説明

緑化育成組成物,緑化基材及び有機緑化工法

【課題】畜産糞尿等の畜産廃棄物と、剪定木,刈草木屑等の植物性廃棄物を、環境汚染などを伴うことなくリサイクル利用して、厚層緑化基盤材として用いる。
【解決手段】畜産廃棄物を活性汚泥法で処理することにより発生した活性汚泥4及び有機処理水3と、粉砕された植物性廃棄物5を混合熟成して作られた堆肥8に対して、カチオン性クロロプレンラテックスを混合して耐浸食性を向上すると共に、カチオン性凝集剤を添加して団粒化させることによって、耐浸食性を有し且つ団粒化した植物育成に適した緑化育成組成物となり、この緑化育成組成物を法面などに散布することにより厚層緑化基盤材を形成することができ、この結果、畜産、植物性廃棄物の有効利用を図ることかできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化育成組成物,緑化基材及び有機緑化工法に関するものであり、畜産廃棄物及び植物性廃棄物を有効に再利用することができるように工夫した技術である。
本発明では、例えば、畜産廃棄物を活性汚泥法で処理した後に発生する活性汚泥及び有機処理水と、粉砕した植物性廃棄物とを混合熟成して造られた有機堆肥を、団粒化させて、耐浸食性を有する有機物からなる緑化育成組成物として有効利用するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産廃棄物の処理及びその再利用に関しては、平成16年11月1日より、「畜産排泄物の管理の適正化利用の促進に関する法律」が施行され、これに併せて現状では、循環型環境形成を目指して、畜産廃棄物の有効利用が模索されている。
【0003】
植物性廃棄物も、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号)、通称「建設リサイクル法」により、再資源化して有効利用することが要求されている。
【0004】
畜産廃棄物の有効利用としては、畜産廃棄物を活性汚泥法により処理して液体肥料を製造することなどが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−142994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の畜産廃棄物及び植物性廃棄物は、有機堆肥として農作物の肥料に再利用されている。しかし、このような廃棄物は、性能及び経済的効果などの点で問題があり、発生量に比べて需要が限定されており、農業利用分野だけでの処理プロセスだけでは、畜産廃棄物及び植物性廃棄物の全てを利用(消費)することはできず、このような廃棄物処理の問題は完全には解決されていない。
このため、農業利用分野で利用されなかった残りの廃棄物を焼却処理等せざるを得ず、焼却処理等をすることにより環境破壊の大きな原因になっている。
【0007】
この発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、畜産廃棄物を活性汚泥法で処理することにより発生した活性汚泥及び有機処理水と、粉砕された植物性廃棄物とを混合して熟成した有機熟成堆肥を改良し、通気性、保水性、柔軟性、保肥性、浸食防止性などの付加価値を向上させ、広範囲の利用分野に供することができる緑化育成組成物として活用するものである。
なお利用分野としては、緑化、植生、農業などの各利用分野が想定される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決する為に、この発明では以下の構成を採用したものである。
【0009】
この発明の特徴は、畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して発生する活性汚泥と有機処理水及び植物性廃棄物を混合して得られる熟成堆肥成分の大部分は、有機物微細繊維粒子で構成されていることである。
【0010】
即ち、この熟成堆肥を緑化育成組成物として活用時、適量の清水を加えることにより、熟成堆肥水溶液中の有機物微細繊維粒子の大部分がアニオンに帯電することになる。
【0011】
前記熟成堆肥水溶液中に、柔軟性、伸縮性、耐久性、耐候性に卓越した性能を保持するカチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂あるいはカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合したクロロプレンラテックス混合溶液を適量加え、更にカチオン性凝集剤を添加することで、堆肥内の有機物アニオン微細繊維粒子と混合ラテックス中の微細カチオン樹脂粒子及びカチオン凝集粒子イオン同士が結合し、堆肥微細フロックが形成し団粒化され、水分が蒸発すると同時に植物育成促進に適した浸食防止緑化育成組成物が形成される。
【0012】
この浸食防止機能を有する緑化育成組成物は、水分が蒸発することによって乾燥し、クロロプレンゴムの特徴である耐水性、柔軟性、耐候性及び耐蝕性を発揮し、風雨による浸食を防止するなどの特徴をもち、クロロプレンゴムが立体網目構造になった柔軟性のある団粒化有機組成物として提供される。
【0013】
浸食防止機能を有する緑化育成組成物は、降雨、散水で吸水性高分子樹脂が保水し、水溶性粘性樹脂が保水増粘することによって、流失防止効果と水分が供給され植生や種子の発芽が良好に保持される。
【0014】
本発明に使用する畜産廃棄物処理装置は、連続式又は回分式活性汚泥法の何れでも問題がないが、処理水のBODが80ppm以下で、臭気指数が25以下まで処理するのが望ましい。
【0015】
処理水のBODが80ppm以下は、水質汚濁防止法に基づいて自治体が定める処理水の放出基準であり、土壌に散布しても環境に影響を与えない。
【0016】
さらに、活性汚泥と有機処理水及び植物性廃棄物から得られる熟成堆肥の臭気指数が25ppm以下まで熟成処理を行ったものが好ましく、この基準以下であれば、不快感がなく環境問題に至らない。ここで、臭気指数Nとは、人間が感じる臭気濃度S感覚を対数表示した尺度でN=10logSである。
【0017】
また、硝酸態窒素濃度が25以下までの処理した熟成堆肥を使用することで、高度化成肥料を極力排除し、雨水による河川への硝酸態窒素濃度流出を防止することができる。
【0018】
その上、有機処理水及び熟成堆肥に、カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂あるいはカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合したクロロプレンラテックス混合溶液を適量加えることによって、有機処理水及び熟成堆肥の臭気、硝酸態窒素、有機肥料成分が粘着及びホールドされ風雨による流出は防止できる。
【0019】
即ち、請求項1の緑化育成組成物に係る発明では、畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して得た有機処理水に、カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合してなることを特徴とする。
つまり、畜産廃棄物を活性汚泥法処理して発生する有機処理水に、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液を混合することで、風雨水による耐浸食性と植物育成に適した保肥性のある有機液肥が得られることを特徴とする。
【0020】
このように、有機処理水にアニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液を混合し、さらに清水を適量混合したカチオンラテックス液肥水溶液を土壌に散布することにより、水分が蒸発しクロロプレンゴムによる保肥性浸食防止保護膜が形成される。この保護膜の一部は、雨水、散水で溶解、吸水し柔軟性、保水性、保肥性、保温性があり、植物の発芽・育成を促進する浸食保護材として畜産廃棄物を再利用できる。
【0021】
また、請求項2の緑化育成組成物に係る発明では、畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して得た有機処理水に、カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合し、更にカチオン性凝集剤を添加してなることを特徴とする。
つまり、畜産廃棄物処理から発生する有機処理水に、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液を混合し、更に適量の清水と少量のカチオン性凝集剤を添加したカチオンラテックス液肥水溶液を土壌に散布すると、水分が蒸発し、クロロプレンゴムによる網目構造の保肥性浸食防止保護膜が形成され、植物育成に適した有機団粒化液肥が得られることを特徴とする。
カチオン性凝集剤としては、例えば、メタアクリル酸エステルや、アクリル酸エステル等のカチオン性凝集剤を使用することができる。
【0022】
このように、土壌に散布したカチオン性クロロプレンラテックス有機処理水は、有機処理水中の微細繊維及び土壌表面の微細物などをフロック化し、水分が蒸発して乾燥すると通気性に富んだ保肥性浸食保護団粒化層が形成される。この保護団粒化層は、雨水、散水により吸水して、柔軟性、保水性、保肥性、保温性を発揮し、植物の発芽・育成を促進した浸食保護植生緑化促進材として利用できる。
【0023】
請求項3の緑化育成組成物に係る発明では、畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して得た有機処理水及び活性汚泥と、植物性廃棄物とを混合熟成して作られた有機堆肥に、カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合してなることを特徴とする。
つまり、活性汚泥法で処理された有機処理水及び活性汚泥と粉砕した植物性廃棄物を混合熟成して作られた有機熟成堆肥にアニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液を混合すると、柔軟性と耐浸食性がある植物育成に適した有機堆肥が得られることを特徴とする。
【0024】
このように、活性汚泥及び有機処理水と植物繊維質からなる熟成堆肥にアニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液及び清水を適量混合したラテックス堆肥を土壌に散布すると、水分が蒸発して保肥性がある浸食保護堆肥層が形成される。この堆肥層の一部は、雨水、散水で溶解、吸水し柔軟性、保水性、保肥性、保温性があり、植物の発芽・育成を促進した浸食保護堆肥層を兼ね備えた緑化促進保護基盤材として利用できる。
【0025】
請求項4の緑化育成組成物に係る発明では、畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して得た有機処理水及び活性汚泥と、植物性廃棄物とを混合熟成して作られた有機堆肥に、カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合し、更にカチオン性凝集剤を添加してなることを特徴とする。
つまり、畜産廃棄物処理から発生する活性汚泥及び有機処理水と植物繊維質からなる熟成堆肥に、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液を混合し、更に少量のカチオン性凝集剤を添加すると、通気性に富んだ耐浸食性、柔軟性、保水性、保肥性と植物育成に適した有機団粒化堆肥が得られることを特徴とする。
【0026】
このように、活性汚泥及び有機処理水と植物繊維質からなる熟成堆肥にアニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液及び清水に適量のカチオン性凝集剤を添加し土壌に散布すると、熟成堆肥中の微細繊維などがイオン結合でフロック化し、水分が蒸発して乾燥すると保肥性浸食保護団粒化層が形成される。この保護団粒化層は、雨水、散水などで吸水、溶解、増粘し耐浸食性、柔軟性、通気性、保水性、保肥性、保温性にすぐれた性能を持ち、植物の発芽・育成を促進した浸食保護植生緑化基盤材として利用できる。
【0027】
請求項5の緑化基材に係る発明では、緑化育成組成物を、地面に散布してなることを特徴とする。
つまり、畜産廃棄物の利用方法は、前記組成物が活性汚泥法処理による処理水にカチオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液を混合して得られることを特徴とする。
なお、「緑化基材」とは緑化育成組成物を地面に散布して乾燥した物である。
【0028】
このように、活性汚泥処理による処理水とアニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液を混合した液肥は、乾燥すると耐浸食性、保水性及び保肥性があり、カチオン性凝集剤を併用すると散布土壌を団粒化し通気性に富んだ植物の発芽・育成を促進する浸食保護植生緑化保護材として利用できる。
【0029】
また、畜産廃棄物の種類によって植生に与える影響を配慮し、豚、牛、鶏糞などを適量混合して活性汚泥処理すると、肥料バランスが良好になり、化学肥料を添加せず、有機栽培が可能である。
【0030】
請求項6の有機緑化工法に係る発明では、緑化育成組成物に、植物種子と緑化助材を混入したものを、地面に対して散布して、前記地面の表面に厚層緑化基盤材を形成することを特徴とする。
つまり、活性汚泥法処理による処理水にアニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液に、植物種子、緑化助材等を混合して、法面、山野、農地などに散布することを特徴とする。
なお、「厚層緑化基盤材」とは、緑化育成組成物に植物種子と緑化助材を混入したものを、地面に対して散布した物である。
【0031】
このように、浸食防止と緑化を兼ねたカチオン性クロロプレンラテックス有機種子及び緑化助材溶液は、低粘度で施工性がよく簡単に土壌散布ができる。散布後水分の蒸発により耐浸食作用が発揮され、降雨、散水により吸水、溶解、増粘し発芽、育成に好影響を与え、有機肥料成分の溶出が緩衝で長く肥沃な状態を保持でき、化学肥料による環境破壊を緩和する事が可能である。
【0032】
この畜産廃棄物及び植物性廃棄物の利用方法は、畜産廃棄物処理から発生する活性汚泥及び有機処理水と植物繊維質からなる熟成堆肥に、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混ぜたカチオン性クロロプレンラテックス溶液を混合させ、更に少量のカチオン性凝集剤を添加後、植物種子、繊維,篩分土などの緑化助材を加えて有機土壌浸蝕防止緑化育成組成物としたことを特徴とする。
【0033】
このように、有機土壌浸食防止緑化育成組成物を製造することにより、公園、道路
都市緑化、農業などに問題なく適用でき、畜産・植物性廃棄物を有効利用が可能
である。
【0034】
請求項7の有機緑化工法に係る発明では、育成組成物に、植物種子と緑化助材を混入したものを、ポンプで圧送して地面に吹き付けにより散布するか、航空機を利用して空から地面に散布して、前記地面の表面に厚層緑化基盤材を形成することを特徴とする。
つまり、畜産廃棄物及び植物性廃棄物から製造された、有機土壌浸蝕防止機能を有する緑化育成組成物を土壌表層または法面に吹付けることで、植生に適した団粒化土壌と耐浸食土壌がえられ、化学肥料を使用せず、環境破壊の少ない有機緑化工法である。
なお、「航空機」とは、飛行機、ヘリコプター、グライダー、気球、飛行船、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター等を含む、大気中を飛行する機械を意味する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、畜産業者に課せられた「畜産排泄物の管理の適正化利用の促進に関する法律」、及び、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、通称「建設リサイクル法」の目的に合致した緑化育成組成物を製造することにより、畜産廃棄物及び植物性廃棄物の再資源化を達成することができる。
【0036】
この発明では、畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して発生する活性汚泥及び有機処理水と、植物性廃棄物とを混合熟成して得られる有機熟成堆肥を、通気性、保水性、柔軟性、保肥性、団粒化性、浸食防止性などの付加価値を与えることにより、広範囲の緑化育成組成物として有効に再利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、この発明の実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。
【0038】
図1は、畜産廃棄物などの高濃度有機性廃水と、主に建設に伴う植物性廃棄物を原料とした堆肥の生成システムを模式的に示したものである。
高濃度有機性廃水(畜産廃棄物)1を回分式活性汚泥槽2内に流入させて、曝気及び酸化沈殿処理をする。そうすると、回分式活性汚泥槽2内では、上澄みとなった有機処理水(液肥)3と、沈殿した活性汚泥4とに分離する。このようにして分離したら、有機処理水3と活性汚泥4を回分式活性汚泥槽2からそれぞれ分離して取り出す。
【0039】
一方、建築廃材・剪定・伐採木等により得た植物性廃棄物5を粉砕して木・植物屑6を作る。この木・植物屑6と、回分式活性汚泥槽2から取り出した有機処理水3及び活性汚泥4とを混入熟成させることによって、植物の養分が豊富な有機堆肥7が得られる。
【0040】
次に、有機堆肥7を熟成させる。有機堆肥7の熟成は、定期的に切り返しながら4ヶ月以上行い、臭気指数が25以下になると、有機物微細繊維粒子を含む有機熟成堆肥8が得られる。
【0041】
本発明に使用する畜産廃棄物処理装置としては、連続式活性汚泥法による装置又は回分式活性汚泥法による装置の何れでも問題はないが、有機処理水3のBODが80ppm以下で、有機処理水3及び活性汚泥4の臭気指数が25以下まで処理するのが望ましい。
【0042】
図2は、有機熟成堆肥8と緑化資材9等を法面10に吹き付けて、植物育成に適した耐浸食防止用の厚層緑化基盤材11を施工する施工システム(有機緑化工法)を示したものである。
【0043】
この施工システム(有機緑化工法)では、攪拌槽12に、有機熟成堆肥8と、適量の清水13と、植物種子や緑化助材(繊維、篩分土等)を含む緑化資材9を加え、攪拌しながらクロロプレンラテックス混合水溶液14を添加し、均等に分散するまで十分に攪拌する。
その後、カチオン性凝集剤15を少量添加し、再度攪拌する。
【0044】
このようにして攪拌することにより、緑化育成組成物16、即ち、有機熟成堆肥8,清水13,クロロプレンラテックス混合水溶液14,カチオン性凝集剤10及び緑化資材9を混合した混合物が形成される。
【0045】
この混合物である緑化育成組成物16を、ポンプ17により圧送し、スプレー18の先端でエアー19と混合して、法面10に向けて吹き付けると、法面10の表面に厚層緑化基盤材11が形成される。このようにして、法面10の緑化ができる。
【0046】
前述のようにして形成される緑化育成組成物16(厚層緑化基盤材11)は、
(1)植物種子・篩分土等を含む緑化資材9と有機熟成堆肥8との混合物のみならず、
(2)耐浸食性を保持するために、柔軟性、伸縮性、耐水性及び耐候性にすぐれたカチオン性クロロプレンラテックス水溶液を添加し、
(3)更に、カチオン性凝集剤15で有機熟成堆肥8中の微細有機繊維が団粒化することで通気性が向上したものである。
この結果、耐浸食性を有すると共に通気性を有する厚層緑化基盤材11を施工することができ、植物育成に適した肥沃で耐浸食性の良い緑化土壌が形成される。
【0047】
緑化育成組成物16は、前述したように、有機熟成堆肥8,清水13,クロロプレンラテックス混合水溶液14,カチオン性凝集剤15及び緑化資材9を混合・添加した混合物である。
【0048】
このうち、クロロプレンラテックス混合水溶液14は、柔軟性、伸縮性、耐久性、耐候性に卓越した性能を保持するカチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂もしくはカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合したものである。
したがって、クロロプレンラテックスと吸水・水溶性樹脂を加えてなるクロロプレンラテックス混合水溶液14を用いることにより、有機熟成堆肥8の柔軟性、伸縮性、耐久性、耐候性に卓越した性能を保持することが可能となる。
しかも、このような吸水・水溶性の樹脂は、生分解性樹脂であるため、時間の経過と共に劣化・分解していくため、緑化育成にとって好都合である。
【0049】
更にカチオン性凝集剤15を添加することで、有機熟成堆肥8内の有機物アニオン微細繊維粒子と混合ラテックス中の微細カチオン樹脂粒子及びカチオン凝集粒子イオン同士が結合して、堆肥微細フロックが形成されて団粒化される。この結果、水分が蒸発すると同時に植物育成促進に適した浸食防止機能と有機団粒化機能を有する緑化育成組成物16(厚層緑化基盤材11)が形成される。
【0050】
なお、使用する吸水・水溶性樹脂はCMC(カルボキシルメトロセルローズ)、PVA(ポリビニルアルコール)、澱粉等で、緑化完成後生分解を促進する作用のある植物系樹脂が好ましい。
【0051】
このクロロプレンラテックス混合水溶液14は、クロロプレンを乳化重合して製造されたカチオン電荷を帯びたクロロプレン高度ゲル粒子ラテックス40〜70%(重量部)と、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの少なくとも一種と、アミノ基アクリル系モノマーとを共重合して得られたカチオン性アクリル樹脂エマルジョン59〜68%(重量部)と、水溶性樹脂1〜2%(重量部)を混合した溶液である。
【0052】
このクロロプレンラテックス混合水溶液14は、土壌に散布後に乾燥すると、柔軟性・ゴム弾性・通気性・耐久性・対飛散性を兼ね備えた性能を発揮し、散水、降雨があると、保水・増粘性が増大し耐浸食性が得られる。
【0053】
カチオン性クロロプレン高度ゲル粒子及びカチオン性アクリル樹脂粒子の平均粒子径は、0.05μm以上0.33μm以下が好ましく、更に好適には、1.0μm以上1.5μm以下が良い。
PHは9以上が望ましく、固形分は30%以上60%以下が好ましく、更に好適には、45%以上55%以下が良い。水溶性メチルセルロースの添加量は0.5%以上3%以下が好ましく、更に好適には、1.0%以上1.5%以下が良い。
【0054】
浸食防止をする緑化育成組成物16を団粒化する為に添加するカチオン性凝集剤15は、無機・有機系の何れでも良いが、組成物溶液中に含まれている微細有機物繊維に帯電しているノニオン電荷と結合させるので、カチオンタイプのポリアクリルアミド系凝集剤が望ましい。例えばカチオン性凝集剤15として、ポリアクリルアミド系のカチオン性凝集剤などの高分子系凝集剤を用いることができる。
【0055】
上記、緑化育成組成物16を吹き付けて形成した浸食防止機能を果たす厚層緑化基盤材11は乾燥後、降雨、散水によって水溶性樹脂とアクリル樹脂が保水増粘することによって、流失防止効果と水分が供給され種子の発芽や植生が良好に保持される。
【0056】
さらに、本発明において、畜産廃棄物と植物性廃棄物からなる厚層緑化基盤材11は、団粒化して通気性があり経年しても柔軟性が変わらず、土壌硬度25以下(中山式土壌硬度測定器)に保たれ、発芽や植生環境を保護し、栄養分を集め植物に供給する菌根菌や根に根粒を形成し大気中の窒素を固定し土壌を肥沃にする根底菌,放線菌及びアミノ酸・ビタミンなどを生成する光合成細菌などを大増殖させ、植物の育成に適している事が判明した。
また、クロロプレンラテックス混合水溶液14は、溶液中に適度に分散された植物性メチルセルロースが土壌中に含まれた土壌菌、石油分解菌の養分になり生分解を促進し土壌に同化する効果も期待できる。
【0057】
なお上記の例では、緑化育成組成物16は、廃棄物として、有機処理水3と活性汚泥4と植物性廃棄物5を含むものを前提として説明をしたが、活性汚泥及び植物性廃棄物を含まないもの(つまり廃棄物として有機処理水のみを有し、畜産廃棄物及び植物性廃棄物を含まないもの)を使用することも可能である。
更に、緑化育成組成物16に、カチオン性凝集剤15を含まないものを使用することも可能である。
また更に、緑化資材(植物種子や緑化助材等)を含まない緑化育成組成物を散布して、緑化基材を形成することもできる。ちなみに、「緑化基材」は緑化資材を含まない緑化育成組成物を散布して形成したものであるが、「厚層緑化基盤材」は緑化資材を含む緑化育成組成物を散布して形成したものである。
【0058】
緑化育成組成物16の散布方法としては、ポンプ圧送により散布して厚層緑化基盤材11を形成するのみならず、航空機から散布して厚層緑化基盤材11を形成することもできる。
更に、緑化育成組成物16を散布する対象面は、法面10に限らず、緑化を目的とする各種の地面を対象とする。
【実施例1】
【0059】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0060】
本発明の耐浸食防止機能を果たす緑化育成組成物に使用するカチオン性クロロプレンラテックス混合溶液は、クロロプレンを乳化重合して製造されたカチオン電荷を帯びたクロロプレン高度ゲル粒子ラテックスと、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの少なくとも一種と、アミノ基アクリル系モノマーとを共重合して得られたカチオン性アクリル樹脂粒子と、水溶性メチルセルロース混合した溶液で構成されている。
その代表的配合を表示すると以下の通りである。
【0061】
(1)カチオン性クロロプレンラテックス 50〜60 重量部
(固形分50%、PH9以上、比重1.10,平均粒子径0.12μ,粘度16cps,ポリマー比重1.23)
(2)カチオン性アクリルエマルジョン 49〜38
(3)メチルセルロース 1〜2
(4)PH調整剤 少量
上記配合で1時間攪拌し、目的のカチオン性クロロプレンラテックス水溶液を得た。
【実施例2】
【0062】
上記、カチオン性クロロプレンラテックス溶液を厚層緑化基盤材に使用した場合の適用性能を確認する為、土壌硬度が38以上の45度傾斜硬岩法面に70〜100mm厚に吹付け経時変化を測定した。なお、土壌硬度は中山式土壌硬度測定器で測定を行った。
その結果を表1に示す。
なお実施例2の厚層緑化基盤材(緑化育成組成物)の配合例は以下の通りである。
熟成堆肥ソイル 1600L
パルプファイバー 320L
椰子繊維 400L
篩土 300L
種子(バミューダグラス) 2Kg
カチオン性クロロプレンラテックス溶液 54L
高分子凝集剤(ポリアクリルアミド系カチオン性) 150gr
清水 3000L
【0063】
【表1】

【0064】
ここで上記表1に示す比較例1を説明する。この比較例1は、実施例2と同様に、土壌硬度が38以上の45度傾斜硬岩法面に、エチレン−酢酸ビニル系共重合エマルジョンを混入した下記の配合の厚層緑化基盤材を70〜100mm吹付け経時変化を測定した。その結果を表1に示す。
比較例1の厚層緑化基盤材の配合例は以下の通りである。
厚層吹付基材(市販品) 1600L
パルプファイバー 320L
椰子繊維 400L
篩土 300L
種子(バミューダグラス) 2Kg
エチレン−酢酸ビニル系共重合エマルジョン 54L
清水 3000L
【実施例3】
【0065】
畜産廃棄物及び建設に伴う植物性廃棄物から前述のようにして製造した完熟堆肥に、前記カチオン性クロロプレンラテックス溶液、種子、篩土、ファイバーなどの緑化助材などを混合し、適量の清水と少量の高分子凝集剤を加え粘度調整を行い、ポンプ圧送によりエアーノズルで硬度38度、傾斜角45度の法面に30〜50mm厚で均一に吹付けて、浸食防止効果と植物の発芽・生育状態を観察した。
その結果、5日後から発芽し始め、2週間後には全面に均一に発芽した。3ヶ月後一面に植生に覆われた緑化法面が完成した。この間度々の降雨があったが、風雨による土壌の流失は見られなかった。
その結果を表2に示す。
なお、このときの実施例3の厚層緑化吹付材(緑化育成組成物)の配合例は以下の通りである。
熟成堆肥ソイル 1600L
パルプファイバー 320L
椰子繊維 400L
篩土 300L
カチオン性クロロプレンラテックス溶液 54L
高分子凝集剤(ポリアクリルアミド系カチオン性) 150gr
種子(バミューダグラス) 2Kg
清水 3000L
【0066】
【表2】

【0067】
ここで上記表2に示す比較例2を説明する。比較例2は、実施例3と同様な法面に下記配合の一般的な厚層緑化吹付材を30〜50mm厚で均一に吹付け、緑化育成状態を観察した。その配合では、熟成堆肥ソイルの代わりに、市販の厚層吹付基材及び化成肥料を使用し、カチオン性クロロプレンラテックス水溶液に代えて市販の緑化安定剤エチレン−酢酸ビニル系共重合エマルジョンを用いた。その結果、法面の表面が硬くなり7日後から疎らに発芽し始め、3ヶ月後は斑模様になり、散水しても全面に植生で覆られることはなかった。風雨による土壌の流失は当初から見られたが、経時と共に激しくなった。その結果を表2に示す。
比較例2の厚層緑化基盤材の配合例は以下の通りである。
厚層吹付基材(市販品) 1600L
パルプファイバー 320L
椰子繊維 400L
篩土 300L
エチレン−酢酸ビニル系共重合エマルジョン 54L
化成肥料(NPK混合) 30Kg
種子(バミューダグラス) 2Kg
清水 3000L
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】堆肥の生成システムを示す構成図。
【図2】有機緑化工法を示す構成図。
【符号の説明】
【0069】
1 畜産廃棄物
2 回分式活性汚泥槽
3 有機処理水
4 活性汚泥
5 植物性廃棄物
6 木・植物屑
7 有機堆肥
8 有機熟成堆肥
9 緑化資材
10 法面
11 厚層緑化基盤材
12 攪拌槽
13 清水
14 クロロプレンラテックス混合水溶液
15 カチオン性凝集剤
16 緑化育成組成物
17 ポンプ
18 スプレー
19 エアー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して得た有機処理水に、
カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合してなることを特徴とする緑化育成組成物。
【請求項2】
畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して得た有機処理水に、
カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合し、
更にカチオン性凝集剤を添加してなることを特徴とする緑化育成組成物。
【請求項3】
畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して得た有機処理水及び活性汚泥と、植物性廃棄物とを混合熟成して作られた有機堆肥に、
カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合してなることを特徴とする緑化育成組成物。
【請求項4】
畜産廃棄物を活性汚泥法で処理して得た有機処理水及び活性汚泥と、植物性廃棄物とを混合熟成して作られた有機堆肥に、
カチオン性クロロプレンラテックスと、アニオン性吸水・水溶性樹脂又はカチオン性吸水・水溶性樹脂を混合し、
更にカチオン性凝集剤を添加してなることを特徴とする緑化育成組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載した緑化育成組成物を、地面に散布してなることを特徴とする緑化基材。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載した緑化育成組成物に、植物種子と緑化助材を混入したものを、地面に対して散布して、前記地面の表面に厚層緑化基盤材を形成することを特徴とする有機緑化工法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載した緑化育成組成物に、植物種子と緑化助材を混入したものを、ポンプで圧送して地面に吹き付けて散布するか、航空機を利用して空から地面に散布して、前記地面の表面に厚層緑化基盤材を形成することを特徴とする有機緑化工法。

【図1】
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【図2】
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