線状体巻取り装置
【課題】 従来の線状体巻取り装置では、巻き取られる線材にかかる張力を検出するときに、実際の張力の値に線材のガイド部材などに対する摩擦抵抗による力が加わった値が検出されていたので、線材の真の張力を検出することができず、線材の張力設定が適正であるかの判断を行うのが困難であったり、線材の巻き取り途中に発生した巻き崩れを検出したりするのが困難であった。
【解決手段】 線状体50を繰り出す繰り出し装置30と、繰り出された線状体50を巻き取るボビン21と、ボビン21に対し、線状体50を綾振りしながら供給するノズル11を備えた綾振り装置10とを備えた線状体巻取り装置1であって、ノズル11は筒状部材に構成されており、線状体50はノズル11から該ノズル11の軸心方向に対して傾斜した方向へ繰り出され、ノズル11の外周面には歪ゲージ12xa・12xb・12ya・12ybが付設される。
【解決手段】 線状体50を繰り出す繰り出し装置30と、繰り出された線状体50を巻き取るボビン21と、ボビン21に対し、線状体50を綾振りしながら供給するノズル11を備えた綾振り装置10とを備えた線状体巻取り装置1であって、ノズル11は筒状部材に構成されており、線状体50はノズル11から該ノズル11の軸心方向に対して傾斜した方向へ繰り出され、ノズル11の外周面には歪ゲージ12xa・12xb・12ya・12ybが付設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の張力が付与された状態で繰り出される線状体をボビンに巻き取る線状体巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ボビンに巻き線を巻き付けてコイルを作成する場合など、線状体をボビンに巻き付ける際には、所定の張力を付与した状態で線状体を繰り出す繰り出し装置と、前記繰り出し装置から繰り出された線状体を巻き取るボビンと、前記ボビンに対し、線状体を綾振りしながら供給する綾振り装置とを備えた線状体巻取り装置を用いて、繰り出し装置から繰り出された線状体を綾振り装置により左右に綾振りしながらボビンに巻き付けることが行われている。
【0003】
このような線状体巻取り装置においては、繰り出し装置から繰り出される線状体は、複数のローラやガイド部材などにガイドされながら、巻き取りが行われるボビンへ至っている。
また、線状体巻取り装置には、線状体がボビンに対して適正な張力で巻き取られているかといったことなどを検出するために、線状体にかかっている張力を測定するための張力測定器が設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載される線状体巻取り装置においては、繰出ドラムから繰り出された線材が、左右に移動可能に構成される台車上にてガイドされながら巻取ドラムへ至り巻き取られるように構成されている。
また、前記台車には線材の張力を検出する張力検出装置が設けられており、張力検出装置にて検出された張力に基づいて台車を左右に移動させるように構成されている。
【0005】
このように、特許文献1に記載される線状体巻取り装置では、張力検出装置により巻取ドラムに巻き取られる線材の張力を検出するように構成されているが、実際に張力の検出が行われる張力検出部から巻取ドラムへ至るまでに、線材ガイドおよび第2の検出装置を通過するように構成されている。
【特許文献1】特開平5−32376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に記載される線状体巻取り装置では、前記張力検出装置の張力検出部よりも巻取ドラム側の経路において、線材が前記線材ガイドに摺接するとともに、巻取ドラムでの巻き取り角度などによっては第2の検出装置の検出ガイドに摺接することとなっている。
このように、線材のガイドなどに摺接する部分には摩擦抵抗による力が加わるため、前記張力検出部では、巻取ドラムに巻き取られる直前の線材にかかる実際の張力に、前述の摩擦抵抗による力が加わった値が検出されることとなり、線材の真の張力を検出することができなかった。
従って、前記張力検出部にて検出した張力値に基づいて、線材の張力設定が適正であるかの判断を行うのが困難であった。
また、前記摩擦抵抗は比較的大きいため、線材にかかる張力に変化が生じたとしても、その張力の変化を適正に検出することが困難であり、線材の巻き取り途中に巻き崩れが発生したとしても、正確に検出することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明においては、ボビンに巻き取られる直前の線状体の張力を直接測定することができ、線状体の張力設定が適正か否かの判断や、巻き崩れの発生を容易に行うことが可能な線状体巻取り装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する線状体巻取り装置は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、所定の張力を付与した状態で線状体を繰り出す繰り出し装置と、前記繰り出し装置から繰り出された線状体を巻き取るボビンと、前記ボビンに対し、線状体を綾振りしながら供給するノズルを備えた綾振り装置とを備えた線状体巻取り装置であって、前記綾振り装置におけるノズルは筒状部材に構成されており、前記ノズルから供給される線状体は、該ノズルの軸心方向に対して傾斜した方向へ繰り出され、前記ノズルの外周面には、該ノズルの軸心方向からの歪みを検出する歪検出器が付設される。
これにより、ボビンに巻き取られる直前の線状体にかかる張力を直接検出することが可能となり、巻き取られる線状体にかかる真の張力を検出することができる。
従って、線状材の張力設定が適正であるかの判断を高精度に行うことが可能になるとともに、巻き崩れが発生した際の張力の変化を正確に捉えて、巻き崩れの発生を適正に検出することが可能となる。
【0009】
また、請求項2記載の如く、前記歪検出器は、前記ノズルの外周面における上下左右部の4か所にそれぞれ設けられている。
これにより、上下の歪検出器からの出力、および左右の歪検出器からの出力を合成して張力を算出することで、張力のノズル周りの方向および大きさを適正に算出することが可能となる。
【0010】
また、請求項3記載の如く、前記線状体巻取り装置は、前記歪検出器の検出値、および前記ノズルとボビンとの位置関係に基づいて、前記ノズルとボビンとの間における線状体の張力を算出する演算装置を備える。
これにより、線状体の張力を容易かつ正確に検出することが可能となる。
【0011】
また、請求項4記載の如く、前記線状体巻取り装置は、前記歪検出器の検出値に基づいて、前記ノズルとボビンとの間における線状体の綾振り角度を算出する演算装置を備える。
これにより、線状体の綾振角度を正確に算出することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、巻き取られる線状体にかかる真の張力を検出することができ、線状材の張力設定が適正であるかの判断を高精度に行うことが可能になるとともに、巻き崩れの発生を適正に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0014】
図1に示す線状体巻取り装置1は、所定の張力を付与した状態で線状体50を繰り出す繰り出し装置30と、前記繰り出し装置30から繰り出された線状体50を巻き取るボビンユニット20と、前記ボビンユニット20に対し、線状体50を綾振りしながら供給するノズル11を備えた綾振り装置10とを備えている。
【0015】
前記繰り出し装置30は、線状体50を送出するための送出ローラ31と、前記送出ローラ31を回転駆動する駆動装置32と、前記送出ローラ31から送出される線状体50に所定のテンション(張力)を付与するためのテンション設定器33とを備えている。
【0016】
前記繰り出し装置30には線状体貯留部40に貯留される線状体50が供給されており、供給された線状体50は前記駆動装置32により回転駆動される送出ローラ31よって綾振り装置10側へ送出される。
さらに、送出ローラ31によって送出された線状体50には、前記テンション設定器33により所定の大きさのテンションが付与され、テンションが付与された状態の線状体50が繰り出し装置30から繰り出されるように構成されている。
【0017】
前記綾振り装置10は、前記ノズル11が設置される装置本体15と、前記装置本体15を左右方向(線状体50の繰り出し方向と略直交する方向)へ移動させるための駆動装置16とを備えている。
前記ノズル11は断面形状が円形状に形成された筒状部材にて構成されており、前記繰り出し装置30から繰り出された線状体50が、該ノズル11の基端部11a側から侵入して先端部11b側から繰り出されていくように構成されている。
【0018】
前記ボビンユニット20は、線状体50が巻き取られるボビン21と、前記ボビン21を回転駆動する駆動装置22とを備えており、前記ノズル11の先端側11bから繰り出された線状体50を前記ボビン21により巻き取るように構成している。
前記綾振り装置10は、線状体50のボビン21に対する巻き付け位置などに応じて左右に移動するように構成されている。
【0019】
前記ボビン21は、例えば前記ノズル11よりも上方に配置されており、ボビン21に巻き取られる線状体50がノズル11の軸心に対して傾斜した方向へ繰り出されるように構成されている。
【0020】
図2、図3に示すように、前記ノズル11は、その軸心方向が線状体50の繰り出し方向に沿うように配置されており、該ノズル11に形成される孔の先端部11bは、先端側へいくに従って拡径する内側へ凸となる円弧状のテーパー面に形成されている。
これにより、前記ノズル11の軸心に対して傾斜した方向へ繰り出される線状体50が、前記先端部11bのテーパー面に沿って滑らかに繰り出されることとなっている。
【0021】
このように構成される線状体巻取り装置1においては、前記線状体貯留部40に貯留される線状体50が繰り出し装置30により所定のテンションを付与された状態で繰り出され、前記綾振り装置10により左右方向へ綾振りされながらボビン21に巻き取られる。
【0022】
また、前記ノズル11の外周面における上下左右部の4か所には、それぞれ上歪ゲージ12Ya、下歪ゲージ12Yb、左歪ゲージ12Xa、および右歪ゲージ12Xbが設けられている。
前記各歪ゲージ12Ya・12Yb・12Xa・12Xbは、前記ノズル11の軸心方向からの形状の歪みを検出する歪検出器であり、上下歪ゲージ12Ya・12Ybはノズル11における上下方向の形状変化を検出し、左右歪ゲージ12Xa・12Xbはノズル11における左右方向の形状変化を検出するものである。
【0023】
図4に示すように、前記上下歪ゲージ12Ya・12Ybは、例えばノズル11の上下方向の形状変化を抵抗値変化として検出するが、検出した抵抗値変化は線状体巻取り装置1に備えられる検出回路61にて電圧に変換されて、該検出回路61から出力電圧Eyとして出力される。
また、前記左右歪ゲージ12Xa・12Xbは、例えばノズル11の左右方向の形状変化を抵抗値変化として検出するが、検出した抵抗値変化は検出回路61にて電圧に変換されて、該検出回路61から出力電圧Exとして出力される。
【0024】
線状体巻取り装置1においては、これらの上下歪ゲージ12Ya・12Ybの検出値に基づく出力電圧Ey、および左右ゲージ12Xa・12Xbの検出値に基づく出力電圧Exを用いて、ボビン21に巻き取られる線状体50の張力や、該線状体50の左右方向への振れ角(綾振り角度)などを、線状体巻取り装置1に備えられ前記検出回路61に接続される演算装置62により求めるように構成されている。
【0025】
また、ノズル11に生じる上下方向および左右方向の形状変化の大きさは、それぞれノズル11にかかる上下方向および左右方向の力の大きさに応じて変化するため、上下歪ゲージ12Ya・12Ybおよび左右歪ゲージ12Xa・12Xbによる出力電圧Ey・Exの大きさは、ノズル11にかかる上下方向および左右方向の力の大きさに比例することとなる。
さらに、線状材50は所定の摩擦力でノズル11に摺接しながら繰り出されるため、ノズル11の先端部11bにおける前記線状体50の張力と、前記ノズル11にかかる力とが比例することとなる。
【0026】
したがって、この出力電圧Ey・Exの大きさと線状体50のノズル11の先端部11bにおける張力の上下方向および左右方向の大きさとの関係を前記演算装置62に予め記憶させておき、この関係を用いることにより、前記出力電圧Ey・Exの値から線状体50の張力Fを算出するように構成している。
【0027】
例えば、ボビン21に巻き取られる線状体50の張力は、次のようにして求められる。
まず、図5に示すように、線状体50の張力Fは、ノズル11の軸心に対する左右方向成分Fx、上下方向成分Fy、および軸心方向成分Fzに分解することができる。
【0028】
図3に示すように、演算装置62においては、前記出力電圧Ex、および演算装置62に予め記憶されている前記出力電圧Exと張力Fの左右方向成分Fxとの関係を用いて、張力Fの左右方向成分Fxを算出する。
同時に、前記出力電圧Ey、および演算装置62に予め記憶されている前記出力電圧Eyと張力Fの上下方向成分Fyとの関係とを用いて、張力Fの上下方向成分Fyを算出する。
【0029】
また、図2に示すように、ボビン21に巻き取られる線状体50の、ノズル11の軸心に対する傾斜角度θ1は、ノズル11とボビン21との間の寸法dz、およびノズル11内を通過する線状体50の高さ位置とボビン21における線状体50巻き取り高さ位置との差寸法dyから求めることができるが、前記寸法dz・dyから求められた前記傾斜角度θ1が前記演算装置62に予め記憶されている。
【0030】
前記演算装置62においては、この傾斜角度θ1と前記力Fの上下方向成分Fyとを用いて、前記張力FのYZ面成分Fyzが求められる。
つまり、線状体50にかかる張力FのYZ面成分Fyzの方向は、ノズル11の軸心から前記傾斜角度θ1だけ傾斜した方向となり、前記YZ面成分Fyzと前記上下方向の力Fyとは「Fyz=Fy/sin(θ1)」の式にて表される関係を有しているため、この式により、前記上下方向成分Fyと演算装置62に予め記憶されている前記傾斜角度θ1とを用いて、前記YZ面成分Fyzが算出される。
なお、張力Fの軸心方向成分Fzは、「Fz=Fyz×cosθ1」により求めることができる。
【0031】
さらに、演算装置62においては、算出したYZ面成分Fyzと左右方向成分Fxとから、張力Fを算出するように構成している。
なお、前記張力Fは、上下方向成分Fyと左右方向成分FxとによりXY面成分Fxyを求めて、このXY面成分Fxyと軸心方向成分Fzとから算出したり、左右方向成分Fxと軸心方向成分FzとによりXZ面成分Fxzを求めて、このXZ面成分Fxzと上下方向成分Fyとから算出したりすることも可能である。
【0032】
このように算出される張力Fは、線状体50をボビン21へ繰り出すノズル11に設けられた上下歪ゲージ12Ya・12Ybおよび左右ゲージ12Xa・12Xbの検出値に基づくものであるため、ガイド部材などに摺接していないノズル11とボビン21との間の線状体50の張力そのものが直接検出されているので、線状体50の真の張力を検出することが可能となっている。
【0033】
さらに、前記演算装置62においては、前記上下歪ゲージ12Ya・12Ybおよび左右ゲージ12Xa・12Xbの検出値、および前記ノズル11とボビン21との位置関係から算出した線状体50の傾斜角度θ1に基づいて、前記ノズル11とボビン21との間における線状体50の張力Fを算出しているので、線状体50の張力Fを容易かつ正確に検出することが可能となっている。
【0034】
また、前記上下歪ゲージ12Ya・12Ybおよび左右ゲージ12Xa・12Xbは、ノズル11の外周面における上下および左右にそれぞれ設けられているので、上下歪ゲージ12Ya・12Ybからの出力電圧Ey、および左右ゲージ12Xa・12Xbからの出力電圧Exを合成して張力Fを算出することで、張力Fのノズル11周りの方向(後述する振れ角θ2)および大きさを適正に算出することが可能となっている。
【0035】
また、図3に示すように、前記演算装置62においては、線状体50の左右方向(綾振り装置10の装置本体15の移動方向)への綾振り角度である振れ角θ2を算出するように構成されている。
前記振れ角θ2は、具体的には線状体50の水平面に対する角度であり、本例ではノズル11の正面視において、線状体50が左方の水平方向から時計回りにいくにしたがって前記角度が大きくなるように設定されている。
従って、例えば図3において線状体50が左方の水平方向へ向いているときには振れ角θ2=0°となり、線状体50が垂直上方へ向いているときには振れ角θ2=90°となり、線状体50が右方の水平方向へ向いているときには振れ角θ2=180°となる。
【0036】
このように設定される振れ角θ2は、前記演算装置62において、前述のように算出された張力Fの上下方向成分Fyおよび左右方向成分Fxの値により、(Fy/Fx)=tan(θ2)の関係を用いて算出される。
この場合、振れ角θ2は、ガイド部材などに摺接していないノズル11とボビン21との間の線状体50の張力Fの上下方向成分Fyおよび左右方向成分Fxを用いて算出しているので、前記ガイド部材からの摩擦力などの影響を受けることがなく、線状体50の真の張力の上下方向成分および左右方向成分のみにより、正確な振れ角θ2を算出することが可能となっている。
【0037】
また、本線状体巻取り装置1においては、このようにして求められた張力Fや線状体50の振れ角θ2を用いて、巻き取られる線状体50の張力値の設定が適正であるかの判断や、巻取り途中に発生した線状材50の巻き崩れなどの巻き取り異常の検出を、前記演算装置62などにて行うように構成している。
【0038】
例えば、巻き取られる線状体50の張力値の設定が適正であるかの判断を行う場合は、前記演算装置62にて算出された張力Fの値が予め設定された所定範囲内にあるか否かにより判断することができる。
この場合、算出される張力Fはノズル11の先端部11bから繰り出される線状体50の張力であるが、本線状体巻取り装置1においてはノズル11の先端部11bからボビン21までの間に線状体50に摺接するガイド部材などがないため、ボビン21に巻き取られる直前の線状体50にかかる張力Fを直接検出することが可能となっている。
これにより、巻き取られる線状体50にかかる真の張力を検出することができ、線状材の張力設定が適正であるかの判断を高精度に行うことが可能となる。
【0039】
また、線状体巻取り装置1においては、算出した張力Fを前記繰り出し装置30にフィードバックして、該繰り出し装置30のテンション設定器33により線状体50に付与されるテンションを適正な大きさに調節するように構成して、前記張力Fを適正な一定の値に保持することが可能となる。
また、線状材50の巻き崩れの発生の検出は、線状体50の前記振れ角θ2の値が予め設定された所定の基準範囲から外れたか否かを判断することにより行うことができる。
【0040】
また、前述の図1に示した線状体巻取り装置1は、綾振り装置10に1本のノズル11を備えて1本の線状体50をボビン21に巻き付けていくように構成されているが、図6に示すように、前記綾振り装置10に複数(図6では2本)のノズル11を並設して、複数本(図6では2本)の線状体50を同時にボビン21に巻き付けていくように構成することもできる。
【0041】
このように、2本のノズル11を並設した仕様の線状体巻取り装置1においても、前述のノズル11を1本設けた仕様の場合と同様に、巻き取られる線状体50の張力値の設定が適正であるかの判断や、巻取り途中に発生した線状材50の巻き崩れなどの巻き取り異常の検出を行うことができる。
【0042】
例えば、図7には2本のノズル11を上下に並設した場合における、上側のノズル11および下側のノズル11から繰り出される線状体50の張力Fを示している。
正常にボビン21への巻き取りがなされているときには、上側および下側のノズル11・11の線状体50の張力Fはともに最大張力Fmaxと最小張力Fminとの間の範囲に収まっているが、巻き崩れが発生したときには、上側および下側のノズル11・11の線状体50の張力Fがともに大きく減少し、最小張力Fminよりも大幅に小さな値になっている。
【0043】
従って、前記演算装置62において、例えば前記最小張力Fminを閾値として設定し、検出された張力Fが最大張力Fmaxと最小張力Fminとの間の範囲にあれば巻き取りが正常に行われていると判断し、最小張力Fminよりも小さければ巻き崩れが発生したと判断するように構成することができる。
この場合、本線状体巻取り装置1においては、線状体50がガイド部材などに摺接する際に生じる摩擦力などといった他の力が張力Fとともに検出されることがなく、巻き取られる線状体50の張力Fのみが検出されるため、巻き崩れが発生した際の張力Fの変化を正確に捉えることができ、それにより巻き崩れの発生を適正に検出することが可能となる。
【0044】
また、線状体50の巻き崩れ発生は、前記線状体50の左右方向への振れ角θ2を用いて検出することもできる。
つまり、上側および下側のノズル11・11の線状体50の振れ角θ2をそれぞれ算出すると、図8に示すように、該線状体50が正常に巻き取られているときには両者の差daは小さくほぼ一定であるが、図9に示すように、巻き崩れが発生したときの上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差dbは大きく一定していない。
【0045】
そこで、演算装置62において上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2とを算出して、例えばその差の大きさが予め設定しておいた所定の閾値よりも大きいか否かの判断を行うことにより、巻き崩れの発生を検出することができる。
また、上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差の値の変化度合いに基づいて巻き崩れの発生を検出することも可能である。
【0046】
また、図10に示すように、上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差Δdを演算装置62にて算出し、この差Δdの大きさが予め設定しておいた閾値よりも大きいか否かにより巻き崩れの発生を検出することも可能である。
図10に示した場合は線状体50の巻き取りが正常に行われている状態であり、前記差Δdはさほど大きな値とはなっていない。
これに対し、図11に示すように、巻き取られる線状体50に巻き崩れが発生した場合には、正常な場合に比べて前記差Δdが大きくなっている。
【0047】
従って、この上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差Δdの大きさが予め設定しておいた所定の閾値よりも大きいか否かで巻き崩れの発生を検出することができる。
また、上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差の値の変化度合いに基づいて巻き崩れの発生を検出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】線状体巻取り装置を示す全体図である。
【図2】ノズルの先端部から繰り出されボビンに巻き取られる線状体を示す側面断面図である。
【図3】ノズルの先端部から繰り出されボビンに巻き取られる線状体を示す正面図である。
【図4】各歪ゲージの検出回路を示す図である。
【図5】張力の各方向成分を示す斜視図である。
【図6】2本のノズルを並設して構成した線状体巻取り装置の線状体巻取り部分を示す斜視図である。
【図7】2本のノズルを並設した場合の各線状体の張力を示すグラフであって、巻き崩れが発生した場合の張力の変化を示す図である。
【図8】2本のノズルを並設した場合の各線状体の振れ角を示すグラフであって、正常な巻取り状態にある場合の振れ角を示す図である。
【図9】2本のノズルを並設した場合の各線状体の振れ角を示すグラフであって、巻き崩れが発生した場合の振れ角を示す図である。
【図10】2本のノズルを並設した場合の各線状体の振れ角の差を示すグラフであって、正常な巻取り状態にある場合の振れ角を示す図である。
【図11】2本のノズルを並設した場合の各線状体の振れ角の差を示すグラフであって、巻き崩れが発生した場合の振れ角を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 線状体巻取り装置
10 綾振り装置
11 ノズル
12xa 左歪ゲージ
12xb 右歪ゲージ
12ya 上歪ゲージ
12yb 下歪ゲージ
15 装置本体
20 ボビンユニット
21 ボビン
30 繰り出し装置
31 送出ローラ
33 テンション設定器
50 線状体
F 張力
θ2 振れ角
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の張力が付与された状態で繰り出される線状体をボビンに巻き取る線状体巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ボビンに巻き線を巻き付けてコイルを作成する場合など、線状体をボビンに巻き付ける際には、所定の張力を付与した状態で線状体を繰り出す繰り出し装置と、前記繰り出し装置から繰り出された線状体を巻き取るボビンと、前記ボビンに対し、線状体を綾振りしながら供給する綾振り装置とを備えた線状体巻取り装置を用いて、繰り出し装置から繰り出された線状体を綾振り装置により左右に綾振りしながらボビンに巻き付けることが行われている。
【0003】
このような線状体巻取り装置においては、繰り出し装置から繰り出される線状体は、複数のローラやガイド部材などにガイドされながら、巻き取りが行われるボビンへ至っている。
また、線状体巻取り装置には、線状体がボビンに対して適正な張力で巻き取られているかといったことなどを検出するために、線状体にかかっている張力を測定するための張力測定器が設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載される線状体巻取り装置においては、繰出ドラムから繰り出された線材が、左右に移動可能に構成される台車上にてガイドされながら巻取ドラムへ至り巻き取られるように構成されている。
また、前記台車には線材の張力を検出する張力検出装置が設けられており、張力検出装置にて検出された張力に基づいて台車を左右に移動させるように構成されている。
【0005】
このように、特許文献1に記載される線状体巻取り装置では、張力検出装置により巻取ドラムに巻き取られる線材の張力を検出するように構成されているが、実際に張力の検出が行われる張力検出部から巻取ドラムへ至るまでに、線材ガイドおよび第2の検出装置を通過するように構成されている。
【特許文献1】特開平5−32376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に記載される線状体巻取り装置では、前記張力検出装置の張力検出部よりも巻取ドラム側の経路において、線材が前記線材ガイドに摺接するとともに、巻取ドラムでの巻き取り角度などによっては第2の検出装置の検出ガイドに摺接することとなっている。
このように、線材のガイドなどに摺接する部分には摩擦抵抗による力が加わるため、前記張力検出部では、巻取ドラムに巻き取られる直前の線材にかかる実際の張力に、前述の摩擦抵抗による力が加わった値が検出されることとなり、線材の真の張力を検出することができなかった。
従って、前記張力検出部にて検出した張力値に基づいて、線材の張力設定が適正であるかの判断を行うのが困難であった。
また、前記摩擦抵抗は比較的大きいため、線材にかかる張力に変化が生じたとしても、その張力の変化を適正に検出することが困難であり、線材の巻き取り途中に巻き崩れが発生したとしても、正確に検出することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明においては、ボビンに巻き取られる直前の線状体の張力を直接測定することができ、線状体の張力設定が適正か否かの判断や、巻き崩れの発生を容易に行うことが可能な線状体巻取り装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する線状体巻取り装置は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、所定の張力を付与した状態で線状体を繰り出す繰り出し装置と、前記繰り出し装置から繰り出された線状体を巻き取るボビンと、前記ボビンに対し、線状体を綾振りしながら供給するノズルを備えた綾振り装置とを備えた線状体巻取り装置であって、前記綾振り装置におけるノズルは筒状部材に構成されており、前記ノズルから供給される線状体は、該ノズルの軸心方向に対して傾斜した方向へ繰り出され、前記ノズルの外周面には、該ノズルの軸心方向からの歪みを検出する歪検出器が付設される。
これにより、ボビンに巻き取られる直前の線状体にかかる張力を直接検出することが可能となり、巻き取られる線状体にかかる真の張力を検出することができる。
従って、線状材の張力設定が適正であるかの判断を高精度に行うことが可能になるとともに、巻き崩れが発生した際の張力の変化を正確に捉えて、巻き崩れの発生を適正に検出することが可能となる。
【0009】
また、請求項2記載の如く、前記歪検出器は、前記ノズルの外周面における上下左右部の4か所にそれぞれ設けられている。
これにより、上下の歪検出器からの出力、および左右の歪検出器からの出力を合成して張力を算出することで、張力のノズル周りの方向および大きさを適正に算出することが可能となる。
【0010】
また、請求項3記載の如く、前記線状体巻取り装置は、前記歪検出器の検出値、および前記ノズルとボビンとの位置関係に基づいて、前記ノズルとボビンとの間における線状体の張力を算出する演算装置を備える。
これにより、線状体の張力を容易かつ正確に検出することが可能となる。
【0011】
また、請求項4記載の如く、前記線状体巻取り装置は、前記歪検出器の検出値に基づいて、前記ノズルとボビンとの間における線状体の綾振り角度を算出する演算装置を備える。
これにより、線状体の綾振角度を正確に算出することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、巻き取られる線状体にかかる真の張力を検出することができ、線状材の張力設定が適正であるかの判断を高精度に行うことが可能になるとともに、巻き崩れの発生を適正に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0014】
図1に示す線状体巻取り装置1は、所定の張力を付与した状態で線状体50を繰り出す繰り出し装置30と、前記繰り出し装置30から繰り出された線状体50を巻き取るボビンユニット20と、前記ボビンユニット20に対し、線状体50を綾振りしながら供給するノズル11を備えた綾振り装置10とを備えている。
【0015】
前記繰り出し装置30は、線状体50を送出するための送出ローラ31と、前記送出ローラ31を回転駆動する駆動装置32と、前記送出ローラ31から送出される線状体50に所定のテンション(張力)を付与するためのテンション設定器33とを備えている。
【0016】
前記繰り出し装置30には線状体貯留部40に貯留される線状体50が供給されており、供給された線状体50は前記駆動装置32により回転駆動される送出ローラ31よって綾振り装置10側へ送出される。
さらに、送出ローラ31によって送出された線状体50には、前記テンション設定器33により所定の大きさのテンションが付与され、テンションが付与された状態の線状体50が繰り出し装置30から繰り出されるように構成されている。
【0017】
前記綾振り装置10は、前記ノズル11が設置される装置本体15と、前記装置本体15を左右方向(線状体50の繰り出し方向と略直交する方向)へ移動させるための駆動装置16とを備えている。
前記ノズル11は断面形状が円形状に形成された筒状部材にて構成されており、前記繰り出し装置30から繰り出された線状体50が、該ノズル11の基端部11a側から侵入して先端部11b側から繰り出されていくように構成されている。
【0018】
前記ボビンユニット20は、線状体50が巻き取られるボビン21と、前記ボビン21を回転駆動する駆動装置22とを備えており、前記ノズル11の先端側11bから繰り出された線状体50を前記ボビン21により巻き取るように構成している。
前記綾振り装置10は、線状体50のボビン21に対する巻き付け位置などに応じて左右に移動するように構成されている。
【0019】
前記ボビン21は、例えば前記ノズル11よりも上方に配置されており、ボビン21に巻き取られる線状体50がノズル11の軸心に対して傾斜した方向へ繰り出されるように構成されている。
【0020】
図2、図3に示すように、前記ノズル11は、その軸心方向が線状体50の繰り出し方向に沿うように配置されており、該ノズル11に形成される孔の先端部11bは、先端側へいくに従って拡径する内側へ凸となる円弧状のテーパー面に形成されている。
これにより、前記ノズル11の軸心に対して傾斜した方向へ繰り出される線状体50が、前記先端部11bのテーパー面に沿って滑らかに繰り出されることとなっている。
【0021】
このように構成される線状体巻取り装置1においては、前記線状体貯留部40に貯留される線状体50が繰り出し装置30により所定のテンションを付与された状態で繰り出され、前記綾振り装置10により左右方向へ綾振りされながらボビン21に巻き取られる。
【0022】
また、前記ノズル11の外周面における上下左右部の4か所には、それぞれ上歪ゲージ12Ya、下歪ゲージ12Yb、左歪ゲージ12Xa、および右歪ゲージ12Xbが設けられている。
前記各歪ゲージ12Ya・12Yb・12Xa・12Xbは、前記ノズル11の軸心方向からの形状の歪みを検出する歪検出器であり、上下歪ゲージ12Ya・12Ybはノズル11における上下方向の形状変化を検出し、左右歪ゲージ12Xa・12Xbはノズル11における左右方向の形状変化を検出するものである。
【0023】
図4に示すように、前記上下歪ゲージ12Ya・12Ybは、例えばノズル11の上下方向の形状変化を抵抗値変化として検出するが、検出した抵抗値変化は線状体巻取り装置1に備えられる検出回路61にて電圧に変換されて、該検出回路61から出力電圧Eyとして出力される。
また、前記左右歪ゲージ12Xa・12Xbは、例えばノズル11の左右方向の形状変化を抵抗値変化として検出するが、検出した抵抗値変化は検出回路61にて電圧に変換されて、該検出回路61から出力電圧Exとして出力される。
【0024】
線状体巻取り装置1においては、これらの上下歪ゲージ12Ya・12Ybの検出値に基づく出力電圧Ey、および左右ゲージ12Xa・12Xbの検出値に基づく出力電圧Exを用いて、ボビン21に巻き取られる線状体50の張力や、該線状体50の左右方向への振れ角(綾振り角度)などを、線状体巻取り装置1に備えられ前記検出回路61に接続される演算装置62により求めるように構成されている。
【0025】
また、ノズル11に生じる上下方向および左右方向の形状変化の大きさは、それぞれノズル11にかかる上下方向および左右方向の力の大きさに応じて変化するため、上下歪ゲージ12Ya・12Ybおよび左右歪ゲージ12Xa・12Xbによる出力電圧Ey・Exの大きさは、ノズル11にかかる上下方向および左右方向の力の大きさに比例することとなる。
さらに、線状材50は所定の摩擦力でノズル11に摺接しながら繰り出されるため、ノズル11の先端部11bにおける前記線状体50の張力と、前記ノズル11にかかる力とが比例することとなる。
【0026】
したがって、この出力電圧Ey・Exの大きさと線状体50のノズル11の先端部11bにおける張力の上下方向および左右方向の大きさとの関係を前記演算装置62に予め記憶させておき、この関係を用いることにより、前記出力電圧Ey・Exの値から線状体50の張力Fを算出するように構成している。
【0027】
例えば、ボビン21に巻き取られる線状体50の張力は、次のようにして求められる。
まず、図5に示すように、線状体50の張力Fは、ノズル11の軸心に対する左右方向成分Fx、上下方向成分Fy、および軸心方向成分Fzに分解することができる。
【0028】
図3に示すように、演算装置62においては、前記出力電圧Ex、および演算装置62に予め記憶されている前記出力電圧Exと張力Fの左右方向成分Fxとの関係を用いて、張力Fの左右方向成分Fxを算出する。
同時に、前記出力電圧Ey、および演算装置62に予め記憶されている前記出力電圧Eyと張力Fの上下方向成分Fyとの関係とを用いて、張力Fの上下方向成分Fyを算出する。
【0029】
また、図2に示すように、ボビン21に巻き取られる線状体50の、ノズル11の軸心に対する傾斜角度θ1は、ノズル11とボビン21との間の寸法dz、およびノズル11内を通過する線状体50の高さ位置とボビン21における線状体50巻き取り高さ位置との差寸法dyから求めることができるが、前記寸法dz・dyから求められた前記傾斜角度θ1が前記演算装置62に予め記憶されている。
【0030】
前記演算装置62においては、この傾斜角度θ1と前記力Fの上下方向成分Fyとを用いて、前記張力FのYZ面成分Fyzが求められる。
つまり、線状体50にかかる張力FのYZ面成分Fyzの方向は、ノズル11の軸心から前記傾斜角度θ1だけ傾斜した方向となり、前記YZ面成分Fyzと前記上下方向の力Fyとは「Fyz=Fy/sin(θ1)」の式にて表される関係を有しているため、この式により、前記上下方向成分Fyと演算装置62に予め記憶されている前記傾斜角度θ1とを用いて、前記YZ面成分Fyzが算出される。
なお、張力Fの軸心方向成分Fzは、「Fz=Fyz×cosθ1」により求めることができる。
【0031】
さらに、演算装置62においては、算出したYZ面成分Fyzと左右方向成分Fxとから、張力Fを算出するように構成している。
なお、前記張力Fは、上下方向成分Fyと左右方向成分FxとによりXY面成分Fxyを求めて、このXY面成分Fxyと軸心方向成分Fzとから算出したり、左右方向成分Fxと軸心方向成分FzとによりXZ面成分Fxzを求めて、このXZ面成分Fxzと上下方向成分Fyとから算出したりすることも可能である。
【0032】
このように算出される張力Fは、線状体50をボビン21へ繰り出すノズル11に設けられた上下歪ゲージ12Ya・12Ybおよび左右ゲージ12Xa・12Xbの検出値に基づくものであるため、ガイド部材などに摺接していないノズル11とボビン21との間の線状体50の張力そのものが直接検出されているので、線状体50の真の張力を検出することが可能となっている。
【0033】
さらに、前記演算装置62においては、前記上下歪ゲージ12Ya・12Ybおよび左右ゲージ12Xa・12Xbの検出値、および前記ノズル11とボビン21との位置関係から算出した線状体50の傾斜角度θ1に基づいて、前記ノズル11とボビン21との間における線状体50の張力Fを算出しているので、線状体50の張力Fを容易かつ正確に検出することが可能となっている。
【0034】
また、前記上下歪ゲージ12Ya・12Ybおよび左右ゲージ12Xa・12Xbは、ノズル11の外周面における上下および左右にそれぞれ設けられているので、上下歪ゲージ12Ya・12Ybからの出力電圧Ey、および左右ゲージ12Xa・12Xbからの出力電圧Exを合成して張力Fを算出することで、張力Fのノズル11周りの方向(後述する振れ角θ2)および大きさを適正に算出することが可能となっている。
【0035】
また、図3に示すように、前記演算装置62においては、線状体50の左右方向(綾振り装置10の装置本体15の移動方向)への綾振り角度である振れ角θ2を算出するように構成されている。
前記振れ角θ2は、具体的には線状体50の水平面に対する角度であり、本例ではノズル11の正面視において、線状体50が左方の水平方向から時計回りにいくにしたがって前記角度が大きくなるように設定されている。
従って、例えば図3において線状体50が左方の水平方向へ向いているときには振れ角θ2=0°となり、線状体50が垂直上方へ向いているときには振れ角θ2=90°となり、線状体50が右方の水平方向へ向いているときには振れ角θ2=180°となる。
【0036】
このように設定される振れ角θ2は、前記演算装置62において、前述のように算出された張力Fの上下方向成分Fyおよび左右方向成分Fxの値により、(Fy/Fx)=tan(θ2)の関係を用いて算出される。
この場合、振れ角θ2は、ガイド部材などに摺接していないノズル11とボビン21との間の線状体50の張力Fの上下方向成分Fyおよび左右方向成分Fxを用いて算出しているので、前記ガイド部材からの摩擦力などの影響を受けることがなく、線状体50の真の張力の上下方向成分および左右方向成分のみにより、正確な振れ角θ2を算出することが可能となっている。
【0037】
また、本線状体巻取り装置1においては、このようにして求められた張力Fや線状体50の振れ角θ2を用いて、巻き取られる線状体50の張力値の設定が適正であるかの判断や、巻取り途中に発生した線状材50の巻き崩れなどの巻き取り異常の検出を、前記演算装置62などにて行うように構成している。
【0038】
例えば、巻き取られる線状体50の張力値の設定が適正であるかの判断を行う場合は、前記演算装置62にて算出された張力Fの値が予め設定された所定範囲内にあるか否かにより判断することができる。
この場合、算出される張力Fはノズル11の先端部11bから繰り出される線状体50の張力であるが、本線状体巻取り装置1においてはノズル11の先端部11bからボビン21までの間に線状体50に摺接するガイド部材などがないため、ボビン21に巻き取られる直前の線状体50にかかる張力Fを直接検出することが可能となっている。
これにより、巻き取られる線状体50にかかる真の張力を検出することができ、線状材の張力設定が適正であるかの判断を高精度に行うことが可能となる。
【0039】
また、線状体巻取り装置1においては、算出した張力Fを前記繰り出し装置30にフィードバックして、該繰り出し装置30のテンション設定器33により線状体50に付与されるテンションを適正な大きさに調節するように構成して、前記張力Fを適正な一定の値に保持することが可能となる。
また、線状材50の巻き崩れの発生の検出は、線状体50の前記振れ角θ2の値が予め設定された所定の基準範囲から外れたか否かを判断することにより行うことができる。
【0040】
また、前述の図1に示した線状体巻取り装置1は、綾振り装置10に1本のノズル11を備えて1本の線状体50をボビン21に巻き付けていくように構成されているが、図6に示すように、前記綾振り装置10に複数(図6では2本)のノズル11を並設して、複数本(図6では2本)の線状体50を同時にボビン21に巻き付けていくように構成することもできる。
【0041】
このように、2本のノズル11を並設した仕様の線状体巻取り装置1においても、前述のノズル11を1本設けた仕様の場合と同様に、巻き取られる線状体50の張力値の設定が適正であるかの判断や、巻取り途中に発生した線状材50の巻き崩れなどの巻き取り異常の検出を行うことができる。
【0042】
例えば、図7には2本のノズル11を上下に並設した場合における、上側のノズル11および下側のノズル11から繰り出される線状体50の張力Fを示している。
正常にボビン21への巻き取りがなされているときには、上側および下側のノズル11・11の線状体50の張力Fはともに最大張力Fmaxと最小張力Fminとの間の範囲に収まっているが、巻き崩れが発生したときには、上側および下側のノズル11・11の線状体50の張力Fがともに大きく減少し、最小張力Fminよりも大幅に小さな値になっている。
【0043】
従って、前記演算装置62において、例えば前記最小張力Fminを閾値として設定し、検出された張力Fが最大張力Fmaxと最小張力Fminとの間の範囲にあれば巻き取りが正常に行われていると判断し、最小張力Fminよりも小さければ巻き崩れが発生したと判断するように構成することができる。
この場合、本線状体巻取り装置1においては、線状体50がガイド部材などに摺接する際に生じる摩擦力などといった他の力が張力Fとともに検出されることがなく、巻き取られる線状体50の張力Fのみが検出されるため、巻き崩れが発生した際の張力Fの変化を正確に捉えることができ、それにより巻き崩れの発生を適正に検出することが可能となる。
【0044】
また、線状体50の巻き崩れ発生は、前記線状体50の左右方向への振れ角θ2を用いて検出することもできる。
つまり、上側および下側のノズル11・11の線状体50の振れ角θ2をそれぞれ算出すると、図8に示すように、該線状体50が正常に巻き取られているときには両者の差daは小さくほぼ一定であるが、図9に示すように、巻き崩れが発生したときの上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差dbは大きく一定していない。
【0045】
そこで、演算装置62において上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2とを算出して、例えばその差の大きさが予め設定しておいた所定の閾値よりも大きいか否かの判断を行うことにより、巻き崩れの発生を検出することができる。
また、上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差の値の変化度合いに基づいて巻き崩れの発生を検出することも可能である。
【0046】
また、図10に示すように、上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差Δdを演算装置62にて算出し、この差Δdの大きさが予め設定しておいた閾値よりも大きいか否かにより巻き崩れの発生を検出することも可能である。
図10に示した場合は線状体50の巻き取りが正常に行われている状態であり、前記差Δdはさほど大きな値とはなっていない。
これに対し、図11に示すように、巻き取られる線状体50に巻き崩れが発生した場合には、正常な場合に比べて前記差Δdが大きくなっている。
【0047】
従って、この上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差Δdの大きさが予め設定しておいた所定の閾値よりも大きいか否かで巻き崩れの発生を検出することができる。
また、上側のノズル11の振れ角θ2と下側のノズル11の振れ角θ2との差の値の変化度合いに基づいて巻き崩れの発生を検出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】線状体巻取り装置を示す全体図である。
【図2】ノズルの先端部から繰り出されボビンに巻き取られる線状体を示す側面断面図である。
【図3】ノズルの先端部から繰り出されボビンに巻き取られる線状体を示す正面図である。
【図4】各歪ゲージの検出回路を示す図である。
【図5】張力の各方向成分を示す斜視図である。
【図6】2本のノズルを並設して構成した線状体巻取り装置の線状体巻取り部分を示す斜視図である。
【図7】2本のノズルを並設した場合の各線状体の張力を示すグラフであって、巻き崩れが発生した場合の張力の変化を示す図である。
【図8】2本のノズルを並設した場合の各線状体の振れ角を示すグラフであって、正常な巻取り状態にある場合の振れ角を示す図である。
【図9】2本のノズルを並設した場合の各線状体の振れ角を示すグラフであって、巻き崩れが発生した場合の振れ角を示す図である。
【図10】2本のノズルを並設した場合の各線状体の振れ角の差を示すグラフであって、正常な巻取り状態にある場合の振れ角を示す図である。
【図11】2本のノズルを並設した場合の各線状体の振れ角の差を示すグラフであって、巻き崩れが発生した場合の振れ角を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 線状体巻取り装置
10 綾振り装置
11 ノズル
12xa 左歪ゲージ
12xb 右歪ゲージ
12ya 上歪ゲージ
12yb 下歪ゲージ
15 装置本体
20 ボビンユニット
21 ボビン
30 繰り出し装置
31 送出ローラ
33 テンション設定器
50 線状体
F 張力
θ2 振れ角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の張力を付与した状態で線状体を繰り出す繰り出し装置と、前記繰り出し装置から繰り出された線状体を巻き取るボビンと、前記ボビンに対し、線状体を綾振りしながら供給するノズルを備えた綾振り装置とを備えた線状体巻取り装置であって、
前記綾振り装置におけるノズルは筒状部材に構成されており、
前記ノズルから供給される線状体は、該ノズルの軸心方向に対して傾斜した方向へ繰り出され、
前記ノズルの外周面には、該ノズルの軸心方向からの歪みを検出する歪検出器が付設される、
ことを特徴とする線状体巻取り装置。
【請求項2】
前記歪検出器は、前記ノズルの外周面における上下左右部の4か所にそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の線状体巻取り装置。
【請求項3】
前記線状体巻取り装置は、前記歪検出器の検出値、および前記ノズルとボビンとの位置関係に基づいて、前記ノズルとボビンとの間における線状体の張力を算出する演算装置を備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線状体巻取り装置。
【請求項4】
前記線状体巻取り装置は、前記歪検出器の検出値に基づいて、前記ノズルとボビンとの間における線状体の綾振り角度を算出する演算装置を備える、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の線状体巻取り装置。
【請求項1】
所定の張力を付与した状態で線状体を繰り出す繰り出し装置と、前記繰り出し装置から繰り出された線状体を巻き取るボビンと、前記ボビンに対し、線状体を綾振りしながら供給するノズルを備えた綾振り装置とを備えた線状体巻取り装置であって、
前記綾振り装置におけるノズルは筒状部材に構成されており、
前記ノズルから供給される線状体は、該ノズルの軸心方向に対して傾斜した方向へ繰り出され、
前記ノズルの外周面には、該ノズルの軸心方向からの歪みを検出する歪検出器が付設される、
ことを特徴とする線状体巻取り装置。
【請求項2】
前記歪検出器は、前記ノズルの外周面における上下左右部の4か所にそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の線状体巻取り装置。
【請求項3】
前記線状体巻取り装置は、前記歪検出器の検出値、および前記ノズルとボビンとの位置関係に基づいて、前記ノズルとボビンとの間における線状体の張力を算出する演算装置を備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線状体巻取り装置。
【請求項4】
前記線状体巻取り装置は、前記歪検出器の検出値に基づいて、前記ノズルとボビンとの間における線状体の綾振り角度を算出する演算装置を備える、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の線状体巻取り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−83994(P2009−83994A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256220(P2007−256220)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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