説明

線条体配列方法及び線条体配列部材

【課題】複数の線条体を高精度に位置決めして配列し、その表面を損傷させることなくかつ取り外し容易に固定する線条体配列方法及び線条体配列部材を提供する。
【解決手段】長手方向の曲げが付加された線条体120を、直線状に矯正しながら配列部材100の隔壁103の間に嵌め込んでいく。隔壁103は、隣接する隔壁103との間隔を線条体120の幅よりも若干大きくなるように形成されており、線条体120を強い力で圧入することなく隔壁103間に嵌め込むことが可能となっている。線条体120が隔壁103間に嵌め込まれると、線条体120の曲げによって部分的に線条体120と隔壁103とが接触し、隔壁103に対し曲げを矯正したことによる反発力が加えられる。この線条体120による反発力によって、線条体120が隔壁103間に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバ等の線条体を複数本2次元に配列して平面表示装置の表示部に用いるための線条体配列方法及び線条体配列部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の2次元基板を用いた平面表示装置では、表示画面を大型化するのに伴って画面サイズの2乗に比例して画素数が増加するとともに、平面表示装置の基板となるガラス板の大型化も必要となる。その結果、画素の不良発生率が改善されない場合には、画面の大型化に伴って歩留まりが著しく低下してしまうことになる。画面上の1箇所にでも素子に不良が発生すると、一部だけを交換して修理するといったことができないため、画面ごと使用できなくなり、画面1枚当りの製造コストが大幅に上昇してしまうといった問題があった。
【0003】
これに対し特許文献1では、発光素子が形成されたファイバを複数並べることにより、2次元の平面表示装置を構成することが記載されている。このように、ファイバ等の線条体を複数並べて平面表示装置を構成することにより、発光素子に不良が発生した場合でも、一部の線条体のみを取り替えることが可能となることから、歩留まりを大幅に改善できるといった利点があった。
【0004】
特許文献1に記載のように、複数の線条体を並べて平面表示装置を構成するためには、各線条体の位置決めを高精度に行って配列する必要がある。線条体の径は、平面表示装置の大きさに比べて極めて小さいことから、非常に多数本の線条体を高精度に位置決めして平行に配列する必要がある。このような複数本の線条体を位置決めして固定する技術として、例えば特許文献2〜4に開示されているものを用いることができる。
【0005】
特許文献2では、ファイバをキャリアに強固に固定する方法が記載されており、この方法を用いて複数本平行に配列された線条体の端部を固定することができる。また特許文献3では、V字状の溝が複数並列に形成されたファイバ整列部材が開示されており、各V字溝にファイバ等の線条体を配置することで、複数の線条体を所定の間隔で配列することが可能となっている。さらに特許文献4では、ファイバを損傷することなく確実に固定することができる管状体の製造法が開示されており、この技術を線条体を締め付けて固定するのに用いることができる。
【特許文献1】特表2002−538502号公報
【特許文献2】特開平05−011122号公報
【特許文献3】特開平06−037807号公報
【特許文献4】特開平08−160253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の線条体配列方法及び線条体配列部材では、以下のような課題があった。線条体を用いて平面表示装置等を作製する場合には、表示面側と反対側の線条体表面に発光素子を形成するだけでなく、線条体同士が隣接する面にも反射層を形成する等、線条体表面の異なる面に各種デバイスを形成するために線条体を回転させる必要があるが、この場合にも線条体の位置決めを高精度に行うとともに、線条体の回転によって線条体がねじれたり、長手方向の位置がずれてしまうことのないようにする必要がある。
【0007】
上記のように、線条体を用いて平面表示装置の基板を形成するためには、複数の線条体を高精度に位置決めして平行に配列する必要があるのに加えて、高精度に位置決めして固定した線条体を一旦取り外して回転させ、これを再び高精度に位置決めして固定する必要があるが、このような線条体の配列方法及び配列部材はこれまで知られていない。
【0008】
特許文献2では、凹溝にファイバを置いて接着剤で固定しているが、このように接着剤を用いて固定する方法では線条体を回転させることができなくなってしまい、平面表示装置等の製造に用いることはできない。また、特許文献2ではファイバの端部のみを固定しており、これを線条体の全長にわたって固定する配列方法及び配列部材に適用することはできない。
【0009】
また特許文献3によれば、複数並列に形成されたV字溝に線条体を配置することで位置決めを行うことは可能であるが、位置決めして配置した線条体を固定する方法は示されていない。また、本特許文献でも、ファイバの端部のみの位置決めを行っているが、全長に渡って位置決めして固定することはできない。さらに、一旦位置決めした線条体を取り外して回転させ、再び高精度に位置決めして固定する方法については、なんら記載が見られない。
【0010】
さらに特許文献4では、線条体を締め付けて固定することは可能であるが、これを表面に発光素子等の各種デバイスが形成された線条体に適用すると、締め付けによってデバイスを損傷させてしまう可能性が高く、平面表示装置等の製造に用いることはできない。
【0011】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、複数の線条体を高精度に位置決めして配列し、その表面を損傷させることなくかつ取り外し容易に固定する線条体配列方法及び線条体配列部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の線条体配列方法の第1の態様は、複数の線条体を並べてその平面に所定のデバイスを形成する平面表示装置の製造工程において、断面が略矩形状で長手方向の2辺が平行な第1の平面を少なくとも1つ有する前記線条体を、複数本平行に配列する線条体配列方法であって、所定の剛性を有する前記線条体に長手方向の曲げを付加し、前記線条体と略等しい長さに形成された所定幅の隔壁を前記第1の平面の幅より大きい所定の間隔を設けて複数本平行に配列し、前記線条体を前記隔壁の間に前記曲げを矯正しながら嵌合させて前記第1の平面がすべて同一平面上に配列されるよう位置決めし、前記曲げを矯正したことによる反発力で前記隔壁の側面を押圧させることで前記線条体を前記隔壁の間に固定することを特徴とする。
【0013】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記第1の平面の幅を50μm以上1mm以下とすることを特徴とする。
【0014】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記隔壁を配置する前記所定の間隔を、前記第1の平面の幅の110%以下とすることを特徴とする。
【0015】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記第1の平面と略直角な長手方向の面を側面としたとき、前記隔壁の高さを前記側面の高さの40%以上とすることを特徴とする。
【0016】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記線条体は、少なくとも1端が前記隔壁の長手方向先端より先に突き出した突出部を有しており、前記突出部を把持して前記線条体を前記隔壁の間から取り外すことを特徴とする。
この態様によれば、把持部以外に触れることなく線条体を隔壁の間から取り外すことが可能となる。
【0017】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記側面の高さを、前記第1の平面の幅以下でかつ50μm以上1mm以下とすることを特徴とする。
【0018】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記線条体断面の4つの角部は、それぞれの前記角部を形成する2辺の短辺側の長さの5%以上の長さのR部を形成していることを特徴とする。
【0019】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記隔壁間の底面の中央部に、全長に渡って窪み部を形成し、さらに前記隔壁と前記底部とで形成される角部には前記隔壁の高さの10%以下のR部を形成することを特徴とする。
【0020】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記線条体にガラスを用いることを特徴とする。
【0021】
本発明の線条体配列方法の他の態様は、前記隔壁に、前記線条体と略等しい熱膨張係数を有する材質を用いることを特徴とする。
【0022】
本発明の線条体配列部材の第1の態様は、複数の線条体を並べてその平面に所定のデバイスを形成する平面表示装置の製造工程において、断面が略矩形状で長手方向の2辺が平行な第1の平面を少なくとも1つ有する前記線条体を、複数本平行に配列する線条体配列部材であって、前記線条体と略等しい長さに形成され、前記第1の平面の幅より大きい所定のピッチで平行に配列された所定幅の隔壁を複数備え、前記線条体に事前に付加された曲げを矯正しながら前記隔壁の間に前記線条体を全長に渡り嵌合させて固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上説明の通り本発明によれば、複数の隔壁を適切なピッチで配置し、その間に断面が略矩形状で長手方向の曲げが付加された線条体を配置することで、複数本の線条体を高精度に位置決めして配列し、その表面を損傷させることなくかつ取り外し容易に固定することができる線条体配列方法及び線条体配列部材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態における線条体配列方法及び線条体配列部材について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0025】
本発明の第1の実施の形態に係る線条体配列方法及び線条体配列部材を、図1を用いて以下に説明する。図1(a)に示す斜視図は、本実施形態の線条体配列方法に基づいて、線条体配列部材100に複数の線条体120を位置決めして配列した状態を示している。また図1(b)は、線条体配列部材100の断面の一部及び線条体120の断面を示す断面図であり、図1(c)は、線条体配列部材100に配列された1本の線条体120を拡大して表示した上面図である。
【0026】
本実施形態の線条体配列部材100は、基材101に所定のピッチP1で凹溝102を形成することで、所定幅の隔壁103を同じピッチP1で複数平行に形成している。そして、隣接する隔壁103の間(すなわち凹溝102)に線条体120を嵌め込むことで、複数の線条体120を高精度に位置決めして平行に配列することが可能となっている。
【0027】
線条体120は、断面が図1(b)に示すような略矩形状に形成されており、長手方向4面のうち少なくとも1面は長手方向の2辺が平行な平面(第1の平面)120aとなっており、平面表示装置を構成するのに必要な発光素子等のデバイスをこの第1の平面120a上に形成するものとしている。また、デバイスを形成する面を第1の平面120aのみとする必要はなく、例えば第1の平面120aと略垂直な側面120bに、反射層等を形成するようにしてもよい。
【0028】
本実施形態の線条体120は、所定の剛性(可撓性)を有しており、長手方向の曲げを事前に付加させるようにしている。この曲げは、例えば線条体120をリールに巻き付けておくことで容易に付加することができる。この長手方向の曲げは、長手方向に垂直な1方向だけでなく、さらに別の垂直方向にも付加されていてよい。このような曲げが付加された線条体120を線条体配列部材100の隔壁103の間に配列させるためには、線条体120を直線状に矯正しながら嵌め込んでいく必要がある。
【0029】
一方、基材101上に形成された隔壁103は、隣接する隔壁103との間隔B1を線条体120の幅A1よりも若干大きくなるように形成されており、線条体120を強い力で圧入することなく隔壁103間に嵌め込むことが可能となっている。線条体120には事前に曲げが付加されていることから、隔壁103間に嵌め込まれると、図1(c)に示すように、線条体120の曲げによって部分的に線条体120と隔壁103とが接触し、隔壁103に対し曲げを矯正したことによる反発力が加えられる。この線条体120による反発力によって、線条体120が隔壁103間に固定されることになる。
【0030】
上記のように、曲げを矯正したことによる反発力によって線条体120が固定されるようにするには、線条体120の第1の平面120aの幅A1を50μm以上1mm以下とするのがよい。また、その他の面の幅を第1の平面120aの幅A1と同じかそれよりも小さくするのがよく、50μm以上1mm以下となる。特に、弾性係数が60〜70GPa程度のガラスファイバを線条体120に用いた場合には、線条体120の第1の平面120aの幅A1を50μm以上1mm以下とすることで、線条体120に適切な大きさの可撓性を与えることができ、隔壁103に対する適切な大きさの反発力を持たせることができる。
【0031】
また、線条体120を嵌め込ませる隔壁103間の間隔B1は、線条体120の第1の平面120aの幅A1より大きく、かつ幅A1の110%以下とするのがよい。すなわち、線条体120と隔壁103との間のクリアランス(図1(b)におけるC1+C2)が線条体120の第1の平面120aの幅A1の10%以下となるようにしている。
【0032】
線条体120を配列して平面表示装置を構成する場合、その位置精度として±5μm程度が要求される。線条体120の第1の平面120aの幅A1を最小の50μmとした場合、位置精度±5μmは第1の平面120aの幅50μmの10%となることから、線条体120と隔壁103との間のクリアランスを第1の平面120aの幅A1の10%以下とするのが好ましい。線条体120の断面積はその長さに比べて十分小さく、その断面の10%以下のクリアランスは、線条体120の長さに比べて極めて小さくなる。
【0033】
このように、線条体120の長さに比べて極めて小さいクリアランスを有して線条体120を隔壁103間に嵌め込むと、線条体120と左右の隔壁103の側面との接触点が多数でき、各接触点において線条体120が持つ曲げによる反発力で隔壁103の側面を押圧することになる。各接触点で線条体120が隔壁103の側面を押圧する反発力は小さいが、接触点が多数できることから、線条体120を安定的に把持することが可能となる。
【0034】
線条体120と隔壁103との間のクリアランスは、上記の通り極めて小さいことから、本実施形態では、線条体120を隔壁103の間に嵌め込み容易とするために、線条体120断面の4つの角部に所定の大きさのR部121を形成するようにしている。R部121の幅は、角部を形成する2辺の短辺側の長さの5%以上の長さとするのが好ましい。R部121の幅をこのように形成することにより、線条体120を隔壁103の間に円滑に嵌め込むことが可能となる。
【0035】
上記のように、各隔壁103の間に複数の線条体120を曲げを矯正しながら嵌合させていくとき、各線条体120の上面が同一平面上に配列されるよう、すなわち各線条体120の上面の高さを等しくして水平になるように位置決めするのがよい。特に、線条体120の上面が第1の平面120aのときは、同一平面上に一致するように位置決めするものとする。
【0036】
次に、隔壁103の高さについては、図1(b)に示す線条体120の高さA2の40%以上とするのがよい。線条体120の高さA2は、第1の平面120aを上面としたときの線条体120の側面の幅となる。隔壁103の高さが側面の高さA2の40%より低いと、線条体120の角にR部121が形成されていることから、線条体120が隔壁103の間から外れやすくなってしまう。
【0037】
特に、線条体120の表面にデバイスを形成する際には、線条体120が外れて位置ずれしたり回転することの無いように固定しておくことが重要である。隔壁103の高さを線条体120の高さA2の40%以上とすることで、線条体120を安定的に固定することが可能となる。
【0038】
隔壁103の高さは、線条体120の高さA2の40%以上であれば任意に決定することができ、例えば線条体120とほぼ同じ高さにした場合には、成膜時にメタルマスクなどとの密着性を高めることができる。
【0039】
また、線条体120の側面の高さA2は、第1の平面120aの幅A1以下でかつ50μm以上1mm以下とするのがよい。線条体120の側面の高さA2を幅A1の1/10より小さくすると、線条体120が脆く捩れやすくなって長手方向に水平に維持するのが困難になる恐れがある。
【0040】
本実施形態の線条体配列部材100は、上記説明の通り、線条体120を複数配列して各線条体120の表面に各種デバイスを形成するのに好適な配列部材となる。一例として、線条体120の表面にファイバ型発光素子を形成する場合、線条体配列部材100に線条体120を配列し、その表面に透明電極膜(例えばITO)、発光層(例えば有機EL層)、及び反射層(例えばアルミニウムあるいは銀の薄膜)を順次形成していく。
【0041】
線条体120の表面に上記のように各種デバイスを形成する場合には、線条体120に対しアニール処理が行われるが、このとき線条体120とともに線条体配列部材100にも熱が加えられる(例えば500℃程度に加熱)。そのため、アニール処理時には、線条体120と線条体配列部材100とがともに熱膨張することになる。この熱膨張によって隔壁103と線条体120との間のクリアランスが過大に大きくなると、アニール処理後に冷却して元に戻すときに線条体120が移動して位置ずれしてしまう恐れがある。
【0042】
そこで、本実施形態の線条体配列方法では、アニール処理が行われる線条体に対しては、線条体120と略等しい熱膨張係数を有する材料を用いて線条体配列部材100を形成させるようにしている。例えば、線条体120としてガラスファイバを用いる場合には、線条体配列部材100もガラスで形成するのがよい。
【0043】
線条体配列部材100は平面表示装置の基板としてそのまま用いることができ、その場合には隔壁103が発光素子等のデバイス間を絶縁する役割を果たすことができる。また、平面表示装置の製造工程で用いられるハンドリングや、露光・成膜用治具として線条体配列部材100を用いることも可能である。
【0044】
本発明の線条体配列方法の第2の実施形態として、図2に示すように、線条体120の少なくとも1端を隔壁103の長手方向先端より先に突き出させて、突出部221を設けるようにしてもよい。線条体120には、例えばITOやSiO等が数百nm程度の膜厚で形成されることから、線条体120を隔壁103から引き出す際に成膜面に触れて傷付けることの無いようにする必要がある。
【0045】
突出部221を設けない第1の実施形態でも、線条体120と隔壁103との各接触点における反発力は小さいことから、線条体120をその上面に触れることなく線条体配列部材100の端部から順次引き出していくことは容易である。これに対し、本実施形態のように突出部221を設けた場合には、突出部221を把持して持ち上げることで、隔壁103の間から線条体120をさらに容易に引き出すことが可能となる。
【0046】
線条体を配列して平面表示装置を作製する場合には、線条体を回転させて複数の面に各種デバイスを形成することから、本実施形態のように線条体120の取り出しをさらに容易にしておくことで、線条体120をその上面に触れることなく取り出して回転させる処理を容易に実現することが可能となる。
【0047】
本発明の線条体配列部材の別の実施形態として、図3に示すように、隔壁303の間の底面311の中央部に長手方向全長に渡って窪み部312を設けるようにすることができる。図3は、本実施形態の線条体配列部材300の一部を示す断面図である。窪み部312は、底面311のうち線条体120の断面角部が位置する隔壁303の近傍を除く中央部に形成するものとする。このような窪み部312を形成することにより、線条体120の底面311側の面に形成されたデバイスが損傷を受けるのを防止することができる。また、窪み部312を形成することで、レンズ効果を持たせるようにすることもできる。さらに、隔壁303と底面311とで形成される角部には、隔壁303の高さの10%以下のR部313を形成するのがよい。
【0048】
本発明の線条体配列部材のさらに別の実施形態として、図4に示すように、隔壁403の長手方向の少なくとも1端を閉止させることができる。すなわち、隔壁403の長手方向の端部に、隔壁403間の溝部を閉止する閉止部413を設けている。このような閉止部413を設けた線条体配列部材400を用いることで、線条体420の長手方向の位置決めを正確に行うことが可能となる。
【0049】
また、隔壁403の長手方向端部に閉止部413を設けたことで、図5に示すように、閉止部413に線条体420の端部に接続された電極430を設置することが容易となる。
【0050】
上記のいずれの実施形態においても、本発明の線条体配列部材に形成された隔壁の間に線条体を嵌め込んで位置決めを行っていた。本発明の線条体配列方法のさらに別の実施形態として、隔壁間に嵌め込まれた線条体の間にさらに別の線条体を嵌め込ませて位置決めすることも可能である。本実施形態の線条体配列方法を、図6を用いて以下に説明する。
【0051】
図6では、線条体配列部材500に形成された隔壁503の間に線条体520を配列しており、本実施形態ではさらに別の線条体521を隣接する線条体520間の隔壁503の上に配列させている。すなわち、本実施形態では、隔壁503間に配列された線条体520を、別の線条体521を配列するための隔壁として利用するようにしている。
【0052】
線条体520を別の線条体521を配列するための隔壁として利用するためには、線条体520の隔壁503から突出している高さが、別の線条体521の高さの40%以上あるのが好ましい。線条体520の断面と別の線条体521の断面とで高さが同じ場合には、隔壁503の高さを線条体520の高さの40%以上60%以下とすることで、上記の条件を満たすことが可能となる。
【0053】
次に、本発明の線条体配列部材の隔壁を形成する方法を、第1の実施形態の線条体配列部材100を対象に以下に説明する。線条体配列部材100は、基材101としてガラス基材を用いることができ、隔壁103を形成する第1の方法として、ガラス基材を砥石で研削する方法がある。円盤状で先端にいくほど細くなる砥石を用いた場合、図7に示すように、形成される隔壁103は先端に行くほど細くなっている。その結果、凹溝102の上端部の間隔が広く下端部(底部)の間隔が狭くなるように形成され、線条体120を隔壁103間に落し込むだけで固定することが可能となる。さらに、底面102と隔壁103とで形成される両側の角部には、隔壁103の高さの10%程度のR部104が形成される。
【0054】
砥石を用いてガラス基材上に隔壁103を形成した場合、例えば凹溝102の幅が300μmで幅が200μmの隔壁103をピッチ500μmで複数形成することができる。このように形成された線条体配列部材100では、例えば断面矩形状の長辺の長さが280μmの線条体120を隔壁103間に配列して固定することができる。
【0055】
本発明の線条体配列部材の隔壁を形成する別の方法を以下に説明する。この方法では、砥石を用いずガラス基材をウェットエッチングして凹溝102を形成する。ウェットエッチングで凹溝102を形成する場合には、隔壁103の幅をさらに小さくすることが可能となり、例えば図8に示すように、幅約40μm、高さ200μmの隔壁103を形成することができる。
【0056】
また、ウェットエッチングでは加工精度±1μm以下を実現することができ、隔壁103の間隔を公差±1μm程度で形成することが可能となる。1例として、隔壁103の間隔を254μmとなるよう加工し、断面矩形状の長辺の長さが250μmの線条体120を高精度に位置決めして配列することが可能となる。なお、ウェットエッチングによる加工では、上面ほどエッチング液に浸る時間が長くなるため、隔壁103の上端部の間隔が下端部(底部)よりわずかに広く形成される。さらに、隔壁103の底部にはR部も形成される。
【0057】
上記説明の通り、本発明の線条体配列方法によれば、事前に曲げが付加された線条体を所定の隔壁の間に嵌め込むことで、接着剤等の固定手段を用いることなく、複数の線条体を長手方向全長にわたって高精度に位置決めして固定することが可能となる。線条体の曲げによる小さな反発力で線条体を固定していることから、線条体の隔壁と接触する側面に形成されたデバイスを傷付ける恐れはない。また、線条体を隔壁間から引き出すのに必要な力も小さくてすみ、線条体の上面等に形成されたデバイスに触れることなく引き出すことができる。
【0058】
よって、線条体の複数の面にデバイスを形成する場合でも、線条体の上面に触れることなくこれを取り外し、取り出した線条体を例えば90°回転させて再び隔壁間に嵌め込んで固定した後、上方に来た側面に成膜することができる(ハンドリング)。
【0059】
本発明の線条体配列方法では、断面が略矩形状の線条体を用いるようにしていることから、例えば成膜中に線条体が傾いてしまうといった恐れもなく、デバイス形成時のマスク合わせや成膜を高精度に行うことができる。また、線条体配列部材の材質を線条体とほぼ同じにすることで、アニール等の熱の影響を緩和することができる。
【0060】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る線条体配列方法及び線条体配列部材の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における線条体配列方法及び線条体配列部材の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る線条体配列方法及び線条体配列部材を説明する斜視図、断面図、及び上面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る線条体配列方法を説明する上面図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る線条体配列部材を示す断面図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態に係る線条体配列部材を示す断面図である。
【図5】閉止部に電極を設けた実施例を示す断面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態に係る線条体配列方法を示す断面図である。
【図7】線条体配列部材の隔壁を形成する方法を説明する断面図である。
【図8】線条体配列部材の隔壁を形成する別の方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0062】
100、300、400 線条体配列部材
101 基材
102 凹溝
103、303、403、503 隔壁
104、313 R部
120、420、520、521 線条体
120a 第1の平面
221 突出部
311 底面
312 窪み部
413 閉止部
430 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線条体を並べてその平面に所定のデバイスを形成する平面表示装置の製造工程において、断面が略矩形状で長手方向の2辺が平行な第1の平面を少なくとも1つ有する前記線条体を、複数本平行に配列する線条体配列方法であって、
所定の剛性を有する前記線条体に長手方向の曲げを付加し、
前記線条体と略等しい長さに形成された所定幅の隔壁を前記第1の平面の幅より大きい所定の間隔を設けて複数本平行に配列し、
前記線条体を前記隔壁の間に前記曲げを矯正しながら嵌合させて前記第1の平面がすべて同一平面上に配列されるよう位置決めし、
前記曲げを矯正したことによる反発力で前記隔壁の側面を押圧させることで前記線条体を前記隔壁の間に固定する
ことを特徴とする線条体配列方法。
【請求項2】
前記第1の平面の幅を50μm以上1mm以下とする
ことを特徴とする請求項1に記載の線条体配列方法。
【請求項3】
前記隔壁を配置する前記所定の間隔を、前記第1の平面の幅の110%以下とする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の線条体配列方法。
【請求項4】
前記第1の平面と略直角な長手方向の面を側面としたとき、前記隔壁の高さを前記側面の高さの40%以上とする
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体配列方法。
【請求項5】
前記線条体は、少なくとも1端が前記隔壁の長手方向先端より先に突き出した突出部を有しており、前記突出部を把持して前記線条体を前記隔壁の間から取り外す
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体配列方法。
【請求項6】
前記側面の高さを、前記第1の平面の幅以下でかつ50μm以上1mm以下とする
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体配列方法。
【請求項7】
前記線条体断面の4つの角部は、それぞれの前記角部を形成する2辺の短辺側の長さの5%以上の長さのR部を形成している
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体配列方法。
【請求項8】
前記隔壁間の底面の中央部に、全長に渡って窪み部を形成し、
さらに前記隔壁と前記底部とで形成される角部には前記隔壁の高さの10%以下のR部を形成する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体配列方法。
【請求項9】
前記線条体にガラスを用いる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体配列方法。
【請求項10】
前記隔壁に、前記線条体と略等しい熱膨張係数を有する材質を用いる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体配列方法。
【請求項11】
複数の線条体を並べてその平面に所定のデバイスを形成する平面表示装置の製造工程において、断面が略矩形状で長手方向の2辺が平行な第1の平面を少なくとも1つ有する前記線条体を、複数本平行に配列する線条体配列部材であって、
前記線条体と略等しい長さに形成され、前記第1の平面の幅より大きい所定のピッチで平行に配列された所定幅の隔壁を複数備え、
前記線条体に事前に付加された曲げを矯正しながら前記隔壁の間に前記線条体を嵌合させて固定する
ことを特徴とする線条体配列部材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−191526(P2008−191526A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27574(P2007−27574)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/(一次元基板によるTFT−OLED製造技術)」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】