説明

緊急車両報知システム、緊急車両報知システムの受信装置及び緊急車両報知システムの送信装置

【課題】既存の装置を最大限に利用して、緊急車両の接近を車両の運転者に認識させる緊急車両報知システムを提供する。
【解決手段】救急車は、サイレン音とともに超音波帯域の搬送波をサイレン音信号にて超音波信号に変調した超音波Uを出力する。車両は、超音波を受信するマイク36を備え、救急車の超音波Uをマイク36で超音波信号として受信する。受信した超音波信号は、既存のオーディオ機器に備えられたAMラジオ部15のAM復調回路34によって復調され、超音波信号からサイレン音信号を抽出して警告音信号に復調する。警報音信号は、車内スピーカ19によって警報音S2(0.7kHz、0.4kHzの交互音)としてAMラジオの代わりに出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に緊急車両の接近を認識させる緊急車両報知システム、緊急車両報知システムの受信装置及び緊急車両報知システムの送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
救急車、消防車、パトカーなどの緊急車両は、緊急時には、スピーカからサイレン音を発するとともに赤色灯を点灯して緊急走行する。そして、緊急走行中の緊急車両の前方を走行している車両の運転者は、そのサイレン音と赤色灯を認識すると緊急車両を優先的に走行させるために、車両を路肩に寄せて一時停止するなどの行為により道をあけ、緊急車両に進路を譲ることが法律で義務付けられている。
しかし、近年の車両は、気密性に優れており、外部の音を遮断する能力が高くなっている。そのため、運転者が、窓を閉め切った状態で車両のオーディオ機器の音量を上げて音楽などを聴いている場合には、緊急車両が後方から接近しているにもかかわらず、緊急車両のサイレン音が聴こえず、緊急車両を認識することができないことがある。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、緊急自動車にサイレンと連動させた超音波発信機を備え、一般自動車には、超音波受信機、処理機、警報表示ランプ及び警報スピーカを備えた緊急自動車接近装置が開示されている。一般自動車は、緊急自動車から発せられた超音波を超音波受信機で受信した後、処理機にて処理し、警報表示ランプ及び警報スピーカにて運転者に対して警告を行う。
したがって、運転者がオーディオ機器の音量を上げて音楽などを聴いている場合でも、警報表示ランプ及び警報スピーカによって運転者に対して警告がなされるため、運転者は、緊急自動車の接近を認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−147798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の緊急自動車接近装置では、一般自動車に備えられた超音波受信機で超音波を受信した後、処理機にて処理し、警報ランプ及び警報スピーカにて警告をしている。そのため、緊急自動車接近装置は、一般自動車に対して処理機や警報表示ランプや警報スピーカなど、緊急自動車を認識するための専用の装置を多数設けなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、緊急車両を認識するための専用の装置を新たに設けることなく、既存の装置を最大限に利用した緊急車両報知システム、緊急車両報知システムの受信装置及び緊急車両報知システムの送信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、超音波を出力する緊急車両及び超音波を受信する車両からなる緊急車両報知システムであって、特定の周波数のサイレン音を出力して走行する緊急車両には、超音波帯域の搬送波をサイレン音の信号にて超音波信号に変調する変調手段と、超音波信号を超音波として出力する送信器とを備え、車両には、超音波を受信して超音波信号を出力する受信器と、受信器に接続されるオーディオ機器とを備え、オーディオ機器は、超音波信号から警報音の信号に復調する復調手段と、復調した警報音の信号を車両内に出力する音響出力手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、車両に既存のオーディオ機器の復調手段や音響出力手段を最大限に利用して、運転者に緊急車両の接近を認識させることができる。
【0009】
また、本発明において、受信器は、受信した超音波の周波数が一定の周波数以下の場合には、超音波信号を遮断する同調回路を備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、同調回路は、車両から遠ざかる緊急車両の超音波信号を遮断し選択しないので、車両に接近している緊急車両の超音波のみを選択することができる。
これにより、車両に接近している緊急車両のみを車両の運転者に認識させることができる。
【0011】
本発明において、送信器は、緊急車両の前方に向けて超音波を出力し、受信器は、車両の後方側に設けられることを特徴とする。
【0012】
この場合、超音波は、電波と比べて直進性が強いので、緊急車両の前方に超音波を出力することにより、緊急車両の前方を走行している運転者に対して的確に緊急車両の接近を認識させることができる。
【0013】
本発明において、変調手段は、超音波帯域の搬送波をサイレン音の信号にてAM変調によって超音波信号に変調し、復調手段は、超音波信号からAM復調によって警報音に復調することを特徴とする。
【0014】
この場合、受信装置でAM復調を用いているので、オーディオ機器のAMラジオ部を使用することができ、簡単に利用することができる。
【0015】
本発明において、車両に備えられ、緊急車両が超音波帯域の搬送波をサイレン音の信号にて変調した超音波信号からなる超音波を受信する受信器と、受信器に接続されるオーディオ機器とを備え、オーディオ機器は、超音波信号から警報音の信号を復調する復調手段と、復調した警報音の信号を車両内に出力する音響出力手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
この場合、緊急車両報知システムの受信装置は、車両に既存のオーディオ機器の復調手段や音響出力手段を最大限利用して、運転者に緊急車両の接近を認識させることができる。
【0017】
また、本発明において、特定の周波数のサイレン音を出力して走行する緊急車両に備えられ、超音波帯域の搬送波をサイレン音の信号にて超音波信号に変調する変調手段と、超音波信号を超音波として出力する送信器とを備えることを特徴とする。
【0018】
この場合、緊急車両報知システムの送信装置は、車両の運転者に対して、超音波を使用して緊急車両の接近を認識させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既存の装置を最大限に利用して運転者に緊急車両の接近を認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る緊急車両報知システムの緊急車両と車両の状況を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る緊急車両報知システムの送信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両のオーディオ機器の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る緊急車両報知システムの受信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態にかかる緊急車両報知システム、緊急車両報知システムの受信装置及び緊急車両報知システムの送信装置について図1〜図4を用いて説明する。
この実施形態は、図1に示すように緊急車両としての救急車4に適用した一例である。
緊急車両報知システム1は、図1に示すように救急車4に設けられた緊急車両報知システムの送信装置2と、車両5に設けられた緊急車両報知システムの受信装置3とから構成されている。
【0022】
まず、緊急車両報知システムの送信装置2(以下、単に「送信装置2」と表記する。)について説明する。
図2に示すように、送信装置2は、緊急走行時にサイレン音S1を発生させるために運転者によって操作される操作部6と、操作部6に設けられサイレン音信号を発生させるサイレン音信号発生回路7と、サイレン音信号を増幅する第1のアンプ回路8と、増幅されたサイレン音信号をサイレン音S1として出力する第1のスピーカ9と、超音波帯域の搬送波を発生させる搬送波発振回路10と、搬送波をサイレン音信号でAM変調し、超音波信号とするAM変調回路11と、AM変調した超音波信号を増幅させる第2のアンプ回路12と、増幅した超音波信号を超音波Uとして外部へ出力する第2のスピーカ13とから構成されている。
【0023】
操作部6は、救急車4の運転席に備えられ、サイレン音S1を発生させるためのスイッチ(図示せず)や赤色灯(図示せず)を点灯させるためのスイッチ(図示せず)などのスイッチが設けられており、スイッチの信号に応じてサイレン音信号発生回路7や赤色灯の制御を行う。
サイレン音信号発生回路7は、操作部6に設けられ、救急車4が出力するサイレン音の基本となる特定の周波数として相対的に高い周波数(0.7kHz)の信号と相対的に低い周波数(0.4kHz)の信号を一定周期(0.65秒間隔)で相互に出力する電気的なサイレン音信号を発生させ、第1のアンプ回路8及びAM変調回路11に送信する。
第1のアンプ回路8は、サイレン音信号発生回路7から発生したサイレン音信号を増幅しており、第1のスピーカ9は、救急車4の屋根上などに設置され、増幅したサイレン音信号を可聴音域の音波であるサイレン音S1として出力する。
【0024】
一方、搬送波発振回路10は、サイレン音信号を超音波Uとして搬送するための搬送波の信号を発振するものであり、超音波帯域(50kHz)の正弦波を発振する。
AM変調回路11は、搬送波発振回路10で発振した超音波帯域の搬送波の信号をサイレン音信号発生回路7から出力されたサイレン音信号によって搬送波の信号の振幅を変化させる変調であるAM変調(振幅変調)を行う。したがって、AM変調回路11によってサイレン音信号が乗せられた変調波としての超音波信号が発生する。
第2のアンプ回路12は、AM変調された超音波信号を増幅して第2のスピーカ13へと超音波信号を送信する。第2のスピーカ13は、救急車4の屋根上などに救急車4の前方に向けて設置され、増幅された超音波信号を超音波Uとして車両5の前方に出力する。
ここで、本発明の変調手段はAM変調回路が相当し、本発明の送信器は第2のスピーカ13が相当する。
【0025】
次に、緊急車両報知システムの受信装置3(以下、単に「受信装置3」と表記する。)について説明する。
受信装置3は、車両5に車載された既存のオーディオ機器14の構成を利用するものであり、特にAMラジオ部15の構成を最大限に利用した構成である。
まず、オーディオ機器14の全体構成について説明する。
図3に示すように、オーディオ機器14は、AMラジオを聴くためのAMラジオ本体部20と、FMラジオを聴くためのFMラジオ本体部21と、CDの音楽を聴くためのCDプレーヤー本体部22とから構成されており、AMラジオ本体部20、FMラジオ本体部21及びCDプレーヤー本体部22のそれぞれから出力された音声信号は、混合部18を介して共通の車内スピーカ19から出力される。
【0026】
このため、AMラジオの電波を受信して、音声として車両5内に出力するAMラジオ部15の構成は、AMラジオ本体部20と、混合部18と車内スピーカ19とからなり、FMラジオの電波を受信して、音声として車両5内に出力するFMラジオ部16の構成は、FMラジオ本体部21と、混合部18と車内スピーカ19とからなり、CDを再生して音楽(音声)として車両5内に出力するCDプレーヤー部17の構成は、CDプレーヤー本体部22と、混合部18と車内スピーカ19とからなる。
また、AMラジオ部15、FMラジオ部16及びCDプレーヤー部17には、それぞれAMラジオ選択スイッチ23(図4)と、FMラジオ選択スイッチ24、CDプレーヤー選択スイッチ25が設けられており、それぞれの選択スイッチ(23、24、25)は連動しており、AMラジオ部15と、FMラジオ部16と、CDプレーヤー部17のうち、選択されたいずれか1つの選択スイッチ(23、24、25)のみがオンとなる。
また、AMラジオ選択スイッチ23と、FMラジオ選択スイッチ24、CDプレーヤー選択スイッチ25は、後述する受信装置3の検出回路40(図4)からの信号によってもオン、オフの制御がされる。
ここで、図3において、FMラジオ選択スイッチ24、CDプレーヤー選択スイッチ25は、説明の便宜上FMラジオ本体部21、CDプレーヤー本体部22とは独立したものとして示しているが、AMラジオ部15と同様に、FMラジオ選択スイッチ24はFMラジオ本体部21の構成の一部であり、CDプレーヤー選択スイッチ25はCDプレーヤー本体部22の構成の一部である。
【0027】
次にAMラジオ部15の構成について説明する。
図4に示すように、AMラジオ部15は、アンテナ26と、第1の同調回路27と、第1のアンプ回路30と、選択スイッチ23と、選局回路28と、局部発振回路29と、ミキサ回路31と、フィルタ回路32と、IFアンプ回路33と、AM復調回路34と、音声アンプ回路(図示せず)とからなるAMラジオ本体部20の構成と、混合部18と、車内スピーカ19と、からなる構成を備えている。
アンテナ26は、車両5の外部に設けられ、AMラジオ放送の電波(500kHz〜1.7kHz)を受信する。第1の同調回路27は、アンテナ26にて受信したAMラジオ放送の様々な周波数の電波信号の中から選局回路28にて選局された所望の周波数f(以下、単に「選局周波数f」と表記する。)を選択する機能を有しており、選局回路28からの信号により選局周波数fの帯域を変更する。第1のRF(Radio Frequency)アンプ回路30は、第1の同調回路27によって選択された選局周波数fの信号を増幅する。
選択スイッチ23は、AMラジオ部15が選択された場合にオンとなる。また、選択スイッチ23は、受信装置3の検出回路40からの信号によってもオン、オフの制御がされる。
局部発振回路29は選局回路28からの信号により選局周波数fよりも高い周波数(通常は、選局周波数f+450kHz)の正弦波である局部発振信号を発振する回路であり、発振した局部発振信号は、ミキサ回路31に送信される。ミキサ回路31は、局部発振信号と選局周波数fとを混合する。フィルタ回路32は混合された信号の中から中間周波信号(450kHzの周波数の信号)を取り出す。取り出された中間周波信号は、IF(Intermediate Frequency)アンプ回路33によって増幅される。
AM復調回路34は、AM変調された電波信号から原信号を抽出(復調)する、復調AM復調(振幅復調)を行うものであり、増幅された中間周波信号(電波信号)に対してAM復調を行い、音声信号(原信号)である低周波信号を抽出する。
音声アンプ回路は、音声信号を増幅して、混合部18を介して車内スピーカ19へと送信する。車内スピーカ19は、車両5内に複数設けられており、音声信号を可聴音の音波として出力する。上述のように混合部18と車内スピーカ19はAMラジオ部15、FMラジオ部16、CDプレーヤー部17と共通の構成である。
上記構成は、AMラジオ部15の基本的な構成を示したものであり、AMラジオの構成において、AGC(Automatic Gain Control:自動利得)回路や、PLL(Phase Locked Loop)回路などが設けられる構成であっても良い。
【0028】
次に受信装置3の構成について説明する。
受信装置3は、超音波Uを受信するためのマイク36と、第2の同調回路37と、第2のRFアンプ回路39と、検出回路40と、受信スイッチ38とを備え、受信スイッチ38は、AMラジオ部15のミキサ回路31に接続されている。したがって、受信装置3は、AMラジオ部15の局部発振回路29と、ミキサ回路31と、フィルタ回路32と、IFアンプ回路33と、AM復調回路34と、音声アンプ回路と、車内スピーカ19とを利用している。すなわち、受信装置3は、マイク36と、第2の同調回路37と、第2のRFアンプ回路39と、検出回路40と、受信スイッチ38と、局部発振回路29と、ミキサ回路31と、フィルタ回路32と、IFアンプ回路33と、AM復調回路34と、音声アンプ回路と、混合部18と、車内スピーカ19とから構成されている。
マイク36は、車両外部からの超音波Uを受信するためのものであり、特に車両5後方からの超音波Uを受信しやすくするために車両5後方側の外部に設けられ、救急車4が出力する超音波Uを受信し、電気的な超音波信号を出力する。
第2の同調回路37は、マイク36が出力した超音波信号のうち、救急車4が出力する超音波信号の周波数のみを選択する機能を有している。救急車4が出力する超音波Uは予め決められた周波数(50kHz)であるので、第2の同調回路37は、その超音波信号の周波数を選択するように設定した超音波Uの周波数の帯域で固定されている。したがって、救急車4が出力する超音波Uの周波数以外は遮断される。
ここで、第2の同調回路37は、救急車4からの超音波Uを確実に受信するために、ある程度周波数の幅を有する帯域で設定されるが、マイク36にて受信し出力した超音波信号のうち決められた周波数以下の超音波信号を積極的に遮断して選択しない構成にしても良い。
また、第2のRFアンプ回路39は、第2の同調回路37によって選択された超音波信号を増幅する。
そして、検出回路40は、救急車4からの超音波Uの受信を検出するものであり、第2のRFアンプ回路39からの超音波信号の有無によって、超音波Uを受信したかどうかを検出する。第2のRFアンプ回路39からの超音波信号が有る場合には、超音波信号を検出したとして現在オンとなっている選択スイッチ(23、24、25)をオフにし、受信スイッチ38をオンとする信号を出力する。
受信スイッチ38は、受信装置3を作動するためのスイッチであり、検出回路40からの信号を受けると受信スイッチ38はオンとなる。
したがって、検出回路40が超音波Uの受信を検出すると、受信スイッチ38がオンとなり受信装置3が作動し、超音波信号が、上述したAMラジオ部15の構成であるミキサ回路31へと送信され、AMラジオ部15の構成よって超音波信号が処理される。
ここで、AM復調回路34が本発明の超音波信号から警報音信号に復調する復調手段に相当し、AM復調回路34は、受信した超音波信号(AM変調された信号)からAM復調によりサイレン音信号(原信号)を抽出して警告音信号に復調する。そして、その抽出された警報音信号が音声アンプ回路で増幅され、可聴音の警報音S2(0.7kHz、0.4kHzの交互音、いわゆるピーポー音)として車内スピーカ19から出力される。
また、本発明の受信器は、マイク36に相当し、本発明の同調回路は、第2の同調回路37が相当し、本発明の音響出力手段は車内スピーカ19が相当する。
なお、超音波Uを受信した場合には、局部発振回路29は、第2の同調回路37で選択される超音波Uの周波数が予め決められた周波数(50kHz)で固定されているので、発生する局部発振周波数も予め決められた周波数(50kHz+450kHz)の信号を発振する。
【0029】
次に、本実施形態の緊急車両報知システム1の作用について説明する。
まず、送信装置2の作用について説明する。
救急車4の運転者は、緊急走行をするために操作部6に備えられたサイレン音S1を発生させるスイッチを、赤色灯を点灯させるスイッチとともに操作することにより送信装置2を作動させる。
そして、サイレン音信号発生回路7は、サイレン音信号(0.7kHz、0.4kHzの交互出力信号)を発生する。サイレン音信号は、第1のアンプ回路8によって増幅されたのち、第1のスピーカ9から可聴音の音波としてサイレン音S1が出力される。
また、それと同時にサイレン音信号発生回路7が発生したサイレン音信号は、搬送波発振回路10から発生された超音波帯域の搬送波(50kHz)をAM変調回路11にてAM変調し、超音波信号を発生させる。超音波信号は、第2のアンプ回路12によって増幅されたのち、第2のスピーカ13から超音波Uを出力する。
したがって、救急車4は、緊急走行時には送信装置2から可聴音の音波(0.7kHz、0.4kHzの交互音)と超音波帯域の超音波U(50kHz)を送信装置2から出力して走行する。
【0030】
次に、受信装置3の作用について説明する。
車両5の運転者がオーディオ機器14の電源を入れAMラジオを選択すると、AMラジオ部15の選択スイッチ23がオンとなる。
そして、運転者が聴きたいAMラジオ放送の周波数を選択すると、選局回路28の信号により選局周波数fが第1の同調回路27によって選択され、その選局周波数fは、第1のRFアンプ回路30で増幅され、ミキサ回路31によって局部発振回路29からの局部発振周波数と混合されてフィルタ回路32を通過したのち、AM復調によって復調されて、音声アンプ回路によって増幅されて、車内スピーカ19からAMラジオ放送の音声が車内スピーカ19から出力される。
一方、図1のように後方から救急車4が接近してくると、車両5はマイク36によって送信装置2の第2のスピーカ13から出力される超音波Uを受信して、超音波信号へと変換し出力する。そして、第2の同調回路37によって第2のスピーカ13から出力された周波数(50kHz)の超音波信号のみが選択される。
そして、超音波信号は、第2のRFアンプ回路39によって増幅され、検出回路40に送信される。
検出回路40は、超音波信号の受信を検出すると、オンとなっているAMラジオ選択スイッチ23に対して、スイッチをオフとする信号を送信するとともに、受信スイッチ38に対してスイッチをオンとする信号を送信する。これにより、受信装置3のみが作動するようになる。
そして、超音波信号は、AMラジオ部15のミキサ回路31へと送信され、局部発振回路29によって発振された周波数(50kHz+450kHz)の信号とミキサ回路31にて混合され、フィルタ回路32で中間周波信号の超音波信号にされたのち、IFアンプ回路33で増幅される。
増幅された中間周波信号の超音波信号は、AM復調回路34によって、AM復調がされる。このAM復調によって、超音波信号からサイレン音信号が抽出され警報音信号(0.7kHz、0.4kHzの交互出力信号)として復調される。
そして、警報音信号は、音声アンプ回路で増幅されたのち、混合部18を介して車内スピーカ19から出力される。したがって、車内スピーカ19からは、可聴音である警報音S2が出力される。
したがって、超音波信号を受信すると受信装置3のみが作動するようになるため、車内スピーカ19からは、AMラジオ部15からの音声に代わって、警報音S2が出力され、運転者に対して認識される。
一方、運転者がFMラジオを選択している場合には、救急車4からの超音波Uを受信すると、FMラジオ部16の選択スイッチ24がオフとなるとともに、受信装置3の受信スイッチ38がオンとなる。これにより、FMラジオの音声に代わって警報音S2が車内スピーカ19から出力される。同様に、CDプレーヤーが選択された場合においても、CDプレーヤー部17の選択スイッチ25がオフとなるとともに、受信装置3の受信スイッチ38がオンとなり、車内スピーカ19からCDプレーヤーの音楽に代わって警報音S2が出力される。
【0031】
上記実施形態によれば、以下のような効果を有する。
(1)受信装置3は、AMラジオ部15の局部発振回路29とミキサ回路31とフィルタ回路32とIFアンプ回路33とAM復調回路34と音声アンプ回路と車内スピーカ19を利用している。
これは、AMラジオの電波も救急車4から出力される超音波Uも同じAM変調がされた信号であるため、AM復調回路34を有するAMラジオ部15(オーディオ機器14)の構成を利用することができる。
したがって、車両5に既存のオーディオ機器14を最大限に利用するので、超音波Uを受信して、運転者に認識させるまでに専用の装置を必要としない。これにより、コスト面や専用の構成を設置するスペースの問題において有利である。
(2)送信装置2は、第1のスピーカ9及び第2のスピーカ13からともに音波を発生する構成としている。これにより、救急車4に対して、電波を発生させるための装置など、専用の装置を新たに設ける必要がなく、既存の送信装置2を最大限利用することができる。
(3)送信装置2は、サイレン音信号にて超音波Uの搬送信号をAM変調して超音波Uとして出力し、受信装置3は、超音波信号からAM復調によってサイレン音信号を抽出して警告音信号に復調して出力する構成とした。これにより、警報音S2(0.7kHz、0.4kHzの交互音、いわゆるピーポー音)が車内スピーカ19から出力されるので、運転者は、警報表示ランプや警報スピーカなどによる警告と比べて違和感なく救急車4の接近を認識することができる。
(4)第2の同調回路37は、所定の周波数よりも低い周波数の超音波信号を遮断して選択しない構成とした。これは、車両5から遠ざかる救急車4はドップラ効果によって車両5が受信する超音波Uの周波数が低くなる。したがって、所定の周波数よりも低い周波数の超音波信号を遮断することで、車両5から遠ざかる救急車4の超音波Uは遮断し、車両5に接近している救急車4のみの超音波Uのみを選択することができる。
これにより、車両5に接近している救急車4のみを車両5の運転者に認識させることができる。
(5)第2のスピーカ13は、超音波Uを前方に出力するようにし、マイク36は、車両5の後方側に設けるようにした。これにより、超音波Uは、電波に比べて直進性が高いため、救急車4の前方を走行している車両5に対して的確に超音波Uを受信させることができる。また、車両5の後方側にマイク36を設けたので、車両5の後方から救急車4が出力する超音波Uを車両5自体によって遮られたりすることなく確実に受信することができる。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように変更しても良い。
上記実施形態では、緊急車両の一例として救急車4で説明したが、パトカーや消防車などの緊急車両であっても良い。また、車両5は緊急車両などの車両であっても良い。
上記実施形態では、送信装置2は、第1のスピーカ9と第2のスピーカ13をそれぞれ別々に設ける構成として説明したが、第1のスピーカ9、第2のスピーカ13ともに音波を発生する装置であるため、サイレン音S1と超音波Uを同時に発生できるスピーカを用いて、第1のスピーカ、第2のスピーカを一体としても良い。
上記実施形態では、AMラジオ部15を利用する構成として説明したが、オーディオ機器14のFMラジオ部16を利用する構成であっても良い。この場合、送信装置は、変調手段としてのAM変調を行うAM変調回路11の代わりにFM変調を行うFM変調回路を有する構成とし、受信装置は、FMラジオ部16においてFM復調を行う復調手段としてのFM復調回路を利用する構成とすれば良い。
上記実施形態では、超音波帯域の搬送波として50kHzの周波数のものを例として説明したが、超音波帯域の音波(20kHz以上)であればよく、搬送波の周波数は特に限定されない。
上記実施形態では、オーディオ機器14として、AMラジオ部15、FMラジオ部16、CDプレーヤー部17を設けた構成で説明したが、MDを再生するMDプレーヤー部などをさらに備える構成であったり、カーナビゲーションシステムと一体化した構成であっても良い。また、オーディオ機器がAMラジオ部15やFMラジオ部16のみの構成であっても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 緊急車両報知システム
2 緊急車両報知システムの送信装置
3 緊急車両報知システムの受信装置
4 救急車(緊急車両)
5 車両
11 AM変調回路(変調手段)
12 第2のスピーカ(送信器)
14 オーディオ機器
19 車内スピーカ(音響出力手段)
37 第2の同調回路(同調回路)
34 AM復調回路(復調手段)
36 マイク(受信器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を出力する緊急車両及び前記超音波を受信する車両からなる緊急車両報知システムであって、
特定の周波数のサイレン音を出力して走行する前記緊急車両には、
超音波帯域の搬送波を前記サイレン音の信号にて超音波信号に変調する変調手段と、
前記超音波信号を前記超音波として出力する送信器とを備え、
前記車両には、
前記超音波を受信して超音波信号を出力する受信器と、
前記受信器に接続されるオーディオ機器とを備え、
前記オーディオ機器は、
前記超音波信号から警報音の信号に復調する復調手段と、
復調した前記警報音の信号を前記車両内に出力する音響出力手段とを備えることを特徴とする緊急車両報知システム。
【請求項2】
前記受信器は、受信した前記超音波の周波数が一定の周波数以下の場合には、前記超音波信号を遮断する同調回路を備えることを特徴とする請求項1記載の緊急車両報知システム。
【請求項3】
前記送信器は、前記緊急車両の前方に向けて超音波を出力し、前記受信器は、前記車両の後方側に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の緊急車両報知システム。
【請求項4】
前記変調手段は、超音波帯域の前記搬送波を前記サイレン音の信号にてAM変調によって超音波信号に変調し、
前記復調手段は、前記超音波信号からAM復調によって前記警報音に復調することを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の緊急車両報知システム。
【請求項5】
車両に備えられ、
緊急車両が超音波帯域の搬送波をサイレン音の信号にて変調した超音波信号からなる超音波を受信する受信器と、
前記受信器に接続されるオーディオ機器とを備え、
前記オーディオ機器は、
前記超音波信号から警報音の信号を復調する復調手段と、
復調した前記警報音の信号を前記車両内に出力する音響出力手段とを備えることを特徴とする緊急車両報知システムの受信装置。
【請求項6】
特定の周波数のサイレン音を出力して走行する緊急車両に備えられ、
超音波帯域の搬送波を前記サイレン音の信号にて超音波信号に変調する変調手段と、
前記超音波信号を超音波として出力する送信器とを備えることを特徴とする緊急車両報知システムの送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−215712(P2011−215712A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80847(P2010−80847)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】