綴じ機
【課題】切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供する。
【解決手段】切起片P5を切込刃52の窓523に挿入するための挿入部材と、この挿入部材を抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で、切起片P5が窓523に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に、当該挿入部材を切起片P5が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構7とを具備してなる。
【解決手段】切起片P5を切込刃52の窓523に挿入するための挿入部材と、この挿入部材を抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で、切起片P5が窓523に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に、当該挿入部材を切起片P5が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構7とを具備してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた複数枚の用紙の端部を一体的に綴じ合わせる綴じ機のうち、特に金属製の針を使用しない方式の、いわゆる針なしステープラと称される綴じ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の綴じ機として、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この綴じ機は、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させて、パンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を、前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものである。
【0003】
このような綴じ機には、抜き刃と切込刃とが用紙に貫入した段階で切起片を切込刃の窓に挿入するために、抜き刃やインナーカム等の挿入部材が不可欠である。従来の綴じ機は、抜き刃と切込刃が一体化した状態で連動するようになっており、前記挿入部材は、切込刃の進退方向の動きに連動して正逆方向に作動するようになっている。すなわち、前記挿入部材は、切込刃の進入動作に伴って正方向に作動し、切込刃がこの進入動作と対称的な動作である抜き取り動作に伴って逆方向に作動する。換言すれば、挿入部材は、切込刃が最も深く貫入する最貫入位置を中心に対称的な動きをする。
【0004】
そのため、切起片の先端部分を切込刃の窓の縁に押し当て、切起片の先端側を無理に反らせながら窓内に挿入するようにせざるを得ないという事情があり、そのために切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みて、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る綴じ機は、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものであって、前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通した段階で前記切起片が窓に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該挿入部材を切起片が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
ここで「用紙」とは、穿孔対象物であれば、どのようなものであってもよく、紙製のものの他、プラスチック製、金属製、または木製のものも含まれる。また、薄いシート状のものに限られない。
【0009】
このようなものであれば、挿入部材作動機構の働きにより、挿入部材は、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動するまでは、切起片が解放される逆方向に作動されない。そのため、この一定距離を種々設定することにより、挿入部材を逆方向に作動させるタイミングの自由度を高めることができる。したがって、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することができる。
【0010】
前記挿入部材の好適な一態様としては、前記抜き刃に保持されたインナーカムが挙げられる。挿入部材としては、抜き刃以外の部分に保持され抜き刃と連動することなく作動するインナーカムや、抜き刃自体が挿入部材としての役割を果たすものであってもよい。また、挿入部材は、回転動作により用紙を挿入する以外のものであってもよい。
【0011】
前記挿入部材作動機構としては、切込刃と連動する抜き刃の貫入方向への動きを利用して前記挿入部材を正方向に作動させるとともに、抜き刃の抜き取り方向への動きを利用して前記挿入部材を逆方向に作動させる連動機構部と、切込刃と抜き刃との連動を一時的に解除して、切込刃が用紙に最も深く貫入した最貫入位置から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、抜き刃を最貫入位置に保持させておくための遅延生成部とを備えたものが好ましい。
【0012】
前記連動機構部の好適な一態様としては、インナーカムの基端部から延出させたアームと、前記本体に設けられ抜き刃が貫入方向に作動した際に前記アームに当接してインナーカムの先端部を正方向に作動させる係止部材と、インナーカムの先端部を逆方向に作動させるための復帰用弾性部材とを備えているものが挙げられる。
【0013】
前記遅延生成部の好適な一態様としては、抜き刃を切込刃に連動させて前記最貫入位置まで作動させるとともに、切込刃が最貫入位置から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、抜き刃の切込刃に対する連動を解除する遊動結合要素と、前記切込刃が最貫入位置から一定距離抜き取り方向に移動する間、抜き刃を最貫入位置に保持する保持要素とを備えたものが挙げられる。
【0014】
前記切起片が、基端領域と、この基端領域よりも幅の広い先端領域とを備えたものである場合の好適な抜き刃としては、前記基端領域を形成するための基端領域形成部と、前記先端領域を形成するための先端領域形成部とを備えたものが挙げられる。
【0015】
また、本発明の綴じ機は、前記挿入部材の他に切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束部材を有したものであってもよい。すなわち、本発明の他の綴じ機は、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものであって、前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束部材と、この拘束部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で前記切起片が拘束される方向に作動させるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該拘束部材を切起片が解放される方向に作動させる拘束部材作動機構とを具備してなるものであってもよい。
【0016】
ここで「拘束部材」とは、切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つために挿入部材とは別に設けられたものであればどのようなものであってもよく、この拘束部材が設けられる場所も、切込刃側、抜き刃側または本体側等どのような場所であってもよい。
【0017】
このようなものであれば、拘束部材作動機構の働きにより、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動するまでは、拘束部材は切起片が解放される方向に作動されない。そのため、この一定距離を種々設定することにより、拘束部材を切起片が解放される方向に作動させるタイミングの自由度を高めることができる。したがって、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することができる。
【0018】
また、以上のような課題を簡単に解決する綴じ機の一態様としては、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものであって、前記抜き刃と前記切込刃とを異なったタイミングで移動させることができるように構成したものが考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のような構成であるから、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の綴じ機を示す全体斜視図。
【図2】同実施形態の綴じ機を示す平面図。
【図3】図2におけるA−A線断面図。
【図4】同実施形態の要部を示す分解斜視図。
【図5】同実施形態の要部を示す分解斜視図。
【図6】図2におけるB−B線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図7】図2におけるB−B線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図8】図2におけるC−C線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図9】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図10】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図11】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図12】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図13】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図14】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図15】本発明の第2実施形態の綴じ機を示す平面図(図2に対応)。
【図16】同実施形態の要部を示す分解斜視図(図5の一部に対応)。
【図17】図15におけるE−E線断面で示す作用説明図。
【図18】図15におけるE−E線断面で示す作用説明図。
【図19】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図9に対応)。
【図20】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図10に対応)。
【図21】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図11に対応)。
【図22】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図12に対応)。
【図23】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図13に対応)。
【図24】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図14に対応)。
【図25】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【図26】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【図27】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【図28】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【図29】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態(図1〜図14)>
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図14を参照しながら説明する。
【0022】
この綴じ機1は、図1〜図3に示すように、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子Bを作ることができるようにしたものである。
【0023】
この冊子Bは、図1〜図3に示すように、複数枚の用紙Pを束ねてなるもので、それらの用紙Pは綴じ元側に設定した一ヵ所の接合部分P3において相互に接合されている。この接合部分P3は、用紙Pの一面Pa側から貫入させた抜き刃により各用紙Pに形成された打ち抜き孔P1と、この打ち抜き孔P1に隣接させて前記各用紙Pに形成された引き上げ用カット孔P2と、前記打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5とから構成されている。そして、前記切起片P5の先端P51側を、前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pの一面Pa側に導出させることによって、前記複数枚の用紙Pの綴じ元側が相互に接合されている。
【0024】
前記切起片P5は、図1〜図3に示すように、先端側が膨らんだ形状、具体的には全体として矢印形状をなすもので、境界部P53を挟んで基端P52側に基端領域P54を備えるとともに、先端P51側に前記基端領域P54よりも幅の広い先端領域P55を備えている。なお、切起片P5は一端が半円弧状をなす舌片状のものにする等種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0025】
前記打ち抜き孔P1は、図1〜図3に示すように、前記切起片P5に対応する大きさ及び形状をなしており、抜き刃42による穿孔直後は、抜き刃42の形状に対応したスリット状のものであり、切起片P5を切り起こした後は、切起片P5の形状に対応した矢印形状をなす長孔状の空間である。また、この打ち抜き孔P1の基端側、すなわち切起片P5の基端P52近傍には、切起片P5の基端の両側から延びる破れ抑制用のスリット状の逃げ部P6を備えている。なお、打ち抜き孔P1は種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0026】
一方、前記カット孔P2は、図1〜図3に示すように、切起片P5を主として係わり合わせるための第1のスリットP21と、この第1のスリットP21の途中から打ち抜き孔P1方向に伸びる左右方向に対をなす第2のスリットP22とを備えている。なお、カット孔P2は種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0027】
このように用紙Pを綴じる際に使用される綴じ機1について、図1、図2及び図4〜図14を参照して説明する。
【0028】
この綴じ機1は、図1、図2及び図6〜図14に示すように、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔P1を穿設する抜き刃42と、この抜き刃42に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃52と、これら抜き刃42及び切込刃52を保持する本体3と、この本体3に用紙挿入用隙間10を介して配設されたパンチ台2と、前記切起片P5を切込刃52の窓523に挿入するための挿入部材であるインナーカム43と、このインナーカム43を抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で、前記切起片P5が窓523に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に、当該インナーカム43を切起片P5が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構7とを具備してなる。換言すれば、この綴じ機1は、上向き面に用紙Pが載置されるパンチ台2と、このパンチ台2の上向き面との間に用紙挿入用隙間10を形成する下向き面を備えた本体3と、この本体3内に保持される第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5と、抜き刃42を備えた第1の刃ユニット4及び切込刃52を備えた第2の刃ユニット5を穿孔操作前の位置である退避位置(s)に復帰させるための刃復帰用弾性体たる刃復帰用コイルスプリング11と、前記本体3に装着され前記第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5を作動させるための操作レバー6と、前記パンチ台2の側面に対して回転可能に設けられるサイドゲージ8とを備えている。なお、サイドゲージ8は、用紙Pの適切な場所に接合部分P3を形成するために用紙Pの縁部を合わせるものであり、図1、図2に示すとともに、他の図面では省略している。
【0029】
パンチ台2は、図1、図2、図4及び図6〜図14に示すように、ベースフレーム21と、このベースフレーム21に設けられ用紙挿入用隙間10に臨むパンチプレート22と、このパンチプレート22に密着している綴じ作業後の用紙Pをパンチプレート22から離れる方向に逃がすための紙逃がし23と、この紙逃がし23を含め前記ベースフレーム21の下面側を隠蔽する底面カバー24とを具備してなる。
【0030】
ベースフレーム21は、図1、図2、図4及び図6〜図14に示すように、後部分に本体3を取り付けるための本体取付部211を有するとともに、前部分にパンチプレート22を用紙挿入用隙間10側に表出させるためのプレート表出窓212を備えており、後部分と前部分との境界に用紙挿入用隙間10に挿入される用紙Pの端部を係止するための係止壁213を有している。ベースフレーム21は合成樹脂により一体に成形されたものである。本体取付部211は、本体3の下端を取り付けるための平坦部分214を有しており、この平坦部分214に複数のボルト挿通孔215が貫設されたものである。
【0031】
パンチプレート22は、図1、図2、図4及び図6〜図14に示すように、抜き刃42と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1及び逃げ部P6を穿孔するための穿孔部221と、切込刃52と協働して用紙Pにカット孔P2を穿設するための通過孔222と、後述する紙逃がし23の突起231が通過するための押圧子通過孔223とを備えた金属製のものである。パンチプレート22は、ベースフレーム21に取り付けられている。詳述すれば、パンチプレート22はアンビルとしての機能を備えたもので、貫通孔である穿孔部221、通過孔222、及び押圧子通過孔223を有し、プレート表出窓212を介して用紙挿入用隙間10に臨むもので、その周縁部にベースフレーム21の下面側に取り付けられる取付鍔224を備えている。具体的には、取付鍔224の前端部分をベースフレーム21の図示しない係合部に係わり合わせることにより、パンチプレート22の前端部分が前記ベースフレーム21に取り付けられている。一方で、取付鍔224の後端部分には複数のボルト挿通孔225が形成されており、それらボルト挿通孔225を本体3の図示しないボルト挿通孔と合致させた状態で、その後端部分をベースフレーム21の下面に添接させている。そして、これらボルト挿通孔215、225に下側から挿通させたボルト20aを本体3側に設けた図示しないナットに螺合させて緊締することにより、パンチプレート22と本体3とをベースフレーム21に固定することができるようにしてある。
【0032】
紙逃がし23は、図4及び図6〜図14に示すように、綴じ作業後にパンチプレート22に密着している用紙Pをパンチプレート22から離れる方向に逃がすためのものである。この紙逃がし23は、パンチプレート22を貫通して用紙挿入用隙間10に突出する方向に弾性付勢する解放用押圧子である複数の突起231と、これら複数の突起231を用紙挿入用隙間10に突出する方向に弾性付勢する解放用弾性体である板バネ232とを具備してなる。これらの突起231と板バネ232とは合成樹脂により一体に形成されている。
【0033】
本体3は、図1、図4及び図6〜図14に示すように、第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5を昇降可能に保持するハウジング31と、このハウジング31の前面、底面及び両側面を覆うメタルフレーム32と、このメタルフレーム32の後側に装着されるリアカバー33とを備えてなる。
【0034】
ハウジング31は、図4及び図6〜図14に示すように、底壁35と、前壁36と、後壁37と、左右の側壁38とを備えたものである。底壁35は、後壁37よりも後方に延出させてある。これら底壁35、前壁36、後壁37及び左右の側壁38によって囲まれた空間39に、前記第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5が収容されるようになっている。ハウジング31は、合成樹脂により一体に形成されている。底壁35は、抜き刃42及び切込刃52が通過するための開口351を有している。この底壁35の上面側には後述するインナーカム43のアーム433を係止するための係止部材352を設けている。また、この底壁35の上面には、中心に貫通孔354を有する筒状をなすボス353が設けられている。前壁36と後壁37の内面には、第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5を昇降可能に案内するための案内部371(前壁36の案内部は図示せず)がそれぞれ設けられている。また、この前壁36と後壁37の内面には、後述するラッチ部材34を取り付けるためのラッチ部材取付部372(前壁36のラッチ部材取付部は図示せず)がそれぞれ設けられている。左右の側壁38には、後述するドライブシャフト12を挿通させるための長孔382がそれぞれ形成されている。
【0035】
対をなすラッチ部材34は、図4、図5及び図8〜図14に示すように、前後のラッチ部材取付部372にそれぞれ止着具30aを介して取り付けられる基端部341と、この基端部341から上下方向に延出する弾性変形可能な板状の弾性変形部342、343と、これら弾性変形部342、343の先端側にそれぞれ設けられる上下の爪部344、345とを備えたもので、これら基端部341、上下の弾性変形部342、343、上下の爪部344、345とは、合成樹脂により一体に成形されたものである。
【0036】
メタルフレーム32は、図6〜図14に示すように、ハウジング31の底壁35の下面に添設する底板321と、ハウジング31の前壁36の外面に添設する前板322と、ハウジング31の左右側壁38の外面に添設する左右の側板323とを具備してなる板金製のものである。底板321は、ハウジング31の底壁35の略全域に対応するもので、開口351とボス353の貫通孔354を用紙挿入用隙間10に表出させるための窓324と、ハウジング31とパンチプレート22とを位置決めするための位置決めピンを挿通させるための図示しないピン挿通孔と、パンチプレート22とベースフレーム21とハウジング31の底壁35とを共締めするボルト20aを挿通させるための図示しないボルト挿通孔が設けられている。すなわち、パンチプレート22のボルト挿通孔225と、ベースフレーム21のボルト挿通孔215と、メタルフレーム32のボルト挿通孔と、ハウジング31の底壁35に設けられたボルト挿通孔とに挿通させたボルト20aにより、本体3をパンチ台2に取り付けている。メタルフレーム32の側板323には、第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5を駆動するドライブシャフト12を昇降可能に案内するための上下案内部325と、後述する操作レバー6の支軸65を、回転かつスライド可能に支持するための前後案内部326とが設けられている。
【0037】
第1の刃ユニット4は、図4、図5及び図8〜図14に示すように、ハウジング31の案内部371、381に案内されて一定の姿勢を維持しつつ昇降可能な第1のスライド部材41と、この第1のスライド部材41に取り付けられた抜き刃42と、この抜き刃42の内側に配され抜き刃42内に収まる初期姿勢(s)から、一部が抜き刃42外に突出する回動姿勢(r)との間で第1のスライド部材41に軸434を介して回動可能に枢支されたインナーカム43と、このインナーカム43を初期姿勢(s)に自己復帰する方向に回動付勢するコイルスプリング44とを具備してなる。
【0038】
第1のスライド部材41は、図4、図5及び図8〜図14に示すように、下方に向けて開口する中空ブロック状のもので、合成樹脂により作られている。第1のスライド部材41の上面には、ドライブシャフト12を回動可能に保持するシャフト保持部411を備えており、操作レバー6に加えられる操作力がドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝達されるようになっている。この第1のスライド部材41の前面及び後面には、それぞれ、ラッチ部材34の上の爪部344が係合し得る上の係合凹部413と、ラッチ部材34の下の爪部345が係合し得る下の係合凹部414が設けられている。
【0039】
抜き刃42は、図2、図4、図5及び図8〜図14に示すように、用紙Pに矢尻状の切起片P5を形成するものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られている。この抜き刃42は、打ち抜き孔P1の基端領域P54を形成するための基端領域形成部421と、打ち抜き孔P1の先端領域P55を形成するための基端領域形成部422とを備えたものであり、本実施形態の抜き刃42は、用紙Pにスリット状の逃げ部P6を形成するための逃げ部形成部423をさらに備えている。
【0040】
インナーカム43は、図4及び図9〜図14に示すように、基端部431に軸434を有するとともに先端部432に切起片P5を切込刃52に設けられた窓523に挿入させるための押し出し部435を備えたもので、その軸434が抜き刃42及び第1のスライド部材41に支持されている。すなわち、このインナーカム43は、前記切起片P5を切込刃52の窓523に挿入するためのものであり、抜き刃42に保持されてなる。インナーカム43の基端部431には、該インナーカム43を回動させるためのアーム433が突出させてある。
【0041】
第2の刃ユニット5は、図4〜図14に示すように、ハウジング31の案内部371、381に案内されて一定の姿勢を維持しつつ昇降可能な第2のスライド部材51と、この第2のスライド部材51に取り付けられた切込刃52と、この切込刃52に隣接して設けられ用紙Pをパンチ台2方向に押さえるための一対の紙押さえ53とを具備してなる。
【0042】
第2のスライド部材51は、図4〜図14に示すように、下方に向けて開口する中空ブロック状のもので、合成樹脂により作られている。第2のスライド部材51の上面には、ドライブシャフト12を回動可能に保持するシャフト保持部511を備えており、操作レバー6に加えられる操作力がドライブシャフト12を介して第2のスライド部材51に伝達されるようになっている。
【0043】
切込刃52は、ゲタ状をなすスリットからなるカット孔P2を形成するものであって、図2及び図5〜図14に示すように、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られており、第1のスリットP21を形成するための第1のブレード521と、この第1のブレード521の途中から打ち抜き孔P1の方向に延びる第2のスリットP22を形成するための第2のブレード522とを備えている。第1のブレード521は、用紙Pから打ち抜かれた切起片P5を通過させ切起片P5を係わり合わせるための窓523を備えている。
【0044】
紙押さえ53は、図4〜図14に示すように、用紙Pの刃貫通位置付近を押圧してパンチ台2側に押しつけるための固定用押圧子531と、この固定用押圧子531を用紙P方向に弾性付勢する押圧用弾性体である押圧用コイルスプリング532とを備えている。固定用押圧子531は、合成樹脂により一体成形されたものである。固定用押圧子531の最大径は、ハウジング31に設けたボス353の貫通孔354にスライド可能に貫入し得る値に設定されており、前記押圧用コイルスプリング532の最大径と略一致させてある。
【0045】
対をなす刃復帰用コイルスプリング11は、図2及び図4〜図14に示すように、それぞれ一端側を第2のスライド部材51に保持させるとともに、他端側をハウジング31の底壁35に当接させている。
【0046】
操作レバー6は、図1、図2及び図6〜図14に示すように、基端部61に支軸65を有するとともに、先端側に操作部62を備え、支軸65を有する基端部61と操作部62との間にドライブシャフト12を装着したものである。そして、支軸65を本体3のメタルフレーム32における前後案内部326に、回動可能かつ前後移動可能に支持させるとともに、ドライブシャフト12を本体3のメタルフレーム32における上下案内部325に上下移動可能に支持させている。この操作レバー6は、金属製のレバーフレーム63と、このレバーフレーム63の外側に装着されるレバーカバー64とを備えている。レバーフレーム63は、板金素材を折り曲げ加工したもので、天壁66と、この天壁66の両側縁から垂下する側壁67とを備えており、それら両側壁67間に前記支軸65及びドライブシャフト12が取り付けられている。
【0047】
以上説明した綴じ機1は、インナーカム43を抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で、前記切起片P5が窓523に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に、当該インナーカム43を切起片P5が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構7を備えている。
【0048】
挿入部材作動機構7は、図4〜図14に示すように、切込刃52と連動する抜き刃42の貫入方向への動きを利用して前記インナーカム43を正方向に作動させるとともに、抜き刃42の抜き取り方向への動きを利用して前記挿入部材を逆方向に作動させる連動機構部71と、切込刃52と抜き刃42との連動を一時的に解除して、切込刃52が用紙Pに最も深く貫入した最貫入位置(c)から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、抜き刃42を最貫入位置(c)に保持させておくための遅延生成部72とを備えたものである。
【0049】
連動機構部71は、図6及び図9〜図14に示すように、インナーカム43の基端部431から延出させたアーム433と、前記本体3に設けられ抜き刃42が貫入方向に作動した際に前記アーム433に当接してインナーカム43の先端部432を正方向に作動させる係止部材352と、インナーカム43の先端部432を逆方向に作動させるための復帰用弾性部材たるコイルスプリング44とを備えている。換言すれば、この連動機構部71は、インナーカム43のアーム433と、このアーム433に当接して前記インナーカム43を初期姿勢(s)から回動姿勢(r)まで正方向に回動させる前記ハウジング31の底壁35に設けられた係止部材352と、前記アーム433を押圧して前記インナーカム43を回動姿勢(r)から初期姿勢(s)まで逆方向に回動させるインナーカム復帰用のコイルスプリング44とを主体に構成されたものである。
【0050】
遅延生成部72は、図4及び図6〜図14に示すように、抜き刃42を切込刃52に連動させて前記最貫入位置(c)まで作動させるとともに、切込刃52が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、抜き刃42の切込刃52に対する連動を解除する遊動結合要素73と、前記切込刃52が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間、抜き刃42を最貫入位置(c)に保持する保持要素74とを備えたものである。換言すれば、遊動結合要素73は、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた長孔状の貫通孔412と、第2のスライド部材51のシャフト保持部511に設けられた円形状の貫通孔512と、これら貫通孔412、512を貫通するドライブシャフト12とを主体に構成されたものである。保持要素74は、第1のスライド部材41の前面及び後面に設けられた下の係合凹部414と、この係合凹部414に係り合う下の爪部345とを主体に構成されたものである。
【0051】
次いで、この綴じ機1の作動について、図8〜図14を参照して説明する。
【0052】
操作レバー6を操作しない状態では、図8及び図9に示すように、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51がそれぞれ上限位置に位置し、抜き刃42及び切込刃52が元の位置である退避位置(s)にそれぞれ保持されている。インナーカム43は、前記退避位置(s)に保持された抜き刃42内に収容された初期姿勢(s)を保っている。
【0053】
この状態で、重ね合わせた複数枚の用紙Pをパンチ台2の前部分における上向き面と、本体3の前部分における下向き面との間に形成されている用紙挿入用隙間10の奥まで挿入する。
【0054】
そして、操作レバー6を下方に操作すると、この操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12に伝達され、本体3と第2のスライド部材51との間に配された刃復帰用コイルスプリング11の付勢力に抗して第2のスライド部材51が下方に移動させられる。それに伴って、第2のスライド部材51に保持された切込刃52及び紙押さえ53が下方に移動する。
【0055】
なお、ドライブシャフト12が一定距離移動する間(図9から図10に至るまでの間)、前記ラッチ部材34の上の爪部344が第1のスライド部材41の上の係合凹部413に係合した係合状態が保たれるため、第1のスライド部材41は動かない。すなわち、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた貫通孔412が、ドライブシャフト12を上下方向に案内可能なものであり、貫通孔412の一端412aから他端412bまでの寸法がドライブシャフト12の直径よりも大きいので、ドライブシャフト12はこの貫通孔412内で遊動する。したがって、ドライブシャフト12が一端412a側から他端412b側まで一定距離移動するまでの間、操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝わらないことによるものである。
【0056】
前記一定距離を越えて操作レバー6を下方に操作すると、この操作レバー6に加えられた力がドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝達され、本体3と第1のスライド部材41との間に配された弾性部材であるラッチ部材34の付勢力に抗して、上の弾性変形部342が弾性変形し、上の爪部344と第1のスライド部材41の上の係合凹部413との係合状態が解除される。
【0057】
このようにして、ドライブシャフト12が一定距離移動した後は、操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12に伝達され、図10に示すように、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51が下方に移動する。それに伴って、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42が下方に移動するとともに、第2のスライド部材51に保持された切込刃52及び紙押さえ53が下方に移動する。
【0058】
そして、紙押さえ53の固定用押圧子531の先端が用紙Pに接し、この固定用押圧子531が用紙Pを押圧支持し、抜き刃42及び切込刃52を貫通しやすくするべく用紙Pの張りを保持させた後に、抜き刃42及び切込刃52の先端が用紙Pに接する。すなわち、紙押さえ53は、用紙Pのずれや撓みを抑え、用紙Pを張る作用を営む。
【0059】
さらに、第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5が下方に移動すると、図11に示すように、抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通し、用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2が形成される。その際には、押圧用コイルスプリング532が第2のスライド部材51の下降に伴って圧縮されることになり、固定用押圧子531が、用紙Pに強く押しつけられて用紙Pをパンチプレート22に圧接させることになる。そのため、抜き刃42及び切込刃52が貫入する付近の用紙Pが、紙押さえ53によってしっかり固定された状態、すなわち、用紙Pが紙押さえ53によって張りのある状態のまま穿孔される。なお、パンチプレート22に突出している紙逃がし23の突起231は、用紙Pがパンチプレート22に押しつけられる力によって弾性的に没入する。
【0060】
穿孔後さらに抜き刃42及び切込刃52が下降すると、図12に示すように、前記アーム433と係止部材352との当接によりインナーカム43が回動して切起片P5が押圧され、その切起片P5の先端P51側が切込刃52の窓523に挿入される。この際、本実施形態では、切起片P5が窓523に挿入される際の切起片P5の先端P51と窓523の先端側の縁524との干渉を可及的に少なくしている。具体的には、窓523への切起片P5の挿入時における切起片P5の先端P51と窓523の縁524との接触をなくすか、軽く接触する程度に設定している。そのため、切起片P5に無理な力をかけることなく窓523に挿入することができ、切起片P5の破損や切起片P5の基端P52付近の破れを軽減することができる。
【0061】
また、紙押さえ53により用紙Pを押さえているため、抜き刃42及び切込刃52の下降に伴って用紙Pがパンチプレート22の穿孔部221や通過孔222に引き込まれることを好適に抑制している。このため、用紙Pのばらつきや撓みの発生が抑えられ、切起片P5が適切にインナーカム43により所期の方向に適切に押圧され、切込刃52の窓523に確実に挿入されることになる。
【0062】
以上説明したように、切込刃52は、前記操作レバー6への操作力に比例して退避位置(s)から最貫入位置(c)まで直線的に移動する。抜き刃42は、切込刃52が一定距離移動する間は、移動することなく退避位置(s)に留まり、その後、前記操作レバー6への操作力に比例して退避位置(s)から最貫入位置(c)まで直線的に移動する。また、インナーカム43は、アーム433が前記係止部材352に当接するまでの間は、前記コイルスプリング44の付勢力により初期姿勢(s)を保ち、その後、前記操作レバー6への操作力に比例して初期姿勢(s)から回動姿勢(r)まで正方向に回転移動する。なお、抜き刃42は、前記最貫入位置(c)まで達するまでに、前記第1のスライド部材41が、本体3と第1のスライド部材41との間に配されたラッチ部材34の付勢力に抗して下方に移動するため、下の弾性変形部343が弾性変形し、下の爪部345と第1のスライド部材41の下の係合凹部414とが係合する。
【0063】
次いで、操作レバー6への操作を解除すると、主として刃復帰用コイルスプリング11の付勢力により第2の刃ユニット5が上動して切込刃52が用紙Pから抜き取られるとともに、前記第2の刃ユニット5の上動がドライブシャフト12を介して伝えられる第1の刃ユニット4が前記第1の刃ユニット4に遅れて上動して、抜き刃42が用紙Pから抜き取られる。そして、前記抜き刃42及び切込刃52が、図14に示すように、元の状態である退避位置(s)に戻る。その際、切込刃52の窓523に挿入された切起片P5の先端P51は、用紙Pの一面Pa側に引き出されることになる。
【0064】
抜き刃42及び切込刃52の抜き取り動作について詳述すれば、以下の通りである。すなわち、図12に示す状態から、操作レバー6への操作を解除すると、前記刃復帰用コイルスプリング11の付勢力により第2のスライド部材51が上方に移動させられる。それに伴って、第2のスライド部材51の上端に連結されたドライブシャフト12が上方に移動する。また、この第2のスライド部材51に保持された切込刃52が上方に移動するとともに、第2のスライド部材51に保持された紙押さえ53の押圧用コイルスプリング532の圧縮状態の解放が始まる。
【0065】
なお、ドライブシャフト12が一定距離移動する間(図12から図13に至るまでの間)、前記ラッチ部材34の下の爪部345が第1のスライド部材41の下の係合凹部414に係合した係合状態が保たれるため、第1のスライド部材41は動かない。すなわち、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた貫通孔412が、ドライブシャフト12を上下方向に案内可能なものであり、貫通孔412の一端412aから他端412bまでの寸法がドライブシャフト12の直径よりも大きいので、ドライブシャフト12はこの貫通孔412内で遊動する。したがって、ドライブシャフト12が他端412b側から一端412a側まで一定距離移動するまでの間、第2のスライド部材51に加えられた力が、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝わらないことによるものである。ドライブシャフト12が前記一定距離を越えて上方に移動すると、第2のスライド部材51に加えられた力がドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝達され、本体3と第1のスライド部材41との間に配された弾性部材であるラッチ部材34の付勢力に抗して、下の弾性変形部343が弾性変形し、下の爪部345と第1のスライド部材41の下の係合凹部414との係合状態が解除される。
【0066】
このようにして、ドライブシャフト12が一定距離移動した後は、図13に示すように、第2のスライド部材51に加えられた力が、ドライブシャフト12に伝達され、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51が上方に移動させられる。それに伴って、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42が上方に移動するとともに、第2のスライド部材51に保持された切込刃52及び紙押さえ53が上方に移動する。
【0067】
抜き刃42及び切込刃52が上昇すると、インナーカム43がコイルスプリング44の付勢力により回動姿勢(r)から初期姿勢(s)へと復帰する。その際、切起片P5が窓523に挿入された状態で、インナーカム43の押し出し部435と前記窓523の先端側の縁524とが、同時に切起片P5に当接するタイミングが存在する。すなわち、インナーカム43の押し出し部435によって窓523に挿入された切起片P5は、インナーカム43の押し出し部435によって押圧されてその挿入状態を保っている間に、窓523の先端側の縁524が上昇して、前記挿入状態を保ったまま該窓523の先端側の縁524によって押圧される。そのため、切起片P5の挿入時には、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523との接触を少なくしたにもかかわらず、切起片P5が挿入された後は、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523の縁524とが接触するので、しっかりと綴じられる。すなわち、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523との接触が少ないまま切起片P5が挿入されると、往動作と復動作で対称的な動きを行うインナーカム43を使った場合に切起片P5が打ち抜き孔P1側へ戻ってしまいカット孔P2に切起片P5を通過させられないという問題が生じ得るが、このようなものであれば、切起片P5の先端P51側を窓523内に挿入された状態のままにし、確実にカット孔P2に引き込むことができる。
【0068】
以上説明したように、切込刃52は、前記刃復帰用コイルスプリング11の反発力に比例して最貫入位置(c)から退避位置(s)まで直線的に移動する。抜き刃42は、切込刃52が一定距離移動する間は、移動することなく最貫入位置(c)に留まり、その後、前記刃復帰用コイルスプリング11の反発力に比例して最貫入位置(c)から退避位置(s)まで直線的に移動する。また、インナーカム43は、アーム433と前記係止部材352との当接が解除されるまでの間は前記回動姿勢(r)を保ち、その後、前記刃復帰用コイルスプリング11の反発力に比例して回動姿勢(r)から初期姿勢(s)まで逆方向に回転移動する。なお、抜き刃42は、前記退避位置(s)まで達するまでに、前記第1のスライド部材41が、本体3と第1のスライド部材41との間に配されたラッチ部材34の付勢力に抗して上方に移動するため、上の弾性変形部342が弾性変形し、上の爪部344と第1のスライド部材41の上の係合凹部413とが係合する。
【0069】
<本実施形態の効果>
以上に述べたように、本実施形態にかかる綴じ機1は、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔P1を穿設する抜き刃42と、この抜き刃42に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃52と、これら抜き刃42及び切込刃52を保持する本体3と、この本体3に用紙挿入用隙間10を介して配設されたパンチ台2とを具備してなり、前記本体3に保持された前記抜き刃42と切込刃52とを前記用紙挿入用隙間10に挿入された用紙Pを貫通させてパンチ台2側に切り起こされた切起片P5の先端P51側を前記切込刃52の窓523に係わり合わせた状態で、その切込刃52と前記抜き刃42とを本体3側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片P5を前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pを綴じるようにしたものであって、前記切起片P5を切込刃52の窓523に挿入するためのインナーカム43と、このインナーカム43を抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で前記切起片P5が窓523に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該挿入部材を切起片P5が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構7とを具備してなるので、切起片P5に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙Pを綴じることができる。
【0070】
すなわち、切起片P5に無理な力をかけることなく切起片P5を窓523に挿入するためには、挿入時における切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523の縁524との接触をなくしたり、軽く接触する程度に設定したりすることが考えられる。しかしながら、従来の挿入部材(前述した特許文献中の抜き刃、本実施形態ではインナーカム43に対応する)であると切込刃52の進退方向の動きに連動して正逆方向に回動するので、切込刃52が最貫入位置(c)から抜き取り方向に作動すると同時に挿入部材が逆方向に動いてしまう。そのため、せっかく窓523に挿入した切起片P5が、挿入時の動きと正反対の動きをして窓523から抜け出してしまい、うまく綴じられないという問題があった。本発明者らは、綴じるためのエネルギーを小さくすることと、確実に綴じることとの両立を図るために、さらに探求を進めた結果、従来常識とされていた前記インナーカム43が切込刃52の進退方向の動きに連動して正逆方向に作動するという動きを見直し、切込刃52の動きとインナーカム43の動きとを相互に異ならせることにより前述したジレンマを解消することができることを見いだした。
【0071】
そして、本実施形態においては、挿入部材作動機構7が、抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で、前記切起片P5が窓523に挿入される正方向にインナーカム43を作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に、切起片P5が解放される逆方向にインナーカム43を作動させるものであるため、切込刃52における退避位置(s)と最貫入位置(c)との往復動作と、インナーカム43における初期姿勢(s)と回動姿勢(r)との間で行われる回動動作とを相互に異ならせることができる。そのため、インナーカム43の動きを変えることによって従来の問題を解消することができる。
【0072】
本実施形態では、前記挿入部材が、前記抜き刃42に保持されたインナーカム43であるので、抜き刃42の動きにインナーカム43の動きを連動させている。すなわち、本実施形態では、切込刃52における退避位置(s)と最貫入位置(c)との往復動作と、抜き刃42における退避位置(s)と最貫入位置(c)との往復動作とも相互に異ならせているので、刃ユニットを2つに分けて別々に動かすことができる。
【0073】
特に、このような抜き刃42とは別のインナーカム43によって切起片P5を押し出すようにしたいわゆる3ピース構造のものであると、抜き刃42とインナーカム43とを別々の素材で形成することができる。具体的には、抜き刃42は、板金素材で形成する等して刃付け作業に容易に対応でき、なおかつ、剛性を持たせることができる。インナーカム43は、合成樹脂素材で形成する等して、押し出し部435等の複雑な形状にも容易に対応でき、なおかつ、切起片P5を破損することなく押圧し得るものとすることができる。
【0074】
前記挿入部材作動機構7は、切込刃52と連動する抜き刃42の貫入方向への動きを利用して前記インナーカム43を正方向に作動させるとともに、抜き刃42の抜き取り方向への動きを利用して前記インナーカム43を逆方向に作動させる連動機構部71と、切込刃52と抜き刃42との連動を一時的に解除して、切込刃52が用紙Pに最も深く貫入した最貫入位置(c)から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、抜き刃42を最貫入位置(c)に保持させておくための遅延生成部72とを備えたものであるので、抜き刃42及びインナーカム43と、切込刃52とを、操作レバー6への一方向への動作を利用して別々の動きをさせることができる。
【0075】
前記連動機構部71は、インナーカム43の基端部431から延出させたアーム433と、前記本体3に設けられ抜き刃42が貫入方向に作動した際に前記アーム433に当接して、インナーカム43の先端部432を正方向に作動させる係止部材352と、インナーカム43の先端部432を逆方向に作動させるための復帰用コイルスプリング44とを備えているので、操作レバー6の回転動作からドライブシャフト12の直線動作に変換された操作力を用いて、インナーカム43が、初期姿勢(s)から回動姿勢(r)まで正方向への回転動作を行うことができるとともに、ドライブシャフト12の直線動作に変換された刃復帰用スプリングの反発力を用いて、回動姿勢(r)から初期姿勢(s)まで逆方向への回動動作を行うことができる。
【0076】
前記遅延生成部72が、抜き刃42を切込刃52に連動させて前記最貫入位置(c)まで作動させるとともに、切込刃52が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、抜き刃42の切込刃52に対する連動を解除する遊動結合要素73と、前記切込刃52が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間、抜き刃42を最貫入位置(c)に保持する保持要素74とを備えたものであるので、抜き刃42及びインナーカム43と、切込刃52とを、操作レバー6への一方向への動作を利用して連動させたり、別々の動きをさせたり切り換えることができる。特に、本実施形態では遊動結合要素73がシャフト保持部411、511に設けた貫通孔412、512と、これらの貫通孔412、512に挿通されたドライブシャフト12とによって構成されているため、第1の刃ユニット4と第2の刃ユニット5とを連動させることや別々の動きをさせることを簡単な構造で実現できる。
【0077】
本実施形態では、前記切起片P5が、基端領域P54と、この基端領域P54よりも幅の広い先端領域P55とを備えたものであり、前記抜き刃42が、前記基端領域P54を形成するための基端領域形成部421と、前記先端領域P55を形成するための基端領域形成部422とを備えたものであるので、上述した挿入部材作動機構7を備えた綴じ機1の効果がより発揮される。すなわち、先端P51側が膨らんだ異形状をした切起片P5は、切込刃52の窓523に確実に挿入するために、基端領域P54よりも先端領域P55側をインナーカム43で押圧したいという要望がある。そのため、窓523への切起片P5の挿入時に、切起片P5の先端P51及びインナーカム43の先端部432と、切込刃52の窓523の先端側の縁524との接触をできるだけ回避する必要があるが、従来のような切込刃52の動きに連動するインナーカム43であると、せっかく窓523内に挿入した切起片P5が打ち抜き孔P1側に戻ってきてしまい、適切に綴じることができないという問題が生じるが、本実施形態のような挿入部材作動機構7を備えたものであれば、このような問題を解消することができる。
【0078】
また、本実施形態の綴じ機1は、前記抜き刃42と前記切込刃52とを異なったタイミングで移動させることができるように構成したので、切起片P5に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙Pを綴じることのできる綴じ機1を提供するという課題を比較的簡単な構造で解決することができる。
【0079】
<第2実施形態(図15〜図24)>
次に、本発明の第2実施形態について図15〜図24を参照しながら説明する。
【0080】
この綴じ機1は、上述した第1実施形態と同様に、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子Bを作ることができるようにしたものであり、第1実施形態の綴じ機と同一または対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態の綴じ機1は、図15〜図24に示すように、前記刃復帰用コイルスプリング11の他に、抜き刃42を備えた第1の刃ユニット4及び切込刃52を備えた第2の刃ユニット5を穿孔操作前の位置である退避位置(s)に復帰させるための刃復帰用弾性体たる刃復帰補助用コイルスプリング46を備えている。この刃復帰補助用コイルスプリング46は、それぞれ一端側を第1のスライド部材41に対してスライド可能なキャップ部材45に保持させるとともに、他端側をハウジング31の底壁35に当接させている。キャップ部材45は、合成樹脂により作られており、その上面には、ドライブシャフト12を回動可能に保持するシャフト保持部451を備えており、操作レバー6に加えられる操作力がドライブシャフト12を介して貫通孔452を有するキャップ部材45に伝達されるようになっている。すなわち、前記ドライブシャフト12は、対をなす刃復帰用コイルスプリング11と刃復帰補助用コイルスプリング46とによって、バランス良く上方に弾性付勢されるようにしてある。
【0082】
なお、本実施形態の第1のスライド部材41は、図16〜図24に示すように、前記キャップ部材45及び刃復帰補助用コイルスプリング46を挿通させるためのコイル挿通窓を備えている点が第1実施形態のものと異なる。すなわち、この第1のスライド部材41は、前記刃復帰補助用コイルスプリング46によって直接押圧されることはない。
【0083】
また、この第1のスライド部材41の前面及び後面には、図16〜図18に示すように、それぞれ、ラッチ部材34の上の爪部344が係合し得る上の係合凹部413と、ラッチ部材34の下の爪部345が係合し得る下の係合凹部414が設けられているとともに、前記上の係合凹部413の上側に設けられラッチ部材34の上の爪部344が当接し得る上の傾斜部415と、前記下の係合凹部414の下側に設けられラッチ部材34の下の爪部345が当接し得る下の傾斜部416とが設けられている。上の係合凹部413は、主として第1のスライド部材41にドライブシャフト12を挿通させる際に用いられるもので、前記上の爪部344を係合させておくことで、第1のスライド部材41がハウジング31の底壁35付近まで落ち込んでしまうことを抑制する。ドライブシャフト12を挿通させた後は、上の爪部344が上の傾斜部415に係わり合う位置まで第1のスライド部材41を落とし込むようにしてあり、正常な作動時には、上の爪部344が上の傾斜部415よりも常に上に位置するようになっている。すなわち、上の爪部344は、組立時以外には、上の係合凹部413には係合しないように設定してある。なお、本実施形態のラッチ部材34の基端部341には、上下の爪部344、345の弾性変形を助けるための段部346を設けている。
【0084】
また、本実施形態の操作レバー6は、図17及び図18に示すように、天壁66に後述するロック機構13の係合部131を保持するためのフック部661を備えている。換言すれば、操作レバー6と本体3との間には、操作レバー6を所定の位置でロックするためのロック機構13が設けられている。ロック機構13は、操作レバー6に設けられた一方の係合部131を本体3に設けた他方の係合部132に係合させるようにしたものである。一方の係合部131は、例えば、基端を解放したループ状のもので、その基端を操作レバー6の下面側、具体的には前記天壁66に回動可能に懸吊支持されており、フック部661と係合していない時には自重によって垂下できるようになっている。すなわち、一方の係合部131は、通常使用時においては、天壁66に設けられたフック部661に引っ掛けて保持されてぶら下がらないようにしてある。他方の係合部132は、例えば、本体3のハウジング31に設けた鉤状をなすもので、その上面には前記一方の係合部131を案内して係合を促すための案内傾斜面133を備えている。しかして、操作レバー6を本体3に対して所定位置でロックする際には、一方の係合部131をフック部661から外してぶら下がった状態にした後、他方の係合部132に近づけるように操作レバー6を動かせば、案内傾斜面133によって所定の位置にスムーズに案内されることになる。
【0085】
次いで、この綴じ機1の作動について、図19〜図24を参照して説明する。
【0086】
まず、操作レバー6を操作しない状態では、図19に示すように、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51がそれぞれ上限位置に位置し、抜き刃42及び切込刃52が元の位置である退避位置(s)にそれぞれ保持されている。インナーカム43は、前記退避位置(s)に保持された抜き刃42内に収容された初期姿勢(s)を保っている。この際には、ドライブシャフト12は第1のスライド部材41の長孔状をなす貫通孔412の上端、すなわち一端412aに係わり合っており、第1のスライド部材41はこのドライブシャフト12により懸吊支持された状態にある。
【0087】
この状態で、重ね合わせた複数枚の用紙Pをパンチ台2の前部分における上向き面と、本体3の前部分における下向き面との間に形成されている用紙挿入用隙間10の奥まで挿入する。
【0088】
そして、操作レバー6を下方に操作すると、この操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12に伝達され、このドライブシャフト12が刃復帰用コイルスプリング11及び刃復帰補助用コイルスプリング46の付勢力に抗して下方に移動させられる。その結果、抜き刃42を保持した第1のスライド部材41と、切込刃52及び紙押さえ53を保持した第2のスライド部材51が下方に移動する。
【0089】
なお、ドライブシャフト12が一定距離移動する間、第1のスライド部材41は、ドライブシャフト12の動きに伴って下方に移動する。すなわち、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた貫通孔412の上端、すなわち一端412aにドライブシャフト12が係止された状態で、第1のスライド部材41が下方に移動する。なお、第1のスライド部材41が下方に移動する途中で、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42が用紙Pの一面Paに当接すると、この第1のスライド部材41のそれ以上の下方への移動が規制される。そして、ドライブシャフト12はこの貫通孔412内で遊動し、ドライブシャフト12が一端412a側から他端412b側まで一定距離移動するまでの間、操作レバー6に加えられた力は、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝わらない。
【0090】
このようにして、ドライブシャフト12が一定距離移動した後は、操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部41にも伝達され、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42と、第2のスライド部材に保持された切込刃52が用紙Pに貫入させられる。その際、紙押さえ53の固定用押圧子531の先端が用紙Pに接し、この固定用押圧子531が用紙Pを押圧支持した状態で、図21に示すように、抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通し、用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2が形成される。
【0091】
穿孔後さらに抜き刃42及び切込刃52が下降すると、図22に示すように、前記アーム433と係止部材352との当接によりインナーカム43が回動して切起片P5が押圧され、その切起片P5の先端P51側が切込刃52の窓523に挿入される。この際、本実施形態では、切起片P5が窓523に挿入される際の切起片P5の先端P51と窓523の先端側の縁524との干渉を可及的に少なくしている。具体的には、窓523への切起片P5の挿入時における切起片P5の先端P51と窓523の縁524との接触をなくすか、軽く接触する程度に設定している。そのため、切起片P5に無理な力をかけることなく窓523に挿入することができ、切起片P5の破損や切起片P5の基端P52付近の破れを軽減することができる。このようにして、第1のスライド部材41が最も降下した位置に達した段階で、下の爪部345と下の係合凹部414とが係合し、この第1のスライド部材41が最も降下した位置で保持される。すなわち、第1のスライド部材41が最も降下した位置に達する前の段階で、ラッチ部材34が下の傾斜部416の案内作用により一時的に外方に弾性変形し、最終的にこのラッチ部材34の下の爪部345が下の係合凹部414に係合することになる。
【0092】
次いで、操作レバー6への操作を解除すると、刃復帰用コイルスプリング11及び刃復帰補助用コイルスプリング46の付勢力により第2の刃ユニット5及びドライブシャフト12が上動して切込刃52が用紙Pから抜き取られるとともに、第1の刃ユニット4が、前記第2の刃ユニット5に遅れて上動して、抜き刃42が用紙Pから抜き取られる。そして、前記抜き刃42及び切込刃52が、図24に示すように、元の状態である退避位置(s)に戻る。その際、切込刃52の窓523に挿入された切起片P5の先端P51は、用紙Pの一面Pa側に引き出されることになる。
【0093】
抜き刃42及び切込刃52の抜き取り動作について詳述すれば、以下の通りである。すなわち、図22に示す状態から、操作レバー6への操作を解除すると、刃復帰用コイルスプリング11及び刃復帰補助用コイルスプリング46によりドライブシャフト12及び第2のスライド部材51が上方に移動し始める。この移動初期においては、ドライブシャフト12が一定距離移動する間(図22から図23に至るまでの間)、前記ラッチ部材34の下の爪部345が第1のスライド部材41の下の係合凹部414に係合した係合状態が保たれるため、第1のスライド部材41は動かない。すなわち、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた貫通孔412が、ドライブシャフト12を上下方向に案内可能なものであり、貫通孔412の一端412aから他端412bまでの寸法がドライブシャフト12の直径よりも大きいので、ドライブシャフト12はこの貫通孔412内で遊動する。したがって、ドライブシャフト12が下端、すなわち他端412b側から上端、すなわち一端412a側まで一定距離移動するまでの間、第2のスライド部材51に加えられた力が、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝わらないことによるものである。ドライブシャフト12が前記一定距離を越えて上方に移動すると、第2のスライド部材51に加えられた力がドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝達され、本体3と第1のスライド部材41との間に配された弾性部材であるラッチ部材34の付勢力に抗して、下の弾性変形部343が弾性変形し、下の爪部345と第1のスライド部材41の下の係合凹部414との係合状態が解除される。すなわち、この動作によって、切込刃52を保持した第2のスライド部材51よりも、抜き刃42及びインナーカム43を保持した第1のスライド部材41が遅れたタイミングで抜き方向に作動し始めることになる。
【0094】
このようにして、ドライブシャフト12が一定距離移動した後は、図23に示すように、ドライブシャフト12と第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51が一体となって上方に移動させられる。それに伴って、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42が上方に移動するとともに、第2のスライド部材51に保持された切込刃52及び紙押さえ53が上方に移動する。
【0095】
なお、前述した抜き方向の移動初期においては、切込刃52が一定距離抜き方向に移動した後に抜き刃42がインナーカム43とともに抜き方向に移動し始めるため、窓523と切起片P5との接触を少なくしているにもかかわらず、切起片P5の不当な戻りを防止することができ、確実な綴じ状態を実現することができる。詳述すれば、抜き刃42及び切込刃52が上昇すると、インナーカム43がコイルスプリング44の付勢力により回動姿勢(r)から初期姿勢(s)へと復帰する。その際、切起片P5が窓523に挿入された状態で、インナーカム43の押し出し部435と前記窓523の先端側の縁524とが、同時に切起片P5に当接するタイミングが存在する。すなわち、インナーカム43の押し出し部435によって窓523に挿入された切起片P5は、インナーカム43の押し出し部435によって押圧されてその挿入状態を保っている間に、窓523の先端側の縁524が上昇して、前記挿入状態を保ったまま該窓523の先端側の縁524によって押圧される。そのため、切起片P5の挿入時には、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523との接触を少なくしたにもかかわらず、切起片P5が挿入された後は、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523の縁524とが接触するので、しっかりと綴じられる。すなわち、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523との接触が少ないまま切起片P5が挿入されると、往動作と復動作で対称的な動きを行うインナーカム43を使った場合に切起片P5が打ち抜き孔P1側へ戻ってしまいカット孔P2に切起片P5を通過させられないという問題が生じ得るが、このようなものであれば、切起片P5の先端P51側を窓523内に挿入された状態のままにし、確実にカット孔P2に引き込むことができる。
【0096】
<第2実施形態の効果>
本実施形態にかかる綴じ機1は、第1実施形態の綴じ機1と同一またはこれに準ずる効果が得られる。
【0097】
特に、本実施形態の綴じ機1によれば、初期状態で上の爪部344と上の係合凹部413とが係合しておらず、第1の刃ユニット4が上の爪部344の下方に落とし込まれているので、上の爪部344と上の係合凹部413との係合状態を解除するためのエネルギーを加える必要がなくなる。そのため、第1実施形態のものに比べて小さな操作力で操作することができる。
【0098】
また、第1の刃ユニット4側に刃補助用コイルスプリング46が配されているので、ドライブシャフト12をバランス良く上方に引き上げることができる。特に、本実施形態では、左右方向に伸びる1本のドライブシャフト12を3つのコイルスプリング11、46により3点で付勢しているため、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51の左右方向への傾き及び前後方向への傾きを抑制することができる。
【0099】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0100】
<変形例(図25〜図29)>
挿入部材作動機構は、上述したものには限られず、例えば、図25〜図29に模式的に示すようなものであってもよい。すなわち、上述した第1及び第2実施形態では、前記抜き刃と前記切込刃とを異なったタイミングで移動させることができるように構成したものについて説明したが、抜き刃と切込刃を同じタイミングで移動させるものであってもよい。以下、上述した実施形態と同一またはそれに相当する部分には、頭に「A」を付けた同様の符号を付して示すものとし、具体的な説明を省略する。
【0101】
この綴じ機は、抜き刃A42及び切込刃A52の突没方向を前述の実施形態と上下反対にしており、抜き刃A42及び切込刃A52が、図示しない退避位置と最貫入位置(c)との間で常に連動して作動するものである。そして、挿入部材作動機構A7が、切込刃A52と連動する抜き刃A42の貫入方向への動きを利用してインナーカムA43を正方向に作動させるとともに、抜き刃A42の抜き取り方向への動きを利用して前記インナーカムA43を逆方向に作動させる連動機構部A71と、切込刃A52及び抜き刃A42とインナーカムA43との連動を一時的に解除して、切込刃A52及び抜き刃A42が用紙APに最も深く貫入した最貫入位置(c)から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、インナーカムA43を回動姿勢(r)に保持させておくための遅延生成部A72とを備えたものである。
【0102】
前記連動機構部A71は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。前記遅延生成部A72は、抜き刃A42を切込刃A52に連動させて前記最貫入位置(c)まで作動させるとともに、切込刃A52及び抜き刃A42が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、インナーカムA43の切込刃A52及び抜き刃A42に対する連動を解除する遊動結合要素A73と、前記切込刃A52及び抜き刃A42が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間、インナーカムA43を回動姿勢(r)に保持する保持要素A74とを備えたものである。
【0103】
具体的には、遊動結合要素A73は、インナーカムA43が抜き刃A42に対して上下方向に相対移動可能となるように抜き刃A42に設けられた長孔A424と、この長孔A424に対して上下方向にスライド可能なインナーカムA43の軸A434とを主体に構成されたものである。保持要素A74は、本体A3に対して軸A301を介して回動可能に設けられた係合爪の凹部A303と、この凹部A303に係り合うインナーカムA43のアームA433の先端側に設けられたピンA436とを主体に構成されたものである。前記係合爪A30は、軸A301を中心に回動する回動アームA302と、この回動アームA302の先端側に設けられた前記凹部A303とを備えており、この係合爪A30は、回動アームA302が凹部A303の形成側に、すなわち反時計回りに、図示しない付勢手段によって常に付勢されている。
【0104】
このようなものであれば、図示しない操作レバーを操作すると、図25に示すように、抜き刃A42及び切込刃A52が上方に移動して、打ち抜き孔AP1及びカット孔AP2が形成される。穿孔後さらに抜き刃A42及び切込刃A52が上昇すると、前記アームA433と係止部材A352との当接によりインナーカムA43が回動して切起片AP5が押圧され、その切起片AP5の先端側が切込刃A52の窓A523に挿入される。この際、前述の実施形態と同様に、切起片AP5が窓A523に挿入される際の切起片AP5の先端と窓A523の先端側の縁A524との干渉を可及的に少なくしている。本実施形態では、インナーカムA43が図示しない初期姿勢から回動姿勢(r)に至る途上において、図26に示すように、インナーカムA43のアームA433の先端に設けられたピンA436が前記係合爪A30の付勢力に抗して下方に移動する。そして、切込刃A52及び抜き刃A42が最貫入位置(c)に至ると、図27に示すように、前記係合爪A30を付勢する付勢手段の反発力により回動アームA302が元の位置へと戻り、この回動アームA302の先に形成された凹部A303と前記アームA433のピンA436とが係合する。
【0105】
次いで、操作レバーへの操作を解除すると、図示しない刃復帰用コイルスプリング等の付勢力により切込刃A52及び抜き刃A42が下方に移動させられる。切込刃A52及び抜き刃A42が一定距離移動する間、インナーカムA43が、ピンA436と凹部A303との係合状態を保ったまま下方に移動する。そのため、切込刃A52が抜き取り方向へ移動しているにもかかわらず、インナーカムA43は、切起片AP5が窓A523に挿入した状態を保つように、回動姿勢(r)のまま切起片AP5を押圧する。切込刃A52及び抜き刃A42が前記一定距離を超えて下方に移動すると、付勢手段の付勢力に抗して、回動アームA302が時計回りに回動し、ピンA436と凹部A303との係合状態が解除される。このようにして、切込刃A52及び抜き刃A42が一定距離移動した後は、抜き刃A42及び切込刃A52が下方に移動するのに伴って、インナーカムA43が下方に移動しつつ回動姿勢(r)から初期姿勢へと逆方向に回転動作する。
【0106】
このようなものであれば、前記実施形態に準じた効果が得られる。さらに、本変形例のようなものであれば、抜き刃A42と切込刃A52とをユニット化することが可能になり、抜き刃A42及び切込刃A52の退避位置から最貫入位置(c)までのストロークを大きくする必要がなくなる。
【0107】
<その他の変形例>
なお、本発明の挿入部材作動機構は、インナーカムの正逆方向への回動タイミングを変更するために、インナーカムのアームが当接する係止部材が、本体に対して移動可能に取り付けられるものであってもよい。また、正方向または逆方向への動きは、回転動作に限られず、スライド動作等であってもよい。
【0108】
遊動結合要素は、上記実施形態では、第1、第2のスライド部材に設けられた貫通孔と、この貫通孔に挿入されるドライブシャフトとを主体に構成していたが、貫通孔とドライブシャフトは反対でもよい。すなわち、遊動結合要素は、第1、第2のスライド部材に設けられたピンと、このピンが遊動可能に嵌め込まれる本体に設けられた貫通孔や凹部とを備えたものであってもよい。
【0109】
また、インナーカム等の挿入部材以外の部材によっても、前述した実施形態に準じた効果を得ることができる。すなわち、綴じ機が、前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束部材と、この拘束部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で前記切起片が拘束される方向に作動させるとともに切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該拘束部材を切起片が解放される方向に作動させる拘束部材作動機構とを具備してなるものが挙げられる。この挿入部材は、従来通りの動きを行うものであっても、前述した実施形態に準ずる動きを行うものであってもよい。すなわち、従来通りの動きとは、切込刃の進退動作と挿入部材の正方向及び逆方向への動作とを連動させて切込刃の最貫入位置を中心に前後で対称的な動きをさせるものをいい、一方、前述した実施形態に準ずる動きとは、切込刃の進退動作と挿入部材の作動とを連動させない部分を作り、切込刃が抜き取り方向に移動した後に挿入部材を逆方向に作動させるようなものである。
【0110】
拘束部材は、拘束部材作動機構によって、抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で、前記切起片が拘束される方向に作動されるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に、切起片が解放される方向に作動されるものであればどのようなものであってもよく、例えば、切込刃の窓の先端側の縁の位置を変更するために当該窓に取り付けられる部材や、前記挿入部材の役割を果たすインナーカムとは別の抜き刃に取り付けられるインナーカム等であってもよい。すなわち、拘束部材は、切込刃側、抜き刃側、または本体側のいずれに取り付けられたものであってもよい。
【0111】
また、前記抜き刃と前記切込刃とを異なったタイミングで移動させることができるように構成したものの一具体例として、抜き刃を有する第1の刃ユニットと切込刃を有する第2の刃ユニットとを別々の刃ユニットで構成していたが、同一の刃ユニットに取り付けられた抜き刃と切込刃とを異なったタイミングで移動させたり、別々の刃ユニットに取り付けられた抜き刃と切込刃とを互いに異なる操作体によって操作することにより異なったタイミングで移動させるようにしてもよい。
【0112】
綴じ機は、複数の切込刃を備えたものや、複数の抜き刃を備えたものであってもよい。例えば、複数の切起片を形成するための単一の抜き刃と、前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記複数の切 起片を係止可能なカット孔を形成するための単一の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものであってもよい。
【0113】
また、これら切込刃及び抜き刃の突没方向は、上述した実施形態に示すように、切込刃及び抜き刃の突出側を下方とし没入側を上方とするものに限られず、例えば、上下を逆向きにして、切込刃及び抜き刃の突出側を上方とし、没入側を下方として使用することも可能である。さらに、抜き刃及び切込刃の移動方向は、一時的に上方に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものや、左右方向、または斜め方向に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものであってもよい。例えば、上述した実施形態のものと上下を逆にした仕様のものも考えられる。この仕様の綴じ機は、前述した実施形態における「上方」、「下方」、「上昇」、「下降」、「上面」、または「下面」を、それぞれ「下方」、「上方」、「下降」、「上昇」、「下面」、または「上面」と読み替えた構造をなしている。
【0114】
用紙は、シート状であれば、紙製またはプラスチック製等種々変更可能である。また、同質の材料により作られた複数枚のシート体を綴じるようにすれば、分別廃棄の際の手間をより少なくすることができる。
【0115】
刃ユニットは、切込刃、抜き刃、及びインナーカムの3ピース構造のみならず、切込刃及び抜き刃の2ピース構造であってもよい。この際、抜き刃は、穿孔姿勢から回動姿勢までの間で回動可能に設けられ穿孔姿勢において打ち抜き孔を形成し得るものとするのが好ましい。
【0116】
また、本実施形態では、パンチ台を静止させた状態で抜き刃及び切込刃を往復動作させるようにしていたが、これとは逆に、抜き刃及び切込刃を静止させた状態でパンチ台を往復動作させるように構成してもよい。
【0117】
前記実施形態では、操作レバーを手動で操作するものについて説明したが、電動で作動させるものであってもよい。操作レバーは、本実施形態に示した往復回動させるレバーに限らず、例えば一方向に回動させるダイヤル式のものや、直線的に作動させるスライダ式のもの等であってもよい。
【0118】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0119】
P、AP…用紙
P1、AP1…打ち抜き孔
P2、AP2…カット孔
P5、AP5…切起片
P51、AP51…先端
P54…基端領域
P55…先端領域
1…綴じ機
10…用紙挿入用隙間
2…パンチ台
3、A3…本体
352、A352…係止部材
42、A42…抜き刃
421…基端領域形成部
422…基端領域形成部
43、A43…インナーカム
(c)…最貫入位置
431、A431…基端部
432、A432…先端部
433、A433…アーム
52、A52…切込刃
523、A523…窓
7、A7…挿入部材作動機構
71、A71…連動機構部
72、A72…遅延生成部
73、A73…遊動結合要素
74、A74…保持要素
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた複数枚の用紙の端部を一体的に綴じ合わせる綴じ機のうち、特に金属製の針を使用しない方式の、いわゆる針なしステープラと称される綴じ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の綴じ機として、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この綴じ機は、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させて、パンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を、前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものである。
【0003】
このような綴じ機には、抜き刃と切込刃とが用紙に貫入した段階で切起片を切込刃の窓に挿入するために、抜き刃やインナーカム等の挿入部材が不可欠である。従来の綴じ機は、抜き刃と切込刃が一体化した状態で連動するようになっており、前記挿入部材は、切込刃の進退方向の動きに連動して正逆方向に作動するようになっている。すなわち、前記挿入部材は、切込刃の進入動作に伴って正方向に作動し、切込刃がこの進入動作と対称的な動作である抜き取り動作に伴って逆方向に作動する。換言すれば、挿入部材は、切込刃が最も深く貫入する最貫入位置を中心に対称的な動きをする。
【0004】
そのため、切起片の先端部分を切込刃の窓の縁に押し当て、切起片の先端側を無理に反らせながら窓内に挿入するようにせざるを得ないという事情があり、そのために切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みて、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る綴じ機は、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものであって、前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通した段階で前記切起片が窓に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該挿入部材を切起片が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
ここで「用紙」とは、穿孔対象物であれば、どのようなものであってもよく、紙製のものの他、プラスチック製、金属製、または木製のものも含まれる。また、薄いシート状のものに限られない。
【0009】
このようなものであれば、挿入部材作動機構の働きにより、挿入部材は、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動するまでは、切起片が解放される逆方向に作動されない。そのため、この一定距離を種々設定することにより、挿入部材を逆方向に作動させるタイミングの自由度を高めることができる。したがって、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することができる。
【0010】
前記挿入部材の好適な一態様としては、前記抜き刃に保持されたインナーカムが挙げられる。挿入部材としては、抜き刃以外の部分に保持され抜き刃と連動することなく作動するインナーカムや、抜き刃自体が挿入部材としての役割を果たすものであってもよい。また、挿入部材は、回転動作により用紙を挿入する以外のものであってもよい。
【0011】
前記挿入部材作動機構としては、切込刃と連動する抜き刃の貫入方向への動きを利用して前記挿入部材を正方向に作動させるとともに、抜き刃の抜き取り方向への動きを利用して前記挿入部材を逆方向に作動させる連動機構部と、切込刃と抜き刃との連動を一時的に解除して、切込刃が用紙に最も深く貫入した最貫入位置から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、抜き刃を最貫入位置に保持させておくための遅延生成部とを備えたものが好ましい。
【0012】
前記連動機構部の好適な一態様としては、インナーカムの基端部から延出させたアームと、前記本体に設けられ抜き刃が貫入方向に作動した際に前記アームに当接してインナーカムの先端部を正方向に作動させる係止部材と、インナーカムの先端部を逆方向に作動させるための復帰用弾性部材とを備えているものが挙げられる。
【0013】
前記遅延生成部の好適な一態様としては、抜き刃を切込刃に連動させて前記最貫入位置まで作動させるとともに、切込刃が最貫入位置から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、抜き刃の切込刃に対する連動を解除する遊動結合要素と、前記切込刃が最貫入位置から一定距離抜き取り方向に移動する間、抜き刃を最貫入位置に保持する保持要素とを備えたものが挙げられる。
【0014】
前記切起片が、基端領域と、この基端領域よりも幅の広い先端領域とを備えたものである場合の好適な抜き刃としては、前記基端領域を形成するための基端領域形成部と、前記先端領域を形成するための先端領域形成部とを備えたものが挙げられる。
【0015】
また、本発明の綴じ機は、前記挿入部材の他に切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束部材を有したものであってもよい。すなわち、本発明の他の綴じ機は、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものであって、前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束部材と、この拘束部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で前記切起片が拘束される方向に作動させるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該拘束部材を切起片が解放される方向に作動させる拘束部材作動機構とを具備してなるものであってもよい。
【0016】
ここで「拘束部材」とは、切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つために挿入部材とは別に設けられたものであればどのようなものであってもよく、この拘束部材が設けられる場所も、切込刃側、抜き刃側または本体側等どのような場所であってもよい。
【0017】
このようなものであれば、拘束部材作動機構の働きにより、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動するまでは、拘束部材は切起片が解放される方向に作動されない。そのため、この一定距離を種々設定することにより、拘束部材を切起片が解放される方向に作動させるタイミングの自由度を高めることができる。したがって、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することができる。
【0018】
また、以上のような課題を簡単に解決する綴じ機の一態様としては、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものであって、前記抜き刃と前記切込刃とを異なったタイミングで移動させることができるように構成したものが考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のような構成であるから、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の綴じ機を示す全体斜視図。
【図2】同実施形態の綴じ機を示す平面図。
【図3】図2におけるA−A線断面図。
【図4】同実施形態の要部を示す分解斜視図。
【図5】同実施形態の要部を示す分解斜視図。
【図6】図2におけるB−B線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図7】図2におけるB−B線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図8】図2におけるC−C線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図9】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図10】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図11】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図12】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図13】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図14】図2におけるD−D線断面で一部省略して示す作用説明図。
【図15】本発明の第2実施形態の綴じ機を示す平面図(図2に対応)。
【図16】同実施形態の要部を示す分解斜視図(図5の一部に対応)。
【図17】図15におけるE−E線断面で示す作用説明図。
【図18】図15におけるE−E線断面で示す作用説明図。
【図19】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図9に対応)。
【図20】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図10に対応)。
【図21】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図11に対応)。
【図22】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図12に対応)。
【図23】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図13に対応)。
【図24】図15におけるF−F線断面で示す作用説明図(図14に対応)。
【図25】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【図26】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【図27】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【図28】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【図29】本発明の変形例の綴じ機の要部を模式的に示す作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態(図1〜図14)>
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図14を参照しながら説明する。
【0022】
この綴じ機1は、図1〜図3に示すように、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子Bを作ることができるようにしたものである。
【0023】
この冊子Bは、図1〜図3に示すように、複数枚の用紙Pを束ねてなるもので、それらの用紙Pは綴じ元側に設定した一ヵ所の接合部分P3において相互に接合されている。この接合部分P3は、用紙Pの一面Pa側から貫入させた抜き刃により各用紙Pに形成された打ち抜き孔P1と、この打ち抜き孔P1に隣接させて前記各用紙Pに形成された引き上げ用カット孔P2と、前記打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5とから構成されている。そして、前記切起片P5の先端P51側を、前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pの一面Pa側に導出させることによって、前記複数枚の用紙Pの綴じ元側が相互に接合されている。
【0024】
前記切起片P5は、図1〜図3に示すように、先端側が膨らんだ形状、具体的には全体として矢印形状をなすもので、境界部P53を挟んで基端P52側に基端領域P54を備えるとともに、先端P51側に前記基端領域P54よりも幅の広い先端領域P55を備えている。なお、切起片P5は一端が半円弧状をなす舌片状のものにする等種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0025】
前記打ち抜き孔P1は、図1〜図3に示すように、前記切起片P5に対応する大きさ及び形状をなしており、抜き刃42による穿孔直後は、抜き刃42の形状に対応したスリット状のものであり、切起片P5を切り起こした後は、切起片P5の形状に対応した矢印形状をなす長孔状の空間である。また、この打ち抜き孔P1の基端側、すなわち切起片P5の基端P52近傍には、切起片P5の基端の両側から延びる破れ抑制用のスリット状の逃げ部P6を備えている。なお、打ち抜き孔P1は種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0026】
一方、前記カット孔P2は、図1〜図3に示すように、切起片P5を主として係わり合わせるための第1のスリットP21と、この第1のスリットP21の途中から打ち抜き孔P1方向に伸びる左右方向に対をなす第2のスリットP22とを備えている。なお、カット孔P2は種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0027】
このように用紙Pを綴じる際に使用される綴じ機1について、図1、図2及び図4〜図14を参照して説明する。
【0028】
この綴じ機1は、図1、図2及び図6〜図14に示すように、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔P1を穿設する抜き刃42と、この抜き刃42に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃52と、これら抜き刃42及び切込刃52を保持する本体3と、この本体3に用紙挿入用隙間10を介して配設されたパンチ台2と、前記切起片P5を切込刃52の窓523に挿入するための挿入部材であるインナーカム43と、このインナーカム43を抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で、前記切起片P5が窓523に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に、当該インナーカム43を切起片P5が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構7とを具備してなる。換言すれば、この綴じ機1は、上向き面に用紙Pが載置されるパンチ台2と、このパンチ台2の上向き面との間に用紙挿入用隙間10を形成する下向き面を備えた本体3と、この本体3内に保持される第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5と、抜き刃42を備えた第1の刃ユニット4及び切込刃52を備えた第2の刃ユニット5を穿孔操作前の位置である退避位置(s)に復帰させるための刃復帰用弾性体たる刃復帰用コイルスプリング11と、前記本体3に装着され前記第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5を作動させるための操作レバー6と、前記パンチ台2の側面に対して回転可能に設けられるサイドゲージ8とを備えている。なお、サイドゲージ8は、用紙Pの適切な場所に接合部分P3を形成するために用紙Pの縁部を合わせるものであり、図1、図2に示すとともに、他の図面では省略している。
【0029】
パンチ台2は、図1、図2、図4及び図6〜図14に示すように、ベースフレーム21と、このベースフレーム21に設けられ用紙挿入用隙間10に臨むパンチプレート22と、このパンチプレート22に密着している綴じ作業後の用紙Pをパンチプレート22から離れる方向に逃がすための紙逃がし23と、この紙逃がし23を含め前記ベースフレーム21の下面側を隠蔽する底面カバー24とを具備してなる。
【0030】
ベースフレーム21は、図1、図2、図4及び図6〜図14に示すように、後部分に本体3を取り付けるための本体取付部211を有するとともに、前部分にパンチプレート22を用紙挿入用隙間10側に表出させるためのプレート表出窓212を備えており、後部分と前部分との境界に用紙挿入用隙間10に挿入される用紙Pの端部を係止するための係止壁213を有している。ベースフレーム21は合成樹脂により一体に成形されたものである。本体取付部211は、本体3の下端を取り付けるための平坦部分214を有しており、この平坦部分214に複数のボルト挿通孔215が貫設されたものである。
【0031】
パンチプレート22は、図1、図2、図4及び図6〜図14に示すように、抜き刃42と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1及び逃げ部P6を穿孔するための穿孔部221と、切込刃52と協働して用紙Pにカット孔P2を穿設するための通過孔222と、後述する紙逃がし23の突起231が通過するための押圧子通過孔223とを備えた金属製のものである。パンチプレート22は、ベースフレーム21に取り付けられている。詳述すれば、パンチプレート22はアンビルとしての機能を備えたもので、貫通孔である穿孔部221、通過孔222、及び押圧子通過孔223を有し、プレート表出窓212を介して用紙挿入用隙間10に臨むもので、その周縁部にベースフレーム21の下面側に取り付けられる取付鍔224を備えている。具体的には、取付鍔224の前端部分をベースフレーム21の図示しない係合部に係わり合わせることにより、パンチプレート22の前端部分が前記ベースフレーム21に取り付けられている。一方で、取付鍔224の後端部分には複数のボルト挿通孔225が形成されており、それらボルト挿通孔225を本体3の図示しないボルト挿通孔と合致させた状態で、その後端部分をベースフレーム21の下面に添接させている。そして、これらボルト挿通孔215、225に下側から挿通させたボルト20aを本体3側に設けた図示しないナットに螺合させて緊締することにより、パンチプレート22と本体3とをベースフレーム21に固定することができるようにしてある。
【0032】
紙逃がし23は、図4及び図6〜図14に示すように、綴じ作業後にパンチプレート22に密着している用紙Pをパンチプレート22から離れる方向に逃がすためのものである。この紙逃がし23は、パンチプレート22を貫通して用紙挿入用隙間10に突出する方向に弾性付勢する解放用押圧子である複数の突起231と、これら複数の突起231を用紙挿入用隙間10に突出する方向に弾性付勢する解放用弾性体である板バネ232とを具備してなる。これらの突起231と板バネ232とは合成樹脂により一体に形成されている。
【0033】
本体3は、図1、図4及び図6〜図14に示すように、第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5を昇降可能に保持するハウジング31と、このハウジング31の前面、底面及び両側面を覆うメタルフレーム32と、このメタルフレーム32の後側に装着されるリアカバー33とを備えてなる。
【0034】
ハウジング31は、図4及び図6〜図14に示すように、底壁35と、前壁36と、後壁37と、左右の側壁38とを備えたものである。底壁35は、後壁37よりも後方に延出させてある。これら底壁35、前壁36、後壁37及び左右の側壁38によって囲まれた空間39に、前記第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5が収容されるようになっている。ハウジング31は、合成樹脂により一体に形成されている。底壁35は、抜き刃42及び切込刃52が通過するための開口351を有している。この底壁35の上面側には後述するインナーカム43のアーム433を係止するための係止部材352を設けている。また、この底壁35の上面には、中心に貫通孔354を有する筒状をなすボス353が設けられている。前壁36と後壁37の内面には、第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5を昇降可能に案内するための案内部371(前壁36の案内部は図示せず)がそれぞれ設けられている。また、この前壁36と後壁37の内面には、後述するラッチ部材34を取り付けるためのラッチ部材取付部372(前壁36のラッチ部材取付部は図示せず)がそれぞれ設けられている。左右の側壁38には、後述するドライブシャフト12を挿通させるための長孔382がそれぞれ形成されている。
【0035】
対をなすラッチ部材34は、図4、図5及び図8〜図14に示すように、前後のラッチ部材取付部372にそれぞれ止着具30aを介して取り付けられる基端部341と、この基端部341から上下方向に延出する弾性変形可能な板状の弾性変形部342、343と、これら弾性変形部342、343の先端側にそれぞれ設けられる上下の爪部344、345とを備えたもので、これら基端部341、上下の弾性変形部342、343、上下の爪部344、345とは、合成樹脂により一体に成形されたものである。
【0036】
メタルフレーム32は、図6〜図14に示すように、ハウジング31の底壁35の下面に添設する底板321と、ハウジング31の前壁36の外面に添設する前板322と、ハウジング31の左右側壁38の外面に添設する左右の側板323とを具備してなる板金製のものである。底板321は、ハウジング31の底壁35の略全域に対応するもので、開口351とボス353の貫通孔354を用紙挿入用隙間10に表出させるための窓324と、ハウジング31とパンチプレート22とを位置決めするための位置決めピンを挿通させるための図示しないピン挿通孔と、パンチプレート22とベースフレーム21とハウジング31の底壁35とを共締めするボルト20aを挿通させるための図示しないボルト挿通孔が設けられている。すなわち、パンチプレート22のボルト挿通孔225と、ベースフレーム21のボルト挿通孔215と、メタルフレーム32のボルト挿通孔と、ハウジング31の底壁35に設けられたボルト挿通孔とに挿通させたボルト20aにより、本体3をパンチ台2に取り付けている。メタルフレーム32の側板323には、第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5を駆動するドライブシャフト12を昇降可能に案内するための上下案内部325と、後述する操作レバー6の支軸65を、回転かつスライド可能に支持するための前後案内部326とが設けられている。
【0037】
第1の刃ユニット4は、図4、図5及び図8〜図14に示すように、ハウジング31の案内部371、381に案内されて一定の姿勢を維持しつつ昇降可能な第1のスライド部材41と、この第1のスライド部材41に取り付けられた抜き刃42と、この抜き刃42の内側に配され抜き刃42内に収まる初期姿勢(s)から、一部が抜き刃42外に突出する回動姿勢(r)との間で第1のスライド部材41に軸434を介して回動可能に枢支されたインナーカム43と、このインナーカム43を初期姿勢(s)に自己復帰する方向に回動付勢するコイルスプリング44とを具備してなる。
【0038】
第1のスライド部材41は、図4、図5及び図8〜図14に示すように、下方に向けて開口する中空ブロック状のもので、合成樹脂により作られている。第1のスライド部材41の上面には、ドライブシャフト12を回動可能に保持するシャフト保持部411を備えており、操作レバー6に加えられる操作力がドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝達されるようになっている。この第1のスライド部材41の前面及び後面には、それぞれ、ラッチ部材34の上の爪部344が係合し得る上の係合凹部413と、ラッチ部材34の下の爪部345が係合し得る下の係合凹部414が設けられている。
【0039】
抜き刃42は、図2、図4、図5及び図8〜図14に示すように、用紙Pに矢尻状の切起片P5を形成するものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られている。この抜き刃42は、打ち抜き孔P1の基端領域P54を形成するための基端領域形成部421と、打ち抜き孔P1の先端領域P55を形成するための基端領域形成部422とを備えたものであり、本実施形態の抜き刃42は、用紙Pにスリット状の逃げ部P6を形成するための逃げ部形成部423をさらに備えている。
【0040】
インナーカム43は、図4及び図9〜図14に示すように、基端部431に軸434を有するとともに先端部432に切起片P5を切込刃52に設けられた窓523に挿入させるための押し出し部435を備えたもので、その軸434が抜き刃42及び第1のスライド部材41に支持されている。すなわち、このインナーカム43は、前記切起片P5を切込刃52の窓523に挿入するためのものであり、抜き刃42に保持されてなる。インナーカム43の基端部431には、該インナーカム43を回動させるためのアーム433が突出させてある。
【0041】
第2の刃ユニット5は、図4〜図14に示すように、ハウジング31の案内部371、381に案内されて一定の姿勢を維持しつつ昇降可能な第2のスライド部材51と、この第2のスライド部材51に取り付けられた切込刃52と、この切込刃52に隣接して設けられ用紙Pをパンチ台2方向に押さえるための一対の紙押さえ53とを具備してなる。
【0042】
第2のスライド部材51は、図4〜図14に示すように、下方に向けて開口する中空ブロック状のもので、合成樹脂により作られている。第2のスライド部材51の上面には、ドライブシャフト12を回動可能に保持するシャフト保持部511を備えており、操作レバー6に加えられる操作力がドライブシャフト12を介して第2のスライド部材51に伝達されるようになっている。
【0043】
切込刃52は、ゲタ状をなすスリットからなるカット孔P2を形成するものであって、図2及び図5〜図14に示すように、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られており、第1のスリットP21を形成するための第1のブレード521と、この第1のブレード521の途中から打ち抜き孔P1の方向に延びる第2のスリットP22を形成するための第2のブレード522とを備えている。第1のブレード521は、用紙Pから打ち抜かれた切起片P5を通過させ切起片P5を係わり合わせるための窓523を備えている。
【0044】
紙押さえ53は、図4〜図14に示すように、用紙Pの刃貫通位置付近を押圧してパンチ台2側に押しつけるための固定用押圧子531と、この固定用押圧子531を用紙P方向に弾性付勢する押圧用弾性体である押圧用コイルスプリング532とを備えている。固定用押圧子531は、合成樹脂により一体成形されたものである。固定用押圧子531の最大径は、ハウジング31に設けたボス353の貫通孔354にスライド可能に貫入し得る値に設定されており、前記押圧用コイルスプリング532の最大径と略一致させてある。
【0045】
対をなす刃復帰用コイルスプリング11は、図2及び図4〜図14に示すように、それぞれ一端側を第2のスライド部材51に保持させるとともに、他端側をハウジング31の底壁35に当接させている。
【0046】
操作レバー6は、図1、図2及び図6〜図14に示すように、基端部61に支軸65を有するとともに、先端側に操作部62を備え、支軸65を有する基端部61と操作部62との間にドライブシャフト12を装着したものである。そして、支軸65を本体3のメタルフレーム32における前後案内部326に、回動可能かつ前後移動可能に支持させるとともに、ドライブシャフト12を本体3のメタルフレーム32における上下案内部325に上下移動可能に支持させている。この操作レバー6は、金属製のレバーフレーム63と、このレバーフレーム63の外側に装着されるレバーカバー64とを備えている。レバーフレーム63は、板金素材を折り曲げ加工したもので、天壁66と、この天壁66の両側縁から垂下する側壁67とを備えており、それら両側壁67間に前記支軸65及びドライブシャフト12が取り付けられている。
【0047】
以上説明した綴じ機1は、インナーカム43を抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で、前記切起片P5が窓523に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に、当該インナーカム43を切起片P5が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構7を備えている。
【0048】
挿入部材作動機構7は、図4〜図14に示すように、切込刃52と連動する抜き刃42の貫入方向への動きを利用して前記インナーカム43を正方向に作動させるとともに、抜き刃42の抜き取り方向への動きを利用して前記挿入部材を逆方向に作動させる連動機構部71と、切込刃52と抜き刃42との連動を一時的に解除して、切込刃52が用紙Pに最も深く貫入した最貫入位置(c)から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、抜き刃42を最貫入位置(c)に保持させておくための遅延生成部72とを備えたものである。
【0049】
連動機構部71は、図6及び図9〜図14に示すように、インナーカム43の基端部431から延出させたアーム433と、前記本体3に設けられ抜き刃42が貫入方向に作動した際に前記アーム433に当接してインナーカム43の先端部432を正方向に作動させる係止部材352と、インナーカム43の先端部432を逆方向に作動させるための復帰用弾性部材たるコイルスプリング44とを備えている。換言すれば、この連動機構部71は、インナーカム43のアーム433と、このアーム433に当接して前記インナーカム43を初期姿勢(s)から回動姿勢(r)まで正方向に回動させる前記ハウジング31の底壁35に設けられた係止部材352と、前記アーム433を押圧して前記インナーカム43を回動姿勢(r)から初期姿勢(s)まで逆方向に回動させるインナーカム復帰用のコイルスプリング44とを主体に構成されたものである。
【0050】
遅延生成部72は、図4及び図6〜図14に示すように、抜き刃42を切込刃52に連動させて前記最貫入位置(c)まで作動させるとともに、切込刃52が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、抜き刃42の切込刃52に対する連動を解除する遊動結合要素73と、前記切込刃52が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間、抜き刃42を最貫入位置(c)に保持する保持要素74とを備えたものである。換言すれば、遊動結合要素73は、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた長孔状の貫通孔412と、第2のスライド部材51のシャフト保持部511に設けられた円形状の貫通孔512と、これら貫通孔412、512を貫通するドライブシャフト12とを主体に構成されたものである。保持要素74は、第1のスライド部材41の前面及び後面に設けられた下の係合凹部414と、この係合凹部414に係り合う下の爪部345とを主体に構成されたものである。
【0051】
次いで、この綴じ機1の作動について、図8〜図14を参照して説明する。
【0052】
操作レバー6を操作しない状態では、図8及び図9に示すように、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51がそれぞれ上限位置に位置し、抜き刃42及び切込刃52が元の位置である退避位置(s)にそれぞれ保持されている。インナーカム43は、前記退避位置(s)に保持された抜き刃42内に収容された初期姿勢(s)を保っている。
【0053】
この状態で、重ね合わせた複数枚の用紙Pをパンチ台2の前部分における上向き面と、本体3の前部分における下向き面との間に形成されている用紙挿入用隙間10の奥まで挿入する。
【0054】
そして、操作レバー6を下方に操作すると、この操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12に伝達され、本体3と第2のスライド部材51との間に配された刃復帰用コイルスプリング11の付勢力に抗して第2のスライド部材51が下方に移動させられる。それに伴って、第2のスライド部材51に保持された切込刃52及び紙押さえ53が下方に移動する。
【0055】
なお、ドライブシャフト12が一定距離移動する間(図9から図10に至るまでの間)、前記ラッチ部材34の上の爪部344が第1のスライド部材41の上の係合凹部413に係合した係合状態が保たれるため、第1のスライド部材41は動かない。すなわち、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた貫通孔412が、ドライブシャフト12を上下方向に案内可能なものであり、貫通孔412の一端412aから他端412bまでの寸法がドライブシャフト12の直径よりも大きいので、ドライブシャフト12はこの貫通孔412内で遊動する。したがって、ドライブシャフト12が一端412a側から他端412b側まで一定距離移動するまでの間、操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝わらないことによるものである。
【0056】
前記一定距離を越えて操作レバー6を下方に操作すると、この操作レバー6に加えられた力がドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝達され、本体3と第1のスライド部材41との間に配された弾性部材であるラッチ部材34の付勢力に抗して、上の弾性変形部342が弾性変形し、上の爪部344と第1のスライド部材41の上の係合凹部413との係合状態が解除される。
【0057】
このようにして、ドライブシャフト12が一定距離移動した後は、操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12に伝達され、図10に示すように、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51が下方に移動する。それに伴って、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42が下方に移動するとともに、第2のスライド部材51に保持された切込刃52及び紙押さえ53が下方に移動する。
【0058】
そして、紙押さえ53の固定用押圧子531の先端が用紙Pに接し、この固定用押圧子531が用紙Pを押圧支持し、抜き刃42及び切込刃52を貫通しやすくするべく用紙Pの張りを保持させた後に、抜き刃42及び切込刃52の先端が用紙Pに接する。すなわち、紙押さえ53は、用紙Pのずれや撓みを抑え、用紙Pを張る作用を営む。
【0059】
さらに、第1の刃ユニット4及び第2の刃ユニット5が下方に移動すると、図11に示すように、抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通し、用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2が形成される。その際には、押圧用コイルスプリング532が第2のスライド部材51の下降に伴って圧縮されることになり、固定用押圧子531が、用紙Pに強く押しつけられて用紙Pをパンチプレート22に圧接させることになる。そのため、抜き刃42及び切込刃52が貫入する付近の用紙Pが、紙押さえ53によってしっかり固定された状態、すなわち、用紙Pが紙押さえ53によって張りのある状態のまま穿孔される。なお、パンチプレート22に突出している紙逃がし23の突起231は、用紙Pがパンチプレート22に押しつけられる力によって弾性的に没入する。
【0060】
穿孔後さらに抜き刃42及び切込刃52が下降すると、図12に示すように、前記アーム433と係止部材352との当接によりインナーカム43が回動して切起片P5が押圧され、その切起片P5の先端P51側が切込刃52の窓523に挿入される。この際、本実施形態では、切起片P5が窓523に挿入される際の切起片P5の先端P51と窓523の先端側の縁524との干渉を可及的に少なくしている。具体的には、窓523への切起片P5の挿入時における切起片P5の先端P51と窓523の縁524との接触をなくすか、軽く接触する程度に設定している。そのため、切起片P5に無理な力をかけることなく窓523に挿入することができ、切起片P5の破損や切起片P5の基端P52付近の破れを軽減することができる。
【0061】
また、紙押さえ53により用紙Pを押さえているため、抜き刃42及び切込刃52の下降に伴って用紙Pがパンチプレート22の穿孔部221や通過孔222に引き込まれることを好適に抑制している。このため、用紙Pのばらつきや撓みの発生が抑えられ、切起片P5が適切にインナーカム43により所期の方向に適切に押圧され、切込刃52の窓523に確実に挿入されることになる。
【0062】
以上説明したように、切込刃52は、前記操作レバー6への操作力に比例して退避位置(s)から最貫入位置(c)まで直線的に移動する。抜き刃42は、切込刃52が一定距離移動する間は、移動することなく退避位置(s)に留まり、その後、前記操作レバー6への操作力に比例して退避位置(s)から最貫入位置(c)まで直線的に移動する。また、インナーカム43は、アーム433が前記係止部材352に当接するまでの間は、前記コイルスプリング44の付勢力により初期姿勢(s)を保ち、その後、前記操作レバー6への操作力に比例して初期姿勢(s)から回動姿勢(r)まで正方向に回転移動する。なお、抜き刃42は、前記最貫入位置(c)まで達するまでに、前記第1のスライド部材41が、本体3と第1のスライド部材41との間に配されたラッチ部材34の付勢力に抗して下方に移動するため、下の弾性変形部343が弾性変形し、下の爪部345と第1のスライド部材41の下の係合凹部414とが係合する。
【0063】
次いで、操作レバー6への操作を解除すると、主として刃復帰用コイルスプリング11の付勢力により第2の刃ユニット5が上動して切込刃52が用紙Pから抜き取られるとともに、前記第2の刃ユニット5の上動がドライブシャフト12を介して伝えられる第1の刃ユニット4が前記第1の刃ユニット4に遅れて上動して、抜き刃42が用紙Pから抜き取られる。そして、前記抜き刃42及び切込刃52が、図14に示すように、元の状態である退避位置(s)に戻る。その際、切込刃52の窓523に挿入された切起片P5の先端P51は、用紙Pの一面Pa側に引き出されることになる。
【0064】
抜き刃42及び切込刃52の抜き取り動作について詳述すれば、以下の通りである。すなわち、図12に示す状態から、操作レバー6への操作を解除すると、前記刃復帰用コイルスプリング11の付勢力により第2のスライド部材51が上方に移動させられる。それに伴って、第2のスライド部材51の上端に連結されたドライブシャフト12が上方に移動する。また、この第2のスライド部材51に保持された切込刃52が上方に移動するとともに、第2のスライド部材51に保持された紙押さえ53の押圧用コイルスプリング532の圧縮状態の解放が始まる。
【0065】
なお、ドライブシャフト12が一定距離移動する間(図12から図13に至るまでの間)、前記ラッチ部材34の下の爪部345が第1のスライド部材41の下の係合凹部414に係合した係合状態が保たれるため、第1のスライド部材41は動かない。すなわち、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた貫通孔412が、ドライブシャフト12を上下方向に案内可能なものであり、貫通孔412の一端412aから他端412bまでの寸法がドライブシャフト12の直径よりも大きいので、ドライブシャフト12はこの貫通孔412内で遊動する。したがって、ドライブシャフト12が他端412b側から一端412a側まで一定距離移動するまでの間、第2のスライド部材51に加えられた力が、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝わらないことによるものである。ドライブシャフト12が前記一定距離を越えて上方に移動すると、第2のスライド部材51に加えられた力がドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝達され、本体3と第1のスライド部材41との間に配された弾性部材であるラッチ部材34の付勢力に抗して、下の弾性変形部343が弾性変形し、下の爪部345と第1のスライド部材41の下の係合凹部414との係合状態が解除される。
【0066】
このようにして、ドライブシャフト12が一定距離移動した後は、図13に示すように、第2のスライド部材51に加えられた力が、ドライブシャフト12に伝達され、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51が上方に移動させられる。それに伴って、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42が上方に移動するとともに、第2のスライド部材51に保持された切込刃52及び紙押さえ53が上方に移動する。
【0067】
抜き刃42及び切込刃52が上昇すると、インナーカム43がコイルスプリング44の付勢力により回動姿勢(r)から初期姿勢(s)へと復帰する。その際、切起片P5が窓523に挿入された状態で、インナーカム43の押し出し部435と前記窓523の先端側の縁524とが、同時に切起片P5に当接するタイミングが存在する。すなわち、インナーカム43の押し出し部435によって窓523に挿入された切起片P5は、インナーカム43の押し出し部435によって押圧されてその挿入状態を保っている間に、窓523の先端側の縁524が上昇して、前記挿入状態を保ったまま該窓523の先端側の縁524によって押圧される。そのため、切起片P5の挿入時には、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523との接触を少なくしたにもかかわらず、切起片P5が挿入された後は、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523の縁524とが接触するので、しっかりと綴じられる。すなわち、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523との接触が少ないまま切起片P5が挿入されると、往動作と復動作で対称的な動きを行うインナーカム43を使った場合に切起片P5が打ち抜き孔P1側へ戻ってしまいカット孔P2に切起片P5を通過させられないという問題が生じ得るが、このようなものであれば、切起片P5の先端P51側を窓523内に挿入された状態のままにし、確実にカット孔P2に引き込むことができる。
【0068】
以上説明したように、切込刃52は、前記刃復帰用コイルスプリング11の反発力に比例して最貫入位置(c)から退避位置(s)まで直線的に移動する。抜き刃42は、切込刃52が一定距離移動する間は、移動することなく最貫入位置(c)に留まり、その後、前記刃復帰用コイルスプリング11の反発力に比例して最貫入位置(c)から退避位置(s)まで直線的に移動する。また、インナーカム43は、アーム433と前記係止部材352との当接が解除されるまでの間は前記回動姿勢(r)を保ち、その後、前記刃復帰用コイルスプリング11の反発力に比例して回動姿勢(r)から初期姿勢(s)まで逆方向に回転移動する。なお、抜き刃42は、前記退避位置(s)まで達するまでに、前記第1のスライド部材41が、本体3と第1のスライド部材41との間に配されたラッチ部材34の付勢力に抗して上方に移動するため、上の弾性変形部342が弾性変形し、上の爪部344と第1のスライド部材41の上の係合凹部413とが係合する。
【0069】
<本実施形態の効果>
以上に述べたように、本実施形態にかかる綴じ機1は、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔P1を穿設する抜き刃42と、この抜き刃42に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃52と、これら抜き刃42及び切込刃52を保持する本体3と、この本体3に用紙挿入用隙間10を介して配設されたパンチ台2とを具備してなり、前記本体3に保持された前記抜き刃42と切込刃52とを前記用紙挿入用隙間10に挿入された用紙Pを貫通させてパンチ台2側に切り起こされた切起片P5の先端P51側を前記切込刃52の窓523に係わり合わせた状態で、その切込刃52と前記抜き刃42とを本体3側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片P5を前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pを綴じるようにしたものであって、前記切起片P5を切込刃52の窓523に挿入するためのインナーカム43と、このインナーカム43を抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で前記切起片P5が窓523に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該挿入部材を切起片P5が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構7とを具備してなるので、切起片P5に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙Pを綴じることができる。
【0070】
すなわち、切起片P5に無理な力をかけることなく切起片P5を窓523に挿入するためには、挿入時における切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523の縁524との接触をなくしたり、軽く接触する程度に設定したりすることが考えられる。しかしながら、従来の挿入部材(前述した特許文献中の抜き刃、本実施形態ではインナーカム43に対応する)であると切込刃52の進退方向の動きに連動して正逆方向に回動するので、切込刃52が最貫入位置(c)から抜き取り方向に作動すると同時に挿入部材が逆方向に動いてしまう。そのため、せっかく窓523に挿入した切起片P5が、挿入時の動きと正反対の動きをして窓523から抜け出してしまい、うまく綴じられないという問題があった。本発明者らは、綴じるためのエネルギーを小さくすることと、確実に綴じることとの両立を図るために、さらに探求を進めた結果、従来常識とされていた前記インナーカム43が切込刃52の進退方向の動きに連動して正逆方向に作動するという動きを見直し、切込刃52の動きとインナーカム43の動きとを相互に異ならせることにより前述したジレンマを解消することができることを見いだした。
【0071】
そして、本実施形態においては、挿入部材作動機構7が、抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通した段階で、前記切起片P5が窓523に挿入される正方向にインナーカム43を作動させるとともに、切込刃52が一定距離抜き取り方向に移動した後に、切起片P5が解放される逆方向にインナーカム43を作動させるものであるため、切込刃52における退避位置(s)と最貫入位置(c)との往復動作と、インナーカム43における初期姿勢(s)と回動姿勢(r)との間で行われる回動動作とを相互に異ならせることができる。そのため、インナーカム43の動きを変えることによって従来の問題を解消することができる。
【0072】
本実施形態では、前記挿入部材が、前記抜き刃42に保持されたインナーカム43であるので、抜き刃42の動きにインナーカム43の動きを連動させている。すなわち、本実施形態では、切込刃52における退避位置(s)と最貫入位置(c)との往復動作と、抜き刃42における退避位置(s)と最貫入位置(c)との往復動作とも相互に異ならせているので、刃ユニットを2つに分けて別々に動かすことができる。
【0073】
特に、このような抜き刃42とは別のインナーカム43によって切起片P5を押し出すようにしたいわゆる3ピース構造のものであると、抜き刃42とインナーカム43とを別々の素材で形成することができる。具体的には、抜き刃42は、板金素材で形成する等して刃付け作業に容易に対応でき、なおかつ、剛性を持たせることができる。インナーカム43は、合成樹脂素材で形成する等して、押し出し部435等の複雑な形状にも容易に対応でき、なおかつ、切起片P5を破損することなく押圧し得るものとすることができる。
【0074】
前記挿入部材作動機構7は、切込刃52と連動する抜き刃42の貫入方向への動きを利用して前記インナーカム43を正方向に作動させるとともに、抜き刃42の抜き取り方向への動きを利用して前記インナーカム43を逆方向に作動させる連動機構部71と、切込刃52と抜き刃42との連動を一時的に解除して、切込刃52が用紙Pに最も深く貫入した最貫入位置(c)から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、抜き刃42を最貫入位置(c)に保持させておくための遅延生成部72とを備えたものであるので、抜き刃42及びインナーカム43と、切込刃52とを、操作レバー6への一方向への動作を利用して別々の動きをさせることができる。
【0075】
前記連動機構部71は、インナーカム43の基端部431から延出させたアーム433と、前記本体3に設けられ抜き刃42が貫入方向に作動した際に前記アーム433に当接して、インナーカム43の先端部432を正方向に作動させる係止部材352と、インナーカム43の先端部432を逆方向に作動させるための復帰用コイルスプリング44とを備えているので、操作レバー6の回転動作からドライブシャフト12の直線動作に変換された操作力を用いて、インナーカム43が、初期姿勢(s)から回動姿勢(r)まで正方向への回転動作を行うことができるとともに、ドライブシャフト12の直線動作に変換された刃復帰用スプリングの反発力を用いて、回動姿勢(r)から初期姿勢(s)まで逆方向への回動動作を行うことができる。
【0076】
前記遅延生成部72が、抜き刃42を切込刃52に連動させて前記最貫入位置(c)まで作動させるとともに、切込刃52が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、抜き刃42の切込刃52に対する連動を解除する遊動結合要素73と、前記切込刃52が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間、抜き刃42を最貫入位置(c)に保持する保持要素74とを備えたものであるので、抜き刃42及びインナーカム43と、切込刃52とを、操作レバー6への一方向への動作を利用して連動させたり、別々の動きをさせたり切り換えることができる。特に、本実施形態では遊動結合要素73がシャフト保持部411、511に設けた貫通孔412、512と、これらの貫通孔412、512に挿通されたドライブシャフト12とによって構成されているため、第1の刃ユニット4と第2の刃ユニット5とを連動させることや別々の動きをさせることを簡単な構造で実現できる。
【0077】
本実施形態では、前記切起片P5が、基端領域P54と、この基端領域P54よりも幅の広い先端領域P55とを備えたものであり、前記抜き刃42が、前記基端領域P54を形成するための基端領域形成部421と、前記先端領域P55を形成するための基端領域形成部422とを備えたものであるので、上述した挿入部材作動機構7を備えた綴じ機1の効果がより発揮される。すなわち、先端P51側が膨らんだ異形状をした切起片P5は、切込刃52の窓523に確実に挿入するために、基端領域P54よりも先端領域P55側をインナーカム43で押圧したいという要望がある。そのため、窓523への切起片P5の挿入時に、切起片P5の先端P51及びインナーカム43の先端部432と、切込刃52の窓523の先端側の縁524との接触をできるだけ回避する必要があるが、従来のような切込刃52の動きに連動するインナーカム43であると、せっかく窓523内に挿入した切起片P5が打ち抜き孔P1側に戻ってきてしまい、適切に綴じることができないという問題が生じるが、本実施形態のような挿入部材作動機構7を備えたものであれば、このような問題を解消することができる。
【0078】
また、本実施形態の綴じ機1は、前記抜き刃42と前記切込刃52とを異なったタイミングで移動させることができるように構成したので、切起片P5に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙Pを綴じることのできる綴じ機1を提供するという課題を比較的簡単な構造で解決することができる。
【0079】
<第2実施形態(図15〜図24)>
次に、本発明の第2実施形態について図15〜図24を参照しながら説明する。
【0080】
この綴じ機1は、上述した第1実施形態と同様に、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子Bを作ることができるようにしたものであり、第1実施形態の綴じ機と同一または対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態の綴じ機1は、図15〜図24に示すように、前記刃復帰用コイルスプリング11の他に、抜き刃42を備えた第1の刃ユニット4及び切込刃52を備えた第2の刃ユニット5を穿孔操作前の位置である退避位置(s)に復帰させるための刃復帰用弾性体たる刃復帰補助用コイルスプリング46を備えている。この刃復帰補助用コイルスプリング46は、それぞれ一端側を第1のスライド部材41に対してスライド可能なキャップ部材45に保持させるとともに、他端側をハウジング31の底壁35に当接させている。キャップ部材45は、合成樹脂により作られており、その上面には、ドライブシャフト12を回動可能に保持するシャフト保持部451を備えており、操作レバー6に加えられる操作力がドライブシャフト12を介して貫通孔452を有するキャップ部材45に伝達されるようになっている。すなわち、前記ドライブシャフト12は、対をなす刃復帰用コイルスプリング11と刃復帰補助用コイルスプリング46とによって、バランス良く上方に弾性付勢されるようにしてある。
【0082】
なお、本実施形態の第1のスライド部材41は、図16〜図24に示すように、前記キャップ部材45及び刃復帰補助用コイルスプリング46を挿通させるためのコイル挿通窓を備えている点が第1実施形態のものと異なる。すなわち、この第1のスライド部材41は、前記刃復帰補助用コイルスプリング46によって直接押圧されることはない。
【0083】
また、この第1のスライド部材41の前面及び後面には、図16〜図18に示すように、それぞれ、ラッチ部材34の上の爪部344が係合し得る上の係合凹部413と、ラッチ部材34の下の爪部345が係合し得る下の係合凹部414が設けられているとともに、前記上の係合凹部413の上側に設けられラッチ部材34の上の爪部344が当接し得る上の傾斜部415と、前記下の係合凹部414の下側に設けられラッチ部材34の下の爪部345が当接し得る下の傾斜部416とが設けられている。上の係合凹部413は、主として第1のスライド部材41にドライブシャフト12を挿通させる際に用いられるもので、前記上の爪部344を係合させておくことで、第1のスライド部材41がハウジング31の底壁35付近まで落ち込んでしまうことを抑制する。ドライブシャフト12を挿通させた後は、上の爪部344が上の傾斜部415に係わり合う位置まで第1のスライド部材41を落とし込むようにしてあり、正常な作動時には、上の爪部344が上の傾斜部415よりも常に上に位置するようになっている。すなわち、上の爪部344は、組立時以外には、上の係合凹部413には係合しないように設定してある。なお、本実施形態のラッチ部材34の基端部341には、上下の爪部344、345の弾性変形を助けるための段部346を設けている。
【0084】
また、本実施形態の操作レバー6は、図17及び図18に示すように、天壁66に後述するロック機構13の係合部131を保持するためのフック部661を備えている。換言すれば、操作レバー6と本体3との間には、操作レバー6を所定の位置でロックするためのロック機構13が設けられている。ロック機構13は、操作レバー6に設けられた一方の係合部131を本体3に設けた他方の係合部132に係合させるようにしたものである。一方の係合部131は、例えば、基端を解放したループ状のもので、その基端を操作レバー6の下面側、具体的には前記天壁66に回動可能に懸吊支持されており、フック部661と係合していない時には自重によって垂下できるようになっている。すなわち、一方の係合部131は、通常使用時においては、天壁66に設けられたフック部661に引っ掛けて保持されてぶら下がらないようにしてある。他方の係合部132は、例えば、本体3のハウジング31に設けた鉤状をなすもので、その上面には前記一方の係合部131を案内して係合を促すための案内傾斜面133を備えている。しかして、操作レバー6を本体3に対して所定位置でロックする際には、一方の係合部131をフック部661から外してぶら下がった状態にした後、他方の係合部132に近づけるように操作レバー6を動かせば、案内傾斜面133によって所定の位置にスムーズに案内されることになる。
【0085】
次いで、この綴じ機1の作動について、図19〜図24を参照して説明する。
【0086】
まず、操作レバー6を操作しない状態では、図19に示すように、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51がそれぞれ上限位置に位置し、抜き刃42及び切込刃52が元の位置である退避位置(s)にそれぞれ保持されている。インナーカム43は、前記退避位置(s)に保持された抜き刃42内に収容された初期姿勢(s)を保っている。この際には、ドライブシャフト12は第1のスライド部材41の長孔状をなす貫通孔412の上端、すなわち一端412aに係わり合っており、第1のスライド部材41はこのドライブシャフト12により懸吊支持された状態にある。
【0087】
この状態で、重ね合わせた複数枚の用紙Pをパンチ台2の前部分における上向き面と、本体3の前部分における下向き面との間に形成されている用紙挿入用隙間10の奥まで挿入する。
【0088】
そして、操作レバー6を下方に操作すると、この操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12に伝達され、このドライブシャフト12が刃復帰用コイルスプリング11及び刃復帰補助用コイルスプリング46の付勢力に抗して下方に移動させられる。その結果、抜き刃42を保持した第1のスライド部材41と、切込刃52及び紙押さえ53を保持した第2のスライド部材51が下方に移動する。
【0089】
なお、ドライブシャフト12が一定距離移動する間、第1のスライド部材41は、ドライブシャフト12の動きに伴って下方に移動する。すなわち、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた貫通孔412の上端、すなわち一端412aにドライブシャフト12が係止された状態で、第1のスライド部材41が下方に移動する。なお、第1のスライド部材41が下方に移動する途中で、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42が用紙Pの一面Paに当接すると、この第1のスライド部材41のそれ以上の下方への移動が規制される。そして、ドライブシャフト12はこの貫通孔412内で遊動し、ドライブシャフト12が一端412a側から他端412b側まで一定距離移動するまでの間、操作レバー6に加えられた力は、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝わらない。
【0090】
このようにして、ドライブシャフト12が一定距離移動した後は、操作レバー6に加えられた力が、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部41にも伝達され、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42と、第2のスライド部材に保持された切込刃52が用紙Pに貫入させられる。その際、紙押さえ53の固定用押圧子531の先端が用紙Pに接し、この固定用押圧子531が用紙Pを押圧支持した状態で、図21に示すように、抜き刃42及び切込刃52が用紙Pを貫通し、用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2が形成される。
【0091】
穿孔後さらに抜き刃42及び切込刃52が下降すると、図22に示すように、前記アーム433と係止部材352との当接によりインナーカム43が回動して切起片P5が押圧され、その切起片P5の先端P51側が切込刃52の窓523に挿入される。この際、本実施形態では、切起片P5が窓523に挿入される際の切起片P5の先端P51と窓523の先端側の縁524との干渉を可及的に少なくしている。具体的には、窓523への切起片P5の挿入時における切起片P5の先端P51と窓523の縁524との接触をなくすか、軽く接触する程度に設定している。そのため、切起片P5に無理な力をかけることなく窓523に挿入することができ、切起片P5の破損や切起片P5の基端P52付近の破れを軽減することができる。このようにして、第1のスライド部材41が最も降下した位置に達した段階で、下の爪部345と下の係合凹部414とが係合し、この第1のスライド部材41が最も降下した位置で保持される。すなわち、第1のスライド部材41が最も降下した位置に達する前の段階で、ラッチ部材34が下の傾斜部416の案内作用により一時的に外方に弾性変形し、最終的にこのラッチ部材34の下の爪部345が下の係合凹部414に係合することになる。
【0092】
次いで、操作レバー6への操作を解除すると、刃復帰用コイルスプリング11及び刃復帰補助用コイルスプリング46の付勢力により第2の刃ユニット5及びドライブシャフト12が上動して切込刃52が用紙Pから抜き取られるとともに、第1の刃ユニット4が、前記第2の刃ユニット5に遅れて上動して、抜き刃42が用紙Pから抜き取られる。そして、前記抜き刃42及び切込刃52が、図24に示すように、元の状態である退避位置(s)に戻る。その際、切込刃52の窓523に挿入された切起片P5の先端P51は、用紙Pの一面Pa側に引き出されることになる。
【0093】
抜き刃42及び切込刃52の抜き取り動作について詳述すれば、以下の通りである。すなわち、図22に示す状態から、操作レバー6への操作を解除すると、刃復帰用コイルスプリング11及び刃復帰補助用コイルスプリング46によりドライブシャフト12及び第2のスライド部材51が上方に移動し始める。この移動初期においては、ドライブシャフト12が一定距離移動する間(図22から図23に至るまでの間)、前記ラッチ部材34の下の爪部345が第1のスライド部材41の下の係合凹部414に係合した係合状態が保たれるため、第1のスライド部材41は動かない。すなわち、第1のスライド部材41のシャフト保持部411に設けられた貫通孔412が、ドライブシャフト12を上下方向に案内可能なものであり、貫通孔412の一端412aから他端412bまでの寸法がドライブシャフト12の直径よりも大きいので、ドライブシャフト12はこの貫通孔412内で遊動する。したがって、ドライブシャフト12が下端、すなわち他端412b側から上端、すなわち一端412a側まで一定距離移動するまでの間、第2のスライド部材51に加えられた力が、ドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝わらないことによるものである。ドライブシャフト12が前記一定距離を越えて上方に移動すると、第2のスライド部材51に加えられた力がドライブシャフト12を介して第1のスライド部材41に伝達され、本体3と第1のスライド部材41との間に配された弾性部材であるラッチ部材34の付勢力に抗して、下の弾性変形部343が弾性変形し、下の爪部345と第1のスライド部材41の下の係合凹部414との係合状態が解除される。すなわち、この動作によって、切込刃52を保持した第2のスライド部材51よりも、抜き刃42及びインナーカム43を保持した第1のスライド部材41が遅れたタイミングで抜き方向に作動し始めることになる。
【0094】
このようにして、ドライブシャフト12が一定距離移動した後は、図23に示すように、ドライブシャフト12と第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51が一体となって上方に移動させられる。それに伴って、第1のスライド部材41に保持された抜き刃42が上方に移動するとともに、第2のスライド部材51に保持された切込刃52及び紙押さえ53が上方に移動する。
【0095】
なお、前述した抜き方向の移動初期においては、切込刃52が一定距離抜き方向に移動した後に抜き刃42がインナーカム43とともに抜き方向に移動し始めるため、窓523と切起片P5との接触を少なくしているにもかかわらず、切起片P5の不当な戻りを防止することができ、確実な綴じ状態を実現することができる。詳述すれば、抜き刃42及び切込刃52が上昇すると、インナーカム43がコイルスプリング44の付勢力により回動姿勢(r)から初期姿勢(s)へと復帰する。その際、切起片P5が窓523に挿入された状態で、インナーカム43の押し出し部435と前記窓523の先端側の縁524とが、同時に切起片P5に当接するタイミングが存在する。すなわち、インナーカム43の押し出し部435によって窓523に挿入された切起片P5は、インナーカム43の押し出し部435によって押圧されてその挿入状態を保っている間に、窓523の先端側の縁524が上昇して、前記挿入状態を保ったまま該窓523の先端側の縁524によって押圧される。そのため、切起片P5の挿入時には、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523との接触を少なくしたにもかかわらず、切起片P5が挿入された後は、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523の縁524とが接触するので、しっかりと綴じられる。すなわち、切起片P5の先端P51と切込刃52の窓523との接触が少ないまま切起片P5が挿入されると、往動作と復動作で対称的な動きを行うインナーカム43を使った場合に切起片P5が打ち抜き孔P1側へ戻ってしまいカット孔P2に切起片P5を通過させられないという問題が生じ得るが、このようなものであれば、切起片P5の先端P51側を窓523内に挿入された状態のままにし、確実にカット孔P2に引き込むことができる。
【0096】
<第2実施形態の効果>
本実施形態にかかる綴じ機1は、第1実施形態の綴じ機1と同一またはこれに準ずる効果が得られる。
【0097】
特に、本実施形態の綴じ機1によれば、初期状態で上の爪部344と上の係合凹部413とが係合しておらず、第1の刃ユニット4が上の爪部344の下方に落とし込まれているので、上の爪部344と上の係合凹部413との係合状態を解除するためのエネルギーを加える必要がなくなる。そのため、第1実施形態のものに比べて小さな操作力で操作することができる。
【0098】
また、第1の刃ユニット4側に刃補助用コイルスプリング46が配されているので、ドライブシャフト12をバランス良く上方に引き上げることができる。特に、本実施形態では、左右方向に伸びる1本のドライブシャフト12を3つのコイルスプリング11、46により3点で付勢しているため、第1のスライド部材41及び第2のスライド部材51の左右方向への傾き及び前後方向への傾きを抑制することができる。
【0099】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0100】
<変形例(図25〜図29)>
挿入部材作動機構は、上述したものには限られず、例えば、図25〜図29に模式的に示すようなものであってもよい。すなわち、上述した第1及び第2実施形態では、前記抜き刃と前記切込刃とを異なったタイミングで移動させることができるように構成したものについて説明したが、抜き刃と切込刃を同じタイミングで移動させるものであってもよい。以下、上述した実施形態と同一またはそれに相当する部分には、頭に「A」を付けた同様の符号を付して示すものとし、具体的な説明を省略する。
【0101】
この綴じ機は、抜き刃A42及び切込刃A52の突没方向を前述の実施形態と上下反対にしており、抜き刃A42及び切込刃A52が、図示しない退避位置と最貫入位置(c)との間で常に連動して作動するものである。そして、挿入部材作動機構A7が、切込刃A52と連動する抜き刃A42の貫入方向への動きを利用してインナーカムA43を正方向に作動させるとともに、抜き刃A42の抜き取り方向への動きを利用して前記インナーカムA43を逆方向に作動させる連動機構部A71と、切込刃A52及び抜き刃A42とインナーカムA43との連動を一時的に解除して、切込刃A52及び抜き刃A42が用紙APに最も深く貫入した最貫入位置(c)から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、インナーカムA43を回動姿勢(r)に保持させておくための遅延生成部A72とを備えたものである。
【0102】
前記連動機構部A71は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。前記遅延生成部A72は、抜き刃A42を切込刃A52に連動させて前記最貫入位置(c)まで作動させるとともに、切込刃A52及び抜き刃A42が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、インナーカムA43の切込刃A52及び抜き刃A42に対する連動を解除する遊動結合要素A73と、前記切込刃A52及び抜き刃A42が最貫入位置(c)から一定距離抜き取り方向に移動する間、インナーカムA43を回動姿勢(r)に保持する保持要素A74とを備えたものである。
【0103】
具体的には、遊動結合要素A73は、インナーカムA43が抜き刃A42に対して上下方向に相対移動可能となるように抜き刃A42に設けられた長孔A424と、この長孔A424に対して上下方向にスライド可能なインナーカムA43の軸A434とを主体に構成されたものである。保持要素A74は、本体A3に対して軸A301を介して回動可能に設けられた係合爪の凹部A303と、この凹部A303に係り合うインナーカムA43のアームA433の先端側に設けられたピンA436とを主体に構成されたものである。前記係合爪A30は、軸A301を中心に回動する回動アームA302と、この回動アームA302の先端側に設けられた前記凹部A303とを備えており、この係合爪A30は、回動アームA302が凹部A303の形成側に、すなわち反時計回りに、図示しない付勢手段によって常に付勢されている。
【0104】
このようなものであれば、図示しない操作レバーを操作すると、図25に示すように、抜き刃A42及び切込刃A52が上方に移動して、打ち抜き孔AP1及びカット孔AP2が形成される。穿孔後さらに抜き刃A42及び切込刃A52が上昇すると、前記アームA433と係止部材A352との当接によりインナーカムA43が回動して切起片AP5が押圧され、その切起片AP5の先端側が切込刃A52の窓A523に挿入される。この際、前述の実施形態と同様に、切起片AP5が窓A523に挿入される際の切起片AP5の先端と窓A523の先端側の縁A524との干渉を可及的に少なくしている。本実施形態では、インナーカムA43が図示しない初期姿勢から回動姿勢(r)に至る途上において、図26に示すように、インナーカムA43のアームA433の先端に設けられたピンA436が前記係合爪A30の付勢力に抗して下方に移動する。そして、切込刃A52及び抜き刃A42が最貫入位置(c)に至ると、図27に示すように、前記係合爪A30を付勢する付勢手段の反発力により回動アームA302が元の位置へと戻り、この回動アームA302の先に形成された凹部A303と前記アームA433のピンA436とが係合する。
【0105】
次いで、操作レバーへの操作を解除すると、図示しない刃復帰用コイルスプリング等の付勢力により切込刃A52及び抜き刃A42が下方に移動させられる。切込刃A52及び抜き刃A42が一定距離移動する間、インナーカムA43が、ピンA436と凹部A303との係合状態を保ったまま下方に移動する。そのため、切込刃A52が抜き取り方向へ移動しているにもかかわらず、インナーカムA43は、切起片AP5が窓A523に挿入した状態を保つように、回動姿勢(r)のまま切起片AP5を押圧する。切込刃A52及び抜き刃A42が前記一定距離を超えて下方に移動すると、付勢手段の付勢力に抗して、回動アームA302が時計回りに回動し、ピンA436と凹部A303との係合状態が解除される。このようにして、切込刃A52及び抜き刃A42が一定距離移動した後は、抜き刃A42及び切込刃A52が下方に移動するのに伴って、インナーカムA43が下方に移動しつつ回動姿勢(r)から初期姿勢へと逆方向に回転動作する。
【0106】
このようなものであれば、前記実施形態に準じた効果が得られる。さらに、本変形例のようなものであれば、抜き刃A42と切込刃A52とをユニット化することが可能になり、抜き刃A42及び切込刃A52の退避位置から最貫入位置(c)までのストロークを大きくする必要がなくなる。
【0107】
<その他の変形例>
なお、本発明の挿入部材作動機構は、インナーカムの正逆方向への回動タイミングを変更するために、インナーカムのアームが当接する係止部材が、本体に対して移動可能に取り付けられるものであってもよい。また、正方向または逆方向への動きは、回転動作に限られず、スライド動作等であってもよい。
【0108】
遊動結合要素は、上記実施形態では、第1、第2のスライド部材に設けられた貫通孔と、この貫通孔に挿入されるドライブシャフトとを主体に構成していたが、貫通孔とドライブシャフトは反対でもよい。すなわち、遊動結合要素は、第1、第2のスライド部材に設けられたピンと、このピンが遊動可能に嵌め込まれる本体に設けられた貫通孔や凹部とを備えたものであってもよい。
【0109】
また、インナーカム等の挿入部材以外の部材によっても、前述した実施形態に準じた効果を得ることができる。すなわち、綴じ機が、前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束部材と、この拘束部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で前記切起片が拘束される方向に作動させるとともに切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該拘束部材を切起片が解放される方向に作動させる拘束部材作動機構とを具備してなるものが挙げられる。この挿入部材は、従来通りの動きを行うものであっても、前述した実施形態に準ずる動きを行うものであってもよい。すなわち、従来通りの動きとは、切込刃の進退動作と挿入部材の正方向及び逆方向への動作とを連動させて切込刃の最貫入位置を中心に前後で対称的な動きをさせるものをいい、一方、前述した実施形態に準ずる動きとは、切込刃の進退動作と挿入部材の作動とを連動させない部分を作り、切込刃が抜き取り方向に移動した後に挿入部材を逆方向に作動させるようなものである。
【0110】
拘束部材は、拘束部材作動機構によって、抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で、前記切起片が拘束される方向に作動されるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に、切起片が解放される方向に作動されるものであればどのようなものであってもよく、例えば、切込刃の窓の先端側の縁の位置を変更するために当該窓に取り付けられる部材や、前記挿入部材の役割を果たすインナーカムとは別の抜き刃に取り付けられるインナーカム等であってもよい。すなわち、拘束部材は、切込刃側、抜き刃側、または本体側のいずれに取り付けられたものであってもよい。
【0111】
また、前記抜き刃と前記切込刃とを異なったタイミングで移動させることができるように構成したものの一具体例として、抜き刃を有する第1の刃ユニットと切込刃を有する第2の刃ユニットとを別々の刃ユニットで構成していたが、同一の刃ユニットに取り付けられた抜き刃と切込刃とを異なったタイミングで移動させたり、別々の刃ユニットに取り付けられた抜き刃と切込刃とを互いに異なる操作体によって操作することにより異なったタイミングで移動させるようにしてもよい。
【0112】
綴じ機は、複数の切込刃を備えたものや、複数の抜き刃を備えたものであってもよい。例えば、複数の切起片を形成するための単一の抜き刃と、前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記複数の切 起片を係止可能なカット孔を形成するための単一の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものであってもよい。
【0113】
また、これら切込刃及び抜き刃の突没方向は、上述した実施形態に示すように、切込刃及び抜き刃の突出側を下方とし没入側を上方とするものに限られず、例えば、上下を逆向きにして、切込刃及び抜き刃の突出側を上方とし、没入側を下方として使用することも可能である。さらに、抜き刃及び切込刃の移動方向は、一時的に上方に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものや、左右方向、または斜め方向に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものであってもよい。例えば、上述した実施形態のものと上下を逆にした仕様のものも考えられる。この仕様の綴じ機は、前述した実施形態における「上方」、「下方」、「上昇」、「下降」、「上面」、または「下面」を、それぞれ「下方」、「上方」、「下降」、「上昇」、「下面」、または「上面」と読み替えた構造をなしている。
【0114】
用紙は、シート状であれば、紙製またはプラスチック製等種々変更可能である。また、同質の材料により作られた複数枚のシート体を綴じるようにすれば、分別廃棄の際の手間をより少なくすることができる。
【0115】
刃ユニットは、切込刃、抜き刃、及びインナーカムの3ピース構造のみならず、切込刃及び抜き刃の2ピース構造であってもよい。この際、抜き刃は、穿孔姿勢から回動姿勢までの間で回動可能に設けられ穿孔姿勢において打ち抜き孔を形成し得るものとするのが好ましい。
【0116】
また、本実施形態では、パンチ台を静止させた状態で抜き刃及び切込刃を往復動作させるようにしていたが、これとは逆に、抜き刃及び切込刃を静止させた状態でパンチ台を往復動作させるように構成してもよい。
【0117】
前記実施形態では、操作レバーを手動で操作するものについて説明したが、電動で作動させるものであってもよい。操作レバーは、本実施形態に示した往復回動させるレバーに限らず、例えば一方向に回動させるダイヤル式のものや、直線的に作動させるスライダ式のもの等であってもよい。
【0118】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0119】
P、AP…用紙
P1、AP1…打ち抜き孔
P2、AP2…カット孔
P5、AP5…切起片
P51、AP51…先端
P54…基端領域
P55…先端領域
1…綴じ機
10…用紙挿入用隙間
2…パンチ台
3、A3…本体
352、A352…係止部材
42、A42…抜き刃
421…基端領域形成部
422…基端領域形成部
43、A43…インナーカム
(c)…最貫入位置
431、A431…基端部
432、A432…先端部
433、A433…アーム
52、A52…切込刃
523、A523…窓
7、A7…挿入部材作動機構
71、A71…連動機構部
72、A72…遅延生成部
73、A73…遊動結合要素
74、A74…保持要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通した段階で前記切起片が窓に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該挿入部材を切起片が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構とを具備してなることを特徴とする綴じ機。
【請求項2】
前記挿入部材が、前記抜き刃に保持されたインナーカムである請求項1記載の綴じ機。
【請求項3】
前記挿入部材作動機構が、切込刃と連動する抜き刃の貫入方向への動きを利用して前記挿入部材を正方向に作動させるとともに、抜き刃の抜き取り方向への動きを利用して前記挿入部材を逆方向に作動させる連動機構部と、切込刃と抜き刃との連動を一時的に解除して、切込刃が用紙に最も深く貫入した最貫入位置から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、抜き刃を最貫入位置に保持させておくための遅延生成部とを備えたものである請求項2記載の綴じ機。
【請求項4】
前記連動機構部が、インナーカムの基端部から延出させたアームと、前記本体に設けられ抜き刃が貫入方向に作動した際に前記アームに当接してインナーカムの先端部を正方向に作動させる係止部材と、インナーカムの先端部を逆方向に作動させるための復帰用弾性部材とを備えている請求項3記載の綴じ機。
【請求項5】
前記遅延生成部が、抜き刃を切込刃に連動させて前記最貫入位置まで作動させるとともに、切込刃が最貫入位置から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、抜き刃の切込刃に対する連動を解除する遊動結合要素と、前記切込刃が最貫入位置から一定距離抜き取り方向に移動する間、抜き刃を最貫入位置に保持する保持要素とを備えたものである請求項3または4記載の綴じ機。
【請求項6】
前記切起片が、基端領域と、この基端領域よりも幅の広い先端領域とを備えたものであり、前記抜き刃が、前記基端領域を形成するための基端領域形成部と、前記先端領域を形成するための先端領域形成部とを備えたものである請求項1、2、3、4または5記載の綴じ機。
【請求項7】
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束部材と、この拘束部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で前記切起片が拘束される方向に作動させるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該拘束部材を切起片が解放される方向に作動させる拘束部材作動機構とを具備してなることを特徴とする綴じ機。
【請求項8】
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
前記抜き刃と前記切込刃とを異なったタイミングで移動させることができるように構成した特徴とする綴じ機。
【請求項1】
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通した段階で前記切起片が窓に挿入される正方向に作動させるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該挿入部材を切起片が解放される逆方向に作動させる挿入部材作動機構とを具備してなることを特徴とする綴じ機。
【請求項2】
前記挿入部材が、前記抜き刃に保持されたインナーカムである請求項1記載の綴じ機。
【請求項3】
前記挿入部材作動機構が、切込刃と連動する抜き刃の貫入方向への動きを利用して前記挿入部材を正方向に作動させるとともに、抜き刃の抜き取り方向への動きを利用して前記挿入部材を逆方向に作動させる連動機構部と、切込刃と抜き刃との連動を一時的に解除して、切込刃が用紙に最も深く貫入した最貫入位置から抜き取り方向へ一定距離作動するまで、抜き刃を最貫入位置に保持させておくための遅延生成部とを備えたものである請求項2記載の綴じ機。
【請求項4】
前記連動機構部が、インナーカムの基端部から延出させたアームと、前記本体に設けられ抜き刃が貫入方向に作動した際に前記アームに当接してインナーカムの先端部を正方向に作動させる係止部材と、インナーカムの先端部を逆方向に作動させるための復帰用弾性部材とを備えている請求項3記載の綴じ機。
【請求項5】
前記遅延生成部が、抜き刃を切込刃に連動させて前記最貫入位置まで作動させるとともに、切込刃が最貫入位置から一定距離抜き取り方向に移動する間だけ、抜き刃の切込刃に対する連動を解除する遊動結合要素と、前記切込刃が最貫入位置から一定距離抜き取り方向に移動する間、抜き刃を最貫入位置に保持する保持要素とを備えたものである請求項3または4記載の綴じ機。
【請求項6】
前記切起片が、基端領域と、この基端領域よりも幅の広い先端領域とを備えたものであり、前記抜き刃が、前記基端領域を形成するための基端領域形成部と、前記先端領域を形成するための先端領域形成部とを備えたものである請求項1、2、3、4または5記載の綴じ機。
【請求項7】
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切込刃の窓に挿入された切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束部材と、この拘束部材を抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で前記切起片が拘束される方向に作動させるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に当該拘束部材を切起片が解放される方向に作動させる拘束部材作動機構とを具備してなることを特徴とする綴じ機。
【請求項8】
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持する本体と、この本体に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記本体に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とを本体側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
前記抜き刃と前記切込刃とを異なったタイミングで移動させることができるように構成した特徴とする綴じ機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2013−82167(P2013−82167A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224856(P2011−224856)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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