説明

綱張り具

【課題】 構造が簡単で、綱と一緒にどこにでも備えておくことができ、ひとたび使い方を教われば誰もがいつでも簡単かつ安全に綱に大きな張力を与えて張ることができる綱張り具の提供。
【解決手段】 先端側を第1の地点につないだ綱60の中間部分が巻きつけられる第1の突起部18と、第1の突起部18に巻きつけた位置よりも末端側にある綱60の中間部分が巻きつけられる第2の突起部24と、第2の突起部24に巻きつけた位置よりも末端側にある綱60の中間部分が、第2の地点に引っ掛けられて、この第2の地点に引っ掛けられた位置よりも末端側にある綱60の中間部分が、さらに引っ掛けられる引掛部30と、第1の突起部18、第2の突起部24及び引掛部30が形成されている基部10と、から、綱張り具1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の地点に先端側をつながれた綱の末端側を第2の地点側につなぐに際して、第1の地点と第2の地点との間の綱に張力をかけて張る綱張り具に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の生活においては、2つの地点の間に綱を張り渡さなければならないことが多い。例えば、かさばる重量物を積み上げて保管するような場合、積み上げた重量物の上にシートカバーを掛け、さらにシートカバーの上に綱をしっかりと張り渡し、張り渡した綱によって積み上げた重量物が崩れることを防止する。シートカバーの上に張り渡した綱の緩みや弛みは、積み上げた重量物が崩れる原因となり得る。このため、綱に充分な張力をかけ、綱の緩みや弛みを防止する必要がある。
【0003】
ウインチ等の綱の巻き上げ機を使えば、綱に大きな張力をかけて張ることが容易である。しかし、綱の巻き上げ機がどこにおいても利用可能であるとは限らず、綱の巻き上げ機を使わずに綱に大きな張力をかけなければならない場合も多い。そのような場合、いわゆる「トラッカーズヒッチ」という綱の結び方が用いられる(非特許文献1を参照)。トラッカーズヒッチを使えば、人力だけで綱に大きな張力をかけて張ることができる。例えば、トラックの荷台に積載した荷物を綱で固定する場合、トラッカーズヒッチがよく用いられている。
【0004】
しかし、トラッカーズヒッチを自在に使いこなすためには、何回も繰り返してその手順を練習する必要がある。また、トラッカーズヒッチの手順を一通り記憶したとしても、トラッカーズヒッチを使う機会に恵まれなければすぐにその手順を忘れてしまう。特に最近、トラッカーズヒッチを知らない人が多くなっている。このため、トラッカーズヒッチを忘れてしまうと、すぐに周りの人からトラッカーズヒッチを教えてもらえるとは限らない。
【0005】
そこで、トラッカーズヒッチを知らなくても、綱を巻き上げる機器を用いることなく、簡単に綱に大きな張力をかけて張ることができるように、運搬荷物操作簡略に要する支持具が提唱されている(特許文献1を参照)。この支持具は、略円形状の環と、この環の内側に突出する小突起と、を有している。
以下、作業員がこの支持具を使って荷物をトラックの荷台に綱で固定する場合を例にとって説明する。
【0006】
まず、作業員が、綱の先端を荷台の第1のフックに結わえて、この綱を荷台に積んだ荷物の上に架け渡す。そして、作業員は、綱の中間部分をVの字形に折り曲げ、このVの字形の中央の谷部分を支持具の環の内側に挿し入れ、Vの字形の谷部分を環の内側の小突起に引っ掛ける。このとき、綱のVの字形の両脚部分は、環の同じ側から外に出た状態となっている。
【0007】
次いで、作業員は、環よりも末端側の綱を折り曲げ、2個目のVの字形を作る。作業員は、この2個目のVの字形の中央の谷部分を、1個目のVの字形の両脚部分が出ている側とは反対側から、支持具の環の内側に挿し入れる。そして、作業員は、2個目のVの字形の谷部分をそのまま支持具の環から引き出し、この引き出した2個目のVの字形の谷部分を、荷台の第2のフックに引っ掛ける。このとき、第2のフックと環との間で、綱が一往復した状態となっている。なお、作業員は、2個目のVの字形の谷部分を環から引き出して第2のフックに引っ掛ける際、綱の末端が支持具の環を通り抜けてしまわないように注意しなければならない。
【0008】
次いで、作業員は、綱の末端を引っ張り、綱全体に張力をかける。綱に充分な張力がかかったら、作業員は、綱の末端を荷台の第2のフックあるいは第3のフックに結わえて固定する。
【非特許文献1】前島一義、「図解ロープワーク大全」、株式会社成山堂書店、平成17年6月28日、p.85
【特許文献1】特開2006−240731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前述した支持具は、以下に述べる問題点を有する。
1個目のVの字形の谷部分を環の小突起に引っ掛けてから、2個目のVの字形の谷部分を第2のフックに引っ掛けるまでの間、綱に緩みや弛みが生じると、1個目のVの字形の谷部分が環の小突起から外れてしまう。
また、2個目のVの字形の谷部分を第2のフックに引っ掛ける際、綱の緩みや弛みを防止するために綱に張力をかけすぎると、環の小突起を中心として回転モーメントが発生し、環が突然回転する。環が回転すると、1個目に作ったVの字形の谷部分が環の小突起から外れやすくなってしまう。
【0010】
1個目に作ったVの字形の谷部分が環の小突起から外れてしまうと、作業員は、1個目のVの字形の谷部分を環の小突起に引っ掛けるところまで戻って作業をやり直さなければならない。
また、環が突然回転すると、作業員の指等が環と綱の間に挟まれる危険性が生じる。
したがって、作業員が支持具を使って作業を行う際は、適切な力加減を考えながら綱を引っ張っておかねばならず、安全に効率よく作業を行うには、相応の熟練が求められる。このため、誰もが簡単に支持具を使って綱に大きな張力をかけて張ることができるわけではない。
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、構造が簡単で、綱と一緒にどこにでも備えておくことができ、ひとたび使い方を教われば誰もがいつでも簡単かつ安全に綱に大きな張力を与えて張ることができる綱張り具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る綱張り具は、第1の地点に先端側をつながれた綱の末端側を第2の地点側につなぐに際して、第1の地点と第2の地点との間の当該綱に張力をかけて張る綱張り具であって、前記綱の中間部分が巻きつけられる第1の突起部と、前記第1の突起部に巻きつけられた位置よりも末端側にある前記綱の中間部分が、巻きつけられる第2の突起部と、前記第2の突起部に巻きつけられた位置よりも末端側にある前記綱の中間部分が、第2の地点に引っ掛けられ、この第2の地点に引っ掛けられた位置よりも末端側にある前記綱の中間部分が、さらに引っ掛けられる引掛部と、前記第1の突起部、前記第2の突起部及び前記引掛部が形成されている基部と、を有する。
【0012】
作業員が、綱の先端を第1の地点のフック等に結わえる等してつなぎ、この綱の末端側を手で軽く引っ張り、綱の弛みをとる。作業員は、綱を手で軽く引っ張りながら、綱の中間部分を第1の突起部に巻きつける。そのまま、作業員は、綱を弛ませずに、第1の突起部よりも末端側にある綱の中間部分を第2の突起部に巻きつける。
次いで、作業員は、第2の突起部よりも末端側にある綱を手で軽く第2の地点側へ引っ張り、第2の突起部よりも末端側にある綱の中間部分を、第2の地点のフック等に引っ掛ける。そして、作業員は第2の地点に引っ掛けた位置よりも末端側にある綱の中間部分を、手で軽く引っ張りながら引掛部に引っ掛ける。このとき、綱は、綱張り具と第2の地点との間を一往復している。
【0013】
作業員は、引掛部に綱を引っ掛けたら、引掛部よりも末端側にある綱を手で第2の地点側に引っ張り、第1の地点と第2の地点の間の綱に、必要な大きさの張力をかける。第1の地点と第1の突起部との間にある綱にかかる張力は、作業員が末端側にある綱を手で引っ張る力のおよそ3倍となる。
第1の地点と第2の地点の間の綱に必要な大きさの張力がかかったら、作業員は、引掛部よりも末端側の綱を、第2の地点のフックや他のフックに結わえる等して固定する。また、作業員は、引掛部よりも末端側の綱を、綱張り具と第2の地点との間を一往復している綱に結わえつけてもよい。
【0014】
作業員が、綱の中間部分を第1の突起部及び第2の突起部に巻きつける際、綱を巻きつける回数は特に限定されず、一巻きであっても二巻きであっても良いし、三巻き以上であっても良い。綱を巻きつける回数を多くすれば、巻きつけた状態が崩れにくくなる。
第1の突起部及び第2の突起部の2箇所において、綱張り具は綱に対して固定されるので、綱に対する綱張り具の位置が安定し、綱張り具が回転したりずれ動いたりすることはない。綱は第1の突起部及び第2の突起部の2箇所に巻きつけられているので、第2の突起部よりも末端側の綱を引っ張らなくても、綱張り具が綱から外れにくくなっている。第2の突起部よりも末端側の綱を引っ張れば、綱が第1の突起部及び第2の突起部に巻きつく力が大きくなり、綱張り具が綱からいっそう外れにくくなる。
作業員は、綱張り具の使用に習熟していなくても、安心して安全に綱張り具を使用することができ、第1の地点と第2の地点の間に綱を張力をかけて張ることができる。
【0015】
請求項2の発明に係る綱張り具は、請求項1に記載の綱張り具であって、前記引掛部と前記基部との間に、関節部が屈曲自在に形成されている。
綱張り具を使用する作業員が、引掛部に綱を引っ掛けてから、引掛部よりも末端側にある綱を手で第2の地点側に引っ張ると、関節部が屈曲し、あるいはまっすぐに伸び、第1の地点、綱張り具及び第2の地点が、一直線上に並ぶ。第1の地点、綱張り具及び第2の地点が、一直線上に並ぶことにより、作業員が綱を引っ張る力が効率よく綱全体に伝わり、第1の地点と第2の地点の間に張られた綱に緩みや弛みが生じにくくなる。
【0016】
請求項3の発明に係る綱張り具は、請求項1又は請求項2に記載の綱張り具であって、前記引掛部は、前記綱が引っ掛けられるフックを有している。
引掛部がフックを有しているので、作業員は綱を引掛部に簡単に手際よく引っ掛けることができ、作業効率が向上する。
請求項4の発明に係る綱張り具は、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具であって、前記引掛部は、前記綱が架けられる滑車を有している。
作業員は、綱を滑車に架けることによって、綱を引掛部に引っ掛けることができる。
引掛部が滑車であるので、綱と引掛部との間に生じる摩擦が小さくなり、作業員が引掛部よりも末端側の綱を引っ張る力が、効率よく綱全体に伝わる。そして、第1の地点と第2の地点の間に張られた綱に緩みや弛みが生じにくくなる。
【0017】
請求項5の発明に係る綱張り具は、請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具であって、前記第1の突起部と前記第2の突起部の表面には、それぞれ、これらの突起部に巻きつけられる綱との間に摩擦力を生じる摩擦面が形成されている。
第1の突起部と第2の突起部の各表面に摩擦面が形成されているので、これらの突起部に巻きつけられた綱が引っ張られても、摩擦面と綱との間に摩擦力が生じ、巻きつけられた綱がこれらの突起部から滑って外れたり、ずれ動いたりすることがない。また、これらの突起部に巻きつけられた綱が引っ張られない状態であっても、巻きつけられた綱がこれらの突起部から滑って外れたり、ずれ動いたりすることがない。したがって、作業員は第1の突起部と第2の突起部に巻きつけられた綱がこれらの突起部から外れることを気にしなくてよくなり、作業効率が向上する。
なお、摩擦面は、例えば、綱の表面に引っかかる小突起や爪を多数有する面であってもよいし、鑢目や複数条の溝が切られた面であってもよい。
【0018】
請求項6の発明に係る綱張り具は、請求項1から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具であって、前記第1の突起部と前記第2の突起部の各先端部分は、これらの突起部の前記基部側の基端部分よりも、径が大きい。
第1の突起部及び第2の突起部の先端部分は、基端部分よりも径が大きいので、これらの突起部の基端部分に綱を巻きつけておきさえすれば、巻きつけた綱に多少の緩みが生じても、巻きつけられた綱は、先端部分にひっかかり、これらの突起部から滑って外れたりすることがない。したがって、作業員は第1の突起部と第2の突起部に巻きつけられた綱がこれらの突起部から外れることを気にしなくてよくなり、作業効率が向上する。
【0019】
請求項7の発明に係る綱張り具は、請求項1から請求項6のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具であって、前記第1の突起部と、前記第2の突起部と、前記引掛部と、が、1本の直線上に順番に並ぶ。
綱張り具において、第1の突起部、第2の突起部及び引掛部が、1本の直線上に順番に並ぶ。したがって、綱張り具を使用する作業員が、引掛部に綱を引っ掛けてから、作業員は引掛部よりも末端側にある綱を手で第2の地点側に引っ張ると、第1の地点、第1の突起部、第2の突起部、引掛部及び第2の地点が、一直線上に並ぶことになる。そして、第1の地点と第2の地点の間に張られた綱もこの直線上に重なり、作業員が綱を引っ張る力が効率よく綱全体に伝わり、第1の地点と第2の地点の間に張られた綱に緩みや弛みが生じにくくなる。
【0020】
請求項8の発明に係る綱張り具は、請求項7に記載の綱張り具であって、前記第1の突起部及び前記第2の突起部が棒状部材によって形成されており、当該棒状部材の軸方向が、前記第1の突起部と前記第2の突起部と前記引掛部とが並んで形成する前記直線に対して直交しており、あるいは、当該棒状部材の先端部分が、前記引掛部側を向いている。
綱張り具を使用する作業員が、引掛部に綱を引っ掛けてから、引掛部よりも末端側にある綱を手で第2の地点側にFの力で引っ張る。
【0021】
すると、引掛部よりも末端側にある綱が、引掛部を第2の地点側にFの力で引っ張り、引掛部と第2の地点との間にある綱が、引掛部を第2の地点側にFの力で引っ張る。また、第2の突起部と第2の地点との間にある綱が、第2の突起部を第2の地点側にFの力で引っ張り、第2の突起部と第1の突起部との間にある綱が、第2の突起部を第1の突起部側(すなわち、第1の地点側)に1.5・Fの力で引っ張る。さらに、第2の突起部と第1の突起部との間にある綱が、第1の突起部を第2の突起部側(すなわち、第2の地点側)に1.5・Fの力で引っ張り、第1の突起部と第1の地点との間にある綱が、第1の突起部を第1の地点側に3・Fの力で引っ張る。
【0022】
結局、全体的な力の釣り合いを考えると、第2の突起部と第1の突起部との間にある綱が、第2の突起部を第1の突起部側に0.5・Fの力で引っ張り、第1の突起部と第1の地点との間にある綱が、第1の突起部を第1の地点側に1.5・Fの力で引っ張る。すなわち、第2の突起部に巻きつけられている部分の綱は、第1の突起部側に0.5・Fの力で引っ張られ、第1の突起部に巻きつけられている部分の綱は、第1の地点側に1.5・Fの力で引っ張られる。
【0023】
第2の突起部をなす棒状部材の軸方向が、第1の突起部と第2の突起部と引掛部とが並んで形成する直線に対して直交している場合、第2の突起部をなす棒状部材は、第2の突起部を第1の突起部側に引っ張る0.5・Fの力の方向に対して直交する。したがって、第2の突起部に巻きつけられている部分の綱が、第1の突起部側に0.5・Fの力で引っ張られたとしても、この巻きつけられている部分の綱は、第2の突起部に引っ掛かり、第2の突起部から外れない。
【0024】
第1の突起部をなす棒状部材の軸方向が、第1の突起部と第2の突起部と引掛部とが並んで形成する直線に対して直交している場合、第1の突起部をなす棒状部材は、第1の突起部を第1の地点側に引っ張る1.5・Fの力の方向に対して直交する。したがって、第1の突起部に巻きつけられている部分の綱が、第1の地点側に1.5・Fの力で引っ張られたとしても、この巻きつけられている部分の綱は、第1の突起部に引っ掛かり、第1の突起部から外れない。
【0025】
第2の突起部をなす棒状部材の先端部分が、引掛部側を向いている場合、第2の突起部をなす棒状部材の先端部分は、第2の突起部を第1の突起部側に引っ張る0.5・Fの力の方向に対して、逆の方を向いていることとなる。したがって、第2の突起部に巻きつけられている部分の綱が、第1の突起部側に0.5・Fの力で引っ張られたとしても、この巻きつけられている部分の綱は、少なくとも第2の突起部の先端部分に引っ掛かり、第2の突起部から外れない。
【0026】
第1の突起部をなす棒状部材の先端部分が、引掛部側を向いている場合、第1の突起部をなす棒状部材の先端部分は、第1の突起部を第1の地点側に引っ張る1.5・Fの力の方向に対して、逆の方を向いていることとなる。したがって、第1の突起部に巻きつけられている部分の綱が、第1の地点側に1.5・Fの力で引っ張られたとしても、この巻きつけられている部分の綱は、少なくとも第1の突起部の先端部分に引っ掛かり、第2の突起部から外れない。
したがって、作業員は第1の突起部と第2の突起部に巻きつけられた綱がこれらの突起部から外れることを気にしなくてよくなり、作業効率が向上する。
【0027】
請求項9の発明に係る綱張り具は、請求項1から請求項8のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具であって、前記基部が、弾性を有する棒状部材によって形成されており、前記第1の突起部と前記第2の突起部との間、前記第1の突起部と前記引掛部との間、及び、前記第2の突起部と前記引掛部との間のうちの少なくともいずれか一の部分において、当該棒状部材が、湾曲又は屈曲している。
棒状部材を基部とし、これに2個の突起部と引掛部とを形成すれば、綱張り具が完成する。構造が簡単で安価に製造でき、どこでも気軽に使うことができる。
【0028】
綱張り具を使用する作業員が、引掛部に綱を引っ掛けてから、引掛部よりも末端側にある綱を手で第2の地点側に引っ張ると、基部にも力が働く。この力によって基部をなす棒状部材の湾曲部分又は屈曲部分が撓んで弾性変形する。基部の弾性変形によって、綱を引っ張る力の変動を吸収し、綱の緩みや弛みが生じにくくなる。
第1の地点と第2の地点の間に張力をかけて綱を張り終えた後、綱の張力に変化が生じることがあったとしても、基部をなす棒状部材が弾性変形して、綱の張力の変化を吸収し、第1の地点と第2の地点の間に張られた綱に緩みや弛みが生じにくくなる。
また、綱張り具に外力が働くことがあったとしても、基部の棒状部材が弾性変形して外力を吸収し、綱張り具の損傷が防止される。
【0029】
請求項10の発明に係る綱張り具は、請求項1から請求項9のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具であって、前記綱に遊嵌する環部を有している。
綱に綱張り具の環部が予め綱に遊嵌していれば、綱張り具の紛失が防止され、綱張り具の保管が容易化される。すなわち、第1の地点と第2の地点の間に綱を張る際には、綱張り具をいちいち探したりする必要がなく、第1の地点と第2の地点の間に張っておいた綱をはずす際には、はずした綱を束ねておきさえすれば、綱張り具と綱とを一緒にしまっておくことができる。
【発明の効果】
【0030】
上記のような綱張り具であるので、構造が簡単で、綱と一緒にどこにでも備えておくことができ、ひとたび使い方を教われば誰もがいつでも簡単かつ安全に綱に大きな張力を与えて張ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を実施するための最良の形態を図1から図6を参照しつつ説明する。
図1に示す綱張り具1は、基部10、第1の突起部18、第2の突起部24、引掛部30、環部39を有する。
基部10は、1本の弾性を有する金属製の棒状部材からなり、2箇所の屈曲点11、12を有し、略コの字形をなす。基部10において、屈曲点11からコの字形の一方の脚14が突出しており、屈曲点12からコの字形の他方の脚15が突出している。脚14をなす棒状部材の先端側部分が第1の突起部18を形成しており、脚15をなす棒状部材の先端側部分が第2の突起部24を形成している。
【0032】
第1の突起部18は、基端部分19と先端部分21とを有する。脚14に連続する基端部分19は、脚14と同径の棒状部材である。先端部分21の径は、基端部分19の径よりも大きい。基端部分19の外周面上には、鑢目が形成されており、この鑢目が摩擦面20をなしている。基端部分19の長さは、この基端部分19に後述する綱60を2〜3回以上巻きつけることができる長さである。すなわち、基端部分19は、綱60の直径の2〜3倍以上の長さを有する。
【0033】
第1の突起部18と同様に、第2の突起部24も、基端部分25と先端部分27とを有する。脚15に連続する基端部分25は、脚15と同径の棒状部材である。先端部分27の径は、基端部分25の径よりも大きい。基端部分25の外周面上には、鑢目が形成されており、この鑢目が摩擦面26をなしている。基端部分25の長さは、この基端部分25に綱60を2〜3回以上巻きつけることができる長さである。すなわち、基端部分25は、綱60の直径の2〜3倍以上の長さを有する。
【0034】
基部10の屈曲点12に円環36が形成されており、円環36に円環37が遊嵌し、円環37にフック31の基端部の環32が遊嵌している。円環36、37、フック31が、引掛部30をなしている。また、円環36、37、環32が関節部35をなしており、関節部35は引掛部30と基部10との間で屈曲自在に構成されている。
第1の突起部18の基端部分19と、第2の突起部24の基端部分25と、フック31とは、関節部35が屈曲することによって、1本の仮想の直線L1の上に順番に並ぶことができる構成となっている。
【0035】
直線L1に対して、第1の突起部18の基端部分19の軸方向L2は角度αで交差し、第1の突起部18の先端部分21が、引掛部30側を向いている。同様に、直線L1に対して、第2の突起部24の基端部分25の軸方向L3は角度βで交差し、第2の突起部24の先端部分27が、引掛部30側を向いている。ここで、角度α、βは、次式(1)、(2)を満足している。
90°>α>0° ・・・ (1)
90°>β>0° ・・・ (2)
【0036】
基部10の屈曲点11近傍部分に円環40が形成されており、円環40にはチェーン41の一端がつながれ、チェーン41の他端には円環42がつながれている。円環42が環部39をなし、円環42の中央の穴に綱60が通されている。円環42の中央の穴の径は、綱60の径よりも充分に大きい。すなわち、円環42は綱60に遊嵌しており、円環42は綱60に沿って自由に移動可能に構成されている。
第1の実施の形態に係る綱張り具1は上記のように構成されており、次にその作用について説明する。
作業員が、綱60の先端61側を第1の地点50につなぎ、綱60の末端63側を第2の地点51につなぎ、第1の地点50と第2の地点51との間の綱60に張力をかけて張る手順を説明する。
【0037】
作業員は、以下に述べる第1から第5の手順を順番に行う(図2を参照)。
まず、第1の手順において、作業員は、綱60の先端61側に小さな輪62を作り、この輪62を第1の地点50のフック53に引っ掛けてつなぐ。そして、綱60の末端63側を第2の地点51側に手で軽く引っ張り、綱60の弛みをとる。
次いで、作業員は、綱張り具1を綱60沿いに自分の手元まで移動させる。そして、綱60を第2の地点51側に軽く引っ張りながら、綱60の中間部分を綱張り具1の第1の突起部18の基端部分19に巻きつける。第1の突起部18に綱60を巻きつける回数は二巻き程度でよい。
【0038】
第1の突起部18の基端部分19は摩擦面20を有しているので、第1の突起部18に巻きつけられた綱60が基端部分19上を滑り動くことが、防止されている。また、第1の突起部18の先端部分21は基端部分19よりも径が大きいので、第1の突起部18に巻きつけられた綱60が、第1の突起部18から外れ落ちることも防止されている。
作業員は、綱60を第1の突起部18に巻きつけたら、第1の手順を終わり、第2の手順に進む(図3を参照)。
【0039】
第2の手順において、作業員は、第1の突起部18に巻きつけた位置よりも末端63側の綱60の中間部分を、第2の地点51側に軽く引っ張りながら、そのまま、綱張り具1の第2の突起部24の基端部分25に巻きつける。このとき、作業員は、第1の突起部18と第2の突起部24との間にある綱60が弛まないように気をつける。第2の突起部24に綱60を巻きつける回数は二巻き程度でよい。そして、第2の突起部24に巻きつけた位置よりも末端63側の綱60を、第2の地点51側に軽く引っ張り、綱60の弛みをとる。
【0040】
第2の突起部24の基端部分25は摩擦面26を有しているので、第2の突起部24に巻きつけられた綱60が基端部分25上を滑り動くことが、防止されている。また、第2の突起部24の先端部分27は基端部分25よりも径が大きいので、第2の突起部24に巻きつけられた綱60が、第2の突起部24から外れ落ちることも防止されている。
綱張り具1は、第1の突起部18と第2の突起部24の2箇所において綱60を巻きつけられているので、作業員が綱60を引っ張ることによって綱張り具1に綱60から張力が働いても、綱張り具1が回転したりすることはない。
【0041】
作業員は、綱60を第2の突起部24に巻きつけたら、第2の手順を終わり、第3の手順に進む(図4を参照)。
第3の手順において、作業員は、第2の突起部24に巻きつけた位置よりも末端63側の綱60を、第2の地点51側に軽く引っ張り、そのまま、第2の地点51のフック54に引っ掛ける。
作業員は、綱60を第2の地点51のフック54に引っ掛けたら、第3の手順を終わり、第4の手順に進む(図5を参照)。
第4の手順において、作業員は、フック54に引っ掛けた位置よりも末端63側にある綱60の中間部分を、綱張り具1側に軽く引っ張り、綱60の弛みをとり、そのまま、引掛部30のフック31に引っ掛ける。このとき、綱60は、綱張り具1と第2の地点51との間を一往復している。
【0042】
フック31に綱60を引っ掛けたら、作業員は、フック31に引っ掛けた位置よりも末端63側にある綱60を第2の地点51側に引っ張り、第1の地点50と第2の地点51の間の綱60に、必要な大きさの張力をかける。
作業員が、フック31に引っ掛けた位置よりも末端63側にある綱60を第2の地点51側に引っ張ると、関節部35が屈曲し、第1の突起部18の基端部分19と、第2の突起部24の基端部分25と、フック31と、が、直線L1上に並び、綱60もこの直線L1に重なって弛みなくまっすぐにのびる。
【0043】
作業員が、フック31に引っ掛けた位置よりも末端63側にある綱60を、第2の地点51側にFの力で引っ張ると、フック31よりも末端63側にある綱60が、フック31を第2の地点51側にFの力で引っ張る。同時に、フック31と第2の地点51のフック54との間にある綱60が、フック31を第2の地点51側にFの力で引っ張る。
また、第2の突起部24とフック54との間にある綱60が、第2の突起部24を第2の地点51側にFの力で引っ張る。同時に、第2の突起部24と第1の突起部18との間にある綱60が、第2の突起部24を第1の突起部18側(すなわち、第1の地点50側)に1.5・Fの力で引っ張る。
【0044】
さらに、第2の突起部24と第1の突起部18との間にある綱60が、第1の突起部18を第2の突起部24側(すなわち、第2の地点51側)に1.5・Fの力で引っ張る。同時に、第1の突起部18と第1の地点50との間にある綱60が、第1の突起部18を第1の地点50側に3・Fの力で引っ張る。
全体的な力の釣り合いを考えると、第1の突起部18に巻きつけられている部分の綱60は、第1の突起部18と第1の地点50との間にある綱60によって、第1の地点50側に1.5・Fの力で引っ張られる。また、第2の突起部24に巻きつけられている部分の綱60は、第2の突起部24と第1の突起部18との間にある綱60によって、第1の突起部18側に0.5・Fの力で引っ張られる。
【0045】
第1の突起部18の基端部分19の外周面上には摩擦面20が形成されているので、第1の突起部18に巻きつけられている部分の綱60と摩擦面20との間に摩擦力が生じ、第1の突起部18上を綱60がずれ動くことが防止されている。
同様に、第2の突起部24の基端部分25の外周面上には摩擦面26が形成されているので、第2の突起部24に巻きつけられている部分の綱60と摩擦面26との間に摩擦力が生じ、第2の突起部24上を綱60がずれ動くことが防止されている。
【0046】
また、第1の突起部18に巻きつけられている部分の綱60は、第1の地点50側に1.5・Fの力で引っ張られるが、この巻きつけられている部分の綱60は、第1の突起部18の先端部分21に引っ掛かり、第1の突起部から外れない。なぜなら、第1の突起部18の先端部分21は、第1の地点50と反対の第2の地点51側を向いており、第1の突起部18の先端部分21は基端部分19よりも径が大きいからである。
【0047】
同様に、第2の突起部24に巻きつけられている部分の綱60は、第1の突起部18側に0.5・Fの力で引っ張られるが、この巻きつけられている部分の綱60は、第2の突起部24の先端部分27に引っ掛かり、第2の突起部から外れない。なぜなら、第2の突起部24の先端部分21は、第1の突起部18と反対の第2の地点51側を向いており、第2の突起部24の先端部分27は基端部分25よりも径が大きいからである。
【0048】
作業員は、第1の地点50と第2の地点51の間の綱60に、必要な大きさの張力をかけたら、第4の手順を終わり、第5の手順に進む(図6を参照)。
第5の手順において、作業員は、フック31よりも末端63側の綱60を、第2の地点51のフック54に引っ掛け、この引っ掛けた位置よりもさらに末端63側の綱60を、第2の地点51のフック55に結わえて固定する。綱60をフック55に固定したら、第1の地点50と第2の地点51との間に綱60を張力をかけて張る作業が完了する。
【0049】
第1の地点50と第2の地点51との間に綱60を張った後、綱張り具1に外力が働いたりすると、基部10が屈曲点11、12において撓んで弾性変形し、その外力を吸収し、綱張り具1の損傷や綱60の緩みや弛みが防止される。
第4の手順において、作業員が、フック31に引っ掛けた位置よりも末端63側にある綱60を第2の地点51側に引っ張る際、綱60を引っ張る力の大きさを加減し、基部10を屈曲点11、12において多少撓ませておくことができる。予め、基部10を多少撓ませておくことによって、第1の地点50と第2の地点51との間に綱60を張った後、綱60の張力が変動しても、綱60の張力の変動を基部10が弾性変形して吸収する。すなわち、綱60の張力が減少する場合、予め撓んでいる基部10が撓む前の形に戻り、綱60の張力の減少に対応する。逆に、綱60の張力が増加する場合、基部10がさらに弾性変形し、綱60の張力の増加に対応する。
【0050】
第1の地点50と第2の地点51との間に張った綱60を外す場合、フック55に結わえた綱60を解きさえすれば、第1の地点50と第2の地点51との間の綱60が弛み、綱60は簡単に外れる。綱60に綱張り具1の環部39が遊嵌しているので、綱張り具1が綱60から外れて紛失してしまうことがなく、綱張り具1を綱60と一緒に保管しておくことができる。したがって、次回、綱60を張る際、綱張り具1を直ちに使用することができる。
【0051】
本実施の形態において、引掛部30がフック31を有しているが、フック31の代わりに、図7の変形例1に示すように、引掛部30が滑車33を有していてもよい。変形例1に係る綱張り具1は、引掛部30が滑車33を有する点を除いて、本実施の形態で説明したものと同様の構成を有する。なお、本実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
作業員が、変形例1に係る綱張り具1を用いて第1の地点50と第2の地点51との間に綱60を張力をかけて張る手順は、本実施の形態で説明したものと基本的に同様である。
【0052】
変形例1に係る綱張り具1を使用する作業員は、第4の手順において、フック54に引っ掛けた位置よりも末端63側にある綱60の中間部分を、綱張り具1側に軽く引っ張り、そのまま、引掛部30の滑車33に架ければよい。そして、作業員は、滑車33に架けた位置よりも末端63側にある綱60を第2の地点51側に引っ張り、第1の地点50と第2の地点51の間の綱60に、必要な大きさの張力をかける。
【0053】
引掛部30の滑車33に綱60が架かっているので、綱60と引掛部30との間に生じる摩擦が小さく、作業員が滑車33よりも末端63側の綱60を引っ張る力が、効率よく綱60全体に伝わり、第1の地点50と第2の地点51の間に張られた綱60に緩みや弛みが生じにくい。
変形例1に係る綱張り具1の他の構成と作用効果は、本実施の形態で説明したものと同様である。
【0054】
本実施の形態において、基部10が略コの字形をなしているが、略コの字形の代わりに、図8の変形例2に示すように、基部10が略Zの字形をなしていてもよい。なお、本実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
変形例2に係る綱張り具1において、基部10のZの字形の2箇所の屈曲部分が屈曲点11、12をなし、第1の突起部18と第2の突起部24が、基部10のZの字形の両端部分にそれぞれ形成されている。
【0055】
屈曲点12近傍の基部10に、円環36が形成されており、円環36に円環37が遊嵌し、円環37にフック31の基端部の環32が遊嵌している。
第1の突起部18の基端部分19と、第2の突起部24の基端部分25と、フック31とは、関節部35が屈曲することによって、1本の仮想の直線L1の上に順番に並ぶことができる構成となっている。
【0056】
直線L1に対して、第1の突起部18の基端部分19の軸方向L2は角度αで交差し、第1の突起部18の先端部分21が、引掛部30側を向いている。同様に、直線L1に対して、第2の突起部24の基端部分25の軸方向L3は角度βで交差し、第2の突起部24の先端部分27が、引掛部30側を向いている。角度α、βは、前述の式(1)、(2)を満足している。
【0057】
作業員が、変形例2に係る綱張り具1を用いて第1の地点50と第2の地点51との間に綱60を張力をかけて張る手順は、本実施の形態で説明したものと同様である。
変形例2に係る綱張り具1の他の構成と作用効果は、本実施の形態で説明したものと同様である。
本実施の形態において、基部10が略コの字形をなしているが、略コの字形の代わりに、図9の変形例3に示すように、基部10が略Sの字形をなしていてもよい。なお、本実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
変形例3に係る綱張り具1において、基部10全体が略Sの字形に湾曲し、第1の突起部18と第2の突起部24が、基部10の両端部分にそれぞれ形成されている。
第2の突起部24の基端部分25近傍の基部10に、円環36が形成されており、円環36に円環37が遊嵌し、円環37にフック31の基端部の環32が遊嵌している。
第1の突起部18の基端部分19と、第2の突起部24の基端部分25と、フック31とは、関節部35が屈曲することによって、1本の仮想の直線L1の上に順番に並ぶことができる構成となっている。
【0059】
直線L1に対して、第1の突起部18の基端部分19の軸方向L2は角度αで交差し、第1の突起部18の先端部分21が、引掛部30側を向いている。同様に、直線L1に対して、第2の突起部24の基端部分25の軸方向L3は角度βで交差し、第2の突起部24の先端部分27が、引掛部30側を向いている。角度α、βは、前述の式(1)、(2)を満足している。
【0060】
第1の突起部18の基端部分19近傍の基部10に、円環40が形成されており、円環40にはチェーン41の一端がつながれ、チェーン41の他端には円環42がつながれている。円環42が環部39をなし、円環42の中央の穴に綱60が通されている。
変形例3に係る綱張り具1の他の構成は、本実施の形態で説明したものと同様である。
作業員が変形例3に係る綱張り具1を用いて綱60を第1の地点50と第2の地点51との間に張る手順は、本実施の形態で説明したものと同様である。
【0061】
第1の地点50と第2の地点51との間に綱60を張った後、綱60に外力が働いたりすると、基部10のSの字形の湾曲部分が全体的に撓んで弾性変形し、その外力を吸収し、綱張り具1の損傷や綱60の緩みや弛みが防止される。変形例3に係る綱張り具1の他の作用効果は、本実施の形態で説明したものと同様である。
本実施の形態において、基部10が略コの字形をなしているが、略コの字形の代わりに、図10の変形例4に示すように、基部10が略Cの字形をなしていてもよい。なお、本実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
変形例4に係る綱張り具1において、基部10全体が略Cの字形に湾曲している。基部10をCの字として見た場合に、基部10をなすCの字形の書き始めの端部分に第1の突起部18が形成され、基部10をなすCの字形の書き終わりの端部分に第2の突起部24が形成されている。
第1の突起部18は、基端部分19と先端部分21とを有し、基部10に連続する基端部分19は、基部10と同径の棒状部材である。第2の突起部24は、基端部分25と先端部分27とを有し、基部10に連続する基端部分25は、基部10と同径の棒状部材である。
【0063】
基部10をCの字として見た場合に、基部10をなすCの字形の底の下端部分に、円環36が形成されている。すなわち、基部10は、第1の突起部18と引掛部30との間の部分において湾曲するとともに、第2の突起部24と引掛部30との間の部分においても湾曲している。円環36に円環37が遊嵌し、円環37にフック31の基端部の環32が遊嵌している。
【0064】
第1の突起部18の基端部分19と、第2の突起部24の基端部分25と、フック31とは、関節部35が屈曲することによって、1本の仮想の直線L1の上に順番に並ぶことができる構成となっている。
第1の突起部18は、基部10をなすCの字形の外側に向かって突出し、第1の突起部18の先端部分21が、基部10をなすCの字形の外側を向いており、直線L1に対して、第1の突起部18の基端部分19の軸方向L2は角度90°で交差している。また、第2の突起部24は、基部10をなすCの字形の内側に向かって突出し、第2の突起部24の先端部分27が、基部10をなすCの字形の内側を向いており、直線L1に対して、第2の突起部24の基端部分25の軸方向L3は角度90°で交差している。
【0065】
第1の突起部18の基端部分19近傍の基部10に、円環40が形成されており、円環40にはチェーン41の一端がつながれ、チェーン41の他端には円環42がつながれている。円環42が環部39をなし、円環42の中央の穴に綱60が通されている。
変形例4に係る綱張り具1の他の構成は、本実施の形態で説明したものと同様である。
作業員が変形例4に係る綱張り具1を用いて綱60を第1の地点50と第2の地点51との間に張力をかけて張る手順は、本実施の形態で説明したものと同様である。
【0066】
変形例4に係る綱張り具1を使用する作業員が、第4の手順において、フック31に引っ掛けた位置よりも末端63側にある綱60を第2の地点51側に引っ張ると、関節部35が屈曲し、第1の突起部18の基端部分19と、第2の突起部24の基端部分25と、フック31と、が、直線L1上に並び、綱60もこの直線L1に重なって弛みなくまっすぐにのびる。
【0067】
作業員が、フック31に引っ掛けた位置よりも末端63側にある綱60を第2の地点51側に引っ張っても、第1の突起部18に巻きつけられている部分の綱60は、第1の突起部から外れず、第2の突起部24に巻きつけられている部分の綱60も、第2の突起部から外れない。なぜなら、第1の突起部18の基端部分19の軸方向L2が、直線L1に対して直交しており、第1の突起部18の先端部分21は基端部分19よりも径が大きいからである。また、第2の突起部24の基端部分25の軸方向L3が、直線L1に対して直交しており、第2の突起部24の先端部分27は基端部分25よりも径が大きいからである。
【0068】
第1の地点50と第2の地点51との間に綱60を張った後、綱60に外力が働いたりすると、基部10のCの字形の湾曲部分が全体的に撓んで弾性変形し、その外力を吸収し、綱張り具1の損傷や綱60の緩みや弛みが防止される。
変形例4に係る綱張り具1の他の作用効果は、本実施の形態で説明したものと同様である。
なお、本実施の形態、変形例1から4において、綱張り具1は円環40、チェーン41、環部39をなす円環42を有している。しかし、同一の綱張り具1を常に同一の綱60とセットにして使う必要がない場合等においては、綱張り具1が円環40、42、チェーン41を有していなくてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る綱張り具の構成図である。
【図2】綱張り具の使用方法の第1の手順の説明図である。
【図3】綱張り具の使用方法の第2の手順の説明図である。
【図4】綱張り具の使用方法の第3の手順の説明図である。
【図5】綱張り具の使用方法の第4の手順の説明図である。
【図6】綱張り具の使用方法の第5の手順の説明図である。
【図7】変形例1に係る綱張り具の構成図である。
【図8】変形例2に係る綱張り具の構成図である。
【図9】変形例3に係る綱張り具の構成図である。
【図10】変形例4に係る綱張り具の構成図である。
【符号の説明】
【0070】
1 綱張り具
10 基部
11、12 屈曲点
14、15 脚
18 第1の突起部
19 第1の突起部の基端部分
20 第1の突起部の摩擦面
21 第1の突起部の先端部分
24 第2の突起部
25 第2の突起部の基端部分
26 第2の突起部の摩擦面
27 第2の突起部の先端部分
30 引掛部
31 引掛部のフック
32 フックの基端部の環
33 滑車
35 関節部
36、37、40、42 円環
39 環部
41 チェーン
50 第1の地点
51 第2の地点
53、54、55 フック
60 綱
61 綱の先端
62 綱の先端の輪
63 綱の末端
L1 仮想の直線
L2 第1の突起部の基端部分の軸方向
L3 第2の突起部の基端部分の軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の地点に先端側をつながれた綱の末端側を第2の地点側につなぐに際して、第1の地点と第2の地点との間の当該綱に張力をかけて張る綱張り具であって、
前記綱の中間部分が巻きつけられる第1の突起部と、
前記第1の突起部に巻きつけられた位置よりも末端側にある前記綱の中間部分が、巻きつけられる第2の突起部と、
前記第2の突起部に巻きつけられた位置よりも末端側にある前記綱の中間部分が、第2の地点に引っ掛けられ、この第2の地点に引っ掛けられた位置よりも末端側にある前記綱の中間部分が、さらに引っ掛けられる引掛部と、
前記第1の突起部、前記第2の突起部及び前記引掛部が形成されている基部と、を有することを特徴とする綱張り具。
【請求項2】
前記引掛部と前記基部との間に、関節部が屈曲自在に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の綱張り具。
【請求項3】
前記引掛部は、前記綱が引っ掛けられるフックを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の綱張り具。
【請求項4】
前記引掛部は、前記綱が架けられる滑車を有していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具。
【請求項5】
前記第1の突起部と前記第2の突起部の表面には、それぞれ、これらの突起部に巻きつけられる綱との間に摩擦力を生じる摩擦面が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具。
【請求項6】
前記第1の突起部と前記第2の突起部の各先端部分は、これらの突起部の前記基部側の基端部分よりも、径が大きいことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具。
【請求項7】
前記第1の突起部と、前記第2の突起部と、前記引掛部と、が、1本の直線上に順番に並ぶことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具。
【請求項8】
前記第1の突起部及び前記第2の突起部が棒状部材によって形成されており、当該棒状部材の軸方向が、前記第1の突起部と前記第2の突起部と前記引掛部とが並んで形成する前記直線に対して直交しており、あるいは、当該棒状部材の先端部分が、前記引掛部側を向いていることを特徴とする請求項7に記載の綱張り具。
【請求項9】
前記基部が、弾性を有する棒状部材によって形成されており、前記第1の突起部と前記第2の突起部との間、前記第1の突起部と前記引掛部との間、及び、前記第2の突起部と前記引掛部との間のうちの少なくともいずれか一の部分において、当該棒状部材が、湾曲又は屈曲していることを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具。
【請求項10】
前記綱に遊嵌する環部を有していることを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれかの請求項に記載の綱張り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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