説明

線路下横断構造物の構築用支持杭施工方法

【課題】鉄道線路下の地盤中に構造物を構築する際、軌道を受ける工事桁を支える支持杭の杭長を短くする方法を提供する。
【解決手段】軌道1下地盤3中に鋼製エレメントを順次挿入し、エレメント内、エレメント間にコンクリートを打設して下床版10を施工する。ついで下床版10上に支持杭20を施工し、路盤上の工事桁2を支持することで軌道1を防護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線路下の地盤中に構造物を構築する際の支持杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路下の地盤中に構造物を構築する方法として、工事桁による開削工法が知られている。
図2は工事桁による開削工法を説明する図である。
この工法は、軌道(レール)1を受ける工事桁2を、軌道に沿って施工した複数の工事桁杭9で受けた後、地下構造物の施工場所5を囲むようにH型鋼等からなる土留杭(図示せず)を多数施工することで土留壁を形成して地盤3を掘削し、開削した領域に地下構造物を構築するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した開削工法では、土留め杭、工事桁杭、工事桁の施工が夜間の線路閉鎖間合いに制限され、作業時間が短い現場では工事期間が長期化するという問題があった。特に、地盤が悪く、工事桁杭の支持層となる地盤7が深い場合には、工事桁杭9の杭長が長くなり、施工日数を要してしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、支持杭の杭長を短くすることを可能にして工期工事費の縮減を図ることを目的とする。
本発明は、軌道下地中に鋼製エレメントを施工する段階、
施工した鋼製エレメント上に支持杭を施工する段階、
を有することを特徴とする。
また、本発明は、前記鋼製エレメントは下床版エレメントで、その施工後コンクリートを打設して下床版を構築する段階、
前記支持杭は下床版上に施工され、該支持杭で路盤上の工事桁を支持して軌道を防護する段階、
側壁用鋼製エレメントを施工し、コンクリートを打設して左右側壁を施工する段階、
下床版、左右側壁で囲まれる地盤を掘削して上床版を施工する段階をを有することを特徴とする。
また、本発明は、前記側壁で工事桁を支持するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、軌道下地中に鋼製エレメントを施工し、鋼製エレメント上に支持杭を施工することで、支持地盤まで杭長を長くする必要がなくなり、杭長を短くすることができるため工期工事費の縮減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態の支持杭施工方法を説明する図である。
【図2】工事桁による開削工法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態の支持杭の施工方法を説明する図である。
図示は省略するが、現場の状況によっては、発進立坑、到達立坑を掘削してそれぞれ土留工を施工する。図1(a)に示すように、地下構造物の施工場所5の下床版に相当する箇所に鋼製エレメントを内部の土砂を掘削排土しながら発進立坑側から到達立坑側へ向け軌道下に順次挿入する。エレメント同士は継手で連結され、既設のエレメントの継手をガイドとして隣接するエレメントを順次挿入してエレメント内、エレメント間にコンクリートを打設して下床版10を施工する。次いで、下床版10上に支持杭20を施工し、路盤上の工事桁2を支持することで軌道1を防護する(図1(b))。施工する支持杭の本数は状況により適宜選択される。次いで、地下構造物の施工場所5の側壁部に相当する箇所に、下床版と同様に側壁エレメントを施工してコンクリートを打設し、左右側壁13、15を施工する(図1(c))。なお、側壁13、15も工事桁2を支持させるようにすることが望ましい。次いで、左右の側壁を土留壁として下床版10、側壁13、15で包囲された領域の地盤を掘削した後、上床版17を施工する。この場合、1次掘削して上床版17を施工した後、下床版まで2次掘削して壁部の内装を行うようにするなどしてもよい。上床版の施工後、工事桁、支持杭20は撤去するが、工事桁は本設工事桁として残置してもよく、また、必要な支持杭は残してもよい。
【0008】
このように、軌道下地中に鋼製エレメントを挿入し、エレメント上に杭を施工して杭に作用する荷重をエレメントの底面積に持たせることで、杭長は支持層となる地盤までの深さを必要とせず、エレメントの設置位置の深さまでと短くすることができる。そして、杭を支持するエレメントは杭の支持に必要な面積が得られればよいので、状況に応じて施工するエレメントの本数は1本でも複数本でもよい。また、上記の例では、地下構造物の下床版エレメントを用いて杭を支持するようにしたが、杭支持用のためのエレメントを軌道下を横断するように挿入し、このエレメント上に杭を施工するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は、線路下の地盤中に構造物を構築する際の支持杭の施工の工期工事費の縮減を図ることができ、安価な支持杭の施工に利用することができる。
【符号の説明】
【0010】
1…軌道、2…工事桁、3…地盤、10…下床版、13,15…側壁、20…支持杭、17…上床版。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道下地中に鋼製エレメントを施工する段階、
施工した鋼製エレメント上に支持杭を施工する段階、
を有する線路下横断構造物の構築用支持杭施工方法。
【請求項2】
前記鋼製エレメントは下床版エレメントで、その施工後コンクリートを打設して下床版を構築する段階、
前記支持杭は下床版上に施工され、該支持杭で路盤上の工事桁を支持して軌道を防護する段階、
側壁用鋼製エレメントを施工し、コンクリートを打設して左右側壁を施工する段階、
下床版、左右側壁で囲まれる地盤を掘削して上床版を施工する段階、
を有する請求項1記載の施工方法。
【請求項3】
前記側壁で工事桁を支持するようにした請求項2記載の施工方法。

【図1】
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【図2】
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