説明

継手部材、樹脂管、及び管接続構造

【課題】部品点数が少なく簡便な構成であり、しかも接続部分が嵩張らないようにする継手部材、樹脂管、及び管接続構造を提供すること。
【解決手段】樹脂製の円筒部2と、円筒部2の外周面に配置されたシール部3とを有し、樹脂管6の端部に円筒部2を外嵌した状態で、樹脂管6を金属管に挿入したとき、金属管7の内周面と樹脂管6の外周面との間を密閉する継手部材1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管と金属管との管接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂管と金属管とを接続する従来の管接続構造としては、例えば、特許文献1のように、雌側管(金属管)及び雄側管(樹脂管)のそれぞれの端部に雌側継手及び雄側継手を設けてあるものが知られている。当該管接続構造では、雄側継手を雌側継手に挿入した後、雌側継手及び雄側継手の両方のフランジ部に亘るように外側からクイックファスナーを取り付けることによって樹脂管と金属管とを接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−151305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の管接続構造の場合、2つの継手、バンドの他にクイックファスナーが必要となるため、部品点数が多くコスト増となる。また、クイックファスナーを取り付けるため、外径が必要以上に大きくならざるを得ず、接続部分が嵩張るため設置し難いという問題があった。
従って、本発明の目的は、部品点数が少なく簡便な構成であり、しかも接続部分が嵩張らないようにする継手部材、樹脂管、及び管接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る継手部材の第1特徴構成は、樹脂製の円筒部と、前記円筒部の外周面に配置されたシール部とを有し、樹脂管の端部に前記円筒部を外嵌した状態で、前記樹脂管を金属管に挿入したとき、前記金属管の内周面と前記樹脂管の外周面との間を密閉する点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
本構成の継手部材のみを使用することによって、金属管の内周面と樹脂管の外周面との間を密閉することができるため、金属管と樹脂管とを接続する際の部品点数が少なくてすみ、しかも金属管と樹脂管との接続部分が嵩張ることもない。
【0007】
第2特徴構成は、前記円筒部の端面にテーパー面を設けてある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、継手部材の円筒部の端面にテーパー面を設けてあれば、よりコンパクト化されると共に、搬送等する際に円筒部の端部の破損も生じ難い。
【0009】
本発明に係る樹脂管の第1特徴構成は、樹脂製の円筒部と前記円筒部の外周面に配置されたシール部とを有する継手部材が、端部外周に溶着されている点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成の樹脂管を金属管に挿入しさえすれば、継手部材によって金属管の内周面と樹脂管の外周面との間を密閉することができるため、金属管と樹脂管とを接続する際の部品点数が少なくてすみ、しかも金属管と樹脂管との接続部分が嵩張ることもない。
【0011】
第2特徴構成は、前記継手部材の円筒部における少なくとも前記樹脂管の先端側の端面にテーパー面を設けてある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、継手部材の円筒部における少なくとも前記樹脂管の先端側の端面にテーパー面を設けてあれば、例えば、本構成の樹脂管を金属管に挿入する際に、テーパー面によって金属管がガイドされるため挿入し易い。
【0013】
第3特徴構成は、赤外線吸収剤を含んでおり、先端部に前記継手部材が溶着されている点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、赤外線吸収剤を含むものであれば、赤外線レーザー溶着法によって、継手部材を簡便かつ確実に溶着することができる。
【0015】
本発明に係る管接続構造の第1特徴構成は、樹脂管と、前記樹脂管を挿入可能な金属管と、樹脂製の円筒部と前記円筒部の外周面に配置されるシール部とを有する継手部材とを備え、前記継手部材が前記樹脂管の端部外周に溶着されており、前記樹脂管の端部が前記金属管の端部に挿入配置され、前記継手部材が前記金属管の内周面と前記樹脂管の外周面との間を密閉し、前記金属管の端部を前記継手部材の外径より縮径させてある点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
本構成であれば、継手部材によって金属管の内周面と樹脂管の外周面との間を密閉することができるため、金属管と樹脂管とを接続する際の部品点数が少なくてすみ、しかも金属管と樹脂管との接続部分が嵩張ることもない。さらに金属管の端部を継手部材の外径より縮径させることによって樹脂管の抜け止めがなされるため、金属管と樹脂管とがより確実に接続される。
【0017】
第2特徴構成は、前記金属管の端部に拡径部を設け、前記金属管の非拡径部の内径と、前記樹脂管の内径とを略同じ大きさに設定し、前記継手部材の円筒部の先端側の端面にテーパー面を設け、前記樹脂管の端部が前記金属管の拡径部に挿入配置され、前記継手部材が前記拡径部の内周面と前記樹脂管の外周面との間を密閉し、前記継手部材の円筒部のテーパー面と、前記金属管の拡径部の立ち上り部分とを密着してある点にある。
【0018】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、継手部材の円筒部のテーパー面と、金属管の拡径部の立ち上り部分とが密着することによって、円筒部のテーパー面がストッパーとして働くため、樹脂管がそれ以上金属管の中に進入することができず、金属管における樹脂管の位置が規制される。さらに本構成のごとく、金属管の非拡径部の内径と、樹脂管の内径とを同じ大きさに設定し、継手部材の円筒部のテーパー面と、金属管の拡径部の立ち上り部分とを密着させてあれば、流体が滞留し得るデッドスペースが生じ難い。また特に流体が金属管側から樹脂管側へと流れる場合、流体の圧力が樹脂管の端面に作用し難いため、樹脂管と金属管との接続状態がより安定して保持される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る管接続構造の接続手順を示す図である。
【図2】本発明に係る管接続構造の別実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の管接続構造は、継手部材1、樹脂管6、及び金属管7を備えて構成される。
【0021】
継手部材1は、樹脂製の円筒部2と、Oリング3(シール部)とを備え、円筒部2の外周面に形成された溝4の中にOリング3が配置される。円筒部2に使用される樹脂の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0022】
樹脂管6は、樹脂製の中空管である。当該樹脂管6に使用される樹脂の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂が赤外線吸収剤を含むように構成しても良い。適用可能な赤外線吸収剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン系、ジイモニウム系、アントラキノン系、アルミノシリケート、シリカ微粉末、カオリン系珪藻土が挙げられる。赤外線吸収剤は、樹脂100質量部に対して、0.1〜2質量部で配合すると好適である。また、樹脂管6が複数の層からなる多層管である場合には、最外層のみが赤外線吸収剤を含むように構成しても良い。
【0023】
継手部材1は、樹脂管6の端部に外嵌固定される。固定方法としては、例えば、接着剤を使用したり、あるいは溶着させることで固定することができる。
【0024】
特に樹脂管6及び継手部材1の円筒部2が熱可塑性樹脂で構成される場合、樹脂管6の外径を継手部材1の円筒部2の内径よりもわずかに大きく設定して、樹脂管6の端部を継手部材1の円筒部2の中に圧入した後に赤外線レーザー溶着法によって簡便且つ確実に溶着することができる。また、樹脂管6が赤外線吸収剤を含むものであれば、赤外線レーザー溶着法によってより簡便且つ確実に溶着することができる。
【0025】
金属管7は、金属製の中空管である。当該金属管7に使用される金属の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、ステンレス、アルミ等が挙げられる。
【0026】
金属管7の端部には、拡径部8が形成されており、継手部材1を備えた樹脂管6が拡径部8内に挿入される。拡径部8は、樹脂管6を係止するために係止部分8a、継手部材1が内側に密着する密着部分8b、樹脂管6を導入するための導入部分8cを備える。尚、本発明については、樹脂管6及び継手部材1を挿入して固定できるものであれば、特に拡径部8を有しない金属管7に適用することも可能である。
【0027】
係止部分8a(拡径部8の立ち上り部分)は、拡径部8の密着部分8bと金属管7の非拡径部9との間に形成され、密着部分8bから非拡径部9に向かうほど径が小さくなる。
【0028】
密着部分8bは、樹脂管6を接続する際に継手部材1を収容する円筒状の空間であって、その内径の大きさは、継手部材1の円筒部2の外径と略同じ大きさに設定される。
【0029】
導入部分8cは、樹脂管6を金属管7の拡径部8に挿入するのを容易にするために形成したものである。導入部分8cの内径の大きさは、密着部分8bから開口端8dに向かうほど径が大きくなり、開口端8dの内径の大きさは、継手部材1の円筒部2の外径よりも大きく設定される。
【0030】
次いで、上記構成の金属管7と樹脂管6との接続手順の一例を説明する。尚当該接続手順において使用する樹脂管6及び継手部材1の円筒部2は、熱可塑性樹脂で構成されるものとする。
【0031】
まず、図1(a)に示すように、継手部材1の円筒部2の筒孔に、樹脂管6の端部を圧入して、赤外線レーザー溶着法で溶着する。
【0032】
次いで、図1(b)及び(c)に示すように、円筒部2の溝4にOリング3を装着した後、樹脂管6を拡径部8の導入部分8cに挿入して、継手部材1の円筒部2の先端が拡径部8の係止部分8aに当接するまで樹脂管6を圧入する。このとき、拡径部8の係止部分8aがストッパーとして働き、樹脂管6がそれ以上金属管7の中に進入することができず、樹脂管6の位置が規制される。
【0033】
継手部材1の円筒部2の先端が拡径部8の係止部分8aに当接すると、円筒部2が拡径部8の密着部分8bの内周面に密着すると共に、Oリング3が拡径部8の密着部分8bの内周面に圧接する。これにより、金属管7の密着部分8bの内周面と、樹脂管6の端部の外周面との間が密閉される。
【0034】
最後に、図1(d)に示すように、プレス装置10によって、金属管7の拡径部8の端部(樹脂管6の継手部材1がその内側に配置していない部分)を加締めて抜け止めし、樹脂管6と金属管7とを接続する。
【0035】
〔その他の実施形態〕
(1)図2に示すように、前述の実施形態において、金属管7の非拡径部9の内径d1と、樹脂管6の内径d2とを同じ大きさに設定し、継手部材1の円筒部2における樹脂管6の先端側の端面にテーパー面5を設けてもよい。尚、テーパー面5は必要に応じて円筒部2の他端にも設けるようにしても良い。
かかる構成であれば、樹脂管6の端部を金属管7の拡径部8に挿入して、継手部材1の円筒部2のテーパー面5が拡径部8の係止部分8aに当接するまで樹脂管6を圧入したとき、継手部材1のテーパー面5と金属管7の拡径部8の係止部分8aとが密着する。そのため、前述の実施形態と比べて、流体が滞留し得るデッドスペースが生じ難い。また特に流体が金属管7側から樹脂管6側へと流れる場合、流体の圧力が樹脂管6の端面に作用し難いため、前述の実施形態と比べて樹脂管6と金属管7との接続状態がより安定して保持される。
(2)上述の実施形態では、継手部材1を樹脂管6の先端に固定する構成を示しているが、当該構成に限定されるものではなく、樹脂管6の先端が継手部材1から少しはみ出ているような構成であっても良い。
【実施例】
【0036】
密度0.94のポリエチレン樹脂に1質量%のカーボンブラックを混練して樹脂管を作製した。また、密度0.965の高密度ポリエチレン棒を切削して継手部材の円筒部を作製した。この円筒部の内周面の端部に、その最大径が樹脂管の外径より少し大きめのテーパーを設け、そのテーパーを介して樹脂管を円筒部の筒孔に圧入した後、樹脂管を60rpmの速度で回しながら、円筒部の外面側から波長940nm、出力60Wの赤外線レーザーを2.5秒間照射して、円筒部を樹脂管の端部に溶着させた。
【0037】
上記円筒部にセットされるOリングがその内周面に密着するような内径を有する銅管を用意し、その端部以外をへら絞り加工によって内径が上記樹脂管の内径と略同径となるように縮径することによって金属管を作製した。このとき、この銅管の端部が拡径部となり、へら絞り加工によって縮径された部分が非拡径部となる。
【0038】
上記樹脂管の円筒部にOリングを装着した後、この樹脂管を金属管の拡径部に挿入して、樹脂管の円筒部の先端が金属管の拡径部の係止部分に当接するまで樹脂管を圧入した。そして、プレス装置によって、金属管の拡径部の端部を加締めて抜け止めして樹脂管と金属管とを接続した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る管接続構造は、例えば、室外給湯器の内部配管等に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 継手部材
2 円筒部
3 Oリング(シール部)
4 溝
5 テーパー面
6 樹脂管
7 金属管
8 拡径部
8a 係止部分
8b 密着部分
8c 導入部分
8d 開口端
9 非拡径部
10 プレス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の円筒部と、前記円筒部の外周面に配置されたシール部とを有し、
樹脂管の端部に前記円筒部を外嵌した状態で、前記樹脂管を金属管に挿入したとき、前記金属管の内周面と前記樹脂管の外周面との間を密閉する継手部材。
【請求項2】
前記円筒部の端面にテーパー面を設けてある請求項1に記載の継手部材。
【請求項3】
樹脂製の円筒部と前記円筒部の外周面に配置されたシール部とを有する継手部材が、端部外周に溶着されている樹脂管。
【請求項4】
前記継手部材の円筒部における少なくとも前記樹脂管の先端側の端面にテーパー面を設けてある請求項3に記載の樹脂管。
【請求項5】
赤外線吸収剤を含んでおり、先端部に前記継手部材が溶着されている請求項3又は4に記載の樹脂管。
【請求項6】
樹脂管と、
前記樹脂管を挿入可能な金属管と、
樹脂製の円筒部と前記円筒部の外周面に配置されるシール部とを有する継手部材とを備え、
前記継手部材が前記樹脂管の端部外周に溶着されており、
前記樹脂管の端部が前記金属管の端部に挿入配置され、前記継手部材が前記金属管の内周面と前記樹脂管の外周面との間を密閉し、
前記金属管の端部を前記継手部材の外径より縮径させてある管接続構造。
【請求項7】
前記金属管の端部に拡径部を設け、
前記金属管の非拡径部の内径と、前記樹脂管の内径とを略同じ大きさに設定し、
前記継手部材の円筒部の先端側の端面にテーパー面を設け、
前記樹脂管の端部が前記金属管の拡径部に挿入配置され、前記継手部材が前記拡径部の内周面と前記樹脂管の外周面との間を密閉し、
前記継手部材の円筒部のテーパー面と、前記金属管の拡径部の立ち上り部分とを密着してある請求項6に記載の管接続構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−112411(P2012−112411A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260062(P2010−260062)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000145471)株式会社十川ゴム (28)
【Fターム(参考)】