説明

線材巻取方法及びその装置

【課題】線材の巻取速度が高速であっても、巻取ボビンの鍔部付近において通常巻きと同じフラット状態で線材を巻き取るように確実に修正変更する。
【解決手段】送り出される線材3の線速の変動を調整するダンサー部7を経てから線材3を巻取ボビン11の軸方向に相対的にトラバースしながら巻取ボビン11に巻き取る際に、巻取ボビン11の鍔端より予め設定した検出位置範囲Sにおけるダンサー部7の位置データの最大値と最小値を検出して制御装置17に記憶する。検出位置範囲S以外でのダンサー部7の位置データを検出してその移動平均値を算出する。この移動平均値と最大値との差の第1絶対値と、移動平均値と最小値との差の第2絶対値と、を比較することにより巻取ボビン11の線材巻き姿を判断し、この線材巻き姿の判断に基づいて巻取ボビン11のトラバース位置を変更修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属線、光ファイバ等の細径の線材を巻取リールに高速で巻取る際に用いられる線材巻取装置において、トラバース制御装置による巻取リールの線材の巻き姿を改善し、線材に与えるダメージの軽減を図る線材巻取方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属線、光ファイバ等の細径の線材を巻取ボビンに巻き取る方法としては、プーリトラバース方式と、ボビントラバース方式がある。
【0003】
プーリトラバース方式は、最終のガイドプーリがトラバース用ガイドプーリとしてトラバースすることにより、線材が巻取ボビンに巻き取られる方法である。このとき、トラバース用ガイドプーリの反転位置は線材が巻取ボビンの一方の鍔部から他方の鍔部まで整列して巻き取られるように調整される。
【0004】
一方、ボビントラバース方式は、巻取ボビンをトラバースすることにより、線材が巻取ボビンに巻き取られる方法である。このとき、巻取ボビンの反転位置は線材が巻取ボビンの一方の鍔部から他方の鍔部まで整列して巻き取られるように調整される。
【0005】
なお、上記の両方式のいずれにおいても、巻取ボビンはライン速度とダンサー部の位置信号により回転速度が制御され、巻取ボビンの巻き太りやライン線速の変動に追従するようになっている。
【0006】
図5及び図6を参照するに、従来のボビントラバース方式の巻取装置101としては、線材103が図示しない送出し部より送出され、ガイドプーリ105、ダンサー部107、ガイドプーリ105を介し、巻取装置101にて巻取ボビン109aに巻き取られる。巻取ボビン109aの速度変動は図示しない送出し部と巻取ボビン109aとの間で貯線量の増減となり、ダンサー部107の上下変動となる。
【0007】
図5に示されているように、ダンサー部107の上下動位置の変動データAは、検出器により破線Aで示すように制御部111に送られる。制御部111からは巻取用モータ113に対して破線Bで示すように回転速度指令Bが与えられ、巻取用モータ113の回転速度を調節して巻取りが行われる。
【0008】
一方、巻取装置101はロータリエンコーダ115によりトラバース位置データDが常に検出されて破線Dで示すように制御部111に送られる。制御部111からは、決められた反転位置にて反転するようトラバース用モータ117に対して破線Cで示すように回転速度指令が与えられ、線材103が巻取ボビン109aに均一に巻き取られるようにしている。
【0009】
しかし、線材103の線速が遅い場合には特に問題ないが、線速が速くなると、巻取り回転速度、トラバース速度も高速となり、わずかな反転位置のずれでも「巻き不良」の原因となる。すなわち、巻取ボビン109aの両側の鍔際109b、109cで巻き形状が巻き太ったり巻き細ったりして、巻きが不均一な状態の「巻き不良」となる。
【0010】
そこで、トラバース位置データDが巻取ボビン109aの鍔際109b、109cから所定の範囲内にある場合にしぼって、ダンサー部107の位置情報Aが検出器から制御部111へと取り込まれるようにし、ダンサー部107の基準となる位置からの変位をモニタし、制御部111ではダンサー部107の位置情報Aにより線材103が巻取ボビン109aに巻かれている巻き状態の判断が行われる。そして、前記位置情報Aが線材103と巻取ボビン109aとのトラバース反転位置の決定にフィードバックされるようにして、トラバース反転位置が適正に変更(修正)されるようにしている。
【0011】
上記の巻き状態の判断方法としては、例えば、制御部111に記憶された各鍔際109b、109c付近におけるダンサー部107の位置データをそれぞれ移動平均化し、このダンサー部107の移動平均値が予め設定した変位しきい値(変位閾値)を超えたか否かを比較判断している。この判断に基づき、移動平均値が変位しきい値を超えた場合、トラバース反転位置を変更修正するようにフィードバックしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−341932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、従来の線材巻取方法においては、ダンサー部107の移動平均値と変位しきい値を比較して前記移動平均値が変位しきい値を超えた場合にトラバース反転位置を変更するだけでは、巻取ボビン109aの線材103の巻き姿がフラットにならない場合が起こるという問題点があった。
【0013】
すなわち、ダンサー部107の制御を行う場合はフィードバック制御となるので、例えばダンサー部107が上がった場合は、制御的に巻取り回転を下げようと働き、上下に必ずハンチングが生じることになる。そのために、線材103の巻きが巻取ボビン109aの各鍔際109b、109c付近で上がっているのか、下がっているのかを判断できず、誤検出を起こす可能性があるという問題点があった。
【0014】
この誤検出が生じた場合は巻き姿が悪くなる。この現象は線材103が細径で、高速で巻き取られ且つ線材103の張力を低く抑えなければならない場合は顕著に生じる問題点である。
【0015】
巻き姿が悪くなると、巻取ボビン109aの鍔際109b、109cに線材103の盛り上がりや落ち込みが生じるために、部分的な巻き圧力又はマイクロベンドにより光ファイバの伝送損失が悪くなる。また、鍔際109b、109cの端面擦れにより光ファイバの強度不良が生じて光ファイバ表面の損傷が発生するという問題点があった。
【0016】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の線材巻取方法は、送り出される線材の線速の変動を調整するダンサー部を経てから前記線材を当該線材の供給方向と直交する巻取ボビンの軸方向に相対的にトラバースしながら前記巻取ボビンに巻き取る際に、
前記巻取ボビンの鍔端より予め設定した検出位置範囲における前記ダンサー部の位置データの最大値と最小値を検出して制御装置に記憶し、前記検出位置範囲以外での前記ダンサー部の位置データを検出してその移動平均値を算出し、この移動平均値と前記最大値との差の第1絶対値と、前記移動平均値と前記最小値との差の第2絶対値と、を比較することにより巻取ボビンの線材巻き姿を判断し、この線材巻き姿の判断に基づいて巻取ボビンのトラバース位置を変更修正することを特徴とするものである。
【0018】
また、この発明の線材巻取方法は、前記線材巻取方法において、巻取ボビンの線材巻き姿は、前記第1絶対値と第2絶対値のうちの大きい方の側をその検出方向として判断し、前記第1絶対値が大きいときは前記移動平均値に対して線材の盛り上がり方向とし、前記第2絶対値が大きいときは前記移動平均値に対して線材の落ち込み方向として判断することが好ましい。
【0019】
また、この発明の線材巻取方法は、前記線材巻取方法において、前記移動平均値に対して線材の盛り上がりを判断する第1しきい値と、線材の落ち込みを判断する第2しきい値と、を予め設定し、前記第1絶対値と第2絶対値をそれぞれ対応する第1しきい値及び第2しきい値の範囲内に収めるように巻取ボビンのトラバース位置を変更修正することが好ましい。
【0020】
この発明の線材巻取装置は、送り出される線材の線速の変動を調整するダンサー部と、このダンサー部を通過した前記線材の供給方向と直交する軸方向に相対的にトラバースしながら巻き取る巻取ボビンと、前記ダンサー部の位置データを検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置により検出したダンサー部の位置データであって、前記巻取ボビンの鍔端より予め設定した検出位置範囲における前記位置データの最大値と最小値を記憶するメモリと、前記検出位置範囲以外での前記ダンサー部の位置データを検出してその移動平均値を算出する演算装置と、この移動平均値と前記最大値との差の第1絶対値と、前記移動平均値と前記最小値との差の第2絶対値と、を比較することにより巻取ボビンの線材巻き姿を判断する比較判断装置と、この線材巻き姿の判断に基づいて巻取ボビンのトラバース位置を変更修正する指令を与える指令部と、を備えた制御装置と、
からなることを特徴とするものである。
【0021】
また、この発明の線材巻取装置は、前記線材巻取装置において、前記制御装置の比較判断装置が、前記第1絶対値と第2絶対値のうちの大きい方の側を巻取ボビンの線材巻き姿の検出方向として判断し、前記第1絶対値が大きいときは前記移動平均値に対して線材の盛り上がり方向とし、前記第2絶対値が大きいときは前記移動平均値に対して線材の落ち込み方向とすることが好ましい。
【0022】
また、この発明の線材巻取装置は、前記線材巻取装置において、前記制御装置が、前記移動平均値に対して線材の盛り上がりを判断する第1しきい値と、線材の落ち込みを判断する第2しきい値と、を予め設定し、前記第1絶対値と第2絶対値をそれぞれ対応する第1しきい値及び第2しきい値の範囲内に収めるように巻取ボビンのトラバース位置を変更修正する指令を与えることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、巻取ボビンの鍔部付近での線材の巻き取りが盛り上がりか、あるいは落ち込みかの誤検出がなくなるので、線材の巻取速度が高速であっても、巻取ボビンの鍔部付近において通常巻きと同じフラット状態で線材を巻き取るように確実に素早く修正することができる。したがって、部分的な巻き圧力又はマイクロベンドによる光ファイバの伝送損失を低減でき、鍔部の端面擦れによる線材の強度不良の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1及び図2を参照するに、この実施の形態に係る線材巻取方法は、プーリトラバース方式と、ボビントラバース方式のいずれの線材巻取装置に対しても適用されるものである。この実施の形態ではボビントラバース方式の線材巻取装置1を例にとって説明する。
【0026】
ボビントラバース方式の線材巻取装置1は、金属線、光ファイバ等の細径の線材3が図示しない送出し部より送出され、ガイドプーリ5、ダンサー部7、ガイドプーリ5を介し、線材3は当該線材3の供給方向と直交する巻取ボビン11の軸方向に相対的にトラバースしながら巻取用モータ9の回転駆動により巻取ボビン11に巻き取られる。巻取ボビン11のトラバース範囲TLは、巻取ボビン11の鍔部13A,13Bの端面間の距離範囲であり、線材3は鍔部13A,13Bの際でトラバース反転するように調整される。また、巻取ボビン11における速度変動は、図示しない送出し部と巻取ボビン11との間で貯線量の増減となり、ダンサー部7の上下変動となる。
【0027】
ここで、ダンサー部7の動きを説明すると、適切な巻き状態で巻き取られている時のダンサー部7の位置を基準とし、この基準位置Nを「中立点」と称する。しかし、トラバースの反転位置が巻取ボビン11の鍔部13A,13Bの適切な位置より外側にずれているために、鍔部13A,13Bの際では線材3がより多く巻き取られて巻き太った形状が形成されると、線材3にかかる張力が増大するためにダンサー部7にて貯線されていた線材3が放出される方向となる。つまり、ダンサー部7は図2において中立点Nより上方へと移動する。
【0028】
逆に、トラバースの反転位置が巻取ボビン11の鍔部13A,13Bの適切な位置より内側にずれているために、鍔際では線材3がより少なく巻き取られて巻き細った形状が形成されると、線材3にかかる張力が減少するためにダンサー部7では線材3が貯線される方向となる。つまり、ダンサー部7は図2において中立点Nより下方へと移動することとなる。
【0029】
ダンサー部7の前記中立点Nに対する上下動位置の変動データA(位置データ)は、図1に示されているように、位置検出器15により検出されて実線Aに示されているように制御装置17のA/D変換部19でA/D変換されてから中央処理装置としてのCPU21に送られる。
【0030】
なお、制御装置17のCPU21には、前記巻取ボビン11の鍔部13A,13Bの端面より予め設定した検出位置範囲Sなどの種々のデータやプログラム等を入力する入力装置23と表示装置25と、入力データや位置検出器15により検出された前記変動データAの最大値AMAXと最小値AMINのデータ等を記憶するメモリ27と、メモリ27内のデータや位置検出器15により検出されたデータに基づいてダンサー部7の位置データAの移動平均値Dを算出する演算装置29と、前記移動平均値Dと前記最大値AMAXとの差の第1絶対値と、前記移動平均値Dと前記最小値AMINとの差の第2絶対値と、を比較することにより巻取ボビン11の線材巻き姿を判断する比較判断装置31と、この線材巻き姿の判断に基づいて巻取ボビン11のトラバース位置を変更修正する指令や他の指令を与える指令部33と、が接続されている。
【0031】
制御装置17の指令部33からは実線Bに示されているように巻取用モータ9に対して回転速度指令Bが与えられ、巻取用モータ9の回転速度を調節して巻取りが行われる。
【0032】
一方、線材巻取装置1はトラバース位置検出用のロータリエンコーダ35によりトラバース位置データCが常に検出されて実線Cに示されているように制御装置17に送られる。また、制御装置17の指令部33からは、決められたトラバースの反転位置にて反転するようトラバース用モータ37に対して実線Dに示されているように回転速度指令Dが与えられ、線材3が巻取ボビン11に均一に巻き取られるように構成されている。
【0033】
この発明の実施の形態の主要部を構成する点として、線材3を巻取ボビン11に均一に巻き取る線材巻取方法について説明する。
【0034】
線材巻取方法は、図1及び図4に示されているように、巻き形状が悪化するのは大抵の場合、巻取ボビン11の鍔部13A,13B付近であるので、トラバース位置データCが巻取ボビン11の鍔部13A,13Bの端面から予め設定した検出位置範囲S内にある時のダンサー部7の変動データAの特に最大値AMAXと最小値AMINが検出されるようにしている。
【0035】
また、巻取ボビン11の鍔部13A,13Bの付近以外の通常巻きで巻き取っている時のダンサー部7の変動データAが、位置検出器15により検出されて制御装置17のCPU21のメモリ27内に記憶されると共に演算装置29により演算されて平均化される。この移動平均値Dは、上述した中立点Nの位置データであり、「基準データD」とされる。
【0036】
また、図3に示されているように、前記検出位置範囲Sでのダンサー部7の変動データAの最大値AMAXと最小値AMINが、位置検出器15により検出されて制御装置17のメモリ27内に記憶される。なお、図3における検出の範囲はトラバースの反転時の往復長さであるので変動データAの検出方向Fにおいて前記検出位置範囲Sの2倍(2S)となる。
【0037】
さらに、通常巻きに対して盛り上がり又は落ち込みの判断基準となる「しきい値」がそれぞれ予め設定されており、入力装置23にて入力されている。なお、この実施の形態では、盛り上がり側の「しきい値」を第1しきい値Dとし、落ち込み側の「しきい値」を第2しきい値Dとする。
【0038】
ダンサー部7は一方のしきい値D又はDを超える現象が生じた場合、これを抑えるためにその逆方向にフィードバック制御されるので、その慣性によりハンチングが生じる。したがって、上記の検出位置範囲S内では、ダンサー部7の変動データAの最大値AMAXと最小値AMINが検出される。つまり、巻取ボビン11が正常な線材巻き姿を生じていない場合は、検出位置範囲S内で第1しきい値Dと第2しきい値Dを超える変動データAが生じることになる。しかし、上記のハンチングによる変動データAは、ダンサー部7の動作の性質上、最初にしきい値D又はDを超えた数値より必ず低い数値となる。
【0039】
そこで、第1しきい値Dに対する最大値AMAXの差の第1絶対値と、第2しきい値Dに対する最小値AMINの差の第2絶対値と、の大きい方を検出方向とすることで、通常巻きに対して盛り上がり方向か、あるいは落ち込み方向かの判断時の誤検出を防止することとしている。
【0040】
すなわち、第1しきい値Dに対する最大値AMAXの差の第1絶対値を盛り上がりデータをdとし、第2しきい値Dに対する最小値AMINの差の第2絶対値を落ち込みデータをdとすると、
盛り上がりデータd=|(AMAX−D)−D
落ち込みデータd=|(AMIN−D)−D
となる。
【0041】
制御装置17においては、上記のデータd,dを比較して、d>dの場合は線材巻き姿が盛り上がり方向にあると判断され、その逆に、d<dの場合は線材巻き姿が落ち込み方向にあると判断される。
【0042】
例えば、図4に示されているように、巻取ボビン11の鍔部13A,13B付近で盛り上がりが生じた場合は、ダンサー部7の変動データA(位置データ)が図3に示されているようになる。このときの例として、基準データDが例えば10であり、第1しきい値Dを+3とし、第2しきい値Dを例えば−3とし、変動データAの最大値AMAXが例えば20を示し、変動データAの最小値AMINが例えば5を示した場合は、
盛り上がりデータd=|(AMAX−D)−D
=|(20−10)−3|=7
落ち込みデータd=|(AMIN−D)−D
=|(5−10)−(−3)|=2
となる。
【0043】
したがって、この場合はd>dであるので、線材巻き姿が盛り上がり方向にあると判断される。
【0044】
上記のように線材巻き姿が盛り上がり方向にあると判断した場合は、制御装置17からトラバース用モータ37に対して巻取ボビン11のトラバースの反転位置を巻取ボビン11の外側(図4において右側)に広げるように回転速度指令Dが与えられる。
【0045】
その結果、ダンサー部7の変動データAの最大値AMAXと最小値AMINが基準データDの数値に近づくことになる。換言すれば、ダンサー部7の変動データAが第1しきい値Dと第2しきい値Dとの間に収まるようになり、巻取ボビン11ではフラットで安定した線材3の巻き姿を実現することができる。
【0046】
一方、d<dとなり、線材巻き姿が落ち込み方向にあると判断した場合は、巻取ボビン11のトラバースの反転位置を巻取ボビン11の内側(図4において左側)に狭めるように回転速度指令Dが与えられる。なお、この場合は、上記の線材巻き姿が盛り上がり方向にある場合と逆の現象で考えれば容易に理解できるので具体的な説明は省略する。
【0047】
なお、たとえ、一回の変更修正でダンサー部7の変動データAが第1しきい値Dと第2しきい値Dとの間に収まらなくとも、上述した変更修正を2回、3回と繰り返し行って確実に安定させることができる。
【0048】
以上のことから、線材3の巻取ボビン11の鍔部13A,13B付近での巻き取り状態が盛り上がりか、あるいは落ち込みかを誤検出しなくなるので、線材3の巻取速度が高速であっても、巻取ボビン11の鍔部13A,13B付近において線材3を通常巻きと同じフラット状態で巻き取ることができる。その結果、巻取ボビン11の鍔部13A,13Bに線材3の盛り上がりや落ち込みがなくなるために、部分的な巻き圧力又はマイクロベンドによる光ファイバの伝送損失を低減できる。
【0049】
また、上記の理由から、鍔部13A,13Bの端面擦れによる強度不良の低減を図ることができる。すなわち、僅かなダンサー部7の変位により線材巻き姿が盛り上がりか、あるいは落ち込みかの検出判断が可能であるので、線材3のフラット巻き状態に素早く修正できるために線材3としての例えば光ファイバ表面の損傷を防ぐことができる。
【0050】
なお、この発明は前述した実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことによりその他の態様で実施し得るものである。
【0051】
前述した例では、鍔部13A,13Bの線材巻き姿が通常巻きに対して盛り上がり方向か、あるいは落ち込み方向かを判断するために、第1しきい値Dに対する最大値AMAXの差の第1絶対値を盛り上がりデータをdとし、第2しきい値Dに対する最小値AMINの差の第2絶対値を落ち込みデータをdとしているが、その他の例としては、単に移動平均値Dに対する最大値AMAXの差の第1絶対値を盛り上がりデータをd’とし、移動平均値Dに対する最小値AMINの差の第2絶対値を落ち込みデータをd’としても構わない。
【0052】
すなわち、盛り上がりデータd’=|AMAX−D
落ち込みデータd’=|AMIN−D
としても十分に判断できる。
【0053】
この場合も前述した実施の形態と同様に、上記のデータd’,d’を比較して、d’>d’の場合は線材巻き姿が盛り上がり方向にあると判断され、その逆に、d’<d’の場合は線材巻き姿が落ち込み方向にあると判断される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施の形態の線材巻取装置の概略的な説明図である。
【図2】この発明の実施の形態の線材巻取装置における線材の巻取工程の説明図である。
【図3】ダンサー部の位置データAを示したグラフである。
【図4】巻取ボビンの鍔部付近の検出位置範囲を示すもので、巻取ボビンの鍔部付近の盛り上がり状態の説明図である。
【図5】従来の線材巻取装置の概略的な説明図である。
【図6】従来の線材巻取装置における線材の巻取工程の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 線材巻取装置
3 線材
5 ガイドプーリ
7 ダンサー部
9 巻取用モータ
11 巻取ボビン
13A,13B 鍔部
15 位置検出器
17 制御装置
19 A/D変換部
21 CPU
23 入力装置
25 表示装置
27 メモリ
29 演算装置
31 比較判断装置
33 指令部
35 ロータリエンコーダ
37 トラバース用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り出される線材の線速の変動を調整するダンサー部を経てから前記線材を当該線材の供給方向と直交する巻取ボビンの軸方向に相対的にトラバースしながら前記巻取ボビンに巻き取る際に、
前記巻取ボビンの鍔端より予め設定した検出位置範囲における前記ダンサー部の位置データの最大値と最小値を検出して制御装置に記憶し、前記検出位置範囲以外での前記ダンサー部の位置データを検出してその移動平均値を算出し、この移動平均値と前記最大値との差の第1絶対値と、前記移動平均値と前記最小値との差の第2絶対値と、を比較することにより巻取ボビンの線材巻き姿を判断し、この線材巻き姿の判断に基づいて巻取ボビンのトラバース位置を変更修正することを特徴とする線材巻取方法。
【請求項2】
巻取ボビンの線材巻き姿は、前記第1絶対値と第2絶対値のうちの大きい方の側をその検出方向として判断し、前記第1絶対値が大きいときは前記移動平均値に対して線材の盛り上がり方向とし、前記第2絶対値が大きいときは前記移動平均値に対して線材の落ち込み方向として判断することを特徴とする請求項1記載の線材巻取方法。
【請求項3】
前記移動平均値に対して線材の盛り上がりを判断する第1しきい値と、線材の落ち込みを判断する第2しきい値と、を予め設定し、前記第1絶対値と第2絶対値をそれぞれ対応する第1しきい値及び第2しきい値の範囲内に収めるように巻取ボビンのトラバース位置を変更修正することを特徴とする請求項1又は2記載の線材巻取方法。
【請求項4】
送り出される線材の線速の変動を調整するダンサー部と、このダンサー部を通過した前記トラバースしながら巻き取る巻取ボビンと、前記ダンサー部の位置データを検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置により検出したダンサー部の位置データであって、前記巻取ボビンの鍔端より予め設定した検出位置範囲における前記位置データの最大値と最小値を記憶するメモリと、前記検出位置範囲以外での前記ダンサー部の位置データを検出してその移動平均値を算出する演算装置と、この移動平均値と前記最大値との差の第1絶対値と、前記移動平均値と前記最小値との差の第2絶対値と、を比較することにより巻取ボビンの線材巻き姿を判断する比較判断装置と、この線材巻き姿の判断に基づいて巻取ボビンのトラバース位置を変更修正する指令を与える指令部と、を備えた制御装置と、
からなることを特徴とする線材巻取装置。
【請求項5】
前記制御装置の比較判断装置が、前記第1絶対値と第2絶対値のうちの大きい方の側を巻取ボビンの線材巻き姿の検出方向として判断し、前記第1絶対値が大きいときは前記移動平均値に対して線材の盛り上がり方向とし、前記第2絶対値が大きいときは前記移動平均値に対して線材の落ち込み方向として判断することを特徴とする請求項4記載の線材巻取装置。
【請求項6】
前記制御装置が、前記移動平均値に対して線材の盛り上がりを判断する第1しきい値と、線材の落ち込みを判断する第2しきい値と、を予め設定し、前記第1絶対値と第2絶対値をそれぞれ対応する第1しきい値及び第2しきい値の範囲内に収めるように巻取ボビンのトラバース位置を変更修正する指令を与えることを特徴とする請求項4又は5記載の線材巻取装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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