説明

総胆管照明排液装置

【課題】総胆管照明排液装置を提供する。
【解決手段】この総胆管照明排液装置において、その排液用導管の管壁上又は管壁内に、少なくとも1つの出光構造を含む光ファイバーが少なくとも1本設けられている。前記導管は、生体の管路に入ると、その光ファイバーが、光源からの光を出光構造から射出させて導管の管壁と生体の管路に透過させるように導くことで、管路の位置を示し、手術周辺領域を照明することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡手術器具に関し、特に、総胆管照明排液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
胆嚢は、肝臓で生成される胆汁を濃縮・蓄積する器官であり、脂肪を含む食物が腸管に入ると、胆嚢は収縮して、脂肪の消化を助ける胆汁を小腸に放出する。ただし、胆汁に感染、鬱滞又は成分のバランスの崩れが生じた場合、結晶化して胆嚢結石(cholelithiasis)になりやすくなる。胆汁の通路が結石によって遮断されている場合、上腹部痛、嘔吐、消化不良などを伴うことが多く、ひどい場合、発熱及び黄疸を引き起こしてしまう。
【0003】
症状の軽い胆嚢結石症の場合、従来、例えば、結石溶解術又は結石破砕術のような非手術的療法により胆嚢結石を消失させることができる。この様な方法は合併症を併発する可能性が低いが、再発率が50%を超えることが多く、何度も行う必要があり、また、再発を防ぐために、長期間薬を飲む必要があることから、実際には広く臨床応用されていない。症状の重い胆嚢結石症の場合、開腹胆嚢摘出術(open cholecystectomy)により、胆嚢を摘出できるが、試験開腹術及び胆嚢摘出術を行うのに、どうしても右上腹部の肋骨下に、長さ約15〜20センチメートルの手術痕が残らざるを得ないため、手術リスクが高いだけでなく、術後の看護時間も長い。
【0004】
最近二十年来、消化器外科医は、「腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecytectomy;LC)」により、症状のある胆嚢結石を治療してきた。腹腔鏡下胆嚢摘出術は、胆嚢疾患を治療するための手術であり、侵襲性が比較的少ないので、現在最も広く適用されている胆嚢結石の治療方法である。
【0005】
簡単に言えば、腹腔鏡下胆嚢摘出術において、特製の手術用套管を腹膜腔に挿入し、二酸化炭素を約2〜5リットル注入し、所定の圧力に達した後、腹部に、0.5〜1センチメートルの小孔を3〜4個開ける。そして、腹腔鏡による操作で、胆嚢を注意深く摘出する。手術は、約30分〜1時間半かかり、難易度が低く、安全性が高い。現在、手術技術の向上により、例えば、上腹部手術を受けたことがある者などの、腹腔鏡下手術が禁忌とされている患者を除く、胆嚢結石患者の大部分は、腹腔鏡下胆嚢摘出術による治療を受けることができる。胆嚢が慢性炎症によって周りの胃、十二指腸、大腸又は大網膜に癒着し、手術に長い時間を必要とする場合、従来の開腹胆嚢摘出術に変更してよい。
【0006】
腹腔鏡下胆嚢摘出術が成功するかどうかは、主に、操作者の技術の熟練度、胆道系及び周りの関連器官に対する認知度、並びに腹腔鏡下胆嚢摘出術が適用される患者の条件を慎重に選択しているかどうかによる。腹腔鏡下胆嚢摘出術は上記のようなメリットを有するが、医者の判断ミス又は経験不足の場合、更に胆嚢の炎症による周りの管路(例えば、カロー三角(Calot‘s triangle)、又は肝十二指腸間膜(hepatoduodenal ligament))が変形している場合、総肝管を胆嚢管と誤認して、例えば、医原性総胆管損傷(iatrogenic common bile duct injury、iatrogenic CBD injury)といった予想外の胆管損傷を引き起こしやすく、その発生率は約0.1〜0.2%〜約0.4〜0.6%である。
【0007】
総胆管損傷に対する処置が不適切であった場合、患者に取り返しのつかない事態をもたらしてしまうこととなり、例えば、末期肝疾患(end stage liver disease)となって、肝臓移植(necessitate liver transplantation)をしなければならず、その待機期間における死亡率は約45%にまで達する。
【0008】
医原性総胆管損傷のリスクを低減させるために、現在、腹腔鏡下胆嚢摘出術を行う際に、従来の術中胆管造影法(intra−operative cholangiography、IOC)を用いることがあるが、総胆管損傷を避けるのに、必ずしもIOCを用いる必要はないという考えもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記に鑑みて、胆嚢摘出術中に、誤って総肝管を損傷するリスクを低減させるための手術器具が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明の一態様は、排液用導管の管壁上又は管壁内に、少なくとも1つの出光構造を含む光ファイバーが少なくとも1本設けられている総胆管照明排液装置を提供する。前記導管は、生体の管路又は被験部位に入ると、その光ファイバーが、光源からの光を出光構造から射出させて導管の管壁と生体の管路に透過させるように導くことで、管路又は被験部位の位置を示し、手術周辺領域を照明することができる。
【0011】
本発明の別の態様は、外套管の管腔内に、少なくとも、前記総胆管照明排液管及び洗浄管が設けられている総胆管照明排液装置を提供する。導管と洗浄管が生体の管路又は被験部位に入ると、導管の光ファイバーは、光源からの光を出光構造から射出させて導管の管壁と生体の管路に透過させるように導くことで、管路又は被験部位の位置を示し、手術周辺領域を照明することができる。
【0012】
本発明の前記態様により、総胆管照明排液装置を提案する。一態様において、前記総胆管照明排液管は、導管と、少なくとも1本の光ファイバーとを含む。前記導管は、排液端を有する。前記光ファイバーは、導管の管壁上又は管壁内に設けられてよく、光ファイバーは、少なくとも1つの出光構造を含んでよくて、前記出光構造は、出光端面と、複数の出光側面とを含んでよい。一例において、出光端面は、排液端に近接して光ファイバーの一端に設けられてよい。別の例において、出光側面は、出光端面に隣接して光ファイバーの管体の外側面に設けられる。導管が生体の管路に入るとき、その光ファイバーは、光源からの光を出光構造から射出させて導管の管壁と生体の管路を透過させるように導くことで、管路又は被験部位の位置を示し、手術周辺領域を照明することができる。
【0013】
本発明の一態様によると、前記光ファイバーは、導管の管壁の内側もしくは外側に設けられるか、又は前記管壁に嵌設されてよい。
【0014】
本発明の一態様によると、出光側面における前記出光構造の管径は、出光構造の初期管径より小さくてもよい。一例において、前記出光側面に、複数の微構造を設けてよい。
【0015】
本発明の一態様によると、前記光源は、光ファイバーの他端に設けられてよく、且つ、その発生した光の波長は、例えば、520nm〜540nmであってよい。一例において、出光側面からの光の照度は、例えば、10ワット(W)/mm〜20ワット(W)/mmであってよい。
【0016】
本発明の一態様によると、前記管路は、総胆管又は尿管であってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の総胆管照明排液装置を、生体の管路に入れると、前記導管の光ファイバーは、光源からの光を光ファイバーの出光構造から射出させて導管の管壁と生体の管路に透過させるように導くことで、管路又は被験部位の位置を示し、手術周辺領域を照明することにより、内視鏡外科手術中、誤って管路を損傷するリスクを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
下記図面の簡単な説明は、本発明の前記または他の目的、特徴、メリットをより分かりやすくするためのものである。
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による総胆管照明排液装置の一部の構造を示す模式図である。
【図2】本発明の一態様による光ファイバーの出光構造の一部を示す模式図である。
【図3A】本発明の一態様による光ファイバーの出光構造の一部を示す模式図である。
【図3B】本発明の一態様による光ファイバーの出光構造の一部を示す模式図である。
【図3C】本発明の一態様による光ファイバーの出光構造の一部を示す模式図である。
【図4】本発明の別の実施形態による総胆管照明排液装置の一部の構造を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態による総胆管照明排液装置による腹腔鏡下胆嚢摘出術の実施状況を示す模式図である。
【図6】本発明の別の実施形態による総胆管照明排液装置による腹腔鏡下胆嚢摘出術の実施状況を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記のとおり、本発明は、排液用導管の管壁上又は管壁内に、少なくとも1つの出光構造を含む光ファイバーが少なくとも1本設けられており、前記導管が、生体の管腔又は被験部位に入ると、その光ファイバーが、光源からの光を出光構造から射出させて導管の管壁と生体の管腔を透過させるように導くことで、管路又は被験部位の位置を示し、手術周辺領域を照明することができる、総胆管照明排液装置を提供する。
【0021】
ここで、本発明における「生体の管路」とは、一般的には、動物の総胆管、尿管またはその付近の管路を指す。例えば、胆嚢疾患患者に対して行われる腹腔鏡下胆嚢摘出術などの内視鏡外科手術の場合、鬱滞した胆汁を汲み出すために、内視鏡的経鼻胆管ドレナージ術(endoscopic nasobiliary drainage、ENBD)又は内視鏡的逆行性胆管ドレナージ術(endoscopic retrograde biliary drainage、ERBD)を用いる必要がある。しかしながら、前記のように、様々な不適切な処理による総胆管損傷は、取り返しのつかない事態をもたらしてしまう。このような内視鏡外科手術のリスクを低減させるために、本発明は、その発生した光を生体の管路に透過させることで、管路の位置を示し、手術周辺領域を照明し、更に、内視鏡外科手術(例えば、腹腔鏡下胆嚢摘出術)中、誤って総胆管又は尿管を損傷することを予防する総胆管照明排液装置を提供する。
【0022】
総胆管照明排液装置の構造
本発明の一実施形態による総胆管照明排液装置の断面構造を示す模式図である図1を参照する。一態様において、この総胆管照明排液装置100は、導管101と、少なくとも1本の光ファイバー121とを含む。一態様において、導管101は、例えば、経鼻胆管ドレナージ(endoscopic nasal biliary drainage、ENBD、Wilson−Cook Medical,Inc.,U.S.A.)のような市販されている排液管又はそれに相当する機能を有する他の市販品であってよい。導管101の長さと外径は、実際の要求に応じるものであり、本発明は、これに限定されない。ただし、この導管101は、口、鼻、胆嚢又は膀胱から入れることができ、且つ総胆管又は尿管に深く入れることが可能なものでなければならないため、その長さが1メートルより長く、又は1メートル〜3メートルの範囲にあることが好ましく、その外径が総胆管又は尿管の幅より小さいことが好ましく、例としては、1mm〜10mm又は3mm〜5mmであることが好ましい。他の例において、体液を汲み出して結石による閉塞の発生する可能性を低減させるために、導管101の管壁の前半部に、複数の穿孔(図示しない)が更に選択的に設けられている。
【0023】
一態様において、光ファイバー121は、例えば、材料がポリ塩化ビニル(polyvinylchloride、PVC)又は他の従来の材料であるFC型ピグテールファイバー(FC type pigtail fiber)(シングルモード(single mode)で、コード(cord)の外径/保護層(cladding)の外径が9/125μm)のような光ファイバー導線であってもよい。そして、例えばレーザー焼結、UV硬化などの従来の所定の方式によって、光ファイバー121を導管101の管壁の内側、管壁中又は管壁の外側に設けることができる。
光源140を、例えば、アダプター装置141によって出光端面123から離れている光ファイバー121の他端に設けることができ、光源140は、例えば、緑光レーザであってもよく、その発生した光の波長は、520nm〜540nm、又は約530nmである。光ファイバー121の出光構造122は、生体の組織に光損傷を与えずに照明を提供するためのものであるので、その照度は、光損傷の閾値より低くなければならない。例として、出光端面123の照度は、例えば、1mW〜10mWであってよく、出光側面127の照度は、例えば、10ワット(W)/mm〜20ワット(W)/mmであってよい。
【0024】
本発明の特徴の1つは、前記排液用導管を生体の管路に入れると、導管における光ファイバーが、光源からの光を光ファイバーの出光構造から射出させるように導くことで、生体の管路又は被験部位の位置を示し、手術周辺領域を照明することができることにある。本発明の一態様による光ファイバーの出光構造の一部を示す模式図である図2を参照する。図2において、この出光構造222は、出光端面223と、出光側面227と、を含んでよい。出光端面223は、一般的に、図1に示した導管101の排液端に近接して光ファイバー221の一端に設けられる。出光側面227は、出光端面223に隣接し又は隣接せず光ファイバー221の管体の外側面に設けられてよい。一般的に、光源140からの光は、出光側面が設けられていない光ファイバー221内において、全反射により伝達されて、出光端面223のみから射出する。出光側面127を設けることによって光ファイバー221の内部の全反射を破壊することにより、光ファイバー121内を進行する光を出光側面227から射出させることができる。
【0025】
なお、光ファイバーの出光効率を向上させるために、光ファイバーの側面における出光構造に、複数の微構造を設けてもよい。本発明の複数の態様による光ファイバーの出光構造の一部を示す模式図である図3A〜図3Cを参照する。一例において、光ファイバー321の出光側面において、例えば、複数の刻み目(例えば、図3Aに示した刻み目325)又は複数の窪み(例えば、図3Bに示した窪み328)のような複数の微構造を設けることにより、光ファイバー321の内部の全反射を破壊して側面の出光効率に寄与することが可能である。前記刻み目又は窪みは、規則的に又は不規則に並べられ、少なくとも1つの寸法を有してよいが、これは、当業者に熟知されているため、ここで、詳しく説明しないことにする。
【0026】
別の例において、出光側面327における光ファイバー321の管径(例えば、図3Cに示した管径D)は、光ファイバー321の初期管径(例えば、図3Cに示した管径D)より小さくてもよく、これにより、光ファイバー321の内部の全反射を破壊して、側面における出光効率に寄与する。
【0027】
他の例において、その照明効果を向上させるために、単一又は複数の光ファイバーを、任意に並べて導管の管壁の内側もしくは外側に設けるか、又は管壁に嵌設してよい(図示しない)ことをここで補充的に説明する。ただし、この事項は、当業者が実行可能な各種変更であるため、ここで詳しく説明しないことにする。
【0028】
本発明の別の実施形態による総胆管照明排液装置の一部の構造を示す模式図である図4を参照する。一態様において、この総胆管照明排液装置400は、外套管407と、その中に設けられる導管401及び導管405とを含んでもよい。
【0029】
前記外套管407として従来の内視鏡手術用套管を用いてよい。一態様において、外套管407の管腔409内に、例えば、図1に示した導管101のような導管401を設けてよく、導管405としては、例えば、洗浄管であってよく、導管401及び導管405は、例えば、経鼻胆管ドレナージ(endoscopic nasal biliary drainage、ENBD、Wilson−Cook Medical,Inc.,U.S.A.)のような市販されている導管又はそれに相当する機能を有する他の市販品であってよい。
【0030】
他の態様において、図4に示すように、総胆管照明排液装置400の外套管407の管腔409内に、画像取得装置441を選択的に設けてよい。この画像取得装置441として、例えば、相補型金属酸化膜半導体(complementary metal−oxide semiconductor、CMOS)、電荷結合素子(charge coupled device、CCD)又はそれに相当する機能を有する他の装置のような任意の従来装置を用いてよい。画像取得装置441を画像変換装置(図示しない)に接続してよく、これにより、操作者が評価できるように、画像取得装置441の取得した画像をデジタル画像データに変換する。
【0031】
総胆管照明排液装置の操作
操作に際して、導管401を単独で又は導管405と共に生体の管路(例えば、総胆管又は尿管)に入れることが可能である場合、導管401は、排液端403及び/又は排液端403に近接する管壁の前半部における複数の穿孔から体液(例えば、胆汁)を汲み出すことが可能であり、導管405は、排液端403から、管路を洗浄するための洗浄液(例えば、生理食塩水)を注入して、導管401により汲み出す。
【0032】
本発明の一実施形態による総胆管照明排液装置による腹腔鏡下胆嚢摘出術の実施状況を示す模式図である図5を参照する。以下、腹腔鏡下胆嚢摘出(laparoscopic cholecystectomy)術を例として説明し、また、X線画像装置による補助で、総胆管照明排液装置の位置決めを確認する。まず、例えば、図1に示した総胆管照明排液装置100のような本発明の総胆管照明排液装置500を、内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)管の通路に沿って、生体(例えば、人体又は動物)の口又は鼻(図示しない)から入れることができる。胃505を通過した後、総胆管照明排液装置500(例えば、図1に示した総胆管照明排液装置100)は、膵臓509の膵管512に誤って入らないように、胃505と十二指腸507との間のオッジ括約筋508の開口から、注意深く総胆管510に逆行的に入る。
【0033】
総胆管照明排液装置500は、総胆管510に入った後、胆嚢管513の開口の近傍及び総肝管515を順次通過する。このとき、総胆管照明排液装置500は、外部光源(図示しない)からの光を、総胆管照明排液装置に設けられた光ファイバー(例えば、図1に示した光ファイバー121)の出光構造(例えば、図1に示した出光構造122)から射出させて、総胆管510と総肝管515に透過させるように導くことで、総胆管510と総肝管515の位置をはっきり示し、手術周辺領域を照明することができる。
【0034】
本発明の別の実施形態による総胆管照明排液装置による腹腔鏡下胆嚢摘出術の実施状況を示す模式図である図6を参照する。この態様において、X線画像装置を必要とせずに、目視照明の方法により、総胆管の位置を確認することができる。この態様において、腹腔鏡下胆嚢摘出術中、胆嚢管613の近傍の胆嚢603を切開して開口621を形成し、総胆管照明排液装置600を、胆嚢603側の胆嚢管613の一端613aから穿入させ、総胆管610側の胆嚢管613の他端613bを経由して総胆管610に入れることができる。
【0035】
図5に示した総胆管照明排液装置500(又は、図6に示した総胆管照明排液装置600)より提供される光線により、総胆管510(又は、総胆管610)又は総肝管515の位置がはっきり示されるため、胆嚢管513(又は、胆嚢管613)と胆嚢503(又は、胆嚢603)を正確に摘出することが可能となり、これにより、人為的な判断ミス、更に総胆管510(又は、総胆管610)又は総肝管515(又は、総肝管615)の誤切断が発生するリスクを避けることが可能である。本発明の総胆管照明排液装置500(又は、総胆管照明排液装置600)は、総胆管510(又は、総胆管610)又は総肝管515(又は、総肝管615)の誤切断を効果的に避けることができるため、手術後、脂肪の消化に依然として影響を与えることなく、肝臓501(又は、肝臓601)の右肝管517(又は、右肝管617)と左肝管519(又は、左肝管619)から排出された胆汁は、総胆管510(又は総胆管610)を介して、小腸に順調に排出され得る。
【0036】
そして、総胆管照明排液装置500により提供される導流管(例えば、図1に示した導管101)は、患部に鬱滞した胆汁を汲み出すこと、及び/又は、総胆管510と総肝管515を洗浄することができる。
【0037】
本発明において、特定の装置、素子、構造、被験部位又は特定の機器を例として本発明の総胆管照明排液装置及び腹腔鏡下胆嚢摘出術におけるその使用を説明するが、当業者であれば、本発明がこれに限定されず、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、本発明の総胆管照明排液装置は、他の装置、他の素子、他の構造、他の被験部位又は他の機器により実行することができることを理解することを補足説明しておく必要がある。例として、本発明の総胆管照明排液装置を、例えば、尿管結石手術などの他の内視鏡手術に用いれば、管路の誤切断という残念な事態を避けることも可能である。
【0038】
総胆管照明排液装置は、照明、排液に用いられる以外、総胆管、尿管又は被験部位に長時間(例えば、1時間より長い)置いた後、光線力学的治療法(photo dynamic therapy)を行うことができる。いくつかの態様において、まず、例えば、5−アミノレブリン酸(5−aminolevulinic acid、5−ALA)などの光感受性物質(Photosensitizer、「光増感剤」とも呼ばれる)又は他の光感受性物質により被験部位(例えば、癌組織)を標識することができる。光感受性物質が被験部位に付着した後、総胆管照明排液装置により、特定の波長の光を導入して、被験部位を照射する。また、導入される光が、光感受性物質を基底状態から励起状態に移行させるためのものであるため、利用される波長は、選択される光感受性物質に依存する。光感受性物質は、光エネルギーを吸収した後、基底状態から励起状態に移行すると同時に、エネルギーを放出して単原子酸素及びラジカルを生成し、更に、被験部位における癌細胞を死滅させて治療効果を達成することができる。
【0039】
他の態様において、総胆管照明排液装置は、金属ナノ粒子と組み合わせて、光線力学的治療法を行うこともできる。金属ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子)により被験部位(例えば、癌組織)を標識した後、総胆管照明排液装置によって、特定の波長の光を導入して金属ナノ粒子に照射すれば、金属ナノ粒子の表面プラズマ(Surface plasma)効果を引き起こして熱効果を発生し、治療効果を達成することができる。
【0040】
また、総胆管照明排液装置は、前記光感受性物質と金属ナノ粒子と共に組み合わせて、光線力学的治療法を行うこともできる。光照射された金属ナノ粒子の表面プラズマ効果と熱効果により、光感受性物質の細胞毒性を一層強化して、治療効果を達成することができる。
【0041】
本発明の前記実施形態から理解されるように、本発明の総胆管照明排液装置を用いれば、内視鏡外科手術に際して、この総胆管照明排液装置の導管が、生体の管路に入り、導管の光ファイバーが、光源からの光を光ファイバーの出光構造から射出させて、導管の管壁と生体の管路に透過させるように導くことで、管路又は被験部位の位置を示し、手術周辺領域を照明することにより、内視鏡外科手術中に、誤って管路を損傷するリスクを低減させることができる利点がある。
【0042】
本発明では好適な実施形態を前述の通りに開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様な変更や修正を加えることができる。従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0043】
100、400、500、600 総胆管照明排液装置
101、401、405 導管
103、403 排液端
121、221、321 光ファイバー
122、222、322 出光構造
123、223、323 出光端面
127、227、327 出光側面
140 光源
141 光
325 刻み目
328 窪み
、D 管径
407 外套管
409 管腔
441 画像取得装置
501、601 肝臓
503、603 胆嚢
505、605 胃
507、607 十二指腸
508、608 オッジ括約筋
509、609 膵臓
510、610 総胆管
512、612 膵管
513、613 胆嚢管
515、615 総肝管
517、617 右肝管
519、619 左肝管
613a 一端
613b 他端
621 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排液端を有する導管と、
前記導管の管壁の内側もしくは外側に設けられるか、又は前記管壁に嵌設される少なくとも1本の光ファイバー
とを備え、
前記光ファイバーは、その一端に設けられて前記排液端に近接する出光端面と、その管体外側面に設けられて前記出光端面に近接する複数の出光側面とを少なくとも含む、少なくとも1つの出光構造を備え、
前記導管が生体の管路又は被験部位に入ると、前記光ファイバーは、光源からの光を前記出光構造から射出させて前記導管の前記管壁と前記生体の前記管路に透過させるように導くことで、前記管路又は前記被験部位の位置を示し、手術周辺領域を照明する、総胆管照明排液装置。
【請求項2】
光源が、光ファイバーの他端に設けられ、光の波長が、520nm〜540nmである、請求項1に記載の総胆管照明排液装置。
【請求項3】
複数の出光側面における光ファイバーの管径が、光ファイバーの初期管径より小さい、請求項1または2に記載の総胆管照明排液装置。
【請求項4】
複数の出光側面に、規則的に又は不規則に並べられた複数の刻み目又は複数の窪みを含む、少なくとも1つの寸法を有する複数の微構造が設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の総胆管照明排液装置。
【請求項5】
出光端面からの光の照度が、1ミリワット(mW)〜10mWであり、出光側面からの光の照度が、10ワット(W)/mm〜20W/mmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の総胆管照明排液装置。
【請求項6】
管路が、総胆管又は尿管である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の総胆管照明排液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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