網膜刺激装置
【課題】 近年になって、世界中の老年者に原因が不明とされる老人性黄斑部変性症の発症が多発している。また、中年の管理職者に見られる中心性網膜炎も看過できない。さらに最近、若い近業従事者の20〜30%に周辺立体視異常が頻発することが報告されている。本発明はこれらに症状が発生しないように予防する装置を提供する。
【解決手段】網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態を構成する不透明部分と、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対応して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態を構成する不透明部分とに、繰返し切換え可能としたことを特徴とする。
【解決手段】網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態を構成する不透明部分と、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対応して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態を構成する不透明部分とに、繰返し切換え可能としたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網膜刺激装置に関し、特に、網膜の周辺視野を刺激することができる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パソコン,携帯電話、ゲーム機などの普及により、私たちの視覚生活は大きく変化した。1日のうち殆どの時間を、パソコン画面の数文字を追い続けることに終始する生活となっている。オフィス従事者のみならず、中高生までが、全視野を活用することなく中心視ばかりを長時間継続することが習慣化している。携帯電話のメールとなれば、パソコンの文字に比べて殆ど「点」に近い視野角度である。
【0003】
一方、近年になって、世界中の老年者に原因が不明とされる老人性黄斑部変性症の発症が多発している。見たいと思う中心視野が見えなくなるという症状である。黄斑部は網膜全体のうち約15度の角度を見る、一番錐状体細胞の密集したところである。そこが浮腫を起こし、新生血管が増殖する。また、中年の管理職者に見られる中心性網膜炎も看過できない。さらに最近、若い近業従事者の20〜30%に周辺立体視異常(広い視野を見た時に奥行きが認識できない)が頻発することが報告されている。日本眼科学会、臨床眼科学会、産業労働眼科学会、アメリカARVO学会での発表では、長時間の中心視負荷が、周辺の視覚低下をもたらしていると示唆している。
電柱、ガードレールに接触、見通しのよい場所でのセンターラインオーバー事故、歩行者が見えない、信号見落としなどが近年以前に増して頻発していることと関連しているのではないかと考えられている。
【0004】
眼精疲労を除去する装置として、特開2007−29224号公開公報(特許文献1)に示されるものが知られている。この装置は、人の頭部に装着されるものであって、人の眼に対する入射光の光量調整が可能なシャッター部を含む瞳孔反応誘発部を備え、シャッター部を開状態として眼に対して外光を入射させるのと同様の第1の状態と、シャッター部を閉状態として眼に対する外光を遮断し、人に遠方を観察させているのと同様の第2の状態とが交互に繰り返し実行されるものである。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献】
【特許文献1】特開2007−29224号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置は、簡易な構成を有し、人が長期にわたって継続して使用が可能である特徴を有する点で評価できるものである。しかしながら、本発明の特徴とする網膜における周辺視野を刺激することができる装置は未だ例を見ない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであって、網膜における周辺視野を刺激することによって全視野を活用することを可能にする網膜刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の網膜刺激装置は、網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態を構成する不透明部と、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態を構成する不透明部とに、繰返し切換え可能としたことを特徴とする。
【0009】
また、前記制御板は、液晶状態の変化をもって透明・不透明状態を制御する液晶パネルであることを特徴とする。
また、前記網膜刺激装置本体を人の頭部に装着可能としたことを特徴とする。
また、前記網膜刺激装置本体は、前記装着状態において、前記制御板を介した外光の入射経路を除き、外光の入射が遮断された状態になっていることを特徴とする。
また、前記網膜刺激装置本体は、ゴーグル型の外観形状を有していることを特徴とする。
【0010】
また、前記第1の不透明状態と第2の不透明状態の間に、第2の状態の不透明状態よりも大きな不透明部を有する1ないし複数の第3の不透明状態が存在し、第3の不透明状態を構成する不透明部が複数の場合、当該不透明部の大きさが異なるよう構成され、第1の不透明状態、第3の不透明状態、第2の不透明状態が繰返し切換え可能であることを特徴とする。
また、前記第1の不透明状態と第2の不透明状態のほかに全体が透明である透明状態を備え、これら3状態を繰返し切換え可能としたことを特徴とする。
【0011】
また、前記第1の不透明状態と第2の不透明状態と第3の不透明状態のほかに全体が透明である透明状態を備え、これら4状態を繰返し切換え可能としたことを特徴とする。
また、前記第2の不透明状態を構成する不透明部を人の二つの眼に対向して2つ設け、これら不透明部の形状をそれぞれ横長の楕円形状としたことを特徴とする。
また、網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態から、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態まで、不透明状態における不透明部の大きさが連続して変化するよう繰返し制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【0012】
また、網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、前記制御板の略全体を暗部とする第1の状態と、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とする第2の状態とに切換制御することを特徴とする。
また、前記第1の状態と前記第2の状態の間に、第2の状態の暗部よりも大きな暗部を有する1ないし複数の第3の状態が存在し、第3の状態を構成する暗部が複数の場合、当該暗部の大きさが異なるよう構成され、第1の状態、第3の状態、第2の状態に繰返し切換制御することを特徴とする。
また、網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、前記制御板の略全体を暗部とする第1の状態と、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とする第2の状態とを備え、前記第1の状態から前記第2の状態まで、暗部の大きさが連続して変化するよう繰返し制御することを特徴とする。
また、前記網膜刺激装置は、据置き型の装置であることを特徴とする。
さらに、網膜刺激装置本体を据置き型の装置とし、内部を暗室とし、ここに制御板と光源を設け、前記本体に設けた覗き窓より前記制御板を見ることができるよう構成し、前記制御板を、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とするよう構成し、前記光源の点灯時に前記暗部を見ることができる第1の状態と、前記光源を消灯した場合に前記制御板全体が暗部となる第2の状態とを切換え制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の網膜刺激装置によれば、第1の不透明状態とは別に第2の不透明状態を設けることにより、黄斑部でものを見ていない状態、すなわち、細かいものをじっと見続けることを無くす状態を実現できるので、黄斑部を休めることができ、このときは、黄斑部を使用せず、むしろ網膜周辺部を使用してものを見ることになり、網膜の周辺を刺激することができる。この結果、全視野(網膜全体)を使用してものを見ることができるようになる。
黄斑部を休め、網膜の周辺部を刺激することにより、老人性黄斑部変性症、中心性網膜炎や周辺立体視異常などの予防につながることが期待できる。
【0014】
また、網膜刺激装置本体をゴーグル形状にして全面の制御板からしか光が入らないようにすることにより、制御板の状態切換えによる効果は向上する。
また、第1の不透明状態、第2の不透明状態のほかに第3の不透明状態を設け、これらを、繰返し切換え可能とすることにより、より効果を上げることが期待できる。
また、第2の不透明状態を構成する2つの不透明部のそれぞれの形状を横長の楕円形状とすることにより、瞳孔間距離の異なる人にもそのまま用いることができる。
【0015】
また、全体が透明部で構成される透明状態と組み合わせることにより、瞳孔の散大縮小運動を促し、眼の疲労を除去する効果も期待できる。
さらに、不透明状態を構成する不透明部の大きさを連続的に変化させるように構成すれば、より一層の効果が期待できる。
装置本体をパーソナルコンピュータなどの据置き型の装置とすることにより、例えば、パーソナルコンピュータを使用中に眼が疲れた場合など、休憩を兼ねて、黄斑部を休めるように使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る網膜刺激装置を人の頭部に装着した状態を示す斜視図である。
【図2】同装置の構成を示すブロック図である。
【図3】(a)(b)は、それぞれ同装置の制御板の状態を示す模式断面図である。
【図4】(a)(b)は、それぞれ制御板が異なる状態にある場合の人の眼の状態を示す模式断面図である。
【図5】(a)(b)(c)はそれぞれ同装置の制御板の状態を示す図である。
【図6】同装置説明に必要な眼と制御板の関係を示す図である。
【図7】同装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】同装置の駆動状態を説明するためのフローチャートである。
【図9】(b)(d)(e)(c)はそれぞれ同装置の制御板の異なる状態を示す図である。
【図10】同装置の制御板の他の状態を示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態における視野刺激装置の斜視図である。
【図12】(a)(b)は本発明の他の実施例における視野刺激装置の斜視図である。
【図13】(a)(b)はさらに本発明の他の実施例における視野刺激装置の斜視図及び一部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
図1に示すように、網膜刺激装置本体1の外観形状がゴーグル状をしており、レンズに相当する部分が制御板10となっている。制御板10は、全体あるいは人の眼の前の部分が液晶パネルによって構成されており、後述する制御板駆動部40(図2を参照。)により液晶の状態が変化可能となっている。
また、フレーム部90に操作スイッチ20が設けられており、例えば、駆動スタートのためのスイッチとモード選択のためのスイッチ等を含んでいる。
【0018】
装置全体1はフレーム部90に取り付けられた装着ベルト部100により人の頭部に装着可能な構成となっている。そして、フレーム部90が人の顔の表面に密着するように構成されており、制御板10を通る経路以外からは眼に外光が入射しない構成となっている。制御板10として、上記では液晶パネルを用いたが、原理的にはプラズマディスプレイや機械的シャッター等種々のものが考えられる。然しながら、液晶パネルがコスト面・小型化等から考え最適と考えられる。
【0019】
次に、図2に示すように、上記制御板10および操作スイッチ部(入力部)20等の他に、制御部30、制御板駆動部40、電力供給部50、制御板10を駆動するタイミングデータ等のデータ格納部60、計数部70、振動検知部80を備えている。この内、制御部30は、メモリ装置部分を含む電子回路により構成されており、入力部20から入力される人の指示に基づき、制御板駆動部40に対して制御板10の駆動に関する信号を出力する。
【0020】
また、制御部30は、制御板駆動部40への信号を出力するに際し、データ格納部60に予め格納された制御板10を駆動するためのデータ、および計数部70からのタイミング信号を参酌する。また、制御部30に振動検知部80が接続されており、制御部30には、振動検知部80で検知された網膜刺激装置本体1に加わる振動に関する信号が入力され、この入力信号に基づいてその振動が人の歩行に由来する振動であるか、あるいは人の車の運転に由来する振動であるか等を判断する。
【0021】
制御部30に振動検知部80から振動に関する信号が入力され、その入力信号が人が歩行中か車の運転中かである場合には、制御板駆動部40に対して制御板10を透明状態とする、すなわち駆動を中断する旨の信号を出力する。具体的には、後述する。
なお、振動検知部80は、例えば、ディジタルカメラなどの手ブレ補正のために供えられている振動ジャイロセンサなどを用いて構成されている。また、電力供給部50は、例えば、小型で高出力なガム型のリチウム電池や、ボタン型の酸化銀電池等の小型電池を用いることができ、特に環境への負担軽減という観点から二次電池を用いることが望ましい。このように二次電池を電力供給部50として備える場合には、網膜刺激装置本体1のフレーム部90に充電用端子などを設けておき、この端子を介して電池を充電可能としておけば、装置の使い易さおよび環境などの面から考え好ましい。
【0022】
2.制御板10の駆動による入射光の変化
制御板10の駆動形態とそれに伴う人の眼への光の入射状態について、図3を用いて説明する。また、各々の場合における人の眼の状態を図4を用いて説明する。
図3(a)に示すように、制御板10が透明状態のときには、外光L0は、制御板10でほとんど遮られることはなく、人の眼に光L1として入射する。即ち、制御板10が透明状態のときには、外光L0と入射光L1とは略等しい光量であって、制御板10を介して外光が眼に入射される(第1の状態)。
【0023】
図4(a)に示すように、人の眼に光L1が入射しているときには瞳孔が縮瞳する。これに伴い、人の毛様筋502が緊張状態となる。
次に、図3(b)に示すように、制御板駆動部40により制御板10が不透明状態とされた場合には、外光L0は制御板10で略完全に遮断されることになり、人は暗状態を認識する。このように制御板10が不透明状態となることによって、人の眼には、外光L0が入射しないことになり(脳への情報がゼロ)、瞳孔が散瞳状態となる(第2の状態)。なお、この実施の形態では、制御板10が不透明状態のとき、外光L0が略完全に遮断されることになる構成となっているが、必ずしも完全に外光L0を遮断する必要は無く、上記第1の状態に比べて入射光量を低減できれば、眼精疲労除去の効果は奏されることになる。
【0024】
図4(b)に示すように、制御板10が不透明状態で人の眼への外光L0が遮られた状態では瞳孔が散瞳状態となる。これに伴い、人の毛様筋502が緩んだ状態となる。このように外光L0が遮られた状態では瞳孔が散瞳状態となり、毛様筋502が緩んだ状態となる。
【0025】
以上のように、制御板10の透明・不透明切換え駆動を一定の周期をもって実行し、人の瞳孔が縮瞳と散瞳とを繰り返す(第1の状態と第2の状態)。このように人の瞳孔に縮瞳と散瞳とを繰り返させることで、人の眼筋(毛様筋など)の緊張を解すことができるという効果を奏する。即ち、この場合は眼の疲れを除去できる効果がある。また、暗の状態(脳に情報がゼロ)から明の状態に切り替わるとき外界の情報に対して脳の防衛本能で「見よう」という意識を喚起することが期待される。
【0026】
図5a、b、cは本体1を正面から見た図であり、図5aは制御板10が透明状態、すなわち図3aと同じ状態であり、図5bは制御板10が不透明状態で全体が不透明部9となっており、図3bと同じ状態を示している。図5cは両眼の黄斑部(眼底の網膜の中心にあり、その中心窩は視機能が最も鋭敏な部位)のそれぞれに対向する制御板10の部分のみ不透明部3、4とした状態を示している。図6に示すように、網膜5の中心の黄斑部6から見て視角約15度の制御板10に対応する部分に不透明部3を設ける。もちろん、このときの制御板10の位置は本体1を人の眼に合わせて顔に装着した状態である。不透明部3,4は黒色が好ましいが、不透明であればよい。この不透明部3,4が本発明の特徴とするところである。
【0027】
そして、網膜刺激装置本体1を人の眼に合わせて顔に装着した状態では、制御板10を通ってきた光は不透明部3,4に遮られて黄斑部6にはほとんど入らない。制御板10の不透明部3,4は少し大き目にしておく方が、黄斑部6に光が入らないので良い。この状態は、黄斑部6でものを見ていない状態、すなわち、細かいものをじっと見続けることを無くす状態であるので、黄斑部6を休める働きがある。そして、このときは、黄斑部6を使用せず、むしろ網膜5の周辺部を使用してものを見ることになり、網膜5の周辺を刺激することができる。この結果、全視野(網膜全体)を使用してものを見ることができるようになる。
なお、黄斑部6を使用して例えばパソコンで作業をしている時でも網膜の周辺にも光は当たっているが、この作業を長時間毎日行っていると、網膜の周辺には光が当たっているが、脳がこの光を認識する必要がないと判断し、周辺視野を認識できなくなると考えられる。黄斑部6を使用しない状態を設けることにより、網膜の周辺が刺激され、ここでものを見るという状態が可能になる。
黄斑部6を休め、網膜5の周辺部を刺激することにより、老人性黄斑部変性症、中心性網膜炎や周辺立体視異常などの予防につながることが期待できる。
【0028】
具体的には、第1のパターンは、図5のb状態からc状態、c状態からb状態へ戻る。これを繰り返す。b→c→bの1サイクルに要する時間は眼の対光反応時間に合わせるとよい。具体的には3秒程度であり、一分間に20回繰り返すことになる。第2のパターンは、図5のa状態、b状態、c状態の繰りしであり、a→b→c→a→b→c・・・である。1サイクルに要する時間は第1のパターンを考慮して決定すればよい。第3のパターンは、a→b→a→b・・・である。
なお、図示はしていないが、図5cとは逆のパターン即ち、図5cの3,4を透明状態とし、その他を不透明状態とする状態をつくる。使用の最初にこの状態からスタートすると、人は必ず、黄斑部で3,4の穴を通して外界を見ることになるので、図5cの時に黄斑部で外界を見ないことになる。
【0029】
次に、人が本実施の形態に係る網膜刺激装置本体1を頭部に装着し、操作スイッチ20の内の駆動開始スイッチを押した際の網膜刺激装置の駆動方法について、上記パターン1の場合を例にして、図1、2、7、8図を用いて説明する。
【0030】
図1,2に示す入力部(操作スイッチ)20から駆動開始(スタート)の信号の入力を受け付けた制御部30が、制御板駆動部40に対して制御板10の第7図に示すb状態を時間T(0.7秒)保持し、その後にc状態を時間T(0.7秒)保持する指示信号を出力する。制御板10のb状態とc状態との繰り返しサイクル数n、時間Tなどは、予めデータ格納部60にプログラムされており、制御部30がこのデータ格納部60に格納されたデータに基づいて制御板駆動部40に駆動信号を出力する。なお、例えば、制御板10のb状態とc状態との繰り返しは5分程度で網膜刺激装置本体1の動作がストップするように設定する。この時間は任意である。使用者が途中で切ってもよい。
【0031】
図8に示すように、制御部30が、人からのスタート指示を受け付けると(ステップS0)、計数部70におけるカウンタのリセットを実行する(ステップS1)。また、制御部30は、引き続いて計数部70におけるタイマーをリセットし(ステップS2)、その後にタイマーのカウントを開始させる(ステップS3)。
制御部30は制御板駆動部40に対して制御板10をb状態とする信号を出力し(ステップS4)、振動検知部80からの振動検出信号の有無の確認を実行しながら(ステップS5)、タイマーの経過時間tが時間Tとなるまで制御板10のb状態を維持する。そして、タイマーの経過時間tが時間Tに達した時点で、タイマーをリセットし(ステップS7)、その後にタイマーのカウントを再び開始させ(ステップS8)、制御板10をc状態とする指示信号を制御板駆動部40に出力する(ステップS9)。
【0032】
制御部30は、振動検知部80からの振動検出信号の有無の確認を実行しながら(ステップS10)、タイマーの経過時間tが時間Tとなるまで制御板10のc状態を維持する。そして、タイマーの経過時間tが時間Tに達した時点で、経過サイクル数mに”1”を加算し(ステップS12)、加算後の経過サイクル数が”n”に達しているか否かを判断する(ステップS13)。そして、制御部30は、経過カウント数が”m<n”の関係にあるとき(ステップS13で”N”のとき)、ステップS2に戻り装置動作を実行する。一方、ステップ13において、”m=n”の関係が成り立つとき(ステップS13で”Y”のとき)、制御部30は、制御板駆動部40に対して制御板10をc状態とする指示信号を出力し(ステップS14)、網膜刺激装置本体1の駆動を停止する(ステップS15)。
【0033】
なお、本実施例1の網膜刺激装置では、振動検知部80を設けており、この振動検知部80からの信号が制御部30に入力される構成となっている。制御部30では、振動検知部80から入力された信号を解析し(例えば、振動波形解析)、人が歩行中であるか、あるいは車の運転中であるかというように判断した場合(ステップS5、ステップS10で”Y”の場合)、直ぐに装置駆動を停止する(ステップS15)。上述のように、振動検知部80を用い人が歩行中か車運転中かという状況判断をした場合に、即座に装置の駆動を停止させるので人の誤った装置使用に対しても人の安全性を確実に確保することができる。
【0034】
なお、図3に示す通り、本実施例1では、制御板10が人の眼の直ぐ前に位置する構成としているが、眼鏡を掛けている人などを考慮するときには、人の眼との間に眼鏡を掛け得る隙間を設けて制御板10を形成しておくことも有効である。このような構成を採用することによって、より広い層を対象とすることができる。
【0035】
また、本実施例1においては、振動検知部80を備えて使用者の安全を確実に図ることとしたが、この振動検知部80については、必須の構成要件ではなく、振動検知部80を備えないような構成の網膜刺激装置についても、上記効果の内の本質的部分を得ることができる。即ち、本発明に係る網膜刺激装置が従来の装置に対して有する本質的な優位性は、制御板10を備え、この制御板10の切替え動作によって人の網膜の周辺を刺激し、黄斑部を休め、結果として、老人性黄斑部変性症、中心性網膜炎や周辺立体視異常などの予防につながることが期待できる。
【0036】
また、制御板10は液晶パネルで構成されており、図5に示すa状態、b状態c状態は画像処理技術を使用して容易に得ることができ。データ格納部60にデータとして記憶して使用すればよい。
【0037】
また、パターン2、パターン3についても同様にして動作させることができ、パターン切換えスイッチを装置本体1に設けておけばよい。パターン2については人の網膜の周辺を刺激し、黄斑部を休めるという機能と、従来の眼精疲労を除去する機能の両方を持たせることができる。パターン3は従来の眼精疲労を除去する機能のみである。
【0038】
眼の網膜の周辺刺激をより一層よくするための手段を図9を用いて説明する。
制御板10の状態を図5のb状態、c状態(図9のb状態、c状態)のほかに図9d状態とe状態を設けたものである。
すなわち、d状態は制御板10の外側から内側へ少し透明状態(透明部分)とし、残りの部分を不透明状態、すなわち不透明部7とし、e状態はd状態よりも狭い不透明部8を設けたものである。そして、状態の切換えは、b→d→e→c→b→d→e→cと行う。このようにすることにより、周辺視野をより良好に刺激することができる。このパターンのほかに図5のa状態を上記のパターンの間に挿入してもよい。
【0039】
図9に示す制御板10の状態も、液晶状態の変化をもって透明・不透明状態を制御する液晶パネルを用いることにより、画像処理技術を用いて実施することができる。制御も図7,8と同様の手法により実施することができる。
また、図5cに示す不透明部3、4を図10に示すように横長の楕円形状の不透明部3a、4aにすると、瞳孔間距離が異なる人にもそのまま使用することができる。
また、図示はしていないが、制御板10の左半分を透明状態、右半分を不透明状態とするパターン、これと逆即ち、制御板10の左半分を不透明状態、右半分を透明状態とするパターンを作り、これらのパターンを他のパターンに適宜織り交ぜて切換えて使用するようにしてもよい。
【0040】
不透明部3、4は黄斑部6にきっちりと対応していなくてもよく、黄斑部6をカバーするように少し大きくてもよく、少し小さくてもよい。したがって、黄斑部6に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部6には当たらないように遮断する不透明部3、4が形成されればよい。略黄斑部6とした意味は、前方からくる光が黄斑部6を含め黄斑部6周囲外側にも当たらない場合と、黄斑部6の周囲内側には少し当たるという場合を含んでいる。
また、図5bの不透明部9も完全に全体が不透明であるに越したことはないが、周辺に透明部分があってもよいので、この意味を含め人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とするという表現をとっている。
【実施例2】
【0041】
図11に示す実施例2は、眼鏡型の外観形状を有する眼鏡部110と、駆動回路などが収納された駆動装置部120と、眼鏡部110と駆動装置部120とを電気的に接続する接続コード130とから構成されている。このように、本実施の形態では、眼鏡型の外観形状を有する眼鏡部110を有する点で、図1に示すゴーグル型の外観形状を有するものと異なる。また、図1に示すものでは制御部30を始めとする駆動回路部分がゴーグル型をした装置本体1に一体に収納されていたが、本実施の形態では、人の頭部に装着される装置本体1たる眼鏡部110の軽量化を図るために駆動装置部120が別に設けられている。
【0042】
眼鏡部110は、リム部111、テンプル部112、モダン部113、ブリッジ部114および制御板115とから構成されており、この内制御板115は、液晶パネルによって構成されている。
一方、駆動装置部120には、操作スイッチ121がその外面に設けられており、内部に制御部をはじめとする駆動回路部分が形成された電子回路が内蔵されている。また、駆動装置部120内には、電力供給源としての二次電池が内蔵されており、図示していないが、駆動装置部120の外底面に二次電池充電用の外部接続端子が設けられている。
【0043】
人は、本実施例2に係る網膜刺激装置を使用する際には、眼鏡部110のテンプル部112およびモダン部113を用いて頭部に装着し、駆動装置部120を胸ポケットに挿入したり、あるいはウェストベルトなどに装着する。接続コード130は、一端が眼鏡部110におけるモダン部113の端部に接続されており、他端が駆動装置部120に接続されている。そして、モダン部113の一端に接続された接続コードは、テンプル部112の内部に形成されたリードにより制御板115に電気的に接続されている。
【0044】
本実施の形態に係る網膜刺激装置は、上記実施例1と基本的に同様のシーケンスをもって駆動し、制御板115の開閉動作によって人の網膜の周辺を刺激することができる。
【0045】
なお、本実施例2では、図1に示すようなゴーグル型ではなく眼鏡型を採用しているため、制御板115以外の周りの部分からも人の眼には光が入射してくるが、眼の前の制御板115を介した経路が外光の主たる入射経路となる。このため、本実施例2においても、制御板115の切換え動作、連続動作によって眼の網膜の周辺を刺激することができる。
【0046】
また、本実施例2においても、眼鏡部110あるいは駆動装置部120に振動検知部を設けてある。
さらに、本実施例2は、眼鏡型の外観形状を有するものであるが、例えば、普段から眼鏡を使用している人などを対象とする場合には、所謂クリップオン型を採用することができる。即ち、眼鏡を使用している人がサングラスを用いる場合に、クリップオン型のサングラスを用いることがあるが、同様にクリップオン型の装置とすることも可能である。具体的には、例えば、人が掛けている眼鏡のリム部あるいはワタリ部あるいはブリッジ部に装着可能なクリップ部を備えたものなどを適用することができる。
【0047】
図12,13はそれぞれ他の実施例を示すものであり、据置型の装置に適応したものである。
図12はパーソナルコンピュータの例であり、パーソナルコンピュータ200の画面201(図5の制御板10に相当)を、図12bに示すように画面201略全体を暗部202とする第1の状態と、図12aに示すように画面201を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部203とそれ以外を明部204とする第2の状態とに切換制御するようにしたものである。切換は一分間に20回繰り返す程度である。
もちろん、見る人は図12aの暗部203を見つめるようにする。このようにすることにより、眼の黄斑部を休めることができる。
【0048】
図13に示すものは、覗くタイプの据置型の装置に適応した例である。装置本体300に左右の眼に対応して覗き窓301、302が設けられている。装置本体300の内部は暗室になっており、内部に図13bに示すカード304が挿入されている。このカード304には一対のフィルム部305が複数設けられており裏面より光を当てることにより覗き窓からフィルム部305の内容を見ることができる。フィルム部305に、見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部306とそれ以外を明部307とが設けられている。
【0049】
装置本体300のつまみ308を回すことによりカード304を上下動させることができ、覗き窓301,302から見る内容を切り替えることができる。装置本体300の内部には光源が設けられている。光源を点灯状態にして、覗き窓301,302から内部を見る。カード304を暗部306が見えるようにつまみ308で設定しておく。光源を自動制御して一分間に20回程度点滅させると、暗部306が見えたり、全面が真っ暗な状態になったりする。これによって、眼の黄斑部を休めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、網膜の周辺を刺激することによって全視野を活用することを可能にする網膜刺激装置に用いて有用である。
【符号の説明】
【0051】
1:網膜刺激装置本体
3、4、3a、4a、7、8、9:不透明部
5:網膜
6:黄斑部
10、115:制御板
20、121:操作スイッチ(入力部)
30:制御部
40:制御板駆動部
50:電力供給部
60:制御板駆動タイミングデータ格納部
70:計数部
80:振動検知部
90:フレーム部
100:装着ベルト部
110:眼鏡部
111:リム部
112:テンプル部
113:モダン部
120:駆動装置部
130:接続コード
200:パーソナルコンピュータ
201:画面
202:暗部
203:暗部
204:明部
300:装置本体
301,302:覗き窓
304:カード
305:フィルム部
306:暗部
307:明部
【技術分野】
【0001】
本発明は、網膜刺激装置に関し、特に、網膜の周辺視野を刺激することができる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パソコン,携帯電話、ゲーム機などの普及により、私たちの視覚生活は大きく変化した。1日のうち殆どの時間を、パソコン画面の数文字を追い続けることに終始する生活となっている。オフィス従事者のみならず、中高生までが、全視野を活用することなく中心視ばかりを長時間継続することが習慣化している。携帯電話のメールとなれば、パソコンの文字に比べて殆ど「点」に近い視野角度である。
【0003】
一方、近年になって、世界中の老年者に原因が不明とされる老人性黄斑部変性症の発症が多発している。見たいと思う中心視野が見えなくなるという症状である。黄斑部は網膜全体のうち約15度の角度を見る、一番錐状体細胞の密集したところである。そこが浮腫を起こし、新生血管が増殖する。また、中年の管理職者に見られる中心性網膜炎も看過できない。さらに最近、若い近業従事者の20〜30%に周辺立体視異常(広い視野を見た時に奥行きが認識できない)が頻発することが報告されている。日本眼科学会、臨床眼科学会、産業労働眼科学会、アメリカARVO学会での発表では、長時間の中心視負荷が、周辺の視覚低下をもたらしていると示唆している。
電柱、ガードレールに接触、見通しのよい場所でのセンターラインオーバー事故、歩行者が見えない、信号見落としなどが近年以前に増して頻発していることと関連しているのではないかと考えられている。
【0004】
眼精疲労を除去する装置として、特開2007−29224号公開公報(特許文献1)に示されるものが知られている。この装置は、人の頭部に装着されるものであって、人の眼に対する入射光の光量調整が可能なシャッター部を含む瞳孔反応誘発部を備え、シャッター部を開状態として眼に対して外光を入射させるのと同様の第1の状態と、シャッター部を閉状態として眼に対する外光を遮断し、人に遠方を観察させているのと同様の第2の状態とが交互に繰り返し実行されるものである。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献】
【特許文献1】特開2007−29224号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置は、簡易な構成を有し、人が長期にわたって継続して使用が可能である特徴を有する点で評価できるものである。しかしながら、本発明の特徴とする網膜における周辺視野を刺激することができる装置は未だ例を見ない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであって、網膜における周辺視野を刺激することによって全視野を活用することを可能にする網膜刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の網膜刺激装置は、網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態を構成する不透明部と、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態を構成する不透明部とに、繰返し切換え可能としたことを特徴とする。
【0009】
また、前記制御板は、液晶状態の変化をもって透明・不透明状態を制御する液晶パネルであることを特徴とする。
また、前記網膜刺激装置本体を人の頭部に装着可能としたことを特徴とする。
また、前記網膜刺激装置本体は、前記装着状態において、前記制御板を介した外光の入射経路を除き、外光の入射が遮断された状態になっていることを特徴とする。
また、前記網膜刺激装置本体は、ゴーグル型の外観形状を有していることを特徴とする。
【0010】
また、前記第1の不透明状態と第2の不透明状態の間に、第2の状態の不透明状態よりも大きな不透明部を有する1ないし複数の第3の不透明状態が存在し、第3の不透明状態を構成する不透明部が複数の場合、当該不透明部の大きさが異なるよう構成され、第1の不透明状態、第3の不透明状態、第2の不透明状態が繰返し切換え可能であることを特徴とする。
また、前記第1の不透明状態と第2の不透明状態のほかに全体が透明である透明状態を備え、これら3状態を繰返し切換え可能としたことを特徴とする。
【0011】
また、前記第1の不透明状態と第2の不透明状態と第3の不透明状態のほかに全体が透明である透明状態を備え、これら4状態を繰返し切換え可能としたことを特徴とする。
また、前記第2の不透明状態を構成する不透明部を人の二つの眼に対向して2つ設け、これら不透明部の形状をそれぞれ横長の楕円形状としたことを特徴とする。
また、網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態から、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態まで、不透明状態における不透明部の大きさが連続して変化するよう繰返し制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【0012】
また、網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、前記制御板の略全体を暗部とする第1の状態と、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とする第2の状態とに切換制御することを特徴とする。
また、前記第1の状態と前記第2の状態の間に、第2の状態の暗部よりも大きな暗部を有する1ないし複数の第3の状態が存在し、第3の状態を構成する暗部が複数の場合、当該暗部の大きさが異なるよう構成され、第1の状態、第3の状態、第2の状態に繰返し切換制御することを特徴とする。
また、網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、前記制御板の略全体を暗部とする第1の状態と、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とする第2の状態とを備え、前記第1の状態から前記第2の状態まで、暗部の大きさが連続して変化するよう繰返し制御することを特徴とする。
また、前記網膜刺激装置は、据置き型の装置であることを特徴とする。
さらに、網膜刺激装置本体を据置き型の装置とし、内部を暗室とし、ここに制御板と光源を設け、前記本体に設けた覗き窓より前記制御板を見ることができるよう構成し、前記制御板を、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とするよう構成し、前記光源の点灯時に前記暗部を見ることができる第1の状態と、前記光源を消灯した場合に前記制御板全体が暗部となる第2の状態とを切換え制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の網膜刺激装置によれば、第1の不透明状態とは別に第2の不透明状態を設けることにより、黄斑部でものを見ていない状態、すなわち、細かいものをじっと見続けることを無くす状態を実現できるので、黄斑部を休めることができ、このときは、黄斑部を使用せず、むしろ網膜周辺部を使用してものを見ることになり、網膜の周辺を刺激することができる。この結果、全視野(網膜全体)を使用してものを見ることができるようになる。
黄斑部を休め、網膜の周辺部を刺激することにより、老人性黄斑部変性症、中心性網膜炎や周辺立体視異常などの予防につながることが期待できる。
【0014】
また、網膜刺激装置本体をゴーグル形状にして全面の制御板からしか光が入らないようにすることにより、制御板の状態切換えによる効果は向上する。
また、第1の不透明状態、第2の不透明状態のほかに第3の不透明状態を設け、これらを、繰返し切換え可能とすることにより、より効果を上げることが期待できる。
また、第2の不透明状態を構成する2つの不透明部のそれぞれの形状を横長の楕円形状とすることにより、瞳孔間距離の異なる人にもそのまま用いることができる。
【0015】
また、全体が透明部で構成される透明状態と組み合わせることにより、瞳孔の散大縮小運動を促し、眼の疲労を除去する効果も期待できる。
さらに、不透明状態を構成する不透明部の大きさを連続的に変化させるように構成すれば、より一層の効果が期待できる。
装置本体をパーソナルコンピュータなどの据置き型の装置とすることにより、例えば、パーソナルコンピュータを使用中に眼が疲れた場合など、休憩を兼ねて、黄斑部を休めるように使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る網膜刺激装置を人の頭部に装着した状態を示す斜視図である。
【図2】同装置の構成を示すブロック図である。
【図3】(a)(b)は、それぞれ同装置の制御板の状態を示す模式断面図である。
【図4】(a)(b)は、それぞれ制御板が異なる状態にある場合の人の眼の状態を示す模式断面図である。
【図5】(a)(b)(c)はそれぞれ同装置の制御板の状態を示す図である。
【図6】同装置説明に必要な眼と制御板の関係を示す図である。
【図7】同装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】同装置の駆動状態を説明するためのフローチャートである。
【図9】(b)(d)(e)(c)はそれぞれ同装置の制御板の異なる状態を示す図である。
【図10】同装置の制御板の他の状態を示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態における視野刺激装置の斜視図である。
【図12】(a)(b)は本発明の他の実施例における視野刺激装置の斜視図である。
【図13】(a)(b)はさらに本発明の他の実施例における視野刺激装置の斜視図及び一部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
図1に示すように、網膜刺激装置本体1の外観形状がゴーグル状をしており、レンズに相当する部分が制御板10となっている。制御板10は、全体あるいは人の眼の前の部分が液晶パネルによって構成されており、後述する制御板駆動部40(図2を参照。)により液晶の状態が変化可能となっている。
また、フレーム部90に操作スイッチ20が設けられており、例えば、駆動スタートのためのスイッチとモード選択のためのスイッチ等を含んでいる。
【0018】
装置全体1はフレーム部90に取り付けられた装着ベルト部100により人の頭部に装着可能な構成となっている。そして、フレーム部90が人の顔の表面に密着するように構成されており、制御板10を通る経路以外からは眼に外光が入射しない構成となっている。制御板10として、上記では液晶パネルを用いたが、原理的にはプラズマディスプレイや機械的シャッター等種々のものが考えられる。然しながら、液晶パネルがコスト面・小型化等から考え最適と考えられる。
【0019】
次に、図2に示すように、上記制御板10および操作スイッチ部(入力部)20等の他に、制御部30、制御板駆動部40、電力供給部50、制御板10を駆動するタイミングデータ等のデータ格納部60、計数部70、振動検知部80を備えている。この内、制御部30は、メモリ装置部分を含む電子回路により構成されており、入力部20から入力される人の指示に基づき、制御板駆動部40に対して制御板10の駆動に関する信号を出力する。
【0020】
また、制御部30は、制御板駆動部40への信号を出力するに際し、データ格納部60に予め格納された制御板10を駆動するためのデータ、および計数部70からのタイミング信号を参酌する。また、制御部30に振動検知部80が接続されており、制御部30には、振動検知部80で検知された網膜刺激装置本体1に加わる振動に関する信号が入力され、この入力信号に基づいてその振動が人の歩行に由来する振動であるか、あるいは人の車の運転に由来する振動であるか等を判断する。
【0021】
制御部30に振動検知部80から振動に関する信号が入力され、その入力信号が人が歩行中か車の運転中かである場合には、制御板駆動部40に対して制御板10を透明状態とする、すなわち駆動を中断する旨の信号を出力する。具体的には、後述する。
なお、振動検知部80は、例えば、ディジタルカメラなどの手ブレ補正のために供えられている振動ジャイロセンサなどを用いて構成されている。また、電力供給部50は、例えば、小型で高出力なガム型のリチウム電池や、ボタン型の酸化銀電池等の小型電池を用いることができ、特に環境への負担軽減という観点から二次電池を用いることが望ましい。このように二次電池を電力供給部50として備える場合には、網膜刺激装置本体1のフレーム部90に充電用端子などを設けておき、この端子を介して電池を充電可能としておけば、装置の使い易さおよび環境などの面から考え好ましい。
【0022】
2.制御板10の駆動による入射光の変化
制御板10の駆動形態とそれに伴う人の眼への光の入射状態について、図3を用いて説明する。また、各々の場合における人の眼の状態を図4を用いて説明する。
図3(a)に示すように、制御板10が透明状態のときには、外光L0は、制御板10でほとんど遮られることはなく、人の眼に光L1として入射する。即ち、制御板10が透明状態のときには、外光L0と入射光L1とは略等しい光量であって、制御板10を介して外光が眼に入射される(第1の状態)。
【0023】
図4(a)に示すように、人の眼に光L1が入射しているときには瞳孔が縮瞳する。これに伴い、人の毛様筋502が緊張状態となる。
次に、図3(b)に示すように、制御板駆動部40により制御板10が不透明状態とされた場合には、外光L0は制御板10で略完全に遮断されることになり、人は暗状態を認識する。このように制御板10が不透明状態となることによって、人の眼には、外光L0が入射しないことになり(脳への情報がゼロ)、瞳孔が散瞳状態となる(第2の状態)。なお、この実施の形態では、制御板10が不透明状態のとき、外光L0が略完全に遮断されることになる構成となっているが、必ずしも完全に外光L0を遮断する必要は無く、上記第1の状態に比べて入射光量を低減できれば、眼精疲労除去の効果は奏されることになる。
【0024】
図4(b)に示すように、制御板10が不透明状態で人の眼への外光L0が遮られた状態では瞳孔が散瞳状態となる。これに伴い、人の毛様筋502が緩んだ状態となる。このように外光L0が遮られた状態では瞳孔が散瞳状態となり、毛様筋502が緩んだ状態となる。
【0025】
以上のように、制御板10の透明・不透明切換え駆動を一定の周期をもって実行し、人の瞳孔が縮瞳と散瞳とを繰り返す(第1の状態と第2の状態)。このように人の瞳孔に縮瞳と散瞳とを繰り返させることで、人の眼筋(毛様筋など)の緊張を解すことができるという効果を奏する。即ち、この場合は眼の疲れを除去できる効果がある。また、暗の状態(脳に情報がゼロ)から明の状態に切り替わるとき外界の情報に対して脳の防衛本能で「見よう」という意識を喚起することが期待される。
【0026】
図5a、b、cは本体1を正面から見た図であり、図5aは制御板10が透明状態、すなわち図3aと同じ状態であり、図5bは制御板10が不透明状態で全体が不透明部9となっており、図3bと同じ状態を示している。図5cは両眼の黄斑部(眼底の網膜の中心にあり、その中心窩は視機能が最も鋭敏な部位)のそれぞれに対向する制御板10の部分のみ不透明部3、4とした状態を示している。図6に示すように、網膜5の中心の黄斑部6から見て視角約15度の制御板10に対応する部分に不透明部3を設ける。もちろん、このときの制御板10の位置は本体1を人の眼に合わせて顔に装着した状態である。不透明部3,4は黒色が好ましいが、不透明であればよい。この不透明部3,4が本発明の特徴とするところである。
【0027】
そして、網膜刺激装置本体1を人の眼に合わせて顔に装着した状態では、制御板10を通ってきた光は不透明部3,4に遮られて黄斑部6にはほとんど入らない。制御板10の不透明部3,4は少し大き目にしておく方が、黄斑部6に光が入らないので良い。この状態は、黄斑部6でものを見ていない状態、すなわち、細かいものをじっと見続けることを無くす状態であるので、黄斑部6を休める働きがある。そして、このときは、黄斑部6を使用せず、むしろ網膜5の周辺部を使用してものを見ることになり、網膜5の周辺を刺激することができる。この結果、全視野(網膜全体)を使用してものを見ることができるようになる。
なお、黄斑部6を使用して例えばパソコンで作業をしている時でも網膜の周辺にも光は当たっているが、この作業を長時間毎日行っていると、網膜の周辺には光が当たっているが、脳がこの光を認識する必要がないと判断し、周辺視野を認識できなくなると考えられる。黄斑部6を使用しない状態を設けることにより、網膜の周辺が刺激され、ここでものを見るという状態が可能になる。
黄斑部6を休め、網膜5の周辺部を刺激することにより、老人性黄斑部変性症、中心性網膜炎や周辺立体視異常などの予防につながることが期待できる。
【0028】
具体的には、第1のパターンは、図5のb状態からc状態、c状態からb状態へ戻る。これを繰り返す。b→c→bの1サイクルに要する時間は眼の対光反応時間に合わせるとよい。具体的には3秒程度であり、一分間に20回繰り返すことになる。第2のパターンは、図5のa状態、b状態、c状態の繰りしであり、a→b→c→a→b→c・・・である。1サイクルに要する時間は第1のパターンを考慮して決定すればよい。第3のパターンは、a→b→a→b・・・である。
なお、図示はしていないが、図5cとは逆のパターン即ち、図5cの3,4を透明状態とし、その他を不透明状態とする状態をつくる。使用の最初にこの状態からスタートすると、人は必ず、黄斑部で3,4の穴を通して外界を見ることになるので、図5cの時に黄斑部で外界を見ないことになる。
【0029】
次に、人が本実施の形態に係る網膜刺激装置本体1を頭部に装着し、操作スイッチ20の内の駆動開始スイッチを押した際の網膜刺激装置の駆動方法について、上記パターン1の場合を例にして、図1、2、7、8図を用いて説明する。
【0030】
図1,2に示す入力部(操作スイッチ)20から駆動開始(スタート)の信号の入力を受け付けた制御部30が、制御板駆動部40に対して制御板10の第7図に示すb状態を時間T(0.7秒)保持し、その後にc状態を時間T(0.7秒)保持する指示信号を出力する。制御板10のb状態とc状態との繰り返しサイクル数n、時間Tなどは、予めデータ格納部60にプログラムされており、制御部30がこのデータ格納部60に格納されたデータに基づいて制御板駆動部40に駆動信号を出力する。なお、例えば、制御板10のb状態とc状態との繰り返しは5分程度で網膜刺激装置本体1の動作がストップするように設定する。この時間は任意である。使用者が途中で切ってもよい。
【0031】
図8に示すように、制御部30が、人からのスタート指示を受け付けると(ステップS0)、計数部70におけるカウンタのリセットを実行する(ステップS1)。また、制御部30は、引き続いて計数部70におけるタイマーをリセットし(ステップS2)、その後にタイマーのカウントを開始させる(ステップS3)。
制御部30は制御板駆動部40に対して制御板10をb状態とする信号を出力し(ステップS4)、振動検知部80からの振動検出信号の有無の確認を実行しながら(ステップS5)、タイマーの経過時間tが時間Tとなるまで制御板10のb状態を維持する。そして、タイマーの経過時間tが時間Tに達した時点で、タイマーをリセットし(ステップS7)、その後にタイマーのカウントを再び開始させ(ステップS8)、制御板10をc状態とする指示信号を制御板駆動部40に出力する(ステップS9)。
【0032】
制御部30は、振動検知部80からの振動検出信号の有無の確認を実行しながら(ステップS10)、タイマーの経過時間tが時間Tとなるまで制御板10のc状態を維持する。そして、タイマーの経過時間tが時間Tに達した時点で、経過サイクル数mに”1”を加算し(ステップS12)、加算後の経過サイクル数が”n”に達しているか否かを判断する(ステップS13)。そして、制御部30は、経過カウント数が”m<n”の関係にあるとき(ステップS13で”N”のとき)、ステップS2に戻り装置動作を実行する。一方、ステップ13において、”m=n”の関係が成り立つとき(ステップS13で”Y”のとき)、制御部30は、制御板駆動部40に対して制御板10をc状態とする指示信号を出力し(ステップS14)、網膜刺激装置本体1の駆動を停止する(ステップS15)。
【0033】
なお、本実施例1の網膜刺激装置では、振動検知部80を設けており、この振動検知部80からの信号が制御部30に入力される構成となっている。制御部30では、振動検知部80から入力された信号を解析し(例えば、振動波形解析)、人が歩行中であるか、あるいは車の運転中であるかというように判断した場合(ステップS5、ステップS10で”Y”の場合)、直ぐに装置駆動を停止する(ステップS15)。上述のように、振動検知部80を用い人が歩行中か車運転中かという状況判断をした場合に、即座に装置の駆動を停止させるので人の誤った装置使用に対しても人の安全性を確実に確保することができる。
【0034】
なお、図3に示す通り、本実施例1では、制御板10が人の眼の直ぐ前に位置する構成としているが、眼鏡を掛けている人などを考慮するときには、人の眼との間に眼鏡を掛け得る隙間を設けて制御板10を形成しておくことも有効である。このような構成を採用することによって、より広い層を対象とすることができる。
【0035】
また、本実施例1においては、振動検知部80を備えて使用者の安全を確実に図ることとしたが、この振動検知部80については、必須の構成要件ではなく、振動検知部80を備えないような構成の網膜刺激装置についても、上記効果の内の本質的部分を得ることができる。即ち、本発明に係る網膜刺激装置が従来の装置に対して有する本質的な優位性は、制御板10を備え、この制御板10の切替え動作によって人の網膜の周辺を刺激し、黄斑部を休め、結果として、老人性黄斑部変性症、中心性網膜炎や周辺立体視異常などの予防につながることが期待できる。
【0036】
また、制御板10は液晶パネルで構成されており、図5に示すa状態、b状態c状態は画像処理技術を使用して容易に得ることができ。データ格納部60にデータとして記憶して使用すればよい。
【0037】
また、パターン2、パターン3についても同様にして動作させることができ、パターン切換えスイッチを装置本体1に設けておけばよい。パターン2については人の網膜の周辺を刺激し、黄斑部を休めるという機能と、従来の眼精疲労を除去する機能の両方を持たせることができる。パターン3は従来の眼精疲労を除去する機能のみである。
【0038】
眼の網膜の周辺刺激をより一層よくするための手段を図9を用いて説明する。
制御板10の状態を図5のb状態、c状態(図9のb状態、c状態)のほかに図9d状態とe状態を設けたものである。
すなわち、d状態は制御板10の外側から内側へ少し透明状態(透明部分)とし、残りの部分を不透明状態、すなわち不透明部7とし、e状態はd状態よりも狭い不透明部8を設けたものである。そして、状態の切換えは、b→d→e→c→b→d→e→cと行う。このようにすることにより、周辺視野をより良好に刺激することができる。このパターンのほかに図5のa状態を上記のパターンの間に挿入してもよい。
【0039】
図9に示す制御板10の状態も、液晶状態の変化をもって透明・不透明状態を制御する液晶パネルを用いることにより、画像処理技術を用いて実施することができる。制御も図7,8と同様の手法により実施することができる。
また、図5cに示す不透明部3、4を図10に示すように横長の楕円形状の不透明部3a、4aにすると、瞳孔間距離が異なる人にもそのまま使用することができる。
また、図示はしていないが、制御板10の左半分を透明状態、右半分を不透明状態とするパターン、これと逆即ち、制御板10の左半分を不透明状態、右半分を透明状態とするパターンを作り、これらのパターンを他のパターンに適宜織り交ぜて切換えて使用するようにしてもよい。
【0040】
不透明部3、4は黄斑部6にきっちりと対応していなくてもよく、黄斑部6をカバーするように少し大きくてもよく、少し小さくてもよい。したがって、黄斑部6に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部6には当たらないように遮断する不透明部3、4が形成されればよい。略黄斑部6とした意味は、前方からくる光が黄斑部6を含め黄斑部6周囲外側にも当たらない場合と、黄斑部6の周囲内側には少し当たるという場合を含んでいる。
また、図5bの不透明部9も完全に全体が不透明であるに越したことはないが、周辺に透明部分があってもよいので、この意味を含め人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とするという表現をとっている。
【実施例2】
【0041】
図11に示す実施例2は、眼鏡型の外観形状を有する眼鏡部110と、駆動回路などが収納された駆動装置部120と、眼鏡部110と駆動装置部120とを電気的に接続する接続コード130とから構成されている。このように、本実施の形態では、眼鏡型の外観形状を有する眼鏡部110を有する点で、図1に示すゴーグル型の外観形状を有するものと異なる。また、図1に示すものでは制御部30を始めとする駆動回路部分がゴーグル型をした装置本体1に一体に収納されていたが、本実施の形態では、人の頭部に装着される装置本体1たる眼鏡部110の軽量化を図るために駆動装置部120が別に設けられている。
【0042】
眼鏡部110は、リム部111、テンプル部112、モダン部113、ブリッジ部114および制御板115とから構成されており、この内制御板115は、液晶パネルによって構成されている。
一方、駆動装置部120には、操作スイッチ121がその外面に設けられており、内部に制御部をはじめとする駆動回路部分が形成された電子回路が内蔵されている。また、駆動装置部120内には、電力供給源としての二次電池が内蔵されており、図示していないが、駆動装置部120の外底面に二次電池充電用の外部接続端子が設けられている。
【0043】
人は、本実施例2に係る網膜刺激装置を使用する際には、眼鏡部110のテンプル部112およびモダン部113を用いて頭部に装着し、駆動装置部120を胸ポケットに挿入したり、あるいはウェストベルトなどに装着する。接続コード130は、一端が眼鏡部110におけるモダン部113の端部に接続されており、他端が駆動装置部120に接続されている。そして、モダン部113の一端に接続された接続コードは、テンプル部112の内部に形成されたリードにより制御板115に電気的に接続されている。
【0044】
本実施の形態に係る網膜刺激装置は、上記実施例1と基本的に同様のシーケンスをもって駆動し、制御板115の開閉動作によって人の網膜の周辺を刺激することができる。
【0045】
なお、本実施例2では、図1に示すようなゴーグル型ではなく眼鏡型を採用しているため、制御板115以外の周りの部分からも人の眼には光が入射してくるが、眼の前の制御板115を介した経路が外光の主たる入射経路となる。このため、本実施例2においても、制御板115の切換え動作、連続動作によって眼の網膜の周辺を刺激することができる。
【0046】
また、本実施例2においても、眼鏡部110あるいは駆動装置部120に振動検知部を設けてある。
さらに、本実施例2は、眼鏡型の外観形状を有するものであるが、例えば、普段から眼鏡を使用している人などを対象とする場合には、所謂クリップオン型を採用することができる。即ち、眼鏡を使用している人がサングラスを用いる場合に、クリップオン型のサングラスを用いることがあるが、同様にクリップオン型の装置とすることも可能である。具体的には、例えば、人が掛けている眼鏡のリム部あるいはワタリ部あるいはブリッジ部に装着可能なクリップ部を備えたものなどを適用することができる。
【0047】
図12,13はそれぞれ他の実施例を示すものであり、据置型の装置に適応したものである。
図12はパーソナルコンピュータの例であり、パーソナルコンピュータ200の画面201(図5の制御板10に相当)を、図12bに示すように画面201略全体を暗部202とする第1の状態と、図12aに示すように画面201を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部203とそれ以外を明部204とする第2の状態とに切換制御するようにしたものである。切換は一分間に20回繰り返す程度である。
もちろん、見る人は図12aの暗部203を見つめるようにする。このようにすることにより、眼の黄斑部を休めることができる。
【0048】
図13に示すものは、覗くタイプの据置型の装置に適応した例である。装置本体300に左右の眼に対応して覗き窓301、302が設けられている。装置本体300の内部は暗室になっており、内部に図13bに示すカード304が挿入されている。このカード304には一対のフィルム部305が複数設けられており裏面より光を当てることにより覗き窓からフィルム部305の内容を見ることができる。フィルム部305に、見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部306とそれ以外を明部307とが設けられている。
【0049】
装置本体300のつまみ308を回すことによりカード304を上下動させることができ、覗き窓301,302から見る内容を切り替えることができる。装置本体300の内部には光源が設けられている。光源を点灯状態にして、覗き窓301,302から内部を見る。カード304を暗部306が見えるようにつまみ308で設定しておく。光源を自動制御して一分間に20回程度点滅させると、暗部306が見えたり、全面が真っ暗な状態になったりする。これによって、眼の黄斑部を休めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、網膜の周辺を刺激することによって全視野を活用することを可能にする網膜刺激装置に用いて有用である。
【符号の説明】
【0051】
1:網膜刺激装置本体
3、4、3a、4a、7、8、9:不透明部
5:網膜
6:黄斑部
10、115:制御板
20、121:操作スイッチ(入力部)
30:制御部
40:制御板駆動部
50:電力供給部
60:制御板駆動タイミングデータ格納部
70:計数部
80:振動検知部
90:フレーム部
100:装着ベルト部
110:眼鏡部
111:リム部
112:テンプル部
113:モダン部
120:駆動装置部
130:接続コード
200:パーソナルコンピュータ
201:画面
202:暗部
203:暗部
204:明部
300:装置本体
301,302:覗き窓
304:カード
305:フィルム部
306:暗部
307:明部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態を構成する不透明部と、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態を構成する不透明部とに、繰返し切換え可能としたことを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項2】
前記制御板は、液晶状態の変化をもって透明・不透明状態を制御する液晶パネルであることを特徴とする請求項1に記載の網膜刺激装置。
【請求項3】
前記網膜刺激装置本体を人の頭部に装着可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の網膜刺激装置。
【請求項4】
前記網膜刺激装置本体は、前記装着状態において、前記制御板を介した外光の入射経路を除き、外光の入射が遮断された状態になっていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の網膜刺激装置。
【請求項5】
前記網膜刺激装置本体は、ゴーグル型の外観形状を有していることを特徴とする請求項4に記載の網膜刺激装置。
【請求項6】
前記第1の不透明状態と第2の不透明状態の間に、第2の状態の不透明状態よりも大きな不透明部を有する1ないし複数の第3の不透明状態が存在し、第3の不透明状態を構成する不透明部が複数の場合、当該不透明部の大きさが異なるよう構成され、第1の不透明状態、第3の不透明状態、第2の不透明状態が繰返し切換え可能であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の網膜刺激装置。
【請求項7】
前記第1の不透明状態と第2の不透明状態のほかに全体が透明である透明状態を備え、これら3状態を繰返し切換え可能としたことを特徴とする請求項1に記載の網膜刺激装置。
【請求項8】
前記第1の不透明状態と第2の不透明状態と第3の不透明状態のほかに全体が透明である透明状態を備え、これら4状態を繰返し切換え可能としたことを特徴とする請求項6に記載の網膜刺激装置。
【請求項9】
前記第2の不透明状態を構成する不透明部を人の二つの眼に対向して2つ設け、これら不透明部の形状をそれぞれ横長の楕円形状としたことを特徴とする請求項1に記載の網膜刺激装置。
【請求項10】
網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態から、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態まで、不透明状態における不透明部分の大きさが連続して変化するよう繰返し制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項11】
網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、前記制御板の略全体を暗部とする第1の状態と、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とする第2の状態とに切換制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項12】
前記第1の状態と前記第2の状態の間に、第2の状態の暗部よりも大きな暗部を有する1ないし複数の第3の状態が存在し、第3の状態を構成する暗部が複数の場合、当該暗部の大きさが異なるよう構成され、第1の状態、第3の状態、第2の状態に繰返し切換制御することを特徴とする請求項11項記載の網膜刺激装置。
【請求項13】
網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、前記制御板の略全体を暗部とする第1の状態と、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とする第2の状態とを備え、前記第1の状態から前記第2の状態まで、暗部の大きさが連続して変化するよう繰返し制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項14】
前記網膜刺激装置は、据置き型の装置であることを特徴とする請求項11から13の何れかに記載の網膜刺激装置。
【請求項15】
網膜刺激装置本体を据置き型の装置とし、内部を暗室とし、ここに制御板と光源を設け、前記本体に設けた覗き窓より前記制御板を見ることができるよう構成し、前記制御板を、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とするよう構成し、前記光源の点灯時に前記暗部を見ることができる第1の状態と、前記光源を消灯した場合に前記制御板全体が暗部となる第2の状態とを切換え制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項1】
網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態を構成する不透明部と、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態を構成する不透明部とに、繰返し切換え可能としたことを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項2】
前記制御板は、液晶状態の変化をもって透明・不透明状態を制御する液晶パネルであることを特徴とする請求項1に記載の網膜刺激装置。
【請求項3】
前記網膜刺激装置本体を人の頭部に装着可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の網膜刺激装置。
【請求項4】
前記網膜刺激装置本体は、前記装着状態において、前記制御板を介した外光の入射経路を除き、外光の入射が遮断された状態になっていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の網膜刺激装置。
【請求項5】
前記網膜刺激装置本体は、ゴーグル型の外観形状を有していることを特徴とする請求項4に記載の網膜刺激装置。
【請求項6】
前記第1の不透明状態と第2の不透明状態の間に、第2の状態の不透明状態よりも大きな不透明部を有する1ないし複数の第3の不透明状態が存在し、第3の不透明状態を構成する不透明部が複数の場合、当該不透明部の大きさが異なるよう構成され、第1の不透明状態、第3の不透明状態、第2の不透明状態が繰返し切換え可能であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の網膜刺激装置。
【請求項7】
前記第1の不透明状態と第2の不透明状態のほかに全体が透明である透明状態を備え、これら3状態を繰返し切換え可能としたことを特徴とする請求項1に記載の網膜刺激装置。
【請求項8】
前記第1の不透明状態と第2の不透明状態と第3の不透明状態のほかに全体が透明である透明状態を備え、これら4状態を繰返し切換え可能としたことを特徴とする請求項6に記載の網膜刺激装置。
【請求項9】
前記第2の不透明状態を構成する不透明部を人の二つの眼に対向して2つ設け、これら不透明部の形状をそれぞれ横長の楕円形状としたことを特徴とする請求項1に記載の網膜刺激装置。
【請求項10】
網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、人の眼の網膜に対し前方から来る外光を略全体にわたって遮断状態とする第1の不透明状態から、人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられ、前方から来る外光が略黄斑部には当たらないように遮断する第2の不透明状態まで、不透明状態における不透明部分の大きさが連続して変化するよう繰返し制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項11】
網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、前記制御板の略全体を暗部とする第1の状態と、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とする第2の状態とに切換制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項12】
前記第1の状態と前記第2の状態の間に、第2の状態の暗部よりも大きな暗部を有する1ないし複数の第3の状態が存在し、第3の状態を構成する暗部が複数の場合、当該暗部の大きさが異なるよう構成され、第1の状態、第3の状態、第2の状態に繰返し切換制御することを特徴とする請求項11項記載の網膜刺激装置。
【請求項13】
網膜刺激装置本体に制御板を設け、この制御板を、前記制御板の略全体を暗部とする第1の状態と、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とする第2の状態とを備え、前記第1の状態から前記第2の状態まで、暗部の大きさが連続して変化するよう繰返し制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【請求項14】
前記網膜刺激装置は、据置き型の装置であることを特徴とする請求項11から13の何れかに記載の網膜刺激装置。
【請求項15】
網膜刺激装置本体を据置き型の装置とし、内部を暗室とし、ここに制御板と光源を設け、前記本体に設けた覗き窓より前記制御板を見ることができるよう構成し、前記制御板を、前記制御板を見る人の眼の網膜に存在する黄斑部に対向して設けられた暗部とそれ以外を明部とするよう構成し、前記光源の点灯時に前記暗部を見ることができる第1の状態と、前記光源を消灯した場合に前記制御板全体が暗部となる第2の状態とを切換え制御することを特徴とする網膜刺激装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−403(P2012−403A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150196(P2010−150196)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(504123937)株式会社 ワック (8)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(504123937)株式会社 ワック (8)
[ Back to top ]