸ガイドの存在に起因して一旦竿管内部に入った水滴は排出され難く、竿管内部に溜まり易い。特に、竿管内面からの高さの高い釣糸ガイドである環状の釣糸ガイドリングの近傍に多く溜まり易い。即ち、釣竿の前側を傾斜状に立てて釣糸を巻き取っている状態では、釣糸から扱き取られた水滴は後方に流れて各竿管の継合部にまで流れ落ち、該継合部に存在する釣糸ガイドリングの直前に溜まる。釣竿の前側を下げて巻き取っている状態では、前方に流れて継合部の釣糸ガイドリングの直後に溜まる。また、釣糸は水で濡れているため、釣糸を巻き取ったり、投擲したりしていなくても、釣竿が傾斜していれば、釣糸を介して水滴が流れ、釣糸ガイドリング内面に接触して釣糸ガイドリングの前後に滴下することもある。更には、投擲する場合、釣竿が傾斜状に立っている間は、継合部釣糸ガイドリングの直前に水が溜まり、これに釣糸が接触して抵抗が大きくなる虞が高い。釣竿の前側が下がっている際は、継合部の釣糸ガイドリングの直後に水が溜まり、これに接触して抵抗が大きくなる虞が高い。このように、水滴が溜まっている状態で投擲すると、継合部における釣糸ガイドリング近傍に溜まった水に釣糸が接触して水抵抗を受け、釣糸が円滑に引き出されず、所望のポイントに投擲できない場合が生じる。
依って解決しようとする課題は、内部に溜まった水の抵抗を釣糸が受け難く構成した継合式中通し釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明では、竿管の前端部内側か後端部内側の少なくとも一方に釣糸案内用の釣糸ガイドリングを有する継合式の中通し釣竿であって、少なくとも一本の前記竿管の前記釣糸ガイドリングと竿管本体との間に、該釣糸ガイドリングの近傍の前側釣竿内部空間と後側釣竿内部空間とを連通させる流路を設けていることを特徴とする継合式中通し釣竿を提供する。
竿管本体とは、ガイドリング等の部品を有する竿管から、こうした部品を除いた管状体のみをいう。
【0005】
第2の発明では、前記釣糸ガイドリングを保持している保持部品が前記竿管本体に装着されており、前記流路は、該保持部品外周と前記釣糸ガイドリングの外周との間に設けられているか、該保持部品内周と前記釣糸ガイドリング外周との間に設けられているか、該保持部品外周と竿管本体内周との間に設けられている請求項1記載の継合式中通し釣竿を提供する。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明では、竿管の前後端部の何れかの端部の内側に釣糸ガイドリングを有するのであるから、これは竿管同士の継合部における釣糸ガイドリングであり、この釣糸ガイドリングと竿管本体との間に、該釣糸ガイドリングの近傍の前側釣竿内部空間と後側釣竿内部空間とを連通させる流路を設けているため、釣糸ガイドリングの前側又は後側の何れの側に溜まった水もこの流路を介して他側に流れるため、溜まった水の表面高さを下げる(径方向の、より外側に位置させる)ことができ、釣糸が接触する虞を防止できる。
【0007】
第2の発明では、竿管本体に釣糸ガイドリングを接着固定させる場合と異なり、竿管本体に装着させる保持部品に釣糸ガイドリングを保持させる構造、即ち、小さな別部品である保持部品に保持させる構造のため、どこに流路を設けるにせよ、流路に誤って接着剤が流れ込んでその流路を潰す虞が少なく、釣糸ガイドリングの接着作業が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る継式中通し釣竿の一例として、振出式中通し釣竿の側面図を示しており、図2はその一つの継合部とその前後とを併せた領域Z2の拡大縦断面図、図3は図2の前側竿管のみを示す(a)図と、その矢視線C−Cによる横断面(b)図とを示している。元竿10と、第1中竿12と、第2中竿14と、穂持竿16と、穂先竿18とが、夫々、振出式に継ぎ合わされている。各竿管本体は、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製である。元竿10の前方位置には、竿管内部に釣糸を導入する釣糸導入ガイド部10Gが設けられている。
【0009】
第1中竿12と第2中竿14との継合部TZ付近の図である図2を参照する。夫々の竿管本体内面には、螺旋状の釣糸ガイド12G,14Gが設けられている。また、第2中竿14の後端部には、環状の釣糸ガイドリングGを保持した保持部品14Hが当該竿管本体に対して螺着されている。なお本願では、この保持部品の外周側にOリングORを設けており、保持部品の螺着緩みを防止している。また、釣糸を竿管内の中心に案内するため、釣糸ガイドリングGの内径は、当該継合部TZ付近の前記螺旋状釣糸ガイド14Gの内径よりも一段と小さく形成している。
【0010】
上記保持部品14Hには、釣糸ガイドリングGの外周よりも径方向外側位置に、概ね長手方向に延伸した(厳密には後方側の下がった傾斜状である)適宜数の流路Rを設けている。この流路は保持部品の円周方向に均等に多く設けられているほど好都合である。その理由は、数が多いと、継ぎ合わせ時の第2中竿14の円周方向位置に依存しないで常に流路の一つが、図2のように、重力方向の下側である下方に位置できるからである。この流路は、釣糸ガイドリングGの近傍で前側の保持部品内面14HSが区画形成している前側釣竿内部空間14Kと、釣糸ガイドリングG近傍で後側の第1中竿12の内面12Sが区画形成している後側釣竿内部空間12Kとを連通している。
【0011】
このため、前記保持部品内面14HSに溜まった水は、流路Rを介して後側釣竿内部空間12K側に流れ去る。また、第1中竿12の内面12Sに溜まった水は、所定以上の高さになると、流路Rを介して前側釣竿内部空間14K側に流れる。こうして、釣糸ガイドリングGの前側近傍か後側近傍に溜まった水の水面高さを低くでき、釣糸が当該釣糸ガイドリングGを挿通する際、釣糸が溜まった水に接触することによる水抵抗を低減できる。
【0012】
図4は本願の第2形態例を図示し、逆並継式中通し釣竿の例であり、図2に対応し、継合部領域の拡大縦断面図である。図5の(a)図は図4の後側竿管のみを示し、(b)図はその前端視(正面視)を図示している。第1中竿12’の竿管本体の内面には螺旋状の釣糸ガイド12Gが、第2中竿14’の竿管本体の内面には螺旋状の釣糸ガイド14Gが設けられている。また、第1中竿12’の前端部には環状の釣糸ガイドリングGが設けられている。
【0013】
第1中竿の前端部内周に設けられ、釣糸ガイドリングGの外周に隣接して長手方向に延伸した流路Rが円周方向に適宜数設けられている。流路の数は1箇所以上であればよく、この例では2箇所であり、3箇所以上を円周方向に均等間隔で配設してもよい。この例のように流路が180度離隔した2箇所の場合、第1中竿12’を元竿に対して継ぎ合わせた際、その一方の流路Rの(円周方向)角度位置が、図1の元竿の釣糸導入ガイド部10Gの位置する角度位置に対応位置するように、少なくとも第1中竿12’の後方部外周に目印を設けておき、この目印を見ながら角度位置を合わせるとよい。この流路Rは、釣糸ガイドリングGの近傍で前側の第2中竿14’の内面14Sが区画形成している前側釣竿内部空間14Kと、釣糸ガイドリングG近傍で後側の第1中竿12’の内面12Sが区画形成している後側釣竿内部空間12Kとを連通させている。
【0014】
従って、2つの内の何れかの流路Rが重力方向の下方位置に位置している場合は、第2中竿内面14Sに溜まった水は、所定以上の高さになると流路Rを介して後側釣竿内部空間12K側に流れる。また、第1中竿12’の内面12Sに溜まった水は流路Rを介して前側釣竿内部空間14K側に流れ去る。こうして、釣糸ガイドリングGの前側近傍か後側近傍に溜まった水の水面高さを低くでき、釣糸が当該釣糸ガイドリングGを挿通する際の釣糸が溜まった水に接触することによる水抵抗を低減できる。
【0015】
図6は本願の第3形態例を図示し、図5に対応する図である。図5に示す第2形態例との相違は、流路Rが第1中竿12”の竿管本体に設けられているのではなく、環状の釣糸ガイドリングGの円形外周の一部を削り取った形状とすることで形成していることが異なる。即ち、釣糸ガイドリングの円形外周の一部を、180度離隔した角度位置で直線状に(円の弦で)切り取った形状としている。この場合も作用効果は、第2形態例の場合と同様である。
【0016】
上記第3形態例の第1中竿12”の竿管本体内周と釣糸ガイドリングGの外周とが区画形成する流路Rは、第1形態例においても同様に適用できる。即ち、保持部品14Hの内周と、端面視が図6の(b)図のような形状に形成した釣糸ガイドリングGの外周とで流路Rを区画形成することができる。
その他、竿管本体内周と、装着された保持部品の外周との間に流路を形成することもできる。
【0017】
以上の他、並継式の中通し釣竿においても同様に構成できる。即ち、図4の釣竿の前後方向を逆にしたと考えればよい。図4においては、第1中竿12’が後側であり、第2中竿14’が前側であるが、第1中竿12’を前側の竿管と考え、第2中竿14’を後側の竿管と考える。作用効果や変形例等は他の形態例の場合と同様である。
また、以上は第1中竿と第2中竿との継合部における説明であるが、他の竿管同士の継合部においても同様に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、振出式、並継式、逆並継式の各継式中通し釣竿に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明に係る継式中通し釣竿の第1形態例の側面図を示す。
【図2】図2は図1の領域の拡大縦断面図である。
【図3】図3は図2の前側竿管を示す図である。
【図4】図4は第2形態例を図示し、図2に対応する図である。
【図5】図5は図4の後側竿管を示す図である。
【図6】図6は第3形態例を図示し、図5に対応する図である。
【符号の説明】
【0020】
12 第1中竿
12K 後側釣竿内部空間
14 第2中竿
14H 保持部品
14K 前側釣竿内部空間
G (環状の)釣糸ガイドリング
R 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿管の前端部内側か後端部内側の少なくとも一方に釣糸案内用の釣糸ガイドリングを有する継合式の中通し釣竿であって、
少なくとも一本の前記竿管の前記釣糸ガイドリングと竿管本体との間に、該釣糸ガイドリングの近傍の前側釣竿内部空間と後側釣竿内部空間とを連通させる流路を設けている
ことを特徴とする継合式中通し釣竿。
【請求項2】
前記釣糸ガイドリングを保持している保持部品が前記竿管本体に装着されており、前記流路は、該保持部品外周と前記釣糸ガイドリングの外周との間に設けられているか、該保持部品内周と前記釣糸ガイドリング外周との間に設けられているか、該保持部品外周と竿管本体内周との間に設けられている請求項1記載の継合式中通し釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−284839(P2009−284839A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142328(P2008−142328)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】