説明

継手構造及び満水試験方法

【課題】テストボールによる満水試験において確実な止水性が得られる継手構造を提供する。
【解決手段】上流側の排水管11と、下流側の排水管12と、上流側の排水管11と下流側の排水管12を接続する継手21と、を備える排水管の継手構造Cである。
そして、上流側の排水管11と継手21の間又は下流側の排水管12と継手21の間には、外側から内部を視認できる透明筒部30が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手構造及び満水試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排水配管施工では、管路に不備がないかどうか配管内に水を満たして漏水を確認する満水試験によって確認することが一般的である。
【0003】
この満水試験では、配管の要所に専用の満水試験用継手を配置する必要があるが、この満水試験用継手は高価であるため、代替手段として掃除口継手を設置したうえで、掃除口継手からテストボールと呼ばれる風船型止水プラグを管内に挿入し、膨らませて満水試験を行うことも一般に行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、膨張式止水栓と加圧装置と減圧装置とを備えた満水試験装置が開示されている。この構成によれば、減圧装置によって膨張式止水栓の内部を減圧して収縮させることで、膨張式止水性を管内に出し入れしやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−9196号公報
【特許文献2】特開平7−139004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、テストボールを用いる方法では、管軸とテストボールの中心とが一致せず、斜めに膨らむことで所定の止水性が発揮されないことがある。
【0007】
このため、施工現場ではテストボールの封入圧をメーカーの推奨値以上に加圧して膨らませて無理に止水することになる。そうすると、テストボールが破損してしまうおそれがあった。特に、特許文献2に示すような内面に螺旋状にリブが形成された螺旋管では、止水性を保持することが困難となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、テストボールによる満水試験において確実な止水性が得られる継手構造と、この継手構造を用いる満水試験方法と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の継手構造は、上流側の排水管と、下流側の排水管と、前記上流側の排水管と前記下流側の排水管を接続する継手と、を備える排水管の継手構造であって、前記上流側の排水管と前記継手の間、又は前記下流側の排水管と前記継手の間には、外側から内部を視認できる透明筒部が設けられることを特徴とする。
【0010】
また、前記排水管と前記透明筒部の間にはスペーサ管が設置されるとともに、前記スペーサ管の両側の接続箇所はカップリング継手によって覆われる構成とすることができる。
【0011】
さらに、前記透明筒部の内径は、前記排水管の内径よりも大きく形成される構成とすることができる。
【0012】
そして、前記透明筒部の中心軸は、前記排水管の中心軸に対して偏心して配置される構成とすることができる。
【0013】
また、本発明の満水試験方法は、上記した排水管の継手構造を用いる排水管の満水試験方法であって、前記透明筒部の内部に前記スペーサ管を取外した箇所からテストボールを挿入する挿入工程と、前記透明筒部を通じて外側から内部を視認しつつテストボールを膨らませる膨張工程と、上流側から水を注入する注水工程と、所定時間経過後に漏水の有無を確認する確認工程と、確認後にテストボールを収縮させつつ排水する収縮排水工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の継手構造は、上流側の排水管と、下流側の排水管と、上流側の排水管と下流側の排水管を接続する継手と、を備える排水管の継手構造であって、上流側の排水管と継手の間又は下流側の排水管と継手の間には、外側から内部を視認できる透明筒部が設けられることを特徴とする。
【0015】
したがって、透明筒部を通じて外側から内部を視認しつつテストボールを挿入できることで、テストボールの中心を管軸に合わせやすくなるため、確実な止水性が得られる。
【0016】
また、排水管と透明筒部の間にはスペーサ管が設置されるとともに、スペーサ管の両側の接続箇所はカップリング継手によって覆われる構成とすることで、スペーサ管を取外した箇所からテストボールを挿入できるようになる。
【0017】
さらに、透明筒部の内径は、排水管の内径よりも大きく形成されることで、単管式排水システムの横枝管の合流部などにおいて通気のための断面を確保できる。
【0018】
そして、透明筒部の中心軸は、排水管の中心軸に対して偏心して配置されることで、継手の内面の旋回羽根に排水を当てて、立て管内の気流や排水流の流れをコントロールすることができる。
【0019】
また、本発明の満水試験方法は、上記した排水管の継手構造を用いる排水管の満水試験方法であって、透明筒部の内部に前記スペーサ管を取外した箇所からテストボールを挿入する挿入工程と、前記透明筒部を通じて外側から内部を視認しつつテストボールを膨らませる膨張工程と、上流側から水を注入する注水工程と、所定時間経過後に漏水の有無を確認する確認工程と、確認後にテストボールを収縮させつつ排水する収縮排水工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
したがって、スペーサ管を取外した箇所から容易にテストボールを挿入できるようになるうえ、テストボールを視認しつつ膨張させることができるため、満水試験の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の継手構造の構成を説明する側面図である。
【図2】配管システム全体の構成を説明する説明図である。(a)は二管式排水システムの場合であり、(b)は単管式排水システムの場合である。
【図3】満水試験方法について説明する説明図である。
【図4】実施例2の継手構造の構成を説明する側面図である。
【図5】実施例3の継手構造の構成を説明する側面図である。
【図6】実施例4の継手構造の構成を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0023】
まず、図2を用いて本発明の継手構造C,C1を備える配管システムとしての二管式排水システムS1(図2(a)参照)及び単管式排水システムS2(図2(b)参照)の全体構成を説明する。
【0024】
このうち、二管式排水システムS1は、排水立て管86とは別に通気立て管87を用いる方式で、ループ通気管88によるループ通気方式などによって管内の圧力変動を緩和して誘導サイホン作用を低減する。
【0025】
具体的には、二管式排水システムS1は、便器81、浴槽82、流し台83、洗面器84などの排水を流すための排水立て管86と、排水立て管86の上下端を接続する通気立て管87と、各階に設けられたループ通気管88と、を有している。
【0026】
また、単管式排水システムS2は、通気立て管を用いない方式であるため、排水立て管70は通気立て管としての役目も同時に果たす必要がある。したがって、この通気のための断面確保が重要となる。
【0027】
具体的には、単管式排水システムS2は、便器81、浴槽82、流し台83、洗面器84などの排水を流すための排水立て管70と、過大な管内圧力が発生しないような特殊形状の集合管継手71と脚部継手72と、を有している。
【0028】
そして、これらの配管システムには、図1に示すように、上流側の排水管11と、下流側の排水管12と、上流側の排水管11と下流側の排水管12を接続する継手21と、外側から内部を視認できる透明筒部30と、を備える継手構造Cが形成されている。なお、本発明の継手構造として、水平方向に複数分岐する継手構造C1でも略同様の作用・効果を有するが、以下では説明を省略する。
【0029】
この上流側の排水管11及び下流側の排水管12は、合成樹脂によって内面平滑な長尺の円筒状に形成されている。
【0030】
また、継手21は、合成樹脂などによってY字状に形成されるもので、上側の挿し口には後述する透明筒部30が接続され、下側の挿し口には下流側の排水管12が接続され、側方の挿し口には各階の排水管15が接続されている。
【0031】
なお、この継手21本体を構成する材料は、鋳鉄製やステンレス製・銅製等の金属や合成樹脂製、あるいはこれらの複合材等、特に制約はない。
【0032】
さらに、透明筒部30は、満水試験においてテストボール(後述)による止水性を向上させるためのもので、透明な合成樹脂やガラスなどによって、内面平滑な円筒状に形成されている。
【0033】
この透明筒部30の透明の度合い(透明性)は、管内に挿入したテストボールを視認し、かつ、テストボールの膨張時に、テストボールの軸が管軸と平行であることが確認できるものであればよい。例えば、透明性が低いものであってもよいし、青みがかかっているものや黄色がかっているもの、白化しているもの、などの他の有色のものであってもよい。
【0034】
なお、透明筒部30の材質・肉厚等の形状は、一般用ポリ塩化ビニル管等が許容する1MPaの水圧に耐えられるものが望ましいが、少なくとも満水試験に耐えられる必要がある。この条件の範囲内であれば、ガラス製、合成樹脂製のいずれであってもよい。
【0035】
そして、既存の配管材である押出成形の透明グレードのポリ塩化ビニル管や、透明アクリル製パイプ等を加工して使用することや、射出成形でインサート接合することについても、上記必要性能を満足する限りにおいて、特に制約はない。排水管11,12についても同様である。
【0036】
さらに、本体と透明筒部30との接続方法、透明筒と管との接続方法は、ゴム輪接続、ねじ接続、熱融着、溶剤接着、ストラブカップリングなど、止水性を満足する限りにおいて制約はない。
【0037】
そして、この透明筒部30の長さは、実用上は10cm以上50cm以下程度が妥当である。これは、テストボール(後述)を位置決めする際に、融通が利くように、実際に市販されているテストボールの長さより、多少長いことが求められるためである。
【0038】
また、筒の径に関しても、排水立て管用継手の上部側として使用する際は必ずしも立て管と同径である必要はない。
【0039】
現状の単管式排水システムS2は、胴部のサイズが立て管の同径以上3サイズアップ以下で用いられることが多い。このように、透明筒部30が単管式排水システムS2の一部を兼ねてサイズアップされていても、市販の複数サイズ対応型テストボールで満水試験を行うことが可能であるためとくに支障はない。
【0040】
さらに、透明筒部30が不燃物ではない合成樹脂材で、建築・消防における防火区画貫通部に継手構造Cを配置する場合には、区画貫通に関する国土交通大臣認定や消防設備安全センターの区画貫通評定の取得が別途必要である。この取得のために、水圧試験後に透明筒部30に厚さ0.5mm以上の鉄板を巻いたり、モルタル被覆材を巻いたりする等の処理も必要に応じて実施すればよい。
【0041】
そして、本実施例の継手構造Cでは、図3に示すように、上流側の排水管11と透明筒部30の間にスペーサ管41が設置されるとともに、このスペーサ管41の両側の接続箇所はストラブカップリング(登録商標)などのカップリング継手40によって覆われている。
【0042】
このスペーサ管41は、合成樹脂によって内面平滑な短尺の円筒状に形成されるもので、排水管11と略同一の径で、かつ排水管11の下端面と透明筒部30の上端面の間の距離に等しい長さに形成される。加えて、このスペーサ管41の長さは、カップリング継手40の長さよりも短く形成されることで、両側の接続箇所を1つのカップリング継手40によって固定及び止水できる。
【0043】
また、カップリング継手40は、管端部にネジ加工を施されていない配管を簡単に接続するための継手であり、内面にはシールゴムが貼設されるとともに両脇には歯状のグリップリングが設けられることで、ボルト40a,40aを締め付けることで加圧時の抜けを防止している。
【0044】
次に、本実施例の排水管の継手構造Cを用いた満水試験方法について説明する。本発明の満水試験方法は、挿入工程、膨張工程、注水工程、確認工程、収縮排水工程、によって構成される。
【0045】
挿入工程は、透明筒部30の内部にスペーサ管41を取外した箇所からテストボール50を挿入する工程である。すなわち、図3に示すように、カップリング継手40のボルト40a,40aをゆるめてカップリング継手40をずらしたうえでスペーサ管41を取外す。つづいて、スペーサ管41を取外して生じた箇所に形成された隙間を通じて、収縮した状態のテストボール50を挿入する。この際、外側から内部を視認しつつテストボール50が透明筒部30の略中央に位置するように配置させる。
【0046】
膨張工程は、透明筒部30を通じて外側から内部を視認しつつテストボール50を膨らませる工程である。すなわち、所定位置に配置されたテストボール50を目で見ながら、エアホース51を通じて空気を送りテストボール50が透明筒部30の内面に密着するまで膨張させる。
【0047】
注水工程は、上流側から水を注入する工程である。すなわち、例えば、このスペーサ管41を取外した箇所から、テストボール50よりも上流側の領域に少しずつ水を注入していき、下流側の排水管12及び横に分岐した排水管15を水で満たす。
【0048】
確認工程は、所定時間経過後に漏水の有無を確認する工程である。すなわち、所定時間として例えば60分を経過した後に、目視によって継手箇所などからの漏水の有無を確認する。
【0049】
収縮排水工程は、確認後にテストボールを収縮させつつ排水する工程である。すなわち、確認工程の終了後、テストボール50のバルブをゆるめて収縮させつつ、テストボール50と透明筒部30の間に生じた隙間を通じて注入した水を排水する。
【0050】
そして、試験終了後には、スペーサ管41をもとの位置に挿入し、ずらしていたカップリング継手40を、スペーサ管41の両側の接続箇所を覆うようにしてもとの位置に配置しつつ、カップリング継手40のボルト40a,40aを締め付けて固定・止水する。
【0051】
次に、本実施例の排水管の継手構造Cが有する効果について列挙して説明する。
【0052】
(1)このように、本発明の継手構造Cは、上流側の排水管11と、下流側の排水管12と、上流側の排水管11と下流側の排水管12を接続する継手21と、を備える排水管の継手構造Cである。そして、上流側の排水管11と継手21の間(又は下流側の排水管12と継手21の間)には、外側から内部を視認できる透明筒部30が設けられている。
【0053】
したがって、この透明筒部30を通じて外側から内部を視認しつつテストボール50を挿入できることで、テストボール50の中心を管軸に合わせやすくなるため、確実な止水性が得られる。
【0054】
つまり、排水配管の施工品質の確認は、通常は満水試験によって実施されるため、基本的には要所に満水試験用継手を配置する必要がある。しかし、満水試験用継手は高価であるため、替わりに掃除口継手を設置して、ここからテストボール50と呼称される風船型止水プラグを管内に挿入、これを膨らませて満水試験を行う方法も一般的に行われている。
【0055】
しかしながら、テストボール50を用いる場合、排水管11,12の管軸とテストボール50の軸が一致せず、斜めに傾いたまま膨らむことで所定の止水性が発揮されないことが往々にして発生する。
【0056】
このような場合、施工現場ではテストボール50の封入圧をメーカーの推奨値を超えて膨らませ、無理に止水していることがある。そうすると、テストボール50がきわめて少ない試験回数でもパンクをおこし、テストボール50の費用負担を巡ってトラブルが発生することもある。
【0057】
このような問題が発生するのは、管内のテストボール50の軸の確認ができないことによるところが大きい。これを解決する方法としては、排水管11,12又は継手21の一部を透明な材料で構成し、その部分でテストボール50の膨張を視覚的に確認することが有効と考えられる。
【0058】
そこで、上流側の排水管11と継手21の間(又は下流側の排水管12と継手21の間)には、外側から内部を視認できる透明筒部30を設けることで、現場での満水試験性を大幅に改善するものである。
【0059】
(2)また、排水管11と透明筒部30の間にはスペーサ管41が設置されるとともに、スペーサ管41の両側の接続箇所はカップリング継手40によって覆われる構成とすることで、満水試験時にはスペーサ管41を取外した箇所からテストボール50を挿入できるようになる。
【0060】
すなわち、工程上の都合により、鉛直方向の立て排水管11,12,13を先行して配置する必要がある場合などには、立て排水管11,12,13の設置完了後の満水試験時に、途中の位置からテストボール50を挿入する必要が生じる。
【0061】
このような場合、立て排水管11,12,13の途中の位置に掃除口を有する継手を配置する必要があるが、配管用のスペースの都合から継手を配置できない場合がある。
【0062】
そこで、あらかじめ短尺のスペーサ管41を設置しておき、これをカップリング継手40で覆うことで排水管11と透明筒部30を接続すれば、満水試験時にはスペーサ管41を取外した箇所からテストボール50を管内に挿入することができる。ここにおいて、このカップリング継手40は、きわめて軽量かつコンパクトに構成されているため、配管用のスペース内に確実に配置することができる。
【0063】
(3)また、本発明の満水試験方法は、上記した排水管の継手構造Cを用いる排水管の満水試験方法であって、透明筒部30の内部にスペーサ管41を取外した箇所からテストボール50を挿入する挿入工程と、透明筒部30を通じて外側から内部を視認しつつテストボール50を膨らませる膨張工程と、上流側から水を注入する注水工程と、所定時間経過後に漏水の有無を確認する確認工程と、確認後にテストボール50を収縮させつつ排水する収縮排水工程と、を有することを特徴とする。
【0064】
したがって、スペーサ管41を取外した箇所から容易にテストボール50を挿入できるようになるうえ、テストボール50を視認しつつ膨張させることができるため、満水試験の作業性が向上する。
【実施例2】
【0065】
以下、図4を用いて、前記実施例とは別の形態となる横方向の継手構造C2,C3,C4について説明する。なお、前記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0066】
まず、構成について説明すると、本実施例の継手構造C2は、図4(a)に示すように、横方向に配設される上流側(図4の右側)の排水管18と、下流側(図4の左側)の排水管19と、上流側の排水管18と下流側の排水管19を接続する継手24と、上流側の排水管18と継手24の間の透明筒部30と、を備えている。
【0067】
また、継手構造C3は、図4(b)に示すように、上流側の排水管18と、下流側の排水管19と、継手24と、下流側の排水管19と継手24の間の透明筒部30と、を備えている。
【0068】
さらに、継手構造C4は、図4(c)に示すように、上流側の排水管18と、下流側の排水管19と、継手24と、上流側の排水管18と継手24の間の透明筒部30と、下流側の排水管19と継手24の間の透明筒部30と、を備えている。
【0069】
次に、本実施例の排水管の継手構造C2,C3,C4を用いた満水試験方法については、前記実施例1と略同様に、挿入工程、膨張工程、注水工程、確認工程、収縮排水工程、によって構成される。
【0070】
次に、作用・効果について説明すると、横方向の継手構造C2では、上流側の排水管18と継手21の間に透明筒部30が設けられている。また、継手構造C3では、下流側の排水管19と継手24の間に透明筒部30が設けられている。さらに、継手構造C4では、上流側の排水管18と継手21の間及び下流側の排水管19と継手24の間の両方に透明筒部30が設けられている。
【0071】
したがって、この透明筒部30を通じて外側から内部を視認しつつテストボール50を挿入できることで、テストボール50の中心を管軸に合わせやすくなるため、確実な止水性が得られる。
【0072】
このように、継手24の上流側、下流側、又は、上流側と下流側の両方、のいずれに透明筒部30が配置される構成であっても、略同様な効果を得ることができる。
【0073】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0074】
以下、図5を用いて、前記実施例とは別の形態の継手構造C5,C6について説明する。なお、前記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0075】
まず、構成について説明すると、本実施例の継手構造C5,C6は、単管式排水システムS2の集合管継手に対応している。
【0076】
すなわち、図5(a),(b)に示す排水管12,13(塩ビライニング鋼管)は、内層の硬質塩ビ管の内面にリブをらせん状に設けて排水に旋回力を与え、管壁に沿って流下させる。これによって、排水の流下速度を低下させるとともに、管内に空気芯を確保でき、管内の圧力変動を抑制している。なお、排水管12,13としては、内面にリブを設けない内面平滑管を用いることもできる。
【0077】
また、図5(a)に示すように、継手構造C5ではスリム型の継手25を用いており、図5(b)に示すように、継手構造C6ではミニ型の継手26を用いている。
【0078】
そして、本実施例の継手構造C5,C6では、上流側の排水管12と継手25,26の間に、拡径された透明筒部30が設置されている。すなわち、この透明筒部30の内径は、排水管12,13の内径よりも大きく形成されている。
【0079】
なお、排水管12と透明筒部30及び透明筒部30と継手25,26の間の接続は、ゴム輪接続、ねじ接続、熱融着、溶剤接着、ストラブカップリングなど、止水性を満足する限りにおいて制約はない。
【0080】
具体的には、透明筒部30の管径を立て方向の排水管12,13に対して同径以上3サイズアップ以下に拡径することが可能である。この場合、市販の複数サイズ対応型テストボールで満水試験を実施する。
【0081】
次に効果について説明する。
【0082】
(1)このように、本実施例の継手構造C5,C6では、透明筒部30の内径は、排水管12,13の内径よりも大きく形成されることで、単管式排水システムS2(図2参照)における横枝管の合流部などにおいて通気のための断面を確保できる。
【0083】
つまり、単管式排水システムS2は、通気立て管を用いない方式であるため、排水管12,13は通気立て管としての役目も同時に果たす必要がある。そこで、横枝管の合流部である継手25(26)に近接する透明筒部30の断面を大きくすることで、通気のための断面を確保できるようになる。
【0084】
加えて、内面にらせん状にリブが形成されたらせん管であっても、内面平滑な透明筒部30を配置することで、この透明筒部30にテストボール50を位置させてテストボール50による止水が可能となる。
【0085】
すなわち、らせん管を止水する場合にはテストボール50をそのまま使用することができないため、試験の際には発泡ゴムシート等をテストボール50に巻きつけるなどの手間がかかっていた。そこで、内面平滑な透明筒部30を配置すれば、この透明筒部30の位置にテストボール50を位置させて止水することによって、試験の際に手間がかかることはなくなる。
【0086】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例4】
【0087】
以下、図6を用いて、前記実施例とは別の形態の継手構造C7について説明する。なお、前記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0088】
まず、構成について説明すると、本実施例の継手構造C7は、実施例3と略同様に単管式排水システムS2の集合管継手に対応している。つまり、図6に示す排水管12,13は、実施例3と同様に、内層が硬質塩ビ樹脂製内面のらせん管として構成されている。
【0089】
さらに、図6に示すように、継手構造C7ではミニ型の継手27を用いており、透明筒部30の内径は排水管12,13の内径よりも大きく形成されている。
【0090】
加えて、この継手27の内面には旋回羽根がらせん状に設けられるとともに、横枝管の接続口は、排水が内面に沿って流れるように、直交方向から一方に膨らむように湾曲している。
【0091】
そして、本実施例の継手構造C7では、上流側の排水管12と継手27の間に、偏心した透明筒部30が設置されている。すなわち、この透明筒部30の中心軸は、排水管12,13の中心軸に対して横枝管の湾曲する方向に偏心して配置されている。
【0092】
なお、排水管12と透明筒部30及び透明筒部30と継手27の間の接続は、ゴム輪接続、ねじ接続、熱融着、溶剤接着、ストラブカップリングなど、止水性を満足する限りにおいて制約はない。
【0093】
次に効果について説明する。
【0094】
(1)このように、本実施例の継手構造C7では、透明筒部30の中心軸は、排水管12,13の中心軸に対して偏心して配置されることで、継手27の内面の旋回羽根に排水を当てて、旋回羽根に沿うらせん状の流れを生み出すため、立て方向の排水管12,13内の気流や排水流の流れをコントロールすることができる。
【0095】
つまり、透明筒部30及び横枝管の流入部を偏心させることで、横枝管からの流入排水の勢いを利用して効率よくらせん流を発生させることができれば、空気芯を確保でき、管内圧力変動を低減できる。
【0096】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施例と略同様であるため説明を省略する。
【0097】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0098】
例えば、前記実施例では、透明筒部30の全体が透明な材料で形成されて略全体が透明になっている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、内部を視認できるものであれば、透明筒部30の一部のみが透明になっているものであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
S1,S2 配管システム
C,C1〜C7 継手構造
11〜13 排水管(縦管)
15〜19 排水管(横管)
21〜27 継手
30 透明筒部
40 カップリング継手
40a ボルト
41 スペーサ管
50 テストボール
51 エアホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の排水管と、下流側の排水管と、前記上流側の排水管と前記下流側の排水管を接続する継手と、を備える排水管の継手構造であって、
前記上流側の排水管と前記継手の間、又は前記下流側の排水管と前記継手の間には、外側から内部を視認できる透明筒部が設けられることを特徴とする排水管の継手構造。
【請求項2】
前記排水管と前記透明筒部の間にはスペーサ管が設置されるとともに、前記スペーサ管の両側の接続箇所はカップリング継手によって覆われることを特徴とする請求項1に記載の排水管の継手構造。
【請求項3】
前記透明筒部の内径は、前記排水管の内径よりも大きく形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水管の継手構造。
【請求項4】
前記透明筒部の中心軸は、前記排水管の中心軸に対して偏心して配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の排水管の継手構造。
【請求項5】
請求項2に記載の排水管の継手構造を用いる排水管の満水試験方法であって、
前記透明筒部の内部に前記スペーサ管を取外した箇所からテストボールを挿入する挿入工程と、前記透明筒部を通じて外側から内部を視認しつつテストボールを膨らませる膨張工程と、上流側から水を注入する注水工程と、所定時間経過後に漏水の有無を確認する確認工程と、確認後にテストボールを収縮させつつ排水する収縮排水工程と、を有することを特徴とする排水管の満水試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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