説明

緊張材の緊張方法

【課題】定着構造の信頼性を向上することができると共に、作業性よく定着構造を構築することができる緊張材の緊張方法、緊張材の緊張装置、及び緊張材の緊張システムを提供する。
【解決手段】一つのアンカーディスク110(定着盤)から突出した複数の緊張材200に、これらの緊張材200を一括して緊張可能なマルチ緊張装置1を配置する。次に、マルチ緊張装置1の後端から突出した緊張材200のうちの1本の緊張材200aに、1本の緊張材のみを緊張可能なシングル緊張装置2をマルチ緊張装置2と直列的に配置する。次に、この緊張材200aをシングル緊張装置2により緊張して緊張材200aの弛みを低減した状態で仮固定する。このシングル緊張装置2による緊張後、マルチ緊張装置1により、複数の緊張材200を同時に緊張して、これらの緊張材200をアンカーディスク110に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の緊張材を緊張して定着構造を構築する際に利用される緊張材の緊張方法、及び緊張材の緊張装置、並びに緊張材の緊張システムに関するものである。特に、定着構造の信頼性と、緊張時の作業性とを向上することができる緊張材の緊張方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラウンドアンカーやPC(プレストレストコンクリート)構造物に用いられるPC鋼材(例えば、PC鋼より線)や、斜張橋のストランドなどの緊張材をPC構造物などに定着する構造として、ウェッジ及びアンカーディスクを用いた構造がある(特許文献1の図11参照)。
【0003】
この定着構造は、図3に示すように、コンクリート構造物100の端面にアンカーディスク110といった定着盤が配置され、アンカーディスク110に設けられた複数の貫通孔110aからそれぞれ突出した各緊張材200の外周に定着用ウェッジ120が配置される。貫通孔110aの一部はテーパ状であり、このテーパ状部分は、定着用ウェッジ120が嵌め込まれるウェッジ孔110bに利用される。これらの緊張材200を同時に緊張することが可能なマルチジャッキ(図示せず、特許文献1の図5〜図10参照)により緊張した後、マルチジャッキの緊張を開放して、定着用ウェッジ120をアンカーディスク110のウェッジ孔110bに嵌め込む。上記工程により、所定の緊張荷重が付された緊張材200がアンカーディスク110に定着され、定着構造が構築される。
【0004】
緊張装置は、上記マルチジャッキの他、1本の緊張材のみを緊張可能なシングルジャッキがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-077798号公報
【特許文献2】特開2004-162351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような一つの定着盤に複数の緊張材を定着した定着構造において、緊張後の各緊張材に導入されている緊張荷重(導入張力)のばらつきを無くすことで、当該定着構造の信頼性を高められる。
【0007】
上記ばらつきの一要因として、例えば、マルチジャッキによる緊張前において、定着盤とマルチジャッキとの間に配されている緊張材の少なくとも1本が弛んでいることで、定着盤とマルチジャッキとの間に配されている緊張材の長さが異なっていることが考えられる。そのため、マルチジャッキにより同時に複数の緊張材を緊張すると、弛んでいる緊張材には、所定の緊張荷重が与えられなくなり、導入張力にばらつきが生じると考えられる。特に、定着構造に具えられる緊張材の長さが短い場合は、長い場合と比較して上記弛みによる導入張力差が大きくなり易い。
【0008】
上記弛みを除去するために、マルチジャッキにより緊張する前に、例えば、チェーンブロックを利用して各緊張材を引っ張ることが考えられる。しかし、この場合、作業者の負担が大きい上に作業性が悪い。また、この場合、緊張材の導入張力を計測することが困難であるため、弛みを十分に低減或いは除去することができず、導入張力を均一にできない恐れがある。
【0009】
そこで、本発明の目的の一つは、複数の緊張材を具える定着構造の信頼性を高められると共に、この定着構造を構築する際の作業性に優れる緊張材の緊張方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記緊張方法を実施する際に好適に利用することができる緊張材の緊張装置、及び緊張材の緊張システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
マルチジャッキではなく、シングルジャッキのみを用いて、緊張材を1本ずつ緊張すれば、全ての緊張材の導入張力を容易に把握できる上に、導入張力のばらつきを低減できると考えられる。しかし、複数の緊張材が平行に配置されていない場合、例えば、定着盤により緊張材間の隙間が広げられて緊張材に屈曲箇所が生じていたり、配置状態により偏向部が存在する場合、所定の導入張力を付与するための最終荷重までシングルジャッキにより緊張すると、引っ張っている緊張材と引っ張られていない状態にある緊張材とが擦れ合って、この摩擦力により、緊張中の緊張材に所定の導入張力を付与できなかったり、緊張材を損傷したりする恐れがある。そのため、シングルジャッキのみの使用は好ましくない。
【0011】
そこで、マルチジャッキとシングルジャッキとの双方を利用することを検討した。具体的には、弛みを低減できる程度の比較的小さな力でシングルジャッキにより引っ張って弛みを除去した後、シングルジャッキをマルチジャッキに取り替えて、マルチジャッキにより最終荷重まで緊張することを検討した。ここで、シングルジャッキ及びマルチジャッキにおいて緊張材の把持は、いずれもウェッジを用いて行われる(特許文献1,2)。従って、緊張材においてシングルジャッキのウェッジが把持していた箇所を、再度マルチジャッキのウェッジにより把持することで、当該把持箇所の樹脂被覆が損傷するなど、緊張材が損傷する恐れがある。このような損傷により、マルチジャッキのウェッジが緊張材を適切に把持できず、緊張材に所定の緊張荷重を十分に付与できない恐れがある。
【0012】
そこで、本発明では、マルチジャッキ及びシングルジャッキを直列的に配置して両者を併用することで、上記目的を達成する。具体的には、本発明の緊張材の緊張方法は、一つの定着盤から突出した複数の緊張材に所定の緊張荷重を付した状態で上記定着盤に定着するときに上記緊張材を緊張するための緊張方法に係るものであり、以下の工程を具える。
(1) 上記定着盤から突出した緊張材にマルチ緊張装置を配置する工程
上記マルチ緊張装置は、複数の緊張材を一定の緊張力で一括して緊張可能なものとする。
(2) 上記マルチ緊張装置の後端から突出した個々の緊張材に、シングル緊張装置を配置してこの緊張材を緊張し、各緊張材の弛みを低減した状態で仮固定する工程
上記シングル緊張装置は、1本の緊張材のみを把持して緊張可能なものとする。
(3) 上記シングル緊張装置による緊張後、上記マルチ緊張装置により、上記定着盤から突出した複数の緊張材を同時に緊張して、これらの緊張材を上記定着盤に固定する工程
【0013】
本発明緊張方法は、上述のようにシングル緊張装置により、緊張材の弛みを低減し、マルチ緊張装置により、定着構造に望まれる所定の緊張荷重を緊張材に付与する。上記構成によれば、シングル緊張装置により弛みを低減し、或いは弛みを無くし、この状態を保持してマルチ緊張装置による緊張を行うことで、マルチ緊張装置による緊張前において、定着盤とマルチ緊張装置との間に存在する複数の緊張材の長さのばらつきを低減し、当該長さを揃えられる。そのため、マルチ緊張装置により複数の緊張材を同時に緊張したとき、これらの緊張材は、実質的に同一な緊張力により緊張され、所定の緊張荷重が均一的に付された状態で定着することができる。従って、本発明緊張方法を用いることで、緊張荷重のばらつきが少なく、かつ所定の緊張荷重が付された状態の定着構造を提供することができ、この定着構造は信頼性が高いと期待される。かつ、本発明緊張方法によれば、シングル緊張装置を利用することで、チェーンブロックなどを利用した場合と比較して、緊張材を容易に引っ張ることができるため、緊張材の弛みを容易に低減できる上に、作業者の負担が少なく、作業性に優れる。また、本発明緊張方法によれば、マルチ緊張装置とシングル緊張装置とを直列的に配置することで、緊張材においてマルチ緊張装置に把持される箇所とシングル緊張装置により把持される箇所を異ならせることができ、緊張材を損傷させる可能性を低減することができる。更に、本発明緊張方法によれば、シングル緊張装置による緊張は、弛みを低減する程度の緊張力で行うため、この緊張により、緊張材を損傷し難い。
【0014】
本発明緊張方法の一実施形態として、上記シングル緊張装置を上記マルチ緊張装置の後端から所定の距離だけ離して配置する形態が挙げられる。この場合、上記マルチ緊張装置の後端には、上記シングル緊張装置の緊張時の緊張力の反力を受ける支圧部材を配置する。また、上記シングル緊張装置における上記定着盤側の端面と上記支圧部材との間における緊張材の外周に、円筒部材または当該シングル緊張装置の端面よりも小さい断面部分を有する筒状の伝達部材を配置する。このような伝達部材を利用して、上記シングル緊張装置により緊張している緊張材に隣接する緊張材に干渉することなく、当該シングル緊張装置の緊張時の緊張力を、当該伝達部材を介して上記支圧部材に伝達する。
【0015】
上記マルチ緊張装置の後端から突出した複数の緊張材同士の間隔が狭い場合、この後端の直後にシングル緊張装置を配置して、緊張材を緊張することが難しい。そこで、マルチ緊張装置の後端とシングル緊張装置との間に、シングル緊張装置が十分に配置可能な距離をあけて、シングル緊張装置を配置する。そして、マルチ緊張装置に支持される緊張材に、上記離れて配置されたシングル緊張装置の緊張力を十分に伝えられるように、上記伝達部材を利用する。この構成により、マルチ緊張装置の後端にシングル緊張装置を容易に配置することができる上に、マルチ緊張装置の後端から突出した他の緊張材に邪魔されることなく、シングル緊張装置により緊張材を緊張して、弛みの低減を行うことができる。
【0016】
上記マルチ緊張装置は、上記シングル緊張装置により緊張される緊張材を把持する緊張用ウェッジと、この緊張用ウェッジが嵌め込まれるウェッジ孔とを具えたものが挙げられる。また、上記伝達部材を具える形態である場合、上記伝達部材の内周に、上記緊張用ウェッジを上記ウェッジ孔に押圧する筒状の押圧部材を配置し、上記シングル緊張装置による仮固定は、上記緊張用ウェッジを上記押圧部材により上記ウェッジ孔に押圧することで行う形態が挙げられる。
【0017】
上記形態では、マルチ緊張装置に具える緊張用ウェッジ及びウェッジ孔を上記シングル緊張装置による仮固定にも利用することで、部品点数を増加する必要がない。また、既存のマルチ緊張装置をほぼそのまま利用することができる。
【0018】
本発明緊張方法において、上記シングル緊張装置による緊張時の緊張力は、上記マルチ緊張装置による緊張時の緊張力よりも小さくすることができる。
【0019】
緊張材の弛みの低減に必要とされる緊張力は、定着構造に望まれる所定の緊張荷重を緊張材に付与するために必要な緊張力よりも小さくてよいと考えられる。そのため、シングル緊張装置による緊張時の緊張力は、マルチ緊張装置による緊張時の緊張力よりも小さくすることができ、シングル緊張装置として、小型なものが利用できる。
【0020】
本発明緊張方法により緊張される対象となる緊張材は、例えば、PC鋼材、特に、裸PC鋼より線、メッキPC鋼より線、樹脂被覆PC鋼より線、及びアンボンドPC鋼より線のいずれかが挙げられる。
【0021】
PC鋼材は、繊維含有樹脂による緊張材と比較して強度が高く、ウェッジにより強固に把持できると共に、この把持により、PC鋼材が割れたりすることが無い。
【0022】
上記本発明緊張方法の実施には、後述する本発明緊張材の緊張装置、及びこの緊張装置を具える本発明緊張材の緊張システムを好適に利用することができる。
【0023】
本発明の緊張材の緊張装置は、一つの定着盤から突出した複数の緊張材に所定の緊張荷重を付した状態で上記定着盤に定着するときに上記緊張材を緊張するための緊張装置に係るものであり、当該緊張装置(以下、マルチ緊張装置と呼ぶ)の後端に配置される支圧部材の位置決めを行う位置決め部を有する。この支圧部材は、当該マルチ緊張装置の後端から突出した個々の緊張材に、1本の緊張材のみを把持して緊張可能なシングル緊張装置が取り付けられて緊張するとき、このシングル緊張装置の緊張時の緊張力の反力を受ける部材である。
【0024】
上記構成によれば、上記マルチ緊張装置に支圧部材を容易に位置決めすることができる上に、支圧部材を容易に配置することができ、作業性がよい。
【0025】
本発明の緊張材の緊張システムは、上記マルチ緊張装置と、上記支圧部材と、上記支圧部材と上記マルチ緊張装置の後端に配置された上記シングル緊張装置との間における緊張材の外周に配置される筒状の伝達部材と、この伝達部材の内周に配置される筒状の押圧部材とを具える。上記マルチ緊張装置は、上記シングル緊張装置により緊張される緊張材を把持する緊張用ウェッジと、この緊張用ウェッジが嵌め込まれるウェッジ孔とを具える。上記伝達部材は、円筒部材または上記シングル緊張装置の上記定着盤側の端面よりも小さい断面部分を有する部材であり、当該シングル緊張装置により緊張している緊張材に隣接する緊張材に干渉することなく、当該シングル緊張装置の緊張時の緊張力を上記支圧部材に伝達する。上記押圧部材は、上記シングル緊張装置の緊張時に上記緊張用ウェッジを上記ウェッジ孔に押圧する部材である。
【0026】
上記構成によれば、上記本発明緊張装置の後端から突出する複数の緊張材が密集している場合でも、上記シングル緊張装置を当該後端から離して配置し、かつ伝達部材により、シングル緊張装置の緊張時の緊張力を緊張材に適切に伝達でき、押圧部材により、この緊張力による緊張荷重が付与された状態を仮固定することができる。そのため、緊張材の弛みを低減することができ、上記本発明緊張装置により緊張するとき、複数の緊張材に対して一定の緊張荷重を均一的に付与することができる。従って、上記本発明システムを利用することで、複数の緊張材の導入張力が均一的な定着構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明緊張材の緊張方法によれば、複数の緊張材を定着盤に定着した定着構造の信頼性を高められると共に、この定着構造を作業性よく構築することができる。本発明緊張材の緊張装置及び本発明緊張材の緊張システムによれば、上記本発明緊張方法の実施に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の緊張材の緊張方法の手順を説明する説明図である。
【図2】図2は、シングル緊張装置により緊張材を緊張する状態を説明する説明図である。
【図3】図3は、複数の緊張材が一つの定着盤に定着された定着構造の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。ここでは、コンクリート構造物にPC鋼材を定着する場合を例にして、定着構造をまず説明し、次に、この構造を構築する際の緊張時に利用する緊張システム、更に、緊張手順を説明する。以下、図において同一符号は同一物を示す。
【0030】
<定着構造>
この定着構造は、図3に示すようにコンクリート構造物100の内部に複数の緊張材200が挿通され、この構造物100の端面から突出するこれらの緊張材200の端部をアンカーディスク110(定着盤)を用いて定着する構造である。より具体的には、コンクリート構造物100の内部に複数の緊張材200がほぼ平行に配置され、これら緊張材200の外周は、筒状の内トランペット130及び外トランペット131、上記構造物100の端面側に配置された概略円錐台状の筒状のリブキャストアンカー132により覆われている。リブキャストアンカー132上に、アンカーディスク110が配置される。アンカーディスク110は、十分な厚みを有する円盤状の部材であり、各緊張材200が挿通される複数の貫通孔110aを有する。貫通孔110aの中間部から一方の開口部(コンクリート構造物100から離れた側の開口部)に向かってテーパ状に形成されている。このテーパ状部分は、緊張材200を把持する定着用ウェッジ120が嵌め込まれるウェッジ孔110bに利用される。
【0031】
各緊張材200は、後述する緊張装置により所定の緊張荷重が導入された状態であり、これらの緊張材200の端部がそれぞれ定着用ウェッジ120により把持され、これらの定着用ウェッジ120がそれぞれ、アンカーディスク110のウェッジ孔110bに嵌め込まれることで、上記導入された緊張荷重が保持されている。これらの緊張材200の緊張荷重は、リブキャストアンカー132を介してコンクリート構造物100に伝達される。図3では緊張材200の一端側の定着構造のみを示しているが、図示しない他端側も別途コンクリート構造物100の端面に定着されている。
【0032】
[緊張材]
緊張材200は、緊張状態で、その端部がコンクリート構造物100の端面に定着されることで、導入された緊張荷重をプレストレスとしてコンクリートに付与する部材である。ここでは、緊張材200として、PC鋼より線を利用している。このPC鋼撚り線は、複数本のPC鋼線を撚り合せて、その外周を樹脂被覆した被覆PC鋼より線である。その他、緊張材は、上記樹脂被覆を具えていない裸PC鋼より線、PC鋼線の外周にメッキを具えるメッキPC鋼線を撚り合せたメッキPC鋼より線、或いは単一のPC鋼線やPC鋼棒などを利用することができる。
【0033】
[定着用ウェッジ]
定着用ウェッジ120は、複数の分割片を組み合わせることで円錐台状に形成される組物である。これら分割片を組み合わせた組物の中心部には、この組物の軸方向に伸びる円孔が形成される。この円孔内にて緊張材200が把持される。各分割片の内側には、緊張材200を強固に把持できるよう、凹凸面が構成されている。通常、分割片の数は、2〜3程度である。これらの分割片は、例えば、定着用ウェッジの外周にOリングを嵌め込んで拘束すると、ばらばらにならない。後述する緊張用ウェッジ10及び小引張用ウェッジ20も、定着用ウェッジ120と同様の構成である。
【0034】
<緊張システム>
図1は、定着盤から突出した複数の緊張材を緊張するときの緊張手順の説明図であり、(A)は、緊張前の状態、(B)は、マルチ緊張装置を配置する前の状態、(C)は、マルチ緊張装置を配置する状態、(D)は、マルチ緊張装置の後端にシングル緊張装置を配置した状態を示し、図2は、シングル緊張装置により緊張材を緊張する状態の説明図である。図2では、分かり易いように緊張材及び貫通孔の数を少なくした状態で示す。PC鋼より線の緊張作業には、マルチ緊張装置1とシングル緊張装置2とを具える緊張システムを利用する。
【0035】
《マルチ緊張装置》
マルチ緊張装置1は、複数の緊張材200を一定の緊張力で一括して緊張可能な装置である。具体的には、複数の緊張材200を緊張用ウェッジ10により把持して緊張する緊張用ジャッキ部(図示せず)と、緊張用ジャッキ部に直列的に配置され、一定の力で一括して複数の定着用ウェッジ120をアンカーディスク110側に押し込む定着用ジャッキ部(図示せず)とを具える。マルチ緊張装置1が緊張材200に取り付けられたときに定着用ジャッキ部がアンカーディスク110側(マルチ緊張装置1の先端側)、緊張用ジャッキ部が緊張材200の端部側(マルチ緊張装置1の後端側)となるように、両ジャッキ部がマルチ緊張装置1に内蔵されている。マルチ緊張装置1においてアンカーディスク110側(図1では左側)に配される端面15には、各緊張材200がそれぞれ挿通される複数の挿通孔16が設けられている。これらの挿通孔16にそれぞれ挿通された各緊張材200の中間部は、平行した状態でマルチ緊張装置1の内部に挿通配置され、各緊張材200の端部は、マルチ緊張装置1の後端から突出される。マルチ緊張装置1の後端には、ディスク部11を具える。ディスク部11には、複数の緊張材200がそれぞれ挿通される複数の貫通孔11aを有する。貫通孔11aの中間部から一方の開口部(後端側の開口部)に向かってテーパ状に形成され、このテーパ状部分は、緊張材200を把持する緊張用ウェッジ10が嵌め込まれるウェッジ孔11bに利用される。上述したマルチ緊張装置1の基本的な構成は、公知のマルチジャッキ、例えば、特許文献1に開示されているジャッキと同様であり、既存のマルチジャッキをほぼそのまま利用することができる。
【0036】
また、マルチ緊張装置1は、定着用ジャッキ部に、複数の定着用ウェッジ120を一括してアンカーディスク110側に押し込む定着用押圧板(図示せず)を有する。定着用押圧板を内蔵していない構成でもよい。
【0037】
更に、マルチ緊張装置1は、図2に示すようにディスク部11に、後述する支圧部材30の位置決めを行う位置決め部11cを有する。ここでは、位置決め部11cは、断面]状の支圧部材30の凹み部分(凹部30b)が嵌め込まれる円盤状の凸状体としている。その他、位置決め部は、マーキングによるもの、支圧部材を固定するネジなどの固定部材用穴、支圧部材に設けられた突出部が嵌め込まれる凹部、支圧部材の外形に沿って配置された複数の突起など、種々の形態のものが利用できる。
【0038】
《シングル緊張装置》
シングル緊張装置2は、1本の緊張材200のみを把持して緊張可能な装置であり、1本の緊張材200を小引張用ウェッジ20により把持して緊張する小引張用ジャッキ部(図示せず)と、小引張用ジャッキ部と直列的に配置され、緊張用ウェッジ10をディスク部11に押し込む仮固定用ジャッキ部(図示せず)とを具える。シングル緊張装置2が緊張材200に取り付けられたときに仮固定用ジャッキ部がアンカーディスク110側(シングル緊張装置2の先端側)、小引張用ジャッキ部が緊張材200の端部側(シングル緊張装置2の後端側)となるように、両ジャッキ部がシングル緊張装置2に内蔵されている。シングル緊張装置2の内部には、1本の緊張材200の中間部が挿通配置され、緊張材200の端部がシングル緊張装置2の後端から突出される。上述したシングル緊張装置2の基本的な構成は、公知のシングルジャッキ、例えば、特許文献2に開示されている緊張装置と同様であり、既存のシングルジャッキをほぼそのまま利用することができる。
【0039】
また、シングル緊張装置2は、その先端に、図2に示すように、後述するアタッチメント31(伝達部材)と、圧入ラム32(押圧部材)とが取り付けられる取付部21を有する。取付部21は、アタッチメント31の一端側に設けられた凸部31cが嵌め込まれる凹部21aと、圧入ラム32が嵌め込まれるラム用孔21bとを具える。シングル緊張装置2は、これらアタッチメント31と圧入ラム32とが先端に取り付けられ、これらアタッチメント31及び圧入ラム32を利用して、緊張用ウェッジ10をディスク部11に押圧する。
【0040】
[支圧部材]
支圧部材30は、断面]状の円盤状の部材であり、複数の緊張材200がそれぞれ挿通される複数の挿通孔30aを具え、一面側に円筒状の凹部30bが設けられ、凹部30bの内周の縁側部分がマルチ緊張装置1の位置決め部11cに嵌め込まれることで、マルチ緊張装置1に位置決めされる。この支圧部材30は、上記シングル緊張装置2により緊張材200を緊張するときの緊張力の反力を受ける。従って、この反力に十分耐え得る材料、例えば炭素鋼により形成される。支圧部材30をマルチ緊張装置1の後端のディスク部11に装着したとき、ディスク部11の後端面と、凹部30bの内端面との間に、緊張用ウェッジ10の高さ(軸方向の長さ)よりも小さいギャップが形成されるように、凹部30bの深さを調整することが好ましい。この場合、ディスク部11の後端面と凹部30bの内端面との間につくられる空間に緊張用ウェッジ10が抜け落ちることを防止できる。
【0041】
[アタッチメント]
アタッチメント31は、シングル緊張装置2により緊張している緊張材(以下、この緊張材を緊張材200aと表記する)に隣接する他の緊張材200に干渉することなく、シングル緊張装置2の緊張時の緊張力を支圧部材30に伝達するために利用される部材である。具体的には、円筒状の部材であり、その一端側は、シングル緊張装置2における先端側の端面と同程度の断面を有する太径部31aであり、その他端側は、上記先端側の端面よりも小さい断面を有する細径部31bである。太径部31aの端部側は、中央部分が突出した段差形状になっており、この凸部31cがシングル緊張装置2の取付部21の凹部21aに嵌め込まれることで、アタッチメント31は、シングル緊張装置2に位置決めされると共に取り付けられる。太径部31a及び細径部31bの断面及び長さはシングル緊張装置2による緊張材200aの緊張時、緊張材200aの周囲に存在する他の緊張材200に邪魔されずに緊張力を支圧部材30に伝達できる範囲で、適宜選択することができる。また、アタッチメント31は、上記緊張力の伝達に十分耐え得る材料、例えば炭素鋼により形成されている。
【0042】
[圧入ラム]
圧入ラム32は、シングル緊張装置2の仮固定用ジャッキ部により、緊張用ウェッジ10をディスク部11のウェッジ孔11bに押圧するときに、緊張用ウェッジ10を直接押圧する部材である。具体的には、一様な断面を有する円筒状の部材であり、アタッチメント31の内周に配置されると共に、一端側は、シングル緊張装置2の取付部21のラム用孔21bに嵌め込まれ、他端側は、支圧部材30の挿通孔30aに挿通され、この他端側の端面により緊張用ウェッジ10を押圧する。従って、圧入ラム32は、この押圧力に十分耐え得る材料、例えば炭素鋼により形成されている。
【0043】
ここでは、アタッチメント31及び圧入ラム32の双方が、シングル緊張装置2と別部材であり、着脱自在な構成を説明したが、アタッチメント及び圧入ラムのうち少なくとも一方がシングル緊張装置に一体の構成とすることができる。別部材である場合、アタッチメント及び圧入ラムの付け替えが可能であり、多様な状況に対応し易く、シングル緊張装置に一体化されている場合、別部材を配置する手間を省くことができる。
【0044】
<緊張手順>
以下、主として図1を参照して、緊張手順を説明する。上述のようにコンクリート構造物100に配置されたアンカーディスク110から突出した複数の緊張材200のそれぞれの外周に定着用ウェッジ120を配置する(図1(A))。次に、これらの緊張材200にマルチ緊張装置1を配置する。ここでは、まず、これらの緊張材200が交差などしていないことを確認する。具体的には、各緊張材200がそれぞれ挿通可能な複数の挿通孔51を具える円板状の確認用プレート50を用いて確認する。この確認用プレート50を緊張材200の端部から挿通し、アンカーディスク110側に向かって移動させることにより(図1(B))、各緊張材200が平行状態にあるかどうかを容易に確認できる。確認後、確認用プレート50をアンカーディスク110側に寄せておく。確認用プレート50は、特許文献1に記載されるプレートを利用することができる。確認用プレートを用いず、例えば、目視などにより確認してもよい。
【0045】
マルチ緊張装置1を適宜な吊り具などで吊り上げて、マルチ緊張装置1の軸と緊張材200のつくる群の軸とが一致するように、先端側の端面15に設けられた挿通孔16と確認用プレート50の挿通孔51とが合うように、マルチ緊張装置1の位置を調整する。このマルチ緊張装置1には予め迎え棒17を挿入しておき、マルチ緊張装置1の先端側から迎え棒17を緊張材200の端部側に引き出し、各緊張材200の端部にそれぞれ各迎え棒17の先端キャップ17aを被せて連結する(図1(C))。ここでは、先端キャップ17aを具える迎え棒17を利用したが、ガイドパイプを利用してもよい。迎え棒やガイドパイプを利用することで、マルチ緊張装置1の内部に複数の緊張材200を平行状態に容易に挿通配置することができる。また、図1に示すように緊張材200の長さが揃っておらず、緊張材200の端部の位置がずれていても、全ての緊張材200をマルチ緊張装置1の内部に容易に挿入配置することができる。
【0046】
マルチ緊張装置1を迎え棒17及び迎え棒17に連結された緊張材200に沿って、アンカーディスク110側に移動させ、マルチ緊張装置1の端面15がアンカーディスク110に接するように配置し(図1(D))、迎え棒17を取り外す。マルチ緊張装置1の端面15とアンカーディスク110との間がある程度狭くなった時点で確認用プレート50を移動させて、再度、緊張材200が交差していないかを確認してもよい。ここでは、マルチ緊張装置1の端面15とアンカーディスク110に嵌め込まれた定着用ウェッジ120との間に確認用プレート50が介在される。
【0047】
次に、図1(D)に示すように、マルチ緊張装置1の後端のディスク部11から突出した各緊張材200のそれぞれの外周に緊張用ウェッジ10を配置した後、各緊張材200を支圧部材30の挿通孔30a(図2)に挿通すると共に、支圧部材30の凹部30bをディスク部11の位置決め部11cに嵌め込む。この工程により、マルチ緊張装置1の後端に支圧部材30が配置される。
【0048】
そして、支圧部材30から突出した複数の緊張材200のうちの任意の1本の緊張材200aにアタッチメント31及び圧入ラム32を挿通し、更に、シングル緊張装置2を挿通する。より具体的には、アタッチメント31の一端側及び圧入ラム32の一端側をシングル緊張装置2の先端側の取付部21に取り付け、アタッチメント31の他端側の端面が支圧部材30に接し、かつ圧入ラム32の他端側の端面が緊張材200aに配置された緊張用ウェッジ10に接するように、シングル緊張装置2及びアタッチメント31並びに圧入ラム32を配置する(図1(D)及び図2)。シングル緊張装置2の内部に挿通された緊張材200aは、小引張用ウェッジ20により把持される。
【0049】
上記工程により、マルチ緊張装置1の後端に、所定の距離だけ離れてシングル緊張装置2が直列的に配置された状態となる。また、シングル緊張装置2におけるアンカーディスク110側(先端側)の端面と支圧部材30との間における緊張材200aの外周にアタッチメント31が存在し、上記端面と緊張用ウェッジ10との間の緊張材200aの外周に圧入ラム32が存在する状態となる。
【0050】
上述のようにマルチ緊張装置1及びシングル緊張装置2を配置したら、シングル緊張装置2の小引張用ジャッキ部により、緊張材200aを緊張する。このときの緊張力は、緊張材200aに弛みが生じている場合にこの弛みを除去できる程度の比較的小さな力でよい(例えば、2〜3ton)。また、この緊張力は、アタッチメント31を介して支圧部材30に伝えられ、支圧部材30は、この緊張力の反力を受ける。上記緊張後、小引張用ジャッキ部の緊張を開放して小引張用ウェッジ20を緊張材200aに噛み込ませて、緊張状態を固定する。更に、仮固定用ジャッキ部により、圧入ラム32を介して緊張用ウェッジ10をマルチ緊張装置1のディスク部11に押圧し、上記弛みを低減した状態を仮固定する。
【0051】
上述のように緊張材200aの仮固定が終わったら、シングル緊張装置2及びアタッチメント31並びに圧入ラム32を取り外し、別の緊張材200に上述のようにしてシングル緊張装置2及びアタッチメント31並びに圧入ラム32を配置し、シングル緊張装置2による緊張を同様に行う。マルチ緊張装置1から突出した全ての緊張材200の仮固定が終わるまで、上記工程を繰り返す。なお、ここでは、一つのシングル緊張装置2を利用する例を説明したが、シングル緊張装置2を複数(例えば、2〜3個)用意し、複数の緊張材のそれぞれにシングル緊張装置2を配置して、複数の緊張材の弛みを同時に、或いは順次低減するようにしてもよい。また、シングル緊張装置2による緊張及び仮固定は、弛んでいそうな緊張材のみを選択して行ってもよい。
【0052】
上記工程により、マルチ緊張装置1を配置した段階では弛んだ緊張材が存在したとしても、その弛みが低減、或いは完全に除去され、マルチ緊張装置1の各緊張用ウェッジ10に把持された緊張材200はいずれも、弛みを実質的に有しておらず、シングル緊張装置2による緊張荷重が付与された状態である。この緊張荷重は、定着構造に望まれる所定の緊張荷重よりも小さい。
【0053】
次に、上記仮固定された状態で緊張用ウェッジ10により把持された複数の緊張材200をマルチ緊張装置1の緊張用ジャッキ部により、一定の緊張力で一括して緊張する。このときの緊張力は、定着構造に所望される緊張荷重が緊張材200に付与されるような大きさとし、上記シングル緊張装置2による緊張力よりも大きくする(例えば、15〜16ton)。
【0054】
上記緊張後、マルチ緊張装置1の緊張用ジャッキ部の緊張を開放し、マルチ緊張装置1の定着用ジャッキ部により、緊張材200をアンカーディスク110に定着する。具体的には、定着用ウェッジ120を定着用押圧板により押圧し、定着用ウェッジ120をアンカーディスク110のウェッジ孔110bに嵌め込む。ここでは、複数の定着用ウェッジ120の端面は、確認用プレート50により揃えられた状態で定着用押圧板により押圧することできるため、各定着用ウェッジ120を均一的に押圧することができる。
【0055】
マルチ緊張装置1による押圧後、マルチ緊張装置1を緊張材200から取り外し、緊張材200の余長を適宜切断し、アンカーディスク110にキャップ140(図3)を被せる。上記工程により定着構造が構築される。
【0056】
<効果>
上述のようにマルチ緊張装置1による緊張前に、マルチ緊張装置1の後端にシングル緊張装置2を直列的に配置して、シングル緊張装置2により緊張材200を引っ張って弛みを低減した状態とし、この状態でマルチ緊張装置1による緊張を行うことで、この緊張後の各緊張材200の導入張力のばらつきを低減することができる。そのため、この緊張方法を利用することで、定着構造の信頼性を高められる。
【0057】
かつ、上述の緊張方法では、シングル緊張装置2を利用することで、弛みの低減作業における作業者の負担が少なく、作業性に優れる上に、緊張材200のいずれにも均一的な緊張力を導入することができ、弛みの低減を容易に行える。
【0058】
また、上述の緊張方法では、支圧部材30、アタッチメント31、及び圧入ラム32を利用することで、シングル緊張装置2により緊張している緊張材200aに隣接する他の緊張材200に干渉することなく緊張することができ、シングル緊張装置2の緊張力を適切に支圧部材30に伝達することができる。特に、アタッチメント31及び圧入ラム32は、シングル緊張装置2に着脱自在であるため、再利用することができる。
【0059】
更に、上述の緊張方法では、マルチ緊張装置1及びシングル緊張装置2として、既存のものをほぼそのまま利用することができ、設計変更が少なく、コストを低減することもできる。
【0060】
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、シングル緊張装置による緊張力の仮固定に定着用ウェッジを利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明緊張材の緊張方法は、グラウンドアンカーやPC構造物の定着構造、斜張橋の緊張材の定着構造を構築する際に好適に利用することができる。本発明緊張材の緊張装置及び緊張材の緊張システムは、上記本発明緊張材の緊張方法を実施する際に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 マルチ緊張装置 2 シングル緊張装置
10 緊張用ウェッジ 11 ディスク部 11a 貫通孔 11b ウェッジ孔
11c 位置決め部 15 端面 16 挿通孔 17 迎え棒 17a 先端キャップ
20 小引張用ウェッジ 21 取付部 21a 凹部 21b ラム用孔
30 支圧部材 30a 挿通孔 30b 凹部 31 アタッチメント 31a 太径部
31b 細径部 31c 凸部 32 圧入ラム 50 確認用プレート 51 挿通孔
100 コンクリート構造物 110 アンカーディスク 110a 貫通孔
110b ウェッジ孔 120 定着用ウェッジ 130 内トランペット
131 外トランペット 132 リブキャストアンカー 140 キャップ
200,200a 緊張材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの定着盤から突出した複数の緊張材に所定の緊張荷重を付した状態で前記定着盤に定着するときに前記緊張材を緊張するための緊張材の緊張方法であって、
複数の緊張材を一定の緊張力で一括して緊張可能なマルチ緊張装置を前記定着盤から突出した緊張材に配置する工程と、
前記マルチ緊張装置の後端から突出した個々の緊張材に、1本の緊張材のみを把持して緊張可能なシングル緊張装置を配置してこの緊張材を緊張し、各緊張材の弛みを低減した状態で仮固定する工程と、
前記シングル緊張装置による緊張後、前記マルチ緊張装置により、前記定着盤から突出した複数の緊張材を同時に緊張して、これらの緊張材を前記定着盤に固定する工程とを具えることを特徴とする緊張材の緊張方法。
【請求項2】
前記シングル緊張装置は、前記マルチ緊張装置の後端から所定の距離だけ離して配置し、
前記マルチ緊張装置の後端に、当該シングル緊張装置の緊張時の緊張力の反力を受ける支圧部材を配置し、
前記シングル緊張装置における定着盤側の端面と前記支圧部材との間の緊張材の外周に、円筒部材または前記端面よりも小さい断面部分を有する筒状の伝達部材を配置し、
前記シングル緊張装置により緊張している緊張材に隣接する緊張材に干渉することなく、当該シングル緊張装置の緊張時の緊張力を前記伝達部材を介して前記支圧部材に伝達することを特徴とする請求項1に記載の緊張材の緊張方法。
【請求項3】
前記マルチ緊張装置は、前記シングル緊張装置により緊張される緊張材を把持する緊張用ウェッジと、この緊張用ウェッジが嵌め込まれるウェッジ孔とを具えており、
前記伝達部材の内周に、前記緊張用ウェッジを前記ウェッジ孔に押圧する筒状の押圧部材を配置し、
前記仮固定は、前記緊張用ウェッジを前記押圧部材により前記ウェッジ孔に押圧することで行うことを特徴とする請求項2に記載の緊張材の緊張方法。
【請求項4】
前記シングル緊張装置による緊張時の緊張力は、前記マルチ緊張装置による緊張時の緊張力よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の緊張材の緊張方法。
【請求項5】
前記各緊張材は、裸PC鋼より線、メッキPC鋼より線、樹脂被覆PC鋼より線、及びアンボンドPC鋼より線のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の緊張材の緊張方法。
【請求項6】
一つの定着盤から突出した複数の緊張材に所定の緊張荷重を付した状態で前記定着盤に定着するときに前記緊張材を緊張するための緊張材の緊張装置であって、
前記緊張装置の後端に配置される支圧部材の位置決めを行う位置決め部を有しており、
前記支圧部材は、当該緊張装置の後端から突出した個々の緊張材に、1本の緊張材のみを把持して緊張可能なシングル緊張装置が取り付けられて緊張するとき、このシングル緊張装置の緊張時の緊張力の反力を受ける部材であることを特徴とする緊張材の緊張装置。
【請求項7】
請求項6に記載の緊張装置は、前記シングル緊張装置により緊張される緊張材を把持する緊張用ウェッジと、この緊張用ウェッジが嵌め込まれるウェッジ孔とを具えており、
この緊張装置と、
前記支圧部材と、
当該緊張装置の後端に配置された前記シングル緊張装置の前記定着盤側の端面と前記支圧部材との間における緊張材の外周に配置される、円筒部材または前記端面よりも小さい断面部分を有する筒状の部材であって、当該シングル緊張装置により緊張している緊張材に隣接する緊張材に干渉することなく、当該シングル緊張装置の緊張時の緊張力を前記支圧部材に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材の内周に配置され、前記シングル緊張装置の緊張時に前記緊張用ウェッジを前記ウェッジ孔に押圧する筒状の押圧部材とを具えることを特徴とする緊張材の緊張システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−174556(P2010−174556A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20214(P2009−20214)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)