説明

継式中通し釣竿とその製法

【課題】継式中通し釣竿の内部に侵入した水滴の排出を容易にさせ、また、可及的に軽量化を図る。
【解決手段】複数本の繊維強化樹脂製竿管を継ぎ合わせて使用する継式中通し釣竿であって、穂持竿を含む穂持竿以降元寄りの竿管の内、内部に螺旋状釣糸ガイドGが配設されている少なくとも1本の竿管において、その先端部がその後方領域10Hに比べて急な先細テーパに形成されていて、前記後方領域に連続している先細急テーパ部10Tを有し、螺旋状釣糸ガイドの先部分が前記先細急テーパ部に位置しており、該先部分のガイド高さH1が、前記後方領域に位置していると共に前記先部分に隣接する位置部分の螺旋状釣糸ガイドのガイド高さH2よりも低く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継式の中通し釣竿とその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部に釣糸ガイドを有する釣竿は、その釣糸ガイドに釣糸が絡み易いため、中通し釣竿が使用されている。この中通し釣竿は、竿管内部に螺旋状の釣糸ガイドを配設している。その例として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−116419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、中通し釣竿では内面に螺旋状釣糸ガイドが配設されているため、釣糸を介して竿管内部に侵入した水滴が外部に排出され難い。また、長い範囲に亘って螺旋状釣糸ガイドが設けられているため、一般に、外部釣糸ガイドの釣竿よりも重い。持ち重り感低減のために、釣竿が少しでも軽量であることは非常に重要である。
依って解決しようとする課題は、継式中通し釣竿の内部に侵入した水滴の排出を容易にさせることである。また更には、可及的に軽量化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて第1の発明は、複数本の繊維強化樹脂製竿管を継ぎ合わせて使用する継式中通し釣竿であって、穂持竿を含む穂持竿以降元寄りの竿管の内、内部に螺旋状釣糸ガイドが配設されている少なくとも1本の竿管において、その先端部がその後方領域に比べて急な先細テーパに形成されていて、前記後方領域に連続している先細急テーパ部を有し、螺旋状釣糸ガイドの先部分が前記先細急テーパ部に位置しており、該先部分のガイド高さが、前記後方領域に位置していると共に前記先部分に隣接する位置部分の螺旋状釣糸ガイドのガイド高さよりも低く形成されていることを特徴とする継式中通し釣竿を提供する。
【0006】
また、第2の発明では、第1発明の釣糸ガイドの先部分の前側領域に補強層が設けられており、該先部分に隣接した位置における前記補強層の厚さが、該先部分のガイド高さと実質同じであるよう構成する。
【0007】
第3の発明は、芯金の上に適宜な間隔を設けつつ、所定の肉厚を有するテープを螺旋状に巻回し、前記芯金の適宜位置から前側の前記テープの表面部を、該領域の縦断面図において先細状となるように削る工程を有し、前記隙間に紐状の釣糸ガイド素材を配設して定法に従ってこれらの上に竿管本体層用プリプレグを巻回して加圧加熱成形することを特徴とする継式中通し釣竿の製法を提供する。
第4の発明は、芯金の上に適宜な間隔を設けつつ、所定の肉厚を有するテープを螺旋状に巻回すると共に、前記隙間に紐状の釣糸ガイド素材を巻回配設し、前記芯金の適宜位置から前側全部の前記釣糸ガイド素材と前記テープとを併せた領域の表面部を、該領域の縦断面図において先細状となるように削る工程を有し、定法に従ってこれらの上に竿管本体層用プリプレグを巻回して加圧加熱成形することを特徴とする継式中通し釣竿の製法を提供する。
【0008】
第5の発明は、第3と第4の発明の前記表面部の削り取りによって薄くなったテープの先端部の高さに対応する厚さの補強層用プリプレグを、該テープ先端部に隣接した前側領域に配設する工程を更に有するよう構成する。
【発明の効果】
【0009】
振出式の継式中通し釣竿では、先細急テーパ部は、元来、継ぎ合わせのために必要であり、第1の発明では、この部分の螺旋状釣糸ガイドの高さを低くすれば、水排出用として役立つ。また、並継式では、継合用には先拡がり部かストレート部が必要であるが、特に水抜き用として継合部の直後に先細急テーパ部を設け、この部分の螺旋状釣糸ガイドの高さをその後方位置のものより低くすれば、水排出用として役立つ。
【0010】
従来は、竿管の内部に配設した螺旋状釣糸ガイドは全長に亘って実質同じ高さを有しており、竿管本体層の蛇行を防止するために、釣糸ガイドの前端部に隣接して設ける補強層の厚さは、該釣糸ガイドの前端部の高さと実質同じであり、必ずしも軽量化には寄与していない。第2の発明では、螺旋状釣糸ガイドの先部分が先細急テーパ部に位置して、該先部分のガイド高さを、先細急テーパ部に隣接する後方領域(本体部分)の位置の隣接螺旋状釣糸ガイド部位よりも低くし、この螺旋状釣糸ガイドの先部分の前側に隣接する補強層は、この先部分のガイド高さと実質同じ厚さを端部に有し、その分軽量化されている。
【0011】
第3又は第4の発明の製法によれば、第1の発明に係る竿管が製造でき、先細急テーパ部と、その内面に設けられて高さの低い螺旋状釣糸ガイドが形成でき、このため水排出が容易になる。
第5の発明では、薄くなったテープの先端部の高さに対応する補強層用プリプレグを配設するため、これらの上に配設する本体層用プリプレグの蛇行が防止されると共に、配設領域が補強されて第2の発明に係る竿管が製造でき、釣竿の可及的な軽量化も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1は本発明に係る継式中通し釣竿であって、振出式の釣竿側面図、図2は図1のB部の拡大縦断面図、図3は図1の釣竿の元側竿管製造方法の説明図、図4は図3のD部の拡大縦断面図、図5は図3の段階よりも進んだ製造段階での部分縦断面説明図、図6は図5のF部の拡大縦断面図である。この中通し釣竿は、元側竿管10と穂先側竿管20とを振出式に継ぎ合わせている。各竿管共に、エポキシ樹脂等の合成樹脂をマトリックスとし、炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製竿管である。この例では、本願発明が直接適用されているのは元側竿管である。
【0013】
元側竿管10は、緩やかな前細テーパ部(とストレート部)からなる本体部分10Hとこれに隣接した先細急テーパ部10Tとを有し、この先細急テーパ部において穂先側竿管20を振出式に継ぎ合わせている。また、本体部分10Hの後部所定位置にはリールを装着するリール装着部12が設けられており、その隣接後側領域はグリップ部14である。また、各竿管10,20の内部には螺旋状の釣糸ガイドGが配設されている。
【0014】
元側竿管10に対応する領域全体の表面が、段差の無い滑らかな芯金30を用意し、この上に、釣糸ガイドGの大きさ(径寸法)を考慮した厚さの耐熱性の厚肉テープ40を適宜な間隔Sを設けつつ螺旋状に巻回し、芯金の先端部近くを所定範囲30Z残して終端すべく、芯金の軸線に直交する方向にカットする。この厚肉テープ40の巻回された状態において、所定位置から先部の領域全体の厚肉テープ40’を、芯金の先方に行くに従って先細形状になるように、即ち、図4において先細になるように、適宜な研磨加工手段や研削加工手段によって削る。
【0015】
上記の研削作業の後に、厚肉テープ40間の隙間Sに紐状の釣糸ガイド素材G’を巻回させる。その後、上記所定範囲30Zの表面に、研削された厚肉テープ40’の前端厚さと同じ厚さの端部を有する補強層18となる補強層用プリプレグ18’を巻回し、これと共に又はこの巻回の後に、竿管10となる本体層用プリプレグ10H’,10T’を巻回する。ここで、本体層用プリプレグ10H’,10T’とは、竿管本体層用プリプレグが芯金の軸線方向に分断されているのではなく、上記の本体部分10Hと前細急テーパ部10Tとに対応した領域にプリプレグが巻回されていることを示したに過ぎない。この後は、緊締テープを巻回等して加圧加熱成形し、芯金30と厚肉テープ40を取り除くと、図1や図2の元側竿管10が形成される。
【0016】
上記の如く、竿管10は加圧しつつ加熱成形されるため、紐状の釣糸ガイド素材G’は、どの位置でも厚肉テープの厚さを高さとする釣糸ガイドGに形成される。即ち、研削された領域の厚肉テープ40’の隙間Sに配設された釣糸ガイド素材G”から成る釣糸ガイドの高さH1等は、研削されなかった厚肉テープの隙間Sに配設された釣糸ガイド素材G’から成る釣糸ガイドの高さH2よりも低く形成されている。従って、螺旋状釣糸ガイドGの先端前側に位置する補強層18の、螺旋状釣糸ガイドGの先端部に対面する位置の厚さは、螺旋状釣糸ガイドGの先端部の高さH1と実質的に同じである。
【0017】
各図における記号KBの範囲は、厚肉テープ40が研削された領域を示しており、芯金の先細テーパ率に加えて、研削厚肉テープの先細テーパ率が加わった先細急テーパ部に対応する領域を示している。竿管先部領域にこうした先細急テーパ部の領域KBが存在して、その内面の釣糸ガイドGの高さが、その後方のものよりも低いと、竿管内部に侵入した水滴を排出するのに好都合である。また、厚肉テープを研削しない従来構造と比べて、厚肉テープ40の先端位置から先方領域である、厚肉テープを使用しない領域(図4の30Zの領域)の竿管本体層の、製造時における蛇行を防止するためにも必要な補強層18の厚さを薄くできる。このため、無駄な補強層厚さを必要とせず、軽量化にも寄与する。なお、補強層18の後端部(奥部)が徐々に高くなる傾斜面を有していると更に水滴を排出し易くできる。
【0018】
以上の説明では、芯金30に厚肉テープを巻回した後、その隙間Sに紐状の釣糸ガイド素材G’を巻回したが、これらを一緒に巻回作業してもよく、また、厚肉テープ巻回の隙間Sを覆うように、薄肉のテープやシートを配設した後に、紐状の釣糸ガイド素材G’を巻回配設してもよい。更には、厚肉テープ間隙間Sに釣糸ガイド素材G’を巻回した後に、該ガイド素材と厚肉テープとを共に研削してもよい。また、厚肉テープ40の横断面形状が異なるものを用いて螺旋状釣糸ガイドGの断面形状を変えることができる。例えば、両側面が芯金30に向かって末広がり状の傾斜を有する、即ち台形状の横断面を有していて、厚肉テープ間隙間Sを適宜調節することで、釣糸ガイドGの断面形状を台形状にしたり、三角形状にすることもできる。
【0019】
図7は、以上の実施形態例と異なり、先細急テーパ部の領域KB内面を階段状に先細に形成した参考例である。この形態は、厚肉テープ40が、先端側になるに従って薄肉となるテープを用いて形成でき、製造途中で研削する必要はない。
【0020】
図8は本発明に係る他の中通し釣竿の例であり、並継式釣竿である。従って、先細急テーパ部10Tは本体部分10Hの前側に隣接しているが、竿管の先端継合部10T”は先細急テーパ部ではなく、ストレートか先拡がり部である。しかし、螺旋状釣糸ガイドGの先部分の高さが、これに隣接する本体部分の螺旋状釣糸ガイド高さH2よりも低く、補強層18の前記先部分の先端部に対面する部位の厚さは、該先部分の先端部の高さH1と実質同じであることは、上記の振出式の実施形態例と変わらない。従って、効果も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、振出式と並継式の継式中通し釣竿に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明に係る継式中通し釣竿であって、振出式の釣竿側面図である。
【図2】図2は図1のB部の拡大縦断面図である。
【図3】図3は図1の釣竿の元側竿管製造方法の説明図である。
【図4】図4は図3のD部の拡大縦断面図である。
【図5】図5は図3の段階よりも進んだ製造段階での部分縦断面説明図である。
【図6】図6は図5のF部の拡大縦断面図である。
【図7】図7は参考例の部分縦断面図である。
【図8】図8は本発明に係る他の中通し釣竿の実施形態例を示す図2に対応する図である。
【符号の説明】
【0023】
10 元側竿管
10H 本体部分
10T 先細急テーパ部
40 厚肉テープ
40’ 研削された部分の厚肉テープ
G 螺旋状釣糸ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の繊維強化樹脂製竿管を継ぎ合わせて使用する継式中通し釣竿であって、穂持竿を含む穂持竿以降元寄りの竿管の内、内部に螺旋状釣糸ガイドが配設されている少なくとも1本の竿管において、その先端部がその後方領域に比べて急な先細テーパに形成されていて、前記後方領域に連続している先細急テーパ部を有し、螺旋状釣糸ガイドの先部分が前記先細急テーパ部に位置しており、該先部分のガイド高さが、前記後方領域に位置していると共に前記先部分に隣接する位置部分の螺旋状釣糸ガイドのガイド高さよりも低く形成されていることを特徴とする継式中通し釣竿。
【請求項2】
前記釣糸ガイドの先部分の前側領域に補強層が設けられており、該先部分に隣接した位置における前記補強層の厚さが、該先部分のガイド高さと実質同じである請求項1記載の継式中通し釣竿。
【請求項3】
芯金の上に適宜な間隔を設けつつ、所定の肉厚を有するテープを螺旋状に巻回し、
前記芯金の適宜位置から前側の前記テープの表面部を、該領域の縦断面図において先細状となるように削る工程を有し、
前記隙間に紐状の釣糸ガイド素材を配設して定法に従ってこれらの上に竿管本体層用プリプレグを巻回して加圧加熱成形する
ことを特徴とする継式中通し釣竿の製法。
【請求項4】
芯金の上に適宜な間隔を設けつつ、所定の肉厚を有するテープを螺旋状に巻回すると共に、前記隙間に紐状の釣糸ガイド素材を巻回配設し、
前記芯金の適宜位置から前側全部の前記釣糸ガイド素材と前記テープとを併せた領域の表面部を、該領域の縦断面図において先細状となるように削る工程を有し、
定法に従ってこれらの上に竿管本体層用プリプレグを巻回して加圧加熱成形する
ことを特徴とする継式中通し釣竿の製法。
【請求項5】
前記表面部の削り取りによって薄くなったテープの先端部の高さに対応する厚さの補強層用プリプレグを、該テープ先端部に隣接した前側領域に配設する工程を更に有する請求項3又は4記載の継式中通し釣竿の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−193840(P2011−193840A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66316(P2010−66316)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】